JP2008184390A - 血糖値上昇抑制剤およびその用途 - Google Patents

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【課題】天然由来の血糖値上昇抑制作用を有する物質およびおよびそれを含む健康食品、医薬を提供する。
【解決手段】ラムナン硫酸を有効成分とすることを特徴とする、血糖値上昇抑制剤。
ラムナン硫酸が、緑藻類ヒトエグサ科ヒトエグサ属ヒトエグサより抽出したものである、上記の血糖値上昇抑制剤。
上記の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制用飲食品および血糖値上昇抑制用医薬。
【選択図】なし

Description

本発明は、血糖値上昇抑制剤およびその用途に関し、さらに具体的には、本発明は、血糖値の上昇抑制、ひいては血糖改善または糖尿病の予防あるいは治療を目的とする、ラムナン硫酸を有効成分とする血糖値上昇抑制剤ならびにそれを含む食品および医薬に関するものである。
炭水化物を摂取すると、消化によりブドウ糖となり血中に吸収されて血糖値の上昇が起こる。このとき、膵臓より分泌されたインスリンの作用によりブドウ糖は細胞内に取り込まれ血糖値が下がるが、糖尿病ではインスリンの分泌・作用不足により血糖値が下がりにくい症状を呈する。高血糖状態が続くと、網膜症や腎臓症、神経障害などの合併症が起こる。近年、我が国の食生活の欧米化や高カロリー化、運動不足などに伴い糖尿病患者が増加しており、重大な社会問題となっている。
糖尿病の治療薬としては、糖の消化酵素阻害剤が医薬品として用いられているが、これらの治療薬は処方箋が必要であって日常の食品に使用することはできず、副作用を伴う場合もある。従って、天然の食品成分由来の治療薬が求められている。かかる天然の食品由来の糖尿病改善剤としては、アマノリのポルフィラン(特開2006−104100号公報(特許文献1))、アセロラ種子抽出物(特開2005−320262号公報(特許文献2))、黒茶抽出物(特開2002−370994号公報(特許文献3))、桑の葉中の1−デオキシノジリマイシン(特開平9−140351号公報(特許文献4))、ギムネマ・シルベスタ(特開昭64−38026号公報(特許文献5))などが知られている。また、緑藻類のメタノール抽出物にα-アミラーゼ活性阻害作用があることが報告されている(特開平05−284937号公報)(特許文献6))が、メタノール抽出ではラムナン硫酸は溶出されない。
一方、ラムナン硫酸については、感染症予防・治療剤(特開平11−80003号公報)(特許文献7))、非ステロイド性消炎・鎮痛剤の副作用低減剤(特開平11−263730号公報)(特許文献8))、ヘパリノイド活性を有する多糖体を含有する抗血液凝固剤(特許2521083号公報)(特許文献9))などが知られているが、血糖値に対する効果についての報告はない。
特開2006−104100号公報 特開2005−320262号公報 特開2002−370994号公報 特開平9−140351号公報 特開昭64−38026号公報 特開平05−284937号公報 特開平11−80003号公報 特開平11−263730号公報 特許2521083号公報
上記のような状況に鑑み、本発明は、天然由来の血糖値上昇抑制作用を有する物質およびそれを含む食品および医薬を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討した結果、緑藻類のヒトエグサより抽出したラムナン硫酸が、ヒトおよび動物において食後血糖値の上昇を抑制する効果を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の構成を要旨とする血糖値上昇抑制剤、およびその用途に関するものである。
(1)ラムナン硫酸を有効成分とすることを特徴とする、血糖値上昇抑制剤。
(2)ラムナン硫酸が、緑藻類ヒトエグサ科ヒトエグサ属ヒトエグサより抽出したものである、上記(1)に記載の血糖値上昇抑制剤。
(3)食品として用いられる、上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤。
(4)上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制用飲食品。
(5)医薬として用いられる、上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤。
(6)上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制用医薬。
別の観点において、本発明の飲食品は下記のような構成を要旨とする飲食品でもある。
(7)上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制作用を有する飲食品。
(8)上記(1)または(2)に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、機能性飲食品。
(9)ラムナン硫酸を含有し、血糖値の上昇抑制作用を有するものであることを特徴とし、血糖値上昇抑制のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品。
本発明によれば、ヒトにおいてラムナン硫酸を摂取したとき、実際に食後血糖値の上昇を抑制することができ、従って、血糖値上昇抑制剤、およびそれを含む血糖値上昇抑制作用を有する飲食品および医薬を提供することができる。
発明の具体的説明
以下は、本発明による血糖値上昇抑制剤およびそれを含む飲食品および血糖値上昇抑制のための医薬について詳細に説明するものである。本発明による血糖値上昇抑制剤は、ラムナン硫酸を有効成分とすることを特徴とするものであることは前記したところである。
本発明において使用されるラムナン硫酸は、L−ラムノースを主成分とする糖、D−グルクロン酸および硫酸を含む多糖であり、天然植物から得られるもの等任意のものを使用することができるが、天然由来のものとしては、例えば、緑藻類ヒトエグサ科ヒトエグサ属に属する緑藻類を原料として抽出により得ることができる。ヒトエグサ属に属する緑藻類は特に限定されないが、ヒトエグサ(Monostroma nitidum)が好ましい。ヒトエグサは一般に市販されており、それを原料として使用することができる。ヒトエグサ原料は、原藻をそのまま抽出工程に使用しても構わないが、細片化もしくは微細化したもの、好ましくは乾燥物を細片化したものを使用することが抽出効率の点において望ましい。乾燥物としては、水分を含む湿潤形態の原料を乾燥機等を用いて乾燥させたもの、あるいは市販されている乾燥物を使用することができる。乾燥物原料を細片化する方法としては、例えば衝撃粉砕機、ボールミル、ピンミル、ジェットミル、凍結粉砕機等を使用し、好ましくは細胞壁を破壊するような条件で行う方法がある。湿潤の原料を使用する場合は、乾燥前のヒトエグサ原料を、例えば、コロイドミル、ひき臼型粉砕機等を用いて、上記乾燥物の場合と同様に細片化することができる。
ヒトエグサ原料の抽出溶媒は通常水であり、冷水から温水もしくは熱水まで使用することができる。水の使用量は特に限定されないが、通常、海藻原料(乾燥物として)1重量部に対して2〜50重量部程度が好ましい。抽出操作は、ヒトエグサ原料と水を混合して抽出を行い、抽出中は静置状態でも構わないが、ミキサーや攪拌器等で撹拌することにより抽出効率を高めて抽出時間を短縮させることができる。抽出工程における抽出温度(水の温度)は特に限定されないが、通常5〜100℃、好ましくは20〜100℃で抽出を行う。抽出時間は、目的の成分(ラムナン硫酸)が十分に抽出される条件であれば特に制限はなく、またヒトエグサ原料の大きさ、撹拌器使用の有無等によっても変化しうるが、例えば、細片化した原料と水(5〜100℃)を混合後静置した場合、通常1〜24時間程度であり、ミキサー等の攪拌器で撹拌しながら抽出を行う場合、通常0.5〜5時間程度に短縮することも可能である。
ラムナン硫酸の抽出は、通常、まず上記のような条件でヒトエグサ原料に水または熱水等任意の温度の水溶媒を加え、ラムナン硫酸を溶出させる。次いで、この溶出液について適当なフィルターによる濾過または遠心分離により固形物を取り除いた後、エタノールを添加することにより沈殿が生じる。この沈殿物を回収することにより目的のラムナン硫酸を得ることができる。このようにして得られたラムナン硫酸は、必要に応じて、さらに透析やゲル濾過、その他のクロマトグラフィー等の一般的な精製手段を単独でまたは適宜組み合わせて処理して精製することができる。
上記のような方法により得られたラムナン硫酸は、そのまま本発明の用途に使用することができるが、さらに乾燥して乾燥粉末の形態、あるいは水に溶解させた形態等で使用することができる。本発明におけるラムナン硫酸は、後記実施例および図面(実施例2〜4、図1〜3)で示されるように、ヒトインビボ摂取試験(糖質:米飯)およびラットインビボ摂取試験(糖質:グルコース、マルトース、スクロース、デンプン)において血糖値の上昇を抑制する作用を有していることから、血糖値上昇抑制剤として飲食品あるいは医薬品等の用途に単独でまたは添加物として使用することができる。本発明による血糖値上昇抑制剤は、上記のような血糖値の上昇抑制能力を有していることにより、血糖改善ひいては糖尿病の予防あるいは治療につながり得る。
ラムナン硫酸を食品に使用する場合、単独で(他の添加剤を含んでいてもよい)あるいは種々の飲食品に添加物として配合して血糖値上昇抑制作用を有する飲食品とすることができる。本発明による血糖値上昇抑制作用を有する飲食品は、健康食品、あるいは血糖値上昇抑制作用を有する機能性食品等の種々の食品形態をとりうる。
本発明の飲食品には、有効成分としてのラムナン硫酸の他に、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン類、アミノ酸類、pH調節剤、界面活性剤、香料、色素、増粘剤等、賦形剤としての糖類、デンプン等の飲食品に一般に使用される添加物を使用することができる。本発明の飲食品は、錠剤、カプセル剤、粉末、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、トローチ剤等の種々の製品形態で使用できる。また、ラムナン硫酸を固形食品、半流動状食品、飲料等の種々の他の飲食品に添加した形態の飲食品とすることもできる。本発明において、ラムナン硫酸を添加物として配合する飲食品は、特に限定されないが、例えば、固形食品としてはパン、麺類、お菓子、ふりかけ類等が例示され、半流動食品としては、ゼリー類、豆腐、ようかん等が例示され、飲料としては、スープ類、お茶、青汁等が例示される。本発明による血糖上昇抑制作用を有する食品は、血糖値の上昇に対して、ひいては糖類の過剰摂取等に起因する疾患または病態あるいは生活習慣病、特に糖尿病に対して穏やかに作用してこれらを改善することができる。また、本発明の飲食品は、製品形態として上記のような疾患または病態の改善のために用いられる旨の表示を付した飲食品(特定保健用食品等)とすることができる。
本発明において、ラムナン硫酸を健康食品もしくは機能性食品の用途に使用する場合のその配合量は、食品の形態等により異なりうるが、例えば、配合後の固形食品の全量に対して通常0.01〜5重量%程度であり、半流動食品の全量に対して通常0.01〜5重量%程度であり、飲料の全量に対して通常0.01〜5重量%程度である。本発明飲食品を摂取する場合、ラムナン硫酸としての経口摂取量は、一般に毎食事あたり10mg〜5g程度、あるいは1日あたり10mg〜20g程度である。
ラムナン硫酸を医薬もしくは医薬組成物の有効成分として使用する場合、この医薬は血糖値上昇抑制薬であり、従って、血糖値の上昇に対して、さらには糖類の過剰摂取等に起因する疾患あるいは生活習慣病、特に糖尿病に対して予防剤あるいは治療剤として使用することができる。血糖値上昇抑制剤としてのラムナン硫酸は、経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、直腸投与、鼻腔内投与、経眼投与等の種々の投与経路で投与することができる。本発明剤を医薬として使用する場合は、有効成分としてのラムナン硫酸を投与方法等によってきまる適当な剤形、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤等の種々の形態とすることができる。これらの製剤を製造するには、製薬上許容される担体あるいは希釈剤等、具体的には通常の溶剤、可溶化剤、等張化剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤等を添加することができる。本発明医薬の投与量は、投与方法、患者の状況等に応じて変化することはいうまでもなく、また適量と投与回数は専門医によって決定されるが、具体的には、例えばラムナン硫酸として成人1日当たり10mg〜20g程度である。
本発明もしくは明細書において、特に断りのない限り%表示は重量%を意味するものである。
以下、実施例により本発明の形態をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
ヒトエグサの乾燥粉末に10倍量の水を加え、4℃で2日間放置し、ラムナン硫酸を溶出させた。濾過により固形物を取り除いた後、エタノールを添加しラムナン硫酸を沈殿させた。得られた沈殿物についてエタノールを除去し、水に溶解することによりラムナン硫酸抽出液を得た。
20〜50歳代の健常な男性15名を被験者として、ヒトエグサが米飯摂取による血糖上昇に及ぼす影響を調査した。試験食は、米飯147gと米飯147g+ヒトエグサ粉末0.5gの2種類で行った。試験前日の22時より水以外絶食とし、空腹時血糖を小型血糖測定器(グルテストNeo:株式会社・三和化学研究所製)により測定した。その後、試験食を接種してもらい、摂取後30、60、120分後の血糖値を測定した。その結果を図1に示す。ヒトエグサを同時に摂取することにより血糖値の上昇が有意に抑制されることが分かった。
20〜30歳代の健常な男性5名を被験者として、実施例1と同様の試験を行った。試験食は、米飯147gと米飯147g+ラムナン硫酸で行った。ラムナン硫酸は実施例1に示す方法で抽出したもので、摂取した量はヒトエグサ0.5〜1gに含まれている量と同等である。図2にその結果を示す。ラムナン硫酸の摂取により血糖値の上昇が有意に抑制されていることが分かった。
ヒトエグサをメタノールに浸漬した後、その残渣について水で抽出した。この水抽出画分を乾燥させると収量は40%となり、これをラムナン硫酸抽出画分とした。また、抽出後の残渣の収量は50%で、これを不溶性画分とした。以上の2画分について、ラットを用い血糖値上昇抑制効果を調査した。ラットは5週齢のWistar系雄ラットを用い、1週間の予備飼育をした後、6〜8週齢の期間で実験を行った。飼育環境は室温24±2℃、湿度50±10%、明暗周期12時間とし、試験期間中は市販の固形飼料(CE−2、日本クレア(株))および水を自由摂取させた。このラットを20時間絶食させた後、糖質溶液または糖質溶液+ヒトエグサ抽出画分溶液を強制的に経口投与し、投与前および投与30、60、120分経過後にラット尾部から採血を行い、血糖値を測定した。糖質はグルコース、マルトース、スクロース、可溶性デンプンの4種類を用い、投与量は2.0g/1kg bwとした。ヒトエグサ抽出画分の投与量は、ラムナン硫酸抽出画分0.08g/1kg bw、不溶性画分0.10g/1kg bwとした。図3にその結果を示す。全ての糖質についてラムナン硫酸抽出画分に血糖値上昇抑制効果が認められた。
(本発明飲食品の配合例)
・半流動食品
ラムナン硫酸: 1.0g 寒天: 1.5g
ビタミンC: 0.5g 水: 66.9g
抹茶フレーバー: 0.1g
砂糖: 30.0g
・液状食品
ラムナン硫酸: 1.0g
ビタミンC: 0.5g
ビタミンE: 0.5g
水: 98.0g
(本発明医薬の配合例)
・錠剤
ラムナン硫酸: 0.98g
ビタミンC: 0.005g
ビタミンE: 0.005g
デキストリン: 0.01g
・粉末
ラムナン硫酸: 0.99g
ビタミンC: 0.005g
ビタミンE: 0.005g
本発明は、血糖値上昇抑制剤およびそれを含む血糖値上昇抑制作用を有する健康食品および血糖値上昇抑制用の医薬として有用である。
米飯+ヒトエグサ粉末のインビボ摂取試験(ヒト)において、経時的に血糖値を測定した結果を示すグラフ。 米飯+ラムナン硫酸のインビボ摂取試験(ヒト)において、経時的に血糖値を測定した結果を示すグラフ。 糖質+ラムナン硫酸のインビボ摂取試験(ラット)において、経時的な血糖測定値の変化((a)〜(d))を示すグラフ。

Claims (6)

  1. ラムナン硫酸を有効成分とすることを特徴とする、血糖値上昇抑制剤。
  2. ラムナン硫酸が、緑藻類ヒトエグサ科ヒトエグサ属ヒトエグサより抽出したものである、請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤。
  3. 食品として用いられる、請求項1または2に記載の血糖値上昇抑制剤。
  4. 請求項1または2に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制用飲食品。
  5. 医薬として用いられる、請求項1または2に記載の血糖値上昇抑制剤。
  6. 請求項1または2に記載の血糖値上昇抑制剤を含有することを特徴とする、血糖値上昇抑制用医薬。
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