JP2008179802A - ガス化触媒担持石炭の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】石炭ガス化触媒として作用するカルシウムが高濃度に担持された石炭を製造する。一旦石炭に担持したカルシウムをガス化後の灰から回収して再利用する。
【解決手段】木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれか一つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウムを溶解し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させるようにした。また、バイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭のガス化後の灰とを接触させてこのカルシウムを回収し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させることにより、カルシウムを再利用するようにした。
【選択図】図4
【解決手段】木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれか一つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウムを溶解し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させるようにした。また、バイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭のガス化後の灰とを接触させてこのカルシウムを回収し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させることにより、カルシウムを再利用するようにした。
【選択図】図4
Description
本発明はガス化触媒担持石炭の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、石炭ガス化発電に供するのに好適な高触媒活性を有する石炭を製造する方法に関する。
石炭ガス化複合発電は、高効率且つ環境性に優れた発電システムとして早期実用化が期待されている。近年、この石炭ガス化複合発電の実用化に向けて、種々の研究が行われている。
このような研究の一つとして、石炭にガス化触媒を担持させて石炭のガス化反応性を高めることにより、ガス化温度の低温化を図ってエネルギー変換効率を向上させる試みがなされている。例えば特許文献1では、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩もしくは塩化物、アルカリ土類金属の炭酸塩もしくは塩化物、並びに遷移金属の塩化物等をガス化触媒物質とし、これらのガス化触媒物質を溶解した水溶液を石炭粒子に含浸させ乾燥させることにより、触媒物質を石炭粒子に担持させて、石炭ガス化温度の低温化を図ることが提案されている。
また、非特許文献1では、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液を石炭に含浸させ乾燥させることにより、ナトリウムやカリウムをガス化触媒として石炭に担持させる技術が開示されている。
さらに、非特許文献1では、水に水酸化カルシウムを溶解して水酸化カルシウム水溶液を得、この水溶液に石炭を含浸させ乾燥させることにより、カルシウムをガス化触媒として石炭に担持させる技術が開示されている。
特開平7−207284
Exxon Research and Engineering Company USA , Fuel 1982, 61, 620-626.
炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物は、水への溶解性が非常に高いことから、ナトリウムやカリウムをガス化触媒として石炭に高濃度に担持させやすいという点においては優れている。しかしながら、高価な物質であるアルカリ金属化合物を使用することは、石炭ガス化発電にかかるコストを増加させることから好ましいとは言えない。また、ナトリウムやカリウムをガス化触媒として石炭に担持させた場合、ガス化処理中にナトリウムやカリウムが揮発して、設備の腐食が引き起こされるという問題が生じる。
また、ガス化反応の進行に伴って、ナトリウムやカリウムが石炭の燃焼灰中のシリカやアルミナ等の成分と相互作用し、非水溶性のアルカリ金属塩が発生することにより触媒活性が失われてしまう。さらに、上述したようにナトリウムやカリウムがガス化処理中に揮発することから、ガス化処理後に発生する灰からナトリウムやカリウムを回収することが非常に困難である。したがって、アルカリ金属化合物を使用して石炭にナトリウムやカリウムを担持させた場合、ナトリウムやカリウムを回収して再利用することによるコストダウンは見込めない。
ここで、ガス化触媒としてカルシウムを石炭に担持させた場合には、ガス化処理中の揮発の問題や設備腐食の問題が発生することはないので、ガス化触媒としてカルシウムを用いることが望ましい。しかしながら、水酸化カルシウム水溶液に石炭を含浸させ乾燥させることにより石炭にカルシウムを担持させるという非特許文献1に開示された方法では、カルシウムを極少量しか石炭に担持することができず、石炭の触媒活性の大幅な向上は見込めない。
また、資源の有効利用やコスト低減の観点からは、石炭ガス化処理後に発生する灰からカルシウムを回収して再利用することが望まれるが、石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムが燃焼あるいはガス化反応することにより生成される酸化カルシウムや炭酸カルシウムは水にほとんど溶けない。したがって、石炭の灰からガス化触媒として担持されていたカルシウムを回収することは困難である。
そこで、本発明は、石炭のガス化触媒として作用するカルシウムが高濃度に担持された石炭を製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、一旦石炭に担持したカルシウムを、ガス化後の灰から回収し、石炭ガス化触媒として再利用する方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者は、水酸化カルシウム水溶液を用いた非特許文献1の方法によりカルシウムを石炭に高濃度に担持できない原因が、水酸化カルシウムの水に対する溶解度が1.6g/L(20℃)と非常に低いことにあると考え、水酸化カルシウムを高濃度に溶解する液体について検討を行った。その結果、草本系のバイオマス原料である竹や籾殻を炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に対する水酸化カルシウムの溶解度が水に対する溶解度と比較して非常に高いことを見出した。さらに、このバイオマス水溶性液を用いて製造したカルシウム担持石炭のガス化反応速度が水を用いて製造したカルシウム担持石炭のガス化反応速度と比較して非常に大きいことを知見し、本発明に至った。
かかる知見に基づく請求項1に記載のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液(以下、単にバイオマス水溶性液と呼ぶこともある)に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上を溶解し、このバイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持するようにしている。
木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液には水酸化カルシウムが高濃度に溶解する。また、酸化カルシウムと炭酸カルシウムも高濃度に溶解する。したがって、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上を高濃度に溶解したバイオマス水溶性液を石炭と接触させて、ガス化触媒であるカルシウムが高濃度に分散担持された石炭を製造することができる。
次に、請求項2に記載のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭の灰とを接触させてこのカルシウムをバイオマス水溶性液に溶解し、このバイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持するようにしている。
カルシウムが担持されている石炭の灰には、このカルシウムが燃焼反応あるいはガス化反応することによって生成される酸化カルシウムと炭酸カルシウムとが含まれる。酸化カルシウムと炭酸カルシウムは、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に高濃度に溶解する。したがって、カルシウムが担持されている石炭の灰とバイオマス水溶性液とを接触させることで、石炭にガス化触媒として担持されていたカルシウムを回収して、このカルシウムを石炭に再担持することができる。
次に、請求項3に記載のガス化触媒担持石炭は、請求項1または2に記載の製造方法により得られるものであり、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に含まれる成分がカルシウムと共に担持されているものである。したがって、このガス化触媒担持石炭によれば、カルシウムが石炭表面に高濃度且つ均一に分散担持されている。
また、請求項4に記載のガス化触媒含有溶液は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上が溶解されているものである。したがって、このガス化触媒含有溶液によれば、カルシウムが溶液中に高濃度に溶解している。
さらに、請求項5に記載のガス化触媒含有溶液は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に、カルシウムが担持されている石炭の灰の前記カルシウムが溶解されているものである。したがって、このガス化触媒含有溶液によれば、カルシウムが溶液中に高濃度に溶解している。しかも、カルシウムが担持されている石炭の灰からカルシウムを回収しているので、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムといったカルシウム源物質を必要としない。
請求項1に記載のガス化触媒担持石炭の製造方法によれば、ガス化触媒として作用するカルシウムが高濃度に分散担持された触媒活性の高い石炭を製造することが可能となる。また、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣といった天然由来の原料から得られたバイオマス水溶性液を水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの溶解媒体として用いているので、環境汚染を引き起こすことなく低コストにガス化触媒担持石炭を製造することができる。
また、請求項2に記載のガス化触媒担持石炭の製造方法によれば、石炭にガス化触媒として担持されていたカルシウムを石炭の灰から回収して、このカルシウムを石炭に再担持することが可能となる。したがって、石炭の灰に含まれるカルシウムの再利用が可能となり、さらに低コストにガス化触媒担持石炭を製造することができる。
また、請求項3に記載のガス化触媒担持石炭は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に含まれる成分がカルシウムと共に担持されて、ガス化触媒であるカルシウムが高濃度且つ均一に石炭表面に分散担持されている。したがって、このガス化触媒担持石炭によれば、ガス化温度の低温化を図ることができ、石炭ガス化発電におけるエネルギー変換効率を高めることが可能となる。
さらに、請求項4に記載のガス化触媒含有溶液は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上が溶解されているものである。したがって、このガス化触媒含有溶液によれば、カルシウムが溶液中に高濃度に溶解しているので、このガス化触媒含有溶液を石炭と接触させた後に乾燥させるだけで、カルシウムが高濃度且つ均一に担持されたガス化触媒担持石炭を得ることが可能となる。
また、請求項5に記載のガス化触媒含有溶液は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に、カルシウムが担持されている石炭の灰のカルシウムが溶解されているものである。したがって、このガス化触媒含有溶液によれば、カルシウムが溶液中に高濃度に溶解しているので、このガス化触媒含有溶液を石炭と接触させた後に乾燥させるだけで、カルシウムが高濃度且つ均一に担持されたガス化触媒担持石炭を得ることが可能となる。しかも、カルシウムが担持されている石炭の灰からカルシウムを回収して用いることができ、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムといったカルシウム源物質を必要としないので、ガス化触媒含有溶液を低コストに提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上を溶解し、このバイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させるようにしている。
また、本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭の灰とを接触させてこのカルシウムをバイオマス水溶性液に溶解し、このバイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持するようにしている。
つまり、本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、酸性のバイオマス水溶性液に石炭のガス化触媒として機能するカルシウムを溶解させてガス化触媒含有溶液を調製し、ガス化触媒含有溶液を石炭と接触させることによって、ガス化触媒含有溶液に溶解しているカルシウムを石炭に分散担持し、ガス化触媒担持石炭を得るものである。
本発明に使用される木質系バイオマス原料としては、例えば、おがくず、樹皮、チップ、が挙げられる。より具体的には、杉チップ、杉バークなどが挙げられるが、炭化処理により酸性のバイオマス水溶性液が得られる木質系バイオマス原料であれば、これらに限定されない。
本発明に使用される草本系バイオマス原料としては、例えば、竹、籾殻、サトウキビ、稲わら、お茶滓が挙げられるが、炭化処理により酸性のバイオマス水溶性液が得られる草本系バイオマス原料であれば、これらに限定されない。
本発明に使用される植物由来の食品残渣としては、例えば、果実皮等の果実残渣、コーヒー焙煎滓等の植物種子由来の残渣が挙げられるが、炭化処理により酸性のバイオマス水溶性液が得られる植物由来の食品残渣であれば、これらに限定されない。
また、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のいずれかを炭化処理して得られる酸性のバイオマス水溶性液の少なくとも1種類を用いれば本発明の効果が奏されるのは勿論のこと、2種類以上組み合わせて用いるようにしてもよい。また、酸性のバイオマス水溶性液を採取する際に、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの2種類以上を同時に炭化処理して、酸性のバイオマス水溶性液を採取するようにしてもよい。尚、以下の説明では、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣を総称して「バイオマス原料」と呼ぶこととする。
バイオマス原料を炭化処理した際に発生する成分には、水溶性液体成分と、水に不溶性の粘度の高い重質成分(例えば、タール類等)とが含まれており、水溶性液体成分はガスの状態で発生する。このガス状の水溶性液体成分を凝集・捕捉することによって、酸性のバイオマス水溶性液を得ることができる。ここで、酸性のバイオマス水溶性液にタール類等の粘度の高い重質成分が含まれていると、酸性のバイオマス水溶性液を石炭(微粉炭)と接触させて乾燥させたときに、石炭が凝集して塊状となりやすくなり、ガス化炉内への石炭の供給に不都合が生じる虞がある。したがって、粘度の高い重質成分は、酸性のバイオマス水溶性液から分離する必要がある。以下、酸性のバイオマス水溶性液を回収する方法について図1に基づいて説明する。
図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1は、大まかには、炉心管3を有する電気炉2と、第一容器4と、第二容器5とにより構成される。そして、炉心管3と第一容器4とが配管7により連結され、第一容器4と第二容器5とが配管8により連結されている。
炉心管3を有する電気炉2では、バイオマス原料の炭化処理が行われる。バイオマス原料は無酸素条件下、例えば不活性ガス雰囲気中で300℃以上に加熱すると熱分解(炭化)する。この際に酸性のバイオマス水溶性成分のガスが発生する。
不活性ガスとしては、Ar等の希ガスや窒素ガス(N2)を用いることができるが、コストの面を考慮すると窒素ガスを用いることが好適である。
ここで、バイオマス原料の炭化処理の際の加熱温度の上限値については、500℃とすればバイオマス原料の熱分解が完全に完了するが、400℃〜450℃の温度範囲でバイオマス原料の熱分解はほとんど完了するので、酸性のバイオマス水溶性液を得る目的であれば、400℃〜450℃の温度範囲まで加熱すれば十分である。加熱時間については、炉内に装入されるバイオマス原料の量により適宜選択することができる。また、加熱方法については、電気炉の温度を室温として原料を装入した後、電気炉の温度を徐々に上げるようにしてもよいが、炉内の温度を400℃〜450℃に保って加熱することがより好適である。この場合には、電気炉の昇温に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
本実施形態において、バイオマス原料の熱分解装置は、炉心管3の形状を縦型とし、炉心管3の内部には、炉心管3に投入されるバイオマス原料を通過させることなく、バイオマス原料から発生するガスを十分に通過させ得る貫通孔を複数有する多孔板12を設けるようにしている。そして、電気炉2で炉心管3内を加熱しながら、不活性ガスを炉心管3の上部から供給することによって、熱分解の際に発生するガスが、配管7から第一容器4に向かって強制排気されるようにしている。
このように、炉心管3を縦型とし、配管7を第一容器4に対して下向きに配置することによって、熱分解の際に発生するガス等の成分が配管7から排出される前に配管7に付着して凝集するのを防ぐことができ、また、仮に配管7に付着して凝集したとしても、凝集物を第一容器4に重力により落下させて回収することができる。したがって、バイオマス原料を炭化処理することにより発生する成分を無駄なく回収して、酸性のバイオマス水溶性液の収量を高めることができる。
但し、バイオマス原料の熱分解装置は上記形態に限定されるものではなく、炉心管の形状を横型とした水平式電気炉や、300〜500℃で使用できる一般的な乾燥装置や、カーボナイザーなどを用いた場合にも、上記形態と比較して酸性のバイオマス水溶性液の収量が若干低下してしまうものの、酸性のバイオマス水溶性液を得ることは可能である。また、加熱方法についても、電気炉による加熱に限定されるものではなく、石炭ガス化発電システムの排熱を供給して、熱分解処理にかかる熱源を確保するようにしても良い。また、バイオマス水溶性液収集分離システム1において第二容器5から排気されるガスを燃料として熱源を確保するようにしてもよい。
配管7からの排出物は第一容器4に導入される。第一容器4は、保温ヒータ14により保温されている。保温ヒーター14の温度は、熱電対16により制御される。具体的には、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とを捕捉でき、且つ、水分が蒸発する温度、例えば配管8の導入部近傍の温度を100℃〜110℃に設定する。これにより、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とが第一容器4に回収されて、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが配管8に導入される。
尚、このように第一容器4に回収されるタール類等の重質成分と固形物から水分を十分に取り除くことによって、タール類等の重質成分と固形物の燃料としてのエネルギー密度を高めることができる。したがって、燃焼発電やボイラーの燃料として利用するのに好適なものとできると共に、輸送にかかるコストを低減し、ハンドリング性を向上させることも可能となる。
配管8からの排出物は、第二容器5に導入される。配管8には水循環方式の冷却装置15(例えば、リービッヒ冷却器)が備えられ、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが冷却されることによって、第二容器5に凝集物が回収される。この凝集物が酸性のバイオマス水溶性液である。尚、本実施形態では、配管8に冷却装置を備えるようにしているが、この形態に限定されるものではなく、第二容器5自体を冷却することによって、凝集物を捕捉して回収するようにしてもよい。また、配管8からのガス状の排出物を回収するための冷却温度は、0℃〜室温とすればよいが、この範囲よりもさらに冷却温度を低くして配管8からの排出物を回収するようにしてもよい。
第二容器5に回収されなかったガスは、燃料ガスとして石炭ガス化発電に供するようにしてもよい。また、上記したように、バイオマス原料の炭化処理の熱源用の燃料として用いるようにしてもよい。この場合は、バイオマス原料の炭化処理にかかるコストを節減して、バイオマス水溶性液の製造にかかるコストを低減することができる。
尚、本実施形態では、第一容器4と第二容器5とを備えて、第一容器4に固形物やタール類等の重質成分を回収し、第二容器5に酸性のバイオマス水溶性液を回収するようにしているが、この形態に限定されるものではない。例えば、第一容器4のみを備えて、第一容器4を0℃〜室温に冷却することにより、固形物やタール類等の重質成分と共に酸性のバイオマス水溶性液を第一容器4に回収し、回収物に固液分離処理と液液抽出処理を施して酸性のバイオマス水溶性液を分離回収するようにしてもよい。
採取されたバイオマス水溶性液には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を高濃度に溶解させることができる。水酸化カルシウムの溶解能力について一例を挙げると、水酸化カルシウムの水に対する溶解度は1.6g/L(20℃)であるのに対し、竹と籾殻から得られたpH2〜3のバイオマス水溶性液に対する溶解度は少なくとも20g/L(20℃)であった。つまり、水に対する溶解度よりも少なくとも10倍以上もの水酸化カルシウム溶解能を有していることになる。バイオマス水溶性液のこの特性を利用することで、ガス化触媒として作用するカルシウムを、石炭に高濃度且つ均一に担持することができる。つまり、1.6g/Lを超える量の水酸化カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解することで、水を水酸化カルシウムの溶解媒体として用いた従来の石炭へのカルシウムの担持方法により得られるカルシウム担持石炭よりも高い触媒活性を有するカルシウム担持石炭が得られる。
バイオマス水溶性液の酸性度については、pH7未満であれば、水よりもカルシウムの溶解度が高いので、1.6g/Lを超える量の水酸化カルシウムを溶解することができ、カルシウムを石炭に高濃度に担持することができる。そして、pHをさらに低いものとすることで、カルシウムの溶解度をさらに高めて、カルシウムを石炭にさらに高濃度に担持することができる。したがって、バイオマス水溶性液は、pH7未満で且つpHができるだけ低いものを用いることが好ましいと言えるが、竹と籾殻から得られたpH2〜3の水酸化カルシウムのバイオマス水溶性液を用いることで、ガス化速度の向上が十分に見込めることが本発明者の実験により確認されたことから、pHが2〜3のバイオマス水溶性液を用いれば十分に本発明の効果が得られる。
また、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭を燃焼あるいはガス化すると、石炭に担持されているカルシウムから酸化カルシウム(CaO)と炭酸カルシウム(CaCO3)とが生成される。本発明者の実験によれば、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭の燃焼後あるいはガス化後の灰をバイオマス水溶性液と接触させることで、このカルシウムを回収できることが確認されたことから、酸化カルシウムや炭酸カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解させてカルシウム担持石炭を得ることができる。また、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムのうちの2種類以上をバイオマス水溶性液に溶解させてカルシウム担持石炭を得ることも勿論可能である。
また、石炭をガス化する際に発生する二酸化炭素を回収する方法として、酸化カルシウムを二酸化炭素の吸収剤に用いる方法が知られている。この方法は、酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収することにより発生する炭酸カルシウムを、再生炉でさらに燃料を燃焼させることにより生じた熱で分解させ、二酸化炭素と酸化カルシウムに還元させるものである。つまり、この方法を用いる場合には、二酸化炭素の回収や、カルシウムの再生に熱が必要になる。ここで、炭酸カルシウムを酸性溶液中に添加すると、炭酸カルシウムが分解されて酸化カルシウムと二酸化炭素が発生する。したがって、本発明によれば、酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収することにより発生する炭酸カルシウムをバイオマス水溶性液に添加することで、カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解させて再利用することができると共に、二酸化炭素の回収を加熱することなく行うことができるので、二酸化炭素回収にかかる熱源を省略してさらに低コストにガス化触媒担持石炭を製造することができると共に、石炭ガス化発電システムにかかる総コストを低減することができる。
以降の説明では、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムを総称して「カルシウム源物質」と呼ぶこととする。
カルシウムを担持させるための原料石炭としては、石炭ガス化発電に供される一般的な微粉炭を使用することができ、石炭種は特に限定されない。また、平均粒径が100μm以下の微粉炭を使用することがカルシウムを高濃度に分散担持する上で好適ではあるが、この平均粒径範囲の微粉炭に限定されるものではない。
石炭へのカルシウムの担持は、本発明のガス化触媒含有溶液に石炭を接触させることにより行うことができる。ガス化触媒含有溶液とは、カルシウム源物質を溶解したバイオマス水溶性液である。この接触は、例えば、本発明のガス化触媒含有溶液を含浸液として、この含浸液に石炭を浸漬することにより行うことができる。
含浸液への石炭の浸漬は、ガス化処理に供される石炭の全量に対して行うことが好ましい。この場合には、ガス化触媒であるカルシウムを高濃度に、且つガス化処理に供される石炭の全量に担持されて、ガス化炉の操作条件を安定に保つことができる。また、石炭ガス化処理に供される石炭のうちの一部のみを含浸液に浸漬して、石炭全量に対するカルシウム担持量の平均値を高めるようにすることも可能である。ただし、この場合には、ガス化炉の操作条件を安定に保つ観点から、カルシウム担持炭とカルシウム非担持炭とを均一に混合することが好ましい。また、バイオマス水溶性液の原液を水で希釈してから石炭全量を含浸液に浸漬して、石炭の全量にカルシウムを担持することも可能である。
含浸液は、石炭の全量とほぼ等しい体積量とすることで、後の乾燥工程で必要となる熱量を抑えることができる。また、石炭の全量に対する含浸液の量を多めにして浸漬処理を行い、余剰分の含浸液ごと乾燥処理することで、乾燥工程で必要となる熱量は増加するが、石炭に担持されるカルシウムの量を増やすことが可能である。
尚、バイオマス水溶性液を含浸液とすることで、石炭の濡れ性が十分に確保される。したがって、石炭の表面全体に含浸液が接触してカルシウムを十分に担持させることができる。
ここで、上述した方法では、含浸液を予め調製してから石炭を浸漬しているが、この方法には限定されない。例えば、バイオマス水溶性液に石炭とカルシウム源物質を同時に添加するようにしてもよいし、バイオマス水溶性液に石炭を予め浸漬しておき、その後カルシウム源物質を添加するようにしてもよい。
また、含浸液に石炭を接触させる方法は、含浸液に石炭を浸漬する方法に限定されるものではない。例えば、含浸液を石炭に向流接触させる方法を採用してもよい。
含浸液を石炭に含浸させた後、乾燥処理を行う。この処理は例えば100℃以上の温度で加熱することにより行う。尚、触媒性能を最大限に発揮させて石炭ガス化処理の低温化を図る観点からは、乾燥処理により石炭中に含まれる水分をできるだけ除去することが好ましいが、石炭ガス化処理の低温化の効果が奏される範囲であれば、石炭中に水分が残留していてもよい。
石炭へのカルシウムの担持は、石炭中のイオン交換性官能基であるカルボキシル基(−COOH基)や水酸基(−OH基)等にカルシウムが結合することにより起こる。したがって、これらのイオン交換性官能基が消失する前、つまり、石炭を250℃以上で加熱する前に石炭へのカルシウムの担持を行うようにする。これらのイオン交換性官能基が消失するとカルシウムが石炭に担持され難くなり、触媒活性の向上が図り難くなる。
尚、本発明の効果は、酸性度の高い液体をカルシウム溶解媒体として用いたことのみから奏されるものではなく、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくとも1つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液を用いることにより奏される特有の効果である。即ち、本発明者は、水よりも酸性度の高い液体をカルシウム溶解媒体として使用することで、カルシウム源物質を高濃度に溶解させることができると考えた。但し、硫酸や硝酸のような無機酸を使用すると、ガス化触媒担持石炭をガス化した際に、硫黄酸化物や窒素酸化物が生成される虞があり、これを処理するための手段が必要になる。そこで、水よりも酸性度が高いpH4〜5の酢酸をカルシウム溶解媒体として使用することを考え、検討を行ったところ、予想に反する結果が得られた。即ち、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもむしろ石炭の触媒活性が低くなることが確認された。
このことから、本発明の効果は、バイオマス水溶性液のカルシウム源物質溶解能の高さのみから奏されるものではなく、バイオマス水溶性液に含まれる成分がカルシウムを石炭に安定に担持することができる作用と相俟って奏される効果であると考えられる。つまり、バイオマス水溶性液に含まれる酢酸とは別の1種以上の成分がカルシウムを石炭に安定に担持することに何らかの影響を及ぼしているものと考えられる。しかも、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくとも1つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液を用いることで、工業用の酸性試薬等を用いる場合と比較して大幅なコストダウンを図ることが可能となる。
また、バイオマス水溶性液は、石炭自体が有している触媒成分(灰成分)を溶け込ませて、この触媒成分を石炭表面に再担持する機能を有しており、この機能も相俟って優れたガス化反応速度向上効果が得られているものと考えられる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。この実施形態においては、木質系バイオマス原料及び草本系バイオマス原料のうちの少なくともいずれか一つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭の灰とを接触させて、このカルシウムをバイオマス水溶性液に溶解し、このバイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にカルシウムを担持させるようにしている。
カルシウムが担持されている石炭としては、上述した製造方法により得られたガス化触媒担持石炭を用いることができるのは勿論のこと、本発明とは異なる方法でカルシウムがガス化触媒として担持されている石炭を用いることもできる。本発明者の実験によれば、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭の灰をバイオマス水溶性液と接触させることで、石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムを回収できることが確認されていることから、カルシウムが担持されている石炭の灰をカルシウム源物質として用いることができる。したがって、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭の燃焼後あるいはガス化後に灰が発生する毎に、この灰からカルシウムを回収することにより、カルシウムを再利用し続けることができる。つまり、水酸化カルシウム等のカルシウム源物質を新たに準備することなく、石炭の燃焼後あるいはガス化後の灰に含まれるカルシウムを回収して繰り返し利用することができ、コスト低減を図ることができる。
尚、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、オートクレーブを用いたバッチ式の水熱反応に木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣を供することにより得られる反応生成液物を液液分離して得られた水溶性成分をカルシウム源物質の溶解媒体として使用することも可能である。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
草本系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、各種検討を行った。
草本系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、各種検討を行った。
(1)草本系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離
草本系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図10に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1aにより行った。
草本系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図10に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1aにより行った。
図10に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1aは、横型の炉心管3を有する水平式電気炉2と、第一容器4と、第二容器5と、第三容器6とにより構成した。第一容器4は炉心管3から発生したガスを凝集物として捕捉するものであり、氷槽4’に設置した。第二容器5は、第一容器4を通過したガスを凝集物として捕捉するものであり、ドライアイスメタノール槽5’に設置した。第三容器6は、第二容器5を通過したガスを第三容器6内に入れた氷水にバブリングして捕捉するものである。炉心管3と第一容器4、第一容器4と第二容器5、第二容器5と第三容器6とは、それぞれ、配管7,8,9により連結した。
本実施例では、草本系の植物由来バイオマス原料である竹(日本産)並びに籾殻(日本産)の粉末を用いて竹由来のバイオマス水溶性液と籾殻由来のバイオマス水溶性液をそれぞれ生成した。原料である竹の粉末10gを電気炉2の炉心管3内に装入した。電気炉2の昇温速度は6℃/minとし、初期温度を室温として、500℃まで昇温した。炉心管3をアルゴン雰囲気(流量1000cc/min)として、バイオマス原料粉末を炭化処理した。炭化処理中に発生したガスは氷槽4’内に設置された第一容器4並びにドライアイス−メタノール槽5’内に設置された第二容器5に捕捉し、固体成分やタール等の重質成分を除いて竹由来のバイオマス水溶性液として実験に供した。更に第三容器6の中の氷水にガスをバブリングし、第一容器4と第二容器5で捕捉されなかった低沸点の有機成分を捕捉し、これをバブリング液として実験に供した。同様に、籾殻の粉末10gを原料として、バイオマス水溶性液を得、これを籾殻由来のバイオマス水溶性液として実験に供した。
これらのバイオマス水溶性液のpHは2〜3であった。また、これらのバイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は少なくとも20g/L以上であることが確認された。水酸化カルシウムの水への溶解度は1.6g/L(20℃)であることから、バイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は水への溶解度の10倍以上であることが明らかとなった。
(2)石炭へのカルシウム担持及びチャー調製
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーA〜Hを得た。表1に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。ここで、表1における「カルシウム溶解媒体」とは、水酸化カルシウムを溶解する液を意味している。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを約10体積%添加した。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。また、参照試料として、含浸処理していない大柳塔微粉炭とキデコ微粉炭をチャー調製し、それぞれチャーI、チャーJを得た。尚、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを添加したが、後に本願発明者が検討を行ったところ、メタノール等の有機溶媒を添加して微粉炭の濡れ性を高める処理を行わなくても、バイオマス水溶性液単独で十分に微粉炭の濡れ性が確保できることが明らかとなった。したがって、石炭の濡れ性を高めるためにメタノール等の有機溶媒を添加を行う必要はない。
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーA〜Hを得た。表1に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。ここで、表1における「カルシウム溶解媒体」とは、水酸化カルシウムを溶解する液を意味している。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを約10体積%添加した。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。また、参照試料として、含浸処理していない大柳塔微粉炭とキデコ微粉炭をチャー調製し、それぞれチャーI、チャーJを得た。尚、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを添加したが、後に本願発明者が検討を行ったところ、メタノール等の有機溶媒を添加して微粉炭の濡れ性を高める処理を行わなくても、バイオマス水溶性液単独で十分に微粉炭の濡れ性が確保できることが明らかとなった。したがって、石炭の濡れ性を高めるためにメタノール等の有機溶媒を添加を行う必要はない。
(3)チャーのガス化反応速度測定
チャーのガス化反応速度の測定は、上皿式熱天秤(装置名:TGA−DTA2000S、マック・サイエンス社製)を用いて定温測定法により行った。5mmφのセル中にチャーを5mg装入し、アルゴン雰囲気下(450cc/min)、昇温速度15℃/minで850℃まで昇温した。そして、850℃に維持したまま、アルゴンの供給を止めて、炭酸ガスを450cc/minで供給し、100%のガス化剤濃度でチャーのガス化を進行させて、時刻Tにおけるチャーの重量減少量をモニタリングした。
チャーのガス化反応速度の測定は、上皿式熱天秤(装置名:TGA−DTA2000S、マック・サイエンス社製)を用いて定温測定法により行った。5mmφのセル中にチャーを5mg装入し、アルゴン雰囲気下(450cc/min)、昇温速度15℃/minで850℃まで昇温した。そして、850℃に維持したまま、アルゴンの供給を止めて、炭酸ガスを450cc/minで供給し、100%のガス化剤濃度でチャーのガス化を進行させて、時刻Tにおけるチャーの重量減少量をモニタリングした。
ガス化反応率xとガス化反応速度rは図2に示すTG曲線により定義した。即ち、重量減少が始まった時刻T1から重量減少が見られなくなった時間T2までの重量減少量をW0とし、各時刻Tでの重量減少量をWとした。そして、ガス化反応率xは数式1により求めた。ガス化反応速度rは、数式2に示す反応率の時間微分より求めた。
[数式1]x=W/W0
[数式2]r=dx/dt=(dW/dt)/W0
[数式1]x=W/W0
[数式2]r=dx/dt=(dW/dt)/W0
(4)カルシウム溶解媒体によるガス化性能への影響の検討
チャーA、F、G、H及びIのガス化反応速度測定を行い、カルシウム溶解媒体によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図3に示す。aはチャーI(含浸処理なし)、bはチャーF(カルシウム溶解媒体:酢酸)、cはチャーG(カルシウム溶解媒体:バブリング液)、dはチャーH(カルシウム溶解媒体:水)、eはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、ガス化反応速度rを比較し易くするため、図4に反応時間Tに対するガス化反応率xを示す。反応終了までに要した時間が最も短かったのがeであり、次いで、c、d、b、aとなった。この結果から、竹由来バイオマス水溶性液をカルシウム溶解媒体として使用した場合は、原炭と比較して3〜4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。また、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合と比較しても2倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。さらに、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認された。この原因の一つとして、以下のことが考えられる。即ち、カルシウム溶解媒体として酢酸を用いてカルシウム担持石炭を製造した際、乾燥処理に用いた容器の内壁に白い付着物が確認された。これは、水酸化カルシウムと酢酸が反応して生成した酢酸カルシウムのカルシウム溶解媒体への溶解度が、乾燥処理の際の温度上昇に伴って減少し、さらに、乾燥処理の際の温度上昇により何らかの化学反応が生じてカルシウムが析出することにより、乾燥後の石炭へのカルシウム実担持量が水をカルシウム溶解媒体として用いた場合よりも低かったことに起因するものと考えられる。以上の結果から、カルシウム溶解媒体として竹由来バイオマス水溶性液を使用した場合、最も触媒活性を向上させることが可能なことが示された。また、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認されたことから、カルシウム溶解媒体として単に酸性度の高い液体を用いるだけでは石炭の触媒活性を高めることができないことが明らかとなった。
チャーA、F、G、H及びIのガス化反応速度測定を行い、カルシウム溶解媒体によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図3に示す。aはチャーI(含浸処理なし)、bはチャーF(カルシウム溶解媒体:酢酸)、cはチャーG(カルシウム溶解媒体:バブリング液)、dはチャーH(カルシウム溶解媒体:水)、eはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、ガス化反応速度rを比較し易くするため、図4に反応時間Tに対するガス化反応率xを示す。反応終了までに要した時間が最も短かったのがeであり、次いで、c、d、b、aとなった。この結果から、竹由来バイオマス水溶性液をカルシウム溶解媒体として使用した場合は、原炭と比較して3〜4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。また、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合と比較しても2倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。さらに、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認された。この原因の一つとして、以下のことが考えられる。即ち、カルシウム溶解媒体として酢酸を用いてカルシウム担持石炭を製造した際、乾燥処理に用いた容器の内壁に白い付着物が確認された。これは、水酸化カルシウムと酢酸が反応して生成した酢酸カルシウムのカルシウム溶解媒体への溶解度が、乾燥処理の際の温度上昇に伴って減少し、さらに、乾燥処理の際の温度上昇により何らかの化学反応が生じてカルシウムが析出することにより、乾燥後の石炭へのカルシウム実担持量が水をカルシウム溶解媒体として用いた場合よりも低かったことに起因するものと考えられる。以上の結果から、カルシウム溶解媒体として竹由来バイオマス水溶性液を使用した場合、最も触媒活性を向上させることが可能なことが示された。また、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認されたことから、カルシウム溶解媒体として単に酸性度の高い液体を用いるだけでは石炭の触媒活性を高めることができないことが明らかとなった。
(5)石炭へのカルシウム担持量によるガス化性能への影響の検討
チャーB、C、D及びJのガス化反応速度測定を行い、水酸化カルシウム添加量によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図5に示す。aはチャーJ(水酸化カルシウム添加無し)、bはチャーB(水酸化カルシウム5mg添加)、cはチャーC(水酸化カルシウム10mg添加)、dはチャーD(水酸化カルシウム20mg添加)の測定結果を示している。水酸化カルシウムの添加量の増加に伴って、チャーのガス化反応速度も向上し、水酸化カルシウム20mg添加した場合に至っては、原炭と比較して4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。
チャーB、C、D及びJのガス化反応速度測定を行い、水酸化カルシウム添加量によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図5に示す。aはチャーJ(水酸化カルシウム添加無し)、bはチャーB(水酸化カルシウム5mg添加)、cはチャーC(水酸化カルシウム10mg添加)、dはチャーD(水酸化カルシウム20mg添加)の測定結果を示している。水酸化カルシウムの添加量の増加に伴って、チャーのガス化反応速度も向上し、水酸化カルシウム20mg添加した場合に至っては、原炭と比較して4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。
(6)バイオマス原料種によるガス化性能への影響の検討
チャーA及びEのガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図6に示す。aはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、bはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。aとbの結果から、草本系バイオマス原料である竹と籾殻のどちらを用いても、両者のガス化反応速度に差異が見られないことが確認された。
チャーA及びEのガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図6に示す。aはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、bはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。aとbの結果から、草本系バイオマス原料である竹と籾殻のどちらを用いても、両者のガス化反応速度に差異が見られないことが確認された。
(7)カルシウム担持炭の生成灰からのカルシウムの回収及び再生利用の検討
1mlの竹由来バイオマス水溶性液に10mgの水酸化カルシウムを溶解させ、この溶液に100mgのキデコ微粉炭を加え含浸処理した後、107℃で乾燥後空気中で燃焼させた。燃焼後の生成灰全量を1mlの竹由来バイオマス水溶性液に加え、さらに100mgのキデコ微粉炭を加え含浸処理し、107℃で乾燥後チャー調製を行った。チャー調製は上記(2)と同条件で行った。この二次カルシウム担持チャーのガス化反応性をチャーCのガス化反応性と比較した。結果を図7に示す。aはチャーJ、bは二次カルシウム担持チャー、cはチャーCの測定結果を示している。bとcの測定結果を比較すると、ガス化反応性にほとんど差が見られなかったことから、石炭の燃焼灰からガス化触媒として担持されていたカルシウムの全量を回収して再利用できることが明らかとなった。
1mlの竹由来バイオマス水溶性液に10mgの水酸化カルシウムを溶解させ、この溶液に100mgのキデコ微粉炭を加え含浸処理した後、107℃で乾燥後空気中で燃焼させた。燃焼後の生成灰全量を1mlの竹由来バイオマス水溶性液に加え、さらに100mgのキデコ微粉炭を加え含浸処理し、107℃で乾燥後チャー調製を行った。チャー調製は上記(2)と同条件で行った。この二次カルシウム担持チャーのガス化反応性をチャーCのガス化反応性と比較した。結果を図7に示す。aはチャーJ、bは二次カルシウム担持チャー、cはチャーCの測定結果を示している。bとcの測定結果を比較すると、ガス化反応性にほとんど差が見られなかったことから、石炭の燃焼灰からガス化触媒として担持されていたカルシウムの全量を回収して再利用できることが明らかとなった。
石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムは、燃焼反応あるいはガス化反応により、酸化カルシウムと炭酸カルシウムに形態が変化する。したがって、石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムは、酸化カルシウムと炭酸カルシウムの形態でカルシウム溶解媒体である竹由来バイオマス水溶性液に溶解したと考えられる。つまり、カルシウム源物質として、酸化カルシウムと炭酸カルシウムを利用することも可能である。
(実施例2)
木質系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣から得られるバイオマス水溶性液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、検討を行った。
木質系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣から得られるバイオマス水溶性液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、検討を行った。
(1)木質系バイオマス原料と植物由来の食品残渣からのバイオマス水溶性液の収集分離
木質系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bにより行った。
木質系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bにより行った。
図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bは、図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システムとほぼ同様の構成を採っているが、第二容器5の後段に第三容器6を備えている点で図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システムとはその構成を異にしている。即ち、炉心管3を有する電気炉2と、第一容器4と、第二容器5と、第三容器6とにより構成され、炉心管3と第一容器4、第一容器4と第二容器5、第二容器5と第三容器6とは、それぞれ、配管7,8,9により連結されている。
炉心管3の形状は縦型とし、炉心管3の内部には、複数の貫通孔を有する多孔板(目皿)12と石英ウール13とを配置して、炉心管3に投入されるバイオマス原料が炉心管3内で保持されるようにした。そして、不活性ガスを炉心管3の上部から供給することによって、炭化処理の際に発生するガスが、配管7から第一容器4に向かって強制排気されるようにした。
配管7からの排出物は第一容器4に導入されるようにして、第一容器4を保温ヒータ14により保温した。保温ヒーター14の温度は、熱電対16により制御し、配管8の導入部近傍の温度を100℃〜110℃に設定した。これにより、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とを第一容器4に回収し、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが配管8に導入されるようにした。
配管8からの排出物は、第二容器5に導入されるようにした。配管8には水循環方式の冷却装置であるリービッヒ冷却器15を備えて、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とを冷却して、第二容器5に凝集物を回収した。
配管9には、第二容器5で回収されなかった低沸点の有機成分が導入されるようにした。第三容器6には水を入れておき、配管9から排出されるガスをバブリングすることによって、低沸点の有機成分を回収するようにした。
本実施例では、木質系のバイオマス原料である杉チップ(日本産)、杉バーク(日本産)並びにオレンジ皮を用いて杉チップ由来のバイオマス水溶性液、杉バーク由来のバイオマス水溶性液及びオレンジ皮由来のバイオマス水溶性液をそれぞれ生成した。原料である杉チップ10gを電気炉2の炉心管3内に投入した。尚、杉チップの投入は、電気炉2の炉内温度を500℃に設定した状態で行った。炉心管3を窒素雰囲気(流量1000cc/min)として、バイオマス原料粉末を炭化処理した。炭化処理中に発生したガスは第一容器4と第二容器5と第三容器6とに回収し、第二容器5に回収された凝集物を杉チップ由来のバイオマス水溶性液として使用した。
同様に、杉バーク10gを原料として杉バーク由来のバイオマス水溶性液を得、オレンジ皮10gを原料としてオレンジ皮由来のバイオマス水溶性液を得た。これらのバイオマス水溶性液のpHは2〜3であった。また、これらのバイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は少なくとも20g/L以上であることが確認された。水酸化カルシウムの水への溶解度は1.6g/L(20℃)であることから、バイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は水への溶解度の10倍以上であることが明らかとなった。つまり、木質系のバイオマス原料を用いた場合や、植物由来の食品残渣を用いた場合であっても、草本系のバイオマス原料を用いた場合と同様の性質を有するバイオマス水溶性液が得られることが確認された。
(2)石炭へのカルシウム担持及びチャー調製
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーK〜Mを得た。表2に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性が十分に確保できたので、微粉炭の濡れ性を高めるためのメタノールの添加は行わなかった。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーK〜Mを得た。表2に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性が十分に確保できたので、微粉炭の濡れ性を高めるためのメタノールの添加は行わなかった。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。
(3)チャーのガス化反応速度測定
実施例1と同様の方法により行った。
実施例1と同様の方法により行った。
(4)バイオマス原料種によるガス化性能への影響の検討
チャーK〜Mについてガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図8に示す。図8において、aはチャーK(カルシウム溶解媒体:杉チップ由来バイオマス水溶性液)、bはチャーL(カルシウム溶解媒体:杉バーク由来バイオマス水溶性液)、cはチャーM(カルシウム溶解媒体:オレンジ皮由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、d〜fは実施例1で得られた結果であり、a〜cの測定結果と比較する為に図8に掲載した。即ち、dはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、eはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)、fはチャーI(含浸処理なし)の測定結果である。
チャーK〜Mについてガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図8に示す。図8において、aはチャーK(カルシウム溶解媒体:杉チップ由来バイオマス水溶性液)、bはチャーL(カルシウム溶解媒体:杉バーク由来バイオマス水溶性液)、cはチャーM(カルシウム溶解媒体:オレンジ皮由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、d〜fは実施例1で得られた結果であり、a〜cの測定結果と比較する為に図8に掲載した。即ち、dはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、eはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)、fはチャーI(含浸処理なし)の測定結果である。
図8に示す結果から、杉チップ由来バイオマス水溶性液、杉バーク由来バイオマス水溶性液及びオレンジ皮由来バイオマス水溶性液のガス化反応速度と、竹由来バイオマス水溶性液及び籾殻由来バイオマス水溶性液のガス化反応速度との間には、ほとんど差が見られなかった。したがって、木質系バイオマス原料と果実皮等の植物由来の食品残渣から得られるバイオマス水溶性液を用いた場合にも、草本系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液を用いた場合と同様の効果が得られることが明らかとなった。
(実施例3)
籾殻由来バイオマス水溶性液と杉チップ由来バイオマス水溶性液とを用いて、バイオマス水溶性液そのものが石炭に与える影響について検討した。
籾殻由来バイオマス水溶性液と杉チップ由来バイオマス水溶性液とを用いて、バイオマス水溶性液そのものが石炭に与える影響について検討した。
杉チップ由来バイオマス水溶性液は実施例2で得られたものを使用した。籾殻由来バイオマス水溶性液は図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bを用い、杉チップ由来バイオマス水溶性液と同様の方法で得られたものを使用した。
籾殻由来バイオマス水溶性液0.5mlに対し、大柳塔微粉炭100mgを加えて、一晩(12時間)含浸した後、107℃で乾燥して、実施例1の(2)と同様の方法でチャー調製を行った。杉チップ由来バイオマス水溶性液についても同様の処理を行った。籾殻由来バイオマス水溶性液を用いて得られたチャーを試料Xと呼び、杉チップ由来バイオマス水溶性液を用いて得られたチャーを試料Yと呼ぶ。
また、籾殻をバイオマス原料とし、図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bを用いて第一容器4〜第三容器6に回収される凝集物すべてを回収し、これを107℃で乾燥して、実施例1の(2)と同様の方法でチャー調製を行った。このチャーを試料Zと呼ぶ。
試料X〜Zについて、実施例1と同様の方法によりガス化反応速度の測定を行った。測定結果を図9に示す。尚、図9には比較試料として未処理の大柳塔微粉炭チャーのガス化反応速度を測定した結果を試料Aとして掲載した。
図9に示す結果から、バイオマス水溶性液により微粉炭を含浸するだけで、未処理の微粉炭チャーと比較してガス化反応速度が2倍程度向上することが明らかとなった。ここで、籾殻のみから調製したチャーである試料Zについては、未処理の微粉炭チャーよりもガス化反応速度が遅かったことから、バイオマス水溶性液に含まれる成分そのものがガス化反応速度を高める要因にはなっていないことが考えられた。
したがって、バイオマス水溶性液によりガス化反応速度が高まる要因は以下のように考えることができる。即ち、バイオマス水溶性液に微粉炭を含浸した際に、微粉炭自体に元来含まれる触媒成分がバイオマス水溶性液に溶け出し、この触媒成分が微粉炭表面に再担持されることによって、ガス化反応速度が高まったものと考えられる。
つまり、本発明によれば、バイオマス水溶性液にガス化触媒であるカルシウムを高濃度に溶解させて微粉炭にカルシウムを高濃度に担持させる効果と、微粉炭自体が有している触媒成分がバイオマス水溶性液に溶け込んで、この触媒成分が微粉炭表面に再担持される効果とが相俟って、優れたガス化反応速度向上効果が得られる。
Claims (5)
- 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上を溶解し、前記バイオマス水溶性液を石炭と接触させて前記石炭にカルシウムを担持することを特徴とするガス化触媒担持石炭の製造方法。
- 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液とカルシウムが担持されている石炭の灰とを接触させて前記カルシウムを前記バイオマス水溶性液に溶解し、前記バイオマス水溶性液を石炭と接触させて前記石炭に前記カルシウムを担持することを特徴とするガス化触媒担持石炭の製造方法。
- 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に含まれる成分がカルシウムと共に担持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法により得られるガス化触媒担持石炭。
- 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの群からなる1種または2種以上が溶解されているものであるガス化触媒含有溶液。
- 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に、カルシウムが担持されている石炭の灰の前記カルシウムが溶解されているものであるガス化触媒含有溶液。
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