JP5523682B2 - バイオマス灰を利用したガス化触媒担持石炭の製造方法 - Google Patents

バイオマス灰を利用したガス化触媒担持石炭の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はバイオマス灰を利用したガス化触媒担持石炭の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、バイオマス灰を利用して石炭ガス化に供するのに好適な高触媒活性を有する石炭を製造する方法に関する。
石炭ガス化複合発電は、高効率且つ環境性に優れた発電システムとして早期実用化が期待されている。近年、この石炭ガス化複合発電の実用化に向けて、種々の研究が行われている。
このような研究の一つとして、石炭にガス化触媒を担持させて石炭のガス化反応性を高めることにより、ガス化温度の低温化を図ってエネルギー変換効率を向上させる試みがなされている。例えば特許文献1では、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩もしくは塩化物、アルカリ土類金属の炭酸塩もしくは塩化物、並びに遷移金属の塩化物等をガス化触媒物質とし、これらのガス化触媒物質を溶解した水溶液を石炭粒子に含浸させ乾燥させることにより、触媒物質を石炭粒子に担持させて、石炭ガス化温度の低温化を図ることが提案されている。
また、非特許文献1では、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液を石炭に含浸させ乾燥させることにより、ナトリウムやカリウムをガス化触媒として石炭に担持させる技術が開示されている。
さらに、非特許文献1では、水に水酸化カルシウムを溶解して水酸化カルシウム水溶液を得、この水溶液に石炭を含浸させ乾燥させることにより、カルシウムをガス化触媒として石炭に担持させる技術が開示されている。
特開平7−207284 Exxon Research and Engineering Company USA , Fuel 1982, 61, 620-626.
しかしながら、特許文献1や非特許文献1において開示されている技術のように、ナトリウムやカリウム、カルシウムを含む工業用試薬をガス化触媒として利用した場合、ガス化触媒担持石炭の製造にかかるコストが上昇し、その結果として石炭ガス化発電にかかるコストが上昇してしまう問題がある。
また、水酸化カルシウム水溶液に石炭を含浸させ乾燥させることにより石炭にカルシウムを担持させる非特許文献1に開示された方法では、カルシウムを極少量しか石炭に担持することができず、石炭の触媒活性の大幅な向上は見込めない。
即ち、石炭ガス化発電の普及に向けて、石炭ガス化発電にかかるコストを低減しながらも高触媒活性を有する石炭を製造する技術の確立が望まれている。
そこで、本発明は、ガス化触媒担持石炭の製造にかかるコストを低減しながらも、ガス化触媒を石炭に高濃度に担持することのできるガス化触媒担持石炭の製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者は、水酸化カルシウム水溶液を用いた非特許文献1の方法によりカルシウムを石炭に高濃度に担持できない原因は、水酸化カルシウムの水に対する溶解度が1.6g/L(20℃)と非常に低いことにあると考え、水酸化カルシウムを高濃度に溶解する液体について検討を行った。その結果、草本系のバイオマス原料である竹や籾殻を炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に対する水酸化カルシウムの溶解度が水に対する溶解度と比較して非常に高いことを見出した。
次に、本願発明者は、水酸化カルシウムのような工業用試薬に代わるガス化触媒抽出源について種々検討した。その結果、バイオマスの灰を上記酸性のバイオマス水溶性液と接触させて、バイオマスの灰に含まれる成分を溶解した後、このバイオマス水溶性液を微粉炭と接触させてガス化触媒担持微粉炭を製造したところ、原炭と比較してガス化反応速度が向上することを見出した。そこでさらに種々検討した結果、実験に使用したバイオマス灰には、ガス化触媒元素として少なくともカリウムが含まれていること、及びカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%であることが判明し、ガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%以上であるバイオマスの灰をガス化触媒抽出源として利用できることを知見し、本願発明に至った。
かかる知見に基づく本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液と、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%以上であるバイオマス灰とを接触させてバイオマス灰に含まれるガス化触媒元素をバイオマス水溶性液に溶解し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にガス化触媒元素を担持するようにしている。尚、バイオマス灰のカリウムの含有量はK O換算で13wt%とすることがより好ましい。
木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液には、バイオマス灰に含まれるガス化触媒元素が高濃度に溶解する。したがって、ガス化触媒を高濃度に溶解したバイオマス水溶性液を石炭と接触させて、ガス化触媒が高濃度に分散担持された石炭を製造することができる。
また、本発明のガス化触媒含有溶液は、石炭へのガス化触媒担持用のガス化触媒含有溶液であり、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%であるバイオマス灰のガス化触媒元素が溶解されているものである。したがって、このガス化触媒含有溶液によれば、ガス化触媒元素が溶液中に高濃度に溶解している。尚、バイオマス灰のカリウムの含有量はK O換算で13wt%とすることがより好ましい。
本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法によれば、ガス化触媒元素が高濃度に分散担持された触媒活性の高い石炭を製造することが可能となる。しかも、バイオマス灰という廃棄物に含まれるガス化触媒元素を利用するようにしているので、ガス化触媒元素を含む工業用試薬を利用してガス化触媒担持石炭を製造する場合と比較して格段に低コストにガス化触媒担持石炭を製造することができる。また、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣といった天然由来の原料から得られたバイオマス水溶性液を溶解媒体として用いているので、環境汚染を引き起こすことなく低コストにガス化触媒担持石炭を製造することができる。
本発明のガス化触媒含有溶液によれば、ガス化触媒元素が溶液中に高濃度に溶解しているので、このガス化触媒含有溶液を石炭と接触させた後に乾燥させるだけで、ガス化触媒元素が高濃度且つ安定に担持されたガス化触媒担持石炭を得ることが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液と、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%以上であるバイオマス灰とを接触させてバイオマス灰に含まれるガス化触媒元素をバイオマス水溶性液に溶解し、バイオマス水溶性液を石炭と接触させて石炭にガス化触媒元素を担持するようにしている。
つまり、本発明のガス化触媒担持石炭の製造方法は、酸性のバイオマス水溶性液に石炭のガス化触媒として機能する元素を溶解させてガス化触媒含有溶液を調製し、ガス化触媒含有溶液を石炭と接触させることによって、ガス化触媒含有溶液に溶解しているガス化触媒元素を石炭に分散担持し、ガス化触媒担持石炭を得るものである。
本発明に使用される木質系バイオマス原料としては、例えば、おがくず、樹皮、チップ、が挙げられる。より具体的には、杉チップ、杉バークなどが挙げられるが、酸性のバイオマス水溶性液が得られる木質系バイオマス原料であれば、これらに限定されない。
本発明に使用される草本系バイオマス原料としては、例えば、竹、籾殻、サトウキビ、稲わら、お茶滓が挙げられるが、酸性のバイオマス水溶性液が得られる草本系バイオマス原料であれば、これらに限定されない。
本発明に使用される植物由来の食品残渣としては、例えば、果実皮等の果実残渣、コーヒー焙煎滓等の植物種子由来の残渣が挙げられるが、酸性のバイオマス水溶性液が得られる植物由来の食品残渣であれば、これらに限定されない。
また、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のいずれかを炭化処理して得られる酸性のバイオマス水溶性液の少なくとも1種類を用いれば本発明の効果が奏されるのは勿論のこと、2種類以上組み合わせて用いるようにしてもよい。また、酸性のバイオマス水溶性液を採取する際に、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの2種類以上を同時に炭化処理して、酸性のバイオマス水溶性液を採取するようにしてもよい。尚、以下の説明では、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣を総称して「バイオマス原料」と呼ぶこととする。
酸性のバイオマス水溶性液は、バイオマス原料を炭化処理する際に発生するガスを回収することにより得られる。但し、バイオマス原料を炭化処理した際に発生する成分には、水溶性液体成分と、水に不溶性の粘度の高い重質成分(例えば、タール類等)とが含まれており、水溶性液体成分はガスの状態で発生する。このガス状の水溶性液体成分を凝集・捕捉することによって、酸性のバイオマス水溶性液を得ることができる。ここで、酸性のバイオマス水溶性液にタール類等の粘度の高い重質成分が含まれていると、酸性のバイオマス水溶性液を石炭(微粉炭)と接触させて乾燥させたときに、石炭が凝集して塊状となりやすくなり、ガス化炉内への石炭の供給に不都合が生じる虞がある。したがって、粘度の高い重質成分は、酸性のバイオマス水溶性液から分離する必要がある。以下、酸性のバイオマス水溶性液を回収する方法について図1に基づいて説明する。
図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1は、大まかには、炉心管3を有する電気炉2と、第一容器4と、第二容器5とにより構成される。そして、炉心管3と第一容器4とが配管7により連結され、第一容器4と第二容器5とが配管8により連結されている。
炉心管3を有する電気炉2では、バイオマス原料の炭化処理が行われる。バイオマス原料は無酸素条件下、例えば不活性ガス雰囲気中で300℃以上に加熱すると熱分解(炭化)する。この際に酸性のバイオマス水溶性成分のガスが発生する。
不活性ガスとしては、Ar等の希ガスや窒素ガス(N)を用いることができるが、コストの面を考慮すると窒素ガスを用いることが好適である。
ここで、バイオマス原料の炭化処理の際の加熱温度の上限値については、500℃とすればバイオマス原料の熱分解が完全に完了するが、400℃〜450℃の温度範囲でバイオマス原料の熱分解はほとんど完了するので、酸性のバイオマス水溶性液を得る目的であれば、400℃〜450℃の温度範囲まで加熱すれば十分である。加熱時間については、炉内に装入されるバイオマス原料の量により適宜選択することができる。また、加熱方法については、電気炉の温度を室温として原料を装入した後、電気炉の温度を徐々に上げるようにしてもよいが、炉内の温度を400℃〜450℃に保って加熱することがより好適である。この場合には、電気炉の昇温に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
本実施形態において、バイオマス原料の熱分解装置は、炉心管3の形状を縦型とし、炉心管3の内部には、炉心管3に投入されるバイオマス原料を通過させることなく、バイオマス原料から発生するガスを十分に通過させ得る貫通孔を有する多孔板12を設けるようにしている。そして、電気炉2で炉心管3内を加熱しながら、不活性ガスを炉心管3の上部から供給することによって、熱分解の際に発生するガスが、配管7から第一容器4に向かって強制排気されるようにしている。
このように、炉心管3を縦型とし、配管7を第一容器4に対して下向きに配置することによって、熱分解の際に発生するガス等の成分が配管7から排出される前に配管7に付着して凝集するのを防ぐことができ、また、仮に配管7に付着して凝集したとしても、凝集物を第一容器4に重力により落下させて回収することができる。したがって、バイオマス原料を炭化処理することにより発生する成分を無駄なく回収して、酸性のバイオマス水溶性液の収量を高めることができる。
但し、バイオマス原料の熱分解装置は上記形態に限定されるものではなく、炉心管の形状を横型とした水平式電気炉や、300〜500℃で使用できる一般的な乾燥装置や、カーボナイザーなどを用いた場合にも、上記形態と比較して酸性のバイオマス水溶性液の収量が若干低下してしまうものの、酸性のバイオマス水溶性液を得ることは可能である。また、加熱方法についても、電気炉による加熱に限定されるものではなく、石炭ガス化発電システムの排熱を供給して、熱分解処理にかかる熱源を確保するようにしても良い。また、バイオマス水溶性液収集分離システム1において第二容器5から排気されるガスを燃料として熱源を確保するようにしてもよい。
配管7からの排出物は第一容器4に導入される。第一容器4は、保温ヒータ14により保温されている。保温ヒーター14の温度は、熱電対16により制御される。具体的には、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とを捕捉でき、且つ、水分が蒸発する温度、例えば配管8の導入部近傍の温度を100℃〜110℃に設定する。これにより、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とが第一容器4に回収されて、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが配管8に導入される。
尚、このように第一容器4に回収されるタール類等の重質成分と固形物から水分を十分に取り除くことによって、タール類等の重質成分と固形物の燃料としてのエネルギー密度を高めることができる。したがって、燃焼発電やボイラーの燃料として利用するのに好適なものとできると共に、輸送にかかるコストを低減し、ハンドリング性を向上させることも可能となる。
配管8からの排出物は、第二容器5に導入される。配管8には水循環方式の冷却装置15(例えば、リービッヒ冷却器)が備えられ、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが冷却されることによって、第二容器5に凝集物が回収される。この凝集物が酸性のバイオマス水溶性液である。尚、本実施形態では、配管8に冷却装置を備えるようにしているが、この形態に限定されるものではなく、第二容器5自体を冷却することによって、凝集物を捕捉して回収するようにしてもよい。また、配管8からのガス状の排出物を回収するための冷却温度は、0℃〜室温とすればよいが、この範囲よりもさらに冷却温度を低くして配管8からの排出物を回収するようにしてもよい。
第二容器5に回収されなかったガスは、燃料ガスとして石炭ガス化発電に供するようにしてもよい。また、上記したように、バイオマス原料の炭化処理の熱源用の燃料として用いるようにしてもよい。この場合は、バイオマス原料の炭化処理にかかるコストを節減して、バイオマス水溶性液の製造にかかるコストを低減することができる。
尚、本実施形態では、第一容器4と第二容器5とを備えて、第一容器4に固形物やタール類等の重質成分を回収し、第二容器5に酸性のバイオマス水溶性液を回収するようにしているが、この形態に限定されるものではない。例えば、第一容器4のみを備えて、第一容器4を0℃〜室温に冷却することにより、固形物やタール類等の重質成分と共に酸性のバイオマス水溶性液を第一容器4に回収し、回収物に固液分離処理と液液抽出処理を施して酸性のバイオマス水溶性液を分離回収するようにしてもよい。
尚、バイオマス水溶性液の回収方法は、上記方法に限定されるものではなく、木炭やバイオオイルの製造プロセスにおいて回収される酢液類の水溶性副生成物を用いることもできる。
採取されたバイオマス水溶性液には、水酸化カルシウム(Ca(OH))を高濃度に溶解させることができる。水酸化カルシウムの溶解能力について一例を挙げると、水酸化カルシウムの水に対する溶解度は1.6g/L(20℃)であるのに対し、竹と籾殻から得られたpH2〜3のバイオマス水溶性液に対する溶解度は少なくとも20g/L(20℃)であった。つまり、水に対する溶解度よりも少なくとも10倍以上もの水酸化カルシウム溶解能を有していることになる。バイオマス水溶性液のこの特性を利用することで、ガス化触媒元素を石炭に高濃度且つ均一に担持することができる。
バイオマス水溶性液の酸性度については、pH7未満であれば、水よりもガス化触媒元素であるナトリウム、カリウム及びカルシウムの溶解度が高いので、1.6g/Lを超える量の水酸化カルシウムを溶解することができ、カルシウムを石炭に高濃度に担持することができる。そして、pHをさらに低いものとすることで、カルシウムの溶解度をさらに高めて、カルシウムを石炭にさらに高濃度に担持することができる。したがって、バイオマス水溶性液は、pH7未満で且つpHができるだけ低いものを用いることが好ましいと言えるが、竹と籾殻から得られたpH2〜3の水酸化カルシウムのバイオマス水溶性液を用いることで、ガス化反応速度の向上が十分に見込めることが本発明者の実験により確認されたことから、pHが2〜3のバイオマス水溶性液を用いれば十分に本発明の効果が得られる。
本発明で使用されるバイオマス灰は、ガス化触媒元素として少なくともカリウムを含むものとしている。そして、このバイオマス灰を酸性のバイオマス水溶性液と接触させることによって、バイオマス灰に含まれているガス化触媒元素を溶解させ、これをガス化触媒として石炭に担持させる。
バイオマス灰としては、バイオマス原料をガス化する際に得られる灰、例えば流動床や固定床のガス化炉で得られるものを用いることができるが、これに限定されるものではなく、例えばバイオマス原料を焼却処理して得られるバイオマス灰を用いることもできる。但し、バイオマス原料にかかる熱が高すぎると、ガス化触媒元素が揮発して減少してしまうので、ガス化触媒元素が揮発して減少しない範囲で加熱されたバイオマス灰を用いることが好ましい。
本願発明者等は、組成の異なる5種のバイオマス灰α1〜α5(表1参照)について検討を行ったところ、全てのバイオマス灰において、ガス化反応速度の向上が見られ、その効果は、バイオマス灰α5で最も大きく、α4、α3、α2、α1の順に小さくなった。尚、表1において、ndとは、未定量であることを意味している。
このことから、バイオマス灰にガス化触媒元素であるナトリウム、カリウムおよびカルシウムが存在すれば、酸性のバイオマス水溶性液により抽出し石炭に担持させることによって、ガス化反応速度を向上させる効果が期待できる。そして、その効果は、ガス化触媒元素の含有量を高めることによって向上させることができると考えられるが、その中でも、特にカリウムの含有量を高めることによって、ガス化反応速度の向上効果が得られやすいことがわかる。例えば、バイオマス灰のカリウム含有量に着目した場合、ガス化反応速度を高めるためには、 O換算で2.7wt%以上とすることが好ましく、13wt%以上とすることがより好ましく、18wt%以上とすることがさらに好ましく、27wt%以上とすることがなお好ましく、59wt%以上とすることがさらになお好ましい。
尚、ガス化触媒抽出源として使用できるバイオマス灰は上記組成のもの限定されるものではなく、酸性のバイオマス水溶性液にガス化触媒元素が溶解し得る各種バイオマス灰を使用することができる。酸性のガス化触媒抽出源として使用できるバイオマス灰は、バイオマス水溶性液に溶解したときに、酸性のバイオマス水溶性液のpHを高める作用がある。したがって、バイオマス灰を酸性のバイオマス水溶性液に溶解し、バイオマス灰の溶解前後における酸性のバイオマス水溶性液のpH値の変化を測定することで、ガス化触媒抽出源として使用可能なバイオマス灰か否かを判定することができる。つまり、種々の組成比を有するバイオマス灰を酸性のバイオマス水溶性液に溶解してpH値の変化を測定することによって、ガス化触媒抽出源として使用可能なバイオマス灰の組成比の傾向を把握することが可能となる
ここで、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭を燃焼あるいはガス化すると、石炭に担持されているカルシウムから酸化カルシウム(CaO)と炭酸カルシウム(CaCO)とが生成される。本発明者の実験によれば、カルシウムがガス化触媒として担持されている石炭の燃焼後あるいはガス化後の灰をバイオマス水溶性液と接触させることで、このカルシウムを回収できることが確認されたことから、酸化カルシウムや炭酸カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解させてカルシウム担持石炭を得ることができる。即ち、バイオマス灰に含まれているカルシウムが酸化カルシウムや炭酸カルシウムの形態であったとしても、カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解させてカルシウム担持石炭を得ることが可能である。また、ナトリウム化合物やカリウム化合物についても、酸性のバイオマス水溶性液中に十分に溶解してガス化触媒として再利用することが可能である。
ガス化触媒元素を担持させるための原料石炭としては、石炭ガス化発電に供される一般的な微粉炭を使用することができ、石炭種は特に限定されない。また、平均粒径が100μm以下の微粉炭を使用することがガス化触媒元素を高濃度に分散担持する上で好適ではあるが、この平均粒径範囲の微粉炭に限定されるものではない。
石炭へのガス化触媒元素の担持は、本発明のガス化触媒含有溶液に石炭を接触させることにより行うことができる。ガス化触媒含有溶液とは、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つカリウムの含有量がK O換算で2.7wt%であるバイオマス灰のガス化触媒元素を溶解したバイオマス水溶性液である。この接触は、例えば、本発明のガス化触媒含有溶液を含浸液として、この含浸液に石炭を浸漬することにより行うことができる。
含浸液への石炭の浸漬は、ガス化処理に供される石炭の全量に対して行うことが好ましい。この場合には、ガス化触媒元素が高濃度に、且つガス化処理に供される石炭の全量に担持されて、ガス化炉の操作条件を安定に保つことができる。また、石炭ガス化処理に供される石炭のうちの一部のみを含浸液に浸漬して、石炭全量に対するガス化触媒元素担持量の平均値を高めるようにすることも可能である。ただし、この場合には、ガス化炉の操作条件を安定に保つ観点から、ガス化触媒担持炭とガス化触媒非担持炭とを均一に混合することが好ましい。また、バイオマス水溶性液の原液を水で希釈してから石炭全量を含浸液に浸漬して、石炭の全量にガス化触媒元素を担持することも可能である。
含浸液は、石炭の全量とほぼ等しい体積量とすることで、後の乾燥工程で必要となる熱量を抑えることができる。また、石炭の全量に対する含浸液の量を多めにして浸漬処理を行い、余剰分の含浸液ごと乾燥処理することで、乾燥工程で必要となる熱量は増加するが、石炭に担持されるガス化触媒元素の量を増やすことが可能である。
尚、バイオマス水溶性液を含浸液とすることで、石炭の濡れ性が十分に確保される。したがって、石炭の表面全体に含浸液が接触してガス化触媒元素を十分に担持させることができる。
ここで、含浸液に石炭を接触させる方法は、含浸液に石炭を浸漬する方法に限定されるものではない。例えば、含浸液を石炭に向流接触させる方法を採用してもよい。
含浸液を石炭に含浸させた後、乾燥処理を行う。この処理は例えば100℃以上の温度で加熱することにより行う。尚、触媒性能を最大限に発揮させて石炭ガス化処理の低温化を図る観点からは、乾燥処理により石炭中に含まれる水分をできるだけ除去することが好ましいが、石炭ガス化処理の低温化の効果が奏される範囲であれば、石炭中に水分が残留していてもよい。
石炭へのガス化触媒元素の担持は、石炭中のイオン交換性官能基であるカルボキシル基(−COOH基)や水酸基(−OH基)等にガス化触媒元素が結合することにより起こる。したがって、これらのイオン交換性官能基が消失する前、つまり、石炭を250℃以上で加熱する前に石炭へのガス化触媒元素の担持を行うようにする。これらのイオン交換性官能基が消失するとガス化触媒元素が石炭に担持され難くなり、触媒活性の向上が図り難くなる。
尚、本発明の効果は、酸性度の高い液体をガス化触媒元素の溶解媒体として用いたことのみから奏されるものではなく、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくとも1つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液を用いることにより奏される特有の効果である。即ち、本発明者は、水よりも酸性度の高い液体をガス化触媒元素の溶解媒体として使用することで、ガス化触媒元素を高濃度に溶解させることができると考えた。但し、硫酸や硝酸のような無機酸を使用すると、ガス化触媒担持石炭を石炭ガス化に供した際に、硫黄酸化物や窒素酸化物が生成される虞があり、これを処理するための手段が必要になる。そこで、水よりも酸性度が高いpH4〜5の酢酸をガス化触媒元素の溶解媒体として使用することを考え、検討を行ったところ、予想に反する結果が得られた。即ち、ガス化触媒元素であるカルシウムの溶解媒体として水を使用した場合よりも、酢酸を使用した場合の方がむしろ触媒活性が低くなることが確認された。
このことから、本発明の効果は、バイオマス水溶性液のガス化触媒元素の溶解能の高さのみから奏されるものではなく、バイオマス水溶性液に含まれる成分がガス化触媒元素を石炭に安定に担持することができる作用と相俟って奏される効果であると考えられる。つまり、バイオマス水溶性液に含まれる酢酸とは別の1種以上の成分がガス化触媒元素を石炭に安定に担持することに何らかの影響を及ぼしているものと考えられる。しかも、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくとも1つを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液を用いることで、工業用の酸性試薬等を用いる場合と比較して大幅なコストダウンを図ることが可能となる。
また、バイオマス水溶性液は、石炭自体が有している触媒成分(灰成分)を溶け込ませて、この触媒成分を石炭表面に再担持する機能を有しており、この機能も相俟って優れたガス化反応速度向上効果が得られているものと考えられる。
尚、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、オートクレーブを用いたバッチ式の水熱反応に木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣を供することにより得られる反応生成液物を液液分離して得られた水溶性成分をカルシウム源物質の溶解媒体として使用することも可能である。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
草本系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液に水酸化カルシウムを溶解した含浸液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、各種検討を行った。
(1)草本系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離
草本系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図10に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1aにより行った。
図10に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1aは、横型の炉心管3を有する水平式電気炉2と、第一容器4と、第二容器5と、第三容器6とにより構成した。第一容器4は炉心管3から発生したガスを凝集物として捕捉するものであり、氷槽4’に設置した。第二容器5は、第一容器4を通過したガスを凝集物として捕捉するものであり、ドライアイスメタノール槽5’に設置した。第三容器6は、第二容器5を通過したガスを第三容器6内に入れた氷水にバブリングして捕捉するものである。炉心管3と第一容器4、第一容器4と第二容器5、第二容器5と第三容器6とは、それぞれ、配管7,8,9により連結した。
本実施例では、草本系の植物由来バイオマス原料である竹(日本産)並びに籾殻(日本産)の粉末を用いて竹由来のバイオマス水溶性液と籾殻由来のバイオマス水溶性液をそれぞれ生成した。原料である竹の粉末10gを電気炉2の炉心管3内に装入した。電気炉2の昇温速度は6℃/minとし、初期温度を室温として、500℃まで昇温した。炉心管3をアルゴン雰囲気(流量1000cc/min)として、バイオマス原料粉末を炭化処理した。炭化処理中に発生したガスは氷槽4’内に設置された第一容器4並びにドライアイス−メタノール槽5’内に設置された第二容器5に捕捉し、固体成分やタール等の重質成分を除いて竹由来のバイオマス水溶性液として実験に供した。更に第三容器6の中の氷水にガスをバブリングし、第一容器4と第二容器5で捕捉されなかった低沸点の有機成分を捕捉し、これをバブリング液として実験に供した。同様に、籾殻の粉末10gを原料として、バイオマス水溶性液を得、これを籾殻由来のバイオマス水溶性液として実験に供した。
これらのバイオマス水溶性液のpHは2〜3であった。また、これらのバイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は少なくとも20g/L以上であることが確認された。水酸化カルシウムの水への溶解度は1.6g/L(20℃)であることから、バイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は水への溶解度の10倍以上であることが明らかとなった。このことから、ガス化触媒として機能する元素であるナトリウム、カリウム及びカルシウムを高濃度に溶解できることが明らかとなった。
(2)石炭へのカルシウム担持及びチャー調製
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーA〜Hを得た。表2に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。ここで、表2における「カルシウム溶解媒体」とは、水酸化カルシウムを溶解する液を意味している。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを約10体積%添加した。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応初期に起こる熱分解反応である気相−気相反応を予め行わせて、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。また、参照試料として、含浸処理していない微粉炭β1と微粉炭β3をチャー調製し、それぞれチャーI、チャーJを得た。尚、本実施例では、微粉炭の濡れ性を高めるためにメタノールを添加したが、後に本願発明者が検討を行ったところ、メタノール等の有機溶媒を添加して微粉炭の濡れ性を高める処理を行わなくても、バイオマス水溶性液単独で十分に微粉炭の濡れ性が確保できることが明らかとなった。したがって、石炭の濡れ性を高めるためにメタノール等の有機溶媒を添加を行う必要はない。
微粉炭β1と微粉炭β3の灰分組成を表3に示す。また、以降の実施例で使用する微粉炭β2の灰分組成も表3に示す。
(3)チャーのガス化反応速度測定
チャーのガス化反応速度の測定は、上皿式熱天秤(装置名:TGA−DTA2000S、マック・サイエンス社製)を用いて定温測定法により行った。5mmφのセル中にチャーを5mg装入し、アルゴン雰囲気下(450cc/min)、昇温速度15℃/minで850℃まで昇温した。そして、850℃に維持したまま、アルゴンの供給を止めて、炭酸ガスを450cc/minで供給し、100%のガス化剤濃度でチャーのガス化を進行させて、時刻Tにおけるチャーの重量減少量をモニタリングした。
ガス化反応率xとガス化反応速度rは図2に示すTG曲線により定義した。即ち、重量減少が始まった時刻T1から重量減少が見られなくなった時間T2までの重量減少量をW0とし、各時刻Tでの重量減少量をWとした。そして、ガス化反応率xは数式1により求めた。ガス化反応速度rは、数式2に示す反応率の時間微分より求めた。
[数式1]x=W/W
[数式2]r=dx/dt=(dW/dt)/W
(4)カルシウム溶解媒体によるガス化性能への影響の検討
チャーA、F、G、H及びIのガス化反応速度測定を行い、カルシウム溶解媒体によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図3に示す。aはチャーI(含浸処理なし)、bはチャーF(カルシウム溶解媒体:酢酸)、cはチャーG(カルシウム溶解媒体:バブリング液)、dはチャーH(カルシウム溶解媒体:水)、eはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、ガス化反応速度rを比較し易くするため、図4に反応時間Tに対するガス化反応率xを示す。反応終了までに要した時間が最も短かったのがeであり、次いで、c、d、b、aとなった。この結果から、竹由来バイオマス水溶性液をカルシウム溶解媒体として使用した場合は、原炭と比較して3〜4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。また、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合と比較しても2倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。さらに、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認された。この原因の一つとして、以下のことが考えられる。即ち、カルシウム溶解媒体として酢酸を用いてカルシウム担持石炭を製造した際、乾燥処理に用いた容器の内壁に白い付着物が確認された。これは、水酸化カルシウムと酢酸が反応して生成した酢酸カルシウムのカルシウム溶解媒体への溶解度が、乾燥処理の際の温度上昇に伴って減少し、さらに、乾燥処理の際の温度上昇により何らかの化学反応が生じてカルシウムが析出することにより、乾燥後の石炭へのカルシウム実担持量が水をカルシウム溶解媒体として用いた場合よりも低かったことに起因するものと考えられる。以上の結果から、カルシウム溶解媒体として竹由来バイオマス水溶性液を使用した場合、最も触媒活性を向上させることが可能なことが示された。また、カルシウム溶解媒体として酢酸を使用した場合には、水をカルシウム溶解媒体として使用した場合よりもガス化反応速度が遅くなることが確認されたことから、カルシウム溶解媒体として単に酸性度の高い液体を用いるだけでは石炭の触媒活性を高めることができないことが明らかとなった。即ち、酸性のバイオマス水溶性液をガス化触媒元素の溶解媒体として用いることによって、バイオマス灰に含まれるナトリウム、カリウム及びカルシウムを石炭に高濃度且つ安定に担持して、石炭の触媒活性が高められることが明らかとなった。
(5)石炭へのカルシウム担持量によるガス化性能への影響の検討
チャーB、C、D及びJのガス化反応速度測定を行い、水酸化カルシウム添加量によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図5に示す。aはチャーJ(水酸化カルシウム添加無し)、bはチャーB(水酸化カルシウム5mg添加)、cはチャーC(水酸化カルシウム10mg添加)、dはチャーD(水酸化カルシウム20mg添加)の測定結果を示している。水酸化カルシウムの添加量の増加に伴って、チャーのガス化反応速度も向上し、水酸化カルシウム20mg添加した場合に至っては、原炭と比較して4倍程度ガス化反応速度が速くなることが確認された。このことから、バイオマス灰に含まれているガス化触媒元素が多ければ、その分だけ触媒活性を高め易くなり、また、使用するバイオマス灰の量を多くしてガス化触媒元素のバイオマス水溶性液への溶解量を高めることによって、触媒活性を高めることができることが明らかとなった。
(6)バイオマス原料種によるガス化性能への影響の検討
チャーA及びEのガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図6に示す。aはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、bはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。aとbの結果から、草本系バイオマス原料である竹と籾殻のどちらを用いても、両者のガス化反応速度に差異が見られないことが確認された。
(7)カルシウム担持炭の生成灰からのカルシウムの回収及び再生利用の検討
1mlの竹由来バイオマス水溶性液に10mgの水酸化カルシウムを溶解させ、この溶液に100mgの微粉炭β3を加え含浸処理した後、107℃で乾燥後空気中で燃焼させた。燃焼後の生成灰全量を1mlの竹由来バイオマス水溶性液に加え、さらに100mgの微粉炭β3を加え含浸処理し、107℃で乾燥後チャー調製を行った。チャー調製は上記(2)と同条件で行った。この二次カルシウム担持チャーのガス化反応性をチャーCのガス化反応性と比較した。結果を図7に示す。aはチャーJ、bは二次カルシウム担持チャー、cはチャーCの測定結果を示している。bとcの測定結果を比較すると、ガス化反応性にほとんど差が見られなかったことから、石炭の燃焼灰からガス化触媒として担持されていたカルシウムの全量を回収して再利用できることが明らかとなった。
石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムは、燃焼反応あるいはガス化反応により、酸化カルシウムと炭酸カルシウムに形態が変化する。したがって、石炭にガス化触媒として担持されているカルシウムは、酸化カルシウムと炭酸カルシウムの形態でカルシウム溶解媒体である竹由来バイオマス水溶性液に溶解したと考えられる。このことから、バイオマス灰中にカルシウムが酸化カルシウムや炭酸カルシウムの形態で存在していても、カルシウムをバイオマス水溶性液に溶解させてガス化触媒として石炭に担持させることが可能であることが明らかとなった。尚、ナトリウム化合物やカリウム化合物は、一般的に水に易溶であることから、ナトリウムやカリウムがバイオマス灰中においてどのような形態をとっていたとしても、酸性のバイオマス溶液中には十分に溶解してガス化触媒として利用することが可能である。
(実施例2)
木質系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液に水酸化カルシウムを溶解した含浸液を用いてガス化触媒担持石炭を製造した場合について、各種検討を行った。
(1)木質系バイオマス原料と植物由来の食品残渣からのバイオマス水溶性液の収集分離
木質系バイオマス原料からのバイオマス水溶性液の収集分離は図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bにより行った。
図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bは、図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システムとほぼ同様の構成を採っているが、第二容器5の後段に第三容器6を備えている点で図1に示すバイオマス水溶性液収集分離システムとはその構成を異にしている。即ち、炉心管3を有する電気炉2と、第一容器4と、第二容器5と、第三容器6とにより構成され、炉心管3と第一容器4、第一容器4と第二容器5、第二容器5と第三容器6とは、それぞれ、配管7,8,9により連結されている。
炉心管3の形状は縦型とし、炉心管3の内部には、複数の貫通孔を有する多孔板(目皿)12と石英ウール13とを配置して、炉心管3に投入されるバイオマス原料が炉心管3内で保持されるようにした。そして、不活性ガスを炉心管3の上部から供給することによって、炭化処理の際に発生するガスが、配管7から第一容器4に向かって強制排気されるようにした。
配管7からの排出物は第一容器4に導入されるようにして、第一容器4を保温ヒータ14により保温した。保温ヒーター14の温度は、熱電対16により制御し、配管8の導入部近傍の温度を100℃〜110℃に設定した。これにより、配管7からの排出物に含まれるタール類等の重質成分と固形物とを第一容器4に回収し、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とが配管8に導入されるようにした。
配管8からの排出物は、第二容器5に導入されるようにした。配管8には水循環方式の冷却装置であるリービッヒ冷却器15を備えて、第一容器4に回収されなかったガス状の排出物と、第一容器4に一旦回収された成分のうち保温ヒータ14の設定温度で蒸発する成分とを冷却して、第二容器5に凝集物を回収した。
配管9には、第二容器5で回収されなかった低沸点の有機成分が導入されるようにした。第三容器6には水を入れておき、配管9から排出されるガスをバブリングすることによって、低沸点の有機成分を回収するようにした。
本実施例では、木質系のバイオマス原料である杉チップ(日本産)、杉バーク(日本産)並びにオレンジ皮を用いて杉チップ由来のバイオマス水溶性液、杉バーク由来のバイオマス水溶性液及びオレンジ皮由来のバイオマス水溶性液をそれぞれ生成した。原料である杉チップ10gを電気炉2の炉心管3内に投入した。尚、杉チップの投入は、電気炉2の炉内温度を500℃に設定した状態で行った。炉心管3を窒素雰囲気(流量1000cc/min)として、バイオマス原料粉末を炭化処理した。炭化処理中に発生したガスは第一容器4と第二容器5と第三容器6とに回収し、第二容器5に回収された凝集物を杉チップ由来のバイオマス水溶性液として使用した。
同様に、杉バーク10gを原料として杉バーク由来のバイオマス水溶性液を得、オレンジ皮10gを原料としてオレンジ皮由来のバイオマス水溶性液を得た。これらのバイオマス水溶性液のpHは2〜3であった。また、これらのバイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は少なくとも20g/L以上であることが確認された。水酸化カルシウムの水への溶解度は1.6g/L(20℃)であることから、バイオマス水溶性液への水酸化カルシウムの溶解度は水への溶解度の10倍以上であることが明らかとなった。つまり、木質系のバイオマス原料を用いた場合や、植物由来の食品残渣を用いた場合であっても、草本系のバイオマス原料を用いた場合と同様の性質を有するバイオマス水溶性液が得られることが確認された。
(2)石炭へのカルシウム担持及びチャー調製
含浸法によりカルシウムを担持した石炭をチャー調製し、以降の実験に供するためのチャーK〜Mを得た。表4に本実施例で用いた微粉炭の炭種と含浸液の組成を示す。カルシウム溶解媒体の量はすべて1mlとした。また、本実施例では、微粉炭の濡れ性が十分に確保できたので、微粉炭の濡れ性を高めるためのメタノールの添加は行わなかった。含浸液に浸漬する微粉炭量は100mgとした。含浸処理後の微粉炭は107℃で乾燥させた後、赤外電気炉に装入し、アルゴン雰囲気下(流量200cc/min)、600℃/minの昇温速度で900℃まで昇温後、1分間保持して乾留することによりチャー調製を行い、ガス化反応初期に起こる熱分解反応である気相−気相反応を予め行わせて、ガス化反応全体において律速反応となるガス化剤とチャーとの気相−固相反応のみを以降の実験で測定できるようにした。
(3)チャーのガス化反応速度測定
実施例1と同様の方法により行った。
(4)バイオマス原料種によるガス化性能への影響の検討
チャーK〜Mについてガス化反応速度測定を行い、バイオマス原料種によるガス化性能への影響について検討を行った。結果を図8に示す。図8において、aはチャーK(カルシウム溶解媒体:杉チップ由来バイオマス水溶性液)、bはチャーL(カルシウム溶解媒体:杉バーク由来バイオマス水溶性液)、cはチャーM(カルシウム溶解媒体:オレンジ皮由来バイオマス水溶性液)の測定結果を示している。また、d〜fは実施例1で得られた結果であり、a〜cの測定結果と比較する為に図8に掲載した。即ち、dはチャーA(カルシウム溶解媒体:竹由来バイオマス水溶性液)、eはチャーE(カルシウム溶解媒体:籾殻由来バイオマス水溶性液)、fはチャーI(含浸処理なし)の測定結果である。
図8に示す結果から、杉チップ由来バイオマス水溶性液、杉バーク由来バイオマス水溶性液及びオレンジ皮由来バイオマス水溶性液のガス化反応速度と、竹由来バイオマス水溶性液及び籾殻由来バイオマス水溶性液のガス化反応速度との間には、ほとんど差が見られなかった。したがって、木質系バイオマス原料と果実皮等の植物由来の食品残渣から得られるバイオマス水溶性液を用いた場合にも、草本系バイオマス原料から得られるバイオマス水溶性液を用いた場合と同様の効果が得られることが明らかとなった。
(実施例3)
バイオマス灰として、表1のα4の灰とα1の灰を用い、ガス化触媒担持石炭の製造試験を行って、その性能を評価した。
尚、実験に使用したバイオマス灰は820℃で灰化して使用したものであり、以降の実験においても同様の処理によって得られたバイオマス灰を使用した。
α4の灰20mgに、実施例2で得られた杉チップ由来のバイオマス水溶性液を1ml加え、5分間超音波照射した後、孔径が0.2μmのフィルターで固液分離した。この濾液に、微粉炭β1または微粉炭β2を加えて含浸処理した後、107℃で乾燥後にチャー調整をおこなった。チャー調整は、実施例1と同様の方法で行った。
チャー調整した試料のガス化反応速度測定を行い、ガス化触媒抽出源としてα4の灰を用いた場合のガス化性能への影響について検討を行った。結果を図12に示す。aはα4の灰を用いてガス化触媒を担持した微粉炭β1チャーの測定結果を示し、bはα4の灰を用いてガス化触媒を担持した微粉炭β2チャーの測定結果を示し、cはガス化触媒を担持していない微粉炭β1チャーの測定結果を示し、dはガス化触媒を担持していない微粉炭β2チャーの測定結果を示している。また、ガス化反応速度rを比較し易くするため、図13に反応時間Tに対するガス化反応率xを示す。
この結果から、α4の灰を用いてガス化触媒を担持した微粉炭β1チャー及びα4の灰を用いてガス化触媒を担持した微粉炭β2チャーのガス化反応速度は、原炭と比較して8〜10倍向上することが確認された。
また、バイオマス灰として、α1の灰を用いて同様の実験を行ったところ、ガス化反応速度の向上効果が得られるものの、その効果はα4の灰を用いた場合と比較して小さいことが確認された。
尚、α4の灰をバイオマス水溶性液に添加したときには、バイオマス水溶性液のpH値は大きく上昇したが、α1の灰をバイオマス水溶性液に添加したときには、バイオマス水溶性液のpH値がそれほど大きくは変動しなかった。このことから、バイオマス水溶性液のpH値の変動が、ガス化触媒抽出源としての効果が優れているか否かを判定する基準となり得ることがわかった。
各種バイオマス灰に含まれる無機成分を分析した結果は表1に示した通りである。尚、この分析は原子吸光法およびICP発光分析法により行った。
表1に示されるように、α4の灰は、α1の灰と比較してガス化触媒元素が多く含まれていたため、ガス化触媒として機能するNa、K及びCaがバイオマス水溶性液へ溶出され易く、その結果として、ガス化反応速度を向上させる効果が高かったものと考えられる。
(実施例4)
籾殻由来バイオマス水溶性液と杉チップ由来バイオマス水溶性液とを用いて、バイオマス水溶性液そのものが石炭に与える影響について検討した。
杉チップ由来バイオマス水溶性液は実施例2で得られたものを使用した。籾殻由来バイオマス水溶性液は図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1bを用い、杉チップ由来バイオマス水溶性液と同様の方法で得られたものを使用した。
籾殻由来バイオマス水溶性液0.5mlに対し、微粉炭100mgを加えて、一晩(12時間)含浸した後、107℃で乾燥して、実施例1の(2)と同様の方法でチャー調製を行った。杉チップ由来バイオマス水溶性液についても同様の処理を行った。籾殻由来バイオマス水溶性液を用いて得られたチャーを試料Xと呼び、杉チップ由来バイオマス水溶性液を用いて得られたチャーを試料Yと呼ぶ。尚、微粉炭はβ1を使用した。
また、籾殻をバイオマス原料とし、図11に示すバイオマス水溶性液収集分離システム1’を用いて第一容器4〜第三容器6に回収される凝集物すべてを回収し、これを107℃で乾燥して、実施例1の(2)と同様の方法でチャー調製を行った。このチャーを試料Zと呼ぶ。
試料X〜Zについて、実施例1と同様の方法によりガス化反応速度の測定を行った。測定結果を図9に示す。尚、図9には比較試料として未処理の微粉炭β1チャーのガス化反応速度を測定した結果を試料Aとして掲載した。
図9に示す結果から、バイオマス水溶性液により微粉炭を含浸するだけで、未処理の微粉炭チャーと比較してガス化反応速度が2倍程度向上することが明らかとなった。ここで、籾殻のみから調製したチャーである試料Zについては、未処理の微粉炭チャーよりもガス化反応速度が遅かったことから、バイオマス水溶性液に含まれる成分そのものがガス化反応速度を高める要因にはなっていないことが考えられた。
したがって、バイオマス水溶性液によりガス化反応速度が高まる要因は以下のように考えることができる。即ち、バイオマス水溶性液に微粉炭を含浸した際に、微粉炭自体に含まれる触媒成分がバイオマス水溶性液に溶け出し、この触媒成分が微粉炭表面に再担持されることによって、ガス化反応速度が高まったものと考えられる。即ち、木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液と、石炭とを接触させることによって、酸性のバイオマス水溶性液に石炭自体が有しているガス化触媒元素を溶け込ませ、これを担持することによってガス化触媒担持石炭の製造することもできる。
以上、本発明によれば、バイオマス水溶性液にガス化触媒元素を高濃度に溶解させて微粉炭にガス化触媒元素を高濃度に担持させる効果と、微粉炭自体が有している触媒成分がバイオマス水溶性液に溶け込んで、この触媒成分が微粉炭表面に再担持される効果とが相俟って、優れたガス化反応速度向上効果が得られる。
ここで、本実施例で使用した微粉炭β1の灰成分の組成は、表3に示したように、酸化カルシウムが主成分であることがわかった。また、X線回折の結果から、原炭に含まれるカルシウム化合物は炭酸カルシウムであることが判明した。このことから、バイオマス水溶性液を石炭と接触させることにより、石炭中の炭酸カルシウムが溶解し、微粉炭表面にカルシウムを高度に分散させ、触媒効果が得られたものと考えられる。
(実施例5)
バイオマス灰として、表1のα4の灰を用い、α4の灰と接触させたバイオマス水溶性液に微粉炭を含浸させる時間がガス化反応速度に与える影響について検討した。
α4の灰40mgに、実施例2で得られた杉チップ由来のバイオマス水溶性液を1ml加え、5分間超音波照射した後、孔径が0.2μmのフィルターで固液分離した。次に、200mgの微粉炭β2にこの濾液0.2mlを加え含浸し、含浸開始直後に107℃で乾燥した試料1と含浸から5時間後に107℃で乾燥した試料2を準備した。そして、試料1及び試料2を実施例1と同様の方法でチャー調整した。
チャー調整した試料のガス化反応速度測定を行い、含浸時間に対するガス化反応速度の影響について検討した。結果を図14に示す。この結果から、ガス化反応速度が向上する効果は、含浸時間には依存しないことが明らかとなり、含浸直後に微粉炭を乾燥させることで、十分なガス化反応速度向上効果が得られ、ガス化触媒担持石炭を迅速に製造できることが明らかとなった。
(実施例6)
バイオマス灰として、表1のα1〜α5の灰を用い、ガス化触媒担持石炭の製造試験を行って、その性能を評価した。
各種バイオマス灰20mgに、実施例2で得られた杉チップ由来のバイオマス水溶性液を1ml加え、5分間超音波照射した後、孔径が0.2μmのフィルターで固液分離した。この濾液に、微粉炭β2を加えて含浸処理した後、107℃で乾燥後にチャー調整をおこなった。チャー調整は、実施例1と同様の方法で行った。
チャー調整した試料のガス化反応速度測定を行い、ガス化触媒抽出源として各種バイオマス灰を用いた場合のガス化性能への影響について検討を行った。結果を図15に示す。図15において、「R」は、バイオマス灰とバイオマス水溶性液とを接触させて得られた溶液に微粉炭β2を含浸した場合のガス化反応速度(rash=dx/dtx=0.5)と、バイオマス灰とバイオマス水溶性液とを接触させていない溶液に微粉炭β2を含浸した場合のガス化反応速度(rraw=dx/dtx=0.5)との比である。
この結果から、α1〜α5のいずれの灰を用いた場合においても、原炭を用いた場合と比較してガス化反応速度を高める効果があることが明らかとなった。そして、その効果は、α5が最も高く、α4、α3、α2、α1の順に小さくなることが明らかとなった。
ここで、α1〜α5の灰に含まれるガス化触媒元素であるカルシウム、ナトリウム及びカリウムについて、その酸化物の総含有量を計算したところ、α1が3.92wt%、α2が71.66wt%、α3が41.59wt%、α4が43.07wt%、α5が61.56wt%であり、図15の結果とは一致しなかった。
この結果は、以下のように考えることができる。即ち、カルシウムは、ナトリウム及びカリウムと比較して触媒効果が低く、ガス化触媒元素のうち、カルシウムの占める割合の大きいα2については、ガス化触媒元素の総含有量が最も多いにも関わらず、ガス化反応速度の向上効果がα3、α4、α5よりも小さかったものと考えられる。
また、α3とα4についても、ガス化触媒元素の総含有量に大きな差が見られないにも関わらず、ガス化反応速度の向上効果においては明確に差が見られた理由についても、α3において、カルシウムの占める割合が大きかったことに起因するものと考えられる。
(実施例7)
α4及びα5の灰からの触媒成分の抽出効果について、水とバイオマス水溶性液を用いて比較実験を行った。
α4またはα5の灰20mgに、実施例2で得られた杉チップ由来のバイオマス水溶性液または水を1ml加え、5分間超音波照射した後、孔径が0.2μmのフィルターで固液分離した。この濾液に、微粉炭β2を加えて含浸処理した後、107℃で乾燥後にチャー調整をおこなった。チャー調整は、実施例1と同様の方法で行った。
チャー調整した試料のガス化反応速度測定を行い、水及びバイオマス水溶性液を用いた場合の触媒成分抽出効果について検討した。結果を図16に示す。水を用いた場合には、ガス化反応速度の向上効果が十分なものとならず、また、α4とα5の灰を用いた場合のガス化反応速度の差が得られなかった。つまり、水はガス化触媒成分を溶解させる能力が低く、水が飽和状態となってガス化触媒成分が溶解しなくなり、結果として、α4とα5の灰に含まれるガス化触媒成分が残存した結果として、ガス化反応速度向上効果が十分に得られなかったものと考えられる。
これに対し、バイオマス水溶性液を用いた場合には、α4とα5の灰に含まれるガス化触媒成分を十分に溶解させて抽出することができ、結果として優れたガス化反応速度向上効果が得られたものと考えられる。
また、α5の灰については、シリカが26.7wt%含まれていたことから、灰の調整過程において、シリカとガス化触媒元素との化合物が生成され、これにより、水にはガス化触媒元素が十分に溶解しなかったものと考えられるが、バイオマス水溶性液を溶解媒体として用いた場合には、α4の灰を用いた場合と比較して、高いガス化反応速度向上効果が得られた。このことから、灰の調整過程において、シリカとガス化触媒元素との化合物が生成されたとしても、バイオマス水溶性液を溶解媒体として用いることによって、バイオマス灰からガス化触媒元素を確実に抽出できることが明らかとなった。
バイオマス原料からバイオマス水溶性液の収集分離を行う装置の構成の一例を示す図である。 重量減少Wと総重量減少W0の定義を説明する図である。 各種カルシウム溶解媒体を用いた場合のガス化反応速度の測定結果を示す図である。 図3の結果を反応時間Tに対するガス化反応率xとして示した図である。 石炭へのカルシウム担持量を変化させた場合のガス化反応速度の違いを示す図である。 各種草本系バイオマス原料を用いた場合のガス化反応速度の測定結果を示す図である。 カルシウム担持炭の生成灰から回収したカルシウムを再び微粉炭に担持させた際のガス化反応速度の測定結果を示す図である。 各種バイオマス原料を用いた場合のガス化反応速度の測定結果を示す図である。 バイオマス水溶性液自体がガス化反応速度に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。 実施例1で使用したバイオマス水溶性液の収集分離装置の構成を示す図である。 実施例2で使用したバイオマス水溶性液の収集分離装置の構成を示す図である。 ガス化触媒抽出源としてα4の灰を用いた場合のガス化反応速度の測定結果を示す図である。 図12の結果を反応時間Tに対するガス化反応率xとして示した図である。 バイオマス水溶性液へ微粉炭の含浸時間がガス化反応速度に与える影響について検討した結果を示す図である。 各種バイオマス灰を用いた場合のガス化反応速度向上効果について検討した結果を示す図である。 水とバイオマス水溶性液を用いた場合の触媒成分抽出効果について検討した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液と、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つ前記カリウムの含有量がK O換算で2.7wt%以上であるバイオマス灰とを接触させて前記バイオマス灰に含まれる前記ガス化触媒元素を前記バイオマス水溶性液に溶解し、前記バイオマス水溶性液を石炭と接触させて前記石炭に前記ガス化触媒元素を担持することを特徴とするガス化触媒担持石炭の製造方法。
  2. 前記バイオマス灰の前記カリウムの含有量がK O換算で13wt%以上である請求項1に記載のガス化触媒担持石炭の製造方法。
  3. 木質系バイオマス原料、草本系バイオマス原料及び植物由来の食品残渣のうちの少なくともいずれかを炭化処理する際に発生する酸性のバイオマス水溶性液に、石炭のガス化触媒元素として少なくともカリウムを含み且つ前記カリウムの含有量がK O換算で2.7wt%であるバイオマス灰の前記ガス化触媒元素が溶解されているものであるガス化触媒担持石炭製造用のガス化触媒含有溶液。
  4. 前記バイオマス灰の前記カリウムの含有量がK O換算で13wt%以上である請求項3に記載のガス化触媒含有溶液。
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