JP2008177375A - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザ照射手段のような大掛かりな装置を必要とせず、PFC系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法を提供する。
【解決手段】プラズマを発生させる放電空間4に配置されたフッ素含有高分子原料1と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段8とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法である。フッ素含有高分子廃棄物にプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより、当該フッ素含有高分子廃棄物のフッ素を回収するフッ素含有高分子廃棄物処理方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法に関するものであり、特に、PFC(Perfluoro Carbon)系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法に関するものである。
プラズマによるドライエッチング技術は、今日の電子・ナノ産業に欠かすことのできないものとなっている。例えばIC回路の製造におけるSiO層間絶縁膜へのコンタクトホールの形成、太陽電池表面へのマイクロテクスチャーの形成、MEMS(micro electro-mechanical system)用部材の形成、薄膜形成装置のチャンバークリーニング、大気圧プラズマを利用したCVM法等枚挙にいとまがない。
一方、CFモノマーの重合体であるフルオロカーボン系薄膜は、誘電率が低く、且つ、撥水性、低摩擦係数等の特性を有することから今後Low−k膜やMEMS部材の表面被覆材料として期待されている。
前記ドライエッチング技術におけるエッチングやフルオロカーボン系薄膜形成を担う反応種の供給には、CF、C、C、F、NF、SF、Cl、C等のハロゲン系元素を含有するガスが用いられている。とりわけ、CFに代表されるPFC系ガス及びSFは、列挙した他のガスに比較して非常に安定な性質を有し毒性も低いため、その取扱いの容易さからエッチング工程やフルオロカーボン系薄膜の形成工程等で大量に用いられている。
以上のように、PFC系ガスは、ドライエッチング及びフルオロカーボン系薄膜形成において安全で取扱いやすいガスとして認知され大量に用いられているが、昨今の地球環境問題への関心の高まりからその使用量の削減が叫ばれている。これは、PFC系ガスが地球温暖化ガスの元凶といわれているCOに比較して数千倍以上の地球温暖化係数(GWP)を有し、且つガスの安定性から一旦大気中に放出されると、数千〜数万年以上にわたって残存蓄積するためである。PFC系ガスやHFC(Hydrofluoro Carbon)系ガスは、COやCHに比較して環境放出量は低いものの、その地温暖化係数の高さ及び寿命の長さから、1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)にて規制対象物質に指定されている。
しかしながら、今後もナノ・マイクロ構造を作製するためのエッチングプロセスやフルオロカーボン系薄膜形成プロセスへのニーズは一層の高まりを見せることが予想され、PFC系ガスの使用量増加に伴う地球環境への影響の拡大が懸念されている。このため、PFC系ガスに代わる代替ガスの検討が急ピッチで進められているが、かかる代替ガスは、従来のPFC系ガスと比べて高価格であり、また不安定で毒性の強いガスになる等の問題点を抱えている。例えば、代替ガスとして期待されているCは、地球温暖化係数は1以下であるが、大気中の寿命は非常に短い。かかる寿命の短さとは、裏を返せばガスの不安定さを示しており、爆発限界濃度が10〜50%と非常に広い。このため、法的に厳しい規制の下に使用される物質となる。一方で、PFC系ガスの排出量を低減するための除害設備には通常燃焼式のものが用いられ、最も安定なCFの分解除去に1400℃の高温を必要とする。
かかる問題を解決する方法として、フッ化炭素ラジカルにより被処理体をプラズマ処理するプロセス処理方法において、処理容器内に配置されたフッ化樹脂材料にレーザ照射手段からパルスレーザ光を照射して気化させてCxFyラジカルを発生させる方法が開示されている(例えば、特許文献1等参照)。
なお、被処理物にパーティクルが付着するのを防ぐ目的で、対向する電極に、パーティクルの生成を熱膨張係数の差異を抑えることで抑制するためのPTFE膜を設けたドライエッチング装置が開示されている(例えば、特許文献2等参照)。ここで、特許文献2に記載の構成は、被処理物にパーティクルが付着するのを防ぐことを目的とするものであり、元来ハロゲン系元素を含有するガスをエッチングに用いるものではない。
特開平11−100680(平成11年4月13日公開) 特開平7−335627(平成7年12月22日公開)
上記特許文献1に記載の構成は、PFC系ガスを用いないものであるが、レーザ照射手段が必須であるため、装置が大掛かりとなるという問題を生じる。さらには、原料ガスとしてPFC系ガスを用いない利点を有しているものの、レーザ加熱によりフッ化樹脂材料から生成されるガスは、PFCに類似のフルオロカーボン系ガスである.
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ照射手段のような大掛かりな装置を必要とせず、PFC系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法、ガス発生装置及びガス発生方法、並びに、フッ素含有高分子廃棄物処理方法を提供することにある。
本発明に係るプラズマ処理装置は、上記課題を解決するために、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において当該フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理するようになっていることを特徴としている。
上記の構成によれば、レーザ照射手段のような大掛かりな装置を必要とせず、PFC系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏することが可能となる。また、地球温暖化を加速するPFCガス等を原料に用いないため、地球環境問題に対応した処理装置又は処理方法として有用である。さらに、フッ素含有高分子原料を用いるため、エッチングガスを用いる場合と比較して原料の輸送コストを低減することが可能となる。また、原料の保管も、安全で且つ簡便である。また、固体又は液体であるフッ素含有高分子原料を用いるため、高圧ガスに比べて大量の原料保有が可能となる。さらに、オンデマンドでエッチングガスを供給可能である。また、水スクラバー等の簡便な装置によりプラズマ処理に用いたガス中の有害物質の回収を簡単に行うことができる。
本発明に係るプラズマ処理装置では、上記フッ素含有高分子原料は、フッ素樹脂であることが好ましい。
本発明に係るプラズマ処理装置では、上記ガスは、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスであることが好ましい。
本発明に係るプラズマ処理装置では、上記ガスは、少なくとも酸素含有ガスを含むものであってもよい。また、本発明に係るプラズマ処理装置では、上記ガスは、少なくとも水素ガスを含んでいてもよい。本発明に係るプラズマ処理装置は、デポジション装置又はエッチング装置であることが好ましい。
本発明に係るプラズマ処理装置は、上記フッ素含有高分子原料を放電空間に供給する原料供給手段が備えられていることが好ましい。
本発明に係るガス発生装置は、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させるようになっていることを特徴としている。
上記の構成によれば、レーザ照射手段のような大掛かりな装置を必要とせず、PFC系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏することが可能となる。また、地球温暖化を加速するPFCガス等を原料に用いないため、地球環境問題に対応した処理装置又は処理方法として有用である。さらに、フッ素含有高分子原料を用いるため、エッチングガスを用いる場合と比較して原料の輸送コストを低減することが可能となる。また、原料の保管も、安全で且つ簡便であり、これに加えて固体又は液体であるフッ素含有高分子原料を用いるため、高圧ガスに比べて大量の原料保有が可能となる。さらに、オンデマンドでエッチングガスを供給可能である。
また、本発明に係るプラズマ処理方法は、上記課題を解決するために、プラズマを発生させ、当該プラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより被処理物を処理するプラズマ処理方法において、放電空間に、フッ素含有高分子原料を配置し、当該フッ素含有高分子原料と放電空間に導入されるガスとを反応させることによって、プラズマ中でそれぞれフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理することを特徴としている。
また、本発明に係るガス発生方法は、プラズマを発生させる放電空間に、フッ素含有高分子原料を配置し、当該フッ素含有高分子原料と放電空間に導入されるガスとを反応させることによって、プラズマ中で、フッ素含有化学反応種を発生させることを特徴としている。
また、本発明に係るフッ素含有高分子廃棄物処理方法は、フッ素含有高分子廃棄物にプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより、当該フッ素含有高分子廃棄物のフッ素を回収するフッ素含有高分子廃棄物処理方法であって、プラズマを発生させる放電空間にHを含むガスを導入して発生させたプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを、フッ素含有高分子廃棄物に照射することを特徴としている。
上記の構成によれば、現在産業廃棄物として埋め立てされているフッ素含有高分子廃棄物から、貴重なフッ素を回収する方法として利用することができる。
本発明に係るフッ素含有高分子廃棄物処理方法では、上記フッ素含有高分子廃棄物は、フッ素樹脂であることが好ましい。
本発明に係るプラズマ処理装置は、以上のように、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理する構成を備えているので、レーザ照射手段のような大掛かりな装置を必要とせず、PFC系ガスを用いずに、十分な処理効果を奏することが可能となる。また、地球温暖化を加速するPFCガス等を原料に用いないため、地球環境問題に対応した処理装置又は処理方法として有用である。さらに、フッ素含有高分子原料を用いるため、エッチングガスを用いる場合と比較して原料の輸送コストを低減することが可能となる。また、原料の保管も、安全で且つ簡便である。また、固体又は液体であるフッ素含有高分子原料を用いるため、高圧ガスに比べて大量の原料保有が可能となる。さらに、オンデマンドでエッチングガスを供給可能である。本発明に係る処理装置は大気圧においても動作可能であり、かかる場合には高価な真空装置を不要とする。また、プラズマ中で生成された反応生成物は不安定であるため、水スクラバー等の簡便な装置により排ガス中の有害物質の回収を簡単に行うことができる。
また、本発明に係るフッ素含有高分子廃棄物処理方法は、以上のように、フッ素含有高分子廃棄物にプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより、当該フッ素含有高分子廃棄物のフッ素を回収するフッ素含有高分子廃棄物処理方法であって、プラズマを発生させる放電空間にHを含むガスを導入して発生させたプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを、フッ素含有高分子廃棄物に照射する構成を備えているので、現在産業廃棄物として埋め立てされているフッ素含有高分子廃棄物から、貴重なフッ素資源を回収する方法として利用することができる。
(1)プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
本発明にかかるプラズマ処理装置の実施形態について図1ないし図6に基づいて説明すると以下の通りである。
<第1の実施形態>
図1に本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す。
プラズマ表面処理装置のチャンバーには、電力印加電極2と接地電極3とが対向するように備えられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4にプラズマを発生させるようになっている。なお、ここでプラズマは、被処理物の低温高速処理が可能であるという点で、グロー放電により発生させることがより好ましい。本実施形態では、チャンバーは放電空間4と一致しているが、チャンバーの大きさ、形状等と、電極の形状、チャンバー中の配置は、これに限定されるものではない。また、本実施形態のプラズマ処理装置は、大気圧下でプラズマを発生させる構成であるが、低圧下又は真空下でプラズマを発生させるプラズマ処理装置ももちろん本発明に含まれる。なお、本発明において、大気圧下とは準大気圧をも含む200〜760Torrの範囲をいい、低圧下とは1〜200Torrの範囲をいい、真空下とは0〜1Torrの範囲をいう。
電力印加電極2と接地電極3とは、それぞれ、アルミニウム、ステンレス、銅等で形成されている。プラズマに面する電極平面のエッジ部は、半径1mm以上の曲率を持たせる加工を施すことが好ましい。これにより電界集中による異常放電の生成を防止することができる。また電極を形成するこれらの金属部材の表面には、アルミナ、窒化ホウ素等の誘電体をプラズマ溶射法やCVD法によりコーティングし用いてもよい。かかる誘電体のコーティングの厚みは70〜120μmであることが好ましく、100μm前後であることがより好ましい。
電力印加電極2は、プラズマ生成用電源5と接続されている。なお、図1には示していないが、電力印加電極2は、回路インピーダンスを一定に調整するマッチング回路を介してプラズマ生成用電源5と接続されていることがより好ましい。
電力印加電極2と接地電極3とは、動作圧力における荷電粒子の平均自由行程との相関によりグロー放電が維持されるような間隔で配置されていることが好ましく、とりわけ大気圧下においては、その間隔は200μm以上8mm以下程度であればよいが、500μm以上4mm以下であることがより好ましい。電力印加電極2と接地電極3との間隔が200μm以上であることにより、荷電粒子の平均自由行程以上の空間を形成できるためグロー放電を安定に維持することができる。また、電力印加電極2と接地電極3との間隔が8mm以下であることにより、二次電子の過剰な発生が抑えられ、アーク放電に遷移することなくグロー放電を安定に維持することができる。なお、低圧下又は真空下でプラズマを発生させる場合には、電力印加電極2と接地電極3との間隔は、上記範囲に限定されるものではない。
このように電力印加電極2と接地電極3との距離を従前の低圧プラズマに比較して小さくすることによって、大気圧下でのプラズマ生成が可能となる。それゆえ、大掛かりな真空装置を用いる必要がなく、簡便に表面処理を行うことができる。
放電空間4には、フッ素含有高分子原料1が配置されている。ここで、フッ素含有高分子原料1は、原料保持手段(図示せず)によって放電空間4内に保持されている。原料保持手段は、フッ素含有高分子原料1を放電空間4内に保持する手段であればどのようなものであってもよく、例えば、シート状のフッ素含有高分子原料1の両端を把持する把持部材によるもの、放電空間4内に設置されたフッ素含有高分子原料1を載置するための原料載置台によるもの、フッ素含有高分子原料1をはめ込んで保持するホルダー等によるもの、フッ素含有高分子原料1の一部又は複数の部分を把持又は引っ掛ける保持部材によるもの等を挙げることができる。
なお、本実施形態においては、フッ素含有高分子原料1は、電力印加電極2と接地電極3との間に保持されているが、フッ素含有高分子原料1のチャンバー中又は放電空間4中における配置はこれに限定されるものではなく、後述するガス供給手段8から、チャンバー内又は放電空間内に導入されるガスと反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させることができれば、放電空間4のどの位置に配置されていてもよい。
本実施形態ではフッ素含有高分子原料1はシート状となっている。これにより、原料を狭いギャップ内に挿入でき、かつ容量結合を生じさせる電極間距離を極端に離さずに済むため、安定なプラズマを生成させやすいため好ましい。このように、フッ素含有高分子原料1としてシート状のものを用いる場合、そのシート状フッ素含有高分子原料の厚みは特に限定されるものではないが、0.02mm〜5mmであることが好ましく、0.1mm〜4mmであることがより好ましい。シート状フッ素含有高分子原料の厚みが、0.02mm以上であることにより、ガスとの反応によりフッ素含有高分子原料が消費されるまでの時間が短くなりすぎないため好ましい。それゆえ、フッ素含有高分子原料1の補給を頻繁に行う必要がない。また、シート状フッ素含有高分子原料の厚みが、5mm以下であることにより、過大な電力を必要とせず安定に大気圧プラズマが生成されるため好ましい。
なお、本実施形態ではフッ素含有高分子原料1はシート状となっているが、フッ素含有高分子原料1の形状は、これに限定されるものではなく、粒子状、棒状、管状、球状、メッシュ状等であってもよい。
フッ素含有高分子原料1は、後述するガス供給手段8から、放電空間内に導入されるガスと反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させるものであれば特に限定されるものではない。また、塩素含有化学反応種を発生させるためには、塩素含有高分子原料1を用いても良い。
なお、ここでフッ素含有化学反応種とは、所望とするプラズマ処理の実現に寄与する化学反応種であってフッ素を含有するものをいう。かかるフッ素含有化学反応種であって、例えば、エッチング処理の実現に寄与するものとしては、原子状フッ素、CFx(X=1、2又は3)、F、NFx(X=1又は2)、COF等を挙げることができる。また、かかるフッ素含有化学反応種であって、例えば、デポジット処理の実現に寄与するものとしては、CxFy等を挙げることができる。なお、ここで、xは1〜4の整数であり、yは0〜10の整数を示す。また、フッ素を含有するものではないが、CxHy等で表される化学種も、フッ素含有高分子原料が、放電空間内に導入される水素を含むガス成分と反応することによって生成し、デポジット処理の実現に寄与する化学種として挙げることができる。なお、このCxHyにおいても、xは1〜4の整数であり、yは0〜10の整数を示す。これらは、エッチング、デポジション等に好適に用いることができるため好ましい。
ここで、フッ素含有高分子原料1を、例えば、酸素又は水素を含有するプラズマに暴露することにより、フッ素含有化学反応種が生成する機構については、以下のように考えられる。
フッ素含有高分子原料1を、例えば、酸素又は水素を含有するプラズマに暴露するとき、プラズマ中には、プラズマ中での励起により非常に反応性に富む原子状酸素又は原子状水素が大量に生成されている。これらの原子状酸素又は原子状水素は、フッ素樹脂等のフッ素含有高分子原料1を化学反応により浸食することとなる。フッ素含有高分子原料1として、例えばPTFEを用いる場合、簡略化して考えると以下の化学反応が進行すると考えられる。なお、以下の式中、*は原子状の酸素、水素、フッ素等を示す。
・ −(CF)n− + 3nO → nCO + nF ・・・・(1)
・ nO + nCF → nCOF・・・・・・(2)
・ −(CF)n− + 6nH → nCH + 2nHF・・・・・(3)
一方で、加熱された場合には、以下の解重合反応が生じることが考えられる。
・ −(CF)n− → n/2 C(モノマー)又は−(CF)m−(低分子量重合体)
以上の過程により、プラズマに暴露されたPTFE表面からは、エッチャント(エッチング処理のためのフッ素含有化学反応種)の原料となるF、COF、HF、C等の生成が見込まれる。とりわけ上段の三つの反応式で示される反応が進行した場合、一切PFC系のガスを経ることなくエッチングに寄与する化学反応種が得られることになる。ここで、酸素を含有するプラズマに暴露された場合に発生するこれらのエッチャント原料は、従来のCFに比較して地球温暖化係数が格段に低く(例えば、CのGWP<1、FのGWP=0等)、さらには水スクラバー等の簡易的な除害設備により、水に溶存させれば危険で貴重なフッ素系反応種を簡便に回収することが可能となる。
ここで一旦プラズマ中に放出された上記エッチャント原料ガスは、プラズマ中で励起、分解され、例えば下記に示す経路に従って反応性に富むラジカル(フッ素含有化学反応種)となる。
・F + e → 2F + e
・COF + e → COF + F + e
・HF + e → F + H
・C + e → 2CF + e
・C + e → C + 2F + e
・C + e → C + 4F + e
例えば、被処理物としてSiや石英が設置されていれば、上記ラジカル(フッ素含有化学反応種)によって、以下の式に従って、被処理物がエッチングされることになる。
4F + Si → SiF
SiO + CF → CO + SiF
さらにモノマー状のCに代表されるCxFy分子をプラズマ中の酸素や水素に対し過剰に生成することにより、プラズマ中での励起反応により、プラズマ重合反応が生じ、被処理物上にフルオロカーボン薄膜(CF系薄膜)を形成することが可能となる。
なお、低圧プラズマを用いても同様の反応が生じることが予想されるが、低圧プラズマ中でのラジカル密度の小ささから上記(1)、(2)及び(3)式で示される反応に起因するフッ素樹脂のエロージョンは非常に遅い。このことはエッチャントガスの発生量を減少させるため、被処理物のエッチング速度の著しい低下につながるため、高いエッチング速度が求められる場合には、より大気圧に近い圧力下でプラズマ処理を行うことが好ましい。
なお、PTFEの加熱のみによる蒸気の発生では、加熱温度領域により、以下に示すような多種多様な物質が生成することが報告されている。
240℃以上:超微粒子の発生
360℃以上:テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロパン、トリフルオロ酢酸(酸素存在下)、ジフルオロ酢酸(酸素存在下)、モノフルオロ酢酸(酸素存在下)、パーフルオロ酢酸(酸素存在下)
475℃以上:パーフルオロイソブタン
500℃以上:フッ化カルボニル(COF)(酸素存在下)
600℃以上:フッ化トリフルオロ酢酸、オクタフルオロシクロブタン、パーフルオロブタン
650℃以上:カーボンテトラフルオライド(CF
本発明においては、プラズマ中での分解反応及び励起反応を積極的に利用することにより、熱的に発生させる場合に比較して、比較的低分子量且つ限定された種類のエッチャントガスを大量に生成することが可能となる。また、プラズマ中に供給される反応ガスの種類を少なくすることで、プロセスの制御性が向上する。
上記フッ素含有高分子原料1としては、炭素とフッ素を含有する高分子であることが好ましく、例えば、フッ素樹脂を好適に用いることができる。フッ素樹脂としては、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよいが、例えば、一例として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)等を挙げることができる。上記フッ素含有高分子原料1としては、さらには、フッ素含有グリース、フッ素オイル等を用いることもできる。
また、塩素含有化学反応種を発生させる場合には、塩素含有高分子原料1として、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)等を用いることができる。
チャンバーには、ガス導入部9が設けられており、ガス供給手段8から、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスが供給されるようになっている。ガス供給手段8は、前記ガスを供給することができればどのようなものであってもよいが、例えば、前記ガスのガスボンベ、ガス供給管、及び必要に応じて、圧力調節器、流量調節器、開閉弁等を含んでいる。かかるガス供給手段8から、ガス導入部9を経てチャンバー内に上記ガスが供給されるようになっている。
上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとしては、例えば、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスを挙げることができる。すなわち、これらのガスは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。かかるガスを用いることにより、被処理物7にフルオロカーボン樹脂膜のデポジションを行うことができる。
また、上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスは、さらに、酸素原子を含むガス及び/又は水素ガスを含んでいることが好ましい。酸素原子を含むガスを含んでいる場合、好適に上記フッ素含有化学反応種を発生させることができ、被処理物7を好適にエッチング処理することができる。
ここで、酸素原子を含むガスとは、特に限定されるものではないが、例えば、CO、CO、O、HO、O等を挙げることができる。これらの酸素原子を含むガスは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスと、酸素原子を含むガスとの混合ガスが用いられる場合は、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスと、酸素原子を含むガスとの混合割合は、酸素原子を含むガスが、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスに対して、0.01〜60vol%であることが好ましく、0.05〜50vol%であることがより好ましい。酸素原子を含むガスの割合が、0.01vol%以上である場合は、処理速度を極端に低下させず意図しないデポジションを生じさせないため好ましい。また、酸素原子を含むガスの割合が60vol%以下である場合は、プラズマ生成に過度な電力を投入する必要が無いため好ましい。
また、上記ガスが、水素ガスを含んでいる場合、好適に原子状水素を発生させることができ、前記CxFy分子のFとHの置換反応により被処理物7上に好適に炭化水素重合体をデポジション処理することができる。
例えば、用いられるガスは、ガスボンベ等に充填されており、開放弁を開閉制御することで単独で、又は、必要に応じて、それぞれの開放弁を開閉制御することで、組み合わされた混合ガスとしてチャンバー内に供給されるようになっている。
ここで、ガス供給手段8から導入されるガスは、放電空間4全体に供給されるようになっている。また、ガス供給手段8からの上記ガスの供給は、少なくとも放電空間4に、上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させることができる濃度のガスが存在するように行えばよい。したがって、ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法は、一度供給を行った後ガスが消費されるまで供給を停止する方法であってもよいし、間欠的に供給する方法であってもよいし、連続的に供給する方法であってもよい。
チャンバー内には、本実施形態のプラズマ処理装置により処理しようとする被処理物7が、発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマに暴露されるように、電力印加電極2側と接地電極3側とに設置されている。なお、被処理物7の設置方法は特に限定されるものではなく、電極上に載置する方法、チャンバー内に載置台を設けて当該載置台上に載置する方法、ホルダー等の保持手段により保持する方法等を挙げることができる。また被処理物7と電極及び載置台の密着性を向上させるため真空チャックや静電チャックを併用することもできる。なお、図1では、被処理物7は、電力印加電極2側と接地電極3側との2箇所に設置されているが、被処理物7は1つのみであってもよいし2つ以上であってもよい。また、被処理物7は、もちろん、図1のように必ずしも電極に接して設置されている必要はなく、発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマに暴露される位置であればどの位置に設置されていてもよい。
エッチング処理を行う場合には、被処理物7としては、例えばSi基板、SiO基板、石英、ゲルマニウム、タングステン、SiC、ダイヤモンド、グラファイト等、フッ素原子との反応による生成物が室温近傍で揮発性の物質になる物を挙げることができる。また、デポジション処理を行う場合には、被処理物7は特に限定されるものではなく、室温において固体状で存在する物質であればどのような材質であってもよく、Si基板、SiO基板等の他、例えば、ガラス、金属、高分子物質、セラミック全般、半導体等を挙げることができる。
被処理物7に照射されるプラズマの温度は、プラズマ生成条件に依存して変動するため特に限定されるものではないが、通常室温〜400℃である。
また、本発明においてプラズマ処理とは、発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマによる被処理物7の処理であれば特に限定されるものではなく、例えば、エッチング処理、デポジション処理、フッ化処理等を挙げることができる。
プラズマ生成用電源5は、13.56MHz、27MHz、40MHz等の市販の電源であることが好ましいが、プラズマが発生する電源であればいずれの周波数を用いてもよい。印加される周波数の範囲は、好ましくは200KHz〜2.45GHzであり、より好ましくは10MHz〜200MHzである。特に周波数が10MHz以上である場合は、比較的放電を生成・維持しやすい周波数であるため好ましい。また、特に周波数が200MHz以下である場合は、簡便なインピーダンス整合回路を構成しやすいため好ましい。
また、電力印加電極2と接地電極3との間に印加される印加電力は、目的とするプラズマ処理の種別に応じて適宜選択すればよいが、通常8W/cm〜1kW/cmであることが好ましく、15〜200W/cmであることがより好ましい。印加電力が、1kW/cm以下であることにより、プラズマの温度が上昇しすぎることがなく、非耐熱製品の表面処理を好適に行うことができる。また、印加電力が8W/cm以上であることにより、被処理物7の適当な処理時間内での表面処理のため、十分なプラズマを生成させることができる。
<第2の実施形態>
図2に本発明にかかるプラズマ処理装置の他の実施形態を示す。なお、以下、本明細書において同様の機能を有する部材については、同一の符号を付す。
プラズマ表面処理装置のチャンバー10には、電力印加電極2と接地電極3とが対向するように備えられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4に、好ましくはグロー放電により、プラズマを発生させるようになっている。
電力印加電極2は、回路インピーダンスを一定に調整するマッチング回路6を介してプラズマ生成用電源5と接続されている。
放電空間4には、フッ素含有高分子原料1が電力印加電極2に接するように保持されている。ここで、電力印加電極2に、フッ素含有高分子原料1を保持させる原料保持手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ素含有高分子原料1からなるチューブの内部に電力印加電極2を挿入する方法、シート状のフッ素含有高分子原料1が電力印加電極2に接するように両端を把持する方法等を挙げることができる。なお、フッ素含有高分子原料1は、必ずしも電力印加電極2に接するように保持されている必要はなく、電力印加電極2との間に空間があってもよい。
チャンバー10には、ガス導入部9が設けられており、ガス供給手段8から、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスが供給されるようになっている。
チャンバー10内には、本実施形態のプラズマ処理装置により処理しようとする被処理物7が、発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマに暴露されるように、接地電極3側に設置されている。なお、図2では、被処理物7は、接地電極3側に設置されているが、フッ素含有高分子原料1が接地電極3側に、被処理物7が電力印加電極側2に設置されている構成であってもよい。
電力印加電極2及び接地電極3の材質、電力印加電極2と接地電極3との間隔、フッ素含有高分子原料1の形状、シート状の場合の厚み、フッ素含有高分子原料1、フッ素含有化学反応種、ガス供給手段8、ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法、被処理物7、被処理物7の設置方法、上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガス、プラズマの温度、プラズマ処理、プラズマ生成用電源、印加電力については、上記第1の実施形態で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
<第3の実施形態>
図3に本発明にかかるプラズマ処理装置の他の実施形態を示す。
プラズマ表面処理装置には、電力印加電極2と接地電極3とが対向するように備えられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4に、好ましくはグロー放電により、プラズマを発生させるようになっている。
本実施形態にかかるプラズマ処理装置では、電力印加電極2は、複数の貫通孔を有する電極部13、ガス導入部9、ガス流路、及び、ガス吸引手段(図示せず)を含む構造を有している。前記複数の貫通孔の一部は、ガス導入部9側から放電空間4に向かって形成されており、ガス導入部9から導入されたガスを放電空間4に供給するためのガス供給孔14を構成している。また、前記複数の貫通孔以外の貫通孔は、放電空間4からガス吸引手段側に向かって形成されており、ガス吸引手段により放電空間4からガスを吸引して排出するためのガス排出孔15を構成している。また、電力印加電極2には、さらに、ガス導入部9から導入されたガスを複数のガス供給孔14に供給するガス供給流路16と、放電空間4から吸引されガス排出孔15をとおったガスを電力印加電極2の外部に排出するガス排出流路17とが設けられている。
これにより、ガス導入部9から導入されたガスは、ガス供給流路16から複数のガス供給孔14をとおって放電空間4に供給され、プラズマ中で、放電空間4に配置されたフッ素含有高分子原料1と反応する。一方、反応済みのガスは、ガス吸引手段により、複数のガス排出孔15をとおってガス排出流路17に吸引されて、電力印加電極2の外部に排出される。ここで、電極部13の複数の貫通孔は、ガス供給孔14とガス排出孔15とが交互に並んだものであることが好ましい。これにより、放電空間4におけるガスの供給と排出とが均一となる。それゆえ、各プラズマ中のガス成分が電極全体でより均一な状態となるため好ましい。
前記ガス吸引手段としては、放電空間4から、ガスを吸引して排出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、外空間との差圧を利用した自然排気、真空ポンプ、ブロワー等を挙げることができる。
放電空間4には、電力印加電極側2にガス供給孔14及びガス排出孔15をふさがないようにフッ素含有高分子原料1が保持されている。これにより、放電空間4に供給されたガスは、フッ素含有高分子原料1と反応してフッ素含有化学反応種を発生させるようになっている。しかし、フッ素含有高分子原料1は、必ずしも図3のように配置されている必要は無く、ガスの供給と排出を妨げずに放電空間4に配置されていればその位置は特に限定されるものではない。また、原料保持手段は、第1の実施形態で説明したとおりである。
また、本実施形態における、フッ素含有高分子原料1のプラズマに接する面の法線方向の厚みは第1の実施形態で説明した、シート状の場合と同様である。
また、電力印加電極2には、ガス導入部9から、図示しないガス供給手段8により、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスが供給されるようになっている。
ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法も、第1の実施形態で説明したとおりである。したがって、ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法は、一度供給を行った後ガスが消費されるまで供給を停止する方法であってもよいし、間欠的に供給する方法であってもよいし、連続的に供給する方法であってもよいが、本実施形態においては、ガスを供給するときに、同時に、ガス吸引手段を用いて供給される量と同量のガスを排出すればよい。
被処理物7の設置方法も、第1の実施形態で説明したとおりである。なお、本実施形態においては、被処理物7を、放電空間4に発生したプラズマに均一に暴露されるように揺動する揺動手段(図示せず)を備えていることが好ましい。すなわち、電極部13のガス供給孔14及びガス排出孔15と、接地電極3との間にはプラズマの発生しない部分が存在するため、被処理物を揺動させることにより、被処理物7を均一にプラズマに暴露させることができる。なお、揺動手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態のように、接地電極3が被処理物7の載置台をかねているような場合には、接地電極3をモータ等により揺動させるリニアステージ、回転ステージ等であればよい。
フッ素含有高分子原料1、フッ素含有化学反応種、ガス供給手段8、上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガス、被処理物、プラズマの温度、プラズマ処理、プラズマ生成用電源、印加電力については、上記第1の実施形態で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
<第4の実施形態>
図4に本発明にかかるプラズマ処理装置の他の実施形態を示す。
プラズマ表面処理装置のチャンバー10は、円筒状の形状を有し、チャンバー10の内部には、チャンバー10の中心部をチャンバー10の軸方向に伸びるように電力印加電極2が設けられている。接地電極3は、チャンバー10の外面に設けられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4に、好ましくはグロー放電により、プラズマを発生させるようになっている。
チャンバー10の上端にはガス導入部9が設けられており、図示しないガス供給手段8から、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスが供給されるようになっている。また、チャンバー10の下端は、外部に向かって開口する開口部11となっている。これにより、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4で発生されるプラズマ中を通過したガスは、開口部11から外部に放出される。
チャンバー10の開口部11と、放電空間4の下端との間には、チャンバー10の内径が、開口部11に向かうにつれて小さくなるテーパ構造が形成されている。これにより、開口部11から外部に放出されるプラズマ中を通過したガスの流速を大きくすることができる。それゆえ、放電空間4において生成されたラジカルを失活させずに開口部11外まで輸送できるため好ましい。なお、図4では、開口部11では、チャンバー内径が小さくなるようにテーパ構造が形成されているが、開口部11の構造は必ずしもこれに限定されるものではなく、開口部11における内径と、放電空間4の下端における内径とは同じであってもよい。
フッ素含有高分子原料1は、接地電極3の内側であって放電空間4に接するように配置されている。これにより、放電空間4に供給されたガスは、フッ素含有高分子原料1と反応してフッ素含有化学反応種を発生させるようになっている。なお、原料保持手段は、第1の実施形態で説明したとおりである。
また、本実施形態における、フッ素含有高分子原料1のプラズマに接する面の法線方向の厚みは第1の実施形態で説明した、シート状の場合と同様である。
また、放電空間4には、ガス導入部9から、図示しないガス供給手段8により、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスが供給されるようになっている。
開口部11の下流には、被処理物7が配置され、開口部11から放出されるフッ素含有化学反応種を含有したガスにより照射されて、プラズマ処理されるようになっている。
なお、被処理物7の設置方法は特に限定されるものではなく、載置台を設けて当該載置台上に載置する方法等を挙げることができる。また、被処理物7を開口部11から放出されるフッ素含有化学反応種を含有したガスにより照射する構成とすることにより、図4に示すように、被処理物7をベルトコンベア等で搬送して連続的な処理を行うことが可能となり、大量の被処理物7の処理に好適に用いることができる。
本実施形態においては、ガス供給手段8からの上記ガスの供給は、開口部11から放出されるフッ素含有化学反応種を含有したガスの必要な流速に応じて、供給速度を適宜決定すればよい。開口部11から放出されるフッ素含有化学反応種を含有したガスを連続的に放出する場合には、ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法は連続的に行えばよい。
電力印加電極2及び接地電極3の材質、電極の接続、電力印加電極2と接地電極3との間隔、フッ素含有高分子原料1、フッ素含有化学反応種、ガス供給手段8、上記フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガス、被処理物、プラズマの温度、プラズマ処理、プラズマ生成用電源、印加電力については、上記第1の実施形態で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
<第5の実施形態>
図5に本発明にかかるプラズマ処理装置の他の実施形態を示す。なお、図5では図示していないが、本実施形態にかかるプラズマ処理装置も、チャンバー、ガス導入口、ガス供給手段を備えるものである。
本実施形態においては、電力印加電極2が円柱の形状を有し、その周囲が円筒状の前記フッ素含有高分子原料1で覆われている。すなわち、図5は電力印加電極2を円柱の底面からみた図であり、紙面の手前−奥方向が円柱の高さ方向を示している。電力印加電極2には、電力印加電極2を、底面の中心を通り円柱の高さ方向に沿った軸を回転軸として回転するための駆動手段(図示せず)が備えられている。これにより、電力印加電極2を回転することで、フッ素含有高分子原料1を、放電空間4に供給することが可能となる。すなわち、本実施形態にかかるプラズマ処理装置は、フッ素含有高分子原料1を、放電空間4に連続的に供給可能な原料供給手段、および、前記ガス供給手段8に加えて反応ガスの連続供給手段が備えられているものである。
なお、電力印加電極2の形状は、円柱に限定されるものではなく、回転可能な構成であれば、どのような形状であってもよい。例えば多角柱であってもよい。
また、フッ素含有高分子原料1は、電力印加電極2を覆っていればどのように固定されているかは問わない。例えば、フッ素含有高分子原料1からなるチューブ内に電力印加電極2を挿入する方法、電力印加電極2にシート状のフッ素含有高分子原料1を巻きつける方法等を挙げることができる。
また、電力印加電極2を回転する方法も特に限定されるものではなく、例えば、化学反応によってフッ素含有高分子原料1が消費された後に、電力印加電極2の回転によって、消費されていないフッ素含有高分子原料1の部分を放電空間4に供給する方法を挙げることができる。複数回の回転により全てのフッ素含有高分子原料1が消費されるまでの間、新たなフッ素含有高分子原料1を供給することなく、プラズマ処理を行うことが可能となる。さらにこの電極の回転により、固体−気体界面の摩擦力により電極周囲を取り囲む新鮮雰囲気に粘性流が誘起される。これを利用して新鮮反応ガスを放電空間内に随時供給することで、放電空間内に充分な反応ガス成分(例えば酸素など)が存在し、電極表面のフッ素含有高分子原料との反応が連続的に速やかに進行する効果が現れる。また、電力印加電極2を回転する方法はこれに限定されるものではなく、例えば、連続的に回転する方法を用いて、電力印加電極2の周囲のフッ素含有高分子原料1を均一に反応させながら、全体として、長時間新たなフッ素含有高分子原料1を供給することなく、プラズマ処理を行う方法であってもよい。
本実施形態にかかるプラズマ処理装置は、かかる原料供給手段が備えられている以外は上述した実施形態同様である。すなわち、プラズマ処理装置には、電力印加電極2と接地電極3とが対向するように備えられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4にプラズマを発生させるようになっている。ここで、フッ素含有高分子原料1は、図示しないガス供給手段及び/又は電極の回転運動による固体−気体界面の摩擦力によるガス流により図5中矢印で示されるように放電空間内に導入されるガスと反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させる。
また原料供給手段としては、図5に示すものに限定されるものではなく、フッ素含有高分子原料1を、放電空間4に供給するものであれば、どのようなものであってもよい。原料供給手段の他の例としては、例えば、図6示す原料供給手段を挙げることができる。図6に示すプラズマ処理装置では、電力印加電極2が円柱の形状を有し、円柱の高さ方向に沿った軸を回転軸として回転するための駆動手段(図示せず)が備えられている。巻出しロール18からシート状のフッ素含有高分子原料1が駆動ロールとしての機能を兼ねる電力印加電極2に巻き付けるようにして供給される。このように、電力印加電極2を回転することで、フッ素含有高分子原料1および粘性流による新鮮反応ガスを、放電空間4に供給することが可能となる。
このようにして放電空間4に供給されたフッ素含有高分子原料1が化学反応によって消費された後に、電力印加電極2の回転によって、消費されていないフッ素含有高分子原料1の部分が放電空間4に供給され、消費されたフッ素含有高分子原料1は巻取りロール19に巻き取られる。これにより、簡単に新たなフッ素含有高分子原料1を供給することが可能となり、連続してプラズマ処理を行うことが可能となる。
なお、上述した駆動ロールを用いてシート状のフッ素含有高分子原料1を放電空間4に供給する原料供給手段は、例えば、第1の実施形態にかかるプラズマ処理装置においても、好適に用いることができる。
<プラズマ処理方法>
次に、本発明にかかるプラズマ処理方法について説明する。プラズマ処理方法には、(i)例えば実施形態1乃至3及び5にかかるプラズマ処理装置を用いる場合のように、処理しようとする被処理物7を、発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマに暴露させる方法、言い換えれば、被処理物7にプラズマを直接照射する方法と、(ii)例えば実施形態4にかかるプラズマ処理装置を用いる場合のように、処理しようとする被処理物7を、放電空間4とは離れた場所で、プラズマ中を通過したガスであって活性化学種を含有したガスを照射する方法とが含まれる。
上記(i)の方法では、まず、被処理物7を発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマに暴露される位置に配置する。また、フッ素含有高分子原料1を、放電空間4内の所定位置に配置する。続いて、フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを、ガス供給手段8によってガス導入部9から、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4内に導入する。そして、電力印加電極2と接地電極3との間に電界を印加してプラズマを発生させる。これにより、フッ素含有高分子原料1は、放電空間内に導入されるガスと反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させる。このようにして発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマを、被処理物7に直接照射することによって、被処理物を処理する。
上記(ii)の方法では、まず、被処理物7をチャンバー10の開口部11下流の所定位置に配置する。また、フッ素含有高分子原料1を、放電空間4内の所定位置に配置する。続いて、フッ素含有高分子原料1と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを、ガス供給手段8によってガス導入部9から、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4内に導入する。そして、上記ガスを供給しながら、電力印加電極2と接地電極3との間に電界を印加してプラズマを発生させる。これにより、フッ素含有高分子原料1は、放電空間内に導入されるガスと反応することによって、フッ素含有化学反応種を発生させる。このようにして発生したフッ素含有化学反応種を含むプラズマ中を通過したガスであってフッ素含有化学反応種を含有したガスを、チャンバー10の開口部11から放出して、被処理物7の表面に照射することによって、被処理物7を処理する。
(2)ガス発生装置及びガス発生方法
本発明にかかるプラズマ処理装置は上述したように、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理するようになっている構成を有しているので、本発明には、プラズマ中に、被処理物を処理することができるフッ素含有化学反応種を発生させるガス発生装置及びガス発生方法も含まれる。なお、ここで、発生するガスとは、フッ素含有化学反応種が発生しているプラズマ自体及び、当該プラズマ中を通過したガスを含む趣旨である。
本発明にかかるガス発生装置は、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させるようになっているものであれば特に限定されるものではない。例えば、本発明にかかるガス発生装置としては、上述した実施形態1乃至3及び5において、被処理物7を除く構成を有するものを挙げることができる。かかるガス発生装置を利用する方法としては、発生したガスに被処理物を直接暴露させる方法、ガス供給手段8からフッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給しながら、チャンバーの外部にプラズマ中を通過したガスを放出させて、このガスを被処理物に照射する方法等を挙げることができる。また、本発明にかかるガス発生装置としては、上述した実施形態4において、被処理物7を除く構成を有するものをそのままガス発生装置として用いることができる。
また、本発明にかかるガス発生方法は、プラズマを発生させる放電空間に、フッ素含有高分子原料を配置し、当該フッ素含有高分子原料と放電空間に導入されるガスとを反応させることによって、プラズマ中でフッ素を含有する活性化学種を発生させる方法であればよい。
(3)フッ素含有高分子廃棄物処理方法
本発明にかかるプラズマ処理装置は上述したように、プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理するようになっている構成を有している。本発明者らは、本発明のプラズマ処理装置に、上記フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとして水素を供給したところ、フッ素含有高分子原料の表面が黒化しており、炭化が進行していることを見出した。このことから、水素を供給したプラズマにおいては、フッ素含有高分子原料との反応において、フッ素含有高分子原料中のF原子の引き抜き及びF原子との置換反応が起こっていると考えられる。それゆえ、かかるプラズマ処理は、現在産業廃棄物として埋め立て処理されているフッ素含有高分子廃棄物から貴重なフッ素資源を回収する手法として利用することができると考えられる。
それゆえ、本発明には、フッ素含有高分子廃棄物にプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより、当該フッ素含有高分子廃棄物のフッ素を回収するフッ素含有高分子廃棄物処理方法であって、プラズマを発生させる放電空間にHを含むガスを導入して発生させたプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを、フッ素含有高分子廃棄物に照射するフッ素含有高分子廃棄物処理方法も含まれる。
本発明に係るフッ素含有高分子廃棄物処理方法は、例えば、図7に示すプラズマ処理装置を用いて行うことができる。図7に示すプラズマ処理装置のチャンバー10の内部には、チャンバー10の中心部をチャンバー10の軸方向に伸びるように電力印加電極2が設けられている。接地電極3は、電力印加電極2を挟むように、チャンバー10の両外面に沿って設けられており、電力印加電極2と接地電極3との間の放電空間4にプラズマを発生させるようになっている。なお、接地電極3と電力印加電極2との配置は、これに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。
また、チャンバー10には、フッ素含有高分子廃棄物の導入部12が備えられており、導入部12から、フッ素含有高分子廃棄物がチャンバー10内に導入され、放電空間4に輸送される。放電空間4への輸送方法は特に限定されるものではなく、例えば、ガスの流れを利用した流動層等によって輸送すればよい。なお、フッ素含有高分子廃棄物は、プラズマ処理による処理を効率的に行う観点からは、破砕されたものであることが好ましく、その大きさは表面積/体積の関係から小さければ小さいほどより好ましい。なお、チャンバー10内へのフッ素含有高分子廃棄物の供給形態は、必ずしもこれに限定されるものではなく、図5に示す回転体表面に付着させる方法であってもよいし、ベルトコンベア上に載せて放電空間内へ搬送する方法であってもよい。
上記フッ素含有高分子廃棄物としては、特に限定されるものではないが、例えば、PTFE、PFA、ETFE、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂を挙げることができる。
チャンバー10には、ガス導入部9が設けられており、ガス供給手段8から、Hを含むガスが供給されるようになっている。ここで、Hを含むガスとは、Hを含むガスであれば特に限定されるものではないが、Hに加えてさらに、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスを含むガスであることがより好ましい。これにより、好適に、水素を供給したプラズマによるフッ素含有高分子廃棄物中のF原子の引き抜き及び置換反応を起こすことができる。なお、Hを含むガス中における、Hの割合も特に限定されるものではないが、Hを含むガスの全分圧を1としたときに、0.0005〜1であることが好ましく、0.01〜1であることがより好ましい。これにより、好適に、水素を供給したプラズマによるフッ素含有高分子廃棄物中のF原子の引き抜き及び置換反応を起こすことができる。
また、上記He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスと、Hとの混合ガスが用いられる場合は、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスと、Hとの混合割合は、Hが、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスに対して、0.05〜100vol%であることが好ましく、1〜100vol%であることがより好ましい。あるいは、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスと、Hとを含むガスの全分圧を1としたときに、Hの分圧は0.0005〜1であることが好ましく、0.01〜1であることがより好ましい。これにより、好適に、水素を供給したプラズマによるフッ素含有高分子廃棄物中のF原子の引き抜き及び置換反応を起こすことができる。
ガス供給手段8は、前記ガスを供給することができればどのようなものであってもよいが、例えば、前記ガスのガスボンベ、ガス供給管、及び必要に応じて、圧力調節器、流量調節器、開閉弁等を含んでいる。かかるガス供給手段8から、ガス導入部9を経てチャンバー内に上記ガスが供給されるようになっている。
用いられるガスは、例えば、ガスボンベ等に充填されており、開放弁を開閉制御することで単独で、又は、必要に応じて、それぞれの開放弁を開閉制御することで、組み合わされた混合ガスとしてチャンバー10内に供給されるようになっている。
ここで、ガス供給手段8から導入されるガスは、放電空間4全体に供給されるようになっている。また、ガス供給手段8からの上記ガスの供給は、少なくとも放電空間4に、フッ素含有高分子廃棄物中のF原子の引き抜き及び置換反応を起こすことができる濃度のHを含むガスが存在するように行えばよい。したがって、ガス供給手段8からの上記ガスの供給方法は、一度供給を行った後ガスが消費されるまで供給を停止する方法であってもよいし、間欠的に供給する方法であってもよいし、連続的に供給する方法であってもよい。
電力印加電極2及び接地電極3の材質、電極の接続、電力印加電極2と接地電極3との間隔、プラズマの温度、プラズマ生成用電源、印加電力については、上記(1)の第1の実施形態で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1:本発明のプラズマ処理装置(エッチング装置)及びプラズマ処理方法を用いたエッチング処理〕
<本発明のプラズマ処理装置(エッチング装置)を用いたエッチング処理>
まず、PTFEをフッ素含有高分子原料1として用い、図2に示すプラズマ処理装置を用いて被処理物7のエッチングを行った。電力印加電極2としては、側面が前記フッ素含有高分子原料1で覆われた、円柱の形状のものを用いた。この電力印加電極2は、肉厚0.9mm、外径13.8mmの市販のPTFEチューブに、外径12mm、長さ6cmのステンレス製中実丸棒を挿入することにより作製した。
次に、電力印加電極2及び接地電極3を設置したチャンバー10をドライポンプにより、0.3Torr以下にまで排気した後、まず、フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとしてOを所定の圧力まで導入し、その後希釈ガスとしてHeをチャンバー10内の全圧が380Torrとなるように充填した。その後、150MHzの高周波電源5から、所定の電力を電力印加電極2に投入しプラズマを発生させた。プラズマは、電力印加電極2と接地電極3との距離が最小となる位置を起点として局在した空間に生成された。ここでプラズマ中のガス流は、熱的な対流及び拡散であり能動的な制御は実施していない。被処理物7としては、Si(100)基板を用いた。
<エッチング処理後のSi表面プロファイル>
図8に、印加電力を100W一定とし、(a)酸素分圧15Torrで8分間プラズマに暴露後、(b)酸素分圧30Torrで4分間プラズマに暴露後、及び(c)酸素分圧6Torrで5分間プラズマに暴露後のSi基板表面の形状を触針式粗さ計(東京精密社製、Surfcom590A、以下、実施例において記載されている触針式粗さ計測定はすべて同型の触針式粗さ計による。)により測定した結果を示す。図8(a)に示すように、酸素分圧15Torr(He希釈後の全圧が380Torr)の雰囲気下においては、電力印加電極2と被処理物7との間の距離が最小となる部分を中心にしてSi基板のエッチングが進行していることが確認された。
また、図8(b)に示すように、酸素分圧の増加によりエッチングの領域幅の減少が確認された。これは、酸素分子の増加によりプラズマ中の単位体積当りのエネルギー消費密度の飽和値が増大し、電極周方向のプラズマ長さが縮小した結果プラズマ体積が減少したためと考えられる。
また、図8(c)に示すように、酸素分圧が6Torr(He希釈後の全圧が380Torr)の場合には、プラズマ生成領域全体でエッチングが進行しているものの、電力印加電極2と被処理物間との間の距離が最小となる部分において鞍部を持つ形状が確認された。これは、本実験系のプラズマ内へのガス供給が主に拡散のみに依存しており、酸素分圧の低下とともに、PTFEからエッチャントとしてフッ素含有化学反応種を供給するために必須の酸素がプラズマ外縁部で消費され、電力印加電極2と被処理物7との間の距離が最小となる部分では十分なフッ素含有化学反応種を生成するための酸素が不足しているためであると考えられる。
本実施例より、本手法は、エッチャントの供給方法として適用可能であることが確認された。
〔実施例2:本発明のプラズマ処理装置(デポジション装置)及びプラズマ処理方法を用いたデポジション処理〕
<本発明のプラズマ処理装置(デポジション装置)を用いたデポジション処理>
さらに酸素分圧を3Torr(He希釈後の全圧が380Torr)に低下させた以外は、上記実施例1と同様にして被処理物の処理を行った。印加電力を100W一定とし、酸素分圧3Torrの雰囲気下において、2分30秒間プラズマに暴露後のSi基板表面の観察像を図9(a)に、得られたSi表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を図9(b)に示す。
図9(a)に示すようにSi基板上に干渉色を呈する部位が観察され、図9(b)に示すように、当該干渉色を呈する部分は、Si基板表面から凸状の形状を呈しており薄膜の形成が確認された。
形成された薄膜について、FTIR(島津製作所製、8600PC、以下、実施例において記載されているFTIR測定はすべて同型のものによる。)による吸収測定を行った。図10の(b)にその結果を示す。図10中縦軸は吸収強度、横軸は波数を示す。図10には、酸素分圧を0Torr(He希釈後の全圧が380Torr)とした場合に形成された薄膜のFTIR吸収スペクトル(a)、及び、厚さ25μmのPTFE箔のFTIR吸収スペクトルも併記した。図10に示すように、酸素分圧を3Torrとした場合、725cm−1辺りにC−Fの振動ピークが現れ、さらに、1127及び1270cm−1に非常にブロードなピークが現れている。1200cm−1近傍のピークは、CF、CF、CF関連の振動によるピークを示している。また、1700cm−1近傍に現れるピークは CF=CF 又は −C=O に起因しており、形成された薄膜中に炭素が二重結合した成分が存在していることを示している。さらに、酸素分圧を0Torrとした場合にも、同様に1700cm−1近傍のピークが略比率を変化させずに現れていることから、CF=CF等によるピークであると推測される。
また、本実施例で形成された薄膜のFTIR吸収スペクトルは、CF等の原料ガスを用いた低圧プラズマCVDや、PTFEターゲットを用いた低圧スパッタ法により得られたCF系薄膜と略同様のスペクトルを示している。このことは、本手法は、CF系薄形成の高効率原料供給法として用いることができることが確認された。
また、上記〔実施例1〕でエッチング処理されたSi基板についても、FTIRによる吸収測定を行った。その結果、図には示さないが、図10に示すピークは観察されなかった。この結果から、〔実施例1〕では、成膜現象は実質的に生じておらず、電力印加電極2と接地電極3との距離が最小となる位置において生じる鞍部においてもエッチングが進行していることが判った。
〔実施例3:エッチング速度及びデポジション速度の酸素分圧依存性〕
実施例1及び2から、本発明のプラズマ処理装置又はプラズマ処理方法においては、酸素分圧の変動により、Si基板表面で生じる現象が大きく変化することが示された。そこで、酸素分圧を変化させると、Si基板に対するエッチング速度又はデポジション速度がどのように変化するかを測定した。測定においては、印加電力を100Wで一定とし、電力印加電極2と接地電極3との距離を1mmとして、酸素分圧を0〜30Torr(He希釈後の全圧が380Torr)まで変化させた他は実施例1と同様にしてSi基板をプラズマ処理し、エッチング速度及びデポジション速度を触針式粗さ計により測定した。
図11にその結果を示す。図11中、縦軸に示されるエッチング速度が負の値を示す領域は、CF系薄膜のデポジションが起こっていることを意味しており、一方エッチング速度が正の領域ではエッチングが起こっている。図11に示すように、本実施例のプラズマ処理方法では、酸素分圧が5Torr以下では、CF系薄膜のデポジションが起こり、酸素分圧が5Torrを超えるとSi基板のエッチングが起こっていることが確認された。本実施例のプラズマ処理条件では、CF系薄膜の最大デポジション速度は、酸素分圧3Torrのとき、1.2μm/minであった。
また、酸素分圧を5Torrより大きくした場合には、いずれの条件においてもエッチングが起こり、そのエッチング速度は、酸素分圧の増加とともに大きくなることが判った。しかしながら、15Torrから30Torrへの酸素分圧の増加に伴うエッチング速度の増加は、5Torrから15Torrへの酸素分圧の増加に伴うエッチング速度の増加と比較して緩慢な傾向を示した。これは酸素分圧に対して十分に酸素を活性化させるための電力が不足したためであると考えられる。なお、本実施例のプラズマ処理条件では、酸素分圧が30Torrのとき、1.4μm/minの最大エッチング速度が得られた。
以上のことから、プラズマ中に含まれる酸素が、プラズマ処理に重要な働きをしていることが判る。
〔実施例4:エッチング速度及びデポジション速度の印加電力依存性〕
エッチング速度及びデポジション速度の印加電力依存性についての検討を行った。酸素分圧6Torrになるように酸素を導入した後、Heをチャンバー10内の全圧が380Torrとなるように充填した。プラズマを生成し、プラズマの生成時の電力を、50W〜250Wの間で変化させた他は実施例1と同様にしてSi基板をプラズマ処理し、プラズマ暴露後のSi基板表面を触針式粗さ計により測定した。図12にその結果を示す。図12中、四角印が各電力におけるエッチング速度を示し、丸印が各電力におけるデポジション速度を示す。図12に示すように、酸素分圧を6Torrに固定した条件では、印加電力が50から100Wへ増加するのに伴いエッチング速度が若干増加しているものの、100W以上の印加電力を印加した場合にはエッチング速度が低下する傾向を示した。一方、デポジション速度は、150Wまでは全く認められなかったが、150W以上の電力を投入することにより、急激にデポジションが起こることが判った。本実施例の実験条件において、最大のエッチング速度は、印加電力が100Wのときの500nm/minであり、最大のデポジション速度は、6μm/minであった。
本実施例により確認されたエッチング速度及びデポジション速度の印加電力依存性は、印加電力の増大とともにPTFEが加熱され、解重合反応が促進された結果、プラズマ中の原子状酸素に対して過剰なCxFyが供給されたことが影響していると考えられる。このことから、最大のエッチング速度を得るためには、設定した酸素分圧に対して適切な印加電力が存在することが明らかとなった。
〔実施例5:プラズマ中のフッ素含有化学反応種の同定〕
発光分光によりプラズマ中のフッ素含有化学反応種の同定を行った。発光分光は、CCDリニアアレイが搭載された分光器(オーシャンオプティクス社製、USB2000)を用いて行った。印加電力を110W±10Wとし、酸素分圧を0、3、6及び12Torr(He希釈後の全圧が380Torr)と変化させた以外は実施例1と同様にして、発生したプラズマの発光分光スペクトルを観測した。
図13に得られた発光分光スペクトルを示す。図13に示すように、酸素分圧の増大に伴ってCO分子からの発光が顕著になることが判る。さらに、低酸素分圧条件においては、250nm〜350nmに及ぶ領域に連続的なスペクトルが顕著に観察される。これらは、CxFyに起因した分子スペクトルであると考えられる。一方酸素分圧が0Torrの場合には、波長450から600nmの領域においてCO分子からの発光は観察されず、C分子のスワン帯からの発光(512〜516nm)のみが観察された。また、原子状酸素の存在を示す777nmのピークは8Torr以上の酸素分圧で観察される。ここで、原子状フッ素は、685及び703nmに強い発光ピークを有するが、図13に示すいずれの発光分光スペクトルにも観察することができなかった。ここで、原子状酸素のピークが低いのは、PTFEやCxFy分子等との酸化反応によりプラズマ中で原子状酸素が多数消費されているためであると考えられる。
以上の発光分光結果と図11で得られた結果より、CxFy分子からの発光が強い場合及び512nmにおけるC分子のスワン帯からの発光が、519.8nmにおけるCOの発光に比較して顕著な場合にCF系薄膜の形成が起こることが判った。また、同一の電力を投入した場合、酸素分圧を上昇させることで、CO等の分子が形成されやすくなる結果、CF系及びC系の分子が生じにくくなることが判った。
次に、酸素分圧を6Torr(He希釈後の全圧が380Torr)として、印加電力を50W〜180Wまで変化させた以外は実施例1と同様にして、発生したプラズマの発光分光スペクトルを観測した。図14に得られた発光分光スペクトルを示す。図14に示すように、印加電力が50Wの場合、最も発光に寄与するフッ素含有化学反応種は777nmにピークを呈する酸素原子であり、それに続いてCO分子の発光ピークが観察された。さらに、50Wの電力では、波長250nm〜350nmに及ぶCxFyに関連した発光は殆ど観察されなかった。しかしながら、上記実施例4では、印加電力が50Wではエッチングが起こっていることが示されている。このことから、本手法で重要な働きをするエッチャントは、プラズマによって熱的な解重合により生成されるCxFyではなく、PTFEが原子状酸素によって酸化エロージョンされることにより生成されるF原子であると考えられる。また、電力を増加させた場合には、777nmの原子状酸素のピークは急激に減少しCO分子の発光強度が強くなる傾向がある。また、これと同時にCxFy分子に起因する発光は電力と共に増大していくことがわかる。
図15は、図14で得られた発光分光スペクトルにおいてCOとC分子とが近接して現れる波長域490nm〜530nm(図15(a))、さらには原子状酸素、原子状フッ素、及びHeの発光が現れる波長650nm〜800nm(図15(b))を拡大した図を示している。図15(a)に示すように、電力の増加に伴って、CO分子からの発光に対してC分子のスワン帯からの発光が顕著になることが判る。一方で、図15(b)に示すように、いずれの印加電力においても原子状フッ素の存在が確認できた。また、原子状酸素のピーク強度は、250nm〜350nmのCxFy分子スペクトルの出現に伴って減少することが明らかになった。これは、大きな印加電力では、原子状酸素が大量のCxFyと気相中で反応し減少したためであると考えられる。一方、図14(b)で観察された、大きな印加電力で生成される原子状フッ素は、熱的に生成されたCxFy分子のC−F結合をプラズマ中の荷電粒子が分解することにより生じたものであると考えられる。このようなフッ素の生成形態は、CxFyが完全に分解されても安定な固体を形成するC原子がSi基板上に付着し、再度フッ素と反応することでSi基板のエッチング速度は低下してしまうと考えられる。さらには、CxFyがプラズマ中でSi基板上にCF系薄膜を形成すれば、かかるCF系薄膜はマスクとして働くために、エッチング速度を低下させる一因となると考えられる。このため、CxFyの積極的な生成は、CF系薄膜の形成やCF系エッチングガスの供給源としての応用には向いているが、本発明におけるような、フッ素含有高分子原料とSi基板とを対向させた直接エッチング処理の場合には回避すべき事項であると考えられる。
〔実施例6:エッチング処理されたSi基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)による評価〕
酸素分圧を変化させて、上記実施例1と同様の方法でエッチング処理を行ったSi基板の表面の粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメンツ製、SPA400)を用いて観察した。評価の対象としたのは、酸素分圧が3、6、及び15Torr(いずれの場合もHe希釈後の全圧が380Torr)のときのものである。印加電力はCxFyの発生がほぼ無視できる50Wとした。観察の結果、エッチング処理後のSi基板表面には、直径20〜100nm、高さ10nm程度の微小な突起からなるマイクロラフネスが存在することが明らかとなった。このようなマイクロラフネスは、50Wの印加電力において生成したCxFy分子が局所的にCF系薄膜を形成することによりマスク効果が発生し生成したものであると考えられる。このため、良好な表面粗さを有する表面を形成するためには、より印加電力を低減、すなわち、エッチング速度を低下させた条件で行うことが好ましいと考えられる。ここで、原子間力顕微鏡(AFM)による観察の結果から、酸素分圧とSi基板の表面粗さのRMS値の関係を調べた。その結果、酸素分圧の増大に伴ってRMS値が増加することが判った。
〔実施例7:高酸素分圧下でのエッチング処理〕
上記実施例より、エッチング速度を最大するためには、酸素分圧を高めるとともに、供給される酸素分圧に見合った印加電力を投入する必要性があることが予想される。そこで、酸素分圧を、40Torr(He希釈後の全圧が380Torr)、印加電力を300W、エッチング時間を4.75分とした以外は実施例1と同様にしてエッチング速度の最大化を試みた。なお、被処理物としては単結晶Si基板を用いた。その結果、最大135μmの深さまでSi基板の表面がエッチングされていることが確認された。このことは、本発明のプラズマ処理装置又はプラズマ処理方法により、28.4μm/分のエッチング速度が得られることを意味している。ここで、エッチングの時間を4.75分としたのは、フッ素含有高分子原料の消費が激しく4.75分の経過の段階で、プラズマに暴露されているPTFEが枯渇し金属電極面が露出したためである。以上のことから、十分な酸素と印加電力とを同時に供給することにより、大きなエッチング速度が得られることが証明された。
〔実施例8:デポジション処理により形成されたCF系薄膜の評価〕
実施例2と同様にして得られたCF系薄膜について、水との濡れ性及び電気特性の評価を行った。まず、ガラス基板上及びSi基板上に形成したCF系薄膜に対して10μlの水を滴下しその撥水性を評価した。その結果、ガラス基板、Si基板ともに、CF系薄膜が形成された箇所では水滴が形成され、良好な撥水性が得られていることが確認された。
次に、Si基板上に形成されたCF系薄膜に対して電流電圧特性及び電気容量を測定することにより、形成されたCF系薄膜の絶縁破壊耐圧及びCF系薄膜の誘電率を評価した。図16に形成したCF系薄膜の電流電圧特性を示す。測定は、膜厚約400nmのCF系薄膜上に直径3mmのアルミ電極を形成して行った。なお電流電圧測定は、HewlettPackard社製、HP4156Bを用いて行った。図16から、絶縁破壊電圧は正負ともに12V程度であり、絶縁破壊耐圧は30kV/cmと算出された。CF系薄膜を作成する条件が最適化されていないため、現状で得られた絶縁破壊耐圧は未だ十分な値とは言えないものの、形成したCF系薄膜の一部では45V以上まで電圧を印加しても絶縁破壊が起こらない箇所があったことから、さらにCF系薄膜の形成条件を調整することで層間絶縁膜にも応用可能な十分な絶縁破壊耐圧を有するCF系薄膜の形成が可能になると考えられる。
また、Si基板上に形成されたCF系薄膜にさらに金属薄膜を堆積させてMIS構造を形成し、かかるMIS構造についてCV特性を評価し、膜の誘電率を求めたところ、ε=2.38であった。現段階でLSI等の低誘電率膜に必要とされる誘電率は1.6〜2.2であるため、現状ではまだこの要求に答えられていないが、これについてもCF系薄膜の作製条件を最適化することで達成可能であると考えられる。
〔実施例9:本発明のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を用いたプラズマ処理〕
フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとしてCOを用いた以外は実施例1と同様にしてSi基板のプラズマ処理を行った。印加電力は250W、CO分圧は6Torrとした。その結果、電力印加電極2と接地電極3との距離が最小となる位置を中心に膜の形成が見られ、プラズマ端部ではSi基板のエッチングが確認できた。エッチングの深さは約2μmであった。この結果は、フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとしてCOを用いた場合も、酸素を使用した場合と同様にエッチングが可能であることを示している。なお、かかる場合生成される排出ガスとしてはCOが予想される。
本実施例において発生したプラズマについて、印加電圧を45W、100W、150W、220Wと変化させて発光分光を行った。発光分光は、CCDリニアアレイが搭載された分光器(オーシャンオプティクス社製、USB2000)を用いて行った。その結果、100Wの印加電力までは、他のピークに比較して原子状酸素からの発光を観察することができるが、それより大きい印加電力を投入しても原子状酸素の発光は他のピークの増大に比較して非常に小さいことがわかった。最も顕著なピークは、COに起因するピークであり、波長280nm〜380nm、及び450nm〜560nmの範囲に観察された。150W以上の高印加電力の領域では、CxFy分子からの発光が顕著になっていることが判った。CO分子は、CxFyの酸化反応及びCOの分解反応の両方によって生成されるため、C分子のスワン帯とCOのピークとを比較した場合、高い印加電力においてもCOが顕著に現れる結果となった。
〔実施例10:本発明のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を用いたプラズマ処理〕
フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとしてHを用いた以外は実施例1と同様にしてSi基板のプラズマ処理を行った。印加電力は100W、230Wの2とおり、H分圧は17Torrとした。その結果、印加電力を100Wとした場合にプラズマ端部で若干エッチングらしき現象が観察されたが、エッチング現象はそれ以外には確認されず、膜の付着が観察された。この結果から、デポジションにはHを上記ガスとして用いることができるが、エッチングにおいてはHを上記ガスとして選択することは不適当であると考えられる。
ここで、Si基板表面に付着した膜について、FTIRによる吸収測定を行った。図17にその結果を示す。図17中縦軸は吸収強度、横軸は波数を示す。図17には、印加電力を230Wとした場合及び100Wとした場合のFTIR吸収スペクトルを示す。図17に示すように、波数720、1420cm−1近傍に顕著に観察されるピークはCH、2875cm−1、2925cm−1及び2960cm−1に観察されるピークはそれぞれ、CH、CH、CHに相当する。また、3200〜3500cm−1にかけて観察されるピークは、OH、C=O、≡CHが原因として考えられ、とりわけ空気暴露により付着した水に起因するOH基の振動による可能性が高い。以上のように、水素混合気体中で形成された物質は、いずれもC−F結合に比べてC−H結合が多量に含まれる膜となった。また、酸素を供給したプラズマに暴露したPTFEと、水素を供給したプラズマに暴露したPTFEとを比較すると、水素を供給したプラズマに暴露したPTFEの表面は黒化しており、炭化が進行していることが示された。一方酸素を供給したプラズマに暴露したPTFEは、暴露前のPTFEと比較しても、エロージョンによる変形以外ほぼ変化はない。このことから、水素を供給したプラズマにおいては、PTFEとの反応において、PTFE中のF原子の引き抜き及び置換反応が起こっている可能性が高いことが示される。それゆえ、かかるプラズマ処理は、現在産業廃棄物として埋め立て処理されているフッ素含有高分子廃棄物から貴重なフッ素資源を選択的に回収する手法として利用することができると考えられる。
〔実施例11:本発明のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を用いたプラズマ処理〕
フッ素含有高分子原料として、PTFEの代わりにPFAを用いた以外は実施例1と同様にして被処理物のプラズマ処理を行った。なお、電極としては、PTFE被覆材の代わりに、PFAにより被覆された金属線を用いて、図2に示すプラズマ処理装置を組み上げプラズマ処理を行った。用いたPFA被覆材の厚さは275μm、中心金属線の直径は1mmであった。かかる金属線と、被処理物を載置した接地電極2との間にプラズマを生成し、被処理物のプラズマ処理を行った。
<単結晶Si基板を被処理物とするプラズマ処理>
単結晶Si基板を被処理物としてプラズマ処理を行った。条件としては、酸素分圧3Torr(He希釈後の全圧が380Torr)、印加電力55W、エッチング時間を3分にて行った。図18に単結晶Si基板表面の表面形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す。図18に示すように、単結晶Si基板表面は最大800nmまでエッチング処理されており、PFAを用いた場合においても、エッチング処理を行うことができることが確認された。また、印加電力を80Wとした場合の結果を図19に示す。図19は単結晶Si基板表面の表面形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す。図19に示すように、印加電力を増大した場合には、PTFEの場合と同様に、膜の付着が起こることが確認された。さらに、酸素分圧を0Torrとした場合にも、膜の付着が起こることが確認された。
<水素化アモルファスSi基板を被処理物とするプラズマ処理>
次に水素化アモルファスSi基板を被処理物としてプラズマ処理を行った。条件としては、酸素分圧3Torr(He希釈後の全圧が380Torr)、印加電力10W、プラズマ処理時間を10分にて行った。水素化アモルファスSi基板は、プラズマCVDにより1737(アルミケイ酸ガラス)上に水素化アモルファスSiが約1.5μm堆積したものを用いた。その結果、プラズマへの暴露により、アルミケイ酸ガラス上に堆積した水素化アモルファスSiが完全に除去され、アルミケイ酸ガラス基板が完全に露出した。さらに、触針式粗さ計により測定した結果によっても、約1.5μmの厚みを有する水素化アモルファスSiが完全に除去されていることが確認でき、一方1737ガラスのエッチングは殆ど観察できなかった。これは、1737ガラス中に含有されるアルミ酸化物の成分が、プラズマ中で生成されたフッ素によるエッチング作用を阻害するためであると考えられる。本実施例においては、プラズマ処理時間を10分とし、係る時間内に水素化アモルファスSiが完全にエッチングされてしまったために、正確なエッチング速度の算出は行っていないが、少なくとも150nm/分以上のエッチング速度が得られていることが判った。
<SiO基板を被処理物とするプラズマ処理>
次にSiO基板を被処理物としてプラズマ処理を行った。具体的には、SiO基板としては、Si単結晶基板の表面に膜厚200nmの熱酸化膜がついたものを用いた。条件としては、酸素分圧3Torr(He希釈後の全圧が380Torr)、印加電力60W、プラズマ処理時間を6分にて行った。図20にSiO基板の表面形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す。図20に示すように、プラズマ暴露後の被処理物表面は、明らかにエッチングが進行しており、6分間のプラズマ処理により最大1.8μmの深さまでエッチングが進行している。用いた被処理物における熱酸化膜の膜厚が200nmであったことから、SiOはプラズマ暴露後1分以内に完全に除去されてしまい、残りの5分間に基板のSi単結晶がエッチングされていることが予想される。このことから、本実施例におけるSiOのエッチング速度は、200nm/分以上であると予想される。
本発明にかかるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法は、以上のように、プラズマ中においてフッ素含有高分子原料と、これと反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスとを反応させることによって、プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理する構成を備えているので、従来のように地球温暖化を加速するPFCガス等を原料に用いる必要がない。それゆえ、地球環境問題に対応できるだけでなく、原料の輸送コストの削減、保管の安全性・簡便性の向上といった利点を有する。さらに、オンデマンドで処理ガスを供給でき、また、処理速度も大きい。
それゆえ、今日の電子・ナノ産業に欠かすことのできないドライエッチング技術、フルオロカーボン系薄膜形成等において、従来のPFCガスを用いる方法に代わる処理装置、処理方法として非常に有用である。また、これらの処理を行う各種製造工業において利用可能であるのみならず、さらにはかかる処理がなされた材料を組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業等においても利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明にかかるプラズマ処理装置の1実施形態を示す図である。 本発明に係るフッ素含有高分子廃棄物処理方法に用いるプラズマ処理装置の一例を示す図である。 実施例1において、印加電力を100W一定として、プラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す図であり、(a)は酸素分圧15Torrで8分間、(b)は酸素分圧30Torrで4分間、(c)酸素分圧6Torrで5分間プラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を測定した結果を示す図である。 実施例2において、印加電力を100W一定として、プラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を示す図であり、(a)は被処理物表面の観察像を、(b)は被処理物表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す図である。 実施例2において、プラズマ処理により形成された薄膜について、FTIRによる吸収測定を行った結果を示す図であり、(a)は酸素分圧を0Torr(He希釈後の全圧が380Torr、以下図10の説明において同じ)とした場合に形成された薄膜の、(b)は酸素分圧を3Torrとした場合に形成された薄膜の、(c)は厚さ25μmのPTFE箔のFTIR吸収スペクトルを示す図である。 実施例3において、エッチング速度及びデポジション速度の酸素分圧依存性を測定した結果を示す図である。 実施例4においてエッチング速度及びデポジション速度の印加電力依存性について測定した結果を示す図である。 実施例5で発生したプラズマの発光分光スペクトルを示す図であり、(a)は酸素分圧12Torr(He希釈後の全圧が380Torr、以下図13の説明において同じ)、(b)は酸素分圧6Torr、(c)は酸素分圧3Torr、(d)は酸素分圧0Torrの条件下において生成したプラズマの発光ス分光ペクトルを示す図である。 実施例5で発生したプラズマの発光分光スペクトルを示す図であり、(a)は印加電力180W、(b)は印加電力140W、(c)は印加電力90W、(d)は印加電力50Wの条件下において生成したプラズマの発光ス分光ペクトルを示す図である。 図14に示す発光分光スペクトルを拡大した図であり、(a)はCOとC分子とが近接して現れる波長域490nm〜530nmの領域、(b)は原子状酸素、原子状フッ素、及びHeの発光が現れる波長650nm〜800nmの領域を拡大した図である。 実施例においてSi基板上に形成されたCF系薄膜の電流電圧特性を示す図である。 実施例10において、プラズマ処理により形成された薄膜について、FTIRによる吸収測定を行った結果を示す図である。 実施例11において、単結晶Si基板を被処理物として、印加電力55Wでプラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す図である。 実施例11において、単結晶Si基板を被処理物として、印加電力80Wでプラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す図である。 実施例11において、SiO基板を被処理物としてプラズマ処理を行った後の被処理物表面の形状を触針式粗さ計により測定した結果を示す図である。
符号の説明
1 フッ素含有高分子原料
2 電力印加電極
3 接地電極
4 放電空間
5 プラズマ生成用電源
6 マッチング回路
7 被処理物
8 ガス供給手段
9 ガス導入部
10 チャンバー
11 開口部
12 導入部
13 電極部
14 ガス供給孔
15 ガス排出孔
16 ガス供給流路
17 ガス排出流路
18 巻出しロール
19 巻取りロール

Claims (14)

  1. プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、
    プラズマ中において当該フッ素含有高分子原料と反応することによってフッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、
    プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理するようになっていることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 上記フッ素含有高分子原料は、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  3. 上記ガスは、He、Ar、Ne、Kr、Xe及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種のガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
  4. 上記ガスは少なくとも酸素含有ガスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  5. 上記ガスは少なくとも水素ガスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  6. デポジション装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  7. エッチング装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  8. 上記フッ素含有高分子原料を放電空間に供給する原料供給手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  9. 大気圧下でプラズマを発生させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  10. プラズマを発生させる放電空間に配置されたフッ素含有高分子原料と、
    プラズマ中において上記フッ素含有高分子原料と反応することによって、それぞれ、フッ素含有化学反応種を発生させるガスを供給するガス供給手段とを備え、
    プラズマ中にフッ素含有化学反応種を発生させるようになっていることを特徴とするガス発生装置。
  11. プラズマを発生させ、当該プラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより被処理物を処理するプラズマ処理方法において、
    放電空間に、フッ素含有高分子原料を配置し、当該フッ素含有高分子原料と放電空間に導入されるガスとを反応させることによって、プラズマ中でそれぞれフッ素含有化学反応種を発生させ、該フッ素含有化学反応種により被処理物を処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
  12. プラズマを発生させる放電空間に、フッ素含有高分子原料を配置し、当該フッ素含有高分子原料と放電空間に導入されるガスとを反応させることによって、プラズマ中で、それぞれ、フッ素含有化学反応種を発生させることを特徴とするガス発生方法。
  13. フッ素含有高分子廃棄物にプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを照射することにより、当該フッ素含有高分子廃棄物のフッ素を回収するフッ素含有高分子廃棄物処理方法であって、
    プラズマを発生させる放電空間にHを含むガスを導入して発生させたプラズマ又はプラズマ中を通過したガスを、フッ素含有高分子廃棄物に照射することを特徴とするフッ素含有高分子廃棄物処理方法。
  14. 上記フッ素含有高分子廃棄物は、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項13に記載のフッ素含有高分子廃棄物処理方法。
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