以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る設計支援装置は、画像形成装置の紙搬送シミュレーション及び各種デバイス(ローラ、フラッパ、センサ等)に関する信号の擬似出力をパーソナルコンピュータ(以下PC)上で実行可能な画像形成装置シミュレータである。即ち、設計支援装置は、実機としての画像形成装置を制御するファームソフトウェアの制御タイミング設計を支援するためのものである。設計支援装置について説明する前に、まず、実機としての画像形成装置の制御系及び内部機構について簡単に説明する。
図8は、画像形成装置の制御部の要部構成を示すブロック図である。
図8において、画像形成装置は、後述の図9に示すように制御部909を備えている。制御部909は、CPU801と、メモリ802と、操作部803から構成されている。CPU801は、プリンタ制御インタフェース(以下I/F)930と外部I/F926に対して、それぞれ制御を行うための情報をやり取りするI/Fを有する。メモリ802は、CPU801の制御プログラムを格納しているROM804、CPU801に作業領域を提供するRAM805を有する。
操作部803は、操作者による処理実行内容の入力、操作者に対する処理に関する情報及び警告等の通知を行うためのタッチパネル付き液晶により構成される。デジタル画像処理部923は、CCD921の出力信号に画像処理を施す。外部I/F926は、画像形成装置外部との通信のI/Fを司る。プリンタ制御I/F930は、プリンタ部902とのI/Fを司る。
図9は、画像形成装置の概略構成を示す構成図である。
図9において、画像形成装置900は、カラー画像リーダ部(以下リーダ部)901とカラー画像プリンタ部(以下プリンタ部)902を備えるカラー複写機として構成されている。リーダ部901は、制御部910、自動原稿給紙機構(ADF:Auto Document Feeder)912、CCD921、デジタル画像処理部923、外部I/F926、プリンタ制御I/F930等を備える。プリンタ部902は、制御部909、レーザスキャナ931、感光ドラム932、回転カラー現像器933、各種ローラ、各種センサ等を備える。
まず、リーダ部901の構成を説明する。制御部910は、画像形成装置全体の制御を司る。ADF912は、原稿台ガラス(プラテン)911上に原稿を給紙する。尚、ADF912の代わりに、鏡面圧板もしくは白色圧板を装着する構成でもよい。キャリッジ924は、原稿を照明する光源913、914、反射傘915、916、ミラー917を収容する。キャリッジ925は、ミラー918、919を収容する。
キャリッジ924は速度Vで、キャリッジ925は速度V/2で、CCD921の電気的走査方向(主走査方向)に対して直交する副走査方向に機械的に移動され、原稿の全面を走査する。光源913、914は、ハロゲンランプ、蛍光灯、キセノン管ランプ等を使用し、その光は反射傘915、916により原稿に集光される。原稿からの反射光または投影光は、ミラー917〜919、レンズ920を介してCCD921に集光される。CCD921は、反射光または投影光を電気信号に光電変換する。
次に、プリンタ部902の構成を説明する。プリンタ部902は、制御部909のCPU801からプリンタ制御I/F930を介して送出される制御信号に基づき動作する。感光ドラム932は、予め帯電器980によりその表面が例えば−300V〜−900Vに均一に帯電される。感光ドラム932の表面電位は電位センサ982により計測され、CPU801により適正な表面電位が計算される。感光ドラム932は、例えば130mmの直径を有し、矢印方向へ例えば135mm/秒で回転駆動され、レーザスキャナ931から出力されるレーザ光により、画像露光パターンに対応して色分解された静電潜像がドラム表面に形成される。
回転カラー現像器933は、回転軸933aの周りに時計方向にブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に対応する現像器947、948、949、950を配置した構成を有する。尚、現像器947〜950は、回転カラー現像器933に対して容易に着脱可能な構成となっており、各色の現像器947〜950は指定された色の位置に装着される。
感光ドラム932上に黒単色画像を現像する場合は、現像器947のみを使用し、現像器947の現像スリーブが感光ドラム932と対向する位置まで回転カラー現像器933をステッピングモータ(不図示)により回転させる。現像器947からは、静電潜像が形成された感光ドラム932表面と現像バイアスが印加された現像スリーブ面との間に形成される電位量に応じたトナーが感光ドラム932に供給され、感光ドラム932表面の静電潜像が現像される。
また、感光ドラム932上にカラー画像を現像する場合は、回転カラー現像器933を上記ステッピングモータにより回転させる。即ち、現像を行う各分解色に応じて所定の現像器947〜950を択一的に感光ドラム932に近接(または接触)させた現像位置に、回転軸933aを中心に回転動作させて現像を行う。現像器947〜950からは、感光ドラム932上の電荷に応じた量のトナーが感光ドラム932に供給され、感光ドラム932表面の静電潜像が現像される。
感光ドラム932に対する上記現像動作により形成されたトナー像は、感光ドラム932の時計方向への回転により、反時計方向に回転する中間転写体935に1次転写ローラ934により1次転写される。中間転写体935への1次転写は、黒単色画像の場合には中間転写体935の1回転で、フルカラー画像の場合は4回転で完了する。中間転写体935は、特定の紙サイズ(例えばA4サイズ以下)の画像を形成するときには、中間転写体935に2面の画像が形成可能である。
自動給紙の場合は、各カセット(上段カセット938、下段カセット939、3段目カセット940、4段目カセット941)から、紙がそれぞれピックアップローラ942〜945によりピックアップされる。各カセットの各給紙ローラ962〜965により搬送される紙は、縦パス搬送ローラ966〜969によりレジストローラ970まで搬送される。手差し給紙の場合は、手差紙トレイ961に積載された紙は、手差し給紙ローラ946によりレジストローラ970まで搬送される。
レジストローラ970まで搬送された紙は、中間転写体935への転写が終了するタイミングで、中間転写体935と2次転写ローラ936の間に搬送される。その後、紙は、2次転写ローラ936と中間転写体935とに挟まれる形で定着器方向へ搬送されると共に中間転写体935に圧着される。これにより、中間転写体935上のトナー像が紙に2次転写される。紙に転写されたトナー像は、定着ローラ及び加圧ローラ937により加熱及び加圧され紙に定着される。
尚、中間転写体935上の転写残留トナーは、以下のように除去する。クリーニングブレード951を中間転写体935にこすり当て、中間転写体表面から転写残留トナーを掻き取る。画像形成シーケンス後半の後処理制御でトナー除去を行う。感光ドラム932上の残留トナーは、以下のように除去する。ブレード952により感光ドラム表面から残留トナーを掻き取り、感光ドラムユニットに一体化されている廃トナーボックス953まで搬送する。
更に、予期せぬことで吸着している可能性のある2次転写ローラ936の表面の正負各極性の残留トナーは、以下のように除去する。2次転写正バイアス及び2次転写逆バイアスを交互に印加して中間転写体935上に各極性の残留トナーを吸着させ、クリーニングブレード951で残留トナーを掻き取る。これにより、残留トナーを完全にクリーニングすることで後処理制御が終了する。
画像が定着された紙は、以下のように排紙する。第1排紙の場合には、第1排紙フラッパ958を第1排紙ローラ954方向に切替えて、第1排紙ローラ954を目指して排紙する。第2排紙の場合には、第1排紙フラッパ958及び第2排紙フラッパ959を第2排紙ローラ955への方向に切替えて、第2排紙ローラ955を目指して排紙する。
第3排紙の場合には、一旦反転ローラ956で反転動作を行うために、第1排紙フラッパ958及び第2排紙フラッパ959を反転ローラ956方向に切替えて反転ローラ956で反転させる。反転ローラ956で反転後、第3排紙フラッパ960を第3排紙ローラ957方向に切替えて、第3排紙ローラ957を目指して排紙する。
両面排紙の場合には、第3排紙の場合と同様に一旦反転ローラ956で反転動作を行い、第3排紙フラッパ960を両面ユニット方向に切替えて、両面ユニットに搬送する。両面センサで紙が検出されてから所定時間後に一旦停止し、再度画像形成準備が整い次第再給紙され、紙の2面目に画像形成される。
以上が実機としての画像形成装置のリーダ部901及びプリンタ部902に関する説明である。次に、画像形成装置の紙搬送シミュレーション及び各種デバイス信号の擬似出力をPC上で行う設計支援装置(画像形成装置シミュレータ)について説明する。
図1は、本実施の形態に係る設計支援装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図1において、設計支援装置は、ソフトウェアシミュレーション部1、機構シミュレーション部2、オペレーティングシステム(以下OS)3、入力監視部4、表示制御部5を備えている。ソフトウェアシミュレーション部1は、画像形成装置のプリンタ部902における紙搬送制御等に関するファームソフトウェアをPC上で仮想的に実行するためのものである。本実施の形態では、リーダ部901は実機を使用しプリンタ部902は設計支援装置を使用してファームソフトウェアの検証を行う系について説明する。
入力監視部4は、キーボードデバイスやマウス等のマンマシンI/F6からの入力を監視しており、ソフトウェアシミュレーション部1のソフトウェアシミュレーションの実行開始をOS3に指示する。尚、画像形成装置のリーダ部901とプリンタ部902を接続するプリンタ制御I/F930は、OS3を介してPCに装備されているRS−232CやUSB接続経由でリーダ部901と接続するもので問題無い。
ソフトウェアシミュレーション部1は、実行結果をOS3を介して機構シミュレーション部2に渡す。機構シミュレーション部2は、例えば紙搬送制御に関わるローラの速度等から紙が搬送機構の搬送路(紙搬送パス)のどの箇所に存在するかを計算により求め、計算結果をOS3を介して表示制御部5に渡す。表示制御部5は、PCに付設されたディスプレイ7に紙搬送シミュレーション画面201(図2)を表示する。紙搬送シミュレーション画面201では、紙搬送パスは点線202、ローラは丸、センサは黒三角、フラッパは白三角、紙は実線203で表現される。
本実施の形態の設計支援装置は以下の特徴を有する。設計支援装置は、画像形成装置の搬送機構の構成要素(ローラ、フラッパ、センサ等)の状態変化(制御上の変化、物理的変化)を登録すると共に、構成要素の位置(ローラのニップ位置、搬送路分岐点の位置等)を検証基準位置として登録する。更に、設計支援装置は、紙反転搬送制御で状態変化が発生した時の紙の後端位置を検出し、後端位置と検証基準位置との間の距離を算出し、当該距離が許容範囲外である場合に、その旨を紙搬送シミュレーション画面に表示する。本制御の詳細は図10で後述する。
図3は、設計支援装置の制御系の詳細構成を示すブロック図である。
図3において、ソフトウェアシミュレーション部1は、ファームソフトウェア部310、ラッパー部311、入力I/F部312、出力I/F部313を備える。機構シミュレーション部2は、紙位置計算部320、デバイス駆動計算部321、紙位置表示部330、入力I/F部324、出力I/F部325を備える。尚、ソフトウェアシミュレーション部1と機構シミュレーション部2の間に関与するOS3に関しては、本発明の主旨とは直接関係無いため説明を省略する。
ソフトウェアシミュレーション部1において、ファームソフトウェア部310は、実機としての画像形成装置の紙搬送制御や各種デバイス制御を行うためのソフトウェアである。ラッパー部311は、実機としての画像形成装置のファームソフトウェアをPC上で動作させる。入力I/F部312は、機構シミュレーション部2からの情報を入力する。出力I/F部313は、機構シミュレーション部2に情報を出力する。
機構シミュレーション部2において、入力I/F部324は、ソフトウェアシミュレーション部1の出力I/F部313からの出力結果を受け付ける。入力I/F部324は、画像形成装置の紙搬送制御や各種デバイス制御に関わるモータ、クラッチ、フラッパ等の各種単体デバイスの制御情報を後段に渡す。
デバイス駆動計算部321は、ソフトウェアシミュレーション部1からの紙搬送制御情報や各種デバイス制御情報に従い、仮想のローラやファン等のデバイスを駆動させる。また、デバイス駆動計算部321は、例えばファンの場合にはファンモータのロック信号等の出力値も計算し、出力値を出力I/F部325に通知する。紙位置計算部320は、ローラの位置を記憶し、デバイス駆動計算部321で計算したローラの回転速度や回転方向等の情報に応じて搬送路における紙の位置を計算し記憶する。
紙位置表示部330は、紙位置計算部320により計算された紙の先端位置及び後端位置に基づき、表示制御部5に対して紙搬送シミュレーション画面201をディスプレイ7に表示するよう指示する。出力I/F部325は、デバイス駆動計算部321や紙位置計算部320により計算された各種センサ情報やロック信号等の出力値をソフトウェアシミュレーション部1の入力I/F部312に供給する。
次に、設計支援装置による画像形成装置の紙搬送シミュレーション動作を説明する。
図4は、設計支援装置による画像形成装置の紙搬送シミュレーションを説明する図である。
図4において、画像形成装置の紙搬送制御に関する各種デバイス配置の一例を示すものであり、以下のシミュレーションを前提としている。モータM431からクラッチCL441を介して駆動を受けているローラR411により、パスP401−P402上の実線矢印方向に紙400を搬送する。更に、紙400の先端がセンサS421を通過したタイミングでフラッパFL451を切替え、パスP402−P403またはパスP402−P404に紙400を搬送する。点線矢印はモータM431、クラッチCL441、フラッパFL451の駆動関係を示している。
設計者がマンマシンI/F6から紙搬送シミュレーションの開始を指示すると、入力監視部4を介してOS3によりソフトウェアシミュレーション部1及び機構シミュレーション部2のシミュレーションが実行される。ソフトウェアシミュレーション部1のシミュレーションが開始されると、ファームソフトウェア部310は、ラッパー部311及びOS3と協調して、実機としての画像形成装置の紙搬送制御を行うためのソフトウェアを逐次実行していく。
ファームソフトウェア部310においてモータM431の回転開始の処理が始まると、モータM431を特定するID番号、回転速度、回転方向を示す情報がコマンドとして以下のように伝達される。即ち、ファームソフトウェア部310からコマンドが出力I/F部313を介して機構シミュレーション部2の入力I/F部324に与えられ、デバイス駆動計算部321に渡される。
デバイス駆動計算部321は、コマンドを解釈してモータM431の駆動命令であると判断し、モータM431の回転を開始する。そして、デバイス駆動計算部321は、ローラR411に接続するモータM431とクラッチCL441の情報を基に、ローラR411を回転させるか否かを判断する。この時点では、モータM431は回転状態でクラッチCL441はOFF状態であるので、デバイス駆動計算部321は、ローラR411は回転させないと判断する。
その後、ファームソフトウェア部310においてクラッチCL441のON開始の処理が始まると、以下のようにコマンドが伝達される。即ち、クラッチCL441を特定するID番号とクラッチCL441のON/OFF状態を示す情報がコマンドとして出力I/F部313を介して機構シミュレーション部2の入力I/F部324に与えられ、デバイス駆動計算部321に渡される。
デバイス駆動計算部321は、コマンドを解釈してクラッチCL441に対する命令であると判断し、クラッチCL441をONする。そして、デバイス駆動計算部321は、モータM431が回転状態でありクラッチCL441がON状態であるので、上記のモータM431の情報に基づいた回転速度、回転方向でローラR411を回転させる。
紙位置計算部320は、予め設定された時間間隔tで紙400の先端位置と後端位置を演算している。まず、紙位置計算部320は、紙400の先端から後端までが含まれているパスP401−P402の情報を、保持しているパス情報から読み出す。
紙位置計算部320が保持する上記パス情報には、各パス内のローラのID番号とその位置情報も含まれている。紙位置計算部320は、紙400の先端位置から後端方向に向かってローラを検索し、始めに見つかったローラR411のID番号を用いてデバイス駆動計算部321にローラR411の速度vを問い合わせる。紙位置計算部320は、速度vと時間間隔tから紙400がその間に進んだ距離S=v×tを求めることにより、紙400の位置を更新する。紙位置計算部320は、更新した紙位置情報を紙位置表示部330に渡す。紙位置表示部330は、紙搬送シミュレーション画面201をディスプレイ7に表示する。
紙位置計算部320が保持する上記パス情報には、各パス内のセンサのID番号とその位置情報も含まれている。紙位置計算部320は、紙400の先端位置から後端方向に向かってセンサを検索し、見つかったセンサS421のON情報を出力I/F部325に渡す。また、紙位置計算部320は、紙400の後端がセンサS421を通過した状態では、センサS421のOFF情報を出力I/F部325に渡す。
出力I/F部325は、センサS421のON情報をコマンド化し、ソフトウェアシミュレーション部1の入力I/F部312に出力する。ファームソフトウェア部310は、入力I/F部312からセンサS421のON情報を受け、フラッパFL451の制御を開始する。ソフトウェアシミュレーション部1から機構シミュレーション部2へのコマンド送出は、モータM431、クラッチCL441の場合とほぼ同様である。
機構シミュレーション部2のデバイス駆動計算部321は、フラッパFL451の制御コマンドを受け、該当するID番号のフラッパの切替え情報を紙位置計算部320に渡す。紙位置計算部320は、紙400の先端が分岐点P402に到達すると、紙400が次に進むべきパスを読み出す。その際、紙位置計算部320は、フラッパFL451の切替え状態に応じて、紙400の進行方向をパスP402−P403にするのかパスP402−P404にするのかを判断し、パス情報を変更する。
次に、本実施形態の特徴である制御ソフトウェアの検証方法について説明する。
本実施の形態では、紙の反転搬送制御タイミングの検証を例に挙げて説明する。紙の反転搬送制御タイミングの検証とは以下の通りである。図14のD1方向に搬送している紙をローラR3で搬送方向を反転させD2方向に搬送する制御において、ローラR3の停止やフラッパ1701の切替え制御が適切なタイミングで行われているかを検証するものである。
図10は、設計支援装置の検証の流れを示すフローチャートである。
図10において、まず、設計支援装置は、設計者によるマンマシンI/F6からの入力に基づき、図5に示すように画像形成装置の各負荷(ローラ、センサ、フラッパ)の制御プロファイルを作成する(ステップS1001)。図5は、画像形成装置の各負荷(ローラ、センサ、フラッパ)の制御プロファイル表である。制御プロファイルは、各負荷別の制御(ローラの駆動制御、センサやフラッパのON/OFF制御)を指定し、各制御を実行したときの設定値を登録する。
例えば、ローラR1の駆動制御が2種類の加速度を持つ場合には、制御項目で“加速度1”、“加速度2”のように個別に登録する。また、ローラR3の駆動制御が回転方向で正転・逆転の2種類の加速度を持つ場合にも、制御項目で“加速度1”、“加速度2”のように個別に登録する。
センサの応答速度やローラの経時変化・耐久劣化等を実機としての画像形成装置の耐久度に合わせてシミュレートする場合には、上記設定値を変更する。ステップS1001で登録したプロファイル情報は、以下のように使用する。即ち、設計支援装置のソフトウェアシミュレーション部1で例えばローラの停止指示を行った後に、実際にローラが減速して完全に停止するまでの物理的な現象のシミュレーションを機構シミュレーション部2で行う際に使用する。
次に、設計支援装置は、設計者によるマンマシンI/F6からの入力に基づき、図6に示すように状態変化の登録を行う(ステップS1002)。図6は、画像形成装置の搬送機構で発生する状態の中から今回の検証に関係のある状態を登録した状態変化登録一覧表である。状態変化とは、画像形成装置の搬送機構を構成する部品(ローラ、フラッパ等)の制御上の変化や物理的変化である。
例えば、登録番号T2は、「ローラR3を減速度1のスピードで停止制御開始したタイミング」を意味し、登録番号T3は、「ローラR3が物理的に停止したタイミング」を意味する。同様に、登録番号T7は、「フラッパFL1をON1制御開始したタイミング」を意味し、登録番号T8は、「フラッパFL1が物理的にON1の状態になったタイミング」を意味する。
登録番号T2のタイミング検知は、以下のようになる。即ち、ソフトウェアシミュレーション部1のファームソフトウェア部310がローラR3の減速開始制御を開始する。これに伴い、ファームソフトウェア部310から出力I/F部313、機構シミュレーション部2の入力I/F部324経由でデバイス駆動計算部321に減速開始制御信号が入力されたタイミングとして、デバイス駆動計算部321が検知する。
登録番号T3のタイミング検知は、以下のようになる。即ち、ソフトウェアシミュレーション部1のファームソフトウェア部310がR3の停止開始制御を開始する。これに伴い、ファームソフトウェア部310から出力I/F部313、機構シミュレーション部2の入力I/F部324経由でデバイス駆動計算部321に停止開始制御信号が入力される。この後、デバイス駆動計算部321が図5のプロファイル情報に基づきローラR3の回転駆動をシミュレートし、ローラR3の回転速度が減速状態から停止状態に遷移したタイミングとして、デバイス駆動計算部321が検知する。
尚、図6の状態変化登録一覧表に対する状態変化の登録作業は、各項目を容易に設定するためのGUI(Graphical User Interface)等を用いてもよい。その場合、“負荷”項目は、図5の制御プロファイル表に登録されている各負荷名を選択設定可能なプルダウン形式として設定できるように表示することで、効率的に登録作業を行うことができる。同様に“種別”項目についても、プルダウン形式とすることで登録作業を効率化することが可能である。
次に、設計支援装置は、設計者によるマンマシンI/F6からの入力に基づき、図7に示すように検証基準位置の登録を行う(ステップS1003)。ここでは、図14のローラR3のニップ位置や搬送路の分岐点1702の位置を示す位置情報を登録する。位置情報としては、検証対象の画像形成装置の断面図の横と縦をそれぞれX、Y座標として表現してもよい。
また、画像形成装置の搬送路上の距離として、例えば図9のレジストローラ970を基準位置0として、レジストローラ970からの搬送距離として表現してもよい。図7は、レジストローラ970からの各検証基準位置の情報を登録した検証基準位置登録一覧表である。登録番号P1は、レジストローラ970からローラR3のニップ位置までの距離が270mmであることを意味する。
次に、設計支援装置は、図11に示すように許容値の設定を行う(ステップS1004)。図11は、制御ソフトウェアの検証を行いたいポイントに関する許容値一覧表である。例えば、図15のP06のタイミングで搬送を一時停止させた紙Sを、P08のタイミングで反転搬送開始する制御を想定する。
紙Sの後端P16がローラR3のニップ位置P17に対して充分なマージンを持って停止できているか否かを検証する場合は、図6の登録番号T3と図7の登録番号P1を図11の#1のように登録する。(タイミングT3の時の紙Sの後端位置)−(P1)の距離がどの範囲であればよいかを、“Min”、“Max”項目に登録する。図11の#1の“Min”、“Max”項目は、ローラR3のニップ位置から分岐点のフラッパFL1までの距離を加味した設定値となっている。
図11の#3は、紙Sを反転搬送開始する前にフラッパ切替えが完了して搬送路の確保ができているか否かを検証するための設定である。この場合の登録内容は、図6のT8と図7のP3であり、(タイミングT8の時の紙Sの後端位置)−(P3)の距離の許容範囲を設定している。ここで、許容範囲の値がマイナスであるのは、フラッパの位置の方が紙Sの後端位置よりもレジストローラ970に近いためである。
設計支援装置は、以上の制御プロファイル作成(ステップS1001)、状態変化登録(ステップS1002)、検証基準位置登録(ステップS1003)、許容値設定(ステップS1004)が終了した後に、実際に検証を開始する(ステップS1005)。
設計支援装置は、設計者がマンマシンI/F6から紙搬送シミュレーションの開始を指示したことを入力監視部4で検知すると、OS3によりソフトウェアシミュレーション部1及び機構シミュレーション部2でシミュレーションを実行する。ソフトウェアシミュレーション部1のファームソフトウェア部310は、実機としての画像形成装置の紙搬送制御を行うためのソフトウェアを逐次実行していく。
上記ソフトウェアの実行と平行して、機構シミュレーション部2のデバイス駆動計算部321は、図6の状態変化登録一覧表に登録されたデバイスの状態変化を上記検知方法でリアルタイムに検知する。更に、デバイス駆動計算部321は、状態変化に対して、図11の許容値一覧表から検証内容に合致するか検索し、検証対象である場合には上記検証方法でリアルタイムに検証する。
デバイス駆動計算部321は、検証した結果、発生した現象が許容範囲外であると判断した場合は、紙位置計算部320を介して紙位置表示部330にその旨を通知する。但し、その時点で画像形成装置がシミュレーションにおいて紙詰まり等の異常状態に陥っている場合には、状態変化タイミングが設計値とは異なる場合もあるため、通知しないようにしてもよい。
紙位置表示部330は、表示制御部5に対してディスプレイ7の紙搬送シミュレーション画面201における搬送機構の該当箇所(負荷)の表示形態(表示色または表示形状等)を変更するよう指示する。これと共に、紙位置表示部330は、表示制御部5に対して発生した現象の内容を別画面(不図示)を開いて表示するよう指示する。発生した現象の内容については、図11の許容値一覧表に設定されている比較対象に基づき図6の状態変化登録一覧表に登録されている各種項目を検索し、登録番号の全設定項目を表示する。更に、許容値“Min”、“Max”と、実際に検知した距離も表示する。
その後、設計者は表示制御部5によってディスプレイ7に表示された内容に基づいて、設計上問題がないか否かを検討する。設計支援装置は、設計者がマンマシンI/F6から検証対象を変更して検証を継続することを指示した場合(ステップS1006でYES)、図6の状態変化登録一覧表や図11の許容値一覧表を更新し、繰り返し検証を行う。
上述した検証方法により、図15に示す紙搬送の線図及びタイミングチャートを設計者が目視で検証する検証方法に比べて、見落としを無くすことができ且つ効率良く検証を行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば以下の効果を奏する。設計支援装置によるシミュレーション対象の画像形成装置で発生する状態変化を予め登録可能とする。状態変化は、例えば、図14及び図15で紙Sの後端がセンサS1を離脱したという状態変化や、ローラR3が停止した等の状態変化を含む。また、画像形成装置の搬送機構の構成要素(ローラ、フラッパ、センサ等)の位置を検証基準位置として予め登録可能とする。
設計支援装置による検証対象の画像形成装置の制御ソフトウェアによる制御過程において、画像形成装置で発生する各種の状態変化について予め登録した状態変化である場合は、状態変化の発生タイミングを記憶する。更に、各状態変化の発生タイミングにおける紙後端位置から検証基準位置までの距離が予め設定した許容範囲外の場合は、その旨を警告通知する。具体的には、例えばローラR3の停止時の紙後端位置からローラR3のニップ位置までの距離が許容値20mm〜30mmに対して10mmしかなかった場合は、その旨を警告通知する。
上記警告により、例えば紙反転搬送制御時に見かけ上は正常に反転搬送制御される過程で、センサS1のOFF制御からローラR3の停止制御までが設計通りにタイミング良く行われていない不具合等を容易に発見することが可能となる。これにより、設計者は検証対象の画像形成装置の搬送機構制御ソフトウェアの動作検証を効率良く行うことが可能となる。
上記基本構成に基づいて、以下のような具体的な形態が可能である。例えば、制御ソフトウェアで検証対象の画像形成装置の異常を検知して異常状態に設定、あるいは設計支援装置側から画像形成装置の状態を異常状態に設定する。その際に画像形成装置が異常状態である場合は、紙後端位置から検証基準位置までの距離が許容外であると判断しても、上述したように、その旨を通知する処理は行わないという形態も取り得る。これにより、不必要な通知が行われないため、設計者が効率的に検証を行うことが可能となる。
また、上記通知を警告通知にする、あるいはシミュレート内容に対して表示色あるいは表示形状を変えて画面表示する形態も取り得る。これにより、設計者が通常の通知とは異なる通知に基づき制御ソフトウェアの異常を識別し易くなり、設計者が効率的に検証を行うことが可能となる。
また、紙後端位置から検証基準位置までの距離が許容範囲外であるか否かの判断を、シミュレートの処理途中で逐次行う形態も取り得る。これにより、設計者が搬送機構制御ソフトウェアの異常をリアルタイムに認識することが可能となる。
また、紙後端位置から検証基準位置までの距離が許容範囲外であるか否かの判断を、シミュレートの処理が終了した後で行う形態も取り得る。これにより、制御ソフトウェアの処理が長時間に及ぶ場合や異常部分をリスト化して一括管理する場合等の検証方法に対して有効な設計支援を行うことが可能となる。この形態の詳細については他の実施の形態で後述する。
以上をまとめると、搬送機構制御ソフトウェアの検証、特に紙の反転搬送制御の検証を自動的に設計者の検証漏れが無く且つ効率良く行うことが可能となる。
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、設計支援装置(画像形成装置シミュレータ)を使用して画像形成装置の検証を行うを例に挙げたが、これに限定されるものではない。実機としての画像形成装置を使用して検証を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、状態変化登録一覧表に登録する際の画像形成装置の負荷の種別としてローラ、センサ、フラッパを例に挙げたが、これに限定されるものではない。画像形成装置に装備される他の負荷(転写ベルト、レーザ露光機構等)にも適用可能である。
また、上記実施の形態では、許容値一覧表との比較により発生した現象が許容範囲外であると判断した際にその旨を画面に表示する場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。設計者の注意を惹くために例えば音声による警告等の通知としてもよい。
また、上記実施の形態では、画像形成装置の検証をリアルタイムに行う(シミュレートの処理途中で逐次行う)系を例に挙げたが、これに限定されるものではない。制御ソフトウェアの実行経過をログ情報や計測器等により記録しておき、制御ソフトウェアの実行終了後(シミュレートの処理の終了後)に記録情報に基づいて検証を行ってもよい。
この場合は、画像形成装置の画像形成中に制御部909のCPU801が、モータやフラッパ等の各種負荷のON/OFF制御及びセンサ等の入力情報をRAM805にログ情報として逐次記憶していく。ここで記憶したログ情報は、画像形成装置に外部I/F926を介して接続されるPC等に送信される。ログ情報には、図6に示す状態変化登録一覧表の各項目に該当する情報と、状態変化が発生した時間を示す情報が含まれている。
画像形成装置の画像形成処理が完了すると、図12に示す検証装置で制御ソフトウェアの検証を行う。検証装置は、OS3、入力監視部4、表示制御部5、入力装置1801、検証部1802を備える。入力装置1801は、画像形成装置から入手したログ情報を検証装置に取り込むものであり、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ等を介してデータを入力する装置、RS−232CやUSB接続でデータを入力する装置の何れでもよい。
検証部1802は、図13に示すように、入力I/F部1901、タイミング比較処理部1902、タイミングチャート生成部1903、タイミングチャート表示部1904を備える。入力I/F部1901は、入力装置1801から入手したログ情報を入力する。タイミング比較処理部1902は、図6に示す状態変化登録一覧表と、図11に示す許容値一覧表に基づいて、入力したログ情報を比較処理する。タイミングチャート生成部1903は、タイミング比較処理部1902で比較処理した結果に基づいて、タイミングチャートを生成する。
タイミングチャート表示部1904は、タイミングチャート生成部1903により生成されたタイミングチャートを、表示制御部5に対して表示させるよう指示する。タイミング比較処理部1902内部の実際の比較処理は、上記デバイス駆動計算部321で説明した処理内容と同じである。タイミング比較処理部1902で許容範囲外であると判断した場合、タイミングチャート生成部1903は、図6に示す状態変化登録一覧表中の該当する状態変化について設計者が容易に認識できるような表示データを生成する。
検証装置において、図7に示す検証基準位置登録一覧表と図11に示す許容値一覧表に対する登録は、設計者がマンマシンI/F6から入力を行い、ディスプレイ7の入力画面(不図示)により設定する。入力画面については、図6の状態変化登録一覧表に対する登録作業について上述した形式として問題ない。
また、上記実施の形態では、許容値一覧表を状態変化別の設定として説明を行ったが、これに限定されるものではない。搬送される紙の種類やサイズ等を考慮したものとしてもよい。これにより、紙の種類やサイズ等、搬送特性の異なる場合についても紙反転搬送制御を検証することが可能となる。
また、上記実施の形態では、搬送体(記録材)として紙を例に挙げたが、これに限定されるものではない。本発明は紙以外の種類の搬送体にも適用可能である。
また、上記実施の形態では、画像形成装置として複写機を例に挙げたが、これに限定されるものではない。本発明はプリンタや複合機にも適用可能である。
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。