JP2008174617A - 超親水性膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】
使用場所に限定されない超親水性膜を提供する。
【解決手段】
主として非晶質シリカから成る超親水性膜であって、その内部および表面に微細空孔を有し、当該微細空孔全体の80体積%以上は、直径3nm以下の空孔であり、超親水性膜の表面における水に対する静止接触角が2度以下(0度を含まず)である超親水性膜とする。
【選択図】なし
使用場所に限定されない超親水性膜を提供する。
【解決手段】
主として非晶質シリカから成る超親水性膜であって、その内部および表面に微細空孔を有し、当該微細空孔全体の80体積%以上は、直径3nm以下の空孔であり、超親水性膜の表面における水に対する静止接触角が2度以下(0度を含まず)である超親水性膜とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、超親水性膜に関する。
「親水性」とは、水とのなじみが良いことであり、水をはじく撥水性の対極にある特性をいう。親水性は、一般的に、その性質を調べたい材料表面と水滴との接触角で評価される。接触角が小さいほど、その材料が親水性に優れる。親水性を発揮する材料として代表的なものに、酸化チタンが知られている。
酸化チタンの表面では、通常、Ti原 子とTi原子との間を酸素原子が架橋して安定した状態にある。酸化チタンに紫外線が当たると、その架橋している酸素原子の一部が脱離して酸素欠陥が生じる。その酸素欠陥に水分子を構成している酸素が入り込み、酸化チタンの表面に水酸基が生成する。一方、酸素欠陥が生じなかった部分には水酸基は生成されない。
このため、酸化チタンの表面は、水酸基が生成した親水性を有する部分と、水酸基が生成していない疎水性を有する部分とが混在した状態になる。このような状態にある酸化チタンの表面に水が接触すると、水は、親水性を有する部分に吸着されて、他に点在する親水性を有する部分を繋ぐように広がっていくので、水滴とならない。このような原理により、紫外線が当たった酸化チタンは、親水性を発揮する。
酸化チタンは、例えば、自動車のサイドミラー等のコーティング膜に応用されている。付着した水が水滴とならないため防曇性が発現する。そのコーティング膜の形成方法としては、ある部品の表面に酸化チタンゾルを塗布して焼成し、表面平均粗さ(Ra)が1μm以上の酸化チタン膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開平09−295363号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、上記従来の酸化チタンからなる親水性膜には、次のような問題がある。特許文献1に開示される酸化チタンが親水性を発揮するためには、紫外線が必須である。このため、紫外線が充分照射されない場所(例えば、屋内)では、親水性を発揮できない。その結果、親水性膜の使用場所が限定されるという問題がある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、使用場所に限定されない超親水性膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、非晶質シリカから成る超親水性膜であって、その内部および表面に微細空孔を有し、当該微細空孔全体の80体積%以上は、直径3nm以下の空孔であり、超親水性膜の表面における水に対する静止接触角が2度以下(0度を含まず)である超親水性膜としている。
このように、本発明の超親水性膜は、主として非晶質シリカから構成されているので、紫外線の存在有無を問わず、超親水性を発揮できる。このため、本発明の超親水性膜は、それを使用する場所に制限されない。また、非晶質シリカからなる超親水性膜の内部および表面には、主に直径3nm以下の微細空孔が分散している。このため、後述の理由により、膜の微細空孔が空気中から取り込まれた水分子で満たされる。その結果、膜表面に水滴が接触した際に、点在する微細空孔の中に保持される水分子がその水滴と結合していき、超親水性を発揮できる。
また、別の本発明は、先の各発明における超親水性膜の厚みが5nm以上20μm以下である超親水性膜としている。本発明の超親水性膜の厚みを5nm以上とすると、十分な量の微細空孔を確保できる。また、本発明の超親水性膜の厚みを20μm以下とすると、膜の透明性が高くなる。
本発明に係る超親水性膜に含まれる微細空孔の直径および細孔分布は、超親水性膜を粉末状にした試料を用いて窒素ガス吸着法にて、窒素ガスの等温脱着曲線から、BJH(Barret−Joyner−Halenda)法およびMP法で解析することにより求められた。また、接触角は、θ/2法を用いて測定した。
本発明に係る超親水性膜は、非晶質シリカからなり、好適には、ゾルーゲル法により作製される。ゾルーゲル法は、加水分解反応と重縮合反応を経て金属酸化物を製造する方法であり、化学気相析出法等に較べて、大型で高価な装置を用いなくても、容易に金属酸化物の合成ができる点で優れた方法である。本発明に係る超親水性膜は、例えば、次のような方法にて得られる。シリコンアルコキシドと触媒をアルコール系溶媒中で攪拌し、これと併行して水または水を含有するアルコール系溶媒とを攪拌して、各攪拌物を混合して加水分解反応と重縮合反応を行う。この混合物ゾル溶液を基材表面にコートして、乾燥、焼成する。
本発明に係る超親水性膜に用いられるシリコンアルコキシドとしては、1分子中に単一のシリコン原子(Si)および4つの加水分解性のアルコキシ基(OR基)を有するシリコンアルコキシドあるいはその誘導体を好適に用いることができる。すなわち、シリコンアルコキシドは、一般式Si(OR)4(但し、Rは水素原子または1価の炭化水素基を表す)で示され、1つのシリコン原子に4つの加水分解性のアルコキシ基が結合した化合物である。1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を好適に用いることができる。シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシランの他、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランあるいはその誘導体等を好適に用いることができる。その中で、特に好ましいのは、テトラメトキシシランである。ただし、上述のシリコンアルコキシドあるいはその誘導体は例示に過ぎず、他のシリコンアルコキシドあるいはその誘導体を採用しても良い。なお、これらのシリコンアルコキシドあるいはその誘導体は、単独で使用しても、2種以上併用しても良い。
本発明に係る超親水性膜に用いられるアルコール系溶媒としては、例えば、メタノールを好適に使用できる。ただし、メタノールの他に、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,4,6−ジメチルヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等の他の低級脂肪族アルコール系溶媒を用いても良い。ただし、上述のアルコール系溶媒に限定されず、他のアルコール系溶媒を用いても良い、なお、これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。これらのアルコール系溶媒の利用により、均一で安定的なゾル溶液を作製できる。
本発明に係る超親水性膜に用いられる反応促進剤(触媒)としては、次に挙げられるような、非イオン性触媒を用いることができる。非イオン性触媒としては、ドロキシアルデヒド誘導体(あるいはヒドロキシケトン誘導体)、ヒドロキシカルボン酸誘導体、アリルアルコール誘導体、およびヒドロキシニトリル誘導体を好適に用いることができる。ヒドロキシアルデヒド誘導体(あるいはヒドロキシケトン誘導体)の具体例としては、ヒドロキシアセトン、アセトイン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、及びフルクトース等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸誘導体の具体例としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシイソ酪酸、チオグリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸エステル、2−ヒドロキシーイソ酪酸エステル、チオグリコール酸エステル、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸エステル、酒石酸エステル、およびクエン酸エステル等が挙げられる。アリルアルコール誘導体の具体例としては、1−ブテン−3−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、1−ペンテン−3−オール、1−ヘキセン−3−オール、クロチルアルコール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、及びチナミルアルコール等が挙げられる。ヒドロキシニトリル誘導体の例としてはアセトンシアノヒドリン等が挙げられる。その中で、特にヒドロキシアセトンを用いるのがより好ましい。ただし、上述は一例に過ぎず、他の反応促進剤(触媒)を採用しても良い。なお、これらの反応促進剤(触媒)は、単独で使用しても、2種以上併用しても良い。これらの反応促進剤(触媒)を反応系中に存在させることによって、シリコンアルコキシドの加水分解反応および重縮合反応を促進することができ、より均一で安定なゾル溶液を作成できる。
本発明に係る超親水性膜を基材にコートする場合には、その基材の材料は特に限定されず、例えば、プラスチック、ガラス、金属、セラミックス等が挙げられる。触媒として非イオン性触媒を用いると、酸触媒あるいは塩基触媒を用いる場合と較べて、酸、塩基に対して腐食性の高い基材に、超親水性膜を形成できる。本発明に係る超親水性膜を被覆した応用製品としては、眼鏡レンズ、カメラレンズ、水中眼鏡、車の窓ガラス、ヘルメットのシールド、湿気の多い場所で使用するミラー、レンズ等が例示できる。
本発明によれば、使用場所に限定されない超親水性膜を提供することができる。
以下に、本発明に係る超親水性膜の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な実施の形態に何ら限定されるものではない。
図1は本発明の実施の形態に係る、超親水性を発現する非晶質シリカからなる多孔膜の構造を、本発明外の非晶質シリカからなる多孔膜の構造を比較して説明するための図である。図1(A)は、本発明の実施の形態に係る非晶質シリカ多孔膜1の斜視図であり、図1(B)は、非晶質シリカ多孔膜1を図1(A)に示すA−A線で切った断面図である。また、図1(C)は、本発明外の非晶質シリカ多孔膜4の斜視図であり、図1(D)は、非晶質シリカ多孔膜4を図1(C)に示すB−B線で切った断面図である。
本発明の実施に係る非晶質シリカ多孔膜1は、直径3nm以下の微細空孔2を有している。水分子が当該微細空孔2に入ると細孔内壁に吸着し、水分子の吸着層3を形成するが、細孔が微細であるため、細孔内は全て吸着した水分子で満たされる。このような状態になると、非晶質シリカ表面にはシリカと水分子のみが露出した状態となり、露出した水分子に起因する高い親水性が発現する。このため、非晶質シリカ多孔膜1は、超親水性の表面となる。
一方、本発明外の非晶質シリカ多孔膜4は、直径約10nm以上の空孔5を有している。水分子が当該空孔5に入ると細孔内壁に吸着し、水分子の吸着層3を形成するが、水分子の吸着層3の厚さに比較して細孔径が大きいため、細孔内壁に水分子が吸着する一方、細孔内には水分子で満たされない空隙が残る。このような状態になると、非晶質シリカ表面にはシリカと水分子に加え空気が露出した状態となる。空気と水は親和性が低いため、表面の親水性は、本発明の実施に係る非晶質シリカ多孔膜1ほどは高くならず、非晶質シリカ多孔膜4は、超親水性の表面とはならない。
この実施の形態の超親水性膜1は、基材の表面にコートされた場合、透明な膜状の形態を呈している。膜の内部および表面には、微細空孔2がほぼ均一に分散している。当該微細空孔2全体の80体積%以上を占める微細空孔2の直径は、3nm以下である。このような構造になるように孔径の制御を行うと、超親水性膜1は、上述の原理により親水性に優れた膜となる。また、超親水性膜1の厚みとしては、5nm以上20μm以下の範囲が好ましい。厚みを5nm以上とすると、十分な量の微細空孔2を確保できる。加えて、基材の表面に超親水性膜1を形成しやすい。スピンコート、スプレー塗布等の公知の膜形成方法を用いることにより、5nm以上の膜を形成するのが容易になるからである。また、厚みを20μm以下とすると、膜の透明性が高くなる。加えて、膜の剥離を生じにくくできる。この結果、超親水性の長期維持が可能となる。より好ましい厚みは、100nm以上2μm以下、さらに、500nm以上1μm以下の範囲である。当該構成となるような分子オーダーの多量の微細空孔2をほぼ均一にシリカマトリックス中に分散させたものは、今までにない新規な超親水性膜1である。
次に、本発明の実施の形態に係る超親水性膜1の製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る超親水性膜1の製造工程を示すフローチャートである。
(1)ゾル溶液の作製工程(ステップS101)
この工程は、シリコンアルコキシドをアルコール系溶媒中で、反応促進剤(触媒)としてヒドロキシアルデヒド誘導体、ヒドロキシ酢酸誘導体、アリルアルコール誘導体およびヒドロキシニトリル誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、水との存在下にて加水分解させて重縮合させるゾル溶液(低粘度液状混合物)を作製する工程である。シリコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)を好適に使用できる。ただし、TMOS以外に、1分子中に単一のシリコン原子および4つの加水分解性のアルコキシ基を有するシリコンアルコキシドあるいはその誘導体を用いても良い。また、アルコール系溶媒としては、メタノールを好適に使用できる。ただし、メタノール以外の低級脂肪族アルコール系溶媒を用いても良い。これらのアルコール系溶媒の使用により、均一で安定的なゾル溶液を作製できる。また、反応促進剤(触媒)としては、特に、ヒドロキシアセトンを用いることがより好ましい。これらのヒドロキシアルデヒド誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、アルルアルコール誘導体、およびヒドロキシニトリル誘導体等の反応促進剤から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応系中に存在させることによって、シランカップリング剤の加水分解反応および重縮合反応を促進することができ、より均一で安定なゾル溶液を作成できる。
この工程は、シリコンアルコキシドをアルコール系溶媒中で、反応促進剤(触媒)としてヒドロキシアルデヒド誘導体、ヒドロキシ酢酸誘導体、アリルアルコール誘導体およびヒドロキシニトリル誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、水との存在下にて加水分解させて重縮合させるゾル溶液(低粘度液状混合物)を作製する工程である。シリコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)を好適に使用できる。ただし、TMOS以外に、1分子中に単一のシリコン原子および4つの加水分解性のアルコキシ基を有するシリコンアルコキシドあるいはその誘導体を用いても良い。また、アルコール系溶媒としては、メタノールを好適に使用できる。ただし、メタノール以外の低級脂肪族アルコール系溶媒を用いても良い。これらのアルコール系溶媒の使用により、均一で安定的なゾル溶液を作製できる。また、反応促進剤(触媒)としては、特に、ヒドロキシアセトンを用いることがより好ましい。これらのヒドロキシアルデヒド誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、アルルアルコール誘導体、およびヒドロキシニトリル誘導体等の反応促進剤から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応系中に存在させることによって、シランカップリング剤の加水分解反応および重縮合反応を促進することができ、より均一で安定なゾル溶液を作成できる。
また、ゾル溶液を作製する際、攪拌混合方法を好適に用いることができる。例えば、シリコンアルコキシド、アルコール系溶媒、反応促進剤(触媒)および水または水とアルコール系溶媒からなる溶液を均一に混合するゾル溶液の作製工程を採用できる。なお、混合方法は、攪拌処理以外に、超音波処理等の他の方法であっても良い。また、ゾル溶液を作製するに際して、シリコンアルコキシド、アルコール系溶媒および反応促進剤(触媒)の種類、モル量と水のモル量によって、加水分解と重縮合との反応速度が変動するので、シリコンアルコキシド、アルコール系溶媒および反応促進剤(触媒)の種類、モル量と水のモル量に応じて、ゾル溶液を作製するための攪拌時間および温度を変えるのが好ましい。
本実施の形態に係るゾル溶液において、シリコンアルコキシドの加水分解反応と重縮合反応に際して反応促進剤(触媒)を存在させることにより、シリコンアルコキシドの加水分解と共に、重縮合反応が速やかに促進される。このため、粒子の沈殿が生成せず、均一な薄膜が形成されやすくなる。また、反応促進剤(触媒)に前述の非イオン性触媒を用いると、直径3nm以下の微細空孔が生成しやすくなる。
(2)ゾル薄膜の形成工程(ステップS102)
この工程は、前述のゾル化工程により得られたゾル溶液を用いて、ゾル薄膜を形成する工程である。シリコンアルコキシドの加水分解反応と重縮合反応により得られたゾル状生成物を基材の表面に固定または付着させる方法としては、例えば、ゾル溶液を基材の表面に塗布する塗布法、ゾル溶液に基材を浸漬する液相化学吸収法等が挙げられる。上記の塗布法が最も簡単でコストも低く、また必要な膜の厚みを容易に制御できるため、特に好ましい。上述の塗布法については、特別な方法に限定せず、公知の技術を採用すれば良い。例えば、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、バーコート法、ローラーコート法、リバース法、フレキソ法、印刷法等の既知の塗布手段が適宜採用できる。また、さらに密着性を向上させるため、基材の表面に前処理を施すのが好ましい。前処理方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線、電子線または放射線等の電離活性線による処理、粗面化処理、化学薬品処理またはプライマー処理等が挙げられる。
この工程は、前述のゾル化工程により得られたゾル溶液を用いて、ゾル薄膜を形成する工程である。シリコンアルコキシドの加水分解反応と重縮合反応により得られたゾル状生成物を基材の表面に固定または付着させる方法としては、例えば、ゾル溶液を基材の表面に塗布する塗布法、ゾル溶液に基材を浸漬する液相化学吸収法等が挙げられる。上記の塗布法が最も簡単でコストも低く、また必要な膜の厚みを容易に制御できるため、特に好ましい。上述の塗布法については、特別な方法に限定せず、公知の技術を採用すれば良い。例えば、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、バーコート法、ローラーコート法、リバース法、フレキソ法、印刷法等の既知の塗布手段が適宜採用できる。また、さらに密着性を向上させるため、基材の表面に前処理を施すのが好ましい。前処理方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線、電子線または放射線等の電離活性線による処理、粗面化処理、化学薬品処理またはプライマー処理等が挙げられる。
(3)ゾル薄膜の加熱工程(ステップS103)
この工程は、前述のゾル薄膜形成工程により得られたゾル薄膜を加熱する工程である。通常100℃〜1100℃、好ましくは300℃〜500℃で加熱する。また、加熱処理する前に、室温で一定時間乾燥するのが好ましい。加熱方法は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。
この工程は、前述のゾル薄膜形成工程により得られたゾル薄膜を加熱する工程である。通常100℃〜1100℃、好ましくは300℃〜500℃で加熱する。また、加熱処理する前に、室温で一定時間乾燥するのが好ましい。加熱方法は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。
なお、前述のゾル溶液作製時の攪拌混合の温度および時間等の条件を変えることにより、あるいは加熱工程の焼成温度を選択することにより、生成する非晶質シリカ薄膜の必要な微細空孔率および空孔直径の大きさを調整することができる。その結果、優れた親水性を有する超親水性膜1が得られる。
以上、本発明に係る超親水性膜1の実施の形態について説明したが、本発明に係る超親水性膜1は、上述の実施の形態に限定せず、種々変形した形態にて実施可能である。
例えば、ゾル薄膜の形成工程を行う前に、低沸点アルコール溶媒(例えば、メタノール)を用いて前述のゾル溶液の作製工程で得られたゾル溶液を、高沸点アルコール溶媒(例えば、2−エトキシエタノール、1−プロパノール)にて希釈する希釈工程を採用しても良い。この希釈工程では、低沸点アルコール溶媒を用いて作製されたゾル溶液は、高沸点アルコール溶媒にて希釈される。このような希釈工程を経たゾル溶液にて薄膜を形成すると、より平滑で均一性の高い薄膜になる。さらに、希釈工程の後に、エバポレータを用いて、低沸点成分である低沸点アルコールを蒸発させる。これによって、低沸点アルコール溶媒を高沸点アルコール溶媒に置換することができる。このような置換工程を経たゾル溶液にて薄膜を形成すると、もっと平滑で均一性の高い薄膜ができる。高沸点アルコール溶媒を用いたことによって、溶媒蒸発の影響を低減できるためである。なお、低沸点アルコール溶媒を用いて作製したゾル溶液において、低沸点アルコール溶媒を高沸点アルコール溶媒で置換する方法は、特に限定せず、例えば、低沸点アルコール溶媒にて作製したゾル溶液を、低沸点アルコール溶媒の沸点程度の温度に加熱しながら高沸点アルコール溶媒を一定量ずつ滴下する方法を例示することができる。また、低沸点アルコール溶媒にて作製したゾル溶液を沈殿・分離、遠心分離等により低沸点アルコール溶媒を分離した後、高沸点アルコール溶媒中に再分散させる方法を例示することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
A.超親水性膜の製造方法
窒素雰囲気下で、テトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)12.5mmol、ヒドロキシアセトン(和光純薬工業株式会社製)12.5mmolおよびメタノール(和光純薬工業株式会社製、有機合成用水分50ppm以下)10mlを反応容器に入れ、25℃で24時間攪拌しながら混合した。一方、別の容器に、イオン交換蒸留水62.5mmolとメタノール(和光純薬工業株式会社製、有機合成用水分50ppm以下)10mlとを入れ、25℃で24時間攪拌しながら混合した。その後、2つ混合液を混合し、40℃で攪拌(または静置でも良い)し、加水分解反応および重縮合反応を行った(これを「シリカミクロ多孔体ゾル」という。)。
窒素雰囲気下で、テトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)12.5mmol、ヒドロキシアセトン(和光純薬工業株式会社製)12.5mmolおよびメタノール(和光純薬工業株式会社製、有機合成用水分50ppm以下)10mlを反応容器に入れ、25℃で24時間攪拌しながら混合した。一方、別の容器に、イオン交換蒸留水62.5mmolとメタノール(和光純薬工業株式会社製、有機合成用水分50ppm以下)10mlとを入れ、25℃で24時間攪拌しながら混合した。その後、2つ混合液を混合し、40℃で攪拌(または静置でも良い)し、加水分解反応および重縮合反応を行った(これを「シリカミクロ多孔体ゾル」という。)。
次に、上述のシリカミクロ多孔体ゾルに対する2−エトキシエタノールの重量比が0.5になるように、シリカミクロ多孔体ゾルを2−エトキシエタノールにて希釈した(これを「シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液」という。)。
次に、エバポレータ(30℃)を用いて、上述のシリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液中のメタノールを蒸発させ、溶媒を2-エトキシエタノールに置換する。この結果得られた溶液を、「シリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノール」という。
上述のシリカミクロ多孔体ゾル、シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液およびシリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノールを、それぞれ、スピンコータ塗布法(2000rpm、60s)にてシリコン基板(小松電子株式会社製、厚さ約525μm、直径4インチの片面ミラーウェーハ)の表面に塗布して、均一なゾル薄膜を形成した。次に、得られた3種類のゾル薄膜を、大気中25℃で24時間乾燥した後、300〜500℃で2時間加熱焼成して超親水性膜を得た。
B.超親水性膜の特性評価方法
非表面積細孔分布測定装置(Micromeritics,ASAP−2010)を用い、窒素吸着法により、本実施例の条件にて得られた各超親水性膜の成分の微細空孔全体の体積および特定の直径の微細空孔の割合(体積%)を測定した。また、接触角測定装置(FAMAS、協和界面科学株式会社製)により、θ/2法を用いて、超親水性膜の表面と水滴との静止接触角を測定した。また、レーザ顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて、各超親水性膜の膜厚および表面粗さを測定した。
非表面積細孔分布測定装置(Micromeritics,ASAP−2010)を用い、窒素吸着法により、本実施例の条件にて得られた各超親水性膜の成分の微細空孔全体の体積および特定の直径の微細空孔の割合(体積%)を測定した。また、接触角測定装置(FAMAS、協和界面科学株式会社製)により、θ/2法を用いて、超親水性膜の表面と水滴との静止接触角を測定した。また、レーザ顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて、各超親水性膜の膜厚および表面粗さを測定した。
C.超親水性膜の特性評価結果および考察
図3は、シリカミクロ多孔体ゾルを塗布して450℃にて焼成して得られた超親水性膜の表面と水滴との静止接触角の写真を示す。
図3は、シリカミクロ多孔体ゾルを塗布して450℃にて焼成して得られた超親水性膜の表面と水滴との静止接触角の写真を示す。
図3に示すように、シリカミクロ多孔体ゾルにて作製した超親水性膜の表面と水滴との静止接触角は1度であった。また、同様に、シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液およびシリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノールを塗布して450℃にて焼成して得られた各超親水性膜の表面と水滴との静止接触角もまた1度であった。焼成温度を300〜450℃の範囲で変化させると、静止接触角は、0〜2度(0度を含まず)の範囲で変化した。いずれのサンプルでも、十分に高い親水性が確認でき、超親水性膜としての優れた機能が認められた。
この実施例で得られた各超親水性膜は、多数の微細空孔を含んでいた。微細空孔全体の80体積%以上を占める微細空孔の直径は、窒素吸着法により、2nm以下であることがわかった。直径0.5〜2nmの範囲の微細空孔は、微細空孔全体の80体積%以上であった。
図4は、シリカミクロ多孔体ゾル、シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液およびシリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノールをそれぞれ塗布して450℃にて焼成して得られた各超親水性膜のレーザ顕微鏡写真を示す図である。図4(A)は、シリカミクロ多孔体ゾルを用いて作製した超親水性膜、図4(B)は、シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液を用いて作製した超親水性膜、図4(C)は、シリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノールを用いて作製した超親水性膜を、それぞれ示す。また、表1に、各超親水性膜の膜厚および表面粗さを示す。
図4および表1に示すように、シリカミクロ多孔体ゾルを用いた超親水性膜、シリカミクロ多孔体ゾルの希釈溶液を用いた超親水性膜およびシリカミクロ多孔体/2−エトキシエタノールを用いた超親水性膜となるにつれて、表面粗さの小さい平滑な面を有する膜が得られることがわかった。
本発明は、超親水性膜を製造あるいは使用する産業に利用することができる。
Claims (2)
- 主として非晶質シリカから成る超親水性膜であって、
その内部および表面に微細空孔を有し、当該微細空孔全体の80体積%以上は、直径3nm以下の空孔であり、上記超親水性膜の表面における水に対する静止接触角が2度以下(0度を含まず)であることを特徴とする超親水性膜。 - 前記超親水性膜の厚みが5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超親水性膜。
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