JP2008171973A - 磁気抵抗効果膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する際に、酸化チェンバーの酸化条件のばらつきを抑え、安定した品質の磁気抵抗効果膜を得る。
【解決手段】酸化チェンバー内で金属層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する処理工程を有する磁気抵抗効果膜の製造方法において、前記金属層を成膜する際に、該金属層の膜厚により磁気抵抗効果膜の抵抗値がばらつかない膜厚に設定して検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成し、該ワークの前記検査用磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定し、該測定結果から前記金属層を酸化する酸化チェンバーの状態を分析し、該分析結果を前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバーによる酸化条件を管理して磁気抵抗効果膜を形成する。
【選択図】図3
【解決手段】酸化チェンバー内で金属層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する処理工程を有する磁気抵抗効果膜の製造方法において、前記金属層を成膜する際に、該金属層の膜厚により磁気抵抗効果膜の抵抗値がばらつかない膜厚に設定して検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成し、該ワークの前記検査用磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定し、該測定結果から前記金属層を酸化する酸化チェンバーの状態を分析し、該分析結果を前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバーによる酸化条件を管理して磁気抵抗効果膜を形成する。
【選択図】図3
Description
本発明は磁気抵抗効果膜の製造方法に関し、より詳細には、磁気抵抗効果膜を構成するトンネルバリア層となる絶縁層を形成する際に使用する酸化チェンバーによる酸化条件を的確に制御することができ、安定した品質の磁気抵抗効果膜を形成することを可能にする磁気抵抗効果膜の製造方法に関する。
磁気ヘッドのリードヘッドを構成する磁気抵抗効果素子は、磁性層あるいは非磁性層を積層して形成した多層の磁気抵抗効果膜からなる。この磁気抵抗効果膜としてはGMR素子あるいはTMR素子等の素子の種類に応じて、種々の膜構成が提案されている。
図4は、TMR素子の磁気抵抗効果膜の構成例を示す。この磁気抵抗効果膜は、基板10上に、第1下地層11a、第2下地層11b、反強磁性層12、磁化固定層14として第1磁化固定層14a、反強磁性結合層14cおよび第2磁化固定層14b、絶縁層15、フリー層16、キャップ層17として第1キャップ層17aおよび第2キャップ層17bを、この順に積層して形成されている。
図4は、TMR素子の磁気抵抗効果膜の構成例を示す。この磁気抵抗効果膜は、基板10上に、第1下地層11a、第2下地層11b、反強磁性層12、磁化固定層14として第1磁化固定層14a、反強磁性結合層14cおよび第2磁化固定層14b、絶縁層15、フリー層16、キャップ層17として第1キャップ層17aおよび第2キャップ層17bを、この順に積層して形成されている。
反強磁性層12は第1磁化固定層14aとの交換結合作用によって磁化固定層14の磁化方向を固定する作用をなす。第1磁化固定層14aと第2磁化固定層14bは反強磁性結合層14cの作用によって、磁化固定層14の磁化方向をさらに固定する作用をなす。磁気抵抗効果膜を構成する各層には種々の材料が用いられるが、たとえば、第1下地層11aとしてTa、第2下地層11bとしてNiFe、反強磁性層12にIrMn、第1磁化固定層14aにCoFe、反強磁性結合層14cにRu、第2磁化固定層14bにCoFeB、絶縁層15にAl-O、フリー層16にNiFe、第1キャップ層17aにTa、第2キャップ層17bにRuが用いられる。
TMR素子は、磁気抵抗効果膜の膜面に垂直にセンス電流を流す。絶縁層15はトンネルバリア層として作用するもので、抵抗値(RA:単位面積あたりの抵抗値)ができるだけ小さくなるように形成される。具体的には、数オングストロームの厚さにアルミニウム層を成膜して形成し、アルミニウム層を酸化させて絶縁層(Al-O層)15とする。この絶縁層15の厚さはTMR素子の特性に大きな影響を及ぼすものであり、従来は、絶縁層15の抵抗値を随時測定し、その測定結果を絶縁層15を形成する装置の制御にフィードバックし、所定の特性のTMR素子が得られるようにしている。
トンネルジャンクション型の磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定する方法としては、被検査体に検査用のパターンを形成して検査する方法もあるが、被検査体に4本のプローブを当接させ、プローブ間の抵抗を測定し,計算によって抵抗値を求める方法(CIPT:current-in-plane-tunneling)が提案されている(非特許文献1)。
特開2005−129564号公報
特開2000−251229号公報
Applied Physics Letters vol.83、No.1、84、(2003)
トンネルジャンクション型の磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定する方法としては、被検査体に検査用のパターンを形成して検査する方法もあるが、被検査体に4本のプローブを当接させ、プローブ間の抵抗を測定し,計算によって抵抗値を求める方法(CIPT:current-in-plane-tunneling)が提案されている(非特許文献1)。
上記のように、磁気抵抗効果膜の絶縁層15の抵抗値を随時測定し、その測定結果を絶縁層15を形成する制御条件に反映させるようにしているのは、絶縁層15を形成する条件をあらかじめ調整しておいても、微妙に制御条件が変動することによって絶縁層15となるアルミニウム層の膜厚がばらついたり、アルミニウム層の酸化状態が変動したりして絶縁層15の抵抗値が変動してしまうためである。たとえば、アルミニウム層の酸化には、酸化チェンバーを用いるが、酸化チェンバー内でのワークの配置や、酸素ガス圧によって、アルミニウム層の酸化膜の膜厚がばらつき、絶縁層15の抵抗値がばらついてしまう。
TMR素子では、絶縁層15の性質が素子の特性に大きく影響するから、絶縁層15の状態が変動することは素子の特性のばらつきの変動に直結する。このため、従来は、絶縁層15の抵抗値を随時測定し、成膜条件の変動をチェックしながら磁気抵抗効果膜を形成している。
しかしながら、実際に磁気抵抗効果膜(絶縁層)の抵抗値を測定してみると、絶縁層の抵抗値はアルミニウム層の膜厚に非常に敏感で、とくにアルミニウム層の厚さが絶縁層15として実際に用いられる数オングストロームといったきわめて薄い場合には、絶縁層15の抵抗値が膜厚によって大きく変動する。この抵抗値のばらつきは、アルミニウム層の膜厚がばらつくことによる影響と、アルミニウム層を酸化した場合の酸化状態のばらつきによるものと考えられる。
しかしながら、実際に磁気抵抗効果膜(絶縁層)の抵抗値を測定してみると、絶縁層の抵抗値はアルミニウム層の膜厚に非常に敏感で、とくにアルミニウム層の厚さが絶縁層15として実際に用いられる数オングストロームといったきわめて薄い場合には、絶縁層15の抵抗値が膜厚によって大きく変動する。この抵抗値のばらつきは、アルミニウム層の膜厚がばらつくことによる影響と、アルミニウム層を酸化した場合の酸化状態のばらつきによるものと考えられる。
このように、絶縁層15の抵抗値の測定結果がばらつく原因がアルミニウム層の膜厚のばらつきと、アルミニウム層を酸化した際の酸化状態のばらつきに起因していると、そのばらつきの原因が、アルミニウム層の成膜条件にあるか、アルミニウム層を酸化する酸化条件にあるかを特定することができず、したがって絶縁層15を形成する条件に対して的確にフィードバックして制御することができない。
本発明は、磁気抵抗効果膜とくにTMR型の磁気抵抗効果膜の製造方法に関し、アルミニウム層等の金属層を酸化して、磁気抵抗効果膜を構成するトンネルバリア層としての絶縁層を形成する際に、酸化条件のばらつきを抑え、安定した特性の磁気抵抗効果膜を製造することができる磁気抵抗効果膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、酸化チェンバー内で金属層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する処理工程を有する磁気抵抗効果膜の製造方法において、前記金属層を成膜する際に、該金属層の膜厚により磁気抵抗効果膜の抵抗値がばらつかない膜厚に設定して検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成し、該ワークの前記検査用磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定し、該測定結果から前記金属層を酸化する酸化チェンバーの状態を分析し、該分析結果を前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバーによる酸化条件を管理して磁気抵抗効果膜を形成することを特徴とする。
すなわち、酸化チェンバー内で金属層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する処理工程を有する磁気抵抗効果膜の製造方法において、前記金属層を成膜する際に、該金属層の膜厚により磁気抵抗効果膜の抵抗値がばらつかない膜厚に設定して検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成し、該ワークの前記検査用磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定し、該測定結果から前記金属層を酸化する酸化チェンバーの状態を分析し、該分析結果を前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバーによる酸化条件を管理して磁気抵抗効果膜を形成することを特徴とする。
また、前記酸化チェンバー内が過酸化の状態と判断された際には、酸化チェンバー内の酸素ガス圧を低くするか、酸化時間を短縮するように、酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバー内が酸化不足の状態と判断された際には、酸化チェンバー内の酸素ガス圧を高くするか、酸化時間を長くするように、前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックすることによって、酸化チェンバーによる酸化条件を一定にして金属層を均質的に酸化することができる。
また、前記検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成する際に、前記金属層の膜厚を厚くする他は、通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程と同一工程によりワークを作成することを特徴とする。このように、磁気抵抗効果膜を形成する工程と同一工程でワークを形成することにより、検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを容易に作成することができ、また、磁気抵抗効果膜の製造工程中の酸化工程を容易にモニターすることが可能となる。
また、前記磁気抵抗効果膜を形成する工程において、定期的に前記検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを形成し、該ワークの抵抗値を測定して、前記酸化チェンバーの状態を定期的にモニターしながら酸化チェンバーの酸化条件を管理することにより、酸化チェンバーにおける酸化状態の変動を確実に検知することができ、酸化チェンバーによる酸化作用を的確に制御することが可能になる。
また、前記磁気抵抗効果膜を形成する工程において、定期的に前記検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを形成し、該ワークの抵抗値を測定して、前記酸化チェンバーの状態を定期的にモニターしながら酸化チェンバーの酸化条件を管理することにより、酸化チェンバーにおける酸化状態の変動を確実に検知することができ、酸化チェンバーによる酸化作用を的確に制御することが可能になる。
また、前記金属層として、アルミニウム層を成膜して形成することによりトンネルバリア層として好適に利用できる。
また、前記アルミニウム層の膜厚を、4nm以上とすることによって、アルミニウム層の膜厚がばらついても膜厚のばらつきによる抵抗値のばらつきを抑えることができ、酸化チェンバーにおける酸化状態を的確に検知することが可能になる。
また、前記磁気抵抗効果膜の抵抗値の測定方法として、ワークの表面にプローブを当接して抵抗値を測定するCIPT(current-in-plane-tunneling)法を利用することによって、簡易に磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定することができ、酸化チェンバーを好適に管理することが可能となる。
また、前記アルミニウム層の膜厚を、4nm以上とすることによって、アルミニウム層の膜厚がばらついても膜厚のばらつきによる抵抗値のばらつきを抑えることができ、酸化チェンバーにおける酸化状態を的確に検知することが可能になる。
また、前記磁気抵抗効果膜の抵抗値の測定方法として、ワークの表面にプローブを当接して抵抗値を測定するCIPT(current-in-plane-tunneling)法を利用することによって、簡易に磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定することができ、酸化チェンバーを好適に管理することが可能となる。
本発明に係る磁気抵抗効果膜の製造方法によれば、検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを使用することによって、金属層を酸化して絶縁層を形成する酸化チェンバーにおける酸化条件を的確に把握することができる。これによって、酸化チェンバーの制御条件を的確に調整することができ、金属層を酸化する条件が的確に制御されることによって、磁気抵抗効果膜の特性のばらつきを抑えることができ、高品質の磁気抵抗効果膜を得ることができる。
図1は、本発明方法による成膜装置の管理方法の適用例として、TMR型の磁気抵抗効果膜の成膜工程における成膜装置の管理方法において利用する検査用磁気抵抗効果膜20の構成を示す。この検査用磁気抵抗効果膜20の構成は図4に示す従来のTMR型の磁気抵抗効果膜と同一である。すなわち、セラミックからなる基板10上に、第1下地層11a、第2下地層11b、反強磁性層12、第1磁化固定層14a、反強磁性結合層14c、第2磁化固定層14b、絶縁層15、フリー層16、第1キャップ層17aおよび第2キャップ層17bをこの順に積層して形成されている。
図1に示す検査用磁気抵抗効果膜20の構成と図4に示す磁気抵抗効果膜の構成においてもっとも相違する点は、絶縁層22の構成である。すなわち、TMR型の磁気抵抗効果膜においては、絶縁層15はできるだけ薄く形成する必要があり、絶縁層15となるアルミニウム層の膜厚を数オングストロームとし、酸化チェンバー内でアルミニウム層を酸化して絶縁層15とするのに対して、本実施形態において使用する検査用磁気抵抗効果膜20においては、絶縁層22を形成するアルミニウム層の厚さをTMR素子に用いる磁気抵抗効果膜を形成する場合のアルミニウム層にくらべて、はるかに厚く(100オングストローム)形成することにある。
検査用磁気抵抗効果膜20の絶縁層22を除く各層の材質および厚さは、磁気抵抗効果膜の各層と同一である。本実施形態での検査用磁気抵抗効果膜20、いいかえれば磁気抵抗効果膜における各層の材質および厚さは次の通りである。第1下地層:Ta、厚さ3nm、第2下地層:NiFe、厚さ2nm、反強磁性層:IrMn、厚さ7nm、第1磁化固定層:CoFe、厚さ2nm、反強磁性結合層:Ru、厚さ0.8nm、第2磁化固定層:CoFeB、厚さ2.4nm、フリー層:NiFe、厚さ4nm、第1キャップ層:Ta、厚さ3nm、第2キャップ層:Ru、厚さ10nmである。これらの各層は、スパッタリング法により、順次成膜される。
本実施形態において絶縁層22の厚さを、TMR型の磁気抵抗効果膜における絶縁層15の厚さに比較してはるかに厚く形成しているのは、絶縁層22を構成するアルミニウム層の膜厚によるばらつきが検査用磁気抵抗効果膜20の抵抗値(実際には検査用磁気抵抗効果膜20を構成する絶縁層22の抵抗値)のばらつきに影響しないようにするためである。
図2は、アルミニウム層の膜厚によって絶縁層の抵抗値(RA)がどのように変化するかを測定した結果を示す。この測定は、図1に示す検査用磁気抵抗効果膜20の膜構成のうち、絶縁層22となるアルミニウム層の膜厚を変えて成膜した試料を作成し、これらの試料について抵抗値を測定して行った。実際には、磁気抵抗効果膜の成膜工程において、絶縁層となるアルミニウム層の膜厚を変えて作成した試料(ウエハ)を使用した。アルミニウム層の酸化工程は、通常の磁気抵抗効果膜の製造工程において酸化チェンバーを用いて酸化する工程と同じである。図2の測定は、酸化チェンバーでの酸素ガス圧:100Pa、処理時間6分として得たものである。
図2は、アルミニウム層の膜厚によって絶縁層の抵抗値(RA)がどのように変化するかを測定した結果を示す。この測定は、図1に示す検査用磁気抵抗効果膜20の膜構成のうち、絶縁層22となるアルミニウム層の膜厚を変えて成膜した試料を作成し、これらの試料について抵抗値を測定して行った。実際には、磁気抵抗効果膜の成膜工程において、絶縁層となるアルミニウム層の膜厚を変えて作成した試料(ウエハ)を使用した。アルミニウム層の酸化工程は、通常の磁気抵抗効果膜の製造工程において酸化チェンバーを用いて酸化する工程と同じである。図2の測定は、酸化チェンバーでの酸素ガス圧:100Pa、処理時間6分として得たものである。
図2に示すように、アルミニウム層の膜厚が異なるサンプルについてその抵抗値を測定した結果は、アルミニウム層の膜厚が薄い場合には(40オングストローム以下)アルミニウム層の膜厚によって絶縁層の抵抗値がきわめて大きく変動するのに対して、アルミニウム層の膜厚が厚くなる(40オングストローム以上)と、アルミニウム層の膜厚がかわっても抵抗値が大きく変動しないことを示す。
この実験結果は、絶縁層22となるアルミニウム層の膜厚が薄い場合には、アルミニウム層自体の膜厚のばらつきおよびアルミニウム層の酸化状態のばらつき、またアルミニウム層の下地層での酸化状態も影響して、磁気抵抗効果膜の抵抗値が大きく変化するのに対して、アルミニウム層をある程度厚くすると、アルミニウム層の膜厚の一部が酸化されて飽和し、アルミニウム層の膜厚によるばらつきやアルミニウム層の下地層が酸化されることによる影響が取り除かれ、アルミニウム層が酸化されたことのみによって生じる抵抗が測定にかかっていることを示すものと考えられる。
アルミニウム層の一部が酸化されて絶縁層(Al-O層)となった場合、酸化されずに残ったアルミニウム層は抵抗値には寄与しないから、アルミニウム層を十分厚く形成すれば、アルミニウム層を成膜した際の膜厚のばらつきも絶縁層22の抵抗値(RA)のばらつきに影響を与えることはない。図1の検査用磁気抵抗効果膜20の構成における絶縁層22は、実際にはアルミニウム層の全体が酸化されているわけではなく、アルミニウム層の上面側が酸化されて酸化膜(絶縁層)となり、アルミニウム層の下面側(第2磁化固定層14bに接する側)はアルミニウム層のままとなっている。
図1に示した絶縁層22の厚さを厚く(100オングストローム)形成した検査用磁気抵抗効果膜20を使用して抵抗値を測定した測定結果は、上述したように、アルミニウム層の厚さのばらつきによる影響を取り除き、アルミニウム層の酸化状態を反映したもの、、いいかえれば酸化チェンバーにおける酸化状態を反映したものとなるから、この検査用磁気抵抗効果膜20を用いてその抵抗値を測定することにより、磁気抵抗効果膜を形成する製造工程における酸化チェンバーの状態を検知することができる。
上述した検査用磁気抵抗効果膜20を、磁気抵抗効果膜を形成する際の酸化チェンバーの管理および磁気抵抗効果膜の製造工程での管理に利用する方法を図3に示す。検査用磁気抵抗効果膜20の構成をTMR型の磁気抵抗効果膜と同一の構成としているのは、通常の磁気抵抗効果膜の製造工程を利用して検査用磁気抵抗効果膜20の構成を備えるワークを形成し、このワークの抵抗値を測定することにより、磁気抵抗効果膜の製造工程においてアルミニウム層を酸化する酸化チェンバーの制御条件を管理できるようにするためである。
まず、磁気抵抗効果膜の製造工程において、図1に示す構成の検査用磁気抵抗効果膜20を形成する(ステップS1)。検査用磁気抵抗効果膜20は絶縁層となるアルミニウム層を成膜する際に、100オングストローム程度に厚付けして形成する。アルミニウム層を成膜する際に通常の磁気抵抗効果膜でのアルミニウム層よりも厚付けする以外は、酸化チェンバーによる酸化処理、他の各層を成膜する処理は通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程とまったく同様とする。
次に、上記工程で得られた検査用磁気抵抗効果膜20が形成されたワークについて抵抗値を測定する(ステップS2)。検査用磁気抵抗効果膜20が形成されたワークの抵抗値の測定には前述したCIPT法が好適に利用できる。CIPT法によれば、ワークの表面にプローブを当接するだけで抵抗値を測定することができ、ワークの面内の複数点の抵抗値を簡単に測定することができる。検査用磁気抵抗効果膜20の抵抗値として、複数点の測定値の平均値とすることもできる。
また、ワーク(ウエハ)の面内の複数点の抵抗値を測定し、その測定結果から、ワークの平面内で抵抗値が高い領域と抵抗値が低い領域の分布を調べるといったことも可能である。
また、ワーク(ウエハ)の面内の複数点の抵抗値を測定し、その測定結果から、ワークの平面内で抵抗値が高い領域と抵抗値が低い領域の分布を調べるといったことも可能である。
次に、ステップS2で得られた抵抗値の測定結果から、酸化チェンバーの酸化状態を判断する(ステップS3)。たとえば、検査用磁気抵抗効果膜20の抵抗値が規定値よりも高くなっている場合には、酸化チェンバー内が過酸化の状態になっていると判断されるし、検査用磁気抵抗効果膜20の抵抗値が規定値よりも低くなっている場合には、酸化チェンバー内が酸化不足の状態になっていると考えられる。また、ワークの平面内で抵抗値が高い領域と低い領域があるような場合には、酸化チェンバー内での酸化状態が不均一になっていると考えられる。
ステップS4は、ステップS3の分析結果を酸化チェンバーの制御にフィードバックするステップである。酸化チェンバー内が過酸化の状態にある場合には、酸化チェンバー内の酸素ガス圧を下げる、酸化時間を短くするといったように酸化条件を調節することによって酸化チェンバー内の条件を補正することができるし、酸化チェンバー内が酸化不足の場合には酸素ガス圧を上げる、酸化時間を長くするといったように酸化条件を調節することによって酸化条件を規格に合致するように調節することができる。また、ワークの平面内で抵抗値が均一にならない場合には、酸化チェンバー内における酸素ガスのフローを均一にしたり酸素ガスの滞留がないようにしたりすること、酸化チェンバー内におけるワークの配置を改善するといった調整を行う方法が考えられる。
このように検査用磁気抵抗効果膜20を形成したワークの抵抗値の測定結果に基づいて酸化チェンバーの酸化条件を調整する方法は、検査用磁気抵抗効果膜20がアルミニウム層等の膜厚による影響や下地層の影響を排除し、酸化チェンバーにおける酸化条件を反映するものとなることから、酸化チェンバーの制御条件を改善する方法として好適に利用できるものであり、酸化チェンバーの制御条件にフィードバックすることによって、酸化チェンバーの酸化条件のばらつきを防止し、これによって磁気抵抗効果膜の特性のばらつきを効果的に抑えることができる。
検査用磁気抵抗効果膜20を利用して酸化チェンバーの状態を検知し、その検知結果に基づいて酸化チェンバーを制御する方法にはいろいろな利用形態があり得る。
たとえば、磁気抵抗効果膜を製造する通常の製造工程中で、定期的に検査用磁気抵抗効果膜20の構成となるワークを作成し、通常工程でワークを製作した後、そのワーク(検査用磁気抵抗効果膜)の抵抗値を測定することによって、酸化チェンバーの酸化状態の変動の様子をモニターすることができ、モニター結果を酸化チェンバーの制御条件にフィードバックすることによって常に、酸化チェンバーを一定の酸化条件に維持することが可能になる。
たとえば、磁気抵抗効果膜を製造する通常の製造工程中で、定期的に検査用磁気抵抗効果膜20の構成となるワークを作成し、通常工程でワークを製作した後、そのワーク(検査用磁気抵抗効果膜)の抵抗値を測定することによって、酸化チェンバーの酸化状態の変動の様子をモニターすることができ、モニター結果を酸化チェンバーの制御条件にフィードバックすることによって常に、酸化チェンバーを一定の酸化条件に維持することが可能になる。
前述したように、TMR型の磁気抵抗効果膜の場合はトンネルバリア層となる絶縁層の抵抗値のばらつきが磁気ヘッドの特性に大きく影響を与える。絶縁層の抵抗値は酸化チェンバーの酸化条件に敏感に影響されるから、酸化チェンバーの酸化条件を均一に維持することは、特性のばらつきのない、高品質のTMR素子を製造する上できわめて重要である。本実施形態のように、磁気抵抗効果膜の製造工程において、とくにリード素子の特性に影響を与える酸化条件を確実に管理できることは、磁気抵抗効果膜を製造する上できわめて有効となる。
酸化チェンバーの酸化条件を管理する別の方法としては、検査用磁気抵抗効果膜20を形成したワークを複数枚製造し、そのワーク(検査用磁気抵抗効果膜)の抵抗値が変動する様子を見ることで、酸化チェンバーの酸化状態が推移する様子を検知し、その検知結果から酸化チェンバーの制御条件にフィードバックして均一な酸化がなされるようにする方法もある。
たとえば、酸化チェンバーの条件を一定に維持した場合でも、酸化チェンバーの酸化状態が時間とともに過酸化の状態に推移していくような傾向がある場合には、時間とともに酸素ガス圧を低下させたり、酸化時間を短縮したりして一定の酸化がなされるように制御するといった方法である。また、酸化チェンバーを使用開始して、一定時間経過すると酸化条件が安定するような場合は、はじめに検査用磁気抵抗効果膜20を形成したワークを流し、酸化条件が安定した状態になったことが検知されたら、その後は通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程に切り換えるといった方法である。
たとえば、酸化チェンバーの条件を一定に維持した場合でも、酸化チェンバーの酸化状態が時間とともに過酸化の状態に推移していくような傾向がある場合には、時間とともに酸素ガス圧を低下させたり、酸化時間を短縮したりして一定の酸化がなされるように制御するといった方法である。また、酸化チェンバーを使用開始して、一定時間経過すると酸化条件が安定するような場合は、はじめに検査用磁気抵抗効果膜20を形成したワークを流し、酸化条件が安定した状態になったことが検知されたら、その後は通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程に切り換えるといった方法である。
前述したように、TMR型の磁気抵抗効果膜の製造工程においては、トンネルバリア層となる絶縁層の抵抗値、いいかえれば絶縁層となるアルミニウム層の酸化状態がその特性に大きく影響する。したがって、アルミニウム層を酸化する酸化工程での制御条件を安定させ、均一の酸化条件となるように高精度に制御できることは、特性のばらつきのない高品質の磁気抵抗効果膜を製造する上できわめて重要である。この点で、本実施形態の検査用磁気抵抗効果膜20を利用して酸化チェンバーの酸化条件を管理する方法として有効であり、上記実施形態における管理方法は、TMR型の磁気抵抗効果膜の製造工程を利用しながら酸化チェンバーの酸化条件を管理できる点においても有用である。
なお、上記実施形態においては、通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程と同一工程で検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成して酸化チェンバーの状態を分析して酸化チェンバーを管理するが、検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークは、必ずしも通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程と同一工程で作成しなければならないものではない。通常の磁気抵抗効果膜を形成する酸化チェンバーを利用しながら、通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程とは別工程によって検査用としてワークを作成して使用することもできる。
また、上記実施形態では、通常の磁気抵抗効果膜の製造工程を利用することから、磁気抵抗効果膜の構成も従来の磁気抵抗効果膜の構成と同一構成となるが、別の製造工程による場合には、異なる磁気抵抗効果膜の構成とすることも可能である。
また、上記実施形態では、通常の磁気抵抗効果膜の製造工程を利用することから、磁気抵抗効果膜の構成も従来の磁気抵抗効果膜の構成と同一構成となるが、別の製造工程による場合には、異なる磁気抵抗効果膜の構成とすることも可能である。
10 基板
11a 第1下地層
11b 第2下地層
12 反強磁性層
14 磁化固定層
14a 第1の磁化固定層
14b 第2の磁化固定層
14c 反強磁性結合層
16 フリー層
20 検査用磁気抵抗効果膜
22 絶縁層
11a 第1下地層
11b 第2下地層
12 反強磁性層
14 磁化固定層
14a 第1の磁化固定層
14b 第2の磁化固定層
14c 反強磁性結合層
16 フリー層
20 検査用磁気抵抗効果膜
22 絶縁層
Claims (7)
- 酸化チェンバー内で金属層を酸化してトンネルバリア層としての絶縁層を形成する処理工程を有する磁気抵抗効果膜の製造方法において、
前記金属層を成膜する際に、該金属層の膜厚により磁気抵抗効果膜の抵抗値がばらつかない膜厚に設定して検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成し、
該ワークの前記検査用磁気抵抗効果膜の抵抗値を測定し、該測定結果から前記金属層を酸化する酸化チェンバーの状態を分析し、
該分析結果を前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、前記酸化チェンバーによる酸化条件を管理して磁気抵抗効果膜を形成することを特徴とする磁気抵抗効果膜の製造方法。 - 前記酸化チェンバー内が過酸化の状態と判断された際には、酸化チェンバー内の酸素ガス圧を低くするか、酸化時間を短縮するように、酸化チェンバーの制御条件にフィードバックし、
前記酸化チェンバー内が酸化不足の状態と判断された際には、酸化チェンバー内の酸素ガス圧を高くするか、酸化時間を長くするように、前記酸化チェンバーの制御条件にフィードバックすることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。 - 前記検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを作成する際に、前記金属層の膜厚を厚くする他は、通常の磁気抵抗効果膜を形成する工程と同一工程によりワークを作成することを特徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
- 前記磁気抵抗効果膜を形成する工程において、定期的に前記検査用磁気抵抗効果膜が形成されたワークを形成し、該ワークの抵抗値を測定して、前記酸化チェンバーの状態を定期的にモニターしながら酸化チェンバーの酸化条件を管理することを特徴とする請求項3記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
- 前記金属層として、アルミニウム層を成膜して形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
- 前記アルミニウム層の膜厚を、4nm以上とすることを特徴とする請求項5記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
- 前記磁気抵抗効果膜の抵抗値の測定方法として、ワークの表面にプローブを当接して抵抗値を測定するCIPT(current-in-plane-tunneling)法を利用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の磁気抵抗効果膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007003075A JP2008171973A (ja) | 2007-01-11 | 2007-01-11 | 磁気抵抗効果膜の製造方法 |
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Country | Link |
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-
2007
- 2007-01-11 JP JP2007003075A patent/JP2008171973A/ja not_active Withdrawn
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