JP2008169423A - 曲げ加工用オーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲げ加工において意匠性に優れたシャープな稜線を安定して形成できる溝付きオーステナイト系ステンレス鋼板を提供する。
【解決手段】 0.2%耐力が200MPa以下、加工硬化指数n値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、鋼板表面に刃を押し付けて塑性変形させる非除去加工により下記[1]および[2]を満たす形状のV溝を形成した曲げ加工用鋼板。
[1]溝深さd(mm)と板厚t(mm)が、0.4≦d/t≦0.6を満たす。
[2]V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)が、V溝を谷折れ線とする曲げ加工に供するときの曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たす。ただし、80≦X≦100である。
【選択図】図1
【解決手段】 0.2%耐力が200MPa以下、加工硬化指数n値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、鋼板表面に刃を押し付けて塑性変形させる非除去加工により下記[1]および[2]を満たす形状のV溝を形成した曲げ加工用鋼板。
[1]溝深さd(mm)と板厚t(mm)が、0.4≦d/t≦0.6を満たす。
[2]V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)が、V溝を谷折れ線とする曲げ加工に供するときの曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たす。ただし、80≦X≦100である。
【選択図】図1
Description
本発明は、曲げ加工性に優れる溝付きオーステナイト系ステンレス鋼板に関する。
エレベーターの三方枠など、ステンレス鋼板を使用した意匠性の高い建材用途においては、曲げ加工によって形成された稜線がシャープな形状(コーナーRが小さい形状)となることが望まれる。このような用途に使用する材料として、従来、溝付きのステンレス鋼板が使用されている。すなわち、ステンレス鋼板を単に折り曲げただけでは、曲げ加工部の外側にシャープな稜線を形成することは通常困難である。シャープな稜線を形成しようとして曲げ半径の小さい曲げを施すと、稜の部分に割れが生じてしまう。逆に割れを防ぐにはコーナーRの大きい曲げ加工とせざるを得ず、シャープな稜線は実現できない。そこで、曲げの内側の谷折れ線になる部分にV字型の溝を形成する手法が採られる。
このような溝付け加工の方法としては、プレーナーなどにより材料表面を溝状に切削する「除去加工」と、回転ロール外周の刃を材料表面に押し付けて塑性変形によって溝を形成する「非除去加工」がある。前者は溝付けのコストが高く、また溝部周辺が十分加工硬化していない状態で曲げ加工を施すことになるので、曲げ加工後の構造物は稜線近傍が強度的に弱いものとなり、疵やへこみが生じやすい。後者は溝付け加工によって生じる「加工硬化」が利用できるので上記のような欠点は解消されるが、SUS304のような一般的なオーステナイト系ステンレス鋼に適用すると溝付け加工時に加工誘起マルテンサイトが生成し、曲げ加工性そのものの低下を招く。このため、稜の部分に割れが生じやすい。
特許文献1には、加工誘起マルテンサイトが生成しにくい組成に調整したオーステナイト系ステンレス鋼板を用いて非除去加工によりV溝を形成し、その溝を谷折れ線として曲げ加工する異形管の製造方法が開示されている。これによると比較的深いV溝を形成することができ、コーナーRの小さい管を製造できるという。
しかし、特許文献1の対象鋼はSiを1質量%以上含有させてオーステナイト相の強化を図ったものである。このようなオーステナイト系ステンレス鋼は強度レベルが高いため、加工時のスプリングバックが大きくなる。意匠性に優れた建材を構築するには、曲げ加工部の外側に形成される稜線部のコーナーR(曲率半径)を0.5t以下(tは板厚)にすることが可能な鋼板素材を使用したいところであるが、特許文献1の対象鋼ではスプリングバックが大きいため、曲げ加工量を大きくとる必要があり、稜線部での割れ感受性が増大する。その結果、R≦0.5tのシャープな稜線を安定して実現することは困難であることがわかった。
本発明は、曲げ加工によって意匠性に優れたシャープな稜線を形成できる溝付き鋼板素材を提供しようというものである。
発明者らは種々検討の結果、上記目的は、軟質で、大きな加工硬化が起こりにくい性質を備えたオーステナイト系ステンレス鋼素材を用い、かつ、目的とする曲げ角度や板厚に応じて適切な形状のV溝を、非除去加工により形成することによって実現できることを見出した。
すなわち本発明では、0.2%耐力が200MPa以下、加工硬化指数n値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、鋼板表面に刃を押し付けて塑性変形させる非除去加工により下記[1]および[2]を満たす形状のV溝を形成した鋼板であって、前記V溝を谷折れ線として曲げ加工するための曲げ加工用鋼板を提供する。
[1]溝深さd(mm)と板厚t(mm)が、0.4≦d/t≦0.6を満たす。
[2]V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)が、V溝を谷折れ線とする曲げ加工に供するときの曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たす。ただし、80≦X≦100である。
[1]溝深さd(mm)と板厚t(mm)が、0.4≦d/t≦0.6を満たす。
[2]V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)が、V溝を谷折れ線とする曲げ加工に供するときの曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たす。ただし、80≦X≦100である。
そのオーステナイト系ステンレス鋼としては、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.8%未満、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:0〜1%、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するものが挙げられる。特に、下記(1)式、あるいはさらに下記(2)式を満たすものが好適な対象となる。
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ……(1)
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(2)
ここで、Mo、Bの下限0%は、製鋼工程における通常の分析手段で測定限界以下となる場合である。(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量が代入される。
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ……(1)
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(2)
ここで、Mo、Bの下限0%は、製鋼工程における通常の分析手段で測定限界以下となる場合である。(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量が代入される。
本発明の曲げ加工用鋼板は、例えば板厚0.2〜3.0mmである。
本発明の鋼板を素材に用いれば、曲げ加工部の外側にシャープな稜線を有するステンレス鋼部材を安定的に、かつ低コストで製造することが可能になった。その部材は、従来実現が困難であったシャープな稜線をもち、極めて意匠性に優れる。また、稜線部分には適度な強度が付与され、耐久性にも優れる。したがって本発明は、エレベーター3方枠をはじめとする内装材などにおいて、意匠性および耐久性に優れた部材の提供に寄与するものである。
図1(a)(b)に、V溝付き鋼板を用いて、そのV溝を谷折れ線とする曲げ加工を施した部材の断面を模式的に示す。稜線部にコーナーRを有し、板厚t(mm)との関係で、R≦0.5tのシャープな稜線を有する。図中には曲げ角度Xを示してある。本発明の鋼板は曲げ角度Xが80〜100°の曲げ加工に供される。図1(a)は隙間角がゼロ(開口部なし)のもの、(b)は隙間角が生じたものを示してある。隙間角はV溝の対向する壁面に由来する部分のなす角度であり、これはV溝の形状を後述のように適正化することによって、ゼロ(開口部なし)または10°以下に抑えられる。隙間角が10°を超えると、構造物としての強度が不足する場合があり好ましくない。
図2に、本発明鋼板に形成されたV溝の断面形状を模式的に示す。V溝は、断面が略V字型の溝であるが、その先端(最深部)は必ずしも鋭くとがっている必要はなく、例えば丸み(R)を有していて構わない。溝深さd(mm)は鋼板表面から最深部までの深さである。V溝の対向する壁面AとA'のなす角度をθ(°)で表す。溝の最深部が丸みを帯びている場合などは、この断面内で、壁面AとA'を表す直線の延長が最深部より深い位置で交わる。この交点までの深さをd0(mm)とすると、d/d0は概ね0.9〜1の範囲で許容される。この値が0.9より小さくなる場合は、曲げ加工に供したときに、隙間角が測定上ゼロまたは負の値になっても開口部が存在したり、あるいは開口部が見られなくても内部に空隙が存在したりする状況が生じ、充分な強度を有する健全な曲げ加工部が構築できない恐れがある。
本発明では、軟質なオーステナイト系ステンレス鋼板(後述)を使用し、かつ、溝深さdを、板厚tとの関係において、0.4≦d/t≦0.6となるようにする。d/tが0.4より小さい(溝が浅い)場合は、曲げ加工の早い段階でV溝の壁面AおよびA'が密着することから、曲げ内側への材料の流れ込みがなくなる。したがって材料は外側へと流れることになり、結果としてコーナーRは大きくなり、所望のシャープな稜線を形成できない。d/tが大きい(溝が深い)ほど理論的にはコーナーRを小さくできるが、0.6を超えるような深いV溝を非除去加工により形成する場合、溝付け加工による加工硬化が大きくなり延性が低下するため、曲げ加工に供したときの割れ感受性が増大し好ましくない。
V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)は、目的とする曲げ加工の曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たすようにする。θがこの式を外れて大きすぎる場合、曲げ加工後の隙間角が10°を超えて大きくなり、強度不足などの不都合を生じる。逆にθが小さすぎる場合、曲げ加工の早い段階でV溝の壁面AおよびA'が密着することから、前述のように材料は外側へと流れ、シャープな稜線を形成できない。なお、θ=175−X±15の関係式は、Xが80〜100°(すなわち90°±10°)の範囲で適用できる。
溝付け加工は、プレーナーなどによる「除去加工」で行うのではなく、塑性変形を伴う「非除去加工」にて行う必要がある。除去加工の場合、コストが高いだけでなく、V溝近傍で充分な加工硬化が生じないために曲げ加工後において構造物としての強度不足を招く恐れがある。他方、塑性変形を伴う非除去加工の場合は、軟質なオーステナイト系ステンレス鋼板(後述)を使用し、かつV溝の形状を前述の範囲とするとき、溝付け加工時に適度な加工硬化が生じ、強度不足の問題は解消される。非除去加工による溝付けの方法としては、外周に刃をもつ回転ロールを通板中の鋼板表面に押し付ける方法が挙げられる。この方法は、例えば鋼帯のスリットを行うスリッターラインにて、スリット用の回転刃の代わりにV字型断面をもつ回転刃を使用し、これを適度な圧下力で鋼帯に押し当てるようにして通板することにより実施できる。
次に、溝付け加工を施すための鋼板素材について説明する。
0.2%耐力または加工硬化指数n値が高い鋼板は、スプリングバックが大きいため、塑性変形を利用した非除去加工で溝付け加工を行う際に刃を深くまで押し込む必要が生じる。その結果、V溝近傍の加工硬化が大きくなり、延性が低下する。また、曲げ加工に供する際もスプリングバックを考慮して曲げ加工量を大きくする必要があり、曲げ稜線での割れ感受性が高くなる。発明者らは種々検討の結果、0.2%耐力が200MPa以下、かつn値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板を素材に用いたとき、前述のようにシャープな稜線を安定して実現するためのV溝形状を特定することが可能になることを見出した。換言すれば、0.2%耐力が200MPaを超えるか、n値が0.50を超えるようなオーステナイト系ステンレス鋼板では、シャープな稜線を安定して実現するための解を見出すことが困難である。
0.2%耐力または加工硬化指数n値が高い鋼板は、スプリングバックが大きいため、塑性変形を利用した非除去加工で溝付け加工を行う際に刃を深くまで押し込む必要が生じる。その結果、V溝近傍の加工硬化が大きくなり、延性が低下する。また、曲げ加工に供する際もスプリングバックを考慮して曲げ加工量を大きくする必要があり、曲げ稜線での割れ感受性が高くなる。発明者らは種々検討の結果、0.2%耐力が200MPa以下、かつn値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板を素材に用いたとき、前述のようにシャープな稜線を安定して実現するためのV溝形状を特定することが可能になることを見出した。換言すれば、0.2%耐力が200MPaを超えるか、n値が0.50を超えるようなオーステナイト系ステンレス鋼板では、シャープな稜線を安定して実現するための解を見出すことが困難である。
したがって本発明では、0.2%耐力が200MPa以下、かつn値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板を対象素材として規定する。ここで、0.2%耐力およびn値は、V溝を形成する方向(すなわち曲げ軸となる方向)に平行方向に引張試験を行った値が採用される。種々の方向にV溝を形成する場合は、それぞれの方向について上記規定値を満足する必要がある。
このような軟質な特性を有するステンレス鋼板は、化学組成を以下のように調整したものにおいて実現できる。
C:0.03%以下、Si:0.8%未満、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:0〜1%、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物。
C:0.03%以下、Si:0.8%未満、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:0〜1%、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物。
CおよびNは、オーステナイト安定度を確保するために有効であるが、含有量が多くなると材料が硬質化するので、C、Nともそれぞれ0.03質量%以下とすることが望ましい。
Siは、脱酸材として有効であるが、多量の含有は固溶強化による硬質化を招くので、0.8質量%未満とする。
Mnは、オーステナイト相の安定化に寄与し、打抜き性の向上にも有効であるが、多量の含有は介在物の生成による加工性低下の弊害をもたらすので、2質量%以下とすることが望ましい。
Niは、オーステナイト相を維持するために必要な元素であり、耐孔食性、加工性改善効果もある。しかし、多量のNi添加はコスト増を招くので、本発明ではNi含有量を6〜11質量%に規定する。6〜9質量%に制限しても構わない。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保するために不可欠な元素であるが、多量に含有させると材料が硬質化する。本発明では、耐食性を考慮し、Cr含有量を15〜20質量%に規定する。
Sは、耐食性や加工性に悪影響を及ぼすのでできるだけ低減することが望ましい。本発明では概ね0.007質量%まで許容される。
Cuは、固溶させることによりオーステナイト系ステンレス鋼を軟化させる作用がある。また、積層欠陥エネルギーを高めて加工硬化を抑制する作用がある。ただし、多量のCu含有は熱間加工性の低下を招く。本発明ではCu含有量を1〜4質量%に規定する。1〜3質量%に制限することもできる。
Moは、耐食性向上に寄与するが、多量の添加は材料を硬質化させるので、Moを添加する場合は1質量%以下の範囲で行うことが望ましい。
Bは、熱間圧延時における割れ防止に有効であるが、過剰に添加すると硼化物の形成により逆に熱間加工性の低下を招く。Bを添加する場合は0.03質量%以下の範囲で行う。
各元素の含有量を以下の範囲とした上で、(1)式あるいはさらに(2)式を満たすよう組成調整されていることが好ましい。
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ……(1)
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(2)
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ……(1)
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(2)
上記(1)式のSFE値は積層欠陥エネルギーを表す指標である。SFEが大きくなるほど積層欠陥エネルギーが増大する傾向を示し、加工硬化を抑制する上で有利となる。種々検討の結果、本発明ではSFEが30以上になるように組成調整された鋼を用いることが望ましい。
上記(2)式のMd30値は加工誘起マルテンサイトの生成し易さを表す指標である。Md30が低いほど加工誘起マルテンサイトが生成しにくくなり、有利となる。発明者らの検討によれば、本発明ではMd30が−10以下に組成調製された鋼を用いることが望ましい。ただし、Md30を過度に低くしても効果が小さい上、合金元素を多量に添加する必要があることからコストアップにつながるため、Md30は−120〜−10の間に調整されたものが好ましい。
以上のようなステンレス鋼板素材は、一般的なステンレス鋼板の製造工程によって作ることができる。基本的には冷延焼鈍鋼板が望ましいが、0.2%耐力およびn値が上記の範囲を満たす限り、例えば10%以下の調質圧延を施したものも採用できる。板厚は、内装建材用途では多くの場合例えば0.2〜3.0mmの範囲が適用でき、0.2〜2.0mmの範囲が適している場合も多い。表面仕上げは、酸洗仕上げ、調質圧延仕上げ、ヘアーライン仕上げ、BA仕上げ、着色・エッチング等の化学処理仕上げなど、用途に応じて種々のものが採用できる。
表1に示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼を真空溶解炉にて溶製し、スラブを1230℃に加熱したのち抽出して板厚4mmまで熱間圧延した。その後、冷間圧延+焼鈍の工程を2回実施して板厚1mmの冷延焼鈍材を得た。最終焼鈍は1000〜1100℃×0〜2minの範囲で行った。表面仕上げは酸洗仕上げとした。
各鋼板から引張方向が圧延方向と平行になるように採取したJIS 13B号引張試験片を用いてJIS Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力およびn値を求めた。これらの結果を表1中に記載した。
各鋼板を用いて、その表面にV溝を形成した。V字型の断面を持つ回転刃を鋼板表面に押し付ける方法により、塑性変形を伴う非除去加工にて直線状のV溝を形成した。V溝の形状は3種類の回転刃を用いて図2に示したθを70°、85°、100°の3通りとし、それぞれについて押し込み深さを変えて図2の溝深さd/tが0.4、0.5、0.6の試料鋼板を作製した。その後、各試料鋼板について図1に示した曲げ角度X=90°となるように、V溝を谷折り線とする曲げ加工を施した。この場合、θ=175−90±15を満たすθの範囲は70〜100°であり、各例はいずれも本発明で規定するθを満たしている。また、d/tについても本発明規定範囲を満たしている。また、各V溝の形状は先端に小さいRを有するものであるが、図2に示したd/d0はいずれも0.9以下である。
曲げ加工後の各試料について、稜線部の割れの発生状況、および稜線部のコーナーRを調べた。割れ発生状況は試料を目視観察して評価し、コーナーRは割れの認められなかった試料についてその断面を光学顕微鏡で観察することによって調べた。R≦0.5tを満たすものはシャープな稜線を有する意匠性に優れたものである(合格)と評価される。結果を表2に示す。
稜線部の割れの発生状況、および稜線部のコーナーRの評価は、表1の発明対象鋼と比較鋼とで結果が分かれた。すなわち、発明対象鋼どうしおよび比較鋼どうしは、それぞれ同じ評価結果になったので、表2中には発明対象鋼および比較鋼の結果を一括して示した。表中に「割れ」と記載したものは稜線部に割れが認められたものである。表2からわかるように、発明対象鋼を用いた鋼板に本発明規定の溝付け加工を施した場合は、R≦0.5tのシャープな稜線が形成された。これに対し、比較鋼を用いたものは、素材鋼板の0.2%耐力が200MPaを超えるか、またはn値が0.50を超えるため、稜線に割れが生じるか、R>0.5tのコーナーRの大きい稜線となるかのいずれかであった。つまりこの場合、V溝形状にはシャープな稜線を形成するための解が見出せなかった。
次に、表1の発明対象鋼を用いて、θおよびd/tを実施例1よりも広範囲に拡げた各条件で溝付け加工を行い、実施例1と同様に曲げ角度X=90°の曲げ加工を行った。各V溝の形状は先端に小さいRを有するものであるが、図2に示したd/d0はいずれも0.9以下である。得られた試料について実施例1と同様に稜線部の割れの発生状況、および稜線部のコーナーRを調べた。また、光学顕微鏡によるコーナーRの調査と同時に、曲げ内側の谷折れ線に沿う部分に隙間が生じているかどうかを調べ、図1(b)に示した隙間角を求めた。結果を表3に示す。
この場合も、すべての発明対象鋼で同じ評価結果が得られたので、表3には結果を一括して表示してある。表3中、「隙間角10°超え」と表示したものは、隙間角が大きいことをもって構造物としての強度的要件を満たさない場合があると考えられるので、コーナーRの状況は記載を省略した。また、表3中の太枠内は、表2の記載と重複するデータ(本発明範囲のデータ)である。表3からわかるように発明対象鋼であっても、d/tが0.4〜0.6を外れる条件や、θ=175−90±15を外れる条件で溝付け加工を行うと、所望のシャープな稜線形状が実現できない。
Claims (5)
- 0.2%耐力が200MPa以下、加工硬化指数n値が0.50以下のオーステナイト系ステンレス鋼板からなり、鋼板表面に刃を押し付けて塑性変形させる非除去加工により下記[1]および[2]を満たす形状のV溝を形成した鋼板であって、前記V溝を谷折れ線として曲げ加工するための曲げ加工用鋼板。
[1]溝深さd(mm)と板厚t(mm)が、0.4≦d/t≦0.6を満たす。
[2]V溝の対向する溝壁面のなす角度θ(°)が、V溝を谷折れ線とする曲げ加工に供するときの曲げ角度X(°)に応じて、θ=175−X±15を満たす。ただし、80≦X≦100である。 - 前記オーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.8%未満、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:0〜1%、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する請求項1に記載の曲げ加工用鋼板。
- 化学組成においてさらに下記(1)式を満たす請求項2に記載の曲げ加工用鋼板。
SFE=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ……(1) - 化学組成においてさらに下記(2)式を満たす請求項2または3に記載の曲げ加工用鋼板。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(2) - 板厚が0.2〜3.0mmである請求項1〜4に記載の曲げ加工用鋼板。
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