JP2018159119A - 2相ステンレス鋼形鋼およびその製造方法 - Google Patents

2相ステンレス鋼形鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度、低コスト(Ni含有量が低い)を満足する2相ステンレス鋼形鋼およびその製造方法の提供。【解決手段】質量%で、C:0.001%以上0.060%以下、Mn:2.00%超15.00%以下、Si:0.01%以上1.50%以下、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Cr:19.0%以上23.0%以下、Ni:1.00%以上4.00%以下、N:0.050%以上0.250%以下、Al:0.003%以上0.050%以下を含有し、オーステナイト相の面積率が30%〜70%で、残部がフェライト相である金属組織を有し、2相ステンレス鋼形鋼の屈曲部または湾曲部の外側表面から深さ100μmに位置し、圧延長手方向に対して垂直な断面に位置するオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が0.40〜1.00であり、引張試験の0.2%耐力が350MPa以上であることを特徴とする2相ステンレス鋼形鋼。【選択図】なし

Description

本発明は、2相ステンレス鋼形鋼およびその製造方法に関する。形鋼とは、アングル、チャンネル、H形鋼、丸型鋼等の形状を有する鋼材を示す。一般的に、形鋼の製造においては、圧延により形鋼形状を作り込む方法と、圧延等により製造した薄板を折り曲げて形鋼形状とする方法とが挙げられるが、本願発明の対象は前者の圧延により形状を作り込む形鋼に関する。
ステンレス鋼は、耐食性に優れることから、建材、自動車、家電等多くの用途に用いられている。ステンレス鋼の中で2相ステンレス鋼は、特に高強度を有することから、建材や構造材料として使用されている。熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯の中で2相ステンレス鋼の鋼種としては、JIS G 4304に記載のSUS329J1やSUS329J4L等が挙げられる。従来の2相ステンレス鋼は、添加元素量が多く比較的高価であるため、添加元素量を抑えたリーン型の2相ステンレス鋼が開発されている。特許文献1には、Ni量が比較的少ない2相ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、Ni量が少なく、MnやN等のオーステナイト生成元素を活用した安価な2相ステンレス鋼が開示されている。
一方、建材や構造材としては、板だけでなく、形鋼の形状を有するステンレス鋼が必要とされる。熱間成形ステンレス鋼形鋼の種類は、JIS G 4317に記載されている。しかし、2相ステンレス鋼としては、前述と同じように、SUS329J1やSUS329J4L等の比較的高価なステンレス鋼のみである。最近では、Ni量の少ない2相ステンレス鋼の製造技術報告されている。非特許文献1には、EN1.4362規格の2相ステンレス鋼(代表成分:23Cr−4Ni−0.3Mo(Mn:≦2.00))形鋼を製造するために、Sを規定する技術が開示されている。2相ステンレス鋼は、一般的にオーステナイト系ステンレス鋼に比べて高強度であり、ニーズが高い。しかしながら、2相ステンレス鋼を製造する場合の大きな課題は、熱間加工性不良に起因する熱間割れとヘゲ疵の発生である。
熱間割れは、非特許文献1に記載されているように、S等の不純物元素の低減により解消される。しかし、ヘゲ疵については、完全な抑制方法が確立していないのが現状である。特に形鋼製品の場合には、鋼材と比べてヘゲ疵が発生しやすい。これは製造方法によると考えられる。
熱間加工性が劣る材料の場合には、変形時に拘束されていない面、すなわち、圧延端部に割れが生じやすい。鋼板の場合には、圧延により板厚が減少する、すなわち、上下面は圧延ロールに接しており、拘束されていない面は端部に限定される。幅を揃えるための幅圧下圧延が加わることはあるが、基本的に板厚のみ減少する。ところが、形鋼熱間圧延の場合は、圧延被圧延鋼材を、圧延方向を軸として90°回転させる工程を複数回含む圧延を前半に行い、圧延後半では全方向が拘束されたロール間を通ってアングルあるいはチャンネル等の形状に作り込まれる。したがって、圧延前半においては、板厚方向と板幅方向が圧延パス毎に変わることになる。したがって、端部で割れが生じると、それが次パスで圧延面となって延ばされるため、ヘゲ疵として残りやすいのである。中でも、Mn量が多い成分系では、ヘゲ疵の発生が顕著になるため、Mnを含有する2相ステンレス鋼の形鋼製品は存在していない。
特開昭61−56267号公報 特許第5366609号公報
愛知製鋼技報29巻(2012年)30〜34頁
近年、建材や構造材における高強度化、高耐食化の要求特性を満足し且つ合金の含有量が少ない鋼種の開発が望まれている。2相ステンレス鋼は、特性として十分であるため、合金の含有量、特にNi量を減らして製造する技術が確立できれば、現代社会への普及が期待できる。Ni含有量を減らすためには、類似の効果を持つMnを含有する2相ステンレス形鋼を製造する必要がある。ところが、形鋼製造において、Mnを含有する2相ステンレス鋼の形鋼はヘゲ疵が発生しやすいため、従来から製造されてこなかった。
本発明は、上記の事情に鑑み、高強度、低コスト(Ni含有量が低い)を満足する2相ステンレス鋼形鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、Mn含有2相ステンレス鋼の成分組成、熱間圧延前の加熱条件と熱間圧延後の表面ヘゲ疵の関係について鋭意実験と検討を重ね、本発明を完成させた。
以下に本発明で得られた知見について説明する。
(i)Mnを含有する2相ステンレス鋼ではヘゲ疵が発生しやすい傾向があるが、加熱温度と加熱時間を制御することによりヘゲ疵を抑制できる。
(ii)ヘゲ疵が発生しない適正な加熱条件は、成分の影響を受ける。Mn量だけでなく、Cr量およびSi量にも依存する。
(iii)前述のごとく形鋼熱間圧延の場合は、被圧延鋼材を、圧延方向を軸として90°回転させる工程を複数回含む圧延を前半に行うため、2相ステンレス鋼を製造した場合の金属組織は、圧延方向に対して垂直な断面をミクロ観察したときに、フェライト相とオーステナイト相の混合組織であり、ヘゲ疵が発生しない時には特徴的な金属組織(結晶粒形状)を示し、オーステナイト相のアスペクト比が大きい。
上記(ii)についての詳細な結果を以下に示す。
成分が異なる4種類の素材を用いて、加熱温度を変更して圧延後の疵を調査した。厚み120mm×幅120mmの素材を用いて、形鋼熱間圧延をシミュレートするために、厚み方向と幅方向の圧延を1パス毎に繰り返して、最終的に厚み35mm×幅35mmまで圧延した後に冷却し、表面疵の有無を調査した。表面疵は厚みと幅の4面を調査し、外観で確認できる5mm以上のヘゲ疵が存在する場合に「圧延疵あり」とした。図1に本実験において得られた結果を示す。横軸は成分(Cr、Si、Mn)を考慮した式であり、縦軸は加熱温度である。成分と加熱温度を考慮することで、圧延疵が発生しない範囲が明確となる。
また、ヘゲ疵発生部およびヘゲ疵未発生部の熱処理後の金属組織を図2に示す。金属組織は圧延方向に対して垂直な断面をミクロ観察している。組織の中で白い部分がオーステナイト相、黒みがかった部分がフェライト相を示す。(a)ヘゲ疵未発生部ではオーステナイト相の結晶粒が等軸晶に近いのに対して、(b)ヘゲ疵発生部ではオーステナイト相の結晶粒が扁平している。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を要旨とする。
(1)質量%で、C:0.001%以上0.060%以下、Mn:2.00%超15.00%以下、Si:0.01%以上1.50%以下、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Cr:19.0%以上23.0%以下、Ni:1.00%以上4.00%以下、N:0.050%以上0.250%以下、Al:0.003%以上0.050%以下を含有する2相ステンレス鋼形鋼であって、オーステナイト相の面積率が30%〜70%で、残部がフェライト相である金属組織を有し、2相ステンレス鋼形鋼の屈曲部または湾曲部の外側表面から深さ100μmに位置し、圧延長手方向に対して垂直な断面に位置するオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が0.40〜1.00であり、引張試験の0.2%耐力が350MPa以上であることを特徴とする2相ステンレス鋼形鋼である。
(2)質量%で、Ti:0.010%以上0.050%以下、Nb:0.020%以上0.150%以下、Mo:0.05%以上2.00%以下、Cu:0.05%以上3.00%以下、W:0.05%以上2.00%以下、Mg:0.0002%以上0.0050%以下、Ca:0.0002%以上0.0050%以下、REM:0.005%以上0.300%以下、B:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の2相ステンレス鋼形鋼である。
(3)鋼素材を1100℃以上かつ下記(1)式で規定されるT℃以下の温度範囲に1時間以上24時間以内の加熱をした後、圧延方向を軸として被圧延材を90°回転する工程を複数回含む熱間圧延を実施し、形鋼形状に成形することを特徴とする(1)または(2)に記載の2相ステンレス鋼形鋼の製造方法である。
T=800+18[Cr]+73[Si]−0.5[Mn]・・・(1)
ただし、[Cr]、[Si]および[Mn]は、それぞれCr、SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
本発明によれば、Mn量の高い2相ステンレス鋼形鋼を製造できる。
2相ステンレス鋼において、加熱温度と圧延後の疵の関係を示すグラフである。 2相ステンレス鋼を圧延方向に垂直に切断した任意の断面の光学顕微鏡像である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
本発明の2相ステンレス鋼形鋼は、質量%で、C:0.001%以上0.060%以下、Mn:2.00%超15.00%以下、Si:0.01%以上1.50%以下、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Cr:19.0%以上23.0%以下、Ni:1.00%以上4.00%以下、N:0.050%以上0.250%以下、Al:0.003%以上0.050%以下を含有する2相ステンレス鋼形鋼であって、オーステナイト相の面積率が30%〜70%で、残部がフェライト相である金属組織を有し、2相ステンレス鋼形鋼の屈曲部または湾曲部の外側表面から深さ100μmに位置し、圧延長手方向に対して垂直な断面に位置するオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が0.40〜1.00であり、引張試験の0.2%耐力が350MPa以上である2相ステンレス鋼形鋼である。
また、本発明の2相ステンレス鋼形鋼は、質量%で、Ti:0.010%以上0.050%以下、Nb:0.020%以上0.150%以下、Mo:0.05%以上2.00%以下、Cu:0.05%以上3.00%以下、W:0.05%以上2.00%以下、Mg:0.0002%以上0.0050%以下、Ca:0.0002%以上0.0050%以下、REM:0.005%以上0.300%以下、B:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種または2種以上を含有してもよい。
(I)各成分の限定理由を以下に説明する。
Mnは、2相ステンレス鋼を構成する重要な元素であり、Niと類似の挙動を取るためMnを添加することでNi含有量を低減できる。Mn含有量が2.00%以下では、コスト低減の効果が小さく、素材の強度が低下するため、Mn含有量を2.00%超とする。Mnは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、含有量が多いとオーステナイト相率が増加して2相組織を形成することが困難となったり、強度が低下する。そのため、Mn含有量の上限を15.00%以下とする。安定製造性およびコストを両立するためには、Mn含有量は2.50%以上9.00%以下であることが好ましい。より好ましくは、Mn含有量は3.00%以上6.50%以下である。
Cは、耐食性を劣化させるため少ないほど好ましく、C含有量の上限を0.060%以下とすることが好ましい。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、C含有量の下限を0.001%以上とすることが好ましい。製造性の点から、C含有量のより好ましい範囲は0.010%以上0.045%以下である。
Siは、耐酸化性を向上させる元素であり、本発明の2相ステンレス鋼形鋼製造時の加熱条件に影響を及ぼす。耐酸化性向上効果を得るためには、Si含有量の下限を0.01%以上とすることが好ましい。一方、過度な添加は、鋼の靭性や加工性を低下させるため、Si含有量の上限を1.50%以下とすることが好ましい。製造性の点から、Si含有量は1.00%以下であることがより好ましい。
Pは、製造性や溶接性を阻害する元素であり、その含有量は少ないほど良い。そのため、P含有量の上限を0.050%以下とすることが好ましい。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、P含有量の下限を0.003%以上とすることが好ましい。製造性と溶接性の点から、P含有量のより好ましい範囲は0.005%以上0.040%以下、さらに好ましい範囲は0.010%以上0.030%以下である。
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、熱間加工性を低下させる。したがって、S含有量は低いほど好ましく、S含有量を0.0050%以下とすることが好ましい。熱間加工性の点から、S含有量は低いほど好ましいが、過度な低減は原料や精錬コストの上昇に繋がるため、S含有量の下限を0.0001%以上とすることが好ましい。製造性の点から、S含有量のより好ましい範囲は0.0001%以上0.0020%以下、さらに好ましい範囲は0.0002%以上0.0010%以下である。
Crは、耐酸化性、耐食性を向上する元素である。2相ステンレス鋼として十分な耐食性を確保するために、Cr含有量の下限を19.0%以上とすることが好ましい。しかし、過度なCrの含有は高温雰囲気に曝された際、脆化相であるσ相の生成を助長することに加え、合金コストの上昇を招くため、Cr含有量の上限を23.0%以下とすることが好ましい。製造性の点から、Cr含有量のより好ましい範囲は19.5%以上22.0%以下である。
Niは、耐食性を向上させ、2相ステンレス鋼ではオーステナイト相を安定化させる。耐食性向上のために、Ni含有量の下限を1.00%以上とすることが好ましい。Niは合金コストが高価であるため、低い方が好ましく、Ni含有量の上限を4.00%以下とすることが好ましい。製造性の点から、Ni含有量のより好ましい範囲は1.50%以上3.00%以下である。
Nは、耐食性を向上させる元素であり、またNiと同様にオーステナイトを安定化させるため、Niの代替として用いることが出来る。N含有量が少ない場合には十分な耐食性が得られないため、N含有量の下限を0.050%以上とすることが好ましい。N含有量が多い方が耐食性には効果的であるが、溶製時に窒素ガス化して気泡を生成する場合があるため、N含有量の上限を0.250%以下とすることが好ましい。安定製造性の観点から、N含有量のより好ましい範囲は0.100%以上0.200%以下である。
Alは、脱酸元素として用いられる。脱酸元素として0.003%以上含有すれば効果があるため、これをAl含有量の下限とすることが好ましい。一方、過度の含有は硬質化を招くため、Al含有量の上限を0.050%以下とすることが好ましい。製造性の観点から、Al含有量のより好ましい範囲は0.005%以上0.030%以下である。
上記の基本組成に加えて、下記の元素の1種または2種以上を選択的に添加しても良い。
Tiは、C、Nと結合し、溶接部耐食性や高強度化に寄与する。Tiは、含有量が0.010%以上で効果が発揮されるため、これをTi含有量の下限とすることが好ましい。一方、過度の含有は耐食性の低下や合金コスト増を招くため、Ti含有量の上限を0.050%以下とすることが好ましい。
Nbは、C、Nと結合し、溶接部耐食性や高強度化に寄与する。Nbは、含有量が0.020%以上で効果が発揮されるため、これをNb含有量の下限とすることが好ましい。一方、過度の含有は耐食性の低下や合金コスト増を招くため、Nb含有量の上限を0.150%以下とすることが好ましい。
Mo、CuおよびWは、耐食性向上元素として添加しても良い。Mo、CuおよびWはそれぞれ、含有量が0.05%以上で耐食性向上効果が発揮されるため、これをMo含有量、Cu含有量およびW含有量の下限とすることが好ましい。一方、過度の含有はコスト増加ならびに熱間加工性の低下を招く。そのため、Mo含有量の上限を2.00%以下とすることが好ましく、Cu含有量の上限を3.00%以下とすることが好ましく、W含有量の上限を2.00%以下とすることが好ましい。
Mg、Ca、REMおよびBは、熱間加工性や2成形性を向上させる元素であり、必要に応じて含有する。但し、過度の含有は製造性を阻害することに繋がる。そのため、Mg含有量の上限を0.0050%以下とすることが好ましく、Ca含有量の上限を0.0050%以下とすることが好ましく、REM含有量の上限を0.300%以下とすることが好ましく、B含有量の上限を0.0040%以下とすることが好ましい。上記効果を発揮するため、Mg含有量の下限を0.0002%以上とすることが好ましく、Ca含有量の下限を0.0002%以上とすることが好ましく、REM含有量の下限を0.005%以上とすることが好ましく、B含有量の下限を0.0003%以上とすることが好ましい。
なお、REM(希土類元素)は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。これらの元素を単独で含有させても良く、混合物であっても良い。
鋼の化学成分の残部は、Feおよび不純物である。
ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
次に、金属組織について述べる。
本発明の2相ステンレス鋼形鋼の金属組織は、オーステナイト相の面積率が常温で30%〜70%で、残部が実質的にフェライト相である金属組織とする。オーステナイト相率が30%未満であると、後述する0.2%耐力が低くなる。一方、オーステナイト相率が70%超であると、成形時の割れが生じやすい。オーステナイト相の面積率は、40%〜60%であることがより好ましい。
次に、オーステナイトの相率の測定法について述べる。
オーステナイト相は、フェライト相と結晶構造が異なるため、結晶構造を判別できる解析機器、例えば、後方散乱電子回折(Electron Back Scatter Diffraction、EBSD)等で測定することが好ましい。また、フェライトスコープのように磁力からフェライト相率を測定する機器を用いても良い。
オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比は0.40〜1.00であることとする。アスペクト比が0.40未満である場合は、圧延疵が認められるためこれらを下限とした。アスペクト比の測定位置は、2相ステンレス鋼形鋼の圧延長手方向に対して垂直な断面の屈曲部(屈曲部のない形状の形鋼の場合は曲率の最も小さい湾曲部)の外側表面から深さ100μm付近の位置とする。当該断面を研磨後エッチングし、結晶粒界を出現させる。この時、着色エッチングを行うと、オーステナイト相が判別しやすい。アスペクト比は、前記位置におけるオーステナイト相の結晶粒30個を任意に選び、各結晶粒について最大長さXと、Xの測定方向に直交する方向の最大長さYを測定し、下記(2)式より算出する。
アスペクト比 = Y/X・・・(2)
結晶粒30個に対し(2)式で算出したアスペクト比の算術平均値をもって平均アスペクト比とする。
ヘゲ疵の発生状況と平均アスペクト比が相関する理由は明らかではないが、圧延前加熱時に生成する表層スケールと圧延中の再結晶挙動が相関しているものと推察される。ヘゲ疵部に巻き込まれている酸化スケールは圧延前加熱で生成したものであり、その形態は加熱温度及び成分に依存する。一方、変形時にヘゲ疵として残存するか否かは圧延変形時のひずみの入り方およびパス間再結晶挙動によると考えられる。
引張試験の0.2%耐力は350MPa以上とする。2相ステンレス鋼形鋼を構造材として用いる場合、0.2%耐力を用いて設計を行う場合が多い。これが高いほど、構造材強度の確保もしくは鋼材の薄手化が可能となるため、350MPaを下限とした。0.2%高いほど設計に有利であるため、好ましくは400MPa以上である。一方、耐力が高すぎる場合、変形能が低下して衝撃特性が劣化するため、耐力の上限を800MPa以下とする。
次に、製造方法について述べる。
上記化学成分を有する形鋼を製造するに際し、熱間圧延前の加熱温度を1100℃以上とする。1100℃未満の場合、圧延中の温度低下によって材料が硬質化してロールに噛み込まなくなる場合がある。また、変形抵抗の増大によりヘゲ疵が生じる。
加熱温度の上限は、下記(1)式で決められた温度とする。
T=800+18[Cr]+73[Si]−0.5[Mn]・・・(1)
ただし、[Cr]、[Si]および[Mn]は、それぞれCr、SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
本条件は、本発明者らの検討によって明らかにした条件であり、Mnが2%以上含まれる2相ステンレス鋼において適用可能な条件である。(1)式の加熱温度Tを超えて加熱すると、圧延時にヘゲ疵が発生するためこれを上限とする。(1)式により加熱温度Tの上限が決められる理由については検討中であるが、現在のところは次のように考えられる。形鋼圧延におけるヘゲ疵は、圧延前の加熱時に形成された表層スケールが圧延時に巻き込まれたものと考えられる。CrおよびSiはスケールを安定化し、スケール成長を抑制するため、これら元素の係数がプラスであり、含有量が多いほど高温の加熱が可能となる。一方、Mnは一般的には耐酸化性を向上させる元素であるが、本発明においてはMn含有量が少ない方が高温での加熱が可能、すなわち(1)式の係数がマイナスである。これまでにMn含有量が多い2相ステンレス鋼の形鋼が製造されていない理由としては、ヘゲ疵に及ぼすMn含有量の影響が明らかにされておらず、加熱条件が適正でなかったためと推察される。
また、加熱時間が短すぎると素材の温度が均一にならないため、1時間以上の保持を必要とする。一方、加熱時間が長すぎるとスケール厚みが増し、圧延時にスケールが残存しやすくなるため、加熱時間の上限を24時間とする。製造性およびスケール均質化の観点から、加熱時間は3時間〜8時間であることが好ましい。
形鋼の製造は、圧延方向を軸として被圧延材を90°回転する工程を複数回含む圧延を、上記の加熱後に複数回の熱間圧延を実施する。圧延ロールの形状は特に規定するものではなく、所望の形状を得るために適したもので良い。本発明では、圧延方向を軸として被圧延材を90°回転する工程を含む形鋼圧延により鋼を所定の形状とする。これは板圧延のように素材を、圧延方向を軸に回転することなく、圧延加工する工程では見られない疵を対象としているからである。圧延された材料は、軟質化等を目的として熱処理、さらには酸洗処理を施しても良い。熱処理をする場合には、熱処理温度によってγ相率が変化するため、到達温度920℃〜1080℃の範囲で熱処理をする。また、形状矯正や目的の表面性状を得るための表面の処理(研磨等)を行っても良い。
形鋼圧延の供する素材の形状は、特に規定しない。ビレット、ブルーム、スラブ等いずれの形状でも本発明の効果を変えるものでは無い。
また、本発明の2相ステンレス鋼形鋼は、H形鋼、I形鋼、山形鋼(アングル材)、平鋼、溝形鋼(チャンネル材)、Z形鋼、丸型鋼等、圧延によって形状を造り込む形鋼に適用できる。
以下に、本発明の実施例について述べる。
表1に示す成分を有する2相ステンレス鋼を溶製し、種々の条件で加熱した後、熱間圧延を実施した。この際、形鋼における圧延を模擬するために初期の断面サイズ100mm×100mmの鋼材を、圧延2パス毎に90°回転して板厚方向と板厚方向を入れ替えて20mm×20mmまで圧延した(減面率96%)。一部については、焼鈍および酸洗処理を行った。
その後、フェライトスコープを用いてフェライト相率F(%)を測定し、オーステナイト相率を100−F(%)として算出した。
得られた鋼の圧延方向と平行に引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠した方法で引張試験に供し、0.2%耐力を測定した。0.2%耐力が350MPa以上である製品に対して製品の表面にヘゲ疵が形成されているか否かを調査した。ヘゲ疵は、表面観察より被さり状の疵が認められるか否かの外観評価と、圧延方向に垂直に切断した任意の断面の光学顕微鏡観察とを、総表面長さが200mmになるように実施した。図2に示すような被さったヘゲ疵が観察される箇所の数を数えた。
なお、本材料を用いて、板厚方向のみ減少させる圧延により100mm厚から4.0mm厚まで圧延した(減面率96%)が、いずれも表面疵は認められなかった。このことからも板圧延では発生せず、形鋼圧延において発生する疵を対象としていることが分かる。
本発明例では、いずれもヘゲ疵が全く認められないのに対し、比較例では、ヘゲ疵が発生もしくは0.2%耐力が低く、基準に未達であった。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.001%以上0.060%以下、Mn:2.00%超15.00%以下、Si:0.01%以上1.50%以下、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Cr:19.0%以上23.0%以下、Ni:1.00%以上4.00%以下、N:0.050%以上0.250%以下、Al:0.003%以上0.050%以下を含有する2相ステンレス鋼形鋼であって、
    オーステナイト相の面積率が30%〜70%で、残部がフェライト相である金属組織を有し、2相ステンレス鋼形鋼の屈曲部または湾曲部の外側表面から深さ100μmに位置し、圧延長手方向に対して垂直な断面に位置するオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が0.40〜1.00であり、引張試験の0.2%耐力が350MPa以上であることを特徴とする2相ステンレス鋼形鋼。
  2. 質量%で、Ti:0.010%以上0.050%以下、Nb:0.020%以上0.150%以下、Mo:0.05%以上2.00%以下、Cu:0.05%以上3.00%以下、W:0.05%以上2.00%以下、Mg:0.0002%以上0.0050%以下、Ca:0.0002%以上0.0050%以下、REM:0.005%以上0.300%以下、B:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の2相ステンレス鋼形鋼。
  3. 鋼素材を1100℃以上かつ下記(1)式で規定されるT℃以下の温度範囲に1時間以上24時間以内の加熱をした後、圧延方向を軸として被圧延材を90°回転する工程を複数回含む熱間圧延を実施し、形鋼形状に成形することを特徴とする請求項1または2に記載の2相ステンレス鋼形鋼の製造方法。
    T=800+18[Cr]+73[Si]−0.5[Mn]・・・(1)
    ただし、[Cr]、[Si]および[Mn]は、それぞれCr、SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
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