車両の旋回時に於けるショックアブソーバの減衰力の制御及びアンチロールモーメント発生手段により発生されるアンチロールモーメントの制御は何れも車体のロールを抑制する制御であるので、ショックアブソーバ及びアンチロールモーメント発生手段の両者を備えた車輌の場合には、ショックアブソーバの減衰力及びアンチロールモーメント発生手段により発生されるアンチロールモーメントが互いに他に対する関係にて適切に制御されなければならない。
またショックアブソーバが発生し得る減衰力及びアンチロールモーメント発生手段が発生し得るアンチロールモーメントの何れも有限であるため、車両に作用するロールモーメントが大きい状況に於いては、アンチロールモーメント発生手段が対処できない超過のロールモーメントに対抗するアンチロールモーメントをショックアブソーバの縮み側及び伸び側の互いに逆方向に作用する減衰力によって発生させることが考えられる。
しかし一般に、ショックアブソーバの縮み側の最大減衰力は伸び側の最大減衰力よりも小さいため、ショックアブソーバの減衰力により発生すべきアンチロールモーメントの大きさが大きいときには、縮み側に要求される減衰力がその最大減衰力を越えてしまい、ショックアブソーバに要求されるアンチロールモーメントを発生することができないだけでなく、ショックアブソーバの本来の減衰力制御が阻害されるという制御干渉の問題が発生する。
例えば車両のトレッドをTとし、ショックアブソーバの本来の減衰力制御による旋回外輪及び旋回内輪のショックアブソーバの減衰力をそれぞれFsout及びFsinとし、上方向を減衰力の正の方向とすると、旋回外輪側(縮み側)の減衰力Fsoutは上向きに作用し正の値であるのに対し、旋回内輪側(伸び側)の減衰力は下向きに作用し負の値であるので、ショックアブソーバの本来の減衰力制御によるアンチロールモーメントMaraは下記の式Aにより表される。
Mara=Fsout・T/2−Fsin・T/2 ……(A)
また超過のロールモーメントに対抗するアンチロールモーメントを発生するようショックアブソーバに要求される旋回外輪及び旋回内輪の付加減衰力をΔFsout及びΔFsin(何れも正の値)とすると、ショックアブソーバの付加減衰力(減衰力の修正量)によるアンチロールモーメントMarbは下記の式Bにより表される。
Marb=ΔFsout・T/2+ΔFsin・T/2 ……(B)
旋回外輪の本来の減衰力制御の減衰力Fsoutと付加減衰力ΔFsoutとの和Fsout+ΔFsoutがショックアブソーバの縮み側の最大減衰力Fscmax以下であるときには、ショックアブソーバは縮み側の減衰力として和Fsout+ΔFsoutの減衰力を発生することができるので、本来の減衰力制御の減衰力及び付加減衰力によるアンチロールモーメントMarabは下記の式Cにより表される。
Marab=(Fsout+ΔFsout−Fsin+ΔFsin)・T/2 ……(C)
しかし旋回外輪の本来の減衰力制御の減衰力Fsoutと付加減衰力ΔFsoutとの和Fsout+ΔFsoutがショックアブソーバの縮み側の最大減衰力Fscmaxを越えるときには、ショックアブソーバは縮み側の減衰力として最大減衰力Fscmaxしか発生することができず、和Fsout+ΔFsoutの減衰力を発生することができないので、その場合のアンチロールモーメントMarab′は下記の式Dにより表される。
Marab′=(Fscmax−Fsin+ΔFsin)・T/2 ……(D)
最大減衰力Fscmaxは和Fsout+ΔFsoutよりも小さいので、アンチロールモーメントMarab′は必要なアンチロールモーメントMarabよりも小さくなり、車体のロールを確実に抑制することができない。
またショックアブソーバの本来の減衰力制御が実行される際の左右輪の減衰力の和Fstotalは下記の式Eにより表される。
Fstotal=Fsout+Fsin ……(E)
旋回外輪及び旋回内輪のショックアブソーバが本来の減衰力制御の減衰力Fsout及びFsinに加えて、超過のロールモーメントに対抗するアンチロールモーメントを発生するようそれぞれ付加減衰力ΔFsout及びΔFsinを発生しているときには、旋回外輪及び旋回内輪の減衰力はそれぞれFsout+ΔFsout、Fsin−ΔFsinであるので、左右輪の減衰力の和Fstotalは下記の式Fにより表される。
Fstotal=Fsout+ΔFsout+Fsin−ΔFsin ……(F)
従って付加減衰力ΔFsout及びΔFsinの大きさが同一であれば、上記式Eの値は上記式Eの値と同一になり、従ってショックアブソーバの本来の減衰力制御が超過のロールモーメントを発生するための付加減衰力ΔFsout及びΔFsinによって阻害されることはない。
しかし旋回外輪の本来のロール抑制制御の減衰力Fsoutと付加減衰力ΔFsoutとの和Fsout+ΔFsoutがショックアブソーバの縮み側の最大減衰力Fscmaxを越えるときに於ける左右輪の減衰力の和Fstotalは下記の式Gにより表される値になり、上記式Eの値と同一にはならないため、ショックアブソーバの本来の減衰力制御が超過のロールモーメントを発生するための付加減衰力ΔFsout及びΔFsinによって阻害されてしまう。
Fstotal=Fscmax+Fsin−ΔFsin ……(G)
本発明は、減衰力可変式の減衰力発生手段による減衰力及びアンチロールモーメント発生手段によるアンチロールモーメントの両者を制御することにより車体のロールを抑制すると共に、必要なアンチロールモーメントがアンチロールモーメント発生手段により発生可能なアンチロールモーメントを越えるときには、不足するアンチロールモーメントが減衰力発生手段の減衰力により発生される場合に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、左右の減衰力発生手段の少なくとも一方に必要とされる減衰力が当該減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、左右反対側の減衰力発生手段の減衰力についても補正することにより、減衰力発生手段の本来の減衰力制御を阻害することなくできるだけ必要なアンチロールモーメントが発生するよう減衰力発生手段の減衰力を制御することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち各車輪に対応してばね上とばね下との間に配設された減衰力可変式の減衰力発生手段を含み、車両の旋回時に減衰力が車両の姿勢を目標姿勢にするための目標減衰力になるよう前記減衰力発生手段を制御する減衰力制御手段と、前記ばね上と前記ばね下との間に作用する力を増減することによりアンチロールモーメントを増減させるアンチロールモーメント発生手段を含み、車両の旋回時にアンチロールモーメントが車両のロールを低減するための目標アンチロールモーメントになるよう前記アンチロールモーメント発生手段を制御するアンチロールモーメント制御手段とを有する車両のロール制御装置にして、前記目標アンチロールモーメントが前記アンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、車両のロールを低減するよう左右の車輪の前記目標減衰力を修正し、前記左右の車輪の少なくとも一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の前記減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の車輪については当該車輪の目標減衰力を前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力の大きさを前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正することを特徴とする車両のロール制御装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、目標アンチロールモーメントがアンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、車両のロールを低減するよう左右の車輪の目標減衰力が修正されるので、不足するアンチロールモーメントの少なくとも一部を減衰力によって発生させることができ、これにより車両のロールを低減するよう目標減衰力が修正されない場合に比して、過渡旋回時の車体のロールを確実に抑制することができる。
また上記請求項1の構成によれば、左右の車輪の少なくとも一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の車輪については当該車輪の目標減衰力が大きい方の超過分の減衰力にて低減補正され、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力の大きさが前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正されるので、後に詳細に説明する如く不足するアンチロールモーメントを減衰力によりできるだけ大きい値にて発生させることができると共に、本来の減衰力の制御に与えられる悪影響をできるだけ低減することができ、これにより車体のロールを効果的に且つ適正に抑制することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記ロール制御装置は前記目標アンチロールモーメントが前記アンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、超過分のアンチロールモーメントが減衰力の増大によって発生されるよう前記目標減衰力を修正するよう構成される(請求項2の構成)。
上記請求項2の構成によれば、目標アンチロールモーメントがアンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、超過分のアンチロールモーメントが減衰力の増大によって発生されるよう目標減衰力が修正されるので、アンチロールモーメント発生手段が発生することができないことに起因して不足するアンチロールモーメントを減衰力により過不足なく確実に発生させることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記ロール制御装置は上方向を減衰力の正の方向として、大きさが同一の修正量にて旋回外輪の前記目標減衰力を増大修正すると共に旋回内輪の前記目標減衰力を低減修正するよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項3の構成によれば、大きさが同一の修正量にて旋回外輪の目標減衰力が増大修正されると共に旋回内輪の目標減衰力が低減修正されるので、後に詳細に説明する如く、目標減衰力の修正が本来の減衰力の制御に悪影響を与えることを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記減衰力発生手段は減衰係数を増減可能なショックアブソーバであり、前記減衰力制御手段は減衰係数が前記目標減衰力に対応する目標減衰係数になるよう前記ショックアブソーバの減衰係数を制御し、前記ロール制御装置は前記修正後の目標減衰力に対応する目標減衰係数と前記ばね上及び前記ばね下の相対上下速度とに基づいて前記修正後の目標減衰力を推定し、減衰係数の最大値と前記ばね上及び前記ばね下の相対上下速度とに基づいて前記減衰力発生手段の最大減衰力を推定するよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、減衰係数が目標減衰力に対応する目標減衰係数になるようショックアブソーバの減衰係数が制御され、修正後の目標減衰力に対応する目標減衰係数とばね上及びばね下の相対上下速度とに基づいて修正後の目標減衰力が推定されるので、ショックアブソーバの減衰力を確実に目標減衰力に制御することができると共に、修正後の目標減衰力を正確に推定することができ、また減衰係数の最大値とばね上及びばね下の相対上下速度とに基づいて減衰力発生手段の最大減衰力が推定されるので、減衰力発生手段の最大減衰力を正確に推定することができる。
また本発明によれば、上記請求項1乃至4の何れかの構成に於いて、前記アンチロールモーメント発生手段はスタビライザ力を増減可能なアクティブスタビライザ装置であるよう構成される(請求項5の構成)。
上記請求項5の構成によれば、アンチロールモーメント発生手段はスタビライザ力を増減可能なアクティブスタビライザ装置であるので、アクティブスタビライザ装置の作動状況によって超過分のアンチロールモーメントを確実に推定することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記ロール制御装置は前記超過分のアンチロールモーメントに基づいて前記目標減衰力の修正量を演算するよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、超過分のアンチロールモーメントに基づいて目標減衰力の修正量が演算されるので、アンチロールモーメント発生手段が発生することができないことに起因して不足するアンチロールモーメントを発生するに必要な目標減衰力の修正量を正確に演算することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、左右の車輪の一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えており、左右反対側の車輪の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力以下であるときには、一方の車輪については当該車輪の目標減衰力を超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力の大きさを超過分の減衰力にて低減補正するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5又は上記好ましい態様1の何れかの構成に於いて、左右の車輪の両方の修正後の目標減衰力がそれぞれ当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の車輪については当該車輪の目標減衰力を前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力の大きさを前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5又は上記好ましい態様1又は2の何れかの構成に於いて、アンチロールモーメント発生手段は前輪側のアンチロールモーメント発生手段と後輪側のアンチロールモーメント発生手段とよりなるよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、ロール制御装置は車両のロールを低減するための車両全体の目標アンチロールモーメントを演算し、車両全体の目標アンチロールモーメント及びロール剛性の前後輪配分比に基づいて前輪側及び後輪側の目標アンチロールモーメントを演算し、前輪側の目標アンチロールモーメントが前輪側のアンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、車両のロールを低減するよう左右前輪の目標減衰力を修正し、左右前輪の少なくとも一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の前輪については当該前輪の目標減衰力を前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の前輪については当該前輪の目標減衰力の大きさを前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、後輪側の目標アンチロールモーメントが後輪側のアンチロールモーメント発生手段の最大アンチロールモーメントを越えるときには、車両のロールを低減するよう左右後輪の目標減衰力を修正し、左右後輪の少なくとも一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の後輪については当該後輪の目標減衰力を前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の後輪については当該後輪の目標減衰力の大きさを前記大きい方の超過分の減衰力にて低減補正するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、左右前輪の一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えており、左右反対側の前輪の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力以下であるときには、一方の前輪については当該車輪の目標減衰力を超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の前輪については当該車輪の目標減衰力の大きさを超過分の減衰力にて低減補正するよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4又は5の構成に於いて、左右後輪の一方の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力を越えており、左右反対側の後輪の修正後の目標減衰力が当該車輪の減衰力発生手段の最大減衰力以下であるときには、一方の後輪については当該車輪の目標減衰力を超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の後輪については当該車輪の目標減衰力の大きさを超過分の減衰力にて低減補正するよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2乃至5又は上記好ましい態様1乃至6の何れかの構成に於いて、旋回外輪の目標減衰力の修正量によるアンチロールモーメントと旋回内輪の目標減衰力の修正量によるアンチロールモーメントとの和が超過分のアンチロールモーメントになるよう、左右の車輪の目標減衰力を修正するよう構成される(好ましい態様7)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1は前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置を有する車両に適用された本発明による車両のロール制御装置の第一の実施例を示す概略構成図である。
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車両12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車両12の左右の後輪を示している。左右の前輪10FL及び10FRの間にはアクティブスタビライザ装置16が設けられ、左右の後輪10RL及び10RRの間にはアクティブスタビライザ装置18が設けられている。アクティブスタビライザ装置16及び18は車両の旋回時に車両(車体)にアンチロールモーメントを付与することにより車体のロールを抑制する。
アクティブスタビライザ装置16は車両の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分16TL及び16TRと、それぞれトーションバー部分16TL及び16TRの外端に一体に接続された一対のアーム部16AL及び16ARとを有している。トーションバー部分16TL及び16TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の周りに回転可能に支持されている。アーム部16AL及び16ARはそれぞれトーションバー部分16TL及び16TRに対し交差するよう車両前後方向に延在し、アーム部16AL及び16ARの外端はそれぞれ左右前輪10FL及び10FRのサスペンションアームの如きサスペンション部材14FL及び14FRに連結されている。
アクティブスタビライザ装置16はトーションバー部分16TL及び16TRの間にアクチュエータ20Fを有している。アクチュエータ20Fは電動機を内蔵し、必要に応じて一対のトーションバー部分16TL及び16TRを相対的に回転駆動することにより、左右の前輪10FL及び10FRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化させ、これにより左右前輪の位置に於いて車両に付与されるアンチロールモーメントを増減し、前輪側の車体のロールを抑制する。
同様に、アクティブスタビライザ装置18は車両の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分18TL及び18TRと、それぞれトーションバー部分18TL及び18TRの外端に一体に接続された一対のアーム部18AL及び18ARとを有している。トーションバー部分18TL及び18TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の周りに回転可能に支持されている。アーム部18AL及び18ARはそれぞれトーションバー部分18TL及び18TRに対し交差するよう車両前後方向に延在し、アーム部18AL及び18ARの外端はそれぞれ左右後輪10RL及び10RRのサスペンションアームの如きサスペンション部材14RL及び14RRに連結されている。
アクティブスタビライザ装置18はトーションバー部分18TL及び18TRの間にアクチュエータ20Rを有している。アクチュエータ20Rは電動機を内蔵し、必要に応じて一対のトーションバー部分18TL及び18TRを相対的に回転駆動することにより、左右の後輪10RL及び10RRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化させ、これにより左右後輪の位置に於いて車両に付与されるアンチロールモーメントを増減し、後輪側の車体のロールを抑制する。
尚アクティブスタビライザ装置16及び18の構造自体は本発明の要旨をなすものではないので、アンチロールモーメント発生手段として機能することにより前輪側及び後輪側の車体のロールを抑制し得るものである限り当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
アクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rは電子制御装置22によって電動機に対する制御電流が制御されることにより制御される。尚図1には詳細に示されていないが、電子制御装置22はCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。
図2は右前輪のサスペンションを全体的に示しており、車輪10FRは車輪支持部材26により回転軸線28の周りに回転可能に支持されている。車輪支持部材26の上端及び下端にはそれぞれボールジョイント30及び32によりアッパアーム34及びロアアーム36の外端が枢着されている。アッパアーム34及びロアアーム36の内端はそれぞれゴムブッシュ装置38及び40により車体42に枢着されている。
図1及び2に示されている如く、各車輪には減衰力発生手段としての減衰力可変式のショックアブソーバ44FL〜44RRが設けられている。ショックアブソーバ44FL〜44RRはシリンダ46と、シリンダ46に往復動可能に嵌合するピストン48とを有し、ピストン48の上端にてアッパサポート50により車体42に連結され、シリンダ46にてボールジョイント54によりロアアーム36に連結されている。
各ショックアブソーバ44FL〜44RRは図2には示されていないがピストン48に設けられた伸び側及び縮み側の減衰力発生弁48A及び48Bの開度(絞り度合)が対応するアクチュエータ48Cによって複数の制御段に亘り多段階に増減されることにより減衰係数を変化する。そして各ショックアブソーバ44FL〜44RRは車輪10FL〜10RRのバウンド、リバウンドに伴うシリンダ46に対するピストン48の相対速度及び減衰係数に応じた減衰力を発生し、これにより車体の振動を減衰させると共に、車輌の加減速時や旋回時に於ける車体の姿勢変化を抑制する。
尚、制御段が高いほど減衰力発生弁48A及び48Bの開度が小さくなって減衰係数が高くなる。またピストン48の大きさが同一の相対速度について見て、伸び側の減衰力は縮み側の減衰力よりも大きい。更にショックアブソーバは減衰力発生弁の開度が連続的に増減されることにより減衰係数を連続的に変化するものであってもよい。
また図2に於いて、50は各車輪に於いてショックアブソーバ44FL〜44RRと並列に配設されたサスペンションスプリングを示しており、サスペンションスプリング50は車体52に取り付けられたアッパサポート56に固定されたアッパシート58とロアアーム36に取り付けられたロアサポート58に固定されたロアシート60との間に圧縮された状態にて弾装されている。
かくして車体42はショックアブソーバ44FL〜44RR及びサスペンションスプリング50に対するばね上であり、車輪支持部材26、アッパアーム34、ロアアーム36は互いに共働してサスペンション部材14FL〜14RRを構成し、ショックアブソーバ44FL〜44RR及びサスペンションスプリング50に対するばね下である。また図1及び図2には示されていないが、アクティブスタビライザ装置16及び18のアーム部16AL、16AR、18AL、18ARの外端は接続リンクを介してアッパアーム34又はロアアーム36に連結されている。
尚図2に示されたサスペンションはダブルウイッシュボーン式のサスペンションであるが、本発明のロール制御装置が適用される車両のサスペンションは、ダブルウイッシュボーン式のサスペンションに限定されるものではなく、マクファーソンストラット式のサスペンションやトレーリングアーム式のサスペンションの如く当技術分野に於いて公知の任意の型式のサスペンションであってよい。
各ショックアブソーバ24FL〜24RRの制御段、従って減衰力発生弁の開度は電子制御装置62によって対応するアクチュエータ48Cに対する制御電流が制御されることにより制御される。尚図1には詳細に示されていないが、電子制御装置62もCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。また電子制御装置22及び62は相互に通信し必要な信号の授受を行う。
図1に示されている如く、電子制御装置22には横加速度センサ64により検出された車両の横加速度Gyを示す信号、車速センサ66により検出された車速Vを示す信号、回転角度センサ68F、68Rにより検出されたアクチュエータ20F及び20Rの実際の回転角度φF、φRを示す信号が入力される。
他方電子制御装置62には前後加速度センサ70により検出された車両の前後加速度Gxを示す信号、操舵角センサ72により検出された操舵角θを示す信号、ストロークセンサ74iにより検出された各車輪のストロークXi(i=fl,fr,rl,rr)を示す信号、上下加速度センサ76iにより検出された各車輪に対応する位置の車体の上下加速度Gzi(i=fl,fr,rl,rr)を示す信号が入力される。
尚、横加速度センサ40及び操舵角センサ46はそれぞれ車両の右旋回時に生じる値を正として横加速度Gy、操舵角θを検出し、前後加速度センサ70は車両の加速方向を正として前後加速度Gxを検出する。回転角度センサ68F、68Rは車両の左旋回時の車体のロールを低減する方向の値を正として回転角度φF、φRを検出し、ストロークセンサ74iは車輪のバウンド方向のストロークを正とし、車輪のリバウンド方向のストロークを負として車輪のストロークXiを検出する。上下加速度センサ76iは上向きの加速度を正とし、下向きの加速度を負として車体の上下加速度Gziを検出する。
電子制御装置22は、図2に示されたフローチャートに従って、車両の横加速度Gyに基づき車両に作用するロールモーメントを打ち消す方向のアンチロールモーメントが増大するよう車両の目標アンチロールモーメントMatを演算すると共に、車速Vに基づき前輪の目標ロール剛性配分比Rmfを演算する。そして電子制御装置22は、目標アンチロールモーメントMat及び前輪の目標ロール剛性配分比Rmfに基づき前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartを演算する。尚アンチロールモーメントについては、車両の左旋回時に発生すべきアンチロールモーメントの方向を正とする。
また電子制御装置22は、目標アンチロールモーメントMaft及びMartの大きさがそれぞれアクティブスタビライザ装置16及び18の最大アンチロールモーメントMafmax及びMarmax(それぞれアクチュエータ20F及び20Rが最大限回転されたときのアンチロールモーメント)を越えているときには、目標アンチロールモーメントMaft及びMartの大きさをそれぞれMafmax及びMarmaxに補正すると共に、補正前の目標アンチロールモーメントMaft及びMartと最大アンチロールモーメントMafmax及びMarmaxとの偏差として超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを演算する。
更に電子制御装置22は、それぞれ目標アンチロールモーメントMaft及びMartに基づきアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φFt、φRtを演算し、アクチュエータ20F及び20Rの回転角度φF、φRがそれぞれ対応する目標回転角度φFt、φRtになるよう制御し、これにより旋回時等に於ける車両のロールを好ましい前後配分比のロール剛性にて低減する。また電子制御装置22は、超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを示す信号を電子制御装置62へ出力する。
一方電子制御装置62は、図4乃至図7に示されたフローチャートに従って車両の前後加速度Gxに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて各ショックアブソーバ44FL〜44RRの基本目標減衰力Fsbi(i=fl,fr,rl,rr)を演算し、超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarに基づき電子制御装置22により要求される減衰力の増減量として左右前輪のショックアブソーバ44FL及び44FRに対する要求増減減衰力Fsdf及び左右後輪のショックアブソーバ44RL及び44RRに対する要求増減減衰力Fsdrを演算する。尚減衰力については、上方向を正とする。
そして電子制御装置62は、基本的には基本目標減衰力Fsbiを要求減衰力Fsdiにて修正した値を各ショックアブソーバ44FL〜44RRの目標減衰力Fsti(i=fl,fr,rl,rr)として演算し、目標減衰力Fstiの少なくとも何れかがそれぞれショックアブソーバ44FL〜44RRの発生可能な最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の車輪については当該車輪の目標減衰力Fstiを大きい方の超過分の減衰力にて低減補正し、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力Fstiを大きい方の超過分の減衰力にて増大補正する。
更に電子制御装置62は、ストロークセンサ74iにより検出されたストロークXiの微分値Xdi(i=fl,fr,rl,rr)を各車輪のストローク速度として演算し、目標減衰力Fsti及びストローク速度Xdiに基づきショックアブソーバ44FL〜44RRの目標制御段Sti(i=fl,fr,rl,rr)を演算し、各ショックアブソーバ44FL〜44RRの制御段Siがそれぞれ対応する目標制御段Stiになるよう制御する。
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の第一の実施例に於けるアクティブスタビライザ装置の制御について説明する。尚図2に示されたフローチャート制御は電子制御装置22により実行され、図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
ますステップ10に於いては、車両の横加速度Gyを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては車両の横加速度Gyの大きさが大きいほど目標アンチロールモーメントMatが大きくなるよう、車両の横加速度Gyに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより目標アンチロールモーメントMatが演算され、ステップ30に於いては車速Vが高いほど高くなるよう前輪の目標ロール剛性配分比Rmfが0よりも大きく1よりも小さい値として演算される。尚、前輪の目標ロール剛性配分比Rmfは定数であってもよい。
ステップ40に於いては目標アンチロールモーメントMat及び前輪の目標ロール剛性配分比Rmfに基づき、それぞれ下記の式1及び2に従って前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartが演算される。
Maft=Rmf・Mat ……(1)
Mart=(1−Rmf)Mat ……(2)
ステップ50に於いては前輪の目標アンチロールモーメントMaftが前輪側のアクティブスタビライザ装置16により発生可能な最大アンチロールモーメントMafmax(正の定数)を越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ70へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ60に於いて前輪の目標アンチロールモーメントMaftが最大アンチロールモーメントMafmaxに設定されると共に、超過アンチロールモーメントΔMafが目標アンチロールモーメントMaftと最大アンチロールモーメントMafmaxとの偏差として演算され、しかる後ステップ90へ進む。
ステップ90に於いては後輪の目標アンチロールモーメントMaftが後輪側のアクティブスタビライザ装置16により発生可能な最大アンチロールモーメントMafmaxの符号反転値−Mafmaxよりも小さいか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ90へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ80に於いて後輪の目標アンチロールモーメントMaftが−Mafmaxに設定されると共に、超過アンチロールモーメントΔMafが目標アンチロールモーメントMaftと最大アンチロールモーメントMafmaxの符号反転値−Mafmaxとの偏差、従って目標アンチロールモーメントMaftと最大アンチロールモーメントMafmaxとの和として演算され、しかる後ステップ90へ進む。
ステップ90に於いては後輪の目標アンチロールモーメントMartが後輪側のアクティブスタビライザ装置18により発生可能な最大アンチロールモーメントMarmax(正の定数)を越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ110へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ100に於いて後輪の目標アンチロールモーメントMartが最大アンチロールモーメントMarmaxに設定されると共に、超過アンチロールモーメントΔMarが目標アンチロールモーメントMartと最大アンチロールモーメントMarmaxとの偏差として演算され、しかる後ステップ130へ進む。
ステップ110に於いては後輪の目標アンチロールモーメントMartが後輪側のアクティブスタビライザ装置18により発生可能な最大アンチロールモーメントMarmaxの符号反転値−Marmaxよりも小さいか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ130へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ120に於いて後輪の目標アンチロールモーメントMartが−Marmaxに設定されると共に、超過アンチロールモーメントΔMarが目標アンチロールモーメントMartと最大アンチロールモーメントMarmaxの符号反転値−Marmaxとの偏差、従って目標アンチロールモーメントMartと最大アンチロールモーメントMarmaxとの和として演算され、しかる後ステップ130へ進む。
ステップ130に於いてはそれぞれ前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartに基づきアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角φft及びφrtが演算され、ステップ140に於いてはそれぞれアクチュエータ20F及び20Rの回転角φf及びφrがそれぞれ目標回転角φft及びφrtになるよう制御される。
次に図4及び図5に示されたフローチャートを参照して図示の第一の実施例に於けるショックアブソーバの減衰力制御について説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は実行され、図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図5は図4に示されたフローチャートのステップ240のサブルーチンを示している。
ますステップ210に於いては、車両の横加速度Gyを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ220に於いては図6及び図7に示されたフローチャートに従って車両の旋回時に於ける各ショックアブソーバ44FL〜44RRの本来の減衰力制御の目標値として基本目標減衰力Fsbi(i=fl,fr,rl,rr)が演算される。ステップ230に於いては減衰力によって超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを達成することが電子制御装置22により要求される値として前輪の要求増減減衰力Fsdf及び後輪の要求増減減衰力Fsdrがそれぞれ超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarに基づいて下記の式3及び4に従って演算される。尚下記の式3〜6に於けるTf及びTrはそれぞれ前輪及び後輪のトレッドである。
Fsdf=|ΔMaf|/Tf ……(3)
Fsdr=|ΔMar|/Tr ……(4)
ステップ240に於いては図5に示されたフローチャートに従って、本来の減衰力制御に悪影響を及ぼすことなく電子制御装置62よりの要求を満たすための減衰力の補正量として右前輪及び左前輪の減衰力の補正量ΔFsfr及びΔFsfl(何れも0以上の値)が後述の如く演算される。
ステップ260に於いては例えば車両の横加速度Gy若しくは操舵角θの符号に基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車両の旋回方向が判定されると共に、車両が左旋回状態にあるときには下記の式5及び6に従って左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrが演算され、車両が左旋回状態にないときには下記の式7及び8に従って左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrが演算される。
Fstfl=Fsbfl−Fsdf+ΔFsfl ……(5)
Fstfr=Fsbfr+Fsdf−ΔFsfr ……(6)
Fstfl=Fsbfl+Fsdf−ΔFsfl ……(7)
Fstfr=Fsbfr−Fsdf+ΔFsfr ……(8)
ステップ270に於いては左前輪のストローク速度Xdfl及び目標減衰力Fstflに基づき左前輪の目標制御段Stflが演算されると共に、右前輪のストローク速度Xdfr及び目標減衰力Fstfrに基づき右前輪の目標制御段Stfrが演算され、左右前輪のショックアブソーバ44FL及び44FRの制御段Sfl及びSfrがそれぞれ対応する目標制御段Stfl及びStfrになるよう制御される。
ステップ280に於いては上記ステップ240の場合と同様の要領にてび左右後輪の減衰力の修正量ΔFsrl及びΔFsrr(何れも0以上の値)が演算され、ステップ290に於いては上記ステップ260の場合と同様の要領にて車両の旋回方向が判定されると共に、車両が左旋回状態にあるときには下記の式9及び10に従って左右後輪の目標減衰力Fstrl及びFstrrが演算され、車両が左旋回状態にないときには下記の式11及び12に従って左右後輪の目標減衰力Fstrl及びFstrrが演算される。
Fstrl=Fsbrl−Fsdr+ΔFsrl ……(9)
Fstrr=Fsbrr+Fsdr−ΔFsrr ……(10)
Fstrl=Fsbrl+Fsdr−ΔFsrl ……(11)
Fstrr=Fsbrr−Fsdr+ΔFsrr ……(12)
ステップ300に於いては左後輪のストローク速度Xdrl及び目標減衰力Fstrlに基づき左後輪の目標制御段Strlが演算されると共に、右後輪のストローク速度Xdrr及び目標減衰力Fstrrに基づき右後輪の目標制御段Strrが演算され、左右後輪のショックアブソーバ44RL及び44RRの制御段Srl及びSrrがそれぞれ対応する目標制御段Strl及びStrrになるよう制御される。
図5に示された前輪の減衰力の補正量演算ルーチンのステップ241に於いては、上記ステップ260の場合と同様の要領にて車両の旋回方向が判定されることにより、車両が左旋回状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ244へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ242へ進む。
ステップ242に於いては左前輪のストローク速度Xdfl及び左前輪のショックアブソーバ44FLの現在の制御段Sflに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより現在の制御段Sflに於ける旋回内側前輪の最大減衰力Fsfemaxが演算され、また右前輪のストローク速度Xdfr及び右前輪のショックアブソーバ44FRの現在の制御段Sfrに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより現在の制御段Sfrに於ける旋回外側前輪の最大減衰力Fsfcmaxが演算される。
ステップ243に於いてはそれぞれ下記の式13及び14に従って左右前輪の超過減衰力Fsflo及びFsfroが演算される。
Fsflo=|Fsfl−Fsdfl|−|Fsfemax| ……(13)
Fsfro=|Fsfr+Fsdfr|−|Fsfcmax| ……(14)
ステップ244に於いては左前輪のストローク速度Xdfl及び左前輪のショックアブソーバ44FLの現在の制御段Sflに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより現在の制御段Sflに於ける旋回外側前輪の最大減衰力Fsfcmaxが演算され、また右前輪のストローク速度Xdfr及び右前輪のショックアブソーバ44FRの現在の制御段Sfrに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより現在の制御段Sfrに於ける旋回内側前輪の最大減衰力Fsfemaxが演算される。
ステップ245に於いてはそれぞれ下記の式15及び16に従って左右前輪の超過減衰力Fsflo及びFsfroが演算される。
Fsflo=|Fsfl+Fsdfl|−|Fsfcmax| ……(15)
Fsfro=|Fsfr−Fsdfr|−|Fsfemax| ……(16)
ステップ246に於いては下記の(1)又は(2)の何れかの条件が成立しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ252へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ247へ進む。
(1)Fsfro>0且つXdfr>0
(2)Fsfro<0且つXdfr<0
ステップ247に於いては下記の(3)又は(4)の何れかの条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ249へ進み、否定判別が行われたときにはステップ248に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが右前輪の超過減衰力Fsfroに設定され、しかる後ステップ250へ進む。
(3)Fsflo>0且つXdfl>0
(4)Fsflo<0且つXdfl<0
ステップ249に於いては右前輪の超過減衰力Fsfroの絶対値と左前輪の超過減衰力Fsfloの絶対値との偏差が正の値であるか否かの判別、即ち右前輪の超過減衰力Fsfroの大きさが左前輪の超過減衰力Fsfloの大きさよりも大きいか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ250に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが右前輪の超過減衰力Fsfroに設定された後ステップ250へ進み、否定判別が行われたときにはステップ251に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが左前輪の超過減衰力Fsfloに設定された後ステップ250へ進む。
ステップ252に於いては上記ステップ247の場合と同様、上記(3)又は(4)の何れかの条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ253に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが左前輪の超過減衰力Fsfloに設定された後ステップ250へ進み、否定判別が行われたときにはステップ254に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが0に設定された後ステップ250へ進む。
次に図6及び図7を参照して上記ステップ220に於いて実行される基本目標減衰力Fsbiの演算ルーチンについて説明する。
先ずステップ310に於いては車両の横加速度Gyの大きさが大きいほど車体の目標ロール角θrtが大きくなるよう、車両の横加速度Gyに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより車体の目標ロール角θrtが演算され、ステップ320に於いては図7に示されたフローチャートに従って車体の実ロール角θrが演算される。
図7に示されたフローチャートのステップ322に於いては車両のホイールベースをLとし、前後輪の車軸と車体の重心との間の車両前後方向の距離をそれぞれLf及びLrとして、それぞれ下記の式17及び18に従って車体の左輪側及び右輪側の重心点のばね上加速度Gozl及びGozrが演算される。
Gozl=(Gzfl・Lr+Gzrl・Lf)/L ……(17)
Gozr=(Gzfr・Lr+Gzrr・Lf)/L ……(18)
ステップ324に於いては前輪のホイールトレッドTf及び後輪のホイールトレッドTrの平均値を車両のホイールトレッドTfとして、下記の式19に従って車両の前後方向軸線周りのロール角加速度θrddが演算され、ステップ326に於いてはロール角加速度θrddを2階積分することにより車体の実ロール角θrが演算される。
θrdd=(Gozl−Gozr)/T ……(19)
図6に示されたフローチャートに戻って、ステップ330に於いては車体の目標ロール角θrtと車体の実ロール角θrとの偏差(θrt−θr)として車体の修正ロール角Δθrが演算され、ステップ340に於いては車体の修正ロール角Δθrを2階時間微分することにより、修正ロール角加速度Δθrdd(=d2(Δθr)/dt2)が演算される。
ステップ350に於いては電子制御装置22より送信されたアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの実際の回転角度φF、φRに基づき車両のロール剛性Krが推定されると共に、車両の前後方向軸線周りの慣性モーメントをIrとして、車体の実ロール角θrを目標ロール角θrtにするための修正ロールモーメントΔMrが下記の式20に従って演算される。尚ΔMrの符号は、ロール角の増加側と同じ向きである場合が正であり、ロール角の減少側と同じ向きである場合が負である。
ΔMr=Ir・Δθrdd+Kr・Δθr ……(20)
旋回内側前輪及び旋回外側前輪のショックアブソーバに必要とされる修正減衰力をそれぞれΔFfin及びΔFfoutとし、旋回内側後輪及び旋回外側後輪のショックアブソーバに必要とされる修正減衰力をそれぞれΔFrin及びΔFroutとすると、修正ロールモーメントΔMrは下記の式21により表される。
ΔMr=(ΔFfin−ΔFout)・Tf/2 +(ΔFrin−ΔFrout)・Tr/2 ……(21)
今全てのショックアブソーバの修正減衰力の大きさが同一であるとして、その値をΔFsとし、旋回外側のショックアブソーバの修正減衰力を正の値とすると、上記式21は下記の式22又は23の通り変形される。よってショックアブソーバの修正減衰力の大きさΔFsは下記の式24により表される。
ΔMr={(ΔFs)−(−ΔFs)}・Tf/2
+{(ΔFs)−−ΔFs}・Tr/2 ……(22)
−ΔMr={(−ΔFs)−(−ΔFs)}・Tf/2
+{(−ΔFs)−ΔFs}・Tr/2 ……(23)
ΔFs=ΔMr/(Tf+Tr) ……(24)
上記式22は、例えば車両の左旋回走行時に修正ロールモーメントΔMrが正である場合に、ロール角の増加側である右方向へのロールが更に許容されるように、旋回内輪である左前後のショックアブソーバにそれぞれ正の修正減衰力ΔFsが必要とされ、旋回外輪である右前後輪のショックアブソーバにそれぞれ負の修正減衰力(−ΔFs)が必要とされる場合に適用される。また例えば車両の右旋回走行時に修正ロールモーメントΔMrが正である場合に、ロール角の増加側である左方向へのロールが更に許容されるように、旋回内輪である右前後輪のショックアブソーバにそれぞれ正の修正減衰力ΔFsが必要とされ、旋回外輪である左前後輪のショックアブソーバにそれぞれ負の修正減衰力(−ΔFs)が必要とされる場合にも適用される。
一方上記式23は、例えば車両の左旋回走行時に修正ロールモーメントΔMrが負である場合に、ロール角の増加側である右方向へのロールが規制されるように、旋回内輪である左前後輪のショックアブソーバにそれぞれ負の修正減衰力(−ΔFs)が必要とされ、旋回外輪である右前後輪のショックアブソーバにそれぞれ正の修正減衰力ΔFsが必要とされる場合に適用される。また例えば車両の右旋回走行時に修正ロールモーメントΔMrが負である場合に、ロール角の増加側である左方向へのロールが規制されるように、旋回内輪である右前後輪のショックアブソーバにそれぞれ負の修正減衰力(−ΔFs)が必要とされ、旋回外輪である左前後輪のショックアブソーバにそれぞれ正の修正減衰力ΔFsが必要とされる場合にも適用される。
従ってこの第一の実施例に於いては、全てのショックアブソーバの修正減衰力の大きさが同一になるよう、ステップ360に於いて上記式24に従ってショックアブソーバの修正減衰力ΔFsが演算される。
ステップ430に於いては各車輪のストロークXiをそれぞれ時間微分することによりストローク速度Xid(i=fl,fr,rl,rr)が演算されると共に、各ストローク速度Xid及び各ショックアブソーバの制御段Siに基づき各ショックアブソーバの現在の減衰力Fsi(i=fl,fr,rl,rr)が演算される。具体的には、電子制御装置62のROM内に設けられ図11に示されたグラフに対応する減衰力マップを参照して、ストローク速度Xidに応じて変化する各ショックアブソーバの減衰力Fsiが演算される。
図11に示されている如く、上記減衰力マップは、複数の制御段Si毎に、ストローク速度Xidが「0」から正の所定値へ増加するにつれて増加するショックアブソーバの減衰力Fsiと、ストローク速度Xidが「0」から負の所定値へ減少するにつれて減少するショックアブソーバの減衰力Fsiとを記憶している。尚同一のストローク速度Xidについて見て、減衰力Fsiの大きさは減衰力発生弁の絞り量が大きくなるにつれてソフト(低減衰力)側からハード(高減衰力)側に向けて漸次大きくなる。
ステップ440に於いてはステップ430に於いて演算された各ショックアブソーバの現在の減衰力Fsi及びステップ360に於いて演算された修正減衰力ΔFsに基づき、下記の式25に従って各ショックアブソーバの基本目標減衰力Fsbiが演算される。
Fsbi=Fsi±ΔFs ……(25)
尚上記式25に於いて、修正ロールモーメントΔMrが正であるときは、旋回外輪側の基本目標減衰力Fsbiは(Fsi+ΔFs)として演算され、旋回内輪側の基本目標減衰力Fsbiは(Fsi−ΔFs)として演算される。これとは逆に修正ロールモーメントΔMrが負であるときは、旋回外輪側の基本目標減衰力Fsbiは(Fsi−ΔFs)として演算され、旋回内輪側の基本目標減衰力Fsbiは(Fsi+ΔFs)として演算される。
[第一の変形実施例]
この第一の変形実施例に於いては、全てのショックアブソーバの減衰係数が均等に修正される。即ち修正減衰係数の大きさをΔCとし、上記式20を下記の式26に置き換えると、修正減衰係数ΔCは下記の式27により表されるので、下記の式27に従って演算される。従って各ショックアブソーバの修正減衰力ΔFsfin〜ΔFsroutは下記の式28〜31にて表される。
ΔMr=(ΔC・Xfind−ΔC・Xfoutd)・Tf/2
+(ΔC・Xrind−ΔC・Xroutd)・Tr/2 ……(26)
ΔC=2ΔMr/{(Xfind−Xfoutd)・Tf+(Xrind−Xroutd)・Tr} ……(27)
ΔFsfin=ΔC・Xfind ……(28)
ΔFsfout=ΔC・Xfoutd ……(29)
ΔFsrin
=ΔC・Xrind ……(30)
ΔFsrout
=ΔC・Xroutd ……(31)
尚、上記各式に於ける旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪側、旋回外側後輪の各ストロ−ク速度を表すXfind,Xfoutd,Xrind,Xroutdは、車両の横加速度Gy及び操舵角θに基づいて判定される車両の旋回方向に応じて各車輪のストロ−ク速度Xid(i=fl,fr,rl,rr)に基づいて演算される。
かくしてこの第一の変形実施例に於いては、ステップ360に於いて上記式27〜31に従って旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪側、旋回外側後輪の修正減衰力ΔFsfin〜ΔFsroutが演算され、これらの値に基づいて各車輪の修正減衰力ΔFsi(i=fl,fr,rl,rr)が演算される。そしてステップ430に於いて上記式25に対応する下記の式32に従って各ショックアブソーバの基本目標減衰力Fsbiが演算される。尚、下記の式32に於ける符号の選択は上述の第一の実施例の場合と同様である。またこの第一の変形実施例の他のステップは上述の第一の実施例と同様に実行される。
Fsbi=Fsi±ΔFsi ……(32)
[第二の変形実施例]
この第二の変形実施例に於いては、車両の前輪側及び後輪側に於けるロール減衰率ζが同一になるよう、前輪側及び後輪側に於ける左右輪のショックアブソーバの減衰係数が均等に修正される。車両の前輪側及び後輪側に於けるロール減衰率ζが同一であるときには、下記の式33が成立する。
ここでΔMrf,ΔMrrはそれぞれ前輪側及び後輪側の修正ロールモーメントであり、ΔMrf+ΔMrr=ΔMrの関係がある。またIrf,Irrはそれぞれ前輪側及び後輪側のロール慣性モーメントであり、Irf+Irr=Irの関係がある。またKrf,Krrはそれぞれ前輪側及び後輪側のロール剛性であり、これらのロール剛性はアクティブスタビライザ装置16及び18の作動状況によって変化するが、Krf+Krr=Krの関係がある。
今後輪側の修正ロールモーメントΔMrrに対する前輪側の修正ロールモーメントΔMrfの比を修正ロールモーメント比λとすると、修正ロールモーメント比λは下記の式34により表される。尚、hf,hrはそれぞれ前輪側及び後輪側のロールアーム長であり、mf,mrはそれぞれ前輪側及び後輪側の車体の質量である。
上記式34及びMrf+ΔMrr=ΔMrの関係から、前輪側の修正ロールモーメントΔMrfは下記の式35により表され、後輪側の修正ロールモーメントΔMrrは下記の式36により表される。
ΔMrf=ΔMr・λ/(λ+1)
……(35)
ΔMrr=ΔMr/(λ+1) ……(36)
よって前輪側の左右輪のショックアブソーバの修正減衰力ΔFsfは下記の式37により表され、後輪側の左右輪のショックアブソーバの修正減衰力をΔFsrは下記の式38により表される。
ΔFsf=ΔMrf/Tf
=ΔMr・λ/{(λ+1)
Tf} ……(37)
ΔFsr=ΔMrr/Tr
=ΔMr/{(λ+1) Tr} ……(38)
かくしてこの第二の変形実施例に於いては、ステップ360に於いて上記式37に従って左右前輪の修正減衰力ΔFsfが演算されると共に、上記式38に従って左右後輪の修正減衰力ΔFsrが演算され、ステップ430に於いて上記式25に対応する下記の式39〜42に従って各ショックアブソーバの基本目標減衰力Fsbiが演算される。尚、下記の式39〜42に於ける符号の選択は上述の第一の実施例の場合と同様である。またこの第二の変形実施例の他のステップは上述の第一の実施例と同様に実行される。
Fsbfl=Fsfl±ΔFsf ……(39)
Fsbfr=Fsfr±ΔFsf ……(40)
Fsbrl=Fsrl±ΔFsr ……(41)
Fsbrr=Fsrr±ΔFsr ……(42)
[第三の変形実施例]
この第三の変形実施例に於いては、上記第二の変形実施例と同様、車両の前輪側及び後輪側に於けるロール減衰率ζが同一になるよう、上記式33〜36により前輪側の修正ロールモーメントΔMrf及び後輪側の修正ロールモーメントΔMrrが演算される。但し、この第三の変形実施例に於いては、上記第二の変形実施例の場合と異なり、車両の前輪側及び後輪側に於いてそれぞれ左右輪のショックアブソーバの減衰係数が均等に修正される。即ち前輪側に於ける左右輪のショックアブソーバの修正減衰係数をΔCfとし、後輪側に於ける左右輪のショックアブソーバの修正減衰係数をΔCrとし、上記式21が下記の式43及び44に置き換えられる。
ΔMrf=ΔCf・(Xfind−Xfoutd)・Tf/2 ……(43)
ΔMrr=ΔCr・(Xrind−Xroutd)・Tr/2 ……(44)
上記式43及び44より、左右前輪のショックアブソーバの修正減衰係数ΔCf及び左右後輪のショックアブソーバの修正減衰係数ΔCrはそれぞれ下記の式45及び46により表され、よって各車輪のショックアブソーバの修正減衰力ΔFsfin〜ΔFsroutは下記の式47〜50により表される。
ΔCf=2ΔMrf/{(Xfind−Xfoutd)・Tf} ……(45)
ΔCr=2ΔMrr/{(Xrind−Xroutd)・Tr} ……(46)
ΔFsfin=ΔCf・Xfind ……(47)
ΔFsfout=ΔCf・Xfoutd ……(48)
ΔFsrin=ΔCr・Xrind ……(49)
ΔFsrout=ΔCr・Xroutd ……(50)
かくしてこの第三の変形実施例に於いては、ステップ360に於いて上記式35、36及び上記式45〜50に従って旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪側、旋回外側後輪の修正減衰力ΔFsfin〜ΔFsroutが演算され、これらの値に基づいて各車輪の修正減衰力ΔFsi(i=fl,fr,rl,rr)が演算される。そしてステップ430に於いて上記式32に従って各ショックアブソーバの基本目標減衰力Fsbiが演算される。尚、この第三の変形実施例の他のステップは上述の第一の実施例と同様に実行される。
[第二の実施例]
図8は第二の実施例に於ける基本目標減衰力Fsbi演算のサブルーチンの要部を示すフローチャート、図9は図8のステップ370に於いて実行される車体の実ピッチ角θp演算のサブルーチンを示すフローチャートである。尚図8に於いて図6に示されたステップと同一のステップには図6に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この第二の実施例に於いては、電子制御装置22によるアクティブスタビライザ装置16及び18の制御は図3に示されたフローチャートに従って上述の第一の実施例の場合と同様に実行される。また電子制御装置62によるショックアブソーバ44FL〜44RRの減衰力の制御は図4乃至図6に示されたフローチャートに従って基本的には上述の第一の実施例の場合と同様に実行されるが、目標ロール角θrtと車体に発生するピッチングとの位相差がゼロになるよう、車体のローリングの制御に加えて車体のピッチングを制御するものであり、図6のステップ360に代えて図8に示されたフローチャートのステップ370乃至420が実行される。
ステップ350の次に実行されるステップ370に於いては、ステップ310に於いて演算された車体の目標ロール角θrtの絶対値に基づき図13に示されたグラフに対応するマップより車体の目標ピッチ角θptが演算される。この目標ピッチ角θptの演算は、具体的には電子制御装置62のROM内に設けられた目標ピッチ角テーブルを参照して行われる。目標ピッチ角テーブルは、図13に示されている如く、車両の旋回時に於ける車体の姿勢が極僅かに前傾となるような目標ピッチ角θptを記憶しており、目標ピッチ角θptは目標ロール角θrtによって一義的に定まり、目標ロール角θrtの絶対値の増加に従って非線形的に増加する。尚、目標ピッチ角θptは目標ロール角θrtを変数とする関数により演算されてもよい。
ステップ380に於いては図9に示されたフローチャートに従って車体の実ピッチ角θpが演算される。
図9に示されたフローチャートのステップ382に於いては、それぞれ下記の式51及び52に従って前輪側及び後輪側のばね上の上下加速度の平均値Gzf及びGzrが演算される。
Gzf=(Gzfl+Gzfl)/2 ……(51)
Gzr=(Gzrl+Gzrr)/2 ……(52)
ステップ384に於いては車両のホイールベースをLとして、下記の式53に従って車体のピッチ角加速度θpddが演算され、ステップ386に於いてはピッチ角加速度θpddを2階積分することにより車体の実ピッチ角θpが演算される。
θpdd=(Gzr−Gzf)/L ……(53)
図8に示されたフローチャートに戻って、ステップ390に於いては車体のピッチ角θptと車体の実ピッチ角θpとの偏差(θpt−θp)として車体の修正ピッチ角Δθpが演算され、ステップ400に於いては車体の修正ピッチ角Δθpを2階時間微分することにより、修正ピッチ角加速度Δθpdd(=d2(Δθp)/dt2)が演算される。尚、車両の旋回時には実ピッチ角θpは通常正の値、即ち車体の前傾姿勢に対応する値になる。
ステップ410に於いては車両の左右方向軸線周りの慣性モーメントをIpとし、車両のピッチ剛性をKpとして、下記の式54に従って車体のピッチ角の修正に必要な修正ピッチモーメントΔMpが演算される。修正ピッチモーメントΔMpの符号は車体の前傾側が正であり、車体の後傾側が負である。
ΔMp=Ip・Δθpdd +Kp・Δθp ……(54)
この第二の実施例に於いては、前輪側に於ける左右輪のショックアブソーバの修正減衰係数をΔCfとし、後輪側に於ける左右輪のショックアブソーバの修正減衰係数をΔCrとし、上記式21が下記の式55に置き換えられ、上記式54が下記の式56に置き換えられる。
ΔMr=(ΔCf・Xfind−ΔCf・Xfoutd)・Tf/2
+(ΔCr・Xrind−ΔCr・Xroutd)・Tr/2 ……(55)
ΔMp=−(ΔCr・Xfind+ΔCf・Xfoutd)・Lf
+(ΔCr・Xrind+ΔCr・Xroutd)・Lr ……(56)
上記式55及び式56は、下記の式57の行列式にて表されるので、車両の左右前輪及び左右後輪のショックアブソーバの修正減衰係数ΔCf及びΔCrは下記の式58に従って演算される。
尚、上記式58の逆行列が成立するためには、各ストローク速度はXfind≠Xfoutd且つXrind≠Xroutdの条件を満足しなければならない。その理由は、Xfind=Xfoutd且つXrind=Xroutdであるときは、車体にロールが発生しないので、ロールが発生する状況に於ける修正減衰係数ΔCf及びΔCrを上記式58によって演算することができないからである。また各ストローク速度はXfind≠−XfoutdかつXrind≠−Xroutdの条件をも満足しなければならない。その理由は、Xfind=−Xfoutd且つXrind=−Xroutdであるときは、車体にピッチングが発生しないので、上記式37にてピッチングが発生する状況に於ける修正減衰係数ΔCf及びΔCrを上記式58によって演算することができないからである。
従ってステップ420に於いては、ステップ350に於いて演算された修正ロールモーメントΔMr及びステップ410に於いて演算された修正ピッチモーメントΔMpに基づき、上記式58に従って左右前輪及び左右後輪のショックアブソーバの修正減衰係数ΔCf及びΔCrが演算される。
ステップ430に於いては上記第三の変形実施例の場合と同様、上記式45〜50に従って旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪側、旋回外側後輪の修正減衰力ΔFsfin〜ΔFsroutが演算され、これらの値に基づいて各車輪の修正減衰力ΔFsi(i=fl,fr,rl,rr)が演算され、ステップ440に於いては上記式32に従って各ショックアブソーバの基本目標減衰力Fsbiが演算される。
以上の説明より解る如く、上述の各実施例及び各変形実施例に於けるアクティブスタビライザ装置の制御に於いては、ステップ20に於いて車両の横加速度Gyの大きさが大きいほど目標アンチロールモーメントMatの大きさが大きくなるよう、車両の横加速度Gyに基づき目標アンチロールモーメントMatが演算され、ステップ30及び40に於いて目標アンチロールモーメントMat及び前輪の目標ロール剛性配分比Rmfに基づき前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartが演算される。
そしてステップ50乃至80に於いて前輪の目標アンチロールモーメントMaftの大きさが前輪側のアクティブスタビライザ装置16により発生可能な最大アンチロールモーメントMafmaxの大きさを越えるときには、前輪の目標アンチロールモーメントMaftの大きさが最大アンチロールモーメントMafmaxの大きさに補正されると共に、前輪の目標アンチロールモーメントMaftと最大アンチロールモーメントMafmaxとの差として前輪側の超過アンチロールモーメントΔMafが演算される。
同様に、ステップ90乃至120に於いて後輪の目標アンチロールモーメントMartの大きさが後輪側のアクティブスタビライザ装置18により発生可能な最大アンチロールモーメントMarmaxの大きさを越えるときには、後輪の目標アンチロールモーメントMartの大きさが最大アンチロールモーメントMarmaxの大きさに補正されると共に、後輪の目標アンチロールモーメントMartと最大アンチロールモーメントMarmaxとの差として後輪側の超過アンチロールモーメントΔMarが演算される。
更にステップ130に於いて前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartに基づきアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角φft及びφrtが演算され、ステップ140に於いてそれぞれアクチュエータ20F及び20Rの回転角φf及びφrがそれぞれ目標回転角φft及びφrtになるよう制御され、これにより前輪側及び後輪側のスタビライザ力によるアンチロールモーメントがそれぞれ前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartに制御される。
また上述の各実施例及び各変形実施例に於ける車両の旋回時のショックアブソーバの減衰力の制御に於いては、ステップ220に於いて各ショックアブソーバ44FL〜44RRの基本目標減衰力Fsbiが演算され、ステップ230に於いて超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを達成することが要求される値として前輪の要求増減減衰力Fsdf及び後輪の要求増減減衰力Fsdrがそれぞれ超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarに基づいて演算される。
そしてステップ240に於いて左右前輪のショックアブソーバの減衰力が最大減衰力を越えないよう、前輪の要求増減減衰力Fsdfに基づいて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが演算され、ステップ260に於いて左右前輪の基本目標減衰力Fsbfl及びFsbfrがそれぞれ減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrにて修正されることにより右前輪及び左右前輪の目標減衰力Fstfr及びFstflが演算され、ステップ270に於いて左前輪の減衰力Fsfl及びFsfrがそれぞれ目標減衰力Fstfl及びFstfrになるよう制御される。
同様に、ステップ280に於いて左右後輪のショックアブソーバの減衰力が最大減衰力を越えないよう、後輪の要求増減減衰力Fsdrに基づいて左右後輪の減衰力の修正量ΔFsrl及びΔFsrrが演算され、ステップ290に於いて左右後輪の基本目標減衰力Fsbrl及びFsbrrがそれぞれ減衰力の修正量ΔFsrl及びΔFsrrにて修正されることにより左右後輪の目標減衰力Fstrfl及びFstrrが演算され、ステップ300に於いて左右後輪の減衰力Fsrl及びFsrrがそれぞれ目標減衰力Fstrl及びFstrrになるよう制御される。
特にステップ240に於ける左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrの演算に於いては、ステップ242乃至245に於いて旋回外側前輪の最大減衰力Fsfcmax及び旋回内側前輪の最大減衰力Fsfemaxが演算されると共に、最大減衰力Fsfcmax及びFsfemaxに対する左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrの超過減衰力Fsflo及びFsfroが演算される。
そしてステップ246、247、252に於いて左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrがそれぞれ対応する最大減衰力Fsfcmax及びFsfemaxを越えているか否かの判別が行われ、左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrの何れも対応する最大減衰力Fsfcmax及びFsfemaxを越えていないときには、ステップ254に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが0に設定される。
また左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrの何れか一方が対応する最大減衰力Fsfcmax及びFsfemaxを越えているときには、ステップ248又は253に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが最大減衰力に対する目標減衰力の超過量Fsflo又はFsfroに設定される。
更に左右前輪の目標減衰力Fstfl及びFstfrの何れも対応する最大減衰力Fsfcmax及びFsfemaxを越えているときには、ステップ249乃至251に於いて左右前輪の減衰力の修正量ΔFsfl及びΔFsfrが最大減衰力に対する目標減衰力の超過量のうち大きい方の値Fsflo又はFsfroに設定される。尚、以上の設定制御は左右後輪についても同様に行われる。
従って上述の各実施例及び各変形実施例によれば、前輪及び後輪の何れの場合にも、目標アンチロールモーメントMaft、Martの大きさがアクティブスタビライザ装置16、18により発生可能な最大アンチロールモーメントMafmax、Marfmaxの大きさを越えるときには、ショックアブソーバ44FL〜44RRの目標減衰力が修正されることによって超過分のアンチロールモーメントΔMaf、ΔMarが修正された減衰力により発生されるので、目標アンチロールモーメントMaft、Martの大きさがアクティブスタビライザ装置16、18により発生可能な最大アンチロールモーメントMafmax、Marfmaxの大きさを越える場合にもショックアブソーバ44FL〜44RRの減衰力が修正されない場合に比して、車体のロールを効果的に抑制することができる。
また上述の各実施例及び各変形実施例によれば、前輪及び後輪の何れの場合にも、左右の車輪の少なくとも一方の修正後の目標減衰力が当該車輪のショックアブソーバの最大減衰力を越えるときには、超過分の減衰力の大きさが大きい方の車輪については当該車輪の目標減衰力が大きい方の超過分の減衰力にて低減補正され、左右反対側の車輪については当該車輪の目標減衰力の大きさが大きい方の超過分の減衰力にて低減補正されるので、ショックアブソーバの本来の減衰力制御を阻害することなく超過分のアンチロールモーメントΔMaf、ΔMarをできるだけ有効に発生させることができ、これにより本発明に従って目標減衰力が補正されない場合に比して、本来の減衰力制御を阻害することなく車体のロールを効果的に且つ適正に抑制することができる。
例えば図14に示されている如く、旋回外輪側(縮み側)及び旋回内輪側(伸び側)の何れに於いても、本来の減衰力制御の目標減衰力、即ち基本目標減衰力Fsbout及びFsbinが超過分のアンチロールモーメントを発生させるための要求増減減衰力Fsdにて修正された値(Fsbout+Fsd及びFsbin−Fsd)が最大減衰力を越えていないときには、図5に示されたフローチャートのステップ246及び252に於いて否定判別が行われ、ステップ254に於いて修正量ΔFsfl及びΔFsfrが0に設定されるので、ステップ260、270、290、300に於いて減衰力は基本目標減衰力Fsbout及びFsbinと同一の値になるよう制御される。
これに対し図15に示されている如く、旋回内輪側に於いては、基本目標減衰力Fsbinと要求増減減衰力Fsdとの差が伸び側の最大減衰力を越えていないが、旋回外輪側に於いては、基本目標減衰力Fsboutと要求増減減衰力Fsdとの和が縮み側の最大減衰力を越えているときには、図5に示されたフローチャートのステップ246に於いて肯定判別が行われると共にステップ247に於いて否定判別が行われることにより、或いはステップ246に於いて否定判別が行われると共にステップ252に於いて肯定判別が行われることにより、ステップ248又は253に於いて修正量ΔFsfl及びΔFsfrが旋回外輪の超過減衰力ΔFsout(車両の左旋回時はFsfroであり、車両の右旋回時はFsfloである)に設定され、ステップ260及び290に於いて減衰力が超過する旋回外輪については当該車輪の目標減衰力が超過減衰力ΔFsoutにて低減補正され、旋回内輪については当該車輪の目標減衰力が旋回外輪の超過減衰力ΔFsoutにて増大補正される(大きさがΔFsout低減される)。
従って減衰力が発生するアンチロールモーメントの方向が正であるとすると、前輪側及び後輪側に於いて減衰力により車両に付与されるアンチロールモーメントMasf及びMasrはそれぞれ下記の式59及び60にて表される値であり、減衰力によって確実に超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを達成することができ、これにより車体のロールを効果的に抑制することができる。
Masf=(Fsbout+Fsd−ΔFsout)T/2+(−Fsbin+Fsd−ΔFsout)T/2
=(Fsbout+Fsd)T/2+(−Fsbin+Fsd)T/2 ……(59)
Masr=(Fsbout+Fsd−ΔFsout)T/2+(−Fsbin+Fsd−ΔFsout)T/2
=(Fsbout+Fsd)T/2+(−Fsbin+Fsd)T/2 ……(60)
また左右輪の減衰力の和Fstotalは前輪側及び後輪側の何れについても下記の式61にて表される値であり、この値は超過減衰力ΔFsoutによる増減修正が行われない場合と同一の値である。従って超過減衰力ΔFsoutによる増減修正が行われる場合にも、要求増減減衰力Fsdf及びFsdrの影響を受けることなくショックアブソーバの本来の減衰力制御を行うことができる。
Fstotal=(Fsbout+Fsd−ΔFsout)+(Fsbin−Fsd+ΔFsout)
=Fsbout+Fsbin ……(61)
また図16に示されている如く、旋回内輪側に於いては、基本目標減衰力Fsbinと要求増減減衰力Fsdとの差が伸び側の最大減衰力を越えており、旋回外輪側に於いては、基本目標減衰力Fsboutと要求増減減衰力Fsdとの和が縮み側の最大減衰力を越えているときには、図5に示されたフローチャートのステップ246及び247に於いて肯定判別が行われ、ステップ249乃至251に於いて超過減衰力Fsfro及びFsfloのうち大きさが大きい方の値(通常旋回外輪側の値であり、これを図16に於いてはΔFsmaxとする)が修正量ΔFsfrに設定される。
従ってこの場合には超過減衰力が大きい方の車輪(通常旋回外輪)は目標減衰力が最大減衰力に制御され、左右反対側の車輪(通常旋回内輪)は目標減衰力の大きさが最大減衰力よりも大きさが小さい減衰力に制御され、これによりショックアブソーバの本来の減衰力制御を大きく損なうことなく超過分のアンチロールモーメントΔMaf、ΔMarをできるだけ効果的に発生させることができる。
特に上述の第一の実施例及び第一乃至第三の変形実施例によれば、ステップ220に於いて演算される各ショックアブソーバ44FL〜44RRの基本目標減衰力Fsbiは、図6及び図7に示されたフローチャートに従って演算されることにより、車両の横加速度Gyに基づいて演算される車体の目標ロール角θrtと車体の実ロール角θとの偏差である修正ロール角Δθrを0に小さくするための修正ロールモーメントΔMrを発生するに必要な値として演算されるので、車両の横加速度Gyと車体に発生するロールとの位相差が0になるよう基本目標減衰力Fsbiを演算することができ、これにより車体のロール角が車両の横加速度Gyの大きさ及び位相に対し適切な値及び位相になるようショックアブソーバの減衰力を制御することができる。
また上述の第一の実施例によれば、各車輪の修正減衰力ΔFsは全ての車輪について共通の値であるので、第一乃至第三の変形修正例の場合に比して各車輪の修正減衰力を容易に演算することができる。また上述の第二の変形修正例によれば、修正減衰力として前輪側の修正減衰力ΔFsf及び後輪側の修正減衰力ΔFsrが演算されるので、上述の第一の実施例の場合に比して、前輪側及び後輪側のショックアブソーバの減衰力を一層適切に制御することができる。また上述の第一及び第三の変形修正例によれば、修正減衰力として各車輪の修正減衰力ΔFsfin、ΔFsfout、ΔFsrin、ΔFsroutが演算されるので、上述の第一の実施例及び第一の変形実施例の場合に比して、各車輪のショックアブソーバの減衰力を一層適切に制御することができる。
また上述の第二の実施例によれば、ステップ220に於いて演算される各ショックアブソーバ44FL〜44RRの基本目標減衰力Fsbiが図6、図8、図9に示されたフローチャートに従って演算されることにより、車体の目標ロール角θrtと車体の実ロール角θとの偏差である修正ロール角Δθrを0に小さくするための修正ロールモーメントΔMr及び車体の目標ロール角θrtに基づいて演算される車体の目標ピッチ角θptと車体の実ピッチ角θpとの偏差である修正ピッチ角Δθpを0に小さくするための修正ピッチモーメントΔMpの両者を発生するに必要な値として演算される。
従って車両の横加速度Gyと車体に発生するロールとの位相差が0になると共に、車体の目標ロール角θrtと車体に発生するピッチとの位相差が0になるよう基本目標減衰力Fsbiを演算することができ、これにより車体のロール角及びピッチ角が何れも適切な値になるよう各車輪のショックアブソーバの減衰力を制御することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例及び変形実施例に於いては、アンチロールモーメント発生手段はスタビライザ力を増減させるアクティブスタビライザ装置であるが、左右の車輪の位置に於いてばね上とばね下との間に作用する力を増減し得るものである限り、例えばエアサスペンション装置、ハイドロニューマチックサスペンション装置、アクティブサスペンション装置の如く当技術分に於いて公知の任意の装置であってよい。
また上述の各実施例及び変形実施例に於いては、超過ロールモーメントΔMaf及びΔMarを達成するための前輪の要求増減減衰力Fsdf及び後輪の要求増減減衰力Fsdrは左右輪間に於いて同一の大きさの値であるが、要求増減減衰力は例えば旋回内輪が旋回外輪に比して大きくなるよう、左右輪間に於いて互いに異なる大きさの値に設定されてもよい。
また上述の各実施例及び変形実施例に於いては、車体の実ロール角θrは各車輪の位置に於けるばね上加速度Gziに基づいて演算され、また上述の第二の実施例に於いては、車体の実ピッチ角θpも各車輪の位置に於けるばね上加速度Gziに基づいて演算されるようになっているが、車体の実ロール角θr及び実ピッチ角θpは例えば各車輪のストロークXiに基づいて演算されてもよい。
また上述の各実施例及び変形実施例に於いては、全ての車輪のショックアブソーバが同一の減衰力特性(図11)を有しているが、左右輪のショックアブソーバの減衰力特性が同一である限り、前輪のショックアブソーバ及び後輪のショックアブソーバは互いに異なる減衰力特性を有していてもよい。
更に上述の各実施例及び変形実施例に於いては、目標ロール角θrtはそれが増加する場合及び減少する場合の何れの場合にも、車両の横加速度Gyに対し同一の値に設定されるようになっているが、例えば目標ロール角θrtは増加時と減少時とでは車両の横加速度Gyに対し異なる値に設定され、これにより良好なロール感が確保される範囲内で若干のヒステリシスが存在するよう修正されてもよい。
16、18…アクティブスタビライザ装置、20F、20R…アクチュエータ、22…電子制御装置、44FL〜44RR…ショックアブソーバ、48C…アクチュエータ、62…電子制御装置、64…横加速度センサ、66…車速センサ、68F、68R…回転角度センサ、70…前後加速度センサ、72…操舵角センサ、74i…ストロークセンサ、76i…上下加速度センサ