JP2008168292A - 中空糸膜束および中空糸型液体処理装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明の課題は、性能が高い利点があるウェットプロセスによって製造される中空糸膜束およびこれを内蔵してなる中空糸型液体処理装置の製造方法において、膜内の液体を除去した後の中空糸膜の変形、損傷がなく、真円度を70%以上に維持することが可能な中空糸膜束および中空糸型液体処理装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明においては、膜内に液体を包含した中空糸膜束を仕切り板を有する容器に複数積載し、遠心回転により該膜内の液体を除去して中空糸膜束を製造する方法を特徴とする。
【選択図】図3
本発明の課題は、性能が高い利点があるウェットプロセスによって製造される中空糸膜束およびこれを内蔵してなる中空糸型液体処理装置の製造方法において、膜内の液体を除去した後の中空糸膜の変形、損傷がなく、真円度を70%以上に維持することが可能な中空糸膜束および中空糸型液体処理装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明においては、膜内に液体を包含した中空糸膜束を仕切り板を有する容器に複数積載し、遠心回転により該膜内の液体を除去して中空糸膜束を製造する方法を特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、人工腎臓等の中空糸型液体処理装置に内蔵される中空糸膜内の液体を除去する製造方法に関するものである。
中空糸型液体処理装置は円形断面を有する中空糸膜の束がプラスチック等のケースに内蔵されてなる装置であって、血液等の液体を処理するために用いられるものである。その用途としては、透析器としての人工腎臓や、透析時に使用する透析液中のエンドトキシン除去フィルター、および血漿分離膜、体外循環吸着用担体などの医療用途や、浄水器等の水処理用途などがある。
この様な人工腎臓を含む血液等の液体処理装置用の中空糸膜は半透膜であるが、かかる半透膜の素材としては、天然素材セルロース、また、その誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、時代の変化とともに、合成高分子が登場し、ポリスルホン、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリアクリロニトリルなどが幅広く使用され、近年ではセルロースをポリエチレングリコール(PEG)などで処理し、血液適合性を改良した改質膜も使用されるようになってきた。慢性腎不全患者の血液処理法についてはアルブミンの漏れは最小限に抑えつつ、その他の低分子蛋白を積極的に除去する試みがなされている。膜の改良だけでなく、血液透析濾過法(HDF)や、プッシュ&プル法が透析効率の向上や低分子蛋白の積極除去のため開発された。中でも、現在、膜素材の中で透水性能が高いポリスルホンが、このような透析手法の進歩に合致したものとして、幅広く使用されるに至っている。ポリスルホンは熱可塑性の耐熱エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気、医療用具の分野で幅広く用いられている。
人工腎臓用の膜は、膜の内表面と外表面のポアサイズから対称膜と非対称膜に分かれており、ポリスルホンは非対称膜に該当する。また、その中でドライタイプとウェットタイプに分かれているが、製糸工程から一貫してウェット状態で作成された中空糸膜は高透水性能を有し、かつ、性能がドライタイプより高いことが知られている。非対称膜構造を有するウェットタイプの製造では、膜の乾燥を防ぐためにグリセリンなどの保湿剤を膜中に含浸させ、中空糸膜を束として巻き取った後にこの余分な中空糸膜内の液体を除去する工程を有することが多い(ウェットプロセス)。この中空糸膜内の液体の除去には重力や遠心力を用いる方法があるが、その応力が過大となると、中空糸膜自体に掛かる力によって中空糸膜が変形し、円形の断面の真円度が低下する事態が生じる。この中空糸膜真円度の大幅な低下により、血液の流通を阻害することがある。
中空糸膜内の液体の除去に関しては、特許文献1のように規定の遠心力で除去する技術や、特許文献2のように規定の容器に入れて遠心除去する技術などが開示されている。しかしながら、この方式では、遠心回転数を増加させた場合、中空糸膜の真円度が低下しやすい事が確認されていた。
特開平08−164200号公報
特開平07−034314号公報
本発明の課題は、性能が高い利点があるウェットプロセスによって製造される中空糸膜束およびこれを内蔵してなる中空糸型液体処理装置の製造方法において、膜内の液体を除去した後の中空糸膜の変形、損傷がなく、真円度を70%以上に維持することが可能な中空糸膜束および中空糸型液体処理装置の製造方法を提供することにある。
1.膜内に液体を包含した中空糸膜束を仕切り板を有する容器に複数積載し、遠心回転により膜内の液体を除去することを特徴とする中空糸膜束の製造方法。
2.中空糸膜が非対称膜構造を有することを特徴とする前記1に記載の中空膜束の製造方法。
3.中空糸膜が疎水性高分子と親水性高分子とを含むことを特徴とする前記1または2に記載の中空膜束の製造方法。
4.疎水性高分子がポリスルホン系高分子であり、親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする前記3に記載の中空糸膜束の製造方法。
5.仕切り板を有する容器上に、その長手方向両端付近における横断面の幅方向長さが放射状に拡大しており、かつ長手方向中央部の横断面の幅方向長さaおよび長手方向両端部の横断面の幅方向長さbが下記条件を満たす複数の区画を有する薄層トレーを載せ、薄層トレー上に中空糸膜束を積載することを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
1.05≦b/a≦1.50
6.膜内の液体がグリセリン水溶液であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
7.仕切り板により仕切られる容器内の区画数が積載される中空糸膜束数以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
8.液体除去後の中空糸膜の真円度が70%以上であることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の中空糸膜束を内蔵してなることを特徴とする中空糸型液体処理装置の製造方法。
2.中空糸膜が非対称膜構造を有することを特徴とする前記1に記載の中空膜束の製造方法。
3.中空糸膜が疎水性高分子と親水性高分子とを含むことを特徴とする前記1または2に記載の中空膜束の製造方法。
4.疎水性高分子がポリスルホン系高分子であり、親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする前記3に記載の中空糸膜束の製造方法。
5.仕切り板を有する容器上に、その長手方向両端付近における横断面の幅方向長さが放射状に拡大しており、かつ長手方向中央部の横断面の幅方向長さaおよび長手方向両端部の横断面の幅方向長さbが下記条件を満たす複数の区画を有する薄層トレーを載せ、薄層トレー上に中空糸膜束を積載することを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
1.05≦b/a≦1.50
6.膜内の液体がグリセリン水溶液であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
7.仕切り板により仕切られる容器内の区画数が積載される中空糸膜束数以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
8.液体除去後の中空糸膜の真円度が70%以上であることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の中空糸膜束を内蔵してなることを特徴とする中空糸型液体処理装置の製造方法。
本発明により、中空糸膜を内蔵する中空糸型液体処理装置の製造方法において、膜内の液体を除去した後の中空糸膜の変形、損傷がなく、真円度が70%以上である中空糸膜束を内蔵してなる中空糸型液体処理装置の製造方法を提供することができる。
本発明に係る製造方法は、中空糸膜の真円度を低下させることなく中空糸膜束およびかかる中空糸膜束を複数内蔵してなる中空糸型液体処理装置を得るために有用なものであり、中空糸膜が非対称構造を有する場合、特に非対称膜構造を有する部分が60重量%以上である場合、中空糸膜の真円度が低下しやすいことから、本発明を用いたときの効果が大きいものである。かかる非対称膜構造を有する中空糸膜の素材としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン系高分子、ポリアミド6等のポリアミド系高分子、ポリイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
また、本発明に係る中空糸膜は疎水性高分子と親水性高分子とを含むことが好ましい。本発明における親水性高分子とは、水溶性高分子か、または水中で膨潤する高分子を意味する。ここでいう水溶性高分子とは、常圧下で飽和濃度以下の濃度で高分子を水の中に添加したとき、添加した量の全てが溶解し、均一な溶液を与える高分子のことをいう。高分子の溶解に必要な時間や温度は特に限定されない。本発明における疎水性とは水との親和性が低いという意味であり、疎水性高分子とは、上記の親水性高分子の定義から外れる高分子であれば特に限定されない。かかる疎水性高分子としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン系高分子、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどほとんどのエンジニアリングプラスチックを用いることができるが、製膜の容易さや、液体処理時の優れた分画性能の面から、下記示性式で表されるポリスルホン等のポリスルホン系高分子が特に好ましい。なお、ポリスルホンは下記基本骨格からなるが、ベンゼン環部分を修飾したものも用いることができる。
本発明に係る中空糸膜においては、上記疎水性高分子の占める割合が大半であるが、疎水性高分子のみ、たとえばポリスルホンのみで透析膜を作った場合、分子間凝集力が強く、ポアサイズのコントロールができないだけでなく、疎水性のために血液との親和性に乏しいことから、血小板などの血液成分が付着することがあり、膜性能の低下が起こることがある。
従って、親水性高分子をともに用いることで、上記問題の解決が可能である。具体的には、予め親水性高分子を造孔剤として混入し、脱離させてポアを形成後、残った親水性成分で同時にポリマー表面を親水化するなどして、これを中空糸膜として用いることができる。
親水性高分子としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(以下、PVP)などが用いられ、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。工業的にも比較的入手しやすく、臨床実績があり、生体適合性が高い点からPVPが好ましい。
以下、本発明について、本発明に係る中空糸膜束および中空糸型液体処理装置の製造方法の一例を、人工腎臓の例を挙げつつ説明する。たとえば、ポリスルホンとPVP等を溶媒に加熱溶解して得られる製膜原液を芯液と同時に2重スリット管構造の口金から同時に吐出させることで、中空糸膜を製造できる。その後、所定の水洗、および膜の乾燥を防ぐために保湿剤を含む液体を膜中に含浸させるための湿潤工程を経た後、中空糸膜を束として巻き取り、これを適当な長さにカットし、糸束を得る。保湿剤としては、工業的にも比較的入手しやすいグリセリンが好ましい。
この糸束を形成する中空糸膜から、膜内に含まれている保湿剤等の液体を除去する必要があるため、遠心回転装置を用いて中空糸膜内の余分な液体(この場合は、保湿剤)を除去する脱液工程を行う。この中空糸膜内の液体の除去を行うために、容器(脱液容器)に積載して遠心力を用いて行う方法が有用であるが、この方法を用いる場合、遠心力による応力が各々の中空糸膜に対して均一でなく、中空糸膜に掛かる応力が大きい部分が存在すると、中空糸膜が変形、損傷等し、真円度が70%未満に低下した中空糸膜が発生してしまう。すなわち、中空糸膜、特に非対称膜構造を有する中空糸膜の束を複数脱液容器に積載して脱液を行う場合、遠心回転時に隣接する束から縦横方向の外力を受けて容器及び中空糸に巻回したスペーサヤーン等に押し付けられ、糸が変形、損傷等する結果、真円度が低下しやすいことが本発明者らの検討により確認されている。そこで、本発明者らは、脱液容器内に仕切り板を設けることで、複数の中空糸膜束が互いに接触する機会を低減させ、かかる変形等を防止することが可能となると考えた。ここで、本発明における仕切り板とは、主に板状の物体であり、中空糸膜束同士を接触させないようにするものであればよく、網目を有する物体であってもよい。図1、図2には仕切り板を設けた脱液容器の一例を示している。ここでは、遠心回転軸の軸方向と平行方向および垂直方向に複数の仕切り板が設けられている。容器内の仕切り板の数としては、仕切り板による区画数が脱液操作の1バッチ当たりに積載される中空糸膜束の数と同一またはそれ以上であると、中空糸膜束が互いに外力を及ぼす機会がなくなるため、好ましい。かかる脱液容器に複数の中空糸膜束をセットし、好ましくは糸束に掛かる遠心力0.46kgf/cm2以下、またさらに好ましくは0.35kgf/cm2以下で脱液時間8分、所定遠心力に達するまでの加速時間1.5分で遠心回転することが中空糸膜束の変形等を防止する上で好ましい。
仕切り板の材質としては、ほとんどのエンジニアリングプラスチックを用いることができ、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよいが、取り扱い性、強度面の優位さから単独ではポリ塩化ビニルが特に好ましい。また、その上にポリエチレン製の薄層トレー等を設置すると、交換・消毒作業が容易となるため好ましい。
当該薄層トレーは、図4に示すように仕切り板に被せて用いることが好ましい。従って、図1、2に示す仕切り板を用いる場合、仕切り板にフィットする形状を有することが好ましい。また、当該薄層トレーは、複数の中空糸膜束を載せるための複数の区画を有するものであり、かかる各区画は、中空糸膜を載せるのに十分なスペースを有することがよい。すなわち、中空糸膜束の通常の形状である縦長の形状を有し、その長手方向、横断面方向の長さがともに中空糸膜の長さより長いことがよい。なお、区画ごとに分割された複数のトレーを「薄層トレー」として用いることも可能である。さらに、かかる区画は、長手方向両端付近において、その横断面の幅方向長さが放射状に拡大していることにより、遠心力による中空糸膜の損傷(へこみ)を緩和することが可能となる。これは、中空糸膜の長手方向両端付近において、遠心力による最も強い負荷が生じるためである。さらには、かかる区画の長手方向中央部の横断面の幅方向長さをa、長手方向両端部の横断面の幅方向長さをbとした場合、本発明においては、b/aが1.05以上であることが重要であり、1.10以上であることが好ましい。この範囲を下回る場合、中空糸膜の長手方向両端付近において、遠心力による負荷を減少させることができない。ただし、b/aが大きすぎる場合、中空糸膜束が固定し難くなり、遠心力により、中空糸膜が変形することがある。したがって、b/aは1.50以下であることがよく、1.20以下であることが好ましい。また、図5に示すように、長手方向両端付近において、その高さを低くすることで、装置内に手を入れることが容易となるため、取り扱い性が向上する。
また、薄層トレーの層の厚みは、取り扱い性・耐久性の両面から、下限としては0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、上限としては0.6mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
本発明においては、上述のように中空糸膜内の液体除去後の中空糸真円度が70%以上であることが好ましく、真円度が70%未満であると、人工腎臓等に用いた場合、血液等の処理液体の流通が阻害されること等がある。しかしながら、上記方式により、中空糸膜内の液体除去後の中空糸真円度が70%以上である中空糸型液体処理装置の安定した製造方法を提供することができる。本発明においては、中空糸膜の真円度は以下のように測定を行う。
所定の長さにカットされた遠心脱液後の糸束からランダムに中空糸膜を1本取り出す。この中空糸膜に対して、拡大顕微鏡を用い、側面を長手方向に観察する。遠心力による中空糸膜の損傷(へこみ)が確認された箇所、および正常部の任意の1箇所について断面径の寸法を測定し、以下の式により計算を行って真円度を求める。
真円度(%)=遠心力による中空糸膜損傷部(へこみ部)直径 / 正常部直径×100
上記各直径の測定および上式による計算を、中空糸膜1本あたり各1回行う。真円度が70%未満となった場合、「損傷した中空糸膜」とする。この測定を中空糸膜20本以上に対して繰り返し、「損傷した中空糸膜」の発生率を求める。
上記各直径の測定および上式による計算を、中空糸膜1本あたり各1回行う。真円度が70%未満となった場合、「損傷した中空糸膜」とする。この測定を中空糸膜20本以上に対して繰り返し、「損傷した中空糸膜」の発生率を求める。
脱液された後の糸束を、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等から選ばれるプラスチック等からなるケースに挿入し、ポッティング材によって端部を封止し、所定の硬度に達するまで放置して硬化させ、両端におけるポッティング材によって塞がれた部分を切断し開口部を形成してモジュール化する。さらに、血液等の処理液体の流入口または流出口を有する上記ケースと同じ材質等からなるヘッダーを超音波用着法等の方法を用いて両端に取り付けることにより、中空糸型液体処理装置を製造することができる。
上記の様にして製造された中空糸型液体処理装置は通常、滅菌のために放射線(γ線等)照射されるが、照射前後では構造の変化は起こらない。装置内に水を充填してγ線照射した場合、ポリスルホン、PVPの架橋が主に起こるため有機物の溶出が抑えられる。放射線がγ線の場合、照射量は、人工腎臓の場合、通常10〜50KGy、好ましくは10〜30KGyである。
これらの方法で作成された中空糸膜は疎水性高分子と親水性高分子のネットワークによって、その尿毒物質の拡散、有用蛋白であるアルブミンの阻止などの血液処理膜としての性能を発揮し、有機物の溶出が少ないという特徴を有する。また、犬による残血評価によってもその有効性が確認されている。
以上の通り、本発明の製造方法により得られた中空糸膜は、中空糸膜の真円度を70%以上に保つことによって血液凝固系の活性化を抑制し、透析器としての性能を十分に生かすことができる。
本発明の製造方法による中空糸型液体処理装置は透析器としての人工腎臓や、透析時に使用する透析液中のエンドトキシン除去フィルター、および血漿分離膜、体外循環吸着用担体などの血液処理用途や浄水器などの水処理用途にも適用可能である。
次に実施例に基づき本発明を説明する。
用いた測定法は以下の通りである。
(1)中空糸膜の真円度および損傷した中空糸膜の発生率の測定
各実施例、比較例における所定の長さにカットされた脱液後の糸束からランダムに中空糸膜を1本取り出す。この中空糸膜に対して、拡大顕微鏡(三菱化成製マイクロウォッチャーVS−20F)を用い、倍率150倍にて側面を長手方向に観察する。遠心力による中空糸膜の損傷(へこみ)が確認された箇所、および正常部の任意の1箇所に対して断面径の寸法を測定し、以下の式により計算を行って真円度を求める。
用いた測定法は以下の通りである。
(1)中空糸膜の真円度および損傷した中空糸膜の発生率の測定
各実施例、比較例における所定の長さにカットされた脱液後の糸束からランダムに中空糸膜を1本取り出す。この中空糸膜に対して、拡大顕微鏡(三菱化成製マイクロウォッチャーVS−20F)を用い、倍率150倍にて側面を長手方向に観察する。遠心力による中空糸膜の損傷(へこみ)が確認された箇所、および正常部の任意の1箇所に対して断面径の寸法を測定し、以下の式により計算を行って真円度を求める。
真円度(%)=遠心力による中空糸膜損傷部(へこみ部)直径 / 正常部直径×100
上記各直径の測定および上式による計算を、中空糸膜1本あたり各1回行う。各中空糸膜について、真円度が70%未満となった場合、「損傷した中空糸膜」とした。
この測定を中空糸膜20本以上に対して繰り返し、「損傷した中空糸膜」の発生率をカウントした。
実施例1
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、PVP(BASF K90)3重量部、PVP(BASF K30)6重量部をジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、加熱溶解し、製膜原液とした。原液粘度は30℃で70ポイズであった。この原液を外側の内径0.3mm、内側の内径0.2mmの2重スリット管から芯液としてジメチルアセトアミド65重量%、水35重量%からなる溶液を吐出させ中空糸膜を製膜した。水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.6m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数13000本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.6m2とした。)。
上記各直径の測定および上式による計算を、中空糸膜1本あたり各1回行う。各中空糸膜について、真円度が70%未満となった場合、「損傷した中空糸膜」とした。
この測定を中空糸膜20本以上に対して繰り返し、「損傷した中空糸膜」の発生率をカウントした。
実施例1
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、PVP(BASF K90)3重量部、PVP(BASF K30)6重量部をジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、加熱溶解し、製膜原液とした。原液粘度は30℃で70ポイズであった。この原液を外側の内径0.3mm、内側の内径0.2mmの2重スリット管から芯液としてジメチルアセトアミド65重量%、水35重量%からなる溶液を吐出させ中空糸膜を製膜した。水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.6m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数13000本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.6m2とした。)。
この糸束を形成する中空糸膜に対し、中空糸膜内の余分なグリセリン水溶液を除去するため、脱液を実施した。1回の脱液は糸束10束を対象とし、図3に示す束数と区画数が同じとなるよう仕切り板を設けた長方体状の脱液容器に、1区画に1束ずつ積載した。仕切り板の方向は、遠心回転軸の軸方向と平行方向および垂直方向とした。各区画の幅・長さは全て等しくした。その後、回転数1800rpm、遠心力0.35kgf/cm2以下、脱液時間8分、所定回転数に達するまでの加速時間1.5分で遠心回転させて脱液を実施した。
この脱液後の中空糸膜20本について側面を観察したところ、脱液によって損傷した中空糸膜の数は0本で、発生率は0%となった。また、脱液後の各中空糸膜の真円度を70%以上に維持できた。
実施例2
実施例1と同様の条件で製膜された中空糸膜を用い、水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.0m2および1.8m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数8200本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.0m2とした。また中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数14700本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.8m2とした)。
実施例2
実施例1と同様の条件で製膜された中空糸膜を用い、水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.0m2および1.8m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数8200本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.0m2とした。また中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数14700本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.8m2とした)。
この糸束を形成する中空糸膜に対し、中空糸膜内の余分なグリセリン水溶液を除去するため、実施例1と同様の条件で脱液を実施した。
この脱液後の中空糸膜の側面を、有効膜面積1.0m2の中空糸束および1.8m2の中空糸束からそれぞれ20本ずつ採取して観察したところ、脱液によって損傷した中空糸膜の数はそれぞれ0本で、発生率はそれぞれ0%となった。また、脱液後の各中空糸膜の真円度を70%以上に維持できた。
実施例3
実施例1と同様の条件で製膜された中空糸膜を用い、水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.6m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数13000本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.6m2とした。)。
実施例3
実施例1と同様の条件で製膜された中空糸膜を用い、水洗後、湿潤状態を保つためグリセリン68容量%水溶液を含浸させた多数の中空糸膜を有効膜面積1.6m2になるように巻き取り、所定の長さにカットして脱液前の糸束を得た(中空糸膜内径200μm、中空糸膜本数13000本、中空糸膜有効長195mmとし、膜面積1.6m2とした。)。
この糸束を形成する中空糸膜に対し、中空糸膜内の余分なグリセリン水溶液を除去するため、脱液を実施した。1回の脱液は糸束10束を対象とし、図3に示す束数と区画数が同じとなるよう仕切り板を設けた長方体状の脱液容器に、当該仕切り板にフィットする形状を有する、図4に示す薄層トレー(各区画は、長手方向両端付近においてその横断面の幅方向長さが放射状に拡大しており、その長手方向長さ260mm、横断面の幅方向長さ340mmであり、ポリエチレン製)を被せて設置し、その1区画に1束ずつの中空糸膜束を積載した。仕切り板の方向は、遠心回転軸の軸方向と平行方向および垂直方向とした。各区画の幅・長さは全て等しくした。その後、回転数1800rpm、遠心力0.35kgf/cm2以下、脱液時間8分、所定回転数に達するまでの加速時間1.5分で遠心回転させて脱液を実施した。
この脱液後の中空糸膜20本について側面を観察したところ、脱液によって損傷した中空糸膜の数は0本で、発生率は0%となった。また、脱液後の各中空糸膜の真円度を70%以上に維持できた。
比較例1
実施例1と同様の条件で有効膜面積1.6m2の脱液前の糸束を得た。この糸束を形成する中空糸膜に対し、中空糸膜内の余分なグリセリン水溶液を除去するため、脱液を実施した。脱液は仕切り板の無い点以外は実施例1と同じ脱液容器に積載し、回転数1800rpm、脱液時間8分、所定回転数に達するまでの加速時間1.5分で遠心回転させて脱液を実施した。
比較例1
実施例1と同様の条件で有効膜面積1.6m2の脱液前の糸束を得た。この糸束を形成する中空糸膜に対し、中空糸膜内の余分なグリセリン水溶液を除去するため、脱液を実施した。脱液は仕切り板の無い点以外は実施例1と同じ脱液容器に積載し、回転数1800rpm、脱液時間8分、所定回転数に達するまでの加速時間1.5分で遠心回転させて脱液を実施した。
この脱液後の中空糸膜32本についてその側面を観察したところ、脱液によって損傷した中空糸膜の数は11本であり、発生率は32%となった。すなわち、中空糸膜に掛かる応力を均一に出来なかったために中空糸膜の変形が発生し、脱液後の真円度が70%未満の中空糸膜が発生した。
Claims (9)
- 膜内に液体を包含した中空糸膜束を仕切り板を有する容器に複数積載し、遠心回転により該膜内の液体を除去することを特徴とする中空糸膜束の製造方法。
- 該中空糸膜が非対称膜構造を有することを特徴とする請求項1に記載の中空膜束の製造方法。
- 該中空糸膜が疎水性高分子と親水性高分子とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の中空膜束の製造方法。
- 該疎水性高分子がポリスルホン系高分子であり、該親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項3に記載の中空糸膜束の製造方法。
- 該仕切り板を有する容器上に、その長手方向両端付近における横断面の幅方向長さが放射状に拡大しており、かつ長手方向中央部の横断面の幅方向長さaおよび長手方向両端部の横断面の幅方向長さbが下記条件を満たす複数の区画を有する薄層トレーを載せ、該薄層トレー上に該中空糸膜束を積載することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
1.05≦b/a≦1.50 - 該膜内の液体がグリセリン水溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
- 該仕切り板により仕切られる容器内の区画数が積載される中空糸膜束数以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
- 該液体除去後の中空糸膜の真円度が70%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜束の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の中空糸膜束を内蔵してなることを特徴とする中空糸型液体処理装置の製造方法。
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