JP2008164587A - 温度センサ付共振タグ - Google Patents

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Abstract

【課題】 不揮発メモリを必要とせず、簡便に設定温度を選択することができる低コストかつ不可逆的な温度履歴センサを提供する。
【解決手段】 少なくともコンデンサと、コイルと、からなる共振回路を有する温度履歴センサであって、
前記温度履歴センサが、予め定められた前記温度履歴センサの設定温度を表示する表示部を有しており、
前記コンデンサが前記コンデンサの電極間に少なくとも熱溶融材料を有し、前記熱溶融材料の融点が前記設定温度付近にあることを特徴とする温度履歴センサ。
【選択図】 図4

Description

本発明は、無線タグの新たな応用として、被測定物の温度履歴を簡単に確認することができる低コストな温度履歴表示共振タグを提供することを目的とする。
特許文献1には、複数の温度スイッチと、温度スイッチのONまたはOFFによって容量素子の値が切り替わるLC共振回路を有する温度履歴センサが開示されている。
また、特許文献2には、温度変化に対応して誘電率が変化する材料を用いたコンデンサからなる共振回路を有する温度センサ付きタグが記載されている。
特開2004−245607号公報 特開2004−144683号公報
特許文献1に記載の温度履歴センサは段階的かつ不可逆的に温度履歴を残すことができるものの、市販の温度スイッチを用いたものであるため、より簡便に設定温度を選択することができる温度履歴センサが求められてきた。
また、特許文献2に記載の温度センサ付きタグでは、温度変化に対する誘電率の変化は可逆的なものであるため、センシングされた温度変化履歴はタグに備えられた不揮発メモリに格納する必要があった。
本発明は、
少なくともコンデンサと、コイルと、からなる共振回路を有する温度履歴センサであって、
前記温度履歴センサが、予め定められた前記温度履歴センサの設定温度を表示する表示部を有しており、
前記コンデンサが前記コンデンサの電極間に少なくとも熱溶融材料を有し、前記熱溶融材料の融点が前記設定温度付近にあることを特徴とする温度履歴センサである。
前記設定温度付近とは設定温度より0.5℃低い温度から設定温度までの範囲であることが好ましい。
前記表示部が、電気的方法、磁気的方法、光学的方法もしくは印字による方法で前記設定温度を表示する表示部であることが好ましい。
前記熱溶融材料の少なくとも一部が、熱によって前記コンデンサ電極間から流出することにより、前記共振回路の共振特性が変化することが好ましい。
また、別の本発明は、少なくともコンデンサおよびコイルからなる共振回路を有する温度履歴センサであって、前記温度履歴センサが予め定められた前記温度履歴センサの設定温度を表示する表示部と熱溶融材料とを有しており、前記熱溶融材料の融点が前記設定温度付近にあり、熱によって前記熱溶融材料の少なくとも一部が溶融して前記コンデンサ電極間に流入することで前記コンデンサの実効誘電率が変化することを特徴とする温度履歴センサである。
前記コンデンサが前記コンデンサ電極間に多孔性誘電体を有することが好ましい。
前記コンデンサの電極の近傍に前記熱溶融材料を有することが好ましい。
前記コンデンサ電極間に前記熱溶融材料を供給するための流路を有することが好ましい。
また、別の本発明は、少なくともコンデンサおよびコイルからなる共振回路を有する温度履歴センサであって、前記温度履歴センサが前記熱溶融材料を有し、熱によって前記熱溶融材料の少なくとも一部が溶融して前記コンデンサ電極間に流入することで前記コンデンサの実効誘電率が変化することを特徴とする温度履歴センサである。
本発明によれば、不揮発メモリを必要とせず、簡便に設定温度を選択することができる低コストかつ不可逆的な温度履歴センサを提供することができる。
以下、図を参照しながら本発明の実施形態の例について説明する。なお、参照する各図面において、説明を省略している部材に付された符号は、後述する本発明の説明に用いる図面に付された符号と同様の部材を示すものである。
図1〜3にコイルとコンデンサからなる温度センサ付タグの模式図の例を示す。ここで、Lはコイル、C〜Cはコンデンサを示す。
図1はコンデンサ1つとコイル1つが接続された等価回路、図2は、コンデンサ3つとコイル1つが並列接続された等価回路、図3ではコンデンサ3つとコイル1つが直列接続された等価回路を示す。
図2および図3のように、タグがコンデンサを2つ以上有している場合、段階的な温度履歴を示すタグとすることが可能である。また、各々のコンデンサの静電容量が異なるタグを複数組み合わせることにより、段階的に特定温度の履歴を示すことも可能である。なお、回路のキャパシタンス成分もしくはインダクタンスの変化によって温度履歴を測定するため、コンデンサの接続方法は直列接続であっても並列接続であっても段階的な温度履歴を残すことは可能である。
以下、各実施形態において、図1〜図3に示す共振タグをより詳細に説明をする。
(第1の実施形態)
本実施形態は、熱によって熱溶融材料の少なくとも一部が溶融してコンデンサ電極間に流入することでコンデンサの実効誘電率が変化する温度履歴センサに関するものである。
図4に本実施形態の温度センサ付きタグの一例を示す。図4はタグの平面図であり、図4(a)が表面図、図4(b)が裏面図である。また、図5(a)は図4(a)においてA−A’面で切断した断面図であり、図5(b)は図4(a)においてα−α’面で切断した断面図である。
本実施形態の温度センサ付きタグは、絶縁性基板1と、該絶縁性基板1の上に形成されたコンデンサ下部電極パターン2と、コイルアンテナ部分に対応する導電配線パターン3とを有する。また、導電配線パターン3の両端には、上部電極の一端と接続され、上部電極の一端を支持する機能を有するパッド部4およびビアホール内の導電部材に接続するためのパッド部5を有する。電極パターン2はビアホール15内の導電部材によって絶縁性基板1の裏面に設けられた配線(裏面配線)の一端のパッド部6と電気的に接続されている。この裏面配線の他端のパッド部7は、ビアホール15内の導電部材によってパッド部5と電気的に接続されている。すなわち、電極パターン2とパッド部5とは電気的に接続されている。
コンデンサの下部電極パターン2の上には誘電材料8が設けられ、さらに誘電材料8の上にコンデンサの上部電極9が設けられている。本実施形態では、誘電材料8として空気を用いている。そのため、コンデンサ電極間の空隙を保持するスペーサー14が設けられている。なお、誘電材料8としては、後述する熱溶融材料の融液が流入する空間を有しているものであれば、いかなるものでも用いることができる。例としては、多孔質の固体誘電材料が挙げられる。誘電材料として固体などの一定の形を保っている材料を用いる場合には、スペーサー14は無くてもよい。
また、本実施形態のタグは、電極間に誘電材料を有しており、さらに、誘電材料を外部に露出させるための開口部10も有している。
なお、この開口部の位置は、後述する熱溶融材料の配置される位置との関係で適宜定めることができる。例えば、熱溶融材料を上部電極9の上面に配置する場合には上部電極を貫通するように開口部を設けることも可能である。
この開口部10の近傍には、融点が各々異なる熱溶融材料11、12、13が設けられている。なお、本願特許請求の範囲および本願明細書において、「近傍」とは1mm以内の距離のことである。タグの置かれた環境の温度が、予め定められた前記温度履歴センサの設定温度に達すると、熱溶融材料11〜13のうち、融点の低いものから順に溶融して融液になる。そして、本例では、これらの融液はスペーサーと上下電極ではさまれた空隙へ流入する。これに伴い、コンデンサを形成している誘電層の実効誘電率が変化し、タグの共振特性(共振回路のキャパシタンスやインダクタンス)が変化する。なお、本実施形態では、誘電材料として空気を用いているが、例えば誘電材料として細孔を有する固体誘電体を用いた場合には、その細孔内に融液が流入することによりタグの共振特性が変化する。
本実施形態において、誘電材料8は、融液が流入する空間を有している必要がある。厳密に言えば、空気自体を誘電材料としている場合には、その一部が融液で置換される。また、誘電材料が細孔などの空間を有する固体誘電体である場合には、細孔などの空間中の空気の少なくとも一部が融液で置換される。なお、後者の場合であっても、空気も誘電材料の一部と考えることもできる。いずれにせよ、空間は必要となる。したがって、誘電材料は、細孔を有する固体材料(固体誘電体材料)もしくは空気であることが好ましい。そのような固体材料としては、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどのセラミクス材料や、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂などの樹脂材料が挙げられる。
絶縁性基板1としては、樹脂基板、ガラス基板などを使用することができる。これらのなかでも樹脂基板は低コストかつ軽量であるため好ましい。樹脂基板の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂などの通常、電子部品用基板として工業的に使用されるものが挙げられる。これらの中でも、温度センサとしての機能上、予期せぬ高温状態になる可能性があることを考慮すると、ポリイミドなど耐熱性のある樹脂を用いることが好ましい。
導電配線パターン3、下部電極パターン2、上部電極9、パッド部4〜7、ビアホール15内に設けられる導電部材の材料は導電性を有するものであれば良く、金、銀、銅などの貴金属やポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールに代表される導電性高分子などを用いることができる。これら導電部材は、メッキによる方法、あるいは、ナノインプリント法やスクリーン印刷法などの印刷法などにより形成することができる。
熱溶融材料11〜13は、予め定められた前記温度履歴センサの設定温度付近に融点を有する材料である。ここで、設定温度付近とは、設定温度より0.5℃低い温度から設定温度までの範囲であることが好ましく、言い換えれば、設定温度−0.5℃以上設定温度以下の範囲であることが好ましい。例えば、設定温度が、A℃、B℃、C℃である温度履歴センサの場合、(A℃−0.5℃)以上A℃以下、(B℃−0.5℃)以上B℃以下、(C℃−0.5℃)以上C℃以下に各々融点を有する熱溶融材料をタグが有する。
温度履歴センサが有する設定温度が1つである場合、温度履歴センサは、センサが経験した温度が設定温度以上の温度を経験したか否かの情報を得ることができる。例えば、設定温度がA℃であり、熱溶融材料の融点がA℃である場合、温度履歴センサの測定結果から、温度履歴センサが経験した温度の最高値が、A℃未満もしくはA℃以上のいずれであるかを知ることができる。また、温度履歴センサが複数の設定温度を有する場合、温度履歴センサが経験した温度の最高値が、最も低い設定温度未満、最も低い設定温度以上最も高い設定温度未満、最も高い設定温度以上のいずれであるかを知ることができる。更に設定温度間の温度であった場合、複数の設定温度のうちいずれの設定温度間であるかを知ることができる。例えば、設定温度が、A℃、B℃、C℃であり、熱溶融材料の融点がA℃、B℃、C℃であり、A℃<B℃<C℃である場合、温度履歴センサが経験した温度が、A℃未満、A℃以上B℃未満、B℃以上C℃未満、C℃以上、のいずれであるかの情報を得ることができる。
前記温度履歴センサの予め定められた設定温度は、温度履歴センサが有する表示部17に表示される。温度履歴センサが複数の設定温度を有する場合は、全ての設定温度が表示される。設定温度の表示方法は、何らかの操作によって設定温度を表示するような間接的な表示方法でも良く、印字による方法のように何らかの操作を必要とせず直接的に表示する方法であっても良い。間接的に設定温度を表示する例としては、前記温度履歴センサが有する記憶デバイスに設定温度に関する情報を付与し、その情報を電気的方法、磁気的方法もしくは光学的方法を用いて読み出し、表示する方法などが挙げられる。また、タグの種類を示すもの、例えば型番号をタグに付与し、型番号と設定温度とを対比させた別の情報と前記型番号とを照合することによって、型番号から設定温度を認識するような場合も表示部に設定温度に関する情報を付与する場合に含まれるものとする。また、タグが別の共振回路を有しており、該共振回路の共振特性がタグの型番号を示し、該型番号によって前述したように設定温度を表示させることも可能である。なお、バーコードや2次元バーコードなどの一般的に紙を基材とするデバイスも記憶デバイスに含まれるものとする。印字による方法は設定温度を目視によって確認できるよう文字もしくは記号などにより印字する方法である。例えば、温度履歴センサが有する設定温度がA℃、B℃、C℃である場合、設定温度A−B−Cのように表記することができる。これらの表示部は温度履歴センサ内にあっても良く、前記温度履歴センサの設定温度を示すものだと認識可能であれば、温度履歴センサとは別に存在していても良い。
また、表示部は設定温度に加えて設定温度以外の情報を表示することも可能である。
熱溶融材料11〜13としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン系ワックスなどの石油ワックスや合成ワックス、あるいはポリスチレンやメタクリル樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、さらには動物性油脂などの天然油脂を用いることができる。ここで、熱溶融材料とは熱によって溶融し、固体状態から液体状態へと変化するもののことである。
また、スペーサー14は空隙を形成するのに適した厚みを有するものであれば良く、例えば、樹脂フィルムや粘着フィルムなどを用いることができる。なお、スペーサーの厚みは、必要とするコンデンサの静電容量の大きさによって調整する。
次にタグの製造方法および測定方法について具体例を用いて詳細に説明する。
ポリイミド基板を絶縁性基板1として用い、銅からなる導電配線パターン3やパッド部およびビアホール15をフォトリソプロセスとレーザー穿孔により前記絶縁性基板1上に形成する。また、フィルム型ホットメルト接着剤(接着温度140〜160℃)を下部電極2に並置して乾燥し、膜厚75μmのスペーサーを形成する。この場合、誘電材料は空気として、スペーサー間の空隙をそのまま利用する。別途、金属加工して作成しておいたコンデンサ上部電極9を下部電極2にスペーサーを介して固定し共振タグとする。この共振タグに熱溶融材料11として融点が50℃の120P、熱溶融材料12として融点が60℃の135P、熱溶融材料13として融点が70℃の155Pのパラフィンワックス片を各々3つの開口部10の近傍にセットし、50℃、60℃、70℃を設定温度とする温度履歴センサとする。なお、設定温度は温度履歴センサが有するバーコード17に記録されており、バーコードの情報を表示させることにより、設定温度を確認することができる。
この温度履歴センサをホットプレート上にのせ、温度を変化させて温度履歴センサが有する共振タグの共振特性を測定する。なお、共振特性はタグがホットプレート加熱面と十分な熱平衡状態になってから測定を行うため、所定温度まで加熱し、1時間保持した後、室温まで冷却してから測定を行う。
図6に、ホットプレートの温度を25℃(室温、初期状態)、52℃、62℃、72℃に設定した場合におけるタグの共振特性の測定結果を示す。タグの共振特性の評価はヒューレットパッカード(株)製ネットワークアナライザー(商品名 HP8753E)を用いて行うことができる。ここで、共振特性とは、タグの有する共振ピークの共振周波数、あるいはピークに付随する振幅とQ値のことであり、実用上は、識別が容易である共振周波数を共振特性の評価に用いることが好ましい。
それぞれの温度における共振周波数は25℃で75.6MHz、52℃で65.5MHz、62℃で58.5MHz、72℃で53.4MHzとなり、加熱温度を高くするほど、共振周波数は低周波側へとシフトする。このようにして各温度における共振周波数を基準値とすることで、タグの周波数からタグが経験した未知の温度を算出することが可能となる。すなわち、共振周波数が75.6MHzであればタグが経験した温度は50℃未満、65.5MHzであれば50℃以上60℃未満、58.5MHzであれば60℃以上70℃未満、70℃以上であれば53.4MHzということがわかる。このような基準値の情報は、タグの設定温度に関する情報を直接的もしくは間接的に表示する場合と同様の手法でタグに付与するものとする。
また、上部電極の開口部に加熱前にセットしたパラフィンワックスが、それぞれの温度まで加熱した後には開口部10の内部に広がっている様子を観察することができる。これは、溶融材料であるパラフィンワックスが融点に達して溶融することにより、コンデンサ電極間の空隙部に毛管力で流入するものだと考えられる。そして、空隙部にパラフィンワックスが流入することにより、実効誘電率が増加し、共振ピークが低周波数側へシフトする。
また、前述したようにパラフィンワックスの溶融は目視でも確認することができるため、前述した共振周波数によって検出できる温度の履歴を目視で簡単に確認することも可能である。なお、溶融液の流入を原理とするので、ユーザーが詳細な温度情報ではなく、加熱による融解現象で固液転移した事実の検出で十分な場合にも同様の構成を用いて目視および周波数シフトで簡便に知ることができる。また、2種類以上の誘電体を混合することなどにより、測定できる温度履歴の範囲を微調整することも可能であるので、既に決まった温度でしか動作しない温度ヒューズを組み込むよりも汎用性が高い。
(第2の実施形態)
本実施形態は、コンデンサ間に少なくとも熱溶融材料を有し、該熱溶融材料が熱によってコンデンサ電極間から流出することによってコンデンサの実行誘電率が変化する温度履歴センサに関するものである。
本実施形態の温度履歴センサを図7および図8に示す。図7はタグの平面図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図を示している。また、図8(a)が図7(a)においてB−B’面で切断した断面図であり、図8(b)が遮蔽材16を上から見た図であり、図8(c)がタグを図7(a)のβ−β’面で切断した断面図である。
熱溶融材料11〜13を開口部近傍に設置するのではなく、コンデンサ電極間に誘電材料として設置すること、溶融によって電極間から溶け出した熱溶融材料を吸収するための普通紙の紙片(遮蔽材16)を開口部付近に設置すること以外は第1の実施形態と同様にしてタグを形成する。したがって、本実施形態において、誘電材料は第1の実施形態で熱溶融材料として挙げた材料などを用いることができる。なお、図8(c)では上部電極9の上に紙片を設置しているが、紙片は開口部付近に設置できれば、上記位置以外の位置に設置しても良い。例えば、図8(d)に示すように熱溶融材料が溶融して流れる方向に普通紙を設置することもできる。
第1の実施形態と同様の方法で温度を変化させ、それぞれの温度における共振タグの共振特性を測定する。温度を変化させることにより溶融する熱溶融材料はコンデンサ電極間から流出し、開口部近傍に設置した紙片に吸収される。これにより温度履歴センサが有する共振タグの共振特性が変化する。
図9に、ホットプレートの温度を25℃(室温、初期状態)、52℃、62℃、72℃に設定した場合におけるタグの共振特性の測定結果を示す。
第1の実施形態とは逆に高い温度を経験するほど共振周波数は高周波数側へとシフトする。これは、温度が上がるほど熱溶融材料が流出し、コンデンサの実行誘電率小さくなることによるものだと考えられる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態として、図10および図11に示す共振タグを形成する。図10がタグの平面図であり、(a)が表面図、(b)が裏面図を示している。また、図11が図10(a)においてC−C’面で切断した断面図である。絶縁性基板1にはポリイミド基板、導電配線パターン3には銅パターン、誘電材料8には酸化チタンペーストからなる多孔質酸化チタン膜(膜厚10μm)を用いる。第1の実施形態と同様、絶縁性基板1上に、導電配線パターン3および下部電極2、パッド部4、誘電膜8、開口部10を有する上部電極9を形成する。また、絶縁性基板1にパッド部5〜7を形成する。その後下部電極上に多孔質誘電膜を形成する。なお、開口部10には、熱溶融材料11〜13を設置する。
誘電材料8である多孔質誘電膜は、以下のように作成する。まず、酸化チタンを水に投入し、硝酸を添加した混合液を遊星ボールミルにかけて、酸化チタンの分散液を調製する。この酸化チタンの分散液に、塗布ムラを改善するためにポリエチレングリコール(PEG、分子量20000)を添加し、酸化チタンペーストを調製する。この酸化チタンペーストを下部電極2の上にドクターブレード法で塗布し、電気炉にて250℃で加熱乾燥して酸化チタン膜とすることで得る。この際の酸化チタン膜の膜厚を探針式膜厚計で測定すると10μmとなる。なお、本発明において、多孔性誘電体とは多数の細孔を有する誘電体のことであり、空隙率が30%以上のものとする。このような多孔性誘電体としては、例えば、前述した酸化チタン以外にも、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、などが挙げられる。なお、誘電材料8に目的とする共振周波数に適した誘電率を有する多孔質誘電膜を用いることで、目的の共振周波数を有する共振タグを得ることができる。また、コンデンサの上部電極9は、開口部10を有するパターンに銀ペーストをスクリーン印刷した後、200℃で熱処理を行うことにより形成する。次に、熱溶融材料として融点がそれぞれ50℃の120P、60℃の135P、70℃の155Pのパラフィンワックス片を3つの開口部10に各々セットし、上からカプトンテープ(図示せず)で固定し、共振タグを得る。なお、第1の実施形態と同様、50℃、60℃、70℃が本実施形態の設定温度であり、該設定温度は図10に示すように50、60、70として、温度履歴センサが有する設定温度印字部に記載されている。
この共振タグをホットプレート上にのせ、52℃、62℃、72℃と順に温度を変化させて、それぞれの温度における共振タグの共振特性を測定する。なお、共振特性はタグがホットプレート加熱面と十分な熱平衡状態になってから測定を行うために、所定温度まで加熱し、1時間保持した後、室温まで冷却して測定を行う。
図12に、温度を変化させた際の共振特性の測定結果を示す。共振周波数は室温25℃の初期状態で15.8MHz、52℃で14.6MHz、62℃で13.6MHz、72℃で12.8MHzとなる。したがって、実施の形態1の場合と同様、より高温の環境を経験したタグほど共振周波数が低周波側にシフトしていることを確認できる。また、加熱前に上部電極9の開口部10にセットしたパラフィンワックスは、3つとも溶融して広がっている様子を観察することができる。これより、加熱温度が各パラフィンワックスの融点に達することで、パラフィンワックスが熱溶融し、開口部から酸化チタン多孔質膜に流入することがわかる。そして、酸化チタン多孔膜にパラフィンワックスが流入することにより、実効誘電率が増加し、共振周波数が低周波側へシフトする。
また、第1の実施の形態と同様に、これらの測定値を基準値として、タグが経験した未知の温度を測定することが可能である。
誘電膜には、親油化表面処理を行った多孔質酸化チタン膜を用いても良い。多孔質酸化チタン膜に親油化処理を行うことにより、より速やかに、熱溶融したパラフィンが酸化チタン多孔質膜に流入することができるため、好ましい。このような親油化処理の例としては、多孔質酸化チタン膜を有するタグの開口部にシランカップリング剤溶液を滴下し、水洗いをおこなった後、110℃で加熱して水を除去することで、多孔質酸化チタン膜の親油化を行う方法などが挙げられる。
(第4の実施形態)
誘電材料8としてポリスチレン膜を用いたこと、および上部電極として銅箔を切り出してポリスチレン膜に貼り付けたこと以外は第3の実施形態と同様にして作製する。
ポリスチレン膜は、スチレンモノマーから懸濁重合法により合成したポリスチレン微粒子を塗布し、70℃で加熱乾燥することで製膜する。多孔質ポリスチレン膜は探針式膜厚計による測定により10μmであることを確認する。また、コンデンサ上部電極9は、開口部をもったパターンで切り出された銅箔をポリスチレン膜上に貼り付けることで作製する。熱溶融材料には、融点がそれぞれ50℃の120P、60℃の135P、70℃の155Pのパラフィンワックス片を3つの開口部にセットし、上からカプトンテープで固定し、共振タグとする。その後、加熱測定の条件を第1の実施形態と同様として測定を行う。
図13にホットプレート温度を室温から52℃、62℃、72℃と上昇させた場合の共振特性の測定結果を示す。より高温の履歴を経験するほど、共振周波数は室温25℃の初期状態33.6MHzから、31.0MHz、28.9MHz、27.2MHzと低周波側にシフトする。本形態においても、第1の実施形態と同様、得られた温度と共振周波数の関係を基準値とすることで、タグが経験した未知の温度を共振周波数から算出することが可能である。なお、誘電材料に酸化チタンを用いた場合よりも共振周波数が高いのは多孔質ポリスチレン膜の比誘電率が酸化チタンよりも低いためである。このように、使用する素材によって、適宜、共振特性のピーク波長を選ぶことができる。
(第5の実施形態)
図14および図15に本実施形態のタグを示す。
図14はタグの平面図であり、図14(a)が表面図、14(b)が裏面図である。また、図15は図14(a)において、D−D’面で切断した断面図である。
上部電極の上に図15(b)に示すように設定温度が印字された普通紙(遮蔽材)16を断面図15(a)のように、パラフィンワックス片の上に設けること以外は第3の実施形態と同様にして共振タグを形成する。
第3の実施形態と同様の加熱実験を行うと、第3の実施形態と同様に温度上昇に伴い溶融液が多孔質膜に流入し、共振周波数のシフトを確認することができる。また、パラフィンワックス上面を覆う普通紙へも溶融液が流入し、室温まで冷却した後に固化した様子を観察できる。すなわち、無線方式による共振ピークの周波数シフトによる温度履歴検出とあわせて、簡便に目視による確認を行うことが可能となる。この際、各設定温度を融点とする熱溶融材料付近に各々設定温度を印字することで経験した温度を認識することができるようにしても良い。このような場合、例えば図14に示すように、70℃を融点とする熱溶融材料の付近に70と記載する。また、どの熱溶融材料が何℃の融点を有するかの情報を別途有していれば、該情報と目視での情報を照合することで、熱溶融材料付近に印字しなくとも目視で温度履歴を確認することができる。
また、本形態においても、第1の実施の形態と同様、得られた温度と共振周波数の関係を基準値とすることで、タグが経験した未知の温度を共振周波数から算出することが可能である。なお、用いるパラフィンワックスに油性染料・顔料を予め溶解もしくは分散させて着色したものを使用すれば、目視での確認に好適である。
(第6の実施形態)
溶融材料をストックするリザーバと流路を作成した以外は、第3の実施形態と同様の方法で温度履歴センサを形成する。図16がタグの平面図であり、図16(a)が表面図、図16(a)において、E−E’面で切断された断面図を図17に示す。本実施形態においては、第3の実施実施形態のように電極に開口部を設け、ここに溶融材料を設置する構造をとらない。代わりに溶融材料11は誘電材料8に連結した流路19とその末端に位置するリザーバ18に設置される。流路19およびリザーバ18は、予め、銅パターンを作成する際にパターニングしておけばよい。この際、銅の抜けた部分が流路とリザーバ部となり、銅箔の厚み(ここでは35μm厚)が深さとなる。リザーバ部に熱溶融材料11として融点が50℃の120Pパラフィンワックス片をセットし、熱溶融材料11の上から流路19およびリザーバ18も覆うようにカプトンテープ20で固定して共振タグとする。なお、流路とリザーバの作成は予め銅パターンをパターニングする方法以外でもよい。たとえば、ナノインプリントと呼ばれる方法では、微細な凹凸パターンをもったモールドを樹脂に押し付けてマイクロ流路を作成できる。このような溝をつけた樹脂を流路の代替として用いてもよい。また、ここでは多孔質膜を使用する例に準じて説明するが、もちろん空隙部を利用した実施の形態1を準用してもよい。
この共振タグをホットプレート上にのせ、温度を変化させて共振タグの共振特性を測定する。なお、共振特性は、50℃まで加熱した後、経過時間とともに測定を行う。また、流路は、流路1として長さが1cmのもの、流路2として長さが2cmのものを用意する。結果を表1に示す。
50℃で加熱すると、共振周波数は、初期の15.3MHzで推移するが、流路1の場合では30秒後に、流路2の場合では50秒後に12.9MHzと共振周波数が低周波数にシフトする。これは、溶融したパラフィンが多孔質酸化チタン薄膜部に接するまでの時間に依存するものである。特定の温度を特定時間タグが経験した時点で、はじめて容量変化が発生するため、流路の長さあるいは深さで周波数が変更されるまでの時間の調整を行うことが可能となる。したがって、コンデンサ電極間に前記熱溶融材料を供給するための流路を形成することにより、単純な温度ヒューズ式スイッチなどを用いた場合のように特定の温度を経験したか否かという情報に加えて、タグが特定の温度を特定の時間以上経験したか否かという時間の情報を得ることも可能となる。
Figure 2008164587
温度センサ付共振タグ等価回路の一例の模式図(コンデンサ、コイル各1個) 温度センサ付共振タグ等価回路の一例の模式図(並列接続) 温度センサ付共振タグ等価回路の一例の模式図(直列接続) 誘電体が空気の場合の温度センサ付共振タグの一例の外観図 誘電体が空気の場合の温度センサ付共振タグの一例の断面図 加熱処理後の誘電体が空気である温度センサ付タグの共振特性を示す図 熱溶融材料が予め電極間に設置してある場合の温度センサ付共振タグの一例の外観図 熱溶融材料が予め電極間に設置してある場合の温度センサ付共振タグの一例の断面図 熱溶融材料が予め電極間に設置してある場合の温度履歴センサ付タグの一例の共振特性を示す図 誘電体が多孔質材料の場合の温度センサ付共振タグの一例の外観図 誘電体が多孔質材料の場合の温度センサ付共振タグの一例の断面図 加熱処理後の誘電体が酸化チタン膜である温度センサ付タグの一例の共振特性を示す図 加熱処理後の誘電体がポリスチレン膜である温度センサ付タグの一例の共振特性を示す図 温度視認機能つきタグの一例の平面図 温度視認機能つきタグの一例の断面図 流路付の温度センサ付共振タグの外観図 流路付の温度センサ付共振タグの断面図
符号の説明
1 絶縁性基板
2 コンデンサ下部電極パターン
3 導電配線パターン
4 パッド部
5 パッド部
6 パッド部
7 パッド部
8 誘電材料
9 上部電極
10 開口部
11 熱溶融材料
12 熱溶融材料
13 熱溶融材料
14 スペーサー
15 ビアホール
16 遮蔽材
17 表示部
18 リザーバ
19 流路
20 カプトンテープ

Claims (8)

  1. 少なくともコンデンサと、コイルと、からなる共振回路を有する温度履歴センサであって、
    前記温度履歴センサが、予め定められた前記温度履歴センサの設定温度を表示する表示部を有しており、
    前記コンデンサが前記コンデンサの電極間に少なくとも熱溶融材料を有し、前記熱溶融材料の融点が前記設定温度付近にあることを特徴とする温度履歴センサ。
  2. 前記設定温度付近とは設定温度より0.5℃低い温度から設定温度までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の温度履歴センサ。
  3. 前記表示部が、電気的方法、磁気的方法、光学的方法もしくは印字による方法で前記設定温度を表示する表示部であることを特徴とする請求項1または2に記載の温度履歴センサ。
  4. 前記熱溶融材料の少なくとも一部が、熱によって前記コンデンサ電極間から流出することにより、前記共振回路の共振特性が変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度履歴センサ。
  5. 少なくともコンデンサおよびコイルからなる共振回路を有する温度履歴センサであって、前記温度履歴センサが予め定められた前記温度履歴センサの設定温度を表示する表示部と熱溶融材料とを有しており、前記熱溶融材料の融点が前記設定温度付近にあり、熱によって前記熱溶融材料の少なくとも一部が溶融して前記コンデンサ電極間に流入することで前記コンデンサの実効誘電率が変化することを特徴とする温度履歴センサ。
  6. 前記コンデンサが前記コンデンサ電極間に多孔性誘電体を有することを特徴とする請求項5に記載の温度履歴センサ。
  7. 前記コンデンサの電極の近傍に前記熱溶融材料を有することを特徴とする請求項5または6に記載の温度履歴センサ。
  8. 前記コンデンサ電極間に前記熱溶融材料を供給するための流路を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の温度履歴センサ。
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