JP2008161754A - 大環状Co錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用 - Google Patents

大環状Co錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、低コストで製造が可能で、酸素還元反応に対して、高い触媒活性を有する、大環状Co錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用を提供する。
【解決手段】窒素を含有する大環状分子がCoに配位した大環状金属錯体のCoに、イミダゾールを配位させる。このような構造を有する触媒によれば、上記大環状金属錯体にイミダゾールが配位されていない構造を有する触媒と比較して、該触媒に酸素分子が分子吸着したときの酸素原子間距離が広がる。それゆえ、該大環状金属錯体の酸素還元反応に対する触媒活性を向上させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、大環状金属錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用であって、特に、酸素還元反応に対して、高い触媒活性を有する、大環状Co錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用に関するものである。
固体高分子形燃料電池は、次世代の自動車用・家庭用・携帯機器用の動力源として大きな注目を浴びている。上記固体高分子形燃料電池では、アノードで燃料である水素が酸化され、カソードで酸素が還元される。
カソードにおける酸素還元反応(Oxygen reduction reaction、以下「ORR」ともいう)は、酸素分子(O)とプロトン(H)と電子(e)から水分子(HO)を生成する反応である。つまり、ORRは、酸素の4電子還元反応である。固体高分子燃料電池において、アノードにおける水素の酸化により生じたプロトン(H)は、アノードとカソードとの間に介在させた固体高分子電解質膜からなる電解質を経由し、アノードからカソードに移動する。また、アノードにおける水素の酸化により生じた電子(e)は、アノードとカソードとを接続する外部回路を経由して、アノードからカソードに移動する。カソード触媒層が設けられた導電性担体であるカソードでは、固体高分子電解質膜に密着したカソード触媒の層を反応サイトとし、該カソード触媒と固体高分子電解質膜と導電性担体とが共存する三相界面において、ORRが起こる。
上記カソード触媒としては、比較的高い触媒活性と高耐久性とを備えることから、従来、白金触媒が主に用いられている。しかし、白金は、貴金属であり、高価である。そのため、カソードにおけるORRの効率を向上させようと、カソードに担持させる白金触媒の量を増やすと、燃料電池の製造コストが増大するという問題がある。
また、白金以外に、ORRに対して、高い触媒活性を有する触媒としては、鉄(Fe)錯体およびコバルト(Co)錯体が知られている(特許文献1、非特許文献1を参照)。具体的には、特許文献1には、酸素還元用の3価の2核鉄錯体触媒として、2つの鉄原子がオキソ配位子によって架橋されたμ−オキソ2核鉄錯体が開示されている。また、上記オキソ配位子は、テトラフェニルポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、プロトポルフィリンIXのような大環状配位子であることが記載されている。非特許文献1には、酸素を4電子還元して、水を生成させるための電極触媒としてコバルトポルフィリン2核錯体が開示されている。
また、Fe錯体およびCo錯体のORRに対する触媒活性について、非特許文献2には、Fe錯体の方が、Co錯体より、一般的にORRに対する触媒活性が高いことが記載されている。さらに、非特許文献2には、Fe錯体およびCo錯体の電気化学的な安定性について、Fe錯体は、Co錯体より電気化学的に不安定であることが記載されている。
ところで、Feポルフィリン錯体およびCoポルフィリン錯体のORRに対する触媒活性については、2つのFeポルフィリン錯体またはCoポルフィリン錯体を対面型に配置した多核錯体とすることにより、向上させることができることが知られている(非特許文献3〜5を参照)。さらに、Feポルフィリン錯体の触媒活性は、Feポルフィリン錯体に対してイミダゾール配位子を付加することによって、向上させることができることも知られている(非特許文献6を参照)。
特開平10−249208号公報(平成10(1998)年9月22日公開) J.P. Collman et al, J. Am. Chem. Soc., 102, 6027-6036 (1980) L. Zhang et al., J. Power Sources 156, 171-182 (2006) K. Oyaizu et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 73, 1153 (2000) Y. Le Mest et al., J. Am. Chem. Soc. 119, 6095 (1997) S. Fukuzumi et al., J. Am. Chem. Soc. 126, 10441 (2004) M. Tsuda et al., Jpn. J. Appl. Phys. 44, L57 (2005)
このように、ORRに対する触媒は、複数知られているが、低コストで製造でき、かつ、触媒活性が高く、さらには、電気的安定性に優れる触媒の実現には至っていない。具体的には、白金触媒は、上述したように、製造コストが高いという問題がある。一方、Feポルフィリン錯体は、製造コストを白金触媒よりも低減できるものの、その触媒活性は白金触媒よりも低いことに加えて、電気的安定性が低いという問題がある。さらに、Coポルフィリン錯体は、製造コストを低減でき、かつ、電気的安定性が高いものの、触媒活性が低すぎるという問題がある。
また、上述したように、Feポルフィリン錯体およびCoポルフィリン錯体について、触媒活性を向上させるための技術の開発も行われているが、これらの技術をもってしても、未だ白金触媒に匹敵するような高い触媒活性を有するFeポルフィリン錯体およびCoポルフィリン錯体の実現には至っていない。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、酸素還元反応に対して、高い触媒活性を有する、大環状Co錯体を含有する触媒および該触媒の製造方法、並びにその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、Coにポルフィリンが配位したCoポルフィリン錯体を対面型に配置し、さらに、上記Coにイミダゾールを配位させることによって、分子吸着した酸素分子のO=O結合の解離を促進することができることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な以下の発明を包含する。
(1)窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒であって、上記大環状金属錯体のCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする触媒。
(2)窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒であって、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有し、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする触媒。
(3)上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする(2)に記載の触媒。
(4)上記2分子の大環状金属錯体のCo間の距離が、4.4〜4.5Åであることを特徴とする(2)または(3)に記載の触媒。
(5)上記窒素を含有する大環状分子は、ポルフィリン、フタロシアニン、テトラアザアヌレン、またはそれらいずれかの誘導体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の触媒。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の触媒が、導電性担体に担持されていることを特徴とする触媒電極。
(7)(6)に記載の触媒電極をカソード電極として備えていることを特徴とする燃料電池。
(8)窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、上記大環状金属錯体のCoに、イミダゾールを配位させる工程を含むことを特徴とする触媒の製造方法。
(9)窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、2分子の上記大環状金属錯体を対面型に配置する工程を含み、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoにイミダゾールが配位していることを特徴とする触媒の製造方法。
(10)上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする(9)に記載の触媒の製造方法。
(11)窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、2分子の上記大環状金属錯体を対面型に配置する工程と、対面型に配置された上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoにイミダゾールを配位させる工程とを含むことを特徴とする触媒の製造方法。
(12)上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールを配位させることを特徴とする(11)に記載の触媒の製造方法。
(13)上記大環状金属錯体を2量体化することによって、上記2分子の大環状金属錯体を、対面型に配置することを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の触媒の製造方法。
(14)上記2分子の大環状金属錯体のCo間の距離が、4.4〜4.5Åとなるように、上記2分子の大環状金属錯体を配置することを特徴とする(9)〜(13)のいずれかに記載の触媒の製造方法。
(15)上記窒素を含有する大環状分子は、ポルフィリン、フタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、フタロシアニンテトラアザアヌレン、またはそれらの誘導体であることを特徴とする(8)〜(14)のいずれかに記載の触媒の製造方法。
(16)窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の、酸素還元反応に対する触媒活性を評価する方法であって、2分子の上記大環状金属錯体が対面型に配置された構造を有する触媒について、上記2分子の大環状金属錯体の間に分子吸着した酸素分子の酸素原子間距離を、密度汎関数理論に基づく第一原理計算により計算し、上記計算された酸素原子間距離を用いて、上記触媒の触媒活性を評価することを特徴とする方法。
本発明にかかる触媒は、以上のように、窒素を含有する大環状分子がCoに配位した大環状金属錯体のCoに、イミダゾールが配位している構造を有する。そのため、イミダゾールが配位した該大環状金属錯体に分子吸着した酸素分子の酸素原子間距離は、イミダゾールが配位していない大環状金属錯体に分子吸着した酸素分子の酸素原子間距離よりも長くなる。それゆえ、本発明にかかる触媒によれば、酸素還元反応を効率よく進行させることできるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1.本発明にかかる触媒およびその製造方法>
本発明にかかる触媒は、窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した大環状金属錯体の該遷移金属に、イミダゾールが配位している構造を有する。上記構成によれば、該触媒の大環状金属錯体に分子吸着した酸素分子(O)の酸素原子間距離(O−O間距離)は、イミダゾールが配位していない大環状金属錯体に分子吸着したOのO−O間距離よりも長くなる。
が分子吸着したときのO−O間距離は、O解離反応の起こりやすさを反映するものである。具体的には、O−O間距離が長くなると、その分子吸着状態では、O=O結合は切断されやすい、換言すると、O解離が起こりやすいことを意味する。つまり、本発明にかかる触媒は、上記構造を有するため、O解離反応に対する触媒活性が、イミダゾールが配位していない大環状金属錯体を含む触媒よりも高い。O解離反応は、酸素還元反応(Oxygen reduction reaction、以下「ORR」ともいう)に付随の反応であるため、O解離反応に対する触媒活性は、その触媒が有するORRに対する触媒活性を反映する。より詳しく説明すると、O解離反応に対する触媒活性が高い触媒は、ORRに対する触媒活性が高いということができる。したがって、本発明にかかる触媒は、ORRに対しても、イミダゾールが配位していない大環状金属錯体を含む触媒よりも高い触媒活性を有するということができる。
このように、本発明は、上記大環状金属錯体にイミダゾールを付加するとの構成により、該大環状金属錯体のORRに対する触媒活性を向上させることができる。
さらに、本発明にかかる触媒では、2分子の上記大環状金属錯体が、対面型に配置されている構造を有することが好ましい。
上記構成によれば、対面型に配置された、上記2分子の大環状金属錯体の間に、分子吸着したOのO−O間距離が、さらに長くなる。それゆえ、ORRに対する触媒活性をより向上させることができる。
ここで、本明細書において用いる用語について説明する。上記「大環状分子」とは、9またはそれ以上の原子(すべてが異原子である場合を含む)、並びに、3またはそれ以上の結合原子を有する化合物を指す。また、「窒素を含む大環状分子」とは、基本骨格の中に4個の窒素原子が平面上に並んだ「N4構造」を有するものを指す。具体的には、例えば、フタロシアニン類、ポルフィリン類、テトラアザアヌレン類などが挙げられる。さらに、「大環状金属錯体」とは、上記大環状分子に含まれるN4構造の中心に遷移金属イオンが配位した「M−N4構造」(Mは遷移金属を指す)を備える金属錯体を指す。具体的には、例えば、下記式(1)
Figure 2008161754
(式中、Mは遷移金属を表す)
で表される、ポルフィリンの中心に遷移金属が配位した分子構造を有する大環状金属錯体およびその誘導体、下記式(2)
Figure 2008161754
(式中、Mは遷移金属を表す)
で表される、フタロシアニンの中心に遷移金属が配位した分子構造を有する大環状金属錯体およびその誘導体、下記式(3)
Figure 2008161754
(式中、Mは遷移金属を表す)
で表される、ナフタロシアニンの中心に遷移金属が配位した分子構造を有する大環状金属錯体およびその誘導体、並びに下記式(4)
Figure 2008161754
(式中、Mは遷移金属を表す)
で表される、テトラアザアヌレンの中心に遷移金属が配位した分子構造を有する大環状金属錯体およびその誘導体を挙げることができる。
また、本明細書では、上記大環状分子に含まれるN4構造の中心にCo、Fe等の具体的な遷移金属イオンが配位している金属錯体を、大環状Co錯体、大環状Fe錯体等と記載する。
さらに、「2分子の大環状金属錯体が対面型に配置される」とは、2分子の上記大環状金属錯体が、互いに向き合って配置されていることを意味する。また、対面型に配置された状態において、2分子の上記大環状金属錯体は、平行に向き合っていてもよいし、斜めに向き合っていてもよい。
以下、本発明にかかる触媒の構造について、より詳細に説明する。
本発明にかかる触媒において、上記窒素を含有する大環状分子は、上記定義を満足するものであればよいが、得られる触媒の触媒活性が高くなるように、選択することが好ましい。具体的には、例えば、ポルフィリン、フタロシアニン、またはテトラアザアンヌレンを用いることが好ましい。また、ポルフィリン環にフェニル基、またはメチル基、カルボキシル基、臭素、フッ素、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基等で置換されたフェニル基等が結合したポルフィリン誘導体(例えば、テトラフェニルポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン等);フタロシアニン環に、メチル、カルボキシル、臭素、フッ素、ヒドロキシル、アミノ、スルホン等の置換基が結合したフタロシアニン誘導体;およびフタロシアニンテトラアザアヌレン等のテトラアザアヌレン誘導体も、好適に用いることができる。これらの大環状分子を用いることにより、得られる触媒は高い触媒活性を有する。
また、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有する実施形態では、上記大環状分子は、上記定義を満足するものを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。つまり、対面型に配置される2分子の大環状金属錯体における大環状分子は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明にかかる触媒において、上記遷移金属(上記式(1)〜(4)でいうM)は、Coであることが好ましい。これにより、ORRに対する触媒活性が高く、かつ、低コストに製造可能で、さらには、電気的安定性が高い触媒とすることができる。また、上記遷移金属として、Co以外にも、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Au、Mg、Cd、Al、In、Ge、Cr、およびTi等の遷移金属を用いることができる。このような遷移金属を用いることにより、ORRに対する触媒活性が高く、かつ、低コストで製造可能な触媒とすることができる。
また、本発明にかかる触媒では、上記遷移金属にはイミダゾールが配位しているが、さらに、イミダゾール以外の配位子が配位していてもよい。このような配位子は特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、水酸基、窒素原子、NO、またはCO等を有する配位子を例示することができる。
2分子の大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有する実施形態において、2分子の上記大環状金属錯体の位置関係は、対面型に配置されていればよいが、ほぼ平行に配置されていることが好ましい。また、上記2分子の上記大環状金属錯体の間隔は、Oが上記2分子の大環状金属錯体の間に分子吸着できる間隔であることが好ましい。Oは、上記大環状金属錯体に配位している遷移金属を介して、分子吸着する。そのため、2分子の上記大環状金属錯体の位置関係は、上記2分子の大環状金属錯体の遷移金属間の距離が4.4〜4.5Åの範囲となる位置関係であることが好ましい。上記範囲内であれば、上記2分子の大環状金属錯体の間にOが分子吸着した際、O−O間距離を、1.4〜1.5Åとすることができる。それゆえ、O解離反応に対する触媒活性、すなわち、ORRに対する触媒活性を向上させることができる。
さらに、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有する実施形態では、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体について、上記窒素を含む大環状分子が配位する遷移金属にイミダゾールが配位していればよいが、両方の大環状金属錯体の遷移金属にイミダゾールが配位していることがさらに好ましい。これにより、得られる触媒のORRに対する触媒活性をより向上させることができる。
また、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有する実施形態では、上記イミダゾールは、対面する2分子の大環状金属錯体の外側に配位していることが好ましく、上記大環状金属錯体に対してほぼ垂直に配位していることがさらに好ましい(図1を参照)。上記構成によれば、対面する2分子の大環状金属錯体の外側からCoに対してOが分子吸着することを妨げることができる。その結果、Oは、対面する2分子の大環状金属錯体の間、換言すれば、上記大環状錯体の遷移金属と遷移金属との間に、分子吸着しやすくなる。それゆえ、ORRの触媒部位である上記遷移金属と遷移金属との間に安定してOを分子吸着させることができる。つまり、上記構成とすれば、触媒の安定性を向上させることができる。
以下、本発明にかかる触媒の製造方法について説明する。
(A)単一の大環状金属錯体にイミダゾールが配位している構造を有する触媒の製造方法
まず、窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した大環状金属錯体を用意する。該大環状金属錯体は、従来公知の方法を用いて製造してもよいし、市販品を購入するなどして用いてもよい。
次に、該大環状金属錯体に、従来公知の方法を用いて、イミダゾールを配位させる。
これにより、本発明にかかる触媒を製造することができる。
(B)対面型に配置された2分子の大環状金属錯体にイミダゾールが配位している構造を有する触媒の製造方法
上記(A)の方法と同様に、大環状金属錯体を用意し、次に、上記大環状金属錯体を対面型に配置する。上記大環状金属錯体を対面型に配置する方法は、特に限定されるものではない。例えば、物理的な手法を用いて配置することもできるし、化学的な手法を用いて配置することもできる。より具体的には、化学的な手法を用いて配置する場合、例えば、アミド結合のような化学結合を用いて、上記大環状金属錯体の2量体を形成させることによって、2分子の大環状金属錯体を対面型に配置することができる。なお、ポルフィリンを対面型に配置する方法については、例えば、上記非特許文献1にも記載されているので参照されたい。
このように、上記2分子の大環状金属錯体を対面型に配置した後、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体の遷移金属にイミダゾールを配位させることにより、本発明にかかる触媒を製造することができる。
また、上記例示した方法では、上記2分子の大環状金属錯体を対面型に配置した後、イミダゾールを配位させたが、対面型に配置する前に、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体の遷移金属にイミダゾールを配位させておいてもよい。
さらに、2分子の窒素を含有する大環状分子を対面型に配置した後、遷移金属を配位させ、その後、少なくとも一方の遷移金属にイミダゾールを配位させてもよい。
<2.本発明にかかる触媒電極およびそれを備えるデバイス>
本発明にかかる触媒は、上述したように、ORRに対して、高い触媒活性を有する。それゆえ、ORRに対する高い触媒活性が求められる触媒電極に用いることができる。したがって、本発明には、本発明にかかる触媒を導電性担体に担持させた触媒電極が含まれる。
本発明にかかる触媒電極は、導電性担体に、本発明にかかる触媒が担持されているものであればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、本発明にかかる触媒を、導電性担体上に形成された触媒層に含有させることにより、本発明にかかる触媒電極を得ることができる。
上記導電性担体は、特に限定されるものではない。例えば、炭素、チタン、ニオブ、タンタル等を挙げることができる。中でも、活性炭、カーボンウィスカー、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素材料は、導電性が良好で安価であるため、好適に用いることができる。上記導電性担体は、集電物質として機能すると同時に、上記触媒の触媒活性を向上させることができる。
また、上記導電性担体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、繊維状、布状、シート状等の形状のものを用いることができる。また、その他、各種の形状に予め成形して用いてもよい。中でも、単位重量当たりの表面積が大きいことから、粉末状であることが好ましい。このような粉末状の導電性担体によれば、単位重量当たりの触媒の担持量を増加させることができる。
上記導電性担体の形状が粉末である場合、該導電性担体の粒子の粒子径は0.03〜0.1μmであることが好ましい。また、導電性担体の粒子は、1次粒子が連結したストラクチャー構造を形成していることが好ましい。
本発明にかかる触媒電極において、上記導電性担体への本発明にかかる触媒の担持量は、特に限定されるものではない。例えば、上記導電性担体に対して、40〜80重量%の本発明にかかる触媒を担持させればよい。
また、本発明にかかる触媒電極には、本発明にかかる触媒以外の触媒が含まれていてもよい。そのような触媒としては、具体的には、酸素4電子還元触媒、例えば、貴金属を挙げることができる。より具体的には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び、これらを主成分とする合金を例示することができる。これら貴金属を含有させることにより、触媒活性をより向上させることができる。上記例示した貴金属の中でも、触媒活性を向上させる効果が大きいことから、白金及び白金を主成分とした合金を用いることがさらに好ましい。上記貴金属は、単独で含有させてもよいし、複数を組み合わせて含有させてもよい。
また、上記貴金属を含有させる場合、上記導電性担体に担持させる担持量は、上記導電性担体に対して、5重量%以下であることが好ましい。上記範囲内で含有させることにより、得られる触媒電極の触媒活性を効果的に向上させることができる。また、上記貴金属は高価であるため、製造コストを低減するとの観点からは、上記貴金属の担持量は、上記導電性担体に対して、4重量%以下であることがさらに好ましい。
さらに、本発明にかかる触媒電極には、該触媒電極の用途に応じて、適宜、その他の成分を含有させることができる。例えば、本発明にかかる触媒電極は、ORRに対する触媒活性が高いため、固体高分子型燃料電池用カソード電極として、好適に用いることができる。この場合、本発明にかかる触媒電極には、高分子固体電解質を含有させてもよい。
本発明にかかる触媒を上記導電性担体に担持させる方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、(a)含浸法、(b)各種還元剤を用いた金種の還元付着・析出法、(c)光照射による金種の還元付着・析出法、(d)pH制御中和による析出沈殿法、(e)有機金錯体吸着法、(f)気相での有機金錯体の吸着法、(g)物理的蒸着法、(h)イオン注入法等により行うことができる。また、これら例示した方法における具体的な条件は、特に限定されるものではなく、導電性担体に担持された所望の触媒が得られるように適宜設定すればよい。例えば、本発明にかかる触媒を含むスラリーやペースト、懸濁液を調製し、それに上記導電性担体を浸漬するか、または上記スラリーやペーストを上記導電性担体に塗布し、それを乾燥することにより、本発明にかかる触媒電極を製造することができる。上記スラリーやペースト、懸濁液における溶媒は、特に限定されるものでない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン等の単環式芳香族炭化水素溶媒;プロパノール、ブタノール等のC1−6の低級アルコール;アセトニトリル;テトラヒドロフラン;等を用いることができる。
また、本発明にかかる触媒電極を、固体高分子型燃料電池用カソード電極として用いる場合、例えば、本発明にかかる触媒を、電解質を含む液に分散させ、その分散液を高分子固体電解質膜に塗布、乾燥する。これにより、該高分子固体電解質膜の表面に本発明にかかる触媒を含有する触媒層を形成させる。次に、該触媒層の表面に、さらにカーボンクロス等の導電性担体を熱圧接する。こうして、本発明にかかる触媒を用いた固体高分子型燃料電池用カソード電極を製造することができる。
また、本発明には、上述した本発明にかかる触媒電極を備えるデバイスも含まれる。具体的には、例えば、本発明にかかる触媒電極をカソード電極として備える燃料電池等を挙げることができる。上記燃料電池は、自動車用、家庭用、および携帯機器用といった各種用途に用いることができる。
<3.本発明にかかる触媒の触媒活性評価方法>
本発明にかかる触媒の触媒活性評価方法(以下、単に「本発明にかかる評価方法」と称する)は、窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の、ORRに対する触媒活性を評価する方法である。そのため、本発明にかかる評価方法は、上述した本発明にかかる触媒の触媒活性を評価するために好適に用いることができる。また、本発明にかかる評価方法によれば、ORRに対して高い触媒活性を有する触媒を効率よくスクリーニングすることができる。したがって、本発明には、本発明にかかる評価方法を用いて、ORRに対して高い触媒活性を有する触媒をスクリーニングする方法も含まれる。
本発明にかかる評価方法は、具体的には、窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の該大環状金属錯体に分子吸着したOのO−O間距離を、密度汎関数理論(Density functional theory;以下、「DFT」ともいう)に基づく第一原理計算により計算する工程(以下、「第一原理計算工程」ともいう)と、上記計算されたO−O間距離を用いて、該触媒の触媒活性を評価する工程(以下、「評価工程」ともいう)とを少なくとも含む。
上記第一原理計算工程では、例えば、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置された構造を有する触媒について、該2分子の大環状金属錯体の間にOが分子吸着した状態のO−O間距離を、DFTに基づく第一原理計算により計算する。上記DFTに基づく第一原理計算の方法は、特に限定されるものではないが、Gaussian 03プログラムのB3PW91交換相関汎関数およびLANL2DZ基底系の範囲内で行うことが好ましい。上記方法によれば、上記O−O間距離を、非常に高い精度で計算することができる。また、構造の最適化は、対称性を無視して行うことが好ましい。
また、上記触媒は、2分子の大環状金属錯体が対面型に配置された構造を有する触媒に限定されるものではなく、単体の大環状金属錯体を含む触媒であってもよい。この場合、上記第一原理計算工程では、該単体の大環状金属錯体にOが分子吸着した状態のO−O間距離を、DFTに基づく第一原理計算により計算すればよい。
上記触媒の大環状金属錯体の遷移金属には、イミダゾールが配位していることが好ましい。2分子の大環状金属錯体が対面型に配置された構造を有する触媒の場合には、上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体の遷移金属に、イミダゾールが配位していればよいが、もちろん、上記2分子の大環状金属錯体の両方について、上記遷移金属にイミダゾールが配位していてもよい。また、上記大環状金属錯体の遷移金属には、イミダゾール以外の配位子が配位していてもよい。このように、本発明にかかる評価方法は、<I.本発明にかかる触媒およびその製造方法>で説明したあらゆる触媒のORRに対する触媒活性を評価することができる。
上記評価工程では、上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離を用いて、該触媒のORRに対する触媒活性を評価する。具体的には、例えば、まず、上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離と、単独のOにおけるO−O間距離とを比較する。なお、「単独のOにおけるO−O間距離」とは、分子吸着していない、フリーの状態のOにおけるO−O間距離を意味する。このO−O間距離は、具体的には、1.260Åである。
次に、上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離は、単独のOにおけるO−O間距離よりもどの程度長いかを判定する。その結果、上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離が、単独のOにおけるO−O間距離よりも長いほど、該触媒は、ORRに対する触媒活性が高いと評価する。換言すれば、(上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離)/(単独のOにおけるO−O間距離)の値が、1よりも大きければ、大きいほど該触媒は、ORRに対する触媒活性が高いと評価する。
また、上記評価工程では、白金表面上に分子吸着させたOにおけるO−O間距離と、第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離とを比較してもよい。具体的には、上記第一原理計算工程で計算した上記O−O間距離は、白金表面上に分子吸着させたOにおけるO−O間距離よりもどの程度長いかを判定する。このような構成とすれば、従来、高い触媒活性を有する触媒として汎用される白金触媒の触媒活性との比較を容易に行うことができる。また、このような構成を備える評価方法を用いることにより、白金触媒よりも触媒活性の高い触媒を効率よく選抜することができる。
また、上記評価工程では、上記値の大小を用いて、該触媒のORRに対する触媒活性を評価してもよい。具体的には、上記値が大きいほど、該触媒のORRに対する触媒活性が高いと評価する。このような構成とすれば、ORRに対する触媒活性の評価の精度をより向上させることができる。
このように、本発明にかかる評価方法では、触媒に分子吸着したOのO−O間距離の厳密計算により、該触媒の触媒活性を評価するため、簡便かつ高精度に該触媒のORRに対する触媒活性を評価することができる。
また、本発明にかかる評価方法を用いて、2種類以上の触媒のORRに対する触媒活性を評価することにより、それら触媒のORRに対する触媒活性を順位付けすることができる。それゆえ、本発明にかかる評価方法によれば、複数の触媒の中から、所望のORRに対する触媒活性を有する触媒を効率よく選抜することができる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明について、実施例および比較例、並びに図2〜図4に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
〔実施例1:本発明にかかる触媒の酸素還元反応に対する触媒活性の評価〕
Coポルフィリン錯体と、イミダゾールが配位したCoポルフィリン錯体とが対面型に配置された構造を有する触媒(図2を参照、以下「触媒1」ともいう)、(2)イミダゾールが配位したCoポルフィリン錯体の2分子が対面型に配置された構造を有する触媒(図3を参照、以下「触媒2」ともいう)、(3)1分子のCoポルフィリン錯体のCoにイミダゾールが配位した構造を有する触媒(図示せず、以下「触媒3」もいう)について、ORRに対する触媒活性を評価した。具体的には、酸素分子(O)を、1分子の触媒(触媒1、触媒2または触媒3)に分子吸着させる反応について検討した。計算は、DFTに基づく第一原理計算で、Gaussian 03プログラムのB3PW91交換相関汎関数およびLANL2DZ基底系の範囲内で行った。図2および図3に示す構造は全て、対称性を無視して最適化したものである。
上記計算の結果、触媒1に分子吸着したOのO−O間距離は、1.409Åであった(図2、表1を参照)。一方、触媒2に分子吸着したOのO−O間距離は、1.446Åであった(図3、表1を参照)。また、触媒3に分子吸着したOのO−O間距離は、1.297Åであった(表1を参照)。これら触媒1、触媒2、および触媒3に分子吸着したOのO−O間距離は、いずれも、触媒に分子吸着していないフリーのOのO−O間距離1.260Åよりも長かった。上述したように、触媒に分子吸着した状態のOのO−O間距離は、該触媒のORRに対する触媒活性を反映するものである。より詳しくは、上記O−O間距離が長くなるほど、該触媒のORRに対する触媒活性は高いことを意味する。したがって、上記計算の結果は、触媒1、触媒2、および触媒3が、いずれも、ORRに対する高い触媒活性を有することを示している。
また、触媒3よりも、触媒1および触媒2のほうが、該触媒に分子吸着したOのO−O間距離は長かった。さらに、触媒2のほうが、触媒1よりも、該触媒に分子吸着したOのO−O間距離は長かった。これらの結果は、触媒1〜触媒3のORRに対する触媒活性は、触媒3、触媒1、触媒2の順に高くなることを示している。
Figure 2008161754
また、一般的に触媒活性および電気化学的安定性が高いとされる白金(Pt)触媒に関して、A. Eichler et al(Phys. Rev. Lett. 79, 4481 (1997))には、白金表面上に分子吸着した酸素分子のO−O間距離は、1.43Åであることが記載されている。このA. Eichlerらの結果と、本実施例の結果との比較から、触媒1および触媒2は、いずれも、白金触媒に匹敵する高い触媒活性を有していることが分かった。特に、触媒2は、白金触媒よりも高い触媒活性を有していることが分かった。
〔比較例1:様々な大環状金属錯体の触媒活性〕
2分子のCoポルフィリン錯体が対面型に配置された触媒(図4を参照、以下「触媒4」ともいう)、1分子のCoポルフィリン錯体からなる触媒(図示せず、以下「触媒5」ともいう)について、実施例1と同様の方法を用いて、ORRに対する触媒活性を評価した。その結果、触媒4および触媒5に分子吸着したOのO−O間距離は、それぞれ、1.391Å、1.263Åであった(図4、表1を参照)。これら触媒4および触媒5に分子吸着したOのO−O間距離は、いずれも触媒に分子吸着していないフリーのOのO−O間距離は1.260Åよりも長かった。しかし、触媒4と実施例1の触媒1および触媒2とを比較すると、触媒1および触媒2のほうが、触媒4よりも、分子吸着したOのO−O間距離が長かった。すなわち、触媒1および触媒2のほうが、触媒4よりも触媒活性が高いことを示している。
また、触媒5と、実施例1の触媒3とを比較すると、触媒3のほうが、触媒5よりも、分子吸着したOのO−O間距離が長かった。すなわち、触媒3のほうが、触媒5よりも触媒活性が高いことを示している。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
以上のように、本発明は、大環状Co錯体のCoにイミダゾールを配位させることによって、ORRに対する触媒活性を向上させることができる。したがって、本発明は、ORRを促進させるための触媒として用いることができるだけではなく、該触媒を備える触媒電極や、該触媒電極を備えるデバイスにも広く用いることができる。さらには、該触媒、触媒電極、およびデバイスを用いる医療分野、農業分野、電気分野、化学分野など幅広い産業分野に応用することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる触媒において、大環状分子に対してイミダゾールが配位している状態を示す図である。 図2は、本発明の一実施形態にかかる触媒に酸素分子が分子吸着した状態の構造を示す図である。 図3は、本発明の別の実施形態にかかる触媒に酸素分子が分子吸着した状態の構造を示す図である。 図4は、比較例の触媒に酸素分子が分子吸着した状態の構造を示す図である。

Claims (16)

  1. 窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒であって、
    上記大環状金属錯体のCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする触媒。
  2. 窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒であって、
    2分子の上記大環状金属錯体が対面型に配置されている構造を有し、
    上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする触媒。
  3. 上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする請求項2に記載の触媒。
  4. 上記2分子の大環状金属錯体のCo間の距離が、4.4〜4.5Åであることを特徴とする請求項2または3に記載の触媒。
  5. 上記窒素を含有する大環状分子は、ポルフィリン、フタロシアニン、テトラアザアヌレン、またはそれらいずれかの誘導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒が、導電性担体に担持されていることを特徴とする触媒電極。
  7. 請求項6に記載の触媒電極をカソード電極として備えていることを特徴とする燃料電池。
  8. 窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、
    上記大環状金属錯体のCoに、イミダゾールを配位させる工程を含むことを特徴とする触媒の製造方法。
  9. 窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、
    2分子の上記大環状金属錯体を対面型に配置する工程を含み、
    上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoにイミダゾールが配位していることを特徴とする触媒の製造方法。
  10. 上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールが配位していることを特徴とする請求項9に記載の触媒の製造方法。
  11. 窒素を含有する大環状分子がCoに配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の製造方法であって、
    2分子の上記大環状金属錯体を対面型に配置する工程と、
    対面型に配置された上記2分子の大環状金属錯体のうち、少なくとも一方の大環状金属錯体のCoにイミダゾールを配位させる工程とを含むことを特徴とする触媒の製造方法。
  12. 上記2分子の大環状金属錯体のそれぞれのCoに、イミダゾールを配位させることを特徴とする請求項11に記載の触媒の製造方法。
  13. 上記大環状金属錯体を2量体化することによって、上記2分子の大環状金属錯体を、対面型に配置することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
  14. 上記2分子の大環状金属錯体のCo間の距離が、4.4〜4.5Åとなるように、上記2分子の大環状金属錯体を配置することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
  15. 上記窒素を含有する大環状分子は、ポルフィリン、フタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、フタロシアニンテトラアザアヌレン、またはそれらの誘導体であることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
  16. 窒素を含有する大環状分子が遷移金属に配位した金属錯体である大環状金属錯体を含む触媒の、酸素還元反応に対する触媒活性を評価する方法であって、
    2分子の上記大環状金属錯体が対面型に配置された構造を有する触媒について、上記2分子の大環状金属錯体の間に分子吸着した酸素分子の酸素原子間距離を、密度汎関数理論に基づく第一原理計算により計算し、
    上記計算された酸素原子間距離を用いて、上記触媒の触媒活性を評価することを特徴とする方法。
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