JP2008156749A - 銅合金材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を成すことができる銅合金材料を提供する。
【解決手段】Ni:0.1〜12.0重量%、Co:0.01〜12.0重量%としつつ、これらNiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si:0.3〜4.0重量%、残部Cu及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有して銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成すものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い熱伝導性及び被切削性が要求されるプラスチック等成形用の銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度が要求される溶接装置用銅合金電極を成す銅合金材料に関するものである。
プラスチックや合成樹脂等の塑性材料を成形するための金型材料としては、一般に、炭素鋼又は熱間工具鋼などが用いられている。然るに、これら材料は熱伝導率が低いため、冷却固化に長時間必要となり、金型による成形時のショットサイクルが長くなってしまうことが知られており、当該不具合を解消すべく、従来より銅合金を用いた種々提案がなされている。
例えば、従来のプラスチック成形用の銅合金金型として、特許文献1及び特許文献2で開示されたような銅合金を用いたものが挙げられる。これら特許文献には、Cu−Ni−Si合金系を材料としてプラスチック成形金型を形成することにより、熱伝導性をある程度向上させ得ることが開示されている。
一方、溶接装置における銅合金電極は、高い電気伝導性と強度が要求されるため、Cu−Ni−Si合金系の他、高電気伝導性及び高強度材料として知られるBe−Cu合金系が材料として用いられていた。尚、かかる材料は、JIS Z3234 第3種、第4種規格(Be−Cu合金系:CDA ALLOY No C−17510、C−17200、Cu−Ni−Si合金系:CDA No C−18000)に適合する材料として知られている。
特開平2−190430号公報 特開平4−218631号公報
しかしながら、上記従来の銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極においては、以下の如き問題があった。即ち、従来のCu−Ni−Si合金系の銅合金金型においては、熱伝導性についてはある程度高いものの、被切削性に劣ってしまうという問題があった。尚、銅合金から成る金型としては、従来のものより更に熱伝導性の優れたものが求められるに至っている。
また、従来のCu−Ni−Si合金系やBe−Cu合金系を材料とした溶接装置用銅合金電極においては、電気伝導性についてはある程度高いものの、強度が不足してしまうという問題があった。特に、Be(ベリリウム)は環境問題や健康問題から排除することが望まれていることから、かかるBeを使用せず電気伝導性に優れ、強度を向上させたものが求められるに至っている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を成すことができる銅合金材料を提供することにある。
請求項1記載の発明は、Ni:0.1〜12.0重量%、Co:0.01〜12.0重量%としつつ、これらNiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si:0.3〜4.0重量%、残部Cu及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有して銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の銅合金材料において、Mg:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、及びMgのみを合金元素として含有して前記銅合金金型を成すことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の銅合金材料において、Zr:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、及びZrのみを合金元素として含有して前記溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする
請求項4記載の発明は、請求項3記載の銅合金材料において、Mg:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、Zr、及びMgのみを合金元素として含有して前記溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を成す銅合金材料を得ることができる。
請求項2の発明によれば、より高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型を得ることができる。
請求項3の発明によれば、より高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができる。
請求項4の発明によれば、より高い電気伝導性及び強度に加え、より高い熱伝導性及び被切削性を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る銅合金材料は、Ni(ニッケル):0.1〜12.0重量%、Co(コバルト):0.01〜12.0重量%としつつ、これらNiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si(珪素):0.3〜4.0重量%、残部Cu(銅)及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有して銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成すものである。
然るに、Ni(ニッケル)及びCo(コバルト)は、Si(珪素)とともに固溶体化処理によって基地に固溶し、時効処理によってNiとCoとSiの金属間化合物を析出して、銅合金の強度を増加させる元素である。その添加量として、NiとCoとの総量が12.0重量%よりも多く設定されると、熱伝導性及び電気伝導性が低下し、加工性が悪化する一方、2.0重量%よりも少なく設定されると、強度の向上が期待できなくなってしまうことから、2.0〜12.0重量%であることが必要である。
Si(珪素)は、上記した如く、銅合金の強度を増加するための元素であり、その添加量が4.0重量%よりも多く設定されると、熱伝導性が低下し、加工性が悪化する一方、0.3重量%よりも少なく設定されると、強度の向上が期待できなくなってしまうことから、0.3〜4.0重量%であることが必要である。
即ち、本実施形態に係る銅合金材料は、NiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si:0.3〜4.0重量%、残部Cu及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有することにより、高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を成す銅合金材料を得ることができるのである。
ここで、本実施形態に係る銅合金材料から成る銅合金金型は、プラスチックや樹脂を成形するための金型としては勿論、アルミニウム合金、マグネシウム合金を成形するためのダイキャスト型等として用いることができる。本実施形態に係る銅合金金型によれば、高い熱伝導性により、冷却固化時間を低減させ、金型による成形時のショットサイクル(成形サイクル)を著しく短縮することができるとともに、高い被切削性により、種々形状の金型及び金型部材を容易且つ安価に製造することができる。
また、本実施形態に係る銅合金材料から成る溶接装置用銅合金電極は、各種の溶接装置における溶接ガン(Gun)、当該溶接ガンのチップやホルダ(保持部)等として用いることができる。本実施形態に係る溶接装置用銅合金電極によれば、高い電気伝導性により、溶接効率を向上させることができるとともに、高い強度により高精度な位置決めを維持しつつ溶接を行わせることができる。
更に、上記実施形態に係る元素(Ni、Co、Si)にMg(マグネシウム):0.005〜0.3重量%を添加して含ませ、Ni、Co、Si、及びMgのみを合金元素として含有して銅合金金型を成すようにするのが好ましい。Mgは、結晶粒界を強化して熱間加工性を向上させるとともに、特に0.07〜0.30%添加すると、被切削性が著しく向上するものである。従って、種々形状の金型及び金型部材をより容易且つより安価に製造することができる。
また更に、上記実施形態に係る元素(Ni、Co、Si)にZr(ジルコニウム):0.005〜0.3重量%を添加して含ませ、Ni、Co、Si、及びZrのみを合金元素として含有して前記溶接装置用銅合金電極を成すようにするのが好ましい。Zrは、Mgと同様、粒界を強化して熱間加工性を向上させ、結晶粒を細かくする効果があるが、0.3重量%以上添加させると、却って熱間加工性を悪化させてしまう。従って、Zrを0.005〜0.3重量%添加して含ませれば、より高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができる。
また、上記元素(Ni、Co、Si、Zr)に更にMg(マグネシウム):0.005〜0.3重量%を添加して含ませ、Ni、Co、Si、Zr、及びMgのみを合金元素として含有して溶接装置用銅合金電極を成すようにしてもよい。この場合、元素(Ni、Co、Si)に加え、Zr及びMgを含有するため、より高い電気伝導性及び強度に加え、より高い熱伝導性及び被切削性を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができる。
しかして、本発明に係る銅合金材料は、上記元素(Ni+Co、Si、又はMg或いはZr)のみを合金元素として含有する極めて単純な合金組織を有するものであり、上記以外の元素は不純物元素であることから可能な限り少ない方が好ましい。不可避的不純物として混入してしまう元素としては、例えばZn、Mn、C、P等が挙げられ、これら不純物が多く存在すると特に熱伝導性が低下してしまう。従って、これら不純物元素を可能な限り少なくすることが必要である。また、上記実施形態においては、Ni+Co、Siを必須の成分として含有しているが、電気伝導度(導電率%IACS)40%以上必要なとき、Ni+CoとSiとの含有比率が4:1乃至5.5:1の範囲に設定するのが好ましい。
本実施形態においては、所望の合金組織のインゴットを溶解鋳造によって作成し、鋳造又は圧延により分塊及び仕上げ加工を施して所望形状の銅合金材料を得るのが好ましい。固溶体化処理温度は、800〜900℃の範囲とし、400〜600℃の範囲で時効処理して本銅合金材料を得るのが好ましい。
上述したように、本実施形態によれば、高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型、又は高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を成す銅合金材料を得ることができる。また、更にMg:0.005〜0.3重量%を含むことにより、より高い熱伝導性及び被切削性を有した銅合金金型を得ることができる。
更に、Zr:0.005〜0.3重量%を含むことにより、より高い電気伝導性及び強度を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができるとともに、加えてMg:0.005〜0.3重量%を更に含むことにより、より高い電気伝導性及び強度に加え、より高い熱伝導性及び被切削性を有した溶接装置用銅合金電極を得ることができる。
次に、本発明に係る実施例について説明する。
まず、表1に示す如き種々合金組成の試料A〜Vを用意した。
Figure 2008156749
そして、以下の表2に示すように、各試料A〜Vに対して液体化処理温度、仕上冷間加工率、人工時効硬化の諸条件を種々変化させたものを実施例1〜23及び比較例1〜10とおくこととする。
Figure 2008156749
上記実施例1〜23及び比較例1〜10における引張強度、導電率を計測するとともに、曲げ性及び切削性について判定を行った。その結果について以下の表3に示す。尚、同表中、曲げ性の判定における丸印は良好を示すとともに、被切削性の判定における丸印は非常に良好、三角印は良好をそれぞれ示している。
Figure 2008156749
上記表3からも明らかなように、実施例1〜23の銅合金材料は、何れも強度(引張強度、曲げ性)が高く、導電率が高く熱伝導性が良好である(即ち、電気伝導性(導電率)と熱伝導性とは比例することから導電率が高いと熱伝導性が高いことが分かる)とともに、被切削性も非常に良好(従来のものに比べ略10倍以上)であることが分かる。一方、上記実施例のものに対し、比較例1、2及び5、6、8のものは強度が不足しており、比較例3、4のものは伝導率が不足(即ち、電気伝導性及び熱伝導性が不良)していることが分かる。従って、実施例1〜23の銅合金材料にて銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成形すれば、従来のものに比べて、強度、電気伝導性及び熱伝導性が高く且つ被切削性の良好な特性のものを得ることができる。
特に、本実施例のものによれば、ベリリウム等の有害元素を含有せず、且つ、電気導電性(IACS)が50%以上及び引張強度960MPaで伸び8%といった性質を有することから、各種の溶接装置における溶接ガン(Gun)や本体保持部等に用いれば、優れた特性を持ったものとすることができる。
次に、以下の表4で示すような種々合金組成とされたインゴットを溶製し、それぞれ鋳造により分解及び熱間仕上加工を施した後、900℃の温度で溶体化処理を行い、水中に投入して急冷した。次いで、450〜500℃で時効処理を施して硬度HRC23の銅合金金型材料(実施例15及び比較例7〜9)を得た。
Figure 2008156749
そして、上記実施例15及び比較例7〜8のものの切削実験を行って被切削性に関する評価を行った。評価は、低速切削と高速切削の2つの切削条件で行い、切削距離(m)に対する外周刃の消耗幅(mm)を測定した。切削装置はMHNC−40、切削刃はMM64:OSG社製とし、切削方法として側面切削(Down)、切り込み15×2(mm)とし切削油はDRYである。
当該切削実験結果について、以下の表5に示す。尚、低速切削は、回転数680min−1(21m/min)、送り109mm/min−1(0.08mm/刃)で行い、高速切削は、回転数1120min−1(35m/min)、送り180mm/min−1(0.08mm/刃)で行った。
Figure 2008156749
上記表5によれば、本実施例(実施例15)のものは、優れた被切削性を有しており、比較例1〜3のものと比べ、低速切削の場合は2倍以上、高速切削の場合は10倍以上の優れた被切削性を有することが分かる。
次に、上記実施例15、20及び比較例7〜10のものに対し、それぞれ硬度、熱伝導率、密度、熱膨張、耐力、引張強さ及びヤング率について計測した。その計測結果について以下の表6に示す。尚、実施例20及び比較例10については、その硬度について表7に実験結果を示す。
Figure 2008156749
Figure 2008156749
上記表6、7によれば、本実施例(実施例15、20)のものは、比較例7〜10のものに比べ、硬度、熱伝導率、耐力及び引張強さが高く、熱膨張及びヤング率が低いことが分かる。これにより、実施例15、20の銅合金材料にて銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成形すれば、従来のものに比べて、強度及び熱伝導性が高く且つ熱膨張が低い良好な特性のものを得ることができる。
Ni:0.1〜12.0重量%、Co:0.01〜12.0重量%としつつ、これらNiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si:0.3〜4.0重量%、残部Cu及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有して銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成す銅合金材料であれば、銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極の形態等は如何なるものであっても適用できる。

Claims (4)

  1. Ni:0.1〜12.0重量%、Co:0.01〜12.0重量%としつつ、これらNiとCoとの総量が2.0〜12.0重量%、Si:0.3〜4.0重量%、残部Cu及び不可避的不純物から成り、Ni、Co、及びSiのみを合金元素として含有して銅合金金型又は溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする銅合金材料。
  2. Mg:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、及びMgのみを合金元素として含有して前記銅合金金型を成すことを特徴とする請求項1記載の銅合金材料。
  3. Zr:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、及びZrのみを合金元素として含有して前記溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする請求項1記載の銅合金材料。
  4. Mg:0.005〜0.3重量%を含み、Ni、Co、Si、Zr、及びMgのみを合金元素として含有して前記溶接装置用銅合金電極を成すことを特徴とする請求項3記載の銅合金材料。
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