JP2013204087A - 高強度高熱伝導性アルミニウム合金部材とその製造方法 - Google Patents

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之欣 附田
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Abstract

【課題】低廉なスクラップ原料を用い、ダイカストによりヒートシンクなどの薄肉放熱部材を成形し、熱処理により高強度と高熱伝導性を発現するアルミニウム合金部材とその製造方法を提供する.
【解決手段】
8mass%(以下%)<Si<11%、0.2%<Mg<0.3%、0.3%<Fe<0.7%、0.15%<Mn<0.35%、1<Fe+Mn×2、0.005%<Sr<0.020%、Cu<0.2%、Zn<0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、鋳造後に200℃<T<250℃で0.1〜1時間保持することを特徴とする室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上であるアルミニウム合金部材とその製造方法.
【選択図】なし

Description

本発明は熱制御(管理)部材の中で、ヒートシンクなどの放熱部材を構成する高強度高熱伝導性アルミニウム合金、および製造方法に関する。
現在、放熱部材としてのヒートシンクは以下の分野と各製品群に多量に用いられている。
・電子電気機器(PCやゲーム機などのCPUやチップセット、AVアンプやオーディオ機器のパワートランジスタ、プロジェクタなどの投影機、LED電球)
・情報通信(電力設備の各種インバータ、携帯電話や無線機器)
・自動車(HEV・EVなど高出力モーター制御用のパワートランジスタ、LED照明)
特にLED照明や太陽光発電装置、HEV・EV、パワーモジュールを用いる産業機器では、発熱量の増大からヒートシンクを含む放熱部材の必要性が高まっており、今後の高成長が予測される。ヒートシンクは発熱する機械・電気部品に取り付け、熱の放散によって温度を下げる部品であり、要求特性としては、熱抵抗の低下を図るため表面積が広くなるような形状(フィン、剣山、蛇腹)を必要とする。従来、これらヒートシンクはアルミニウム合金の押出しやプレスによる単機能な単純形状のものが多く用いられてきたが、近年では高機能・意匠性が重視される複雑形状のものに鋳造、特にアルミニウム合金のダイカストが用いられてきている。
しかし、ヒートシンク部材のフィンは肉厚が1mm前後と薄肉になっており、ダイカストするためにはアルミニウムにSiを5%以上添加する必要がある。また、特に薄肉のために金型への焼き付き防止という観点から、Feを0.5%程度添加する必要がある。一方、添加物の含有量が増加するにつれて熱伝導率は減少することが知られており、流動性を確保するSiとFe以外の不純物元素を極力低減した合金が開発されている(特許第4191370号(特許文献1))。しかし、この種の合金は新塊を原料に用いるためにコスト高であると共に、純アルミニウム原料精錬時に多量の電力を使用しCO2排出量が増大し、さらにリサイクルできないために環境負荷が高いという問題を有している。
また、ダイカスト後に高温で熱処理を施すことで熱伝導率を向上させることができるが、この原因は晶出したSiが球状化することによる(日本ダイカスト会議論文集:2002、P89(非特許文献1))。しかし、一般のダイカスト品に400℃を越えるような高温熱処理を長時間施すと、巻き込んだガスの合体によるブリスター発生や、鋳造ひずみの開放によるソリや変形が起こるという課題があった。
日本特許第4191370号
日本ダイカスト会議論文集:2002、P89
本発明は上記したような課題に鑑みなされたものであって、原料コストとCO2ガス排出量の低減、ダイカスト性を改善し、および鋳造後熱処理の短縮を可能にする高強度高熱伝導性合金部材とその製造方法を提供することを目的とする。
本願発明者は、上記した課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、不純物を含む合金組成を最適化することで流動性の確保と焼き付防止の改善、かつ鋳造後の共晶Si粒状化による熱伝導率の改善による熱処理時間の短縮化により、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上の高熱伝導性を示すことを見出した。
本発明は、Si、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを質量%で表示して以下の組成範囲で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上であることを特徴とするアルミニウム合金部材に関する。
8 %<Si<11%、
0.2%<Mg<0.3%、
0.3%<Fe<0.7%、
0.15%<Mn<0.35%、
1<Fe+Mn×2、
Cu<0.2%、
Zn<0.2%、
0.005%<Sr<0.020%
上記本発明のアルミニウム合金部材は、Si、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを質量%で表示して以下の組成範囲で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金部材を製造し、次いで、この合金部材を200℃<T<250℃でかつ0.1hr<t<1hrの時効処理を施すことを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法により製造できる。この方法で製造されたアルミニウム合金部材は、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上である。
8 %<Si<11%、
0.2%<Mg<0.3%、
0.3%<Fe<0.7%、
0.15%<Mn<0.35%、
1<Fe+Mn×2、
Cu<0.2%、
Zn<0.2%、
0.005%<Sr<0.020%
以上のように本発明によれば、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上である、薄肉の高強度でかつ高熱伝導性アルミニウム合金製ヒートシンクがダイカスト手法を用いても工業的に製造できる。
引張試験片の形状を示す。 熱伝導率測定試験片の形状を示す。
本発明のアルミニウム合金部材は、Si、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを質量%で表示して前記の組成範囲で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。各成分の含有範囲に関して以下に説明する。
Siは8%を越えて含有すると、溶湯の流動性が向上して薄肉成形に関して有利となるが、11%以上含有すると時効処理後に多量のMg2Si化合物が形成され過ぎて靱性が大きく低下するため、11%未満とする。Si含有量は好ましくは8.1 %以上、10.5%以下である。
Mgは0.2%を越えて含有すると、時効処理によりSiと象形文字型のMg2Si化合物を形成して強度を向上させるが、0.3%以上では溶湯の酸化傾向が増大するため、0.3%未満とする.Mg含有量は好ましくは0.21%以上、0.27%以下である。
Feは0.3%を越えて含有すると、ダイカスト時の焼き付き防止に効果があるが、0.7%以上含有すると凝固時にAl-Fe系の針状化合物が晶出して靱性を低下させるため、0.7%未満とする.Fe含有量は好ましくは0.35%以上、0.6%以下である。
Mnは0.15%を越えて含有すると、上記Fe含有量で不十分な焼き付き防止に多大な効果を付与するが、0.35%以上含有すると熱伝導率が大幅に低下するため、0.35%未満とする。Mn含有量は0.20%以上、0.34%以下とする。
さらに、FeとMnの2倍の合計(Fe+Mn×2)が1%を越えることで、焼き付き防止と熱伝導率低下が両立できることを見出した。Fe+Mn×2は好ましくは1.01%以上である。Fe+Mn×2の上限は1.4%未満である。
Cuは0.2%以上含有すると、耐食性が低下するとともに熱伝導率が大きく低下するため、0.2%未満とする。Cu含有量は、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.13%以下である。
Znは0.2%以上含有すると、熱伝導率が大きく低下するため、0.2%未満とする。Zn含有量は、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.13%以下である。
Srは0.005%を越えて含有すると、凝固時に晶出する共晶Siを粒状化して、熱伝導率が大幅に向上する。さらに、時効熱処理に機械的性質が向上する。このとき、放熱部品の仕様レベルによっては熱処理が不要となる。しかし、0.02%を越えて含有すると、溶湯の脱ガス能が低下する上に脆いAl-Sr系化合物が形成されて靱性が低下するため、0.02%未満とする。Sr含有量は、好ましくは0.007%〜0.018%、より好ましくは0.008%〜0.017%、さらに好ましくは0.007%〜0.016%、一層好ましくは0.008%〜0.015%の範囲である。
本発明のアルミニウム合金部材は、上記成分以外の残部がAlおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、通常、合計量が0.01質量%であり、後述するように原料として使用する再生塊インゴットおよび母合金に由来するものである。特に、再生塊インゴットを用いる場合、再生塊インゴットの由来によっては、不可避的不純物が混入しやすい場合がある。
上記本発明のアルミニウム合金部材は、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上であるが、この点については、製造方法の説明と併せて説明する。
上記本発明のアルミニウム合金部材は、上記組成範囲でSi、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金部材を製造し、次いで、この合金部材を200℃<T<250℃でかつ0.1hr<t<1hrの時効処理を施すことで製造できる。
時効処理を施す対象とする合金部材は、出発原料としては、全世界で入手しやすくCuとZnの濃度を0.2%未満に抑えることができる安価なAC4CやAC4CH合金の再生塊インゴットを用いることが望ましい。AC4CやAC4CH合金の一般的な成分表を以下に示す。AC4CおよびAC4CH合金の再生塊インゴットも下記表に示す組成に準じた組成を有する。
再生塊インゴットを用いることで、新塊を用いる場合に比較して電力量は5%程度で済むため、CO2排出量を95%削減でき、原料コストも低く抑えられる。バッチ炉あるいは連続炉に前記インゴットを投入し、さらに、含有元素が、各添加元素の含有量が、所定の範囲になるように、それぞれの母合金を用いて、例えば、溶湯を700℃に保持・調整する。具体的には、Si添加用にはAl-Si母合金(例えば、Al-25%Si)、Mn添加用にはAl-Mn母合金(例えば、Al-10%Mn)、Mg添加用にはAl-Mg母合金(例えば、Al-20%Mg)を用いることができる。Sr添加用にはAl-Sr母合金(例えば、Al-10%Sr)を用いることができる。Si、Mn、Mgは、再生塊インゴットにも含まれており、用いる再生塊インゴットの種類によっては、母合金を用いることなく、所定の含有量に調整することもできる。Fe、Cu、Znも、それぞれ再生塊インゴットに含有されている成分であり、しかし、比較的低い値にすることが好ましい成分であることから、再生塊インゴットはFe、Cu、Znの含有量が比較的低いものを選択することが好ましい。その後、必要に応じて不活性ガスを用いた溶湯処理を行い、水素ガスおよび介在物を所定レベルまで除去することができる。
上記溶湯から所定の形状の合金部材を形成し、その後に、熱伝導率と機械的性質を向上させて所定の値、即ち、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度であり、かつ熱伝導率が145W/K・m以上である合金部材を得るために時効処理を行う。時効処理においては、まず、合金部材中にMg2Siが析出して熱の散乱因子となる固溶Siが低下するため熱伝導率が向上する。また同時に、これら化合物が適切な量時効析出することにより機械的性質が向上する。熱伝導率の向上と機械的性質の向上とを両立するためには、加熱温度および時間が限られる。即ち、加熱温度は、200℃以下ではMg2Siの析出が不十分であり、一方、250℃以上では過時効となり機械的性質は逆に劣化する。さらに時間に関しては、0.1時間以下ではMg2Siの析出が不十分であり、1時間以上では熱処理コストが増大するばかりでなく機械的性質も低下する。時効処理は、好ましくは210〜245℃、より好ましくは220〜230℃の温度において、好ましくは0.2〜0.9時間、より好ましくは0.3〜0.8時間、さらに好ましくは0.4〜0.8時間実施する。
前記合金組成を有し、かつ所定の時効処理を施した合金部材は、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度を有するとともに、熱伝導率が145W/K・m以上である合金部材である。引張耐力は高強度という観点からは高いほど好ましく、この点での上限はないが、事実上は、250MPa以下であり、好ましくは230MPa以下である。熱伝導率も高いほど好ましく、従ってこの点での上限はないが、事実上は、180W/K・m以下、好ましくは170W/K・m以下である。
以下本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定される意図ではない。
以下、本発明の一実施例を図について説明する。
出発原料としては、全世界で入手しやすくCuとZnの濃度を0.2%未満に抑えることができる安価なAC4CまたはAC4CH合金の再生塊インゴットを用いた。バッチ炉あるいは連続炉に前記インゴットを投入し、含有元素が、表1の合金材1および2のようになるようにAl-25%Si母合金、Al-10%Mn母合金およびAl-20%Mg母合金を用いて溶湯700℃に保持・調整し、さらに、最後にAl-10%Sr母合金を表1の合金材1および2のようになるように添加した。鋳造機として350tの型締め力を有するコールドチャンバー式ダイカストマシン、金型としてテストピース金型をそれぞれ用い、ロボットで溶解保持炉から湯をくみ、スリーブに注湯後、高速域1.5m/sで金型に射出して凝固後、金型からエジェクタピンで押し出し試料を取り出して、以下の各試験に供した。なお、比較合金材として汎用のダイカスト用合金や従来報告されている高熱伝導性合金に関しても同様のテストピースを採取した。熱処理は大気炉を用い、170、200、230℃の各温度で0.5〜2hr行ない、熱処理後は炉から試験片を取り出して空冷を行った。
化学成分は、発光分光分析により決定し、比較材も併せて表1にまとめた。機械的性質は、図1に示す形状の引張試験片を用い、室温における0.2%耐力を測定した。熱伝導性は、図2に示す形状の試験片に加工し、レーザーフラッシュ法により室温の熱伝導率を測定した。これらの結果を表2にまとめた。
表2から明らかなように、200℃および230℃において0.5hrの短時間熱処理で0.2%耐力が増大する。一方、200℃に比べて230℃では熱伝導率が向上している。これらのことより、200℃<T<250℃でかつ0.1hr<t<1hrの時効処理である、230℃において0.5hr熱処理した合金に関しては、高強度と高熱伝導性が両立できることが判明した。
本発明の高強度・高熱伝導性アルミニウム合金は、LED照明や太陽光発電装置、HEV・EV、パワーモジュールを用いる産業機器で必要性が高まっている発熱量の増大からヒートシンクを含む放熱部材として有用である。また本発明は、高強度部材であり、車体用構造材としても有用である。

Claims (2)

  1. Si、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを質量%で表示して以下の組成範囲で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上であることを特徴とするアルミニウム合金部材。
    8 %<Si<11%、
    0.2%<Mg<0.3%、
    0.3%<Fe<0.7%、
    0.15%<Mn<0.35%、
    1<Fe+Mn×2、
    Cu<0.2%、
    Zn<0.2%、
    0.005%<Sr<0.020%
  2. Si、Mg、Fe、Mn、Cu、ZnおよびSrを質量%で表示して以下の組成範囲で含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金部材を製造し、次いで、この合金部材を200℃<T<250℃でかつ0.1hr<t<1hrの時効処理を施すことを特徴とする、室温における引張耐力が200MPa以上の高強度でかつ熱伝導率145W/K・m以上であるアルミニウム合金部材の製造方法。
    8 %<Si<11%、
    0.2%<Mg<0.3%、
    0.3%<Fe<0.7%、
    0.15%<Mn<0.35%、
    1<Fe+Mn×2、
    Cu<0.2%、
    Zn<0.2%、
    0.005%<Sr<0.020%
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