JP2008153112A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の運転温度制御において、冷却液ポンプがコントローラ(冷却液温調制御手段)と通信せずとも、自律して回転数制御を行うことで、ノイズ低減装置等の設置をせずに、燃料電池の運転に応じた流量の冷却液を供給できる方法を提供する。
【解決手段】冷却液ポンプ20にて、ポンプ回転数と、ポンプ消費電力と、ポンプ冷却液温度とを測定し、これらの値を基に、冷却液ポンプ20に備えた回転数制御手段にて目標回転数を算出する。そして、この目標回転数にて冷却液ポンプ20を自律運転する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池の運転温度を制御する燃料電池システムに関する。
従来、特許文献1に記載の燃料電池システムのように、燃料電池入口冷却水温度センサ並びに燃料電池出口冷却水温度センサで測定された温度をコントローラに入力し、冷却水ポンプ並びに調整弁の動作を制御し、燃料電池にて熱交換された冷却水をラジエータとラジエータバイパス流路に分流することにより、燃料電池の運転温度の制御を行うことが知られている。
これは、燃料電池の運転温度を最適に保ちつつ、燃料電池内部の温度分布を所望の範囲に抑えることができるという利点がある。
特開2005−63743号公報
しかし、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池の運転温度の制御において、コントローラと冷却水ポンプとの間で通信を行う場合、ハーネスや接続電子機器等に起因する電磁波等の影響を抑制するため、ノイズ低減装置等の設置が必要となる。
本発明はこのような実情を鑑み、冷却液ポンプは、コントローラと通信せずとも、燃料電池の運転に応じた流量の冷却液を供給できるようにすることを目的とする。
そのため本発明では、冷却液ポンプにて、ポンプ回転数と、ポンプ消費電力と、ポンプ冷却液温度とを測定し、これらの値を基に、冷却液ポンプに備えた回転数制御手段にて目標回転数を算出する。そして、この目標回転数にて冷却液ポンプを運転するべく、回転数制御手段は冷却液ポンプの回転数制御を行う。
本発明によれば、冷却液ポンプは、コントローラ(冷却液温調制御手段)からの回転数制御指令を受けることなく、自律して回転数制御を行うことが可能であるので、ノイズ低減装置等を設置せずとも、冷却液ポンプは燃料電池の運転に応じた流量の冷却液を供給することができる。
以下、本発明の第1の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における燃料電池システムの構成図である。
図1に示す燃料電池システムは、燃料ガス(例えば、水素)及び酸化剤ガス(例えば、空気)の供給により発電を行う燃料電池スタック10と、この燃料電池スタック10に冷却液を循環供給して冷却するための電池冷却液系(以下、「冷却系」と称する)とを備えている。
この冷却系は、燃料電池スタック10の冷却液出口側にて冷却液を吸入圧送して冷却液を循環させる電動式の冷却液ポンプ20と、冷却液ポンプ20の吐出側の冷却液ライン30に配置されたラジエータ40(熱交換器)と、ラジエータ40を冷却する電動式のラジエータファン45(冷却用空気供給手段)と、冷却液ポンプ20の吐出側に冷却液ライン30と並列に設けられてラジエータ30をバイパスするバイパスライン50と、冷却液ライン30とバイパスライン50との下流側合流部に設けられて、これらを流れる冷却液の流量比を調整可能で、出口側ポートが燃料電池スタック10の冷却液入口部につながる三方弁60(冷却液流量比調整手段)と、燃料電池スタック10の冷却液入口側での冷却液温度を測定する燃料スタック入口側冷却液温度センサ70とを有している。
また、燃料電池スタック10の出力と、燃料スタック入口側冷却液温度センサ70で測定される温度とを監視して、三方弁60の開度とラジエータファン45の回転数とを制御する、コントローラ80(冷却液温調制御手段)を有している。ここで、三方弁60の開度は、ラジエータ40側を全開(バイパスライン50側を全閉)にしたときに100%とし、ラジエータ40側を全閉(バイパスライン50側を全開)にしたときに0%とする。
なお、図1では、主に冷却液による冷却系の構成について図示しており、例えば水素供給系や空気供給系等の構成については図示を省略しているが、他の燃料電池システムにて公知になっている水素供給系や空気供給系等の構成を本実施形態に利用することができる。
図2は、本実施形態における冷却液ポンプ20の構成図である。
冷却液ポンプ20は、冷却液ポンプ20内を通過する冷却液の温度を測定する冷却液温度測定手段である冷却液温度センサ21と、冷却液ポンプ20で消費する電流を測定する電流測定手段である電流センサ22と、冷却液ポンプ20へ供給される電圧を測定する電圧測定手段である電圧センサ23と、冷却液ポンプ20の回転数を測定する回転数測定手段である回転数センサ24と、冷却液温度センサ21、電流センサ22、電圧センサ23及び回転数センサ24で測定された値を読み取り、冷却液ポンプ20の回転数を制御する回転数制御手段であるポンプコントローラ25とを有している。ここで、回転数センサ24は、例えば、DCセンサレスモータ等で利用されているような、ポンプ内モータの電磁石に発生する逆起電力によって回転数を測定する方式のセンサ等が利用可能である。
次に、本実施形態における、コントローラ80(冷却液温調制御手段)による冷却液の温調制御方法について、図3を用いて説明する。
燃料電池スタック10は、発電効率の要求から所望の温度に温調する必要がある。
本実施形態においてはこの要求を満たすために、燃料電池スタック10の入口側冷却液温度を例えば50℃となるように温調することとする。
冷却液の温調制御を行うにあたり、コントローラ80は、燃料電池スタック入口側冷却液温度センサ70にて測定した燃料電池スタック入口側冷却液測定温度と、予め設定した燃料電池スタック入口側冷却液目標温度とを比較し、その誤差からラジエータ40で放熱する目標放熱量を算出する(図3のB1)。この目標放熱量が大きいほど、三方弁60の開度を大きくする(つまり、ラジエータ40側への冷却液流量を増やす)ように演算し(図3のB2)、この演算結果を三方弁開度指令値として三方弁60へ送信し、三方弁60の開度調整を行う。また、前記の目標放熱量が大きいほど、ラジエータファン45の回転数を増加させる(つまり、ラジエータ40へ供給する風量を増やす)ように演算(図3のB2)した後、ラジエータ40に供給する必要風量分を補正するため、車速を基に、ラジエータファン回転数係数を演算する(図3のB3)。このラジエータファン回転数係数は、車速が小さいほど大きな値を取る特性を持つ。つまり、車速が小さいほど、ラジエータファン45の回転数を増加させ、ラジエータ40へ供給する風量を増加させるようにする。このラジエータファン回転数係数を用いて、前記演算したラジエータファン45の回転数を補正し、この結果をラジエータファン回転数指令値としてラジエータファン45に送信し、ラジエータファン45の回転数制御を行う。
次に、本実施形態における冷却液ポンプ20での冷却液の流量制御方法について、図4乃至図8を用いて説明する。
燃料電池は、発電による燃料電池自身の発熱により、燃料電池内セパレータ等に熱応力がかかるのを防止するため、燃料電池に温度差がつかないようにする必要がある。このため、発電による発熱に応じて、燃料電池に冷却液を流さなければならない。本実施形態においては、燃料電池発熱による燃料電池スタック10の入口側と出口側との間の冷却液温度差が例えば20℃以上とならないように、燃料電池スタック10の出力に応じた冷却液流量に制御することとする。なお、本実施形態において、燃料電池スタック10の出口側冷却液温度は冷却液ポンプ内冷却液温度と同温度であるとして以下説明するが、燃料電池スタック10の出口側冷却液温度を測定するセンサ等を別途設置し、その測定値を用いてもよい。
燃料電池スタック10の出力に応じた冷却液流量に制御する際、冷却液ポンプ20は、燃料電池スタック10の出力によって定まる冷却液流量を圧送するために、冷却系全体の圧力損失に応じて、ポンプ回転数を制御する必要がある。
そこで、本実施形態における、ポンプコントローラ25(回転数制御手段)による冷却液の流量制御方法の概略について、図4を用いて説明する。なお、図4で用いている燃料電池スタック10の出力及び三方弁60の開度の算出方法については後述する。
図4では、まず、ポンプコントローラ25にて算出された燃料電池スタック10の出力が大きいほど冷却液流量が多くなるように演算し(図4のB4)、燃料電池スタック10の目標冷却液流量を得る。次に、この目標冷却液流量が多いほど、冷却液ポンプ20の回転数が増加するように演算を行う(図4のB5)。この際、ポンプコントローラ25にて算出された三方弁60の開度が大きいほど(つまり、ラジエータ40側への冷却液流量が多いほど)、目標冷却液流量に対する冷却液ポンプ20の回転数が増加するように演算を行う。また、冷却液温度センサ21にて測定したポンプ冷却液温度が高くなるほど、冷却系全体の圧力損失を反映した補正係数は低い値を取るように演算を行う(図4のB6)。この補正係数にて冷却液ポンプ20の回転数を乗算補正(図4のB7)し、ポンプ回転数指令値とし、冷却液ポンプ20の回転数を制御する。
以上、図4より、冷却液ポンプ20の回転数制御にあたり必要となるパラメータは、燃料電池スタック10の出力(計算値)、三方弁60の開度(計算値)及び冷却液ポンプ20内の冷却液温度(測定値)であることがわかる。
次に、前述した燃料電池スタック10の出力及び三方弁60の開度の算出方法を図5乃至図7を用いて説明する。
冷却液ポンプ20が測定している値については、
冷却液ポンプ回転数:Np
冷却液ポンプ消費電流:I
冷却液ポンプ供給電圧:V
冷却液ポンプ消費電力:Wp=V×I
冷却液ポンプ内冷却液温度(燃料電池スタック出口側冷却液温度):To
とする。
また、燃料電池スタック出力:W
燃料電池スタック発熱量:Wq
三方弁開度:D
燃料電池スタック入口側冷却液温度:Ti
冷却液ポンプから吐出される冷却液流量:Q
冷却系全体の圧力損失:ΔH
冷却液の定圧比熱:Cp
冷却液ポンプの揚程:Hp
とする。
図5は冷却系全体の圧力損失ΔHの特性を示している。
冷却液流量Qが増加するに従い、冷却系全体での圧力損失ΔHも増加する。
また、三方弁開度Dが大きくなるほど(つまり、ラジエータ側の冷却液流量が増加するほど)、冷却系全体での圧力損失ΔHも増加していく(つまり、図5に示す曲線の傾きは大きくなっていく)。
また、冷却液ポンプ内冷却液温度Toが上がるに従い、冷却系全体での圧力損失ΔHは減少していく(つまり、図5に示す曲線の傾きは小さくなっていく)。
さらに、図5より、冷却系全体の圧力損失ΔHの特性は、以下のような関数となる。
ΔH=h(D,To,Q)
D=h −1(ΔH,To,Q) ・・・(1)
続いて、冷却液ポンプ20の特性を図6に示す。
冷却液流量Qが増加するに従い、冷却液ポンプ消費電力Wp及び冷却系全体の圧力損失ΔHは増加する。また、冷却液ポンプの揚程Hp及び冷却液ポンプ消費電力Wpは、冷却液ポンプ回転数Npの増加に伴い、各値も増加することを示している。
さらに、冷却液ポンプ回転数Npのときに発生する冷却液ポンプの揚程Hpと、冷却系全体の圧力損失ΔHにより冷却液流量Qが定まり、この冷却液流量Qと冷却液ポンプ回転数Npにより、冷却液を圧送するために必要な冷却液ポンプ消費電力Wpが定まる。つまり、冷却液ポンプ回転数Npのときの冷却液ポンプ消費電力Wpがわかれば、冷却液流量Qを算出することができ、さらにこの冷却液流量Qと冷却液ポンプ回転数Npがわかれば、冷却系全体の圧力損失ΔHを算出することができる。
図7は、冷却液ポンプ回転数Npのとき、冷却液流量Qの増加に伴い、冷却液ポンプ消費電力Wp及び冷却系全体の圧力損失ΔHは増加することを示している。また、冷却液ポンプ回転数Npのとき、ポンプ消費電力Wpより冷却液流量Qを算出し、これを基に冷却系全体の圧力損失ΔHを算出する方法を示している。
以上を式に示すと、
Q=q(Np,Wp)=q(Np,I,V) ・・・(2)
ΔH=h(Np,Q)
=h(Np,q(Np,I,V)) ・・・(3)
となる。
式(1)、式(2)及び式(3)より、三方弁開度Dの特性を示す関数は、
D=d(Np,I,V,To) ・・・(4)
となり、冷却液ポンプ回転数Np、冷却液ポンプ消費電流I、冷却液ポンプ供給電圧V及び冷却液ポンプ内冷却液温度Toより、三方弁開度Dを算出することができる。
次に、燃料電池スタックの発熱量Wqは、燃料電池スタック出力Wに比例するので、
W=k×Wq ・・・(5)
ここで、kは定数とする。
また、燃料電池スタックの発熱量Wqと冷却液との熱交換について示すと、
Wq=CpQ(To−Ti)
=w(Q,To,Ti) ・・・(6)
と表すことができる。
式(2)、式(5)及び式(6)より、
W=k×w(Q,To,Ti)
=k×w(q(Np,I,V),To,Ti) ・・・(7)
となる。
ここで本実施形態においては、コントローラ80により通常の発電時は50℃となるように温調制御されているので、式(7)の燃料電池スタック入口側冷却液温度Ti=50℃(設定値であり定数)であるので、燃料電池スタック10の出力Wは、冷却液ポンプ回転数Np、冷却液ポンプ消費電流I、供給電圧V及び冷却液ポンプ内冷却液温度Toより算出することができる。
次に、本実施形態において、実際の燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiが50℃より低い場合又は高い場合の冷却液ポンプ20の回転数制御について説明する。
まず、実際の燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiが50℃より高い場合、ここでは仮に燃料電池スタック入口側冷却液温度Ti=60℃であったと仮定する。
実際の燃料電池スタック10の発熱量Wqによる熱交換によって、燃料電池スタック出口側液温度To=70℃に上昇したとする。
この場合、実際の燃料電池スタック10の発熱量Wqは、
Wq=CpQ(70−60)=10CpQ
となり、実際の燃料電池スタック10の出力Wは、
W=10kCpQ
である。これに対して、ポンプコントローラ25が算出する燃料電池スタック10の出力Wは、
W=kCpQ(70−50)=20kCpQ
となり、実際の燃料電池スタック10の出力よりも大きい値を算出し、冷却液ポンプ20は実際に必要な冷却液流量より、多い流量を圧送する回転数となる。しかし、燃料電池スタック10としては、入口側と出口側との間の冷却液温度差が20℃以下となるように冷却液流量が流れればよいので、燃料電池スタック10に対して、冷却液流量が多い分には問題となることはない。また、コントローラ80は燃料電池スタック入口側冷却液温度センサ70を介して燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiを監視し、三方弁60の開度調整及びラジエータファン45の回転数制御を行っているため、実際の燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiは次第に50℃となり、冷却液ポンプ20は最適な回転数制御を行うことができる。
次に、実際の燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiが50℃より低い場合、ここでは仮に燃料電池スタック入口側冷却液温度Ti=40℃であったと仮定する。
この場合に対応したポンプコントローラ25の構成及び回転数制御を行う方法の概略を図8に示す。
図8は図4と比較して、ポンプコントローラ25に三方弁60の開度の変化速度を検出する三方弁開度変化速度検出手段(流量比変化速度検出手段)と、この三方弁開度変化速度検出手段により、三方弁60の開度の変化速度が設定値より速いことを検出した場合、冷却液ポンプ20の回転数を増加できるように、ポンプ回転数指令値を選択する手段(セレクトハイ)とを有する点が異なっている。以下、詳細に説明する。
実際の燃料電池スタック10の発熱量Wqによる熱交換によって、燃料電池スタック出口側冷却液温度To=60℃に上昇したとする。
この場合、実際の燃料電池スタック10の発熱量Wqは、
Wq=CpQ(60−40)=20CpQ
となり、実際の燃料電池スタック10の出力Wは、
W=20kCpQ
である。これに対して、ポンプコントローラ25が算出する燃料電池スタック10の出力Wは、
W=kCpQ(60−50)=10kCpQ
となり、実際よりも小さい値を算出し、冷却液ポンプ20は実際に必要な冷却液流量よりも少ない流量を圧送する回転数となる。このとき、つまり、実際の燃料電池スタック入口側温度Tiが設定温度より低く、ポンプコントローラ25が算出する燃料電池スタック10の出力Wより実際の燃料電池スタック10の出力Wの方が大きい状況が続いた場合は、コントローラ80は、通常よりも速い速度で三方弁60の開度を0%(つまり、ラジエータ40側を全閉、バイパスライン50側を全開)とする。
この際、ポンプコントローラ25にて、三方弁開度Dを前記式(4)を用いて算出しているが、この算出結果から三方弁60の開度変化速度が設定値よりも速いことを三方弁開度変化速度検出手段(図8のB8)が検出した場合、冷却液ポンプ20は回転数を増加させるように(例えば、図8のB9において、冷却液ポンプ20の回転数を最高値NpMAXとするように)、冷却液ポンプ回転数Npを出力し、この出力結果と、図4と同様に演算して得た冷却液ポンプ回転数Npとをセレクトハイ(ポンプ回転数指令値を選択する手段、図8のB10)にて比較し、高回転数の方を選択し、この選択結果をポンプ回転数指令値として、冷却液ポンプ20の回転数制御を行う。
次に、本実施形態において、燃料電池スタック10が発電を開始した場合について説明する。
燃料電池スタック10が起動時は、冷却液の温度は50℃より低く、仮に20℃であったとする。また起動時の三方弁50の開度は0%(つまり、ラジエータ40側が全閉、バイパスライン50側が全開)になっているとする。このとき、図5より、冷却系全体の圧力損失ΔHは、冷却液流量Q及び冷却液ポンプ20内の冷却液温度Toによって決まる。冷却液ポンプ20は、回転を開始した時点で、冷却液ポンプ20内の冷却液温度Toが、例えば50℃を下回っていた場合、冷却液ポンプ20は起動モードポンプ制御を行う。
起動モードポンプ制御では、任意の回転数Rsで回り続け、一定の流量を圧送する。ポンプコントローラ25は前記式(2)により冷却液流量を算出すると共に、過去数秒間の冷却液温度を記憶し、この記憶した冷却液温度と算出された冷却液流量とを用いて、現在冷却液ポンプ20に流入してきた温度Tn+1の冷却液が、前回の吐出時に温度Tであったと演算できるので、
W=kCpQ(Tn+1−T
により、燃料電池スタック10の出力Wを算出することができる。この算出した燃料電池スタック10の出力Wから要求される冷却液流量が大きい場合には、その要求流量を満たすための冷却液ポンプ20の回転数Npを算出し、回転数を増加させる。逆に、算出した燃料電池スタック10の出力Wから要求される冷却液流量が小さい場合は、任意の回転数Rsで回り続ける。そして、徐々に冷却液温度が上昇し、燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiが50℃近くになってきたところで、三方弁60が温調のためにコントローラ80により制御され始め、冷却液ポンプ20は三方弁60の開度が変動したことを三方弁開度変化速度検出手段にて検出すると、通常の冷却液ポンプの回転数制御となり、燃料電池スタック10に対して、最適な冷却液の流量を圧送する。
図9は、燃料電池起動時の冷却液ポンプ20の起動モードポンプ制御を行った場合の各パラメータの時系列データの一例を示している。以下、詳細に説明する。
燃料電池の起動時、燃料電池スタック10の入口側及び出口側冷却液温度は、Ti=To=20℃である。冷却液ポンプ20は起動モードポンプ制御となり、冷却液ポンプ20の回転数Rs=1000rpmで回転する。その後、燃料電池は発電を開始し、これに伴い、燃料電池スタック10の発熱量が徐々に上昇する。この際、三方弁60の開度Dはバイパスライン50側全開(つまり、ラジエータ40側全閉)の0%で一定であるので、冷却液の全流量がバイパスライン50を通過する。このため、燃料電池スタック10の入口側冷却液温度Ti及び出口側冷却液温度Toは徐々に上昇する。燃料電池スタック入口側冷却液温度Tiが50℃近くなってくると、三方弁60は徐々に開度を上げていき(つまり、ラジエータ40側へ冷却液の流量を増していき)、冷却液ポンプ20は三方弁60の開度変化を三方弁開度変化速度検出手段にて検出した時点で、前述の通常の回転数制御へ移行する。
本実施形態によれば、燃料電池スタック10の出力に応じた流量の冷却液を供給するため、冷却液温調制御手段(コントローラ80)からの回転数指令がなくとも、冷却液ポンプ20自身が、ポンプ回転数Npと、ポンプ消費電力Wpと、ポンプ冷却液温度Toとから算出した目標回転数に基づき、回転数制御手段により自律で回転数制御ができる。
また本実施形態によれば、燃料電池スタック10の出力に応じた流量の冷却液を供給するため、回転数制御手段(ポンプコントローラ25)において、ポンプ回転数と、ポンプ消費電力と、ポンプ冷却液温度とを基に燃料電池スタック10の出力を算出することができ、かつ、この燃料電池スタック10の出力を冷却液ポンプ20の目標回転数の算出に用い、この目標回転数に基づいて、燃料電池スタック10の出力に応じた冷却液ポンプ20の回転数制御ができる。
また本実施形態によれば、燃料電池スタック10の出力に応じた流量の冷却液を供給するため、回転数制御手段(ポンプコントローラ25)において、ポンプ回転数と、ポンプ消費電力と、ポンプ冷却液温度とを基に冷却液流量比調整手段(三方弁60)の流量比(開度)を算出することができ、かつ、この冷却液流量比調整手段(三方弁60)の流量比(開度)を冷却液ポンプ20の目標回転数の算出に用い、この目標回転数に基づいて、燃料電池スタック10の出力に応じた冷却液ポンプ20の回転数制御ができる。
また本実施形態によれば、回転数制御手段(ポンプコントローラ25)に設置した冷却液流量比調整手段(三方弁60)の流量比変化速度検出手段(三方弁開度変化検出手段)が設定値より大きな変化速度を検出した場合、冷却液ポンプ20の回転数を増加させるように制御することが可能であり、この結果として、燃料電池スタック10の出力に対し必要な流量の冷却液を短時間で供給することができる。

次に本発明の第2の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態における燃料電池システムの構成図である。
図1にて示した第1の実施形態との相違点について説明する。
コントローラ80(冷却液温調制御手段)は、冷却液ポンプ20の回転数制御を行う機能を有し、コントローラ80からのポンプ回転数制御指令を、通信ライン100(通信手段)を介して冷却液ポンプ20に伝達する。また、コントローラ80は、通信ライン100の通信異常を検出する通信異常検出手段を備え、報知ライン110を介して報知器120(報知手段)の作動を可能にしている。さらに、図示はしていないが、冷却液ポンプ20内のポンプコントローラ25にも、通信ライン100の通信異常を検出する通信異常検出手段を備えている。
このような構成において、通常は、冷却液ポンプ20の回転数制御機能を有するコントローラ80から送信されたポンプ回転数制御指令を冷却液ポンプ20は受信し、この回転数指令に基づいて冷却液ポンプ20の回転数は制御されている。しかし、通信ライン100本体又は通信ライン100にて伝送される通信信号等に異常が発生した場合、冷却液ポンプ20内のポンプコントローラ25に備えている通信異常検出手段が異常を検出すると、冷却液ポンプ20は、第1の実施形態にて示した、自律した回転数制御へと移行する。また、コントローラ80に備えられた通信異常検出手段により、冷却液ポンプ20と通信ができなくなったことを、報知ライン110を介して報知器120に伝送する。
図11では、本発明の第2の実施形態における燃料電池システムのフローの概要を示している。
冷却液ポンプ20が起動している状態において、ステップS201にて、コントローラ80からのポンプ回転数制御指令が、冷却液ポンプ20に到達しているかどうか(すなわち、通信ライン100の通信異常がないかどうか)を判定する。このポンプ回転数制御指令が到達している場合は、ステップS202にてポンプ回転数制御機能を有するコントローラ80からのポンプ回転数制御指令に従い、冷却液ポンプ20は運転を継続し、ステップS201に戻る。一方、ステップS201にて、コントローラ80からのポンプ回転数制御指令が、冷却液ポンプ20に到達していない場合は、ステップS203に進み、冷却液ポンプ20にて回転数を自律制御する。また、ステップS203にて冷却液ポンプ20が回転数を自律制御しているときは、コントローラ80と冷却液ポンプ20との間の通信が異常状態であるので、ステップS204にて通信異常検出手段を有するコントローラ80から報知器120を介して、運転者へ報知した後、ステップS201に戻る。
特に本実施形態によれば、冷却液温調制御手段(コントローラ80)から冷却液ポンプ20への回転数指令に異常がある場合に、冷却液ポンプ20が自律して回転数制御を行うので、冷却液温調制御手段(コントローラ80)からの回転数指令を冷却液ポンプ20が受け取れない場合でも、燃料電池スタック10の出力に応じた流量の冷却液を供給することができる。
また本実施形態によれば、冷却液温調制御手段(コントローラ80)から冷却ポンプ20への回転数指令に異常がある場合に、運転者に通信異常状態を報知するので、運転者は冷却液ポンプ20が通信異常となっていることを認知することができる。
第1の実施形態における燃料電池システムの構成図 第1の実施形態における冷却液ポンプの構成図 第1の実施形態におけるコントローラ(冷却液温調制御手段)による冷却液の温調制御方法を示す図 第1の実施形態におけるポンプコントローラ(回転数制御手段)による冷却液の流量制御方法を示す図 第1の実施形態における冷却系全体の圧力損失の特性を示す図 第1の実施形態における冷却液ポンプの特性を示す図 第1の実施形態におけるポンプ消費電力を基に冷却系全体の圧力損失を算出する方法を示す図 第1の実施形態における三方弁開度(流量比)変化速度検出手段等を有するポンプコントローラ(回転数制御手段)による冷却液の流量制御方法を示す図 第1の実施形態における燃料電池起動時の冷却液ポンプ自律制御を示す図 第2の実施形態における燃料電池システムの構成図 第2の実施形態における燃料電池システムのフローの概要を示す図
符号の説明
10 燃料電池スタック
20 冷却液ポンプ
21 冷却液温度センサ
22 電流センサ
23 電圧センサ
24 回転数センサ
25 ポンプコントローラ
30 冷却液ライン
40 ラジエータ
45 ラジエータファン
50 バイパスライン
60 三方弁
70 燃料電池スタック入口側冷却液温度センサ
80 コントローラ
100 通信ライン
110 報知ライン
120 報知器

Claims (10)

  1. 燃料電池スタックと、この燃料電池スタックを冷却する冷却液を循環させる電池冷却液系を有する燃料電池システムにおいて、
    前記電池冷却液系には、前記冷却液を冷却する熱交換器と、この熱交換器をバイパスするバイパスラインと、前記熱交換器及び前記バイパスラインに分配する前記冷却液の流量比を調整可能な冷却液流量比調整手段と、この冷却液流量比調整手段を介して前記燃料電池スタックに供給する冷却液の温度を制御する冷却液温調制御手段と、前記冷却液を圧送する冷却液ポンプとを有し、
    この冷却液ポンプは、この冷却液ポンプの回転数を測定する回転数測定手段と、前記冷却液ポンプの消費電力を測定する消費電力測定手段と、前記冷却液ポンプ内を通過する前記冷却液の温度を測定する冷却液温度測定手段と、前記冷却液ポンプの回転数を制御する回転数制御手段とを備え、
    この回転数制御手段は、前記燃料電池スタックの出力に応じた流量の冷却液を供給するため、前記回転数測定手段により測定したポンプ回転数と、前記消費電力測定手段により測定したポンプ消費電力と、前記冷却液温度測定手段により測定したポンプ冷却液温度とを基に算出した目標回転数にて前記冷却液ポンプを運転するべく、前記冷却液ポンプの回転数制御を行うことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記回転数制御手段は、前記燃料電池スタックの出力に応じた流量の冷却液を供給するため、前記ポンプ回転数と、前記ポンプ消費電力と、前記ポンプ冷却液温度とを基に算出した、前記燃料電池スタックの出力を用いて、目標回転数を算出し、この目標回転数にて前記冷却液ポンプを運転するべく、前記冷却液ポンプの回転数制御を行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記回転数制御手段は、前記燃料電池スタックの出力に応じた流量の冷却液を供給するため、前記ポンプ回転数と、前記ポンプ消費電力と、前記ポンプ冷却液温度とを基に算出した、前記冷却液流量比調整手段の流量比を用いて、目標回転数を算出し、この目標回転数にて前記冷却液ポンプを運転するべく、前記冷却液ポンプの回転数制御を行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  4. 前記回転数制御手段は、前記燃料電池スタックの出力に応じた流量の冷却液を供給するため、前記ポンプ回転数と、前記ポンプ消費電力と、前記ポンプ冷却液温度とを基に算出した、前記燃料電池スタックの出力及び前記冷却液流量比調整手段の流量比と、測定した前記ポンプ冷却液温度とを用いて、目標回転数を算出し、この目標回転数にて前記冷却液ポンプを運転するべく、前記冷却液ポンプの回転数制御を行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  5. 前記回転数制御手段は、前記冷却液流量比調整手段の流量比の変化速度を検出する流量比変化速度検出手段を有しており、前記冷却液流量比調整手段の流量比の変化速度が設定値より速いことを検出した場合、冷却液ポンプの回転数を増加するように前記冷却液ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の燃料電池システム。
  6. 前記冷却液温調制御手段は、前記冷却液流量比調整手段を制御する他、前記熱交換器に冷却用空気を供給する冷却用空気供給手段の運転制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  7. 前記冷却液温調制御手段は、通信手段を介して、前記冷却液ポンプの回転数制御を行う機能を有しており、
    前記冷却液ポンプに備えられている回転数制御手段は、前記通信手段の異常を検出する手段を有し、異常検出時にのみ、前記冷却液ポンプの回転数制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  8. 前記冷却液温調制御手段は、前記通信手段の異常を検出して、異常状態を運転者に報知する手段を備えることを特徴とする請求項7記載の燃料電池システム。
  9. 前記消費電力測定手段は、前記冷却液ポンプの消費電流を測定する電流測定手段と、前記冷却液ポンプへ供給される電圧を測定する電圧測定手段とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  10. 前記冷却液流量比調整手段として三方弁を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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