JP2008145294A - 新規抗原抗体複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 保存性が高く、且つ効率よく抗原抗体反応を行うことができるチップを提供する。
【解決手段】 すり鉢状、丸底状、又は逆錘状のリザーバー部の壁面に対して不均一となるよう抗体又は抗原を固相化して乾燥させたチップ上で、かかるリザーバー部に対して、液面までの距離が750μmを超えないよう20μl以下の反応溶液である水性溶媒を添加する。
【選択図】 図1
【解決手段】 すり鉢状、丸底状、又は逆錘状のリザーバー部の壁面に対して不均一となるよう抗体又は抗原を固相化して乾燥させたチップ上で、かかるリザーバー部に対して、液面までの距離が750μmを超えないよう20μl以下の反応溶液である水性溶媒を添加する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、固相に固着された抗体と溶液中の抗原を反応させて免疫複合体を製造する方法及びかかる製造を行うためのチップに関する。
従来、抗原捕捉免疫化学的検査(エンザイムイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ)における抗体のプラスチック、ガラス、架橋デキストラン等、固相への固定化方法には、担体との疎水性相互作用により、直接固相に固定化させる方法、リンカー等を介して間接的に固定化する方法がある(非特許文献1、特許文献1、特許文献2)。このような抗原抗体反応を使用するデバイスでは、固相に均一に抗体を固定化されてきた(例えば特許文献3)。
また、試料中の微量物質を検出する技術が開発されており、抗原抗体反応が利用されている(例えば特許文献4、非特許文献2等)。抗原抗体反応の検討は、比較的短時間の処理で完了するための目的で行われることが多いが、短時間で抗原抗体反応を再現性良く行うことは困難であり、様々な検討がなされている(特許文献5等)。特に、抗原抗体反応後の免疫複合体の分析を行う技術においては、チップの保管に際しての抗体の安定性の確保と、反応時の固相からの抗体の遊離及び免疫反応の早期完了を全て充たした例はこれまではなかった。
少ない試料で高感度な分析を可能とする微細流路チップにおいては、抗体の安定化と抗原抗体反応の高速化、抗原抗体反応後の免疫複合体検出が必要であるが、かかる要求の両者をともに充たすことが困難だった。従って、チップの使用に際して、抗体溶液の調製などの作業が必要となり煩雑となっていた。
抗体をチップ上に固着させてチップ保管時の安定性を確保し、更に抗原抗体反応時に抗体が固相から遊離して短時間で抗原抗体反応を完了するチップに対する期待が高まっていた。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに抗体をあえて不均一に予め固相に固定することで、抗原抗体反応時に抗体の固相からの遊離効率が高まり抗原抗体反応が極めて短時間に完了することを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
1. 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗体が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
2. 前記固相がすり鉢状、丸底状又は逆錘状であることを特徴とする1記載の免疫複合体の製造方法。
3. 抗体と抗原の結合時における前記抗原を溶解した溶液面と固相との距離が750μm以下であることを特徴とする1又は2記載の免疫複合体の製造方法。
4. 前記抗原を溶解した溶液が20μl以下であることを特徴とする1乃至3何れかに記載の免疫複合体の製造方法。
5. 前記抗体は、前記抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定することを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
6. すり鉢状、丸底状又は逆錘状の固相に対して、抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定した抗体と、溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法。
7. 前記抗原と前記抗体の結合に際し、前記抗体が前記固相から遊離することを特徴とする1乃至6いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
8. 前記抗原がイムノグロブリン、ステロイド、カテコールアミン、アミラーゼ、ムチン、クロモグラニン、CoQ10、ペルオキシダーゼ、コレステロール、サイトカイン類、糖鎖、ペプチドであることを特徴とする1乃至7いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
9. 前記抗体に検出用マーカが結合していることを特徴とする1乃至8いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
10. 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗原が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
11. 前記抗原に検出用マーカが結合していることを特徴とする10に記載の免疫複合体の製造方法。
12. 予め抗体留置部に固定された抗体と試料中の抗原とを反応させるチップであって、前記抗体留置部に抗体が不均一に固定されており、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であるいることを特徴とするチップ。
13. 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする12記載のチップ。
14. 前記抗体が標識化抗体であることを特徴とする12又は13記載のチップ。
15. 更に前記標識化抗体を検出する検出部を有する14記載のチップ。
16. 前記抗体留置部がすり鉢状、丸底状又は逆錘状で有ることを特徴とする12乃至15いずれかに記載のチップ。
17. 予めチップ上に固定された標識化抗原と試料中の抗原とを抗体と反応させて免疫複合体を形成させるチップであって、前記標識化抗原がチップ上に不均一に固定されているおり、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であるいることを特徴とするチップ。
18. 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする17記載のチップ。
19. 前記抗体がチップ上に固定されていることを特徴とする17又は18記載のチップ。
20. 更に前記標識化抗原を検出する検出部を有する18記載のチップ。
21. 前記標識化抗原がチップ上のすり鉢状、丸底状又は逆錘状の領域に固定化されていることを特徴とする17乃至20いずれかに記載のチップ。
1. 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗体が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
2. 前記固相がすり鉢状、丸底状又は逆錘状であることを特徴とする1記載の免疫複合体の製造方法。
3. 抗体と抗原の結合時における前記抗原を溶解した溶液面と固相との距離が750μm以下であることを特徴とする1又は2記載の免疫複合体の製造方法。
4. 前記抗原を溶解した溶液が20μl以下であることを特徴とする1乃至3何れかに記載の免疫複合体の製造方法。
5. 前記抗体は、前記抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定することを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
6. すり鉢状、丸底状又は逆錘状の固相に対して、抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定した抗体と、溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法。
7. 前記抗原と前記抗体の結合に際し、前記抗体が前記固相から遊離することを特徴とする1乃至6いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
8. 前記抗原がイムノグロブリン、ステロイド、カテコールアミン、アミラーゼ、ムチン、クロモグラニン、CoQ10、ペルオキシダーゼ、コレステロール、サイトカイン類、糖鎖、ペプチドであることを特徴とする1乃至7いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
9. 前記抗体に検出用マーカが結合していることを特徴とする1乃至8いずれかに記載の免疫複合体の製造方法。
10. 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗原が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
11. 前記抗原に検出用マーカが結合していることを特徴とする10に記載の免疫複合体の製造方法。
12. 予め抗体留置部に固定された抗体と試料中の抗原とを反応させるチップであって、前記抗体留置部に抗体が不均一に固定されており、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であるいることを特徴とするチップ。
13. 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする12記載のチップ。
14. 前記抗体が標識化抗体であることを特徴とする12又は13記載のチップ。
15. 更に前記標識化抗体を検出する検出部を有する14記載のチップ。
16. 前記抗体留置部がすり鉢状、丸底状又は逆錘状で有ることを特徴とする12乃至15いずれかに記載のチップ。
17. 予めチップ上に固定された標識化抗原と試料中の抗原とを抗体と反応させて免疫複合体を形成させるチップであって、前記標識化抗原がチップ上に不均一に固定されているおり、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であるいることを特徴とするチップ。
18. 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする17記載のチップ。
19. 前記抗体がチップ上に固定されていることを特徴とする17又は18記載のチップ。
20. 更に前記標識化抗原を検出する検出部を有する18記載のチップ。
21. 前記標識化抗原がチップ上のすり鉢状、丸底状又は逆錘状の領域に固定化されていることを特徴とする17乃至20いずれかに記載のチップ。
本発明により、固相上に乾固された抗体と溶液中の抗原とから、短時間に免疫複合体を形成する方法及びかかる方法を実施するチップが提供される。
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
1.本発明製造方法
抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗体が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗体が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
本発明製造方法における「抗体」とは、溶液状の試料に含まれる測定対象物質に特異的に結合する性質を有する限りにおいて、モノクローナル抗体であるとポリクローナル抗体であるとを問わず、またキメラ抗体や、改変抗体(例えば抗原認識部位のみヒト化した「ヒト化抗体」など)であってもよい。
また、抗体の種類は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど、いずれであっても使用することができる。このような抗体は、既知の手法を用いて当業者であれば容易に調製することができる。
なお、かかる抗体は、チップ上での分離、分析のために、抗原との結合が阻害されない範囲内において修飾を受けたものであっても良い。かかる修飾の例としては、検出効率を向上するための、蛍光標識物質を化学結合で結合させた蛍光標識化、抗体を構成する原子を放射性同位体で標識する放射能標識、対になる物質に対して特異的な結合性を示す物質を化学的に結合させた特異的結合対標識(例えば多糖に結合性を示すレクチンを化学的に結合させた標識など)、分子量による分離を効率的に行うことを目的とした大分子物質の化学的結合による分離量標識等が例示される。
かかる抗体やその標識化は、当業者であれば分析対象の抗原、検出感度や検出技術に合わせて、適宜選択して使用することができる。
本発明製造方法における「固相」とは、水、有機溶媒など、チップによる分析に際して使用される溶媒への溶解性を示さない材料で、且つ目的の分離・分析を妨げない材料で形あるかぎり、特に限定はされない。かかる材料としては、例えばポリスチレン、オレフィン系樹脂、PMMA、PDMS、ガラス等が例示され、いずれであっても使用することができる。前述の抗体を固定化する固相の形状は、抗体が不均一に固定される形状であれば特に限定はされないが、例えばすり鉢状、丸底状、逆錐状の他、これらの凹部に更に微細なすり鉢形状、丸底形状、逆錐形状、錐状、柱状、格子状、半球など球の部分的形状などを有していてもよい。その中でも特に、安定した抗原抗体反応を達成するためには、丸底状が好ましい。
本発明製造方法における「不均一」とは、抗体の固着部分全体に均等に抗体が固着していない状態をいう。例えば上述のような水平断面積が横断面部分により異なる上述のような形態を有する固相に、抗体を溶解した溶液を注入し、しかる後に溶液中の溶媒を除去する方法で、抗体を固着させることで不均一な固着状態を形成することができる。なお、抗体留置部の素材がタンパク質を吸着する性質を有する場合には、抗原抗体反応後に、免疫複合体の遊離を阻害する恐れが高いため、かかる素材を使用する場合にはブロッキング材により抗体留置部表面をブロッキングすることが好ましい。ブロッキング材としては、例えばアルブミン、乳タンパク質、ヘパリンなど、既存のブロッキング材を利用することができ、当業者であれば適宜選択、使用できる。
本発明製造方法における「抗原」とは、試料中に含まれる分離・分析対象であり、上述の抗体により認識される物質である限りにおいて、特に限定はされない。例えば、抗原としてイムノグロブリン、ステロイド(テストステロン、コルチゾール等)、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)、アミラーゼ、ムチン、クロモグラニン、CoQ10、ペルオキシダーゼ、コレステロール、サイトカイン類、多糖類、ペプチドなどが例示される。その中でも、例えば唾液を使用したストレス検出に使用する場合には、イムノグロブリン(IgAなど)、コルチゾール、アミラーゼ、アドレナリンなどが好ましい例として例示される。なお、上述の「試料」としては、血液、尿、唾液、汗、涙液などの生体材料の他、医薬品製造工程におけるサンプル、環境モニタリングに際してのサンプル溶解液など、溶液状の試料である限り、限定はされない。
本発明製造方法おいては、固相に固着した抗体に溶液状の抗原を添加して抗原抗体反応を行うが、より早期に反応を開始して完了するためには、抗体が固着した固相表面と溶液面との平均距離が短い方がよい。具体的には100μm未満、より好ましくは50μm未満であることが好ましく、最も好ましくは30μm未満であることが好ましい。
本発明製造方法における「抗原」を含む溶液の量は、上述の平均距離を充たす液量を当業者であれば適宜選択することができるが、例えば抗体留置部が直径5mm、最深部4mmの丸底状の形態を有する場合には、20μl以下であることが好ましく、15μl以下であることがより好ましく、10μl以下であることが更に好ましく、5μl以下であることが最も好ましい。かかる液量は、抗体留置部の形状、溶液に応じて当業者であれば前述の固相表面と溶液面との表面距離を考慮した上で、適宜選択することが可能である。
2.本発明チップ
本発明チップは、予め抗体留置部に固定された抗体と試料中の抗原とをチップ上で反応させるチップであって、抗体留置部に抗体が不均一に固定されていることを特徴とする。
本発明チップは、予め抗体留置部に固定された抗体と試料中の抗原とをチップ上で反応させるチップであって、抗体留置部に抗体が不均一に固定されていることを特徴とする。
本発明チップにおける「抗体留置部」は、水、有機溶媒など、チップによる分析に際して使用される溶媒への溶解性を示さない材料で、且つ目的の分離・分析を妨げない材料で形ある限り、特に限定はされない。かかる材料としては、例えばポリスチレン、オレフィン系樹脂、PMMA、PDMS、ガラス等が例示され、いずれであっても使用できる。前述の抗体を固定化する固相の形状は、抗体が不均一に固定される形状であれば特に限定はされないが、例えばすり鉢状、丸底状、逆錐状の他、これらの凹部に更に微細なすり鉢形状、丸底形状、逆錐形状、錐状、柱状、格子状、半球など球の部分的形状などを有していてもよい。その中でも特に、安定した抗原抗体反応を達成するためには、丸底状が好ましい。かかる丸底状の抗体留置部を形成する場合には、その容積は30μl以下であることが好ましく、20μl以下であることが更に好ましく、15μl以下であることがより好ましい。また、抗体留置部の直径は100μm以上、好ましくは1mm以上であることが好ましい。かかる直径と、微少な容積を有することで、抗体固着部と溶液表面との距離が短縮され、溶解した抗体の拡散と抗原抗体反応の効率化が図られ、抗原抗体反応を実質的に10分程度以内に完了することができる。
本発明チップにおける「抗体」とは、溶液状の試料に含まれる測定対象物質に特異的に結合する性質を有する限りにおいて、モノクローナル抗体であるとポリクローナル抗体であるとを問わず、またキメラ抗体や、改変抗体(例えば抗原認識部位のみヒト化した「ヒト化抗体」など)であってもよい。
また、抗体の種類は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど、いずれであっても使用することができる。このような抗体は、既知の手法を用いて当業者であれば容易に調製することができる。
なお、かかる抗体は、チップ上での分離、分析のために、抗原との結合が阻害されない範囲内において修飾を受けたものであっても良い。かかる修飾の例としては、検出効率を向上するための、蛍光標識物質を化学結合で結合させた蛍光標識化、抗体を構成する原子を放射性同位体で標識する放射能標識、対になる物質に対して特異的な結合性を示す物質を化学的に結合させた特異的結合対標識(例えば多糖に結合性を示すレクチンを化学的に結合させた標識など)、分子量による分離を効率的に行うことを目的とした大分子物質の化学的結合による分離量標識等が例示される。
また、他の態様として、標識を結合させた抗原(標識化抗原)と抗体を試料に添加し、試料中の抗原と標識化抗原との、抗体への結合量を用いて試料中の抗原量を定量する、競合法(阻害法)に際しても本発明チップを利用することができる。かかる場合には、標識化抗原及び抗体の少なくとも何れかを固定した本発明チップを使用することができる。
かかる抗体やその標識化は、当業者であれば分析対象の抗原、検出感度や検出技術に合わせて、適宜選択して使用することができる。
かかる抗体を抗体留置部への固定は、例えば上述のような水平断面積が横断面部分により異なる上述のような形態を有する抗体留置部に、抗体を溶解した溶液を注入し、しかる後に溶液中の溶媒を除去する方法で、抗体を固着させることで不均一な固着状態を形成することができる。なお、抗体留置部の素材がタンパク質を吸着する性質を有する場合には、抗原抗体反応後に、免疫複合体の遊離を阻害する恐れが高いため、ブロッキング材により抗体留置部表面をブロッキングすることが好ましい。ブロッキング材としては、例えばアルブミン、乳タンパク質、ヘパリンなど、既存のブロッキング材を利用することができる。
本発明チップにおける「試料」とは、血液、尿、唾液、汗、涙液などの生体材料の他、医薬品製造工程におけるサンプル、環境モニタリングに際してのサンプル溶解液など、溶液状の試料であり、測定対象物質(抗原)が溶解しうる材料である限り、特に限定はされない。
本発明チップにおける「抗原」とは、試料中に含まれる分離・分析対象であり、上述の抗体により認識される物質である限りにおいて、特に限定はされない。例えば、抗原としてイムノグロブリン、ステロイド、カテコールアミン、アミラーゼ、ムチン、クロモグラニン、CoQ10(コエンザイムQ10)、ペルオキシダーゼ、コレステロール、サイトカイン類、多糖類、ペプチドなどが例示される。
本発明チップは、上述の抗体留置部の他に、免疫複合体を試料中で分離するための分離部、抗体留置部から分離部へ導入するための試料導入部、更に過剰な試料や緩衝液を排出するための排出部を有していても良い。
かかる分離部は、例えば微細流路を作製し、かかる微細流路の壁面及び/又は底面に免疫複合体の移動速度を増加又は減少させる加工を施すことで形成することができる。例えば微細流路の壁面及び/又は底面に電荷を持たせる加工を施すことで、免疫複合体の電荷を利用した電気泳動で免疫複合体の速度を調整することが可能となり、また、壁面及び/又は底面に更に微小の溝を加工することにより、免疫複合体の分子量を利用した分子篩により速度を調整することが可能となる。
かかる分離部で用いる分離手法にあわせて、更にチップ状に電極を設けたり、微細ポンプを設けたりすることも可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
図1に示すチップを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)により調製した。抗体留置部は直径5mm、最も深い部分の深度を900μmの凹レンズ状とした。抗体留置部を親水化するために酸素プラズマ処理(ヤマト科学株式会社製のプラズマドライ洗浄装置PDC210を使用した 酸素:100sccm、出力:200W、処理時間:10秒)し、ブロッキング液(大日本住友製薬製のBlockAce(商標名)0.6gを蒸留水15mlに溶解して調製した)によりコーティングした。
その後、FITC標識化抗ヒトIgA抗体溶液(33.3μg/mlでFITC標識化抗ヒトIgA抗体を溶解した蒸留水)3μlで抗体留置部を充たした。
このチップを真空下に30分間保つことで水を蒸発させて抗体留置部にFITC標識化抗ヒトIgA抗体を固着した。蛍光顕微鏡を使用して抗体が固着していることを確認したところ、抗体が多く固着した部分と少なく固着した部分が存在することが判った(図2)。
次に、抗体留置部に分泌IgA溶液(sIgA(MP Biomedicals社製)を300μg/mlで含む人工唾液)1μlを滴下し、続いて希釈液(1.25mol/lのNDB-アルギニン)を含む100mmol/lのCHES緩衝液(pH9.5))を9μl滴下した。sIgA溶液滴下後と、希釈液滴下後の蛍光顕微鏡観察をしたところ、それぞれ抗体が溶解して拡散している様子が確認された(sIgA溶液滴下後:図3、希釈液滴下後:図4)。
その後、免疫複合体を分離流路へ導入し、導入後に抗体留置部を蛍光顕微鏡で観察したところ、FITC標識化抗ヒトIgA抗体は抗体留置部に残留していないことが明らかになった(図5)。
抗原抗体反応の時間を変化させ、本発明チップ上における本発明免疫複合体の調製が極めて短時間に達成されることを確認した。
すなわち、実施例1で調製した本発明チップの抗体留置部に、300μg/ml分泌IgA溶液(sIgA(サイメトリック社製)を含む溶液)1μlを滴下し、抗原抗体反応を、0秒、10秒、30秒、1分、3分、5分それぞれ行った。反応後、希釈液(1.25mol/lのNDB-アルギニンを含む100mmol/lのCHES緩衝液(pH9.5))を9μl滴下し、チップの試料導入部に電圧をかけて免疫複合体を分離部に移動させて導入した後、マイクロチップ電気泳動装置(コスモアイ(検出系を改造):日立製作所製)を用いて分析を行った。
内部標準物質(IS)に対する免疫複合体(IC)のピーク面積を計算して評価した(図6)。対象として同じ反応液組成で、市販のマイクロチューブ内で行った抗原抗体反応を使用した(図7)。その結果、本発明チップでは抗原抗体反応が10秒でほぼ完全に終了していることが明らかとなった。
本発明は、抗原抗体反応を用いたチップに関する。
Claims (21)
- 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗体が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
- 前記固相がすり鉢状、丸底状又は逆錘状であることを特徴とする請求項1記載の免疫複合体の製造方法。
- 抗体と抗原の結合時における前記抗原を溶解した溶液面と固相との距離が750μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の免疫複合体の製造方法。
- 前記抗原を溶解した溶液が20μl以下であることを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載の免疫複合体の製造方法。
- 前記抗体は、前記抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の免疫複合体の製造方法。
- すり鉢状、丸底状又は逆錘状の固相に対して、抗体を含有する溶液から溶媒を除去して固定した抗体と、溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法。
- 前記抗原と前記抗体の結合に際し、前記抗体が前記固相から遊離することを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の免疫複合体の製造方法。
- 前記抗原がイムノグロブリン、ステロイド、カテコールアミン、アミラーゼ、ムチン、クロモグラニン、CoQ10、ペルオキシダーゼ、コレステロール、サイトカイン類、糖鎖、ペプチドであることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の免疫複合体の製造方法。
- 前記抗体に検出用マーカが結合していることを特徴とする請求項1乃至8いずれか一項に記載の免疫複合体の製造方法。
- 抗体と溶液に溶解した抗原とを結合させる免疫複合体の製造方法であって、前記抗原が固相上に不均一に固定されていることを特徴とする免疫複合体の製造方法。
- 前記抗原に検出用マーカが結合していることを特徴とする請求項10に記載の免疫複合体の製造方法。
- 予め抗体留置部に固定された抗体と試料中の抗原とを反応させるチップであって、前記抗体留置部に抗体が不均一に固定されており、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であることを特徴とするチップ。
- 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする請求項12記載のチップ。
- 前記抗体が標識化抗体であることを特徴とする請求項12又は13に記載のチップ。
- 更に前記標識化抗体を検出する検出部を有する請求項14記載のチップ。
- 前記抗体留置部がすり鉢状、丸底状又は逆錘状で有ることを特徴とする請求項12乃至15いずれか一項に記載のチップ。
- 予めチップ上に固定された標識化抗原と試料中の抗原とを抗体と反応させて免疫複合体を形成させるチップであって、前記標識化抗原がチップ上に不均一に固定されており、抗原抗体反応時の溶液面とチップとの距離が750μm以下であるいることを特徴とするチップ。
- 更に免疫複合体を泳動する分離部を有することを特徴とする請求項17記載のチップ。
- 前記抗体がチップ上に固定されていることを特徴とする請求項17又は18記載のチップ。
- 更に前記標識化抗原を検出する検出部を有する請求項18記載のチップ。
- 前記標識化抗原がチップ上のすり鉢状、丸底状又は逆錘状の領域に固定化されていることを特徴とする請求項17乃至20いずれか一項に記載のチップ。
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