JP2008144811A - 駆動力配分装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】逆入力トルクによる各ギヤの損傷を回避することのできる駆動力配分装置を提供すること。
【解決手段】モータから第1及び第2の出力軸に至るトルク伝達系の途中、詳しくは、遊星歯車機構を構成する第1サンギヤ46と変速機構を構成する第3サンギヤ56との間には、予め設定された所定のトルク範囲内においてトルク伝達可能なトルクリミッタ70が設けられる。そして、トルクリミッタ70は、第3サンギヤ56に形成された軸状部71及び第1サンギヤ46に連結されて軸状部71の径方向外側に同軸配置される筒状部材72と、これら軸状部71及び筒状部材72間に介在されて軸状部71と摩擦係合する中間部材73とを備えた摩擦クラッチにより構成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、駆動源から入力された駆動力の第1及び第2の出力軸への配分比率を制御可能な駆動力配分装置に関するものである。
従来、入力された駆動力を相互の差動を許容しつつ第1及び第2の出力軸に伝達する差動機構と、その第1及び第2の出力軸間に介在された遊星歯車機構と、該遊星歯車機構に駆動連結されたモータとを備えた駆動力配分装置がある。即ち、このような駆動力配分装置は、モータを制御用駆動源として遊星歯車機構を駆動することにより第1及び第2の出力軸間に差回転を生じさせる。そして、その制御用トルクとして遊星歯車機構に入力するモータトルクを制御することにより、エンジン等の主駆動源から差動機構に入力される駆動力の第1及び第2の出力軸への配分比率を制御可能な構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−112474号公報 特開2003−113874号公報
このように、遊星歯車機構を用い、ギヤ間の噛み合いによりトルク伝達を行う構成とすることで、高いトルク伝達効率及び信頼性を確保することができる。しかしながら、上記従来の構成には、その一方で、各出力軸に対して衝撃的な逆入トルクが印加された場合には、その逆入力トルクを吸収する或いは外部に逃がすことができないという問題があり、ひいては、その衝撃によって遊星歯車機構を構成する各ギヤ等に損傷が生ずるおそれがある。
例えば、上記特許文献1のように車両の左右駆動力配分として用いた場合、各出力軸に連結された駆動輪の何れかが低μ路から高μ路へと移動した際、その急速なグリップの回復によって一方の駆動輪の回転が規制されることにより、当該駆動輪と連結された出力軸に衝撃的な逆入力トルクが印加されることになる。このとき、遊星歯車機構においては、モータと連結されたその制御トルクの入力要素(特許文献1に記載の駆動力配分装置においては、プラネタリキャリヤ)が当該逆入力トルクにより回転しようとする。しかしながら、モータは、このように逆入力トルクにより回転する際には、発電機、即ち回生ブレーキとして機能する。即ち、当該制御トルクの入力要素は、モータによって、その回転が規制されることになり、その結果、出力軸に入力された逆入力トルクは、衝撃力として遊星歯車機構を構成する各ギヤに直接作用することとなる。このため、上記従来の構成では、その最弱部位、例えばプラネタリギヤ等の強度を、定常使用時に要求される水準よりも強固なものとする必要があり、これにより、装置全体の寸法及び重量が大きくなってしまうという問題がある。
尚、特許文献2には、連れ周りによるモータの過回転を防止すべく、モータと減速機構との間にトルクリミッタとして遠心クラッチを介在した駆動力配分装置が開示されている。しかしながら、遠心クラッチは、その第1軸と第2軸との間の回転速度差に基づき作動するため、上記のような突発的且つ急激なトルク変動には対処することができない。従って、この特許文献2に記載の構成は、上記の課題を何ら解消するものではない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、逆入力トルクによる各ギヤの損傷を回避することのできる駆動力配分装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力される駆動力を相互の差動を許容しつつ第1及び第2の出力軸に伝達する差動機構と、前記第1及び第2の出力軸間に介在されるとともにモータに駆動連結された遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構に設定された変速比を補正するための変速機構とを備え、モータトルクに基づき前記第1及び第2の出力軸間に差回転を生じさせることにより前記入力される駆動力の前記第1及び第2の出力軸への配分比率を制御可能な駆動力配分装置において、前記モータから前記第1及び第2の出力軸に至るトルク伝達系の途中には、予め設定された所定のトルク範囲内においてトルク伝達可能なトルクリミッタが設けられ、前記トルクリミッタは、軸状に形成された第1部材と、筒状に形成されて前記第1部材の径方向外側に同軸配置される第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介在されて該第1部材及び第2部材の少なくとも一方と摩擦係合することにより前記所定のトルク範囲内において前記第1部材及び前記第2部材間をトルク伝達可能に連結する第3部材とを備えた摩擦クラッチにより構成されること、を要旨とする。
上記構成によれば、第1及び第2の出力軸に印加された逆入力トルクをトルクリミッタにおいて開放することができる。そして、入力トルクの大きさに基づき作動する摩擦クラッチを用いることで、突発的且つ急激なトルク変動が生ずる衝撃的な逆入力トルクの印加にも対応することができる。その結果、遊星歯車機構(及び変速機構)の各ギヤに作用する衝撃を緩和して、その損傷を回避することができる。
また、駆動力伝達系には、多くの軸状部分が存在する。従って、上記のように軸状(中空軸状)に構成されたトルクリミッタを用いることで、その配置自由度を向上させることができる。その結果、装置の大型化を招くことなく逆入力トルクに起因する問題を回避することができる。加えて、構成簡素、且つ可動部が少ないことから高い耐久性及び信頼性を確保することができる。
請求項2に記載の発明は、前記第1部材又は第2部材に螺着されることにより前記第3部材を軸方向に押圧する締結部材を備え、前記第1部材の外周及び前記第2部材の内周の少なくとも一方には、軸方向に傾斜する第1斜面が形成されるとともに、前記第3部材には、前記第1斜面に当接し前記押圧により該第1斜面との間で径方向押圧力を発生する第2斜面が形成されること、を要旨とする。
上記構成によれば、締結部材を締め付けることで、第3部材は、同締結部材の螺子対偶に基づく軸方向移動により軸方向に押圧され、その軸方向押圧力に基づいて第1斜面と第2斜面との間に径方向の押圧力が発生する。従って、その締結部材の締め付け量を調節することにより、第1部材及び第2部材と第3部材との間の摩擦係合力を変化させることができ、これにより、伝達可能なトルク容量の設定を容易に行うことができるようになる。
請求項3に記載の発明は、前記第3部材は、前記第1部材又は第2部材の何れか一方に対して相対回転不能に周り止めされ、前記摩擦係合する摩擦係合面は、他方側に形成されること、を要旨とする。
上記構成によれば、その摩擦係合面を前記第1部材側又は第2部材側の何れか一方に限定して、安定的な摩擦係合力を発生させることができる。その結果、より精度よくトルク容量を設定することができるとともに、その作動むらの低減を図ることができるようになる。
請求項4に記載の発明は、前記摩擦係合する摩擦係合面には、摩擦材が介在されること、を要旨とする。
上記構成によれば、より好適なトルク伝達特性を得ることができる。
請求項5に記載の発明は、前記トルクリミッタは、前記遊星歯車機構と前記変速機構との間、又は前記遊星歯車機構と前記差動機構との間に設けられること、を要旨とする。
上記構成によれば、摩擦係合部分の直径、即ち摩擦クラッチとしての有効径を比較的大きくとることができる。その結果、安定的な摩擦係合力を発生させて、その作動むらの低減を図ることができる。
本発明によれば、遊星歯車機構を備えた駆動力配分装置の各ギヤに作用する衝撃を緩和して逆入力トルクによる各ギヤの損傷を回避することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャルの断面図、図2はその拡大断面図、図3はトルクリミッタの断面図、そして、図4は車両の概略構成図である。
図4に示すように、車両1は、前輪駆動車をベースとする四輪駆動車であり、エンジン2の傍らに組み付けられたトランスアクスル3には、一対のフロントアクスル4L,4Rが連結されており、エンジン2の駆動力は、これらフロントアクスル4L,4Rを介して前輪5L,5Rに伝達される。また、トランスアクスル3には、上記各フロントアクスル4L,4Rとともにプロペラシャフト6が連結されており、同プロペラシャフト6は、トルクカップリング7及びリヤディファレンシャル8を介して一対のリヤアクスル9L,9Rと連結されている。そして、これらプロペラシャフト6、リヤディファレンシャル8、及びリヤアクスル9L,9Rを介して、後輪10L,10Rにも駆動力が伝達されるようになっている。
図1及び図2に示すように、本実施形態のリヤディファレンシャル8は、略円筒状のハウジング11を備えており、同ハウジング11内には、上記リヤアクスル9L,9Rをそれぞれ構成する第1及び第2の出力軸12L,12Rが、その軸線方向に沿うように収容されている。本実施形態では、ハウジング11は、第1ハウジング11a及び第2ハウジング11bを連結してなり、第1ハウジング11aには、同第1ハウジング11aの軸線に対して略直交する方向(図1中上側)に延びる円筒部11cが形成されている。この円筒部11c内には、プロペラシャフト6から入力される駆動力を伝達する上記トルクカップリング7が収容されており、同トルクカップリング7から延びる入力軸13は、第1ハウジング11a内において、第1及び第2の出力軸12L,12Rと略直交するように配置されている。そして、本実施形態のリヤディファレンシャル8では、これら第1及び第2の出力軸12L,12R、並びに入力軸13は、ベベルギヤ式の差動機構14を介して連結されている。
詳述すると、差動機構14は、略円筒状に形成されたデフケース17を有しており、同デフケース17は、上記第1及び第2の出力軸12L,12Rの各基端12La,12Raを内包する状態でこれら第1及び第2の出力軸12L,12Rと同軸に配置されている。また、デフケース17は、軸受18a,18bによって回転自在に支承されており、同デフケースの外周には、外歯ギヤ20が相対回転不能に同軸固定されている。そして、この外歯ギヤ20には、上記入力軸13の先端に形成されたドライブピニオン21が噛合されている。
デフケース17内には、同デフケース17の軸線と直交するようにピニオンシャフト22が設けられており、同ピニオンシャフト22には、対向する一対のデフピニオン23a,23bがそれぞれ独立して回転可能、即ち自転可能に支承されている。また、これら各デフピニオン23a,23bには、一対のデフサイドギヤ24L,24Rが噛合されている。そして、これら各デフサイドギヤ24L,24Rは、デフケース17内に配置された上記第1及び第2の出力軸12L,12Rの各基端12La,12Raに対して相対回転不能に連結されている。
即ち、トルクカップリング7を介して入力軸13に伝達されるプロペラシャフト6の回転は、その先端のドライブピニオン21に噛合された外歯ギヤ20からデフケース17へと伝達される。そして、デフケース17とともに両デフピニオン23a,23bが一体回転する、つまり両デフピニオン23a,23bがデフケース17の軸線周りに公転することにより、その駆動力は、各デフサイドギヤ24L,24Rを介して第1及び第2の出力軸12L,12R、即ち両リヤアクスル9L,9Rから左右の後輪10L,10Rへと伝達される。
一方、車両旋回時等、左右の後輪10L,10Rに回転差が生じた場合には、各デフサイドギヤ24L,24Rと噛合された各デフピニオン23a,23bが、相反する方向に自転する。そして、これにより、各デフサイドギヤ24L,24Rの相対回転、即ち該各デフサイドギヤ24L,24Rに連結された第1及び第2の出力軸12L,12R間の差動を許容する構成となっている。
(駆動力配分装置)
また、本実施形態のリヤディファレンシャル8は、エンジン2の駆動力の左右の後輪10L,10Rへの配分比率を制御可能な駆動力配分装置30としての機能を有している。
詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態の駆動力配分装置30では、第1及び第2の出力軸12L,12R間には、遊星歯車機構31が介在されており、同遊星歯車機構31は、減速機構32を介して制御用駆動源であるモータ33と駆動連結されている。そして、制御用トルクとして遊星歯車機構31に入力されるモータトルクに基づき第1及び第2の出力軸12L,12R間に差回転を生じさせることにより、プロペラシャフト6から入力されるエンジン2の駆動力を走行状態に応じた適切な比率で第1及び第2の出力軸12L,12Rに配分することが可能な構成となっている。
尚、本実施形態では、減速機構32は、ピニオン34、第1及び第2の二連ピニオン35,36を駆動連結してなり、これらの各ピニオンギヤは、第2ハウジング11bの外周から上記円筒部11cと平行するように突出形成されたギヤ収容部11d内に収容されている。また、モータ33は、その軸線が第1の出力軸12Lと略平行するように、上記ギヤ収容部11dの側面に固定されている。そして、同モータ33は、その出力軸33aとピニオン34とが相対回転不能に連結されることにより、減速機構32と駆動連結されている。
さらに詳述すると、本実施形態の遊星歯車機構31は、ピッチ円径の異なる第1ピニオン42及び第2ピニオン43を相対回転不能に連結してなるプラネタリギヤ44と、該プラネタリギヤ44を公転可能且つ自転可能に支承するプラネタリキャリヤ45とを備えている。尚、本実施形態では、第1ピニオン42のピッチ円径は、第2ピニオン43のピッチ円径よりも僅かに大きく設定されている。また、遊星歯車機構31は、第1の出力軸12Lと同軸に並置された第1サンギヤ46及び第2サンギヤ47を備えている。そして、第1サンギヤ46は、第1ピニオン42に噛合され、第2サンギヤ47は、第2ピニオン43に噛合されている。
プラネタリキャリヤ45は、軸受48aに支承される第1部材45aと軸受48bに支承される第2部材45bとを締結してなり、プラネタリギヤ44は、これら第1部材45aと第2部材45bとの間に架け渡された支持軸49により回転自在に支承されている。具体的には、プラネタリギヤ44は、その第1ピニオン42側を第1の出力軸12Lの先端側(図2中左側)に向けた状態で軸支されている。そして、プラネタリキャリヤ45は、上記軸受48a,48bに支承されることにより、回転自在に第1の出力軸12Lと同軸配置されている。
また、プラネタリキャリヤ45を構成する第2部材45bの外周には、外歯50が形成されており、同外歯50は、上記減速機構32を構成する第2の二連ピニオン36(の小径ピニオン36a)に噛合されている。そして、これにより、遊星歯車機構31は、同第2部材45b(プラネタリキャリヤ45)を連結部として、減速機構32と駆動連結されている。即ち、本実施形態では、プラネタリキャリヤ45がモータトルクの入力要素となっている。
また、本実施形態では、第2サンギヤ47は、第1の出力軸12Lが挿通される筒状部47aを有しており、同第2サンギヤ47は、この筒状部47aにおいて、上記差動機構14を構成するデフケース17と相対回転不能に連結されている。そして、第1サンギヤ46は、変速機構51を介して、第1の出力軸12Lに接続されている。
即ち、遊星歯車機構31には、同遊星歯車機構31を構成する各ギヤの噛み合わせに基づく所定のギヤ比が存在することから、第1及び第2の出力軸12L,12R間に差動が発生していない場合であっても、モータトルクの入力要素であるプラネタリキャリヤ45が回転することになり、これによりモータ33に大きな負荷がかかる。
この点を踏まえ、本実施形態では、第1の出力軸12Lの軸線上において、遊星歯車機構31よりも先端側(図2中左側)には、遊星歯車機構31に設定された変速比を補正するための変速機構51が並置されている。そして、遊星歯車機構31を構成する第1サンギヤ46と第1の出力軸12Lとの間に、この変速機構51が介在させることにより、両リヤアクスル9L,9Rが同速度で同方向に回転する際のプラネタリキャリヤ45の回転を抑制、即ち差動が発生していない場合には、モータ33が回転しないように構成されている。
詳述すると、本実施形態の変速機構51は、上記遊星歯車機構31側のプラネタリギヤ44を構成する第1ピニオン42と同一のピッチ円径を有する第3ピニオン52及び上記第2ピニオン43と同一のピッチ円径を有する第4ピニオン53を相対回転不能に連結してなる複数の二連ピニオン54を有している。即ち、第3ピニオン52と第4ピニオン53とのピッチ円径の比は、第1ピニオン42と第2ピニオン43とのピッチ円径の比に等しい。また、変速機構51は、円環状に形成された支持部材55を備えており、同支持部材55は、非回転部位であるハウジング11(第2ハウジング11b)に固定されることにより、遊星歯車機構31のプラネタリキャリヤ45を構成する第2部材45bの傍ら(図2中右側)において、第1の出力軸12Lと同軸配置されている。そして、各二連ピニオン54は、その第3ピニオン52側を第1の出力軸12Lの基端12La側(図2中右側)に向けた状態で、上記支持部材55とハウジング11(第2ハウジング11bの軸方向壁面)との間に架け渡された支持軸59により回転可能に支承されている。
また、変速機構51は、第1の出力軸12Lと同軸に並置された第3サンギヤ56及び第4サンギヤ57を備えており、第3サンギヤ56は、第3ピニオン52に噛合され、第4サンギヤ57は、第4ピニオン53に噛合されている。そして、第4サンギヤ57は、第1の出力軸12Lと相対回転不能に連結され、第3ピニオン52に噛合された第3サンギヤ56は、遊星歯車機構31側の第1サンギヤ46と一体回転可能に連結されている。
即ち、本実施形態の変速機構51は、上記遊星歯車機構31と略同一の構成を有する遊星歯車機構として構成されており、変速機構51の各二連ピニオン54は、遊星歯車機構31の各プラネタリギヤ44に相当する。そして、遊星歯車機構31側のプラネタリキャリヤ45に相当する支持部材55を、非回転部位であるハウジング11との固定部とした構成となっている。
以上のように構成された駆動力配分装置30では、第1及び第2の出力軸12L,12R間に差動が発生していない場合には、モータ33に連結された遊星歯車機構31のプラネタリキャリヤ45は回転しない。一方、モータトルクによりプラネタリキャリヤ45を回転駆動することにより、第1及び第2の出力軸12L,12R、即ち両リヤアクスル9L,9R間に差回転を生じさせることができる。そして、その制御用トルクとして遊星歯車機構31に入力されるモータトルクを制御することにより、両リヤアクスル9L,9Rに配分するエンジン2の駆動力の比率を可変制御することが可能となっている。
(逆入力トルク開放構造)
次に、本実施形態の駆動力配分装置における逆入力トルク開放構造について説明する。
上述のように、遊星歯車機構を用いた駆動力配分装置において、出力軸に対し衝撃的な逆入トルクが印加された場合、そのプラネタリキャリヤは急激に回転(プラネタリギヤが自転及び公転)しようとするにも関わらず、その回転は、減速機構の各ギヤやモータの慣性或いは回転抵抗によって抑えられてしまう。そのため、こうした駆動力配分装置では、その逆入力トルクを吸収する或いは外部に逃がすことができないという問題があり、ひいては、その衝撃によって遊星歯車機構を構成する各ギヤ等が損傷するおそれがある。
この点を踏まえ、本実施形態の駆動力配分装置30では、モータ33から第1及び第2の出力軸12L,12Rに至るトルク伝達系の途中、詳しくは、遊星歯車機構31を構成する第1サンギヤ46と変速機構51を構成する第3サンギヤ56との間には、予め設定された所定のトルク範囲内においてトルク伝達可能なトルクリミッタ70が設けられている。そして、両リヤアクスル9L,9Rに、衝撃的な逆入力トルクが印加された場合には、このトルクリミッタ70においてその逆入力トルクを開放し、これにより、遊星歯車機構31(及び変速機構51)の各ギヤに作用する衝撃を緩和して、その損傷を回避する構成となっている。尚、この所定のトルクは、各ギヤ等の強度に応じて逆入力トルクが印加された場合にも各構成要素の損傷が発生しない値に設定されている。
詳述すると、図3に示すように、本実施形態では、第3サンギヤ56の側面56aには、同側面56aから軸方向第1サンギヤ側(同図中右側)に延びる筒状(中空軸状)の軸状部71が形成されている。また、第1サンギヤ46の側面46aには、上記軸状部71よりも大径に形成された筒状部材72が連結されており、同筒状部材72は、軸状部71の径方向外側に同軸配置されている。尚、本実施形態では、筒状部材72は、レーザ溶接により第1サンギヤ46と相対回転不能に連結されている。そして、本実施形態のトルクリミッタ70は、これら第1部材としての軸状部71、及び第2部材としての筒状部材72、該軸状部71及び筒状部材72間に介在される第3部材としての中間部材73により構成されている。
本実施形態では、筒状部材72の内周72aには、径方向内側に延びるフランジ部74が形成されており、同筒状部材72は、このフランジ部74に上記軸状部71の先端が当接されることにより位置決めされる。そして、これにより、その内周72aが軸状部71の外周71aと対向配置されるように構成されている。
一方、本実施形態では、中間部材73は、上記軸状部71の外径と略等しい(僅かに大きい)内径を有する筒状に形成されており、同中間部材73は、軸状部71に外嵌されることにより、該軸状部71と筒状部材72の間に介在されている。そして、中間部材73及び筒状部材72間には、これら中間部材73と筒状部材72との間の相対回転を規制する周り止め機構75が形成されるとともに、中間部材73の内周73aには、軸状部71の外周71aとの間で摩擦係合力を発生する摩擦材76が設けられている。尚、本実施形態では、上記周り止め機構75は、筒状部材72及び中間部材73に形成された貫通孔77,78と、これら両貫通孔77,78に挿通された周り止め部材79により構成されている。そして、摩擦材76には不織布を基材とするものが用いられている。
即ち、本実施形態のトルクリミッタ70は、中間部材73の内周73aと軸状部71の外周71aとの間の摩擦係合力に基づいて、軸状部71及び筒状部材72間をトルク伝達可能に連結する摩擦クラッチとして構成されている。そして、本実施形態のトルクリミッタ70では、その摩擦係合力を調節することにより、伝達可能なトルクの大きさ(トルク容量)を任意に設定することが可能な構成となっている。
さらに詳述すると、本実施形態では、筒状部材72の内周72aは、軸方向、第3サンギヤ56側(同図中左側)から第1サンギヤ46側(同図中右側)へ向かって縮径するようにテーパ状に形成されている。即ち、筒状部材72の内周72aには、軸方向に傾斜する斜面81が形成されている。また、中間部材73の外周73bには、この筒状部材72側の斜面81に当接する斜面82が形成されている。尚、本実施形態では、中間部材73側の斜面82は、同中間部材73の第3サンギヤ56側の端部をテーパ状とすることにより形成されている。また、本実施形態では、筒状部材72の外周72bには、螺子部83が螺刻されており、同螺子部83には、締結部材としてのナット84が螺着されている。ナット84には、径方向内側に延設されて中間部材73の軸方向端部73cに当接するフランジ部85が形成されている。そして、本実施形態では、この筒状部材72に螺着されたナット84を締め付けることにより、上記中間部材73の内周73aと軸状部71の外周71aとの間の摩擦係合力を調節することが可能となっている。
つまり、ナット84を締め付けることで、中間部材73は、同ナット84の螺子対偶に基づく軸方向移動により軸方向第3サンギヤ56側に押圧される。そして、その軸方向押圧力に基づいて筒状部材72側及び中間部材73側の両斜面81,82間に径方向の押圧力が発生する。即ち、本実施形態では、筒状部材72側の斜面81が第1斜面を構成し、中間部材73側の斜面82が第2斜面を構成する。そして、本実施形態のトルクリミッタ70では、そのナット84の締め付け量を調節することにより、上記摩擦係合力、即ち伝達可能なトルク容量を設定することが可能となっている。
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)モータ33から第1及び第2の出力軸12L,12Rに至るトルク伝達系の途中には、予め設定された所定のトルク範囲内においてトルク伝達可能なトルクリミッタ70が設けられる。そして、同トルクリミッタ70は、摩擦クラッチにより構成される。
上記構成によれば、第1及び第2の出力軸としての両リヤアクスル9L,9Rに印加された逆入力トルクをトルクリミッタ70において開放することができる。そして、入力トルクの大きさに基づき作動する摩擦クラッチを用いることで、突発的且つ急激なトルク変動が生ずる衝撃的な逆入力トルクの印加にも対応することができる。その結果、遊星歯車機構31(及び変速機構51)の各ギヤに作用する衝撃を緩和して、その損傷を回避することができる。更に、トルクリミッタ70において逆入力トルクを開放することで、トルク伝達系における急激なトルク変動を抑制することができる。その結果、左右駆動力配分の変動に伴う車両挙動の乱れを回避して、車両姿勢の安定化を図るとともに、搭乗者に与える違和感を和らげることができる。
(2)トルクリミッタ70は、第3サンギヤ56に形成された軸状部71及び第1サンギヤ46に連結されて軸状部71の径方向外側に同軸配置される筒状部材72と、これら軸状部71及び筒状部材72間に介在されて軸状部71と摩擦係合する中間部材73とを備えて構成される。
即ち、駆動力伝達系には、多くの軸状部分が存在する。従って、上記のように軸状(中空軸状)に構成されたトルクリミッタ70を用いることで、その配置自由度を向上させることができる。その結果、装置の大型化を招くことなく逆入力トルクに起因する問題を回避することができる。特に、遊星歯車機構31を構成する第1サンギヤ46と変速機構51を構成する第3サンギヤ56との間に配置することで、摩擦係合部分の直径、即ち摩擦クラッチとしての有効径を比較的大きくとることができる。その結果、安定的な摩擦係合力を発生させて、その作動むらの低減を図ることができる。加えて、構成簡素、且つ可動部が少ないことから高い耐久性及び信頼性を確保することができる。
(3)筒状部材72の内周72aは、軸方向に傾斜する斜面81が形成され、中間部材73の外周73bには、筒状部材72側の斜面81に当接する斜面82が形成される。また、本実施形態では、筒状部材72の外周72bには、螺子部83が螺刻され、同螺子部83には、ナット84が螺着される。そして、同ナット84には、径方向内側に延設されて中間部材73の軸方向端部73cに当接するフランジ部85が形成される。
上記構成によれば、ナット84を締め付けることで、中間部材73は、同ナット84の螺子対偶に基づく軸方向移動により軸方向第3サンギヤ56側に押圧され、その軸方向押圧力に基づいて筒状部材72側及び中間部材73側の両斜面81,82間に径方向の押圧力が発生する。従って、そのナット84の締め付け量を調節することにより、上記中間部材73の内周73aと軸状部71の外周71aとの間の摩擦係合力を変化させることができ、これにより、伝達可能なトルク容量の設定を容易に行うことができるようになる。
(4)中間部材73及び筒状部材72の間には、これら中間部材73と筒状部材72との間の相対回転を規制する周り止め機構75が形成されるとともに、中間部材73の内周73aには、軸状部71の外周71aとの間で摩擦係合力を発生する摩擦材76が設けられる。
上記構成によれば、その摩擦係合面を中間部材73の内周73a及び軸状部71の外周71aに限定して、安定的な摩擦係合力を発生させることができる。その結果、より精度よくトルク容量を設定することができるとともに、その作動むらの低減を図ることができるようになる。そして、摩擦係合面に摩擦材76を介在させることにより、より好適なトルク伝達特性を得ることができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、遊星歯車機構31を構成する第1サンギヤ46と変速機構51を構成する第3サンギヤ56との間にトルクリミッタ70を設けることとした。しかし、これに限らず、例えば、遊星歯車機構31(第2サンギヤ47)と差動機構14(デフケース17)との間等、その他の箇所にトルクリミッタ70を設ける構成としてもよい。
・本実施形態では、第3サンギヤ56の側面56aに形成された筒状(中空軸状)の軸状部71を第1部材としたが、第1部材は、必ずしも筒状である必要はなく、配置箇所によっては非中空(中実)の軸状であってもよい。
・本実施形態では、本発明を、プラネタリキャリヤ45をモータトルクの入力要素とする遊星歯車機構31(及びプラネタリキャリヤ45に相当する支持部材55を非回転部位に対する固定部とする変速機構51)を備えた駆動力配分装置30に具体化した。しかし、これに限らず、プラネタリキャリヤ以外の要素(プラネタリギヤに噛合される各ギヤ)をモータトルクの入力要素とするものに具体化してもよい。尚、そのプラネタリギヤに噛合される各ギヤは、サンギヤに限るものではないことはいうまでもない。
・本実施形態では、モータ33は、減速機構32を介して遊星歯車機構31と駆動連結されることとした。しかし、これに限らず、モータ33と遊星歯車機構31とを直接駆動連結する構成であってもよい。また、モータ33の配置についても、本実施形態に示されるものに限るものではない。
・本実施形態では、中間部材73及び筒状部材72の間には、これら中間部材73と筒状部材72との間の相対回転を規制する周り止め機構75が形成されるととした。しかしながら、このような周り止め機構は、必ずしも設けなくともよい。即ち、中間部材73が軸状部71及び筒状部材72の両方と摩擦係合する構成であってもよい。そして、軸状部71及び中間部材73の間に周り止め機構を設け、筒状部材72側を摩擦係合面とする構成であってもよい。即ち、第3部材としての中間部材73が、第1部材としての軸状部71及び第2部材としての筒状部材72の少なくとも一方と摩擦係合する構成であればよい。
・また、本実施形態では、筒状部材72側に斜面81を形成したが、図5に示すように、軸状部71側に斜面91を形成する構成としてもよく、図6に示すように、軸状部71側及び筒状部材72側にそれぞれ斜面92,93を形成する構成としてもよい。
・さらに、本実施形態では、摩擦係合面を構成する中間部材73の内周73aには、摩擦材76が設けられることとしたが、このような摩擦材76は、必ずしも設けなくともよい。
・本実施形態では、締結部材としてのナット84は、筒状部材72の外周72bに形成された螺子部83に螺着されることにより、中間部材73を軸方向に押圧可能な構成とした。しかし、これに限らず、例えば、図7に示すように、軸状部71の外周71aに螺子部94を形成し、この螺子部94に螺着されたナット95の螺子対偶に基づく軸方向移動により、中間部材73を押圧する構成としてもよい。そして、図8に示すように、筒状部材72の内周72aに螺子部96に形成し、この螺子部96に螺着された締結部材97により、筒状部材72の内側から中間部材73を軸方向に押圧する構成としてもよい。尚、このような構成とした場合の斜面98は、その傾斜が本実施形態の斜面81とは反対側となることはいうまでもない。
・本実施形態では、中間部材73は、筒状に形成され、その斜面82は、同中間部材73の第3サンギヤ56側の端部をテーパ状とすることにより形成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、くさび状等、その他の形状を有するものを用いてもよい。
駆動力配分装置としてのリヤディファレンシャルの断面図。 リヤディファレンシャルの拡大断面図。 トルクリミッタの断面図。 車両の概略構成図。 別例のトルクリミッタの断面図。 別例のトルクリミッタの断面図。 別例のトルクリミッタの断面図。 別例のトルクリミッタの断面図。
符号の説明
1…車両、2…エンジン、6…プロペラシャフト、8…リヤディファレンシャル、9L,9R…リヤアクスル、10L,10R…後輪、11…ハウジング、11a…第1ハウジング、11b…第2ハウジング、11c…円筒部、11b…ギヤ収容部、12L,12R…出力軸、12La,12Ra…基端、13…入力軸、14…差動機構、30…駆動力配分装置、31…遊星歯車機構、32…減速機構、33…モータ、33a…出力軸、42…第1ピニオン、43…第2ピニオン、44…プラネタリギヤ、45…プラネタリキャリヤ、46…第1サンギヤ、47…第2サンギヤ、51…変速機構、52…第3ピニオン、53…第4ピニオン、54…二連ピニオン、55…支持部材、56…第3サンギヤ、57…第4サンギヤ、70…トルクリミッタ、71…軸状部、71a…外周、72…筒状部材、72a…内周、72b…外周、73…中間部材、73a…内周、73b…外周、75…周り止め機構、76…摩擦材、81,82,91,92,93,98…斜面、83,94,96…螺子部、84,95…ナット、96…締結部材。

Claims (5)

  1. 入力される駆動力を相互の差動を許容しつつ第1及び第2の出力軸に伝達する差動機構と、前記第1及び第2の出力軸間に介在されるとともにモータに駆動連結された遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構に設定された変速比を補正するための変速機構とを備え、モータトルクに基づき前記第1及び第2の出力軸間に差回転を生じさせることにより前記入力される駆動力の前記第1及び第2の出力軸への配分比率を制御可能な駆動力配分装置において、
    前記モータから前記第1及び第2の出力軸に至るトルク伝達系の途中には、予め設定された所定のトルク範囲内においてトルク伝達可能なトルクリミッタが設けられ、
    前記トルクリミッタは、軸状に形成された第1部材と、筒状に形成されて前記第1部材の径方向外側に同軸配置される第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介在されて該第1部材及び第2部材の少なくとも一方と摩擦係合することにより前記所定のトルク範囲内において前記第1部材及び前記第2部材間をトルク伝達可能に連結する第3部材とを備えた摩擦クラッチにより構成されること、を特徴とする駆動力配分装置。
  2. 請求項1に記載の駆動力配分装置において、
    前記第1部材又は第2部材に螺着されることにより前記第3部材を軸方向に押圧する締結部材を備え、
    前記第1部材の外周及び前記第2部材の内周の少なくとも一方には、軸方向に傾斜する第1斜面が形成されるとともに、前記第3部材には、前記第1斜面に当接し前記押圧により該第1斜面との間で径方向押圧力を発生する第2斜面が形成されること、
    を特徴とする駆動力配分装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の駆動力配分装置において、
    前記第3部材は、前記第1部材又は第2部材の何れか一方に対して相対回転不能に周り止めされ、前記摩擦係合する摩擦係合面は、他方側に形成されること、
    を特徴とする駆動力配分装置。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の駆動力配分装置において、
    前記摩擦係合する摩擦係合面には、摩擦材が介在されること、
    を特徴とする駆動力配分装置。
  5. 請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の駆動力配分装置において、
    前記トルクリミッタは、前記遊星歯車機構と前記変速機構との間、又は前記遊星歯車機構と前記差動機構との間に設けられること、を特徴とする駆動力配分装置。
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