JP2008144614A - 揮発性有機化合物の廃液改質システム - Google Patents

揮発性有機化合物の廃液改質システム Download PDF

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一樹 谷端
Yoji Mizuno
庸司 水野
Masayasu Miyamoto
正泰 宮本
Junnosuke Tamagawa
準之介 玉川
Toshiaki Murata
逞詮 村田
Hitoshi Koyama
斎 小山
Makoto Matsuda
誠 松田
Hajime Sato
肇 佐藤
Junichiro Hayashi
潤一郎 林
Kazuhiro Kumabe
和弘 隈部
Masateru Nakano
真輝 中野
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Abstract

【課題】第1に、構成が簡単容易であり、設備コスト等に優れると共に、第2に、効率面やランニングコスト等にも優れた、揮発性有機化合物の廃液改質システムを提案する。
【解決手段】この改質システムは、予熱器2と改質反応器3とロータリーエンジン5とを、備えており、揮発性有機化合物VOCの廃液1が供給される。予熱器2は、VOC廃液1を加熱して気化し、もってVOCガスと水蒸気を改質反応器3に供給する。改質反応器3は、ロータリーエンジン5からの高温の排気ガス6を利用し、例えば800℃程度に維持されており、その熱の作用と、内部充填された触媒8の作用とに基づき、VOCガスと水蒸気を反応させ、もって水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に、水蒸気改質する。ロータリーエンジン5は、改質ガス6中の水素や一酸化炭素を燃料として運転され、例えば発電機17が接続されている。なお予熱器2も、排気ガス6を利用して加熱を実施する。
【選択図】図1

Description

本発明は、揮発性有機化合物の廃液改質システムに関する。すなわち、揮発性有機化合物VOCの廃液を水素や一酸化炭素等に改質する、改質システムに関する。
《技術的背景》
トルエン,キシレン,その他の揮発性有機化合物VOCは、例えば溶剤として使用され、グラビア印刷の乾燥工程、その他の印刷,塗布,塗装,接着工程や、その加熱,乾燥,洗浄工程等から排出される排ガスや排液中に、含有されている。
そして、大気汚染,環境破壊を引き起こす浮遊粒子状物質SPMやオキシダント等の原因物質として知られており、本年4月施行の改正大気汚染防止法において、その排出規制が強化されている。
《従来技術》
そこで、このような揮発性有機化合物VOCの発生工程には、従来より、その回収装置が付設されていた。
すなわち、この種の排ガスや排液(予め加熱,気化される)は、回収装置に供給され、その揮発性有機化合物VOCは、まず、活性炭等に吸着せしめられた後、水蒸気等の吹き付けにより脱着され、廃液として回収されていた。回収された廃液は、例えば、揮発性有機化合物VOCが濃度20wt%程度(水80wt%程度)よりなり、タンク等に一旦貯留される。
それから廃液は、a.蒸留法や高分子膜法により脱水処理して、揮発性有機化合物VOCを精製化,純粋化,再利用化したり、又はb.そのまま、蒸気や助燃剤と共にボイラーやガスタービン等に供給して、燃料化したり、c.触媒を使用して燃焼処理したり、e.(多くの場合遠隔地へと搬送されて、)排水,廃棄処分されていた。
ところで、このような従来例については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、設備が大型化,大規模化,複雑化,精緻化し、もって設備コスト等に、問題が指摘されていた。
すなわち、廃液から揮発性有機化合物VOCを精製,再利用する前記aの従来例については、蒸留設備,加熱設備,高分子膜,その他の付帯設備,関連設備等が必須的であり、この種設備が一般的に大型,大規模,複雑,精緻であることに鑑み、設備コスト,敷地コスト,精製コスト等が嵩む、という問題があった。
《第2の問題点》
第2に、効率面やランニングコスト等にも、問題が指摘されていた。すなわち、前記aの従来例については、精製された揮発性有機化合物VOCが再利用に供されるものの、加熱その他の運転コスト,ランニングコストが嵩むと共に、精製に長時間を要する等、効率も悪かった。
又、ボイラーやガスタービン等に供給して燃料化する前記bの従来例や、燃焼処理する前記cの従来例についても、大量の助燃剤や触媒を必要とし、運転コスト,ランニングコストが嵩み過ぎる、という難点が指摘されていた。
排水,廃棄処分する前記dの従来例については、処分費用面や運搬時間面で、運転コスト,ランニングコスト,効率面に問題が指摘されると共に、環境汚染という問題も指摘されていた。
《その他》
ところで、炭化水素系燃料を水素リッチガスに改質する技術に関しては、次の特許文献1に示されたものがあるが、この技術は、揮発性有機化合物VOCとローターリーエンジンとの組み合わせについて、具体的に論及,開示したものではない。
特開2002−12404号公報
《本発明について》
本発明の揮発性有機化合物の廃液改質システムは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、設備コスト等に優れると共に、第2に、効率面やランニングコスト等にも優れた、揮発性有機化合物の廃液改質システムを提案することを、目的とする。
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。請求項1の揮発性有機化合物の廃液改質システムは、エンジンからの高温の排気ガスを利用して、揮発性有機化合物VOCを改質する改質反応器と、該改質反応器にて生成された改質ガスを燃料とする該エンジンと、を有していることを特徴とする。
次に、請求項2については次のとおり。請求項2の揮発性有機化合物の廃液改質システムでは、請求項1において、該改質反応器は、該エンジンから導入された排気ガスによる高温下において、触媒のもとで揮発性有機化合物VOCと水蒸気とを反応させ、もって水素と一酸化炭素や二酸化炭素に水蒸気改質すること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の揮発性有機化合物の廃液改質システムでは、請求項2において、予熱器が、揮発性有機化合物VOCの廃液を予め加熱して気化し、もって揮発性有機化合物VOCと水蒸気を該改質反応器に供給し、該改質反応器は、該エンジンからの排気ガスが導入され、もって内部が650℃以上例えば800℃程度に維持されており、該エンジンは、ロータリーエンジンよりなること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4の揮発性有機化合物の廃液改質システムでは、請求項3において、揮発性有機化合物VOCは、メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,キシレン,ベンゼン,エタノール,その他の炭化水素系化合物であって、沸点が50℃以上〜260℃未満のものよりなり、その1種又は複数種が選択され、溶剤として使用されると共に廃液として回収,提供される。
水蒸気改質は、揮発性有機化合物VOCの炭素の結合を切断し又は組み換えて、分子量のより小さい水素と一酸化炭素や二酸化炭素に変換する、水蒸気をガス化剤とした吸熱反応よりなる。そして該ロータリーエンジンは、改質ガス中の水素や一酸化炭素を燃料として運転され、該予熱器は、該ロータリーエンジンからの高温の排気ガスが導入されて加熱を実施すること、を特徴とする。
《作用等について》
本発明の揮発性有機化合物VOCの廃液改質システムは、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この改質システムは、予熱器と改質反応器とロータリーエンジンとを、備えており、低濃度の揮発性有機化合物VOCの廃液が、供給される。
(2)そしてVOC廃液は、まず予熱器にて加熱,気化されるが、この加熱は、ロータリーエンジンからの排気ガスを熱源とする。
(3)気化された水蒸気とVOCガスは、改質反応器に供給される。改質反応器は、ロータリーエンジンの排気ガスの熱量が導入され、650℃以上例えば800℃程度に維持されている。
(4)そこでVOCガスは、熱と触媒の作用に基づき、水蒸気と反応して改質される。
(5)すなわち例えば、メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,キシレン,ベンゼン,エタノール等は、水蒸気と反応して、水素と一酸化炭素や二酸化炭素に、水蒸気改質される。
(6)生成された改質ガスは、燃料としてロータリーエンジンに供給される。
(7)ロータリーエンジンの排気ガスの熱量は、改質反応器そして予熱器へと導入される。
(8)さてこのように、改質反応器の改質ガスを、ロータリーエンジンの燃料として使用すると共に、ロータリーエンジンの排気ガスを、改質反応器や予熱器にて活用する。このシステムでは、このように、その構成がサイクル的,循環的に関連付けられており、その分、設備が簡単容易化される。
(9)このように、その構成設備である改質反応器,ロータリーエンジン,予熱器が関連した系をなしているので、システム運用に無駄がなく効率的である。すなわち、システムのランニング面において、その燃料や熱源が無駄なく生成,使用されており、改質処理時間も短い。
(10)そこで、本発明の揮発性有機化合物VOCの廃液改質システムは、次の効果を発揮する。
《第1の効果》
第1に、設備コスト等に優れている。すなわち、本発明の改質システムは、その改質ガスをロータリーエンジンの燃料とすると共に、ロータリーエンジンの排気ガスを、改質反応器や予熱器にて活用する。
そこで、前述したこの種従来例に比し、構成設備が簡単容易化,簡略化,小型化,小規模化され、設備コスト等に優れている。
《第2の効果》
第2に、効率面やランニングコスト等にも優れている。すなわち、本発明の改質システムは、その改質ガスをロータリーエンジンの燃料として再使用,有効利用すると共に、その排気ガスが高温であることに着目して、改質反応器や予熱器の熱源として活用する。
そこで、前述したこの種従来例に比し無駄がなく効率的であり、その分、運転コスト,ランニングコストに優れると共に、改質処理時間も短い。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
《図面について》
以下、本発明の揮発性有機化合物の廃液改質システムを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1および図2は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして図1は、構成フロー図であり、図2は、実施例の計測データのグラフである。
《VOCについて》
本発明は、揮発性有機化合物VOCの廃液1の改質システムに関する。そこで、まず揮発性有機化合物VOCについて述べておく。
揮発性有機化合物VOLATILE ORGANIC COMPOUNDS、略してVOC(以下この明細書では、単にVOCと言う)は、下記物質,その他の炭化水素系化合物であって、沸点が50℃以上〜260℃未満のものよりなり、主に人工合成され、大気中に飛散した場合に容易に揮発する物質、と定義されている。
・メチルエチルケトン(MEK) CHCOCHCH
・イソプロピルアルコール(IPA) CHCH(CH)OH
・酢酸エチル CHCOOCHCH
・酢酸ブチル CHCOO(CHCH
・トルエン CHCH
・キシレン CH(CH
・ベンゼン C
・エタノール COH
・トリクロロエタン CCl
・リモネン C1016
VOCは、このようになっている。
《VOC廃液1について》
次に、このようなVOC廃液1について述べる。VOCは、例えば上記各物質中の1種又は複数種(多くの場合は複数種)が選択され、もって溶剤,その他として使用されると共に、廃液1として回収,提供される。
これらについて、更に詳述する。例えば、印刷,塗布,塗装,接着工程や、その加熱,乾燥,洗浄工程、その他各種の化学処理工程から排出された排ガスや排液中には、例えば溶剤として使用されたVOCが、含有されている。
→そこで、このようなVOCの発生工程には、その回収装置が付設されており、→この種の排ガスや排液(排液の場合は、事前に予め加熱,気化される)は、回収装置に供給される。→回収装置においてVOCは、まず、活性炭等の吸着剤に吸着せしめられた後、→水蒸気や熱風等の吹き付けにより、脱着され、→必要に応じ凝縮用のコンデンサを経由した後、→VOC廃液1として回収される。なお排ガスは、このようにクリーン化されて大気放出される。
→回収されたVOC廃液1は、VOCの濃度が例えば20wt%程度(水80wt%程度)よりなる。水を溶媒溶液とし、VOCを低濃度の溶質成分として、水和状態の水溶液として回収,提供される。
VOC廃液1は、このようになっている。
《予熱器2について》
次に、予熱器2について述べる。上述により回収,提供されたVOC廃液1(供給量例えば260kg/h程度)は、まず予熱器2で気化された後、次工程の改質反応器3に供給される。
この予熱器2について、更に詳述する。予熱器2は、提供されたVOC廃液1を加熱により気化し、もって水蒸気とVOCガスの混合ガス4を、改質反応器3へと供給する。そのVOC濃度は、例えば20wt%程度である。
又、図示の予熱器2は、改質反応器3から使用済として排出され、まだ高温を維持しているロータリーエンジン5の排気ガス6が、管路7を介して導入され、もって加熱用熱源として使用されている。加熱に使用される排気ガス6の温度、つまり予熱器2の内部温度は、例えば650℃程度であり、VOCガスを得るのに必要十分な温度よりなる。
予熱器2は、このようになっている。
《改質反応器3について》
次に、改質反応器3について述べる。改質反応器3は、予熱器2から供給された混合ガス4を水蒸気改質する。
すなわち改質反応器3は、ロータリーエンジン5からの排気ガス6が、650℃以上例えば800℃〜900℃程度で導入されると共に、内部が650℃以上例えば800℃程度に維持される。そして、このように高温の排気ガス6を利用し、高温下において触媒8のもとで、VOCガスと水蒸気とを反応させ、もって、水素と一酸化炭素や二酸化炭素に水蒸気改質して、改質ガス9を生成する。
このような改質反応器3について、更に詳述する。改質反応器3には、予熱器2から管路10を介して混合ガス4が供給されると共に、ロータリーエンジン5から管路11を介して、排気ガス6が導入される。改質反応器3は、排気ガス6の経路が内部配設されており、供給された混合ガス4のVOCガスと水蒸気が、経路を通過する排気ガス6の顕熱にて、例えば800℃程度に維持される。
そこで改質反応器3内では、改質対象である混合ガス4中のVOCガスは、このような熱の作用と、内部充填された触媒8の作用とに基づき、混合ガス4中の水蒸気をガス化剤として反応して、水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に変換され、水蒸気改質される。分子量の大きいVOCは、その炭素の結合が切断,組み換えられ、もって分子量のより小さい水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に変換される。
反応促進用の改質触媒8としては、ニッケル系のものが代表的に使用され、例えば、ニッケル担持アルミナ粒状触媒(粒度60〜80mesh)が使用されるが、その他、シリカ系,白金系,ロジウム系,ゼオライト系のものも使用可能である。そして触媒8は、例えば粒子固定層として、改質反応器3内に充填される。
改質反応器3は、このようになっている。
《ロータリーエンジン5等について》
次に、ロータリーエンジン5について述べる。エンジンとして代表的に使用されるロータリーエンジン5は、改質反応器3にて生成された改質ガス9の水素や一酸化炭素を燃料として、運転される。
このようなロータリーエンジン5について、更に詳述する。ロータリーエンジン5は、周知のごとく、燃焼室内でローターが偏心回転して、主軸に回転力を伝達する、間欠燃焼式・容積式の内燃機関である。そして、このロータリーエンジン5の燃料として、改質反応器3から管路10で供給された、改質ガス9中の水素,一酸化炭素,メタン等が使用される。
このロータリーエンジン5への管路10には、途中に、冷却水12による冷却部13と、改質ガス9の圧送兼流量調整用のポンプ14と、改質ガス9への空気15の導入量調整用の調節ユニット16とが、順に介装されている。冷却部13からは、改質ガス9中に残存していた剰余水蒸気が、凝縮水17となって排出,除去される。
ロータリーエンジン5の主軸は、隣接設置された発電機18に連結されており、その駆動が発電用に出力されているが、勿論、電力化以外の駆動エネルギー源として、各種用途に利用可能である。
ロータリーエンジン5の排気ガス6は、650℃以上例えば800℃〜900℃程度であり、煙道である管路11を介して、改質反応器3に導入される。図示の管路11には、燃焼部19が介装されている。すなわち、排気ガス6中には燃料の未燃分が残留しているので、燃焼部19が介装されており、燃焼部19は、例えば酸化触媒付のワイヤメッシュ構造よりなり、未燃分を捕集,再燃焼させ、もって改質反応器3へと向かう排気ガス6を一段と高温化し、例えば800℃〜900℃程度とする。
なお、このようにロータリーエンジン5が代表的に使用されるが、エンジンとして、その他のレシプロエンジン例えばディーゼルエンジンやガスエンジンも使用可能であり、更にガスタービン等も使用可能であるが、これらの場合、その排気ガス6は300℃〜600℃程度、例えば350℃〜450℃程度なので、800℃以上に高温加熱されて、改質反応器3へと導入される。
ロータリーエンジン5等は、このようになっている。
《VOC廃液1のパターンについて》
さて、改質反応器3に予熱器2を介して気化,供給されるVOC廃液1の構成成分パターンは、様々である。すなわち、VOC濃度20wt%(水80wt%)程度が代表的であるが、そのVOCの構成成分の具体的内訳パターンは、例えば次のとおり様々である。
・パターン1:トルエン40wt%,キシレン20wt%,イソプロピルアルコール20wt%,酢酸エチル20wt%
・パターン2:トルエン40wt%,キシレン10wt%,メチルエチルケトン20wt%,イソプロピルアルコール20wt%,酢酸ブチル10wt%
・パターン3:トルエン30wt%,キシレン10wt%,メチルエチルケトン30wt%,イソプロピルアルコール10wt%,酢酸エチル10wt%,酢酸ブチル10wt%
・パターン4:トルエン35wt%,キシレン7wt%,メチルエチルケトン22wt%,イソプロピルアルコール27wt%,酢酸エチル9wt%
VOC廃液1については、その他各種の比率や内容の構成成分パターンが考えられる。
《ベンゼンの水蒸気改質反応について》
次に、VOCの代表例であるベンゼンの水蒸気改質反応について述べる。ベンゼンの場合、改質反応器3では、次の化1,化2の化学反応式により、水蒸気改質が行われる。
Figure 2008144614
Figure 2008144614
化1の反応式において、ベンゼンCは、水蒸気HOと反応して、一酸化炭素COと水素Hの改質ガス9に水蒸気改質される。ベンゼンと水蒸気の系は、高温付与により系のエンタルピーが上がり、吸熱反応により一酸化炭素と水素の混合気体に完全ガス化されるが、生成水素量(水素収率)は最小である。
これに対し化2の反応式では、ベンゼンCは水蒸気HOと反応して、二酸化炭素COと水素Hの改質ガス9に、水蒸気改質される。これは、化1の反応式より多量の水蒸気が作用すると共に、化1の反応式の一酸化炭素も完全に改質された場合であり、吸熱反応により二酸化炭素と水素に完全ガス化され、生成水素量(水素収率)は最大となる。すなわち、この化2の反応式では、化1の反応式で生成された一酸化炭素COが、発熱反応である下記化3のシフト反応により水蒸気HOと反応して、二酸化炭素COと水素Hの混合気体である改質ガス9へと改質,変換される。
Figure 2008144614
さてそこで、化3のシフト反応が0%の場合は化1の反応式により、化3のシフト反応が100%の場合は化2の反応式により、水蒸気改質が進行する。しかしこれらは理論上,リミット上であり、実際上は、一酸化炭素濃度を低減する化3のシフト反応の発生程度等に従い、化1と化2の中間の反応式により水蒸気改質が進行する可能性が高く、この場合は、一酸化炭素COと二酸化炭素COと水素Hの混合気体が、改質ガス9として生成される。
そして水蒸気改質に際し、ベンゼン1モル(78g)に対し理論上必要な水蒸気量は、化1と化2の反応式により6〜12モル(108g〜216g)であり、もってベンゼンの炭素1モルに対する重量13gに対する必要水蒸気量は、18〜36g(1.4〜2.8倍)として算出される。このような理論上の必要量に対し、実際上の必要量は、通常その1.3倍とされているので、実際上必要な水蒸気量は、その1.8〜3.6倍、最大約4倍程度となる。因に、ベンゼンの発熱量を100とすると、改質ガス9の発熱量は、130程度となる。
なお、上述した化1,化2の反応式の過程においては、次の化4,化5の中間反応も見られる。
Figure 2008144614
Figure 2008144614
すなわち、前述した水蒸気改質の過程で、若干のメタンCHが、中間生成物として随伴生成されるが、このメタンCHは、上記化4,化5の反応式により、殆ど一酸化炭素CO,二酸化炭素CO,水素H等に、分解,水蒸気改質されてしまう。
ベンゼンの水蒸気改質反応は、このように行われる。
《その他のVOCの水蒸気改質反応について》
その他のVOCの水蒸気改質反応については、次のとおり。改質反応器3におけるその他の各VOC物質の水蒸気改質反応については、それぞれ、ベンゼンについて上述した所に準じるので、その概略を例示するに留める(なお、下記の各反応式中、上段は水素収率が最小の場合、下段は水素収率が最大の場合である)。
・メチルエチルケトンについて:次の化6の反応式により水蒸気改質が進行し、その1gを改質するのに必要な水蒸気量は、理論上、0.75〜2.00gと算出され、もって実際上は、1.0〜2.6g程度となる。
Figure 2008144614
・イソプロピルアルコールについて:次の化7の反応式により水蒸気改質が進行し、その1gを改質するのに必要な水蒸気量は、理論上、0.6〜1.5gと算出され、もって実際上は、0.8〜2.0g程度となる。
Figure 2008144614
・酢酸エチルについて:次の化8の反応式により水蒸気改質が進行し、その1gを改質するのに必要な水蒸気量は、理論上、0.4〜1.2gと算出され、もって実際上は、0.5〜1.6g程度となる。
Figure 2008144614
・トルエン:次の化9の反応式により水蒸気改質が進行し、その1gを改質するのに必要な水蒸気量は、理論上、1.4〜2.7gと算出され、もって実際上は、1.8〜3.5g程度となる。
Figure 2008144614
・キシレンについて:次の化10の反応式により水蒸気改質が進行し、その1gを改質するのに必要な水蒸気量は、理論上、1.4〜2.8gと算出され、もって実際上は、1.8〜3.6g程度となる。
Figure 2008144614
その他のVOCの水蒸気改質は、例えばこのように行われる。
《作用等》
本発明のVOC廃液1の改質システムは、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この改質システムは、予熱器2と改質反応器3とロータリーエンジン5とを備えている。そして例えば、VOC濃度20wt%程度と低濃度のVOC廃液1が、回収,供給される。
(2)供給されたVOC廃液1は、まず予熱器2にて、加熱,気化される。この加熱は、ロータリーエンジン5から排出され改質反応器3を経由した後の排気ガス6の余熱を利用して、例えば650℃程度で実施される。
(3)このようにVOC廃液1は、予熱器2にて加熱,揮発,気化され、水蒸気とVOCガスの混合ガス4となって、改質反応器3に供給される。改質反応器3には、ロータリーエンジン5からの排気ガス6が、650℃以上例えば800℃〜900℃程度で導入されており、内部が650℃以上例えば800℃程度に維持されている。
(4)そこで、混合ガス4中のVOCガスは、この改質反応器3内において、排気ガス6の熱作用と、内部充填された触媒8の作用とに基づき、水蒸気と反応して改質される。
(5)例えば、メチルエチルケトンCHCOCHCH,イソプロピルアルコールCHCH(CH)OH,酢酸エチルCHCOOCHCH,酢酸ブチルCHCOO(CHCH,トルエンCHCH,キシレンCH(CH,ベンゼンC,エタノールCOH等は、前述した各化学反応式により、水蒸気HOと反応して、水素H,一酸化炭素CO,二酸化炭素CO等に、水蒸気改質により変換される。
(6)このように改質,生成された混合気体である改質ガス9は、ロータリーエンジン5に供給される。ロータリーエンジン5は、改質ガス9中の水素や一酸化炭素を燃料として、運転される。
なお改質ガス9については、低カロリーの可能性やカロリー変動の可能性もあるが、ロータリーエンジン5は、レシプロエンジンとは異なり、これらに容易に対応可能である。
すなわちVOC廃液1は、前述したように様々な構成成分パターンが考えられ、その具体的内容次第では、低カロリーの改質ガス9や、カロリー変動の大きい改質ガス9も予測されるが、ロータリーエンジン5は、その一般的特性に基づき、空気燃料比13.1〜15.7程度でも、調整なしで回転数一定の安定運転が可能である。カロリーの補足調整や変動幅調整のための燃料補充は、不要である。
(7)そして、運転されるロータリーエンジン5の排気ガス6は、650℃以上例えば800℃〜900℃程度と高温であり、改質反応器3へと排出,導入される。更に、改質反応器3にて使用,排出された排気ガス6は、まだ650℃程度と高温を維持しており、予熱器2に導入され加熱用に利用される。
(8)さて、このVOC廃液1の改質システムは、以上説明したように、改質反応器3からの改質ガス9を、ロータリーエンジン5の燃料として使用すると共に、ロータリーエンジン5の排気ガス6が極めて高温であることに着目して、この排気ガス6を、改質反応器3や予熱器2に持ち込んで活用する。
この改質システムでは、このように、改質反応器3とロータリーエンジン5と予熱器2との間が、有機的に関連付けられている。つまり、その各構成間が、サイクル的,相互補完的,循環的に関係しており、その分だけ設備が、簡単容易化,簡略化,小型化,小規模化される。
(9)この改質システムは、このように、その構成設備である改質反応器3,ロータリーエンジン5,予熱器2間が、有機的,サイクル的,相互補完的,循環的に関連付けられている。そこで、全体のシステム運用に無駄がなく効率的であり、システムのランニング面において、その燃料や熱源が無駄なく生成,使用,有効利用されており、改質処理時間も短い。
すなわち、VOC廃液1からVOC物質を精製したり、VOC廃液1を廃棄処分したりするのではなく、VOC廃液1をそのまま直に改質して、即燃料化,再使用,有効利用する。このように生成された燃料にて、ロータリーエンジン5を運転すると共に、そのロータリーエンジン5の排気ガス6を、改質用に活用,有効利用する。もって例えば、電力をコスト面に優れて供給可能となる。
(10)又、このようにVOC廃液1が、水素,一酸化炭素,二酸化炭素等に水蒸気改質されてしまうので、大気汚染,環境破壊の虞もなくなる。これらの原因物質となる可能性のあるVOCは、改質により不安なく処理されてしまう。
ここで、本発明のVOC廃液1の改質システムの実施例について述べておく。表1および図2は、実施例1のテスト結果の計測データの表およびグラフである。この実施例1では、図1に示した改質システムにおいて、触媒8が充填された改質反応器3に対し、VOC廃液1を混合ガス4に気化して連続的に供給し、もって水蒸気改質についてテストした。まず、実施例1のテスト条件は、次のとおり。
・供給廃液1のVOC中のカーボンCと水HOとの比率(mol): 1
対 5.37
・触媒温度(℃) : 800
・ガス滞留時間(ms): 71
・触媒(粒子固定層) : ニッケルNi触媒,層高13mm,層断面積78.5mm
,層空隙率0.4
・テスト時間(min): 70
このようなテスト条件のもと、改質反応器3から生成,排出される改質ガス9を、経時的に計測した結果、次の表1および添付の図2に示したように、次のデータが得られた。
・改質ガスの平均組成(vol%): H 70%, CO 9%, CO 21%
,CH 0.05%
・VOC改質変換率(%) : 99.99(VOC残留は検出されず)
・炭素析出 : No coke deposition
・炭化水素(有機物) : No C2-hydrocarbons
実施例1のテスト結果によると、このようにVOCは、所期のごとく水蒸気HOと反応して、上記組成のように、水素H,一酸化炭素CO,二酸化炭素CO,極く僅かのメタンCH等に、水蒸気改質された。
実施例1では、このような点がデータ的に確認された。
Figure 2008144614
実施例2については、次のとおり。実施例2は、図1に示した改質システムのスペックの1例に関する。
・供給廃液1中のVOCと水HOの比率(wt%): 20% 対 80%
・そのVOCの構成成分(wt%):トルエン8%,キシレン2%,メチルエチルケトン
4%,イソプロピルアルコール4%,酢酸エチル2%
このVOC廃液1の水蒸気改質について、まず、その化学反応式を求めた。すなわち、このスペックの構成成分量(wt%)から、個々それぞれのモル分率、そしてそのモル分率に含まれる原子数を計算し、もって全構成成分の平均,合計原子数を算出して、炭素1モル当たりに換算した結果、炭素1モル当たりの全成分の平均実験式は、CH1.6060.132となった。(従って、炭素1モル当たりの全構成成分の平均,合計分子量は、12×1+1×1.606+16×0.132=15.71である。)
そこで、求める化学反応式は、次の化11となった(その上段は、水素収率が最小の場合、下段は、水素収率が最大の場合である)。
Figure 2008144614
この化11の反応式に基づき、このスペックの水蒸気改質に際し、炭素1モル当たりのVOC1モル(12×1+1×1.606+16×0.132=15.71g)に対し、理論上必要な水蒸気量は、15.66〜33.66g(VOC重量の1.0〜2.1倍)として算出される。そして実際上の必要量は、その1.3倍とすると、VOC重量の1.3〜2.7倍、最大約3倍程度となる。
実施例2については、以上のとおり。
本発明に係る揮発性有機化合物の廃液改質システムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、構成フロー図である。 同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、実施例の計測データのグラフである。
符号の説明
1 VOC廃液(廃液)
2 予熱器
3 改質反応器
4 混合ガス
5 ロータリーエンジン(エンジン)
6 排気ガス
7 管路
8 触媒
9 改質ガス
10 管路
11 管路
12 冷却水
13 冷却部
14 ポンプ
15 空気
16 調節ユニット
17 凝縮水
18 発電機
19 燃焼部

Claims (4)

  1. エンジンからの高温の排気ガスを利用して、揮発性有機化合物VOCを改質する改質反応器と、該改質反応器にて生成された改質ガスを燃料とする該エンジンと、を有していることを特徴とする、揮発性有機化合物の廃液改質システム。
  2. 請求項1に記載した揮発性有機化合物の廃液改質システムにおいて、該改質反応器は、該エンジンから導入された排気ガスによる高温下において、触媒のもとで揮発性有機化合物VOCと水蒸気とを反応させ、もって水素と一酸化炭素や二酸化炭素に水蒸気改質すること、を特徴とする、揮発性有機化合物の廃液改質システム。
  3. 請求項2に記載した揮発性有機化合物の廃液改質システムにおいて、予熱器が、揮発性有機化合物VOCの廃液を予め加熱して気化し、もって揮発性有機化合物VOCと水蒸気を該改質反応器に供給し、
    該改質反応器は、該エンジンからの排気ガスが導入され、もって内部が650℃以上例えば800℃程度に維持されており、該エンジンは、ロータリーエンジンよりなること、を特徴とする、揮発性有機化合物の廃液改質システム。
  4. 請求項3に記載した揮発性有機化合物の廃液改質システムにおいて、揮発性有機化合物VOCは、メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,キシレン,ベンゼン,エタノール,その他の炭化水素系化合物であって、沸点が50℃以上〜260℃未満のものよりなり、その1種又は複数種が選択され、溶剤として使用されると共に廃液として回収,提供され、
    水蒸気改質は、揮発性有機化合物VOCの炭素の結合を切断し又は組み換えて、分子量のより小さい水素と一酸化炭素や二酸化炭素に変換する、水蒸気をガス化剤とした吸熱反応よりなり、
    該ロータリーエンジンは、改質ガス中の水素や一酸化炭素を燃料として運転され、該予熱器は、該ロータリーエンジンからの高温の排気ガスが導入されて加熱を実施すること、を特徴とする、揮発性有機化合物の廃液改質システム。
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