JP2008144244A - 成膜制御装置および成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に凹曲面状の被成膜面を有する被成膜体に対して、異なる形状や寸法のものが混載されていても均一な膜厚の薄膜が形成されるように制御することが可能な成膜制御装置を提供する。
【解決手段】被成膜体Wの凹曲面状をなす被成膜面Waへの成膜を制御する成膜制御装置16であって、被成膜面Waがなす凹曲面の底部と開口部の中央部とを結ぶ中心線Cに沿って延びるように配設される軸部材17と、この軸部材17の外周に突出するように設けられて、被成膜体Wに対して着脱自在かつ中心線C方向の位置が調整可能とされる制御部材19とを備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えば真空容器内に収容された被成膜体に蒸着等によって薄膜を形成する際に、この被成膜体の被成膜面への成膜を制御する成膜制御装置、およびかかる成膜制御装置を配設した成膜装置に関するものである。
このような成膜装置においては、薄膜を均一に形成するために被成膜体を成膜物質の発生機構に対して回転させながら成膜を行うようにしているが、より高い成膜精度が要求される場合には、単に被成膜体を回転させるだけでは不十分である。そこで、例えば特許文献1には、回転する被成膜体(基板)と成膜物質の発生機構との間に被成膜体の一部を覆うように補正板を設けた成膜装置が提案され、また特許文献2には、真空容器に収容された被成膜体(基材)と成膜物質の発生機構との間を横切って移動するように補正部材と駆動部とを設けたものが提案されている。
特開2002−97570号公報 特開2004−131749号公報
しかしながら、このような成膜装置でも、被成膜体が例えばリフレクタ用ガラス基板のように凹曲面状をなす被成膜面を有するものであって、特にこの凹曲面の開口部から底部までの深さが開口部の内半径以上に深い場合などには、被成膜体を成膜物質の発生機構に対して回転させながら成膜を行うと、発生した成膜物質に多く晒される部分とそうでない部分とが、凹曲面の底部と開口部の中央部とを結ぶ被成膜面の中心線方向に生じるため、特許文献1のように補正板が回転する被成膜体の上に間隔をあけて配置されているだけでは、膜厚を均一にして成膜することは難しい。また、特許文献2のように回転する被成膜体と成膜物質の発生機構との間を補正部材が横切るように移動するものでは、この補正部材の移動を被成膜体の回転に応じて制御しなければならず、この制御のために駆動部に複雑な機構が必要となる。さらに、上記被成膜面が上記中心線に対して著しく非対称な形状であると、この中心線回り方向にも膜厚の不均一が生じてしまう。
しかも、特許文献1の補正板は、自転する被成膜体が載置されて公転する公転テーブルにその基部が固定されており、また特許文献2の補正部材は、複数の被成膜体を保持して回転する基材ホルダと成膜物質の発生機構との間を横切るように移動させられるので、異なる形状、寸法の複数の被成膜体を同一の補正板が固定された公転テーブルに載置したり、あるいは1つの基材ホルダに混載して保持したりして成膜しようとすると、膜厚の不均一は一層顕著なものとなる。このため、大型の成膜装置であっても1回のバッチでは同一の形状、寸法の被成膜体しか処理することができず、さらに異なる形状、寸法の被成膜体を別のバッチで処理しようとしても、この形状や寸法の相違があまり大きすぎると、成膜物質の発生機構に対する被成膜体の取付角度などを調整しなければならず、そのような調整機構を備えない成膜装置では大掛かりな改造を余儀なくされるため、極めて非効率的かつ非経済的であった。
本発明は、このような背景の下になされたもので、特に凹曲面状の被成膜面を有する被成膜体に対して、異なる形状や寸法のものが混載されていても均一な膜厚の薄膜が形成されるように制御することが可能な成膜制御装置を提供し、またこのような成膜制御装置を備えて効率的かつ経済的な薄膜の形成を行うことが可能な成膜装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の成膜制御装置は、凹曲面状をなす被成膜面を有する被成膜体の上記被成膜面への成膜を制御する成膜制御装置であって、上記被成膜面がなす凹曲面の底部と開口部の中央部とを結ぶ中心線に沿って延びるように配設される軸部材と、この軸部材の外周に突出するように設けられて、上記被成膜体に対して着脱自在かつ上記中心線方向の位置が調整可能とされる制御部材とを備えていることを特徴とするものである。また、本発明の成膜装置は、複数の上記被成膜体を回転機構によって回転させながら、成膜物質の発生機構により上記被成膜面に薄膜を形成する成膜装置であって、複数の上記被成膜体ごとに、このような成膜制御装置が配設されていることを特徴とするものである。
このような成膜制御装置においては、被成膜面がなす凹曲面の上記中心線に沿って延びる軸部材に設けられた制御部材が、この被成膜面に向けて入射してくる成膜物質を遮ることにより、被成膜面に形成される薄膜の膜厚が制御される。そして、この制御部材の位置が上記中心線方向に調整可能とされているので、この被成膜面がなす凹曲面の底部から開口部までの深さが深くて、この中心線方向に向けて膜厚の不均一な部分が生じるような場合でも、成膜物質が多く入射してくる位置に合わせて制御部材を配置することにより、被成膜面に形成される薄膜が部分的に厚くなるのを防ぐことができて膜厚の均一化を図ることができる。
さらに、この制御部材は、被成膜体に対して着脱可能とされているので、異なる形状や寸法の被成膜体に対しては、これに合わせて被成膜面に入射する成膜物質を遮ることが可能な制御部材に交換することができる。また、被成膜面の形状が上記中心軸に対して非対称な場合にも、これに合わせた制御部材を装着すればよい。従って、このような成膜制御装置を複数の被成膜体ごとに配設した上記成膜装置によれば、異なる形状、寸法の被成膜体が混載されていても、1回のバッチでそれぞれの被成膜面に均一な膜厚の薄膜を形成することができ、また異なるバッチでこのような被成膜体を処理する場合でも、装置の改造を要したりすることがない。
ここで、このように制御部材を被成膜体に対して着脱可能かつ上記中心線方向に位置調整可能に軸部材に設けるには、軸部材に雄ネジ部を形成するとともに、制御部材にはこの雄ネジ部が挿入される孔を形成して、この孔に雄ネジ部が挿入された制御部材を、上記中心線方向両側から該雄ネジ部に螺着されたナットによって挟持するように構成するのが構造上簡略であり、操作も容易である。これらのナットの螺着位置を変更することで制御部材の中心線方向の位置が調整可能となり、またナットを取り外すことで制御部材も軸部材から取り外すことができて、被成膜体に対して着脱自在となる。
このように、本発明の成膜制御装置によれば、形状や寸法が異なる凹曲面状の被成膜面を有する被成膜体に対して、形成される薄膜の膜厚を中心線方向にも周方向にも確実に均一化することができ、高精度の成膜を促すことが可能となる。従って、本発明の成膜装置によれば、このような複数の被成膜体を混載して同一バッチで成膜処理を行うことができ、多品種小ロットの被成膜体に対しても効率的かつ経済的な薄膜の形成を促すことが可能となる。
図1および図2は本発明の成膜装置の一実施形態を示すものであり、図3および図4はこの成膜装置に配設される本発明の成膜制御装置の一実施形態を示すものである。本実施形態の成膜装置は、図1に示すように直方体状の箱形をなす真空容器1を有し、その底部には、蒸着材料Aを収容したハース2がハース駆動機構3によって回転可能に設けられるとともに、このハース2内の蒸着材料Aに電子ビームを照射して材料蒸気(成膜物質)を生成する図示されない電子ビームガンが配設されており、さらにハース2の上方には材料蒸気を制御するシャッター4が備えられていて、これらにより成膜物質の発生機構5が構成されている。なお、本実施形態では図1において左右対称に一対のこのような発生機構5が真空容器1の底部に備えられている。
これらの発生機構5に対向する真空容器1の天井部下面には、鉛直方向に延びる公転軸線O回りを中心としてこの公転軸線O回りに回転される公転ドーム6が設けられるとともに、この公転ドーム6には、公転軸線Oに対して傾斜した自転軸線P回りに回転可能に自転ドーム7が、本実施形態では複数(4つ)周方向に間隔をあけて取り付けられていて、図2に詳しく示すような回転機構を構成している。ここで、公転ドーム6は、本実施形態では下方に向かうに従い広がる転軸線Oを中心とした概略多角錐台状をなしていて、その下部は上記発生機構5に向けて開放される一方で上部は閉塞されており、上記天井部下面に設けられたドーム吊下げ部8に、公転軸線Oを中心とした円板状の支持部材9を介して、この支持部材9と一体に上記公転軸線O回りに回転自在に吊り下げられている。
また、真空容器1外の上記天井部の上面には、駆動モーターおよび減速機からなるドーム駆動減速機10が設けられており、このドーム駆動減速機10の駆動軸10aは真空容器1内に気密に突出させられていて、その下端には駆動歯車10bが取り付けられているとともに、上記支持部材9には公転軸線Oを中心とする公転歯車9aが取り付けられて上記駆動歯車10bと噛合させられており、これにより公転ドーム6および支持部材9は、上記ドーム駆動減速機10からの回転力によって公転軸線O回りに所定の回転速度で回転させられる。なお、真空容器1内において公転ドーム6の周囲には、加熱ヒーター11が真空容器1の内壁に取り付けられて配設されている。
一方、上記自転ドーム7は、本実施形態では上記自転軸線Pを中心とした円板状に形成されていて、公転ドーム6がなす多角錐台の錐面に形成された丸孔6aに遊嵌されて、その一方の円形面が公転ドーム6内に面するように収容されており、図2に示すように自転軸線Pに沿って延びる回転軸7aが、上記支持部材9から延びる図1に示すようなブラケット9bに支持されることにより、自転軸線P回りに回転自在に公転ドーム6に取り付けられている。
なお、本実施形態では、これら複数の自転ドーム7は、公転軸線Oに対するその自転軸線Pの傾斜角度と、該自転ドーム7の公転ドーム6に対する取付位置とが調整可能に取り付けられている。より具体的に、本実施形態では、図1および図2の公転ドーム6の右側に示したように円板状の自転ドーム7が公転ドーム6の錐面に沿った状態から、これに対して同図の公転ドーム6の左側に示したように上方に向けて自転ドーム7が上記錐面から公転ドーム6の外側に離間するように上記傾斜角度および取付位置が調整可能とされており、これにより被成膜体Wの上記発生機構5に対する傾斜角(蒸着入射角)や発生機構5との距離も調整可能とされている。
ここで、このように自転ドーム7の自転軸線Pの傾斜角度や公転ドーム6における取付位置を調整可能とするには、上記回転軸7aを傾動可能にブラケット9bに取り付けるようにしたり、ブラケット9bを傾動可能に支持部材9に取り付けるようにしたり、これらを併用したりすればよく、さらにはブラケット9bを回転軸7aの取付角度や取付位置の異なるものに交換したりしてもよい。また、こうして自転ドーム7の傾斜角度を調整することにより、自転ドーム7と上記丸孔6aとの間に隙間が空くときには、図1および図2左側に示したように公転ドーム6の丸孔6aの周縁に、自転ドーム7の外周に向けて延びる円筒状のカバー6bを取り付ければよい。
さらにまた、真空容器1の天井部下面に設けられた上記ドーム吊下げ部8には、回転する公転ドーム6および支持部材9やドーム駆動減速機10の駆動軸10aおよび駆動歯車10bと干渉しないように、公転軸線Oを中心とした円環状の固定歯車12が固定されており、本実施形態ではこの固定歯車12は外周に歯面が形成された外歯車とされている。一方、支持部材9には、この固定歯車12に噛合する自転歯車13が、1つの自転ドーム7に対して1つずつ、公転軸線Oと平行な回転軸線Q回りに回転自在に支持された回転軸13aに取り付けられている。
この自転歯車13が取り付けられた回転軸13aと自転ドーム7の回転軸7aとは、本実施形態では可撓性を有する伝達部材14によって連結されており、特に本実施形態におけるこの伝達部材14はフレキシブルシャフトとされている。すなわち、かかるフレキシブルシャフトは、鋼線やピアノ線を内側から外側に向けて順に線径が太くなるように、かつ巻きの向きが交互に逆方向になるように密着して巻回したものであり、十分な強度と撓みに追従しうる弾性を備えた外側チューブによって被覆されている。
なお、こうして伝達部材14を回転軸7a,13aに連結するには、図2右側に示すように伝達部材14の撓み軸線Rが回転軸7a,13aの軸線P,Qに同軸的に連なるように真っ直ぐに直接連結してもよく、またこうして直接連結すると伝達部材14の撓みが大きくなりすぎるような場合には、伝達部材14と回転軸7aや回転軸13aとを、図2左側の回転軸7aとの連結部分に示すように互いに噛合するかさ歯車14a,7bを介したりして、伝達部材14の撓み軸線Rと回転軸7aの自転軸線Pや回転軸13aの回転軸線Qとが角度をもって交差するように連結してもよい。
さらに、本実施形態では、上記固定歯車12と自転歯車13との噛合部の下方に、図2に示すように受け皿部材15が配設されている。この受け皿部材15は、本実施形態ではやはり回転する公転ドーム6、支持部材9やドーム駆動減速機10の駆動軸10a、駆動歯車10bなどと干渉しないように、上記ドーム吊下げ部8から固定歯車12の内側を通して吊り下げられて固定された公転軸線Oを中心とする円環平板状のトレイ型のものであって、その内外径は、自転歯車13が噛合する固定歯車12外周の歯径を含むように設定されている。
そして、各自転ドーム7には、図3および図4に示すような凹曲面状の被成膜面Waを有する複数の被成膜体Wが、それぞれこの被成膜面Waを自転ドーム7の上記一方の円形面側に露出させるようにして、各自転ドーム7ごとに本実施形態では図1に示すようにこの一方の円形面の略全面に亙って取り付けられており、さらにこれらの被成膜体Wには、各被成膜体Wごとに本実施形態の成膜制御装置16が配設されている。
被成膜体Wは、例えばリフレクタ用ガラス基板であって、本実施形態ではその内面が上記被成膜面Waとされる半球状の本体Wbと、この被成膜面Waの底部から上記半球の径方向外側に延びる円管状部Wcとが一体に形成された椀形をなしている。従って、上記被成膜面Waがなす凹曲面の底部から開口部までの該被成膜面Waの深さはこの開口部がなす円の半径と等しくされるとともに、上記円管状部Wcはこの凹曲面の底部と開口部の中央部とを結ぶ中心線C方向に沿って延びることになり、この中心線Cに直交する断面において上記被成膜面Waは該中心線Cを中心とした円形をなすことになる。
この被成膜体Wに配設される本実施形態の成膜制御装置16は、外周にネジが切られた雄ネジ部17aとその一端にこれより大径の頭部17bとを有する六角ボルト状の軸部材17と、上記雄ネジ部17aに螺着される一対のナット18と、そしてこれらのナット18の間に挟持される制御部材19とから構成されている。ここで、制御部材19は、雄ネジ部17aが挿入される図示されない孔を有するとともに、その外形が上記被成膜面Waの中心線Cに直交する断面と相似な形状となるように本実施形態では円環板状とされており、その外径は雄ネジ部17aの外径より大きいのは勿論、ナット18の外径よりも大きくされていて、これにより制御部材19は軸部材17の外周に突出するように設けられることになる。
このような成膜制御装置16は、軸部材17の雄ネジ部17aが被成膜体Wの上記円管状部Wcにおける本体Wbとは反対側の一端部から該円管状部Wc内に挿入されて、上記中心線Cに沿って延びるように被成膜面Wa内に突出させられ、こうして突出した雄ネジ部17aにナット18と制御部材19とが取り付けられるとともに、軸部材17の頭部17bは円管状部Wcの上記一端部に当接させられて被成膜体Wに配設される。
さらに、このようにして成膜制御装置16が配設された被成膜体Wは、図3および図4に示すようなホルダ20を介して各自転ドーム7に取り付けられる。このホルダ20は、自転ドーム7にボルト止め等により着脱可能に取り付けられる平板状のホルダ本体20aと、このホルダ本体20aとの間で被成膜体Wを保持する取付部材20bとから構成されており、ホルダ本体20aには被成膜体Wの取付孔20cが貫通させられていて、この取付孔20cは、自転ドーム7の上記一方の円形面側に向けられる側(図3においては図面の手前側、図4においては左側)が上記被成膜面Waの開口部がなす上記円と同径の円形とされるとともに、これとは反対側は一段拡径した段付き孔とされており、図4に示すように被成膜体Wはこの取付孔20cの拡径する段部にその上記開口部側の端縁部を嵌入させて取り付けられる。
また、取付部材20bは、バネ鋼等の弾性を有する条材を図4に示すように略V字状に折り曲げて形成されており、このV字の二等分線を、上述のようにして取付孔20cに取り付けられた被成膜体Wの上記中心線Cと一致させるようにして、その両端部がホルダ本体20aの取付孔20cにおける上記段部側の開口部周縁にネジ止めされて取り付けられることにより、このホルダ本体20aに着脱可能に固定される。そして、こうして固定された取付部材20bの両端部から上記V字の突端部に向かう部分は、被成膜体Wの本体Wbの外周面に接するように延びるとともに、この突端部は上記V字の二等分線すなわち上記中心線Cに垂直な平面板状とされて、被成膜体Wの円管状部Wcの上記一端部に当接した成膜制御装置16の軸部材17における頭部17bにさらに当接して、この成膜制御装置16ごと被成膜体Wを保持するように配置される。
このようにして被成膜体Wが成膜制御装置16とともに自転ドーム7に取り付けられた真空成膜装置において成膜を行うには、まずハース2に蒸着材料Aを収容して真空容器1を封止し、内部を真空引きした上で加熱ヒーター11により被成膜体Wを加熱しながら電子ビームガンにより蒸着材料Aを蒸発させる。そして、ドーム駆動減速機10によりその駆動軸10aを回転させると、駆動歯車10bと噛合した公転歯車9aにより支持部材9と公転ドーム6とが公転軸線O回りに回転するとともに、固定歯車12と噛合した自転歯車13も支持部材9と一体に公転軸線O回りに回転しながらその回転軸線Q回りに回転し、さらに、この自転歯車13の回転力は回転軸13aから伝達部材14を介して自転ドーム7の回転軸7aに伝達され、これにより自転ドーム7が自転軸線P回りに回転させられるので、被成膜体Wはこれら公転軸線O回りと自転軸線P回りとに自公転させられながら、上記発生機構5から発生した成膜物質が被成膜体Wの被成膜面Waに入射して薄膜が形成される。
しかして、このように薄膜が形成される際に、上記成膜制御装置16においては、被成膜体Wの被成膜面Waがなす凹曲面の中心線Cに沿って延びる軸部材17に、その外周に突出する制御部材19が設けられているので、被成膜面Waに向けて入射してくる成膜物質がこの制御部材19によって遮られることにより、上記薄膜の膜厚が制御される。そして、本実施形態ではこの制御部材19を挟持する一対のナット18の螺着位置を移動させることにより、制御部材19の中心線C方向の位置を調整することができるので、この中心線C方向において部分的に膜厚が不均一となるような部分が生じる場合でも、かかる部分への成膜物質の入射を最適に抑制する位置に制御部材19を配設することができ、たとえ被成膜面Waが凹曲面であって、しかもその深さが深くても、均一な膜厚の薄膜を形成することが可能となる。
また、この制御部材19は、本実施形態では軸部材17の雄ネジ部17aに挿入されたものが一対のナット18によって挟持されていて、被成膜面Waの開口部側のナット18を緩めて雄ネジ部17aから取り外すことにより、該軸部材17に対して着脱自在とされ、従って被成膜体Wに対しても着脱自在とされる。そこで、例えば1種の制御部材19では中心線C方向の位置を調整しても十分に膜厚が均一化されない場合などには、異なる形状、寸法の他の制御部材19に交換することができ、従って被成膜体Wの被成膜面Waに応じて最適な形状の制御部材19を最適な位置に配設することができるので、一層確実に均一な薄膜を形成することが可能となる。
そして、上記成膜制御装置16では、このように被成膜体Wに応じた制御部材19を位置調整して配設することができるので、複数の被成膜体Wごとにこのような成膜制御装置16を設けた上記構成の成膜装置においては、これらの被成膜体W同士が異なる形状や寸法のものであっても、それぞれに適した制御部材19を選択して最適な位置に取り付けることにより、複数種の被成膜体Wを1つの成膜装置に混載して1回のバッチで成膜処理することが可能となる。従って、多品種小ロットの被成膜体Wに薄膜を形成する場合でも、より少ない成膜装置とバッチ数とで処理を行うことが可能であり、効率的で、しかも経済的な薄膜の形成を行うことが可能となる。
また、本実施形態の成膜制御装置16では、上述のように軸部材17の雄ネジ部17aに挿入された制御部材19を一対のナット18によって挟持することにより、この制御部材19を該成膜制御装置16が配設される被成膜体Wに対して着脱自在かつ中心線C方向に位置調整可能としており、構造が簡略であるとともに、位置の調整も容易であるという利点を有している。また、バッチごとに被成膜体Wを交換するときにも、本実施形態では被成膜体Wがホルダ20を介して成膜装置の自転ドーム7に取り付けられているので、上記とは逆に取付部材20bを外して、成膜制御装置16ごと被成膜体Wをホルダ本体20aから取り出した上で、ナット18および制御部材19を軸部材17から取り外せばよく、さらに異なる形状、寸法の被成膜体Wを取り付けるときでも、これに応じたホルダ20を用意しておけばよい。
ただし、この成膜制御装置16の構成については、雄ネジ部17aとナット18を用いたものでも種々の変形例が考えられ、例えば制御部材19は一対のナット18の一方に接合あるいは一体成形されて一体化されていてもよい。また、軸部材17の頭部17bを被成膜体Wの円管状部Wcの上記一端部に当接させるのに代えて、軸部材17を頭部17bのない雄ネジ部17aだけのものとするとともに、取付部材20bの上記突端部にこの雄ネジ部17aが挿入可能な孔を開け、この突端部の両側に一対のナット18を配置して、被成膜面Waの開口部側から円管状部Wcに挿入した制御部材19付きの軸部材17(雄ネジ部17a)にこれらのナット18を螺着して上記突端部を挟持することにより、該軸部材17を中心線Cに沿って延びるように支持してもよい。
さらに、こうして一対のナット18で取付部材20bの上記突端部を挟持して軸部材17を配設する場合には、これらのナット18の螺着位置によって軸部材17の中心線C方向の位置が調整可能となるので、被成膜面Waの開口部側の軸部材17の端部に制御部材19を接合や一体成形によって一体化して設けた構成としてもよい。さらにまた、被成膜体Wの凹曲面状をなす被成膜面Waの底部に軸部材17が挿通可能な上記円管状部Wcが備えられていない場合などには、被成膜面Waの開口部側から軸部材17を中心線Cに沿って延びるように支持して制御部材19を配設してもよい。
本発明の成膜装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図1に示す実施形態の回転機構を示す縦断面図である。 本発明の成膜制御装置の一実施形態を配設した被成膜体Wを取り付けたホルダ20を、被成膜面Waの開口部側から中心線C方向に沿って見た図である。 図3におけるZZ断面図である。
符号の説明
1 真空容器
5 成膜物質の発生機構
6 公転ドーム
7 自転ドーム
16 成膜制御装置
17 軸部材
17a 雄ネジ部
17b 頭部
18 ナット
19 制御部材
20 ホルダ
20a ホルダ本体
20b 取付部材
O 公転軸線
P 自転軸線
W 被成膜体
Wa 被成膜面
Wb 被成膜体Wの本体
Wc 円管状部

Claims (3)

  1. 凹曲面状をなす被成膜面を有する被成膜体の上記被成膜面への成膜を制御する成膜制御装置であって、上記被成膜面がなす凹曲面の底部と開口部の中央部とを結ぶ中心線に沿って延びるように配設される軸部材と、この軸部材の外周に突出するように設けられて、上記被成膜体に対して着脱自在かつ上記中心線方向の位置が調整可能とされる制御部材とを備えていることを特徴とする成膜制御装置。
  2. 上記軸部材には雄ネジ部が形成されるとともに、上記制御部材には上記雄ネジ部が挿入される孔が形成されていて、この孔に上記雄ネジ部が挿入された上記制御部材が、上記中心線方向両側から該雄ネジ部に螺着されたナットによって挟持されることを特徴とする請求項1に記載の成膜制御装置。
  3. 複数の上記被成膜体を回転機構によって回転させながら、成膜物質の発生機構により上記被成膜面に薄膜を形成する成膜装置であって、複数の上記被成膜体ごとに請求項1または請求項2に記載の成膜制御装置が配設されていることを特徴とする成膜装置。
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