JP2008142252A - 生体組織血流量測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体組織における血流量を精度よく測定することである。
【解決手段】生体組織血流量測定装置10は、光探触子20と、光探触子20を移動させるためのXYZ移動機構12と、光探触子20を作動させる光探触子回路28と、光探触子回路28に接続され、生体組織の血流量を測定する測定部30と、制御部50とを含んで構成される。測定部30は、光探触子20に増幅器とともに直列に接続され、光探触子回路28への入力波形と光探触子回路28からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロに補償する位相シフト回路を含み、位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織の血流量との関係を予め求めておき、測定対象物8である生体組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出し、これを表示する。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体組織血流量測定装置に係り、特に、測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有する光探触子を用いる生体組織血流量測定装置に関する。
乳がんのような腫瘍は早期発見、早期診断が有効であり、主な診断方法として、MRIやX線CT等の先端的医療機器が用いられている。一方で、乳がん等の場合は、早期発見のために日常的に手軽にチェックできる簡便な装置が望まれている。
例えば、本願発明者は、特許文献1において開示されているように、複数の探触素子を2次元的に配置した生体のしこり検査装置において、位相シフト法を用いて生体組織の硬さ分布を精度よく測定できる方法を開発している。この技術は、振動子から測定対象物に振動を入射し、測定対象物からの反射波を振動検出センサで検出し、入射波と反射波との間に測定対象物の硬さに応じて生じる位相差を位相シフト回路によって周波数を変化させることで位相差をゼロに補償し、その位相差をゼロに補償する周波数変化量から測定物の硬さを求めるものである。この方法によれば、測定対象物に接触して振動を入力し反射波を検出する接触式によって測定対象物の硬さを測定することができる。
このように腫瘍の硬さに注目する他に、腫瘍部位においては、ガン細胞の分裂やガン腫瘍周囲の血管新生によって、血管拡張が起こり、血液が過度に流れることが知られている。このことを利用し、医師等の診断者は、生体組織の局部的色変化から腫瘍の診断を補助的に行うことがある。
特開2004−283547号公報
生体組織の色判断で腫瘍の客観的診断ができれば、日常的に手軽にチェックでき、早期発見に有効である。しかしながら、生体組織の局部的色変化の判断は、主観が伴うため、診断者の経験等が必要となる。
本発明の目的は、生体組織において血液が過度に流れる部位を検出できる生体組織血流量測定装置を提供することである。他の目的は、生体組織において血流量を測定できる生体組織血流量測定装置を提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
本発明に係る生体組織血流量測定装置は、測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有する光探触子と、光探触子に増幅器とともに直列に接続され、発光素子への入力波形と受光素子からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロに補償する位相シフト回路と、位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織における血流量との関係を予め求めておき、生体組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出する血流量算出部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る生体組織血流量測定装置は、測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有する光探触子と、測定対象物に対し、光探触子をXY平面内の任意の位置に相対的に移動させる平面内移動機構と、光探触子に増幅器とともに直列に接続され、発光素子への入力波形と受光素子からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロに補償する位相シフト回路と、位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織における血流量との関係を予め求めておき、生体組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出する血流量算出部と、測定対象物に対する光探触子のXY平面内の移動位置と、その移動位置における血流量とに基づいて、測定対象物である生体細胞の2次元的血流量分布を表示する血流量分布表示手段と、を備えることを特徴とする。
また、血流量分布表示手段は、予め任意に設定された閾値血流量を超える領域を血管拡張領域として区別表示することが好ましい。
また、本発明に係る生体組織血流量測定装置において、受光素子からの出力波形は、生体組織からの反射光の光量に応じて変化する検出信号波形であり、発光素子への入力波形に応じて、発光素子の生体組織への照射光の光量が変化することが好ましい。
また、本発明に係る生体組織血流量測定装置において、光探触子は、発光素子の発光波長帯または受光素子の検出波長帯の少なくとも1つを制限する測定波長帯制限手段を有し、受光素子からの出力波形は、生体組織からの測定波長帯の光の光量に応じて変化する検出信号波形であり、発光素子への入力波形に応じて、発光素子の生体組織への測定波長帯の照射光の光量が変化することが好ましい。
本発明に係る生体組織血流量測定装置によれば、位相シフト法を用いて位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織における血流量との関係を予め求めておき、生体
組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出するので、生体組織において血流量を測定できる。
また、本発明に係る生体組織血流量測定装置によれば、測定対象物に対する光探触子のXY平面内の移動位置と、その移動位置における血流量とに基づいて、測定対象物である生体細胞の2次元的血流量分布を表示するので、生体組織において血液が過度に流れる部位を検出できる。
以下に本発明に係る実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。以下では、測定対象物として、生体組織の血腫について述べるが、それ以外でも、生態組織内で、血流が局部的に過度に流れる部位を検出する必要がある場合に、一般的に用いることができる。また、以下では、光探触子として1個のLEDと3個のフォトダイオードから構成される場合を説明するが、このような個数、及び配置は、一例であって、用途に応じ、適宜変更が可能である。
図1は、生体組織血流量測定装置10の構成を示す図である。図1には、生体組織血流量測定装置10の構成要素ではないが、測定対象物8の生体組織を有するものとして実験用のラットが示されている。生体組織血流量測定装置10は、光探触子20と、光探触子20を保持してXYZの3軸方向に移動させるためのXYZ移動機構12と、光探触子20を作動させる電子回路である光探触子回路28と、光探触子回路28に接続され、生体組織の血流量を測定する測定部30と、XYZ移動機構12と測定部30に接続される制御部50とを含んで構成される。
XYZ移動機構12は、測定対象物8に対し、光探触子20を図1に示されるXYZの3軸方向に任意に移動させる機能を有する。ここで、XY平面は、測定対象物8である生体が固定される試料台の表面に平行な平面である。XYZ移動機構12のうち、Z方向の移動機能は、測定対象物8である生体組織が試料台の上に固定される高さがばらつく際に、その中心的な高さに光探触子20を移動するためのもので、一旦測定対象物8である生体に対して中心的位置の位置決めがなされると、そこでXYZ移動機構12のZ移動機能は完了する。したがって、その後は、XYZ移動機構12は、実質的に、測定対象物8である生体組織に対し、光探触子20をXY平面内の任意の位置に移動させる機能を有することになる。
かかるXYZ移動機構12は、いわゆるXYZテーブルと、ステッピングモータをX軸、Y軸、Z軸駆動用としてそれぞれ備えるものとして構成することができる。例えば、X軸ステッピングモータは、固定台に対しX軸方向に移動可能なXテーブルを駆動し、Y軸ステッピングモータはXテーブルの上に搭載されY軸方向に移動可能なY軸テーブルを駆動し、Z軸ステッピングモータはYテーブルの上に搭載されZ軸方向に移動可能なZ軸テーブルを駆動するものとして構成することができる。この例では、Z軸テーブル上に光探触子20が取り付けられる。固定台は、測定対象物8である生体組織が固定される試料台と一定の位置関係で相互に固定されている。なお、XYZ移動機構12の制御信号線は、制御部50と接続される。
光探触子20は、測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有するものである。光探触子20は、図1にAとして示されるように、XYZ移動機構12のZテーブル上に測定対象物8に向かい合わせて配置される。図2は、光探触子20の平面配置図である。光探触子20は、発光素子であるLED(Light Emission Device)22と、その周囲に配置される受光素子であるフォトダイオード24で構成される。図2では、LED22が1つ、フォトダイオード24が3つ用いられているが、それぞれの性能に応じて、これ以外の個数路することができる。また、場合によっては、中央にフォトダイオード24を配置し、その周囲にLED222を配置する構成としてもよい。受光素子として、フォトダイオードに代えてフォトトランジスタを用いることもできる。
また、光探触子20において、測定のための光波長帯を制限することが好ましい。例えば、生体組織において、動脈血と静脈血とを区別するには、照射光または検出光の波長を動脈血または静脈血の吸光特性または反射特性に合わせることが好ましい。一般的に動脈血は静脈血より赤の波長帯側にあるので、動脈血の測定のためには波長の比較的長い光波長帯、静脈血の測定のためには波長の比較的短い光波長帯を用いることがよい。これらを区別しないときは、比較的広い光波長帯で測定することが好ましい。
測定のための光波長帯を制限する手段は、発光素子の発光波長帯を制限する手段と、受光素子の検出波長帯を制限する手段があり、またこれらを組み合わせることもできる。前者としては、発光波長帯の狭い発光素子を選択すること、広い光波長帯の発光素子と狭い光波長帯のフィルタとを組み合わせる方法等を用いることができる。また、後者としては、狭い光波長帯のフィルタを受光素子の前に設けること等がある。
例えば、動脈血の測定のためには、発光波長帯が約850nmのLEDを用い、静脈血の測定のためには、発光波長帯が約730nmのLEDを用い、動脈血と静脈血とを区別しない測定のときは、これら2つのLEDを合わせて用いることができる。あるいは、発光波長帯が広いLEDを用いて、動脈血と静脈血を区別しないときはそのまま測定に用い、動脈血を測定するときは、透過光波長帯が約850nmのフィルタを組合せ、静脈血の測定のときは、約730nmのフィルタに交換することもできる。
図3は、光探触子20と、光探触子回路28と、測定部30の構成を示す図である。ここでは、光探触子20が光探触子回路28に組み込まれている形態で示されている。また、これらの構成要素ではないが、測定対象物8である生体組織が図示されている。光探触子回路28は、LED22を駆動して発光させる機能と、フォトダイオード24を動作可能の状態にして光が当てられるとフォトダイオードをオンさせる機能とを有する回路である。
図3においては、LED22に接続されるスイッチングトランジスタ27を入力信号によってオンさせると、LED22に電流が流れて、LED22が発光する。LED22に流れる電流は、スイッチングトランジスタ27のオン電流で規定されるので、スイッチングトランジスタ27への入力信号の大きさでLED22の発光量が決まる。LED22が特定の波長帯の発光特性を有する場合は、入力信号の大きさで、その波長帯における発光量が定まることになる。特定の波長帯のフィルタを用いる場合も同じである。
また、フォトダイオード24は、受光量に応じたオン電流が流れる性能を有する素子であるが、オン電流の大きさは抵抗26によって電圧に変換され出力信号となる。したがって、出力信号の大きさは、受光量で定まることになる。発光素子側で制限を加えて、特定の波長帯の光を測定対象物8に放射するようにしている場合は、反射光の光量はその波長帯の光の吸光度あるいは反射度に対して測定対象物8の物性が反映される。したがって、フォトダイオード24が受光する光も、その範囲の波長帯のものとなる。受光側に特定の波長帯のフィルタを設ける場合も、その波長帯における受光量をフォトダイオード24が検出することになる。
上記の例で、測定対象物8における動脈血の影響を測定するために、LED22の発光波長帯を850nmに制限する場合について述べると、次のようになる。光探触子回路28への入力信号の大きさに応じて、LED22において、850nmの波長帯の発光量が変化する。入力信号が大きいほど、850nmの波長帯の発光量が多い。この850nmの光が測定対象物8に照射されると、測定対象物8の物性、特に850nmにおける吸光度又は反射度に応じて、反射光の光量が決まる。例えば、動脈血が多いほど、850nmの波長帯における反射度が大きいとすると、動脈血流量が多い部位からの反射光の光量が多くなる。上記のように、この反射光の光量の大きさに応じてフォトダイオード24のオン電流が変化し、オン電流の大きさに応じて、光探触子回路28の出力信号の大きさが決まる。したがって光探触子回路28の出力信号の大きさは、850nmの波長帯の受光量の大きさで決まる。850nmの波長帯の受光量が大きいほど、出力信号が大きくなる。
図3において、測定部30は、光探触子回路28からの出力信号を受け取る端子32と、光探触子回路28への入力信号を出す端子34と、算出された血流量のデータを出力する端子36とを有する。測定部30の内部は、次のように構成される。
光探触子回路28の出力信号が供給される端子32は、適当なDCカットコンデンサを介して増幅器40に接続される。増幅器40は、光探触子回路28の出力信号を適当に増幅する電子回路で、周知の増幅回路を用いることができる。
増幅器40の出力は、位相シフト回路42に入力され、位相シフト回路42の出力は、端子34を介して光探触子回路28に接続される。したがって、光探触子20が測定対象物8に向かいあっているときは、光探触子回路28のLED22−(測定対象物8である生体組織)−光探触子回路28のフォトダイオード24−増幅器40−位相シフト回路42−光探触子回路28のLED22の閉ループが構成される。この閉ループの中を、測定対象物8の物性に依存して振動する電気信号が流れる。したがって、位相シフト回路42の内容を適当に設定することで、この閉ループにおける振動の電気信号について自励発振を生じさせることができる。
位相シフト回路42の機能は、この閉ループにおいて、位相シフト回路42に入力される入力信号と、出力される出力信号との間に位相差が生じるときは、閉ループの共振周波数を変更して、位相差をゼロに補償する機能を有する。そして、位相差をゼロに補償したときの周波数を周波数変化量算出部44に出力する。
周波数変化量算出部44は、閉ループにおいて測定対象物8が含まれないときに位相シフト回路42の作用により自励発振が生じるときの閉ループの発振周波数f1と、閉ループにおいて測定対象物8が含まれるときに位相シフト回路42の作用により自励発振が生じるときの閉ループの発振周波数f2とを受け取って、これらの間の周波数変化量であるΔf=f2−f1を算出する機能を有する。すなわち、周波数変化量算出部44の機能は、測定対象物8が閉ループに含まれないとき、すなわち、光探触子20と測定対象物8が向かいあっていないときの発振周波数f1を閉ループから検出してこれを一旦記憶し、次に測定対象物8が閉ループに含まれるとき、すなわち、光探触子20と測定対象物8が向かいあっているときの発振周波数f2を閉ループから検出してこれも一旦記憶する。そして、記憶された2つの周波数f1とf2とを読み出して、その差である周波数変化量Δf=f2−f1を求め、そのデータが血流量算出部46に出力される。なお、かかる位相シフト回路42の具体的構成と詳細な作用については、上記の特許文献2に開示されている。
位相シフト回路42は、閉ループの自励発振を維持するために、光探触子回路28におけるフォトダイオード24からの出力信号と光探触子回路28におけるLED22への入力信号との間に位相差が生じるときは、閉ループの周波数を変更して位相差をゼロに補償するものである。したがって、閉ループの自励発振の周波数は、位相差をゼロに補償する際の周波数変化量が大きい方が測定対象物8の物性の相違の検出が容易になる。そこで、位相シフト回路42の回路内容である回路定数は、対象となる閉ループについて、位相差をゼロに補償する際の周波数変化量が安定して大きく取れる発振周波数となるように設定される。一般的に述べれば、光探触子20の周波数−位相特性において、多くの共振周波数があるが、その中で、発振が安定していること、位相差を変更すると適当な大きさの周波数変化を生じること、の条件を満たす共振周波数が選択され、その選択された共振周波数に対して、位相シフト回路42の回路定数が設定される。
血流量算出部46は、周波数変化量算出部44から出力される周波数変化量に基づいて、測定対象物8である生体組織の血流量を求める機能を有する。周波数変化量から測定対象物8の血流量を算出するには、周波数変化量と測定対象物8の血流量との関係を予め求めておき、その関係に周波数変化量算出部44によって算出された周波数変化量を当てはめて実行される。
図4は、生体組織血流量測定装置10を用い、予め注入量が分かっている血液を生体組織に注入し、そのときの周波数変化量を求めて、周波数変化量と測定対象物8の血流量との関係を求める様子を示す図である。以下では、図1から図3の符号を用いて説明する。
図4において、中段には、測定対象物8として死んだラットの腹部のB領域に、予め設定された注入量の模擬静脈血を注入し、C領域に、予め設定された注入量の模擬動脈血を注入した様子が示されている。模擬静脈血としては、二酸化炭素を多く含ませた血液を用い、模擬動脈血としては、酸素を多く含ませた血液を用いた。注入量は、0.1ml,0.2ml,0.3mlである。これにより、B領域に模擬的な静脈血腫、C領域に模擬的な動脈血腫がそれぞれ形成されたものとした。このモデルでは、死んだラットを用いているので、実際の血流量を実現していないが、局部的に血液の多い部位を形成しているので、生きた生体組織に当てはめると、正常の血流量の部位に対し、局部的に血流量が多い部位について測定を行っていることに対応すると考えることができる。
なお、周波数変化量Δf=f2−f1において基準となるf1は、上記の一般的説明では、光探触子20が測定対象物8に向かい合っていないときの周波数としたが、ここでは、注入量=0mlのラットの状態を基準とした。このようにすることで、生体組織の状態によるノイズを抑制することができる。このことから、実際に測定対象物8の血流量を測定する場合においても、正常部位における血流量と異常部位の血流量との差を検出する目的に限定されるときは、正常部位に光探触子20を向かい合わせたときの周波数をf1とすることができる。
図4の上段と下段は、測定対象物8について、図4に示すX方向に沿って光探触子を移動させて、各測定点で周波数変化量Δfを求めた結果を示す図である。上段は、波長帯が730nmのLEDを用いた場合で、下段は、波長帯が850nmのLEDを用いた場合でる。測定点は、X方向に沿って500μm、すなわち0.5mmおきに設定した。
図4の上段の結果について述べると、ここでは、B領域に対応する位置で、周波数変化量Δfが増加している。そして、注入した血液量が多いほど、周波数変化量Δfが大きい。また、バックグランドからΔfが持ち上がっている領域の幅も、注入量が増加するほど広くなっている。一方、C領域に対応する位置においては、Δfの持ち上がり量はあまり顕著に現れていない。
これに対し、図4の下段の結果においては、C領域に対応する位置で、周波数変化量Δfが増加している。そして、注入した血液量が多いほど、周波数変化量Δfが大きい。また、バックグランドからΔfが持ち上がっている領域の幅も、注入量が増加するほど広くなっている。一方、B領域に対応する位置においては、Δfの持ち上がり量はそれほど顕著に現れていない。
以上のことから、周波数変化量Δfと注入された血液量との間に対応関係があることが分かる。したがって、予め「周波数変化量Δf−血液量」の対応関係を求めておくことで、実際の測定対象物8における周波数変化量Δfから、その測定箇所における血液量、すなわち血流量を求めることができる。したがって、図4等の実験によって得られた対応関係を予めメモリ等に記憶しておくことで、図2で説明した血流量算出部46において、周波数変化量Δfから、測定対象物8の血流量を求めることができる。「Δf−血流量」の対応関係は、Δfを入力することで硬さが出力される型式で記憶される。具体的には、ルックアップテーブルのような換算テーブルの型式で記憶されてもよく、計算式の形式で記憶されていてもよい。
図4の結果からは、血液の種類によって、適当な測定波長帯が異なることが分かった。上記の例では、静脈血液量の検出に用いる波長帯は、動脈血液量の検出に用いる波長帯より、短い波長帯が好ましい。
また、図4において、周波数変化量Δfの持ち上がった区間の長さを求めることで、血液量の多い部位の領域の広さを求めることができる。Δfの持ち上がった領域を定めるには、予め閾値周波数変化量Δf0を設定しておき、測定周波数変化量Δfが閾値周波数変化量Δf0を超える領域を持ち上がった領域とすることができる。このようにしてΔfが持ち上がった領域として特定された領域は、血管拡張領域に相当する。
再び図1に戻り、制御部50は、XYZ移動機構12を制御して、Z方向の初期位置を設定し、XY平面内で探触子20を任意の位置に移動させる機能を有する。また、図2で述べた測定部30の端子36から出力される血流量データを、XYZ移動機構12の移動量に対応付け、血流量の2次元的分布を求め、これをディスプレイ、プリンタ等の適当な出力手段によって表示させる機能を有する。図1には、制御部50の画面に、図4に相当するX方向の血流量分布と、2次元的血流分布とが表示されている様子が示されている。このような制御部50としては、適当な表示手段を有し、あるいは適当な表示手段が接続されるコンピュータ等で構成することができる。
本発明に係る実施の形態における生体組織血流量測定装置の構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態における光探触子を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、光探触子と、光探触子回路と、測定部の構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、周波数変化量と血流量との関係を求める様子を示す図である。
符号の説明
8 測定対象物、10 生体組織血流量測定装置、12 XYZ移動機構、20 光探触子、22 LED、24 フォトダイオード、26 抵抗、27 スイッチングトランジスタ、28 光探触子回路、30 測定部、32,34,36 端子、40 増幅器、42 位相シフト回路、44 周波数変化量算出部、46 血流量算出部、50 制御部。

Claims (5)

  1. 測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有する光探触子と、
    光探触子に増幅器とともに直列に接続され、発光素子への入力波形と受光素子からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロに補償する位相シフト回路と、
    位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織における血流量との関係を予め求めておき、生体組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出する血流量算出部と、
    を備えることを特徴とする生体組織血流量測定装置。
  2. 測定対象物である生体組織に光を照射する発光素子と、生体組織からの反射光を受光する受光素子とを有する光探触子と、
    測定対象物に対し、光探触子をXY平面内の任意の位置に相対的に移動させる平面内移動機構と、
    光探触子に増幅器とともに直列に接続され、発光素子への入力波形と受光素子からの出力波形に位相差が生じるときは、周波数を変化させてその位相差をゼロに補償する位相シフト回路と、
    位相差をゼロに補償したときの周波数変化量と生体組織における血流量との関係を予め求めておき、生体組織に光を照射したときに生じる位相差をゼロに補償する周波数変化量から生体組織における血流量を算出する血流量算出部と、
    測定対象物に対する光探触子のXY平面内の移動位置と、その移動位置における血流量とに基づいて、測定対象物である生体細胞の2次元的血流量分布を表示する血流量分布表示手段と、
    を備えることを特徴とする生体組織血流量測定装置。
  3. 請求項2に記載の生体組織血流量測定装置において、
    血流量分布表示手段は、予め任意に設定された閾値血流量を超える領域を血管拡張領域として区別表示することを特徴とする生体組織血流量測定装置。
  4. 請求項1に記載の生体組織血流量測定装置において、
    受光素子からの出力波形は、生体組織からの反射光の光量に応じて変化する検出信号波形であり、
    発光素子への入力波形に応じて、発光素子の生体組織への照射光の光量が変化することを特徴とする生体組織血流量測定装置。
  5. 請求項2に記載の生体組織血流量測定装置において、
    光探触子は、
    発光素子の発光波長帯または受光素子の検出波長帯の少なくとも1つを制限する測定波長帯制限手段を有し、
    受光素子からの出力波形は、生体組織からの測定波長帯の光の光量に応じて変化する検出信号波形であり、
    発光素子への入力波形に応じて、発光素子の生体組織への測定波長帯の照射光の光量が変化することを特徴とする生体組織血流量測定装置。
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