JP2008141987A - 精製茶抽出物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カフェイン含量が低く非重合体カテキン類非ガレート体率が高く風味の改善された精製茶抽出物の製造方法を提供する。
【解決手段】茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後に、合成吸着剤に洗浄液を接触させ、次に合成吸着剤に溶出液を接触させて、非重合体カテキン類として非ガレート体率が55〜100%であり、カフェイン/非重合体カテキン類0.15以下である茶抽出物を分画する精製茶抽出物の製造方法
【選択図】なし

Description

本発明は、茶抽出物の精製物の製造方法に関する。
カテキンの効果としてはα−アミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1参照)。このような生理効果を発現させるためには、大量のカテキンを摂取するため、飲料にカテキンを高濃度配合する技術が望まれていた。
この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物などの茶抽出物を利用して、カテキンを飲料に溶解状態で添加する方法が用いられている。
カテキンのうち、非重合体カテキン類中の非ガレート体率を制御することで、緑茶抽出物の風味が改善されることが知られている(特許文献2参照)。しかしここで用いている方法は、タンナーゼ処理をすることで非ガレート体率を制御する方法であり、酵素(タンナーゼ)の残留やガレート体の加水分解による没食子酸の生成により、得られる茶抽出物の風味は十分ではなかった。
ガレート体率の高い茶抽出物の効率的な製造技術は知られているが(特許文献3参照)、非ガレート体率の高いものは知られていなかった。また、茶抽出液を合成吸着剤で処理し、未吸着部を採取する技術が知られているが(特許文献4参照)、茶風味等が残り、かつ、苦味が強いため飲料等の用途には不十分であった。
また、緑茶抽出物を合成吸着剤を充填したカラムに通液して吸着させ、2種の濃度が異なるエタノール水溶液で脱着させる技術が知られているが(特許文献5参照)、これは処理前後でのカテキン組成を維持しながらカフェインや不純物を除去精製する技術であり、非ガレート体率に由来する風味改善効果は小さかった。
特開平3−133928号公報 特開2004−321105号公報 特開2006−36645号公報 特開2005−170871号公報 特開2006−8580号公報
本発明の目的は、カフェイン含量が低く、非重合体カテキン類中の非ガレート体率が高く、風味の改善された精製茶抽出物の製造方法を提供することにある。
本発明は、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後に、合成吸着剤に洗浄液を接触させ、次に合成吸着剤に溶出液を接触させて、非重合体カテキン類として非ガレート体率が55〜100%であり、カフェイン/非重合体カテキン類0.15以下である茶抽出物を分画する精製茶抽出物の製造方法を提供するものである。
本発明により、カフェイン含量が低く、非重合体カテキン類非ガレート体率が高く、かつ、風味の改善された精製茶抽出物を得ることができる。
本発明で非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキンをあわせての総称である。
本発明で非重合体カテキン非ガレート体とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどをあわせての総称である。非重合体カテキン類中の非ガレート体率とは、上記非重合体カテキン非ガレート体の非重合体カテキン類の総量に対する重量比率である。
本発明で非重合体カテキンガロ体とは、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。非重合体カテキン類中のガロ体率とは、上記非重合体カテキンガロ体の非重合体カテキン類の総量に対する重量比率である。
本発明で非重合体カテキンエピ体とは、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。非重合体カテキン類中のエピ体率とは、上記非重合体カテキンエピ体の非重合体カテキン類の総量に対する重量比率である。
本発明で用いる茶抽出物としては、茶葉から得られた抽出液が挙げられる。その他のカフェイン含有植物由来、例えばコーヒー等のカフェイン含有抽出物と茶抽出液の混合物等も用いることができる。使用する茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類、烏龍茶に代表される半発酵茶、紅茶に代表される発酵茶がある。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した茶葉を用いてもよい。
茶を抽出する方法については、攪拌抽出、ドリップ抽出などの方法が使用できる。また抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に使用できる。茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
本発明に使用する茶抽出物には、茶葉から抽出した抽出液を使用する代わりに、茶抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈して用いても、茶葉からの抽出液と茶抽出物の濃縮物とを併用してもよい。
ここで、茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水又は有機溶媒水溶液により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。具体的には、茶抽出物として、市販の東京フードテクノ社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の粗カテキン製剤を固体の茶抽出物として用いることもできる。
合成吸着剤としては、一般に不溶性の三次元架橋構造ポリマーでイオン交換基のような官能基を実質的に持たないもので、好ましくは、イオン交換能が1meq/g未満のものを用いることができる。合成吸着剤の母体がスチレン系、メタクリル系、アクリル系、ポリビニール系が好ましく、特にスチレン系がカテキンとカフェインの分離性の点から好ましい。具体的な合成吸着剤としては、その母体がスチレン系、例えばアンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、(供給元:米国ローム&ハース社)、ダイヤイオンHP20、HP21(三菱化学社製)、セパビーズSP850、SP825、SP700、SP70(三菱化学社製)、VPOC1062(Bayer社製);臭素原子を核置換して吸着力を強めた修飾スチレン系、例えばセパビーズSP205、SP206、SP207(三菱化学社製);メタクリル系、例えばダイヤイオンHP1MG、HP2MG(三菱化学社製);フェノール系、例えばアンバーライトXAD761(ロームアンドハース社製);アクリル系、例えばアンバーライトXAD7HP(ロームアンドハース社製);ポリビニル系、例えばTOYOPEARL、HW-40C(東ソー社製);デキストラン系、例えばSEPHADEX、LH−20(ファルマシア社製)等が使用できる。
本発明では、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる。茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる手段としては、茶抽出液又は茶抽出物水溶液に合成吸着剤を添加、撹拌し吸着後、ろ過操作により合成吸着剤を回収するバッチ方法、又は合成吸着剤を充填したカラムを用いて連続処理により吸着処理を行なうカラム方法が使用できる。生産性の点からカラムによる連続処理方法が好ましい。
合成吸着剤が充填されたカラムは、予めSV(空間速度)=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として2〜10[v/v]の通液条件で95vol%エタノール水溶液による洗浄を行い、合成吸着剤の原料モノマーや原料モノマー中の不純物等を除去するのが好ましい。そして、その後SV=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜60[v/v]の通液条件により水洗を行い、エタノールを除去して合成吸着剤の含液を水系に置換する方法により非重合体カテキン類の吸着能を向上させることができる。
カラムに茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる時の茶抽出物溶液を通液する条件としては、茶抽出物溶液中の非重合体カテキン類の濃度は、好ましくは0.1〜22質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%、殊更好ましくは0.5〜3質量%が、樹脂への吸着効率の点から好ましい。
茶抽出物溶液を、合成吸着剤を充填したカラムに通液する条件としては、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜20[v/v]で通液するのが好ましい。10[h-1]以上の通液速度では、非重合体カテキン類の吸着が十分でなく、20[v/v]以上の通液量であると、非重合体カテキン類の吸着が安定しない場合がある。
茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後、合成吸着剤に洗浄液を接触させる。洗浄液の接触により茶風味や没食子酸をはじめとする不純物等を除去し風味の改善された精製茶抽出物を得ることができる。洗浄液は、風味改善の点から、水又は有機溶媒水溶液であることが好ましい。水は、カテキン回収率の点からpH7以下の水が好ましく、有機溶媒との混合系においても使用することができる。有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノールなどが挙げられ、食品への使用の観点から、エタノールが好ましい。有機溶媒水溶液に含有する有機溶媒の濃度は、カテキンの回収率の点から4質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。
この洗浄工程においては、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.2〜10[v/v]で、合成吸着剤に付着した夾雑物を除去することが好ましい。更にSV=0.5〜5[h-1] の通液速度で、通液倍数として0.5〜5[v/v] で洗浄することが夾雑物の除去効果及び非重合体カテキン類の回収率の点から好ましい。
本発明の精製茶抽出物を得るための合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、 分画した茶抽出物中の非ガレート体比率は、55〜100質量%、更に60〜99質量%、特に65〜98質量%、殊更65〜90質量%であると、非重合体カテキン類の生理効果の有効性、苦味低減の点で好ましい。
また、合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中のカフェイン濃度は、非重合体カテキン類に対して、カフェイン/非重合体カテキン類(質量比)=0.15以下、更に0〜0.1、特に0〜0.08、更に0〜0.05、殊更に0〜0.035であると、呈味改善の点、生理効果の点で好ましい。
更に、合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中の没食子酸と非重合体カテキン類との比率(没食子酸/非重合体カテキン類)(質量比)は0.1以下、更に0〜0.07、特に0〜0.05、殊更0〜0.02であると、風味改善の点から好ましい。
本発明で得られる合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物の色調は、非重合体カテキン類の濃度が1質量%である水溶液としたときの450nmでの色調(/cm)が3以下、更に0.01〜2、特に0.1〜1、殊更0.2〜0.5であるとが、飲料に配合した時の色調の点、精製コストの点から好ましい。
本発明においては、合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中の非重合体カテキン類の成分の比率は、吸着前の非重合体カテキン類の成分の比率を1として非ガレート体が1.2〜10、ガロ体が1.0〜1.3、エピ体が0.8〜1.0であると、精製茶抽出物の風味改善、生理効果及びコスト低減の点から好ましい。
合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中の非ガレート体率は、吸着前の茶抽出物の非ガレート体率を1として、1.3〜5、さらに1.4〜4、特に1.45〜3、殊更1.5〜2が好ましい。合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中のガロ体率は、吸着前の茶抽出物のガロ体率を1として、1.01〜1.28、さらに1.02〜1.26、特に1.04〜1.24、殊更1.06〜1.22が好ましい。合成吸着剤から溶出分画させる条件としては、分画した茶抽出物中のエピ体率は、吸着前の茶抽出物のエピ体率を1として、0.82〜1.0、さらに0.86〜0.99、特に0.90〜0.99、殊更0.94〜0.98が好ましい。
茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後、合成吸着剤に洗浄液を接触させ、次に合成吸着剤に溶出液を接触させ、分画物中に合成吸着剤に吸着した非重合体カテキン類の10〜60%を分画させる。
合成吸着剤に吸着した非重合体カテキン類のうち、分画物中に溶出させる非重合体カテキン類の量(これを非重合体カテキン類回収率[%]と呼ぶ)は、溶出液の種類や濃度、接触させる量等の溶出条件で、制御することができる。非重合体カテキン類回収率は、10〜60%である。カテキンの回収率を高く、カフェイン含量を低く、非重合体カテキン類非ガレート体率を高く、風味を改善する点から、好ましくは15〜55%、より好ましくは20〜50%、さらに好ましくは25〜45%である。
溶出液は、カフェイン含量を低く、かつ、非重合体カテキン類非ガレート体率を高くする点、風味を改善する点、また、分画物中に溶出させる非重合体カテキン類の量を制御することが容易な点から、有機溶媒水溶液または塩基性水溶液であることが好ましい。
有機溶媒水溶液または塩基性水溶液で溶出させると、非ガレート体がガレート体よりも先に溶出される。
有機溶媒水溶液を溶出液として使用する場合は、水溶性有機溶媒が好ましく、アセトン、メタノール、エタノール等が挙げられ、食品への使用の観点からエタノールが好ましい。かかる有機溶媒は非重合体カテキン類の収率が大きい、及び不純物量が少なくなる等の点から、水溶液として用いるのが好ましく、有機溶媒濃度としては、好ましくは1〜80質量%水溶液、より好ましくは5〜60質量%水溶液、更に10〜40質量%水溶液、特に15〜30質量%水溶液として用いるのが好ましい。
有機溶媒水溶液を溶出液として使用する場合は、SV(空間速度)=0.5〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.2〜10[v/v]で、非重合体カテキン類を分画することが好ましい。更にSV=1〜3[h-1] の通液速度で、通液倍数として0.5〜5[v/v] で分画することが生産性及び非重合体カテキン類回収率の制御の点から好ましい。
塩基性水溶液を溶出液として使用する場合は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のアルカリ性水溶液、好ましくは、ナトリウム、カリウム系のアルカリ性水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を好適に用いることができる。また、アルカリ性水溶液のpHは7〜14の範囲が好ましい。非重合体カテキン類回収率の点から9〜13.8、特に10〜13.5が好ましい。pH7〜14のナトリウム系水溶液としては、4%以下の水酸化ナトリウム水溶液、1N−炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。アルカリ性水溶液のアルカリ濃度は、分画物中に溶出させる非重合体カテキン類の量を制御することが容易な点から、0.001〜4質量%、さらに0.005〜1質量%、特に0.008〜0.2質量%、殊更0.01〜0.08質量%が好ましい。塩基性水溶液と有機溶媒は混合して用いてもよい。有機溶媒の濃度としては、カフェインとカテキンの分離性の点から0〜90質量%の範囲が好ましく、0〜50質量%がより好ましく、0〜20質量%が更に好ましい。非重合体カテキン類の分画に用いる溶出液として塩基性水溶液を用いる場合は、カフェインを低減し精製茶抽出物の色調を改善する点からも好ましい。
溶出工程においては、分離に用いる塩基性水溶液として互いにpHが異なる2種以上の塩基性水溶液を用い、これら塩基性水溶液をpHが低い順に合成吸着剤に接触させることができる。それぞれのpH区分で異なる非重合体カテキン類や他の成分を分離することができる。
塩基性水溶液を溶出液として使用する場合は、SV(空間速度)=2〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜30[v/v]で、非重合体カテキン類を分画することが好ましい。更にSV=3〜7[h-1]の通液速度で、通液倍数として5〜20[v/v]で分画することが生産性及び非重合体カテキン類の回収率の点から好ましい。
塩基性水溶液で分画した場合には、非重合体カテキン類の分画物は、塩基性であり、非重合カテキン類の安定性の観点から、分画物のpHを7以下に、より好ましくはpHを1〜6、更に好ましくは1〜5、殊更好ましくは2〜4に調整する。具体的には、酸による中和、電気透析によるアルカリ金属イオンの除去、又はイオン交換樹脂によるアルカリ金属イオンの除去が利用できる。イオン交換樹脂としては特にH型のカチオン交換樹脂を用いるのが好ましい。プロセスの簡便性からイオン交換樹脂によるpH調整が好ましい。カチオン交換樹脂としては、具体的には、アンバーライト200CT、IR120B、IR124、IR118、ダイヤイオンSK1B、SK1BH、SK102、PK208、PK212等を用いることができる。
中和後の分画物を濃縮し、析出した夾雑物を固液分離除去することが、呈味及び製品の安定性向上のため好ましい。濃縮は、減圧蒸留、薄膜蒸留、膜濃縮等により実施することができる。濃縮倍率としては、呈味及び析出した夾雑物の分離性の点から2〜500倍、更に2〜250倍、特に2〜125倍が好ましい。濃縮後の非重合体カテキン類の濃度は、呈味及び析出した夾雑物の分離性の点から0.1〜60質量%、更に0.2〜30質量%、特に0.5〜15質量%が好ましい。固液分離の具体的な操作としては、ろ過及び/又は遠心分離処理等が挙げられる。濃縮後の茶抽出物水溶液を固液分離して得られる茶抽出物水溶液の濁度は、0.1〜100NTU、より好ましくは0.5〜70NTU、更に好ましくは1〜50NTUであると、飲料の呈味及び安定性の点で好ましい。 濁度は、2100P型(ハック社製)にて測定し、ここで得られた値[単位:NTU]を以って、分離清澄性の指標とすることができる。
固液分離の方法は、食品工業で使用できる方法が適用できる。例えば、固液分離を膜ろ過で行う場合の膜ろ過条件としては、温度が5〜70℃、更に10〜40℃であるのが好ましい。膜孔径は、所定の濁度になるという点から、0.1〜10μmが好ましく、更に0.1〜5μm、特に0.1〜2μmであるのがろ過に要する時間及び濁り成分の分離性の点から好ましい。膜孔径の測定方法は、水銀圧入法、バブルポイント試験、細菌ろ過法などを用いた一般的な測定方法が挙げられるが、バブルポイント試験で求めた値を用いるのが好ましい。膜ろ過で使用する膜の材質は、高分子膜、セラミック膜、ステンレス膜等が使用できる。
また、遠心分離機は、分離板型、円筒型、デカンター型などの一般的な機器が好ましい。遠心分離条件としては、温度が5〜70℃、更に10〜40℃であるのが好ましく、回転数と時間は、所定の濁度になるように調整された条件であることが望ましい。例えば分離板型の場合、3000〜10000r/min、更に5000〜10000r/min、特に6000〜10000r/minで、0.2〜30分、更に0.2〜20分、特に0.2〜15分であるのが好ましい。
分画物は、色相および風味をさらに改善するためには、活性炭と接触させることが好ましい。色相を改善する効果および風味を改善する効果の点から、有機溶媒水溶液中で活性炭と接触させることが好ましい。活性炭の原料としては、ヤシ殻、木質、石炭があげられるが、木質のものが好ましい。活性炭の賦活方法としては、水蒸気賦活法、ガス賦活法、薬品賦活法があげられるが、薬品賦活法が好ましい。
例えば、ZN−50、Y−10S、GS-1、GS-B(味の素ファインテクノ製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D、クラレコールGW、クラレコールGA、クラレコールGA-D、クラレコールRP−15(クラレケミカル社製)、白鷺AW50、白鷺A、白鷺P、白鷺KL、白鷺M、白鷺C、カルボラフィン、WH2C(日本エンバイロケミカルズ製)、GM130A、CW130A、CW130AR、CW350AR、GL130A、SG、SGA、SGP(フタムラ化学製)、ヤシコール、MAS印、梅蜂印、梅蜂F印(太平化学産業製)、CPG、CAL、S80A(三菱化学カルゴン製)等の市販品を用いることができる。
製品の色調を改善する点、活性炭の使用量を低減する点、回収率を向上する点から、活性炭としては以下のものが好ましい。平均細孔径は0.5〜10nm(ナノメーター)、さらに、1.0〜9.0nm(ナノメーター)、特に2.0〜8.0nm(ナノメーター)のものが好ましい。細孔容積は0.01〜2.5mL/g、さらに0.1〜2.0mL/g、特に0.5〜1.7mL/gのものが好ましい。また、比表面積は800〜2000m2/g、さらに900〜1600m2/g、特に1000〜1500m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
活性炭は、分画した茶抽出物中の非重合体カテキン類100質量部に対して1〜200質量部、さらに5〜100質量部、特に10〜80質量部添加することが、精製効果、回収率を向上する点、ろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。
活性炭と接触させる際に用いる有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が好ましく、アセトン、メタノール、エタノール等が挙げられ、食品への使用の観点からエタノールが好ましい。かかる有機溶媒は得られる製品の色調が良好である、非重合体カテキン類の収率が大きい、不純物量が少ない等の点から、水溶液として用いることが好ましく、有機溶媒濃度としては、1〜80質量%水溶液、更に2〜70質量%水溶液、特に5〜50質量%水溶液、殊更7〜40質量%水溶液として用いるのが好ましい。
活性炭と接触させる際の、有機溶媒水溶液中の非重合体カテキン類の濃度は、精製効果、回収率を向上する点から、0.5〜20質量%、さらに1〜15質量%、特に2〜8質量%が好ましい。
活性炭と接触させる際に、合成吸着剤からの分画物は、水や有機溶媒水溶液の添加、減圧濃縮、膜濃縮、脱溶媒等により、溶媒濃度や非重合体カテキン類濃度を所定の濃度に調整することが好ましい。
活性炭と接触させる手段としては、分画物に活性炭を添加、撹拌し吸着後、ろ過操作により活性炭を回収する撹拌槽方法又は活性炭を充填したカラムを用いて連続処理により接触させるカラム方法が採用されるが、生産性の点からカラム方法による連続処理方法が好ましい。
本発明によって得られる精製茶抽出物は、その固形分中に、非重合体カテキン類を25〜98質量%含有するが、40〜95質量%、更に50〜90質量%、特に60〜85質量%含有することが、飲料への配合上好ましい。
茶抽出物は、更に苦味を低減したい場合または非ガレート体の収量を増加したい場合、加水分解処理して、ガレート体を非ガレート体に変換できる。呈味の点から合成吸着剤に吸着する前に加水分解処理することが好ましい。苦味低減の点およびコストの点から、加水分解処理により非ガレート体率は、原料の非ガレート体率に比べて、好ましくは1.2〜5倍、より好ましくは1.6〜3倍に増加する。非ガレート体率は、原料の非ガレート体率にもよるが、好ましくは40〜90%、より好ましくは50〜85%、さらに好ましくは60〜80%に増加する。加水分解処理としては、非ガレート体率のコントロールが容易である点、熱による風味の劣化や分解時の風味の劣化が小さい点から、タンナーゼ活性を有する酵素として、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、タンナーゼで処理することが好ましい。具体的には、ペクチナーゼPLアマノ(天野エンザイム社製)、ヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製)、タンナーゼKTFH(キッコーマン社製)等が利用できる。
その中でもタンナーゼが好ましい。タンナーゼとしては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが挙げられる。このうちアスペルギルス オリーゼ由来のものが好ましい。
本発明で使用するタンナーゼ活性を有する酵素は、500〜100,000U/gの酵素活性を有することが好ましく、500U/g以下であると工業的に限られた時間内で処理するためには多量の酵素が必要となり、100,000U/g以上であると酵素反応速度が速すぎる為、反応系を制御することが困難となる。ここで1Unitは30℃の水中においてタンニン酸に含まれるエステル結合を1マイクロモル加水分解する酵素量を示す。 本発明で行うタンナーゼ活性を有する酵素処理は、タンニンアシルヒドラーゼEC3.1.1.20などで行うことが好適である。市販品としては、商品名「タンナーゼ」キッコーマン(株)製及びタンナーゼ「三共」三共(株)製などが挙げられる。
タンナーゼ活性を有する酵素処理するときの非重合体カテキン濃度は、好ましくは0.1〜22質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%、殊更好ましくは0.5〜3質量%である。0.1質量%未満ではこの後の合成吸着剤への吸着時に吸着量が低下し、22質量%を超えると、加水分解処理に長時間を要し、生産性及び茶抽出物の味の点から好ましくない。
茶抽出物中の非重合体カテキン類に対してタンナーゼ活性を有する酵素を、好ましくは1〜300Unit/g−非重合体カテキン、更に好ましくは3〜200Unit/g−非重合体カテキン、特に好ましくは5〜150Unit/g−非重合体カテキンになるように添加する。
酵素処理の温度は、最適な酵素活性が得られる0〜70℃が好ましく、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは5〜50℃である。
酵素反応を終了させるには、酵素活性を失活させる必要がある。酵素失活の温度は、70〜100℃が好ましい。
酵素の失活は、バッチ式もしくはプレート型熱交換機のような連続式で加熱を行うことでできる。タンナーゼの失活後、遠心分離などの操作により茶抽出物を清浄化することができる。
本発明で得られた精製茶抽出物はそのままで飲料として使用できる。また、減圧濃縮、薄膜濃縮などの方法により溶媒を除去してもよい。また精製茶抽出物の製品形態として粉体が望ましい場合は、噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法により粉体化できる。
本発明の精製茶抽出物を用いた容器詰飲料の非重合体カテキン類濃度を0.05〜0.5質量%、好ましくは0.06〜0.5質量%、更に0.08〜0.5質量%、更に好ましくは0.092〜0.4質量%、殊更に好ましくは0.11〜0.3質量%、特に好ましくは0.12〜0.3質量%に、調整すると、雑味がなく良好な風味の容器詰飲料が得られる点で好ましい。
また、前記容器詰飲料中の非重合体カテキン類非ガレート体率が30〜100質量%、更に40〜99質量%、特に60〜98質量%、殊更65〜90質量%が、呈味、非重合体カテキン類の生理効果の有効性上好ましい。
また、本発明の容器詰飲料中の没食子酸含有量は、苦味、酸味の低減効果、更には風味及び色調の保存安定性の点から10mg/100mL未満であることがよい。
本発明の容器詰飲料は、茶系飲料及び非茶系飲料として用いることができる。非茶系飲料としては、具体的には、甘味料及びフルーツフレーバーを含有した酸性飲料、及びスポーツ飲料又はアイソトニック飲料が挙げられる。
本発明の容器詰飲料に用いられる甘味料としては人工甘味料類、炭水化物類、グリセロール類(例えばグリセリン)が用いられる。
フルーツフレーバーには、果汁及び香料が含まれる。一般に果汁のことをフルーツジュース、香料のことをフレーバーと呼んでいるが本発明はこれらを含む天然又は合成香料や果汁が本発明で使用できる。
本発明の容器詰飲料を、スポーツドリンク又はアイソトニック飲料とする場合には、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンを含有させるのが好ましい。
更に必要により、本発明飲料は酸味料を含有していてもよい。酸味料としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸等のような食用酸が挙げられる。酸味料は本発明飲料のpHを調整するために用いてもよい。
本発明の容器詰飲料は、苦渋味抑制剤を配合すると飲用しやすくなり好ましい。用いる苦渋味抑制剤は特に限定はないが、サイクロデキストリンが好ましい。サイクロデキストリンとしては、α−、β−、γ−サイクロデキストリン及び分岐α−、β−、γ−サイクロデキストリンが使用できる。サイクロデキストリンは飲料中に0.005〜0.5質量%、更に0.01〜0.3質量%含有するのが好ましい。本発明の容器詰飲料には、酸化防止剤、各種エステル類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、ガム、乳化剤、油、ビタミン、アミノ酸、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、あるいは併用して配合できる。
本発明の容器詰飲料のpHは、25℃で2〜7、好ましくは2〜6.5とするのが呈味及び非重合体カテキン類の安定性の点で好ましい。
本発明の容器詰飲料においても、カテキンの生理効果を得るための一日当りの必要摂取量を確保する意味からも、本発明の容器詰飲料1本(350〜500mL)当り300mg以上、好ましくは450mg以上、更に好ましくは500mg以上の配合量であるものがよい。
また上記の容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
(1)カテキン類、カフェイン及び没食子酸の測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法で分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
(2)精製茶抽出物の風味の評価
各実施例で得られた精製茶抽出物を非重合体カテキン類含有率が0.175%[w/v]となるように濃縮または脱イオン水で希釈し、その40mLを50mLの耐圧製ガラス容器に入れた。そこにアスコルビン酸Naを0.1質量%添加し、5%重炭酸Na水溶液でpHを6.4に調整し、窒素置換を行い、オートクレーブで121℃、10分間加熱滅菌した。その後、評価パネラー5名によって茶風味と苦味の評価を行った。苦味の評価は硫酸キニーネ法にて行った。
(3)硫酸キニーネ法(等価濃度試験法)による苦味評価
硫酸キニーネ2水和物を表に記載の苦味強度に対応した濃度に調整した。評価サンプルを試飲した後、標準苦味溶液のどのサンプルと苦味の強さが等しいか判断した。評価パネラー5名によって苦味強度の確認を行った。(参考文献:新版官能検査ハンドブック 日科技連官能検査委員会p448-449、Perception & Psychophysics,5,1696,347-351)
Figure 2008141987
実施例1
粗カテキン製剤(三井農林製 非重合体カテキン類濃度=32.0質量%、非重合体カテキン非ガレート体率=47.8質量%、カフェイン=5.88質量%)150gを、脱イオン水4500gに25℃で30分間攪拌溶解し茶抽出物(pH5.3)を得た。次いで、ステンレスカラム1(内径60mm×高さ360mm、容積1017.4mL)に充填した合成吸着剤SP−207(三菱化学(株)製)861mLを、予めSV=5(h-1)で95(v/v)エタノール3444mLによる洗浄を行い、次いでSV=5(h-1)で8610mLの水で洗浄した。ステンレスカラム2(内径38mm×高さ340mm、容積385.4mL)に充填したイオン交換樹脂SK1BH(三菱化学(株)製)350.6mLを、予めSV=5(h-1)で95(v/v)エタノール1402.4mLによる洗浄を行い、次いでSV=5(h-1)で3506mLの水で洗浄した。その後、茶抽出物3435g(4倍容積対合成吸着剤)をSV=1(h-1)でステンレスカラム1に通液し透過液は廃棄した。次いでSV=2(h-1)で861mL(1倍容積対合成吸着剤)の水で洗浄した。水洗後、溶出液として0.01質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH11.5)をSV=5(h-1)で12900mL(15倍容積対合成吸着剤)通液し、分画物を得た。分画物は連続でステンレスカラム2に通液し、脱イオンを行い、精製茶抽出物12860g(pH3.5)を得た。精製茶抽出物中の非重合体カテキン類は、吸着させた非重合体カテキン類を100としたときの31.0%であった。
実施例2
溶出液として、20質量%エタノール水溶液をSV=2(h-1)で860mL(1倍容積対合成吸着剤)通液し、分画物を脱イオンを行わない以外は、実施例1と同様の操作を行った。精製茶抽出物中の非重合体カテキン類は、吸着させた非重合体カテキン類を100としたときの41.0%であった。
比較例1
溶出液として0.1質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH12.5)をSV=5(h-1)で12900mL(15倍容積対合成吸着剤)通液する以外は、実施例1と同様の操作を行った。精製茶抽出物中の非重合体カテキン類は、吸着させた非重合体カテキン類を100としたときの92.4%であった。
比較例2
溶出液として、20質量%エタノール水溶液をSV=2(h-1)で5170mL(6倍容積対合成吸着剤)通液する以外は、実施例2と同様の操作を行った。精製茶抽出物中の非重合体カテキン類は、吸着させた非重合体カテキン類を100としたときの85.0%であった。
実施例1,2、比較例1,2の結果を表2に示す。
Figure 2008141987
表2から明らかなように、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後に、合成吸着剤に洗浄液を接触させ、次に合成吸着剤に溶出液を接触させ、分画条件として合成吸着剤に吸着した非重合体カテキン類の10〜60%を分画することにより、カフェイン含量が低く非重合体カテキン類非ガレート体率が高く茶風味と苦味が低減し風味の改善された精製茶抽出物を得ることができた。従って、この抽出物は茶系飲料だけでなく、非茶系飲料としても有用である。

Claims (7)

  1. 茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後に、合成吸着剤に洗浄液を接触させ、次に合成吸着剤に溶出液を接触させて、非重合体カテキン類として非ガレート体率が55〜100%であり、カフェイン/非重合体カテキン類0.15以下である茶抽出物を分画する精製茶抽出物の製造方法。
  2. 分画物中の非重合体カテキン類の成分の比率が、吸着前の茶抽出物の成分の比率を1として非ガレート体が1.2〜10、ガロ体が1.0〜1.3、エピ体が0.8〜1.0である請求項1記載の精製茶抽出物の製造方法。
  3. 合成吸着剤に吸着した非重合体カテキン類中の10〜60%の非重合体カテキン類を分画する請求項1または2記載の精製茶抽出物の製造方法。
  4. 溶出液が有機溶媒水溶液または塩基性水溶液である請求項1〜3の何れか1項記載の精製茶抽出物の製造方法。
  5. 洗浄液が、水または有機溶媒水溶液である請求項1〜4の何れか1項記載の精製茶抽出物の製造方法。
  6. 有機溶媒がエタノールである請求項1〜5の何れか1項記載の精製茶抽出物の製造方法。
  7. 合成吸着剤に塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を分画した後、分画物をpH7以下に調整する請求項1〜6の何れか1項記載の精製茶抽出物の製造方法。
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