JP2008133906A - 自動車エンジン用チェーン - Google Patents

自動車エンジン用チェーン Download PDF

Info

Publication number
JP2008133906A
JP2008133906A JP2006320802A JP2006320802A JP2008133906A JP 2008133906 A JP2008133906 A JP 2008133906A JP 2006320802 A JP2006320802 A JP 2006320802A JP 2006320802 A JP2006320802 A JP 2006320802A JP 2008133906 A JP2008133906 A JP 2008133906A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pin
chain
layer
bush
carbide layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006320802A
Other languages
English (en)
Inventor
Shota Miyanaga
正太 宮永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tsubakimoto Chain Co
Original Assignee
Tsubakimoto Chain Co
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tsubakimoto Chain Co filed Critical Tsubakimoto Chain Co
Priority to JP2006320802A priority Critical patent/JP2008133906A/ja
Priority to US11/895,771 priority patent/US20080125262A1/en
Priority to GB0716801A priority patent/GB2444353A/en
Priority to KR1020070097349A priority patent/KR20080048392A/ko
Priority to CNA2007101630855A priority patent/CN101191526A/zh
Priority to DE102007050445A priority patent/DE102007050445A1/de
Publication of JP2008133906A publication Critical patent/JP2008133906A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G13/00Chains
    • F16G13/02Driving-chains
    • F16G13/06Driving-chains with links connected by parallel driving-pins with or without rollers so called open links
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B21MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21LMAKING METAL CHAINS
    • B21L9/00Making chains or chain links, the links being composed of two or more different parts, e.g. drive chains
    • B21L9/02Making chains or chain links, the links being composed of two or more different parts, e.g. drive chains of roller-chain or other plate-link type
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C10/00Solid state diffusion of only metal elements or silicon into metallic material surfaces
    • C23C10/28Solid state diffusion of only metal elements or silicon into metallic material surfaces using solids, e.g. powders, pastes
    • C23C10/34Embedding in a powder mixture, i.e. pack cementation
    • C23C10/36Embedding in a powder mixture, i.e. pack cementation only one element being diffused
    • C23C10/38Chromising
    • C23C10/40Chromising of ferrous surfaces
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G13/00Chains

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)

Abstract

【課題】夾雑物が含まれるような極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合にあってもアブレシブ摩耗によるピン及びブシュの間の摺接面における異常摩耗伸びの発生を抑え、さらに、ピンとブシュが親和性の高い材質で構成されている場合においても、両者が凝着し難く、凝着に起因する摩耗が抑制され、長期に亘って円滑に屈曲摺動する自動車エンジン用チェーンを提供すること。
【解決手段】ピンの表面に拡散浸透処理によるCr炭化物層が施されており、ピンの母材となる鋼の最外側におけるCr炭化物層が、主としてCr73によって形成され、ピンのCr炭化物層の最外層が、主としてCr236によって形成されていると共に、最外層を残した状態で、潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさで面圧の小さな表面凹部が形成されていることにより、上記の課題を解決するものである。
【選択図】図4

Description

本発明は、自動車エンジン用の動力伝達用チェーンやカムシャフト駆動用チェーンに関するものであって、特に好ましくは、自動車エンジン用タイミングチェーンに関する。
近年、自動車用エンジンのカムシャフト駆動機構等に用いられる動力伝達媒体には、高荷重、高速化、レイアウトの自由度の向上及びメンテナンスフリー化の要請から、従来、多用されていた歯付ベルトやVベルトに代わり、耐久性に優れた金属製ブシュチェーンや金属製ローラチェーンの採用が増加している。
一般に、自動車エンジン用の金属製ブシュチェーンは、円筒状のブシュの両端部が各々一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、ブシュ内に遊貫された鋼製のピンの両端が、一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入された構成をしており、金属製ローラチェーンは、金属製ブシュチェーンのブシュにローラが外挿された鋼製をしている。
このような構成をした従来のチェーンにおいては、硬度向上、摩耗伸び性能の向上を目的として、(1)ピンに焼入(Quench hardening)・焼戻(Tempering)処理や浸炭(Carburizing)・窒化(Nitriding)処理等の熱処理加工を施したり、(2)ピン表面にボロナイジング処理やクロマイジング処理等の表面硬化処理を施したり、(3)ピン表面にニッケル等のめっき処理を施したりしていた(例えば、特許文献1参照)。
また、本願発明の発明者らは、従来の自動車エンジン用タイミングチェーンが抱えていた、エンジンルーム内の極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合に酸化や腐食の影響を受けやすく、ピンとブシュとの凝着(Adhension)に起因して摩耗しやすく、寿命が短いという課題を解決するために、ブシュの材質に浸炭処理を施すと共に、ピンの表面に炭化バナジウム(VC)層を形成した自動車エンジン用チェーンを既に開発し、市場で高い評価を得ている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、サイレントチェーンのピンに対して炭化バナジウム(VC)処理を行った後、母材の最外層をバレル研磨処理によって完全に除去することにより、V87以外のバナジウム炭化物を多く含む不純物層が除去された炭化バナジウム(V87)層を母材の最外層に形成したものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
実開平1−149048号公報 特許第3659963号公報 特開2005−290435号公報
ところが、上述した特許文献1に開示された自動二輪車用並びに一般機器用の伝動用小型チェーンにおいては、ピン表面にボロナイジング処理やクロマイジング処理等の表面硬化処理を施したり、ニッケル等のめっき処理を施したりしているにもかかわらず、自動車用エンジンのタイミングチェーン等に使用した際に、期待した耐久性が発揮されずに異常摩耗(Abnormal wear)伸びを生じるチェーンが、ごくわずかであるが存在することが報告された。
また、上述した特許文献2に開示された自動車エンジン用チェーンにおいては、ブシュの材質に浸炭処理を施すと共に、ピンの表面に炭化バナジウム層(VC)を形成したことによって、ブシュとピンとの凝着に起因する摩耗が抑制されるが、ブシュとピンの両方に熱処理加工や炭化バナジウム(VC)層の形成処理が必要であり、“製造原価が上昇”する。
さらに、上述した特許文献3に開示されたサイレントチェーンの表面処理方法を自動車エンジン用チェーンとして使用されるローラチェーンやブシュチェーンに適用した場合、その摩耗メカニズムは定かではないが、ローラチェーンやブシュチェーンでは、ブシュ内表面が酸化度の高い潤滑油により腐食され、さらに、高負荷下において面圧が高いピンとブシュの摺接により、摺接面の摩耗が促進されるものと推察され、サイレントチェーンに適用したときほどの効果は、得られなかった。
しかも、ピンの最外層をバレル研磨処理によって、完全に除去しているため、ブシュ内表面とピン外表面が面接触をするローラチェーン又はブシュチェーンに適用した場合、摩耗により生じた摩耗粉がピンとブシュの間に夾雑物として存在することにより、摩耗が一層促進する、いわゆる“アブレシブ摩耗(Abrasive wear)”が、ピン及びブシュの間の摺接面の異常摩耗の原因となり、ピンの耐摩耗性を向上させるという効果が、サイレントチェーンに適用した時ほど、発揮できなかった。
さらに、ピンとブシュが親和性の高い材質、例えば、同種元素で構成されている場合には、両者が“凝着”しやすく、自動車エンジン用チェーンの円滑な屈曲摺動を阻害する原因となっていることも明らかになった。
そこで、本発明の第1の目的は、前述したような従来の自動車エンジン用チェーンが抱えていた問題点を解消し、夾雑物が含まれるような極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合にあっても“アブレシブ摩耗”によるピン及びブシュの間の摺接面における“異常摩耗伸び”が発生することなく、さらに、ピンとブシュが親和性の高い材質、例えば、同種元素で構成されている場合においても、両者が“凝着”し難く、“凝着”に起因する摩耗が抑制され、長期に亘って円滑に屈曲摺動する自動車エンジン用チェーンを提供することである。
また、本発明の第2の目的は、良好な潤滑性を長期に亘って持続させる自動車エンジン用チェーンを提供することである。
さらに、本発明の第3の目的は、相手材であるブシュへの“攻撃性”を減少させ、“耐衝撃性(Shock resistance)”を向上させ自動車エンジン用チェーンを提供することである。
そこで、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンは、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された鋼製のピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、前記ピンの表面に拡散浸透処理によるCr炭化物層が形成されており、前記Cr炭化物層の前記ピンの母材側に主としてCr73からなる層が形成され、前記Cr炭化物層の最外側に主としてCr236からなる最外層が形成されていると共に、前記最外層を残した状態で前記最外層にオイル中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部が形成されていることによって、上記の課題を解決するものである。
また、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンの構成に加えて、前記表面凹部を形成する処理が、バレル研磨処理であることによって、上記の課題をさらに解決するものである。
さらに、請求項3に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1又は請求項2に係る自動車エンジン用チェーンの構成に加えて、ピンの母材側に形成された主としてCr73からなる内側Cr炭化物層が、ピンの最外側に形成された主としてCr236からなる外側Cr炭化物層より厚いことによって、上記の課題をより一層、解決するものである。
請求項1に係る自動車エンジン用チェーンは、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された鋼製のピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、前記ピンの表面に拡散浸透処理によるCr炭化物層が形成されており、前記Cr炭化物層の前記ピンの母材側に主としてCr73からなる層が形成され、前記Cr炭化物層の最外側に主としてCr236からなる最外層が形成されていることによって、ピンの母材上に高硬度の主としてCr73からなる第1層とその上に、耐摩耗性に優れ、多孔質(ポーラス)であって耐熱性及び潤滑性にも優れた主としてCr236からなる第2層からなる性質の異なる2層が形成されているので、極端に劣化した酸化度の高い潤滑油の中で使用された場合にも、“異常摩耗伸び”が抑制されると共に、“耐摩耗性”、“耐熱性”、“潤滑性”に優れた自動車エンジン用チェーンが得られる。
さらに、耐摩耗性に優れ、多孔質(ポーラス)であって耐熱性及び潤滑性にも優れた主としてCr236からなる最外層を残した状態で前記最外層に潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部が形成されていることによって、この表面凹部が湯溜まりとなり、良好な“潤滑性”を発揮すると共に、直噴型エンジンやディーゼルエンジンなどにおいて発生しやすいスーツ等の夾雑物が前記表面凹部に落ち込み、ピンの表面に形成される油膜の形成が妨げられないと共に、ピン表面とブシュ内表面の摺接面上に夾雑物が存在しなくなり、アブレシブ摩耗の発生が抑制されるため、チェーンの摩耗伸びを小さくすることができる。この効果について、図2を用いて詳述する。
図2(a)は、本発明の主要部であるピン表面に形成したCr炭化物層の最外層20の断面を模式的に示した図である。主としてCr236からなる最外層20は、何ら表面粗さ処理を行わない場合、表面凸部24と表面凹部22を有しており、表面凸部24の面圧が高い、すなわち、表面凸部24の先端部の面積が小さいためブシュへの攻撃性が高い。
図2(b)は、図2(a)に示した点線Bの位置まで、例えば、バレル研磨処理のような表面粗さ処理を施したときの状態を模式的に示している。この場合、図2(a)に示した表面凸部24は、ほとんど磨かれているため、ブシュへの攻撃性は、低減している。しかしながら、表面凸部24を磨きすぎたため表面凹部22の大きさが小さくなり、潤滑油中のスーツ等の夾雑物26は、表面凹部22に落ち込まずピン表面に存在する。そのため、油膜28の形成を妨げていると共に、夾雑物26によるブシュへの攻撃性が懸念される。
図2(c)は、図2(a)に示した点線Cの位置まで、表面粗さ処理を施したときの状態を模式的に示している。この場合、図2(a)に示した表面凸部24は、略中腹部まで磨かれているため、ちょうど潤滑油中のスーツ等の夾雑物26が落ち込むことができる大きさの表面凹部22が形成される。そのため、油膜28も形成されており、また、表面凸部24も大部分磨かれており、面圧は低下しているので、ブシュへの攻撃性は、かなり低下している。請求項1における「潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部」とは、図2(c)に示した状態を意味している。
図2(d)は、図2(a)に示した点線Dの位置まで、表面粗さ処理を施したときの状態を模式的に示している。この場合、図2(a)に示した表面凸部24は、先端部分が磨かれているだけであり、潤滑油中のスーツ等の夾雑物26が落ち込むことができる大きさの表面凹部22が形成される。そして、油膜28も形成されているが、表面凸部24の先端部の面積が小さく面圧が大きくなるため、ブシュへの攻撃性が高い。
従来よりチェーンの摩耗伸びを低減するために、ピンの表面粗さを良くしていた。これまで、ピンの表面粗さが良ければよい程、耐摩耗性が向上すると考えられていた。ところが、前記の説明から分かるように潤滑油中にスーツ等の夾雑物が存在する環境下では、ピンの表面粗さが良すぎるとかえってピン摩耗が促進されることが確認された。
さらに、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンが奏する効果に加えて、表面凹部をより形成する処理がバレル研磨処理であることによって、例えば、
(1)“超仕上げ”(円筒の内外面や平面、球面などワークを鏡面に仕上げることが目的の加工方法で、回転するワークに広い面で接触する砥石をばねで押し付け、且つ、回転軸方向に微小な低周波振動を与える加工方法)、
(2)“化学研磨”(加工したいワークを加工液中に浸して化学反応により平滑にし、光沢を与えることを目的とした加工方法)、及び、
(3)“電解研磨”(加工したいワークを電解液中に浸して、ワークを陽極(+)、加工電極を陰極(−)に繋ぐことによって、陽極のワークの表面を電解液中に溶出される加工方法)などに比べて、被加工物であるピンと研磨材とが、バレル槽内で相対摩擦が起こるので、ピンのような小物部品の研磨を効率よく行うことができる。
請求項3に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1又は請求項2の構成に加えて、ピンの母材側に形成された主としてCr73からなる内側Cr炭化物層が、ピンの最外側に形成された主としてCr236からなる外側Cr炭化物層より厚いことによって、相手材であるブシュへの“攻撃性”が減少するので、チェーンの耐衝撃性が向上し、ブシュの摩耗量を抑制することができる。
これらの効果により、“耐久性”に優れ、“凝着”に起因する摩耗が抑制され、“耐摩耗性”及び“耐衝撃性”に優れ、長期に亘って円滑に屈曲摺動する自動車エンジン用チェーンが提供される。しかも、自動車エンジン用チェーンと共に使用する潤滑油の耐用期間の長期化も図られ、“環境負荷低減”にも寄与する。
本発明の実施の形態を実施例に基づき、図1乃至図5を参照して説明する。なお、前記の説明で明らかなように、本発明は、ブシュの内面とピンの外表面の摺接に起因する特性劣化を改善することを目的とした発明であるので、ローラチェーンであってもブシュチェーンであっても効果は、基本的に同じ傾向を示す。したがって、以下の実施例の説明においては、ローラチェーンについてのみ説明する。
図1は、本発明の一実施例であるローラチェーンの一部を示す斜視図である。この図1では、ローラチェーンの内部構造が分かるように、その一部を切り欠いた状態で図示している。
ローラチェーン10は、ブシュ12の両端が、それぞれ一対の内プレート11のブシュ孔11aに圧入され、ブシュ12内に遊貫されたピン15の両端が一対の内プレート11の両外側に配置された一対の外プレート14のピン孔14aに圧入されている。そして、ブシュ12にローラ13を回転自在に外挿している。
本発明のローラチェーン10は、ブシュ12が、合金鋼により構成されていると共に、ピン15の母材となる鋼または低炭素鋼の表面15aに高炭素表面層が形成される。この高炭素表面層の形成方法は、特に限定されるものではないが、浸炭剤中で900〜950℃くらいに加熱し、炭素を拡散させてピン15の表層の炭素量を増加させる、いわゆる“浸炭処理”によって行われる。言うまでもないが、ピン15の母材として高炭素鋼を使用する場合には、この“浸炭処理”を施す必要はない。
次に、このピン15の周辺にクロム粉末又はクロム合金粉末を充填して、900〜1200℃の高温下で5〜25時間加熱処理する拡散浸透処理の一種である“粉末パック法”により、ピン15の表面にクロマイジング層(クロムの拡散層)を形成する。この“粉末パック法”を行うに際して、適宜、アルミナ等の焼結防止剤や塩化アンモニウム等の反応促進剤を添加する。
この実施例においては、拡散浸透処理の具体的な方法としては、“粉末パック法”により、ピン15の表面にクロマイジング層を形成しているが、この方法以外にも、溶融塩中で処理する“溶融塩法(通称、Toyota Diffusion)”や、クロム粉末と沈殿防止剤を添加した塗料などを塗布して乾燥させ、不活性ガスまたは真空中で加熱する“塗布法”等が知られている。しかしながら、実施例に於いては、製造原価が安く、ピン15のような小物の処理に適している“粉末パック法”を採用している。
上記のように、高炭素表面層の上に拡散浸透処理によりクロマイジング層を形成させ、処理温度を1000℃程度とすることによって、クロム(Cr)は、強力な炭化物形成元素であるので、ピン15の最外層に形成された高炭素表面層及び母材そのものに含まれる炭素が、ピン15の表面に形成されたクロマイジング層に拡散浸透していき、クロマイジング層に含まれるクロム(Cr)と結合し、図3に示した電子顕微鏡で撮影したピン15表面の断面組織写真から分かるようにピン15の母材となる鋼に接する層におけるCr炭化物層が主としてCr73からなる層となり、ピンの最外層におけるCr炭化物層が主としてCr236からなる層となる。
本実施例の場合、図3に示した断面組織写真から計測すると、母材側の主としてCr73からなる内側Cr炭化物層の厚みが8〜20μmであり、最外層の主としてCr236からなる外側Cr炭化物層の厚みが1〜6μmである。このように、表面のクロマイジング層が何故に2層に分かれるかについては、今のところ詳細なメカニズムは定かではないが、処理粉末として外部から供給されるクロム(Cr)とピン15の母材および母材表面に形成された高炭素表面層から供給される炭素が結びついて、Cr−C(Cr炭化物層)が形成され、その際に、より母材に近いところでは、より炭素の割合の高い主としてCr73からなる層が形成され、母材から遠い表面側には、炭素の割合が低い主としてCr236からなる層が形成される。そして、その形成過程における両者の固相と固相のバランスにより2層に分かれるものと推察される。
次に、ピンの表面をバレル研磨処理をして、耐摩耗性に優れた主としてCr236からなる最外層を残存させつつ、最外層に潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部を形成する。表面凹部を潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい前述した図2(c)に示した状態に形成するためには、最初にバレル研磨処理時間を変化させて、その都度、電子顕微鏡による断面撮像を行い表面凹部の大きさを確認する。その結果、最外層を残存させつつ、潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部が形成されるまでのバレル研磨処理時間を求める。以降は、この時間を用いてバレル研磨処理を行うことにより、再現性よく適当な大きさの表面凹部を形成することが可能になる。このようにして形成されたピン表面被覆層の断面図の模式図を図4に示す。
実施例による自動車エンジン用チェーンのピンの特性を図るため下記に示す試験条件で、摩耗伸び試験を行い、その結果を図5に示した。
<摩耗伸び試験条件>
・チェーン: ピッチ8mmのローラチェーン
・スプロケット歯数: 18枚×36枚
・回転速度: 6500r/min
・潤滑油: 劣化したエンジンオイル
・油量: 1L/min
なお、図5に示した実施例及び比較のために示した従来例1、従来例2のチェーン伸び試験の結果は、上記の条件で通常のモータリング試験機を用いてチェーン伸び試験を行った結果にのみ基づいている。しかしながら、上記の試験方法は、当業界で通常用いられている再現性の高い試験方法であるので、他の試験方法を行ったとしても、同じ傾向が示されると推認される。
ここで、比較のために示した従来例1は、実施例と同様の方法で製造したピンに対し、バレル研磨処理を徹底的に行い、ピンの表面に形成された2層のCr炭化物層から、最外層のCr236層を完全に除去し表面凹部が形成されたものである。また、従来例2は、最外層のCr236層は残存させつつ、より細かな研磨処理を行い、表面から凹部を取り除き表面を滑らかに仕上げたものである。
図5に示したチェーン伸び試験の結果から、実施例のローラチェーンと、従来例1及び従来例2のローラチェーンとを試験時間が50時間経過したところで比較すると、実施例のチェーン伸び率は、0.08%であり、従来例1の0.20%に対して略40%に、従来例2の0.12%に対して略67%に減少している。この結果から分かるように、最外層(Cr236)を確保しつつ、その最外層に潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部を形成することによって、最外層(Cr236)の効果と表面凹部の効果の相乗効果が生じ、チェーン伸び率の著しい改善が奏される。
これまで自動車エンジン用チェーンは、ピンの表面粗さが良ければ良い程、チェーンの摩耗伸びが改善されると認識されていた。ところが、本発明の発明者らが鋭意研究したところ、自動車用チェーンが潤滑油中にスーツ等の夾雑物が存在するような環境下で使用される場合、ピンの表面粗さが良すぎるとかえってピン摩耗が促進されるという新しい知見に基づき本発明の自動車エンジン用チェーンは完成したものであって、特殊な製造設備や高価な材料を用いることなく、きわめて再現性良くチェーン摩耗伸びを改善することができる点で、産業上の利用可能性は、きわめて大きい。
本発明のローラチェーンの一部を示す斜視図。 本発明のメカニズムを説明する概念図。 本発明のローラチェーンのピンの断面組織写真。 本発明のピン表面の断面の概略を説明する図。 本発明のローラチェーンの劣化潤滑油中におけるチェーン伸び試験結果。
符号の説明
10 ・・・ ローラチェーン
11 ・・・ 内プレート
11a ・・・ ブシュ孔
12 ・・・ ブシュ
13 ・・・ ローラ
14 ・・・ 外プレート
14a ・・・ ピン孔
15 ・・・ ピン
15a ・・・ ピンの表面
20 ・・・ ピン表面に形成したCr炭化物層の最外層
22 ・・・ 表面凹部
24 ・・・ 表面凸部
26 ・・・ 夾雑物
28 ・・・ 油膜

Claims (3)

  1. ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された鋼製のピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、
    前記ピンの表面に拡散浸透処理によるCr炭化物層が形成されており、
    前記Cr炭化物層の前記ピンの母材側に主としてCr73からなる層が形成され、
    前記Cr炭化物層の最外側に主としてCr236からなる最外層が形成されていると共に、
    前記最外層を残した状態で前記最外層に潤滑油中のスーツ等の夾雑物が落ち込む大きさであって面圧が小さい表面凹部が形成されていることを特徴とする自動車エンジン用チェーン。
  2. 前記表面凹部を形成する処理が、バレル研磨処理であることを特徴とする請求項1に記載の自動車エンジン用チェーン。
  3. 前記ピンの母材側に形成された主としてCr73からなる内側Cr炭化物層が、前記ピンの最外側に形成された主としてCr236からなる外側Cr炭化物層より厚いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車エンジン用チェーン。
JP2006320802A 2006-11-28 2006-11-28 自動車エンジン用チェーン Pending JP2008133906A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006320802A JP2008133906A (ja) 2006-11-28 2006-11-28 自動車エンジン用チェーン
US11/895,771 US20080125262A1 (en) 2006-11-28 2007-08-27 Chain for use in automobile engine
GB0716801A GB2444353A (en) 2006-11-28 2007-08-29 Chain pin having an outer two part chromium carbide layer having recesses
KR1020070097349A KR20080048392A (ko) 2006-11-28 2007-09-27 자동차 엔진용 체인
CNA2007101630855A CN101191526A (zh) 2006-11-28 2007-09-30 汽车发动机用链
DE102007050445A DE102007050445A1 (de) 2006-11-28 2007-10-19 Kraftübertragungskette zur Verwendung in einem Automobilmotor

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006320802A JP2008133906A (ja) 2006-11-28 2006-11-28 自動車エンジン用チェーン

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008133906A true JP2008133906A (ja) 2008-06-12

Family

ID=38616938

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006320802A Pending JP2008133906A (ja) 2006-11-28 2006-11-28 自動車エンジン用チェーン

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20080125262A1 (ja)
JP (1) JP2008133906A (ja)
KR (1) KR20080048392A (ja)
CN (1) CN101191526A (ja)
DE (1) DE102007050445A1 (ja)
GB (1) GB2444353A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018017395A (ja) * 2015-08-28 2018-02-01 株式会社椿本チエイン チェーン部品、及びチェーン

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4448154B2 (ja) * 2007-05-08 2010-04-07 株式会社椿本チエイン 自動車エンジン用チェーン
DE102012217028A1 (de) * 2012-09-21 2014-03-27 Schaeffler Technologies Gmbh & Co. Kg Kettenelement
JP7465064B2 (ja) * 2019-04-16 2024-04-10 大同工業株式会社 チェーンの継手ピンの製造方法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61264170A (ja) * 1985-05-17 1986-11-22 Tsubakimoto Chain Co チエ−ン用ピン
JPH01149048U (ja) * 1988-04-06 1989-10-16
JPH10238598A (ja) * 1997-02-28 1998-09-08 Tsubakimoto Chain Co 伝動用チェーン
DE60138383D1 (de) * 2000-06-29 2009-05-28 Borgwarner Inc Verfahren zur herstellung eines mit karbid beschichteten stahlkörpers
JP2002130384A (ja) * 2000-10-20 2002-05-09 Tsubakimoto Chain Co ロッカーピン型のサイレントチェーン
US20020119852A1 (en) * 2000-12-27 2002-08-29 Naosumi Tada Chain pin and method of manufacturing same
JP2002266950A (ja) * 2001-03-13 2002-09-18 Tsubakimoto Chain Co サイレントチェーン
JP4401108B2 (ja) * 2003-06-03 2010-01-20 大同工業株式会社 チェーン用ピン及びその製造方法
JP3659963B2 (ja) * 2003-10-28 2005-06-15 株式会社椿本チエイン 自動車エンジン用タイミングチェーン
JP2006132637A (ja) * 2004-11-04 2006-05-25 Tsubakimoto Chain Co サイレントチェーン
WO2006094496A2 (de) * 2005-03-11 2006-09-14 Iwis Motorsysteme Gmbh & Co. Kg Verschleissverbesserte kette sowie verfahren zu deren herstellung

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018017395A (ja) * 2015-08-28 2018-02-01 株式会社椿本チエイン チェーン部品、及びチェーン
JP2018017394A (ja) * 2015-08-28 2018-02-01 株式会社椿本チエイン チェーン部品、及びチェーン

Also Published As

Publication number Publication date
CN101191526A (zh) 2008-06-04
GB2444353A (en) 2008-06-04
GB0716801D0 (en) 2007-10-10
DE102007050445A1 (de) 2008-05-29
KR20080048392A (ko) 2008-06-02
US20080125262A1 (en) 2008-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2008019923A (ja) 自動車エンジン用チェーン
JP4771879B2 (ja) 自動車エンジン用サイレントチェーン
JP6920607B2 (ja) チェーン
JP3199225B2 (ja) サイレントチェーン
JP4448154B2 (ja) 自動車エンジン用チェーン
US20060094551A1 (en) Silent chain and method of producing same
JP5117753B2 (ja) 摺動部品
KR20160037909A (ko) 슬라이딩 부재, 및 체인용 링크 및 당해 링크를 구비한 체인
KR102254912B1 (ko) 체인용 축받이부, 체인용 핀 및 체인
JP2008133906A (ja) 自動車エンジン用チェーン
JP3659963B2 (ja) 自動車エンジン用タイミングチェーン
US20040018905A1 (en) Roller chain
JP6392625B2 (ja) チェーン用軸受部、ピン、及びそれを用いたチェーン
JP2004003627A (ja) シャフト,プラネタリギヤ装置,及びカムフォロア
JP4456396B2 (ja) 硬質炭化物層の形成方法、並びにこの形成方法により得られたローラーチェーン及びサイレントチェーン
JPH10311381A (ja) チェーン用ピン
JP4218806B2 (ja) サイレントチェーン
Boßlet et al. TUFFTRIDE®–/QPQ®–process
CN108662083B (zh) 链条
JP4488840B2 (ja) 硬質窒化物層の形成方法、並びにこの形成方法により得られたローラーチェーン及びサイレントチェーン
JP6034342B2 (ja) チェーン用ピン
JP2004293586A (ja) 耐摩耗性チェーン及び耐摩耗性チェーンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081203

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090310

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090630