JP6034342B2 - チェーン用ピン - Google Patents

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Description

本発明は、サイレントチェーン、ローラチェーン等のチェーンに用いられるピンに係り、特に内燃エンジン内に配置されるチェーンのピンに用いて好適であ
一般に、サイレントチェーンは、ピンとリンクプレートの間、ローラチェーンは、ピンとブシュの間に、相対回転摺動を生じ、ピン及び嵌合部材(リンクプレート又はブシュ)が摩耗し、チェーンに摩耗伸びを生じる。特に、内燃エンジンン内に配置されるタイミングチェーン等のサイレントチェーンにあっては、摺動発熱が懸念される境界潤滑状態に近い条件下においても高い耐久性が求められている。
従来、バナジウム炭化物(VxCy)からなる表面層と、ピン母材と前記表面層との間にあって、バナジウムとクロムとの炭化物からなる境界部と、を備え、前記境界部におけるクロム含有量がピン母材から前記表面層に向って徐々に少なくなるように傾斜変化した、チェーン用ピンが案出されている(特許文献1参照)。
該チェーン用ピンは、表面層が高い面圧強度を有するバナジウム炭化物からなり、境界部に、明確に区画された界面を形成しない形でバナジウムとクロムとの炭化物を形成して、表面層とピン母材との密着強度を向上して表面層と境界面での剥離を防止し、チェーンの耐久性及び長寿命化を図っている。
特許第4401108号公報
近年の環境問題やエネルギー問題の高まりにより、内燃エンジン等にあっても持続的発展への要求が高まっており、エンジン車両の一層の燃費向上が急務になっている一方で、上記タイミングチェーンの長期信頼性の確保が重要な課題となっている。そのような次世代エンジンでは、潤滑油の低粘度化が進んだり、或いはエンジン機構の変化から潤滑油量が希薄化する場合があり、潤滑条件が混合潤滑でも境界潤滑に近づいて、チェーン潤滑環境が苛酷化する場合が多くなっており、そのようなチェーン駆動試験において、上記バナジウム炭化物を表面層としたピン(以下VCピンという)に異常摩耗を生じる場合があることを発見した。
本発明者等は、上記VCピンの異常摩耗について意研究した結果、まず、従来のエンジン内チェーンにおいて、バナジウム炭化物(VC)皮膜がクロム炭化物(CrC)、ニオブ炭化物(NbC)等の他のMC(M:Cr、Nb、V、Ti等のMetal)型硬質炭化物皮膜より高い耐摩耗性能を有するメカニズムは、
(i)VC皮膜表面において極薄く軟質な酸化皮膜が持続的に形成されることにより、ピン摺動面が鏡面化し易いため、相手(リンクプレート孔面)攻撃性が低くなる。
(ii)他のMC型炭化物皮膜より高い靱性を有し、高面圧下でも皮膜の破壊(微小剥離による面あれ)が進み難く、鏡面化した摺動面を長期に亘って維持できる。
ことにあると解析した。
そして、次世代エンジンを想定したチェーン駆動試験において、VCピンが異常摩耗する原因は、潤滑環境が苛酷になる状況では、摺動部(ピン表面及びリンクプレート孔面)の潤滑が境界潤滑状態に近づき、ピン表面が発熱して高温化し、その結果相手攻撃性の低下を促す酸化皮膜が厚く形成されてしまい、軟らかい該酸化皮膜が摩耗することによりピン自身の摩耗が増大したことに因る、と推測した。
今後、車両の一層の低燃費化等の内燃エンジンの進化に伴い、チェーンに対する要求は更に過酷になることが予測される。上述したような潤滑油の低粘度化ばかりでなく、チェーン負荷張力の増加等に由来した潤滑環境が悪化する状況でも、長期間の運転が可能な耐久性を有するチェーン用ピンが要求される。
本発明は、過酷な環境下にあっても、耐久性が維持されるチェーン用ピンを提供することを目的とするものである。
本発明は、多数のリンク(5)(8)を屈曲自在に連結するチェーン用ピン(2)において、
母材(20)と、
該母材の表面に被覆された表面層(21)と、を備え
前記表面層の少なくともその表面側は、バナジウム(V)、炭素(C)及び窒素(N)を有するバナジウム炭窒化物皮膜からなることを特徴とする。
前記皮膜(21)の硬さが、1600[Hv]以上である。
前記皮膜(21)の表面における窒素含有量が、10〜45[atom%]である。
前記表面層(21)における窒素含有量が、表面から前記母材(20)との界面に向けて徐々に低下するように傾斜変化してなる。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、チェーン用ピンの表面にバナジウム炭窒化物(VCN)皮膜を配すことにより、VCN皮膜は、バナジウム炭化物(VC)やクロム炭化物(CrC)等の他の硬質炭化物皮膜に対して高い靭性を有し、クラックの発生やそれによる皮膜欠損を減少し、該ピンの表面を長時間維持することができる。
上記VCN皮膜を有するピンは、該ピンの表面に上記VCN皮膜が形成されるので、該VCN皮膜の機能を効率的に発現することができる。例えば、該VCN皮膜の表面に酸化皮膜が形成されるが、該酸化皮膜は、上記VCN皮膜より軟かく、相手攻撃性を低く保持できるものでありながら、希薄潤滑等の過酷な環境にあっても、上記酸化皮膜が過剰に形成されることを抑えて、軸受部の摩耗の早期増大をなくして、軸受部を構成する両方の部材の摩擦を抑制して、次世代エンジン等の過酷な使用状態にあっても、チェーンの長寿命化を図ることができる可能性を発現し得る。
請求項に係る本発明によると、ピン表の皮膜の硬さが、エンジンオイルに混入される煤の硬度(800〜1500Hv)より高いので(1600Hv以上)、チェーンを、内燃エンジン内で用いられるチェーンに適用しても、ピンが煤により傷付けられて早期に摩擦することを防止することができる。
請求項に係る本発明によると、VCN皮膜の窒素(N)含有量が、10[%]未満では、バナジウム酸化皮膜の過剰形成の抑制によるピン摩耗抑制効果が充分でなく、また45[%]より多いと、VCN皮膜の硬さが充分でなく、エンジン内チェーンとしての使用の信頼性を確保できないため、10〜45[atom%]の範囲内にあって、チェーンの摩耗伸び及び信頼性を確保できる。
請求項に係る本発明によると、酸化皮膜の過剰形成の抑制によるピンの摩耗抑制効果が、表面が摩耗することにより窒素含有量が表面から徐々に減少することによりゆっくりと変化し、ピン表面の鏡面を長期に亘って保つことができ、かつ上記窒素量の急激の変化点がないので、皮膜の剥離を防止することができる。
本発明を適用し得るサイレントチェーンを示す正面図。 (a)は、ピン表面からの距離による成分比を示す図、(b)は、バナジウム炭化物(VC)皮膜と本発明に係るバナジウム炭窒化物(VCN)皮膜の表面からの窒素(N)量の変化を示す図、(c)は、ピン表面部分の模式図。 温度による酸化皮膜の厚さを示す図。 図3のA点及びB点におけるVC皮膜及びVCN皮膜表面の酸化皮膜を示す拡大写真。 各種硬質皮膜の靱性及び硬さを示す図。 各種硬質皮膜の摺動面粗さの試験時間による変化を示す図。 VC皮膜からなるピンを用いたチェーン(VCチェーン)と本発明に係るVCN皮膜からなるピンを用いたチェーン(VCNチェーン)の伸びを示す図。 VCチェーンとVCNチェーンとの軸受部構成部品の摩耗を示す図。 (a)は、窒素(N)量の変化によるチェーン伸び性能を示し、(b)は、N量変化によるピン摩耗性能を示し、(c)は、N量変化によるピン表面の硬さを示す図。 (a)は、表面層のN量の違いによる硬さ及び靱性を示し、(b)は、N量による摺動面粗さを示す図。
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。本発明を適用し得るサイレントチェーン1は、図1に示すように、ピン2により内側リンクプレート3が交互に連続されて無端状に構成されており、これら内側リンクプレート3によるリンク5の幅方向最外側にガイドリンクプレート6が配置されている。上記ピン2は、左右ガイドリンクプレート6にカシメ、しまり嵌め等により固定、連結され、該ピン2が、前記内側リンクプレート3の長手方向両端部に形成されたピン孔7,7に摺動自在に嵌合している。上記ガイドリンクプレート6及びピン2によりリンク8が構成される。
従って、上記ピン2と上記リンクプレート3のピン孔7とが互いに相対摺動し得るチェーン用軸受部9を構成する。なお、上記ガイドリンクプレート6と幅方向で整列するガイドリンク列Gは、ピン2に対して内側リンクプレート3を含めて相対回転せず、該ガイド列に隣接するノンガイド列Nの内側リンクプレート3がピン2に対して相対回転して、サイレントチェーン1は、自由に屈曲し得るが、通常、ガイドリンク列G及びノンガイド列Nの内側リンクプレート3は同じものが用いられ、内側リンクプレート3を嵌合部材としてピン2との間で上記チェーン用軸受部9が構成される。
内側リンクプレート3は、左右1対のピン孔7,7とピン孔の中心を結ぶ線(ピッチライン)の内径側に1対の歯10,10とを有する。該歯10は、その間のクロッチ11部側に内側フランク面12,12が形成され、各歯の外側に外側フランク面13,13が形成されている。上記歯10は、スプロケットの歯に内側フランク面12及び外側フランク面13が接合する噛合機構、例えば外側フランク面13がスプロケット歯に接合して噛合を進行した後、内側フランク面12がスプロケット歯に着座する(外股当り、内股着座)。
前記チェーン用軸受部9を構成する一方の部材であるピン2に、所定厚さ(例えば略々6〜12μm)のバナジウム炭窒化物(以下VCNという)皮膜からなる表面層が形成される。該表面層は、ピン母材の表面にバナジウム炭化物(VC)皮膜を形成する工程(バナジウム浸透拡散処理)と、上記ピン母材の表面に窒素(N)を浸透する工程(窒化処理)とにより、上記VCN皮膜が形成される。
具体的には、ピン母材は、鋼材、例えば高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)、クロムモリブデン鋼(SCM)等の線材が用いられ、該線材が所定長さに切断される。該ピン母材は、まず、粉末パック法によるバナジウム浸透拡散処理(VC複合拡散浸透処理)が行われる。即ち、浸透材となるFV(フェロバナジウム)、焼結防止材としてのAl(アルミナ、酸化アルミニウム)、添加材(促進材)としてのNHCl(塩化アンモニウム)からなる粉末がピン母材と共に炉内に入れられ、900℃〜1100℃に昇温され、所定時間保持された後、除冷される。これにより、ピン母材の表面に所定厚さのバナジウム炭化物(VC)皮膜が形成される。
ついで、上記VC皮膜が形成されたピン素材を、窒素雰囲気中で数時間加熱する窒化処理が行われる。即ち、上記炉内に、Nガスを送って、1000℃以上の高温で数時間加熱した後、除冷される。これにより、図2(c)に示すように、鉄Feを主体としたピン母材20の表面の上記VC皮膜に窒素Nが拡散浸透することにより結合してVCxNyからなるバナジウム炭窒化物(VCN)を有する皮膜の表面層21が形成され、かつ窒素Nの含有量(比率)は、表面から母材の界面に向って徐々に低下するように傾斜変化している。該VCN皮膜からなる表面層21の極表面には、極く薄いバナジウム酸化(VO)皮膜22が形成されている。
図2(a)に示すように、ピン母材20は、鉄(Fe)が主成分であり、該ピン母材の表面にVCN皮膜が形成され、該皮膜は、略々その全厚さに亘って略々同じ含有率のバナジウム(V)と、表面から母材界面に向って徐々に増える炭素(C)と、表面から母材界面に向って徐々に減少する窒素(N)を含有する。また、図2(b)に示すように、VCN皮膜は、窒素(N)量が表面では多く含有しているが、ピン母材界面に向って徐々に減少する。なお、バナジウム炭化物(VC)皮膜からなるピンは、窒素(N)量が略々0である。
チェーン用ピン(一方の部材)2は、軸受部9を構成する相手側部材(他方の部材)である内側リンクプレート3のピン孔7に対して相対摺動を繰り返しながら、VCN皮膜極表面の酸化(VO)皮膜22が摺動摩耗している。該酸化(VO)皮膜22は、表面層21のVCN皮膜より軟らかく、従ってピン孔(相手側部材)に対する攻撃性が低く、かつ摺接すると鏡面となってピン自体及びピン孔の摩耗を抑制する。
図3は、タイミングチェーン等のチェーン軸受部の温度に対する上記酸化皮膜の厚さを示す図である。上記酸化皮膜は、表面層がVC皮膜でも形成され、該酸化(VO)皮膜がチェーンの耐久性に大きく影響を及ぼすことを本発明者等は発見し、更に潤滑環境が十分でない状態では、従来のVC皮膜にあっては、上記酸化皮膜が過剰に形成されて、それが該VCピンの摩耗の増大に繋がることを突き止めた。内燃エンジンは、一層の燃費向上が求められており、摺動部材のフリクション低減を目的として潤滑油の剪断抵抗を減少するため、粘度の低い潤滑油が開発され、このように次世代エンジンを想定した場合、エンジン内の潤滑自体の環境は悪化して、チェーン軸受部の温度は高くなる傾向となる。
図4は、図3のA点、即ち温度が低い(従来のエンジン内環境)と、B点、即ち温度の高い(次世代エンジン内環境)において、従来タイプのVCピンと、本発明によるVCNピン表面の酸化(VO)皮膜を撮影した写真(透過型電子顕微鏡TEM像)である。なお、図4は、元画像を同じ倍率になるようにサイズを調整したものである。チェーン用軸受部の温度が低いA点においては、従来タイプのVCピンの酸化皮膜も本発明によるVCNピンの酸化皮膜も、略々同じ厚さ(約2nm)である。潤滑環境が悪くなって軸受部の温度が局部的に高くなるB点において、VCピンは、酸化皮膜が大幅に厚くなるが(例えば10倍を越える厚さ)、本発明に係るVCNピンは、酸化皮膜の厚さの変化は少ない(例えば2倍を越えることはない)。図3は、上記図4に示すVCピン及びVCNピンの複数の温度における酸化皮膜の層厚を測定した結果から導き出されたもので、VCピンにおける酸化皮膜の厚さは、温度が高くなる程急激に厚くなるが、VCNピンにおける酸化皮膜厚さは、VCピンに比して温度に対して大幅に変化が小さい。これは、VCに比してVCNの方が酸素との結合(酸化)が抑制され、VCNは耐酸化性が高いため、酸化物の過剰形成が抑制されるものと推測する。
図5は、各硬質部材による皮膜の靱性と硬さとの関係を示す。なお、靱性は、ナノインデンテーション法で算出されるクリープをパラメータとして定義しており、従って単位はパーセント[%]である。例えばビッカース試験によるダイヤモンド圧子負荷に伴う皮膜の破壊モデルを考えると、クリープが大きい程クラックが少なく、これは、皮膜靱性が高い程、軸受荷重が大きくなっても、皮膜耐力が高いことを意味する。図5において、硬さは、TiCが高く、CrCが低く、VCN及びVCは、その中間にあり、かつ靱性は高いが、特にVCNは、VCに比して靱性が高いことを示している。従って、VCNピンは、他の材料CrC,TiCだけでなく,従来摩耗性能に優れたVCピンに比しても靱性が高く、皮膜のミクロ的な破壊、即ち摺動面のあれが進みにくく、摺動相手材への攻撃性が低く、摩耗性能が優れている。
図6は、各硬質皮膜(TiC,CrC,VC,VCN)のピンに所定荷重を負荷した状態での試験時間に対する摺動面粗さの変化を示す。なお、粗さは十点平均粗さRzjisを用いており、単位は[μm]である。図6から、VC及びVCN皮膜が、他の硬質皮膜(TiC,CrC)に比して、上述した酸化皮膜の形成により摺動面粗さが低いが、特にVCN皮膜は、VC皮膜に対しても、長時間に亘って摺動面粗さを低く維持することが解る。図5及び図6に示すように、VCNピンは、他の硬質皮膜(TiC,CrC)だけでなく、VCピンに比しても摺動特性に優れ、摩耗性能が向上していることが解る。
図7は、次世代エンジンを想定した潤滑環境の悪い状態でのチェーンの摩耗伸び試験結果を示した図である。該環境にあっては、潤滑不良により軸受部に局部発熱を生じ、また面圧が増大し、その結果、従来のVCピンを用いたチェーンは、所定駆動時間でチェーン伸び率が急速に増大する。本発明に係るVCNピンを用いたチェーンは、全試験駆動時間に亘って略々一定のチェーン摩耗伸びを維持している。
図8は、VCピンを用いたチェーンとVCNピンを用いたチェーンによる部品摩耗を示し、白抜き部分は相手方である内側リンクプレートのピン孔の摩耗量、ハッチング部分はピン自体の摩耗量、黒丸は、ピン孔とピンとの摩耗比率を示す。VC皮膜は、希薄潤滑による高温環境下にあっては、図3及び図4に示すように、酸化(VO)皮膜が過剰に成長し、該軟かくかつ厚い酸化皮膜は表面から剥離し易く、ピン自体の早期摩耗の原因となるが、VCN皮膜は、局部発熱により高温状態になっても、酸化(VO)皮膜が過剰に成長して過度に肉厚になることはなく、所定厚さに維持される酸化皮膜は、相手側であるピン孔との間に軟かくかつ鏡面からなる摺接面を保持しつつ、剥離又は欠損が少なく、ピン自体が早期に摩耗することはない。これにより、図8のピン摩耗に示すように、VCNピンは、VCピンに比して摩耗量が少ない。
VCN皮膜は、VC皮膜に比して、図5に示すように靭性が高く、かつ図6に示すように摺動面粗さが低い。これにより、比較的高い面圧が軸受摺動面に作用しても、ピン表面層21は、面粗度の低い鏡面に保持され、上記比較的薄い酸化皮膜22の介在と相俟って、軸受相手部材であるピン孔に対する攻撃性が低く、内側リンクプレートのピン孔の摩耗量は、VCピンを用いたチェーンに比して低い。従って、チェーン摩耗伸びの原因となるピン摩耗量及びピン孔摩耗量は、VCピンに対してVCNピンを用いたチェーンが共に低く、VCNピンを用いたチェーンは、VCピンを用いたチェーンに比してチェーン摩耗伸びが小さい。
上述したように、ピン表面の酸化皮膜厚さは、VCピンに比してVCNピンは大幅に薄いので、共に減少しているピン摩耗量及びピン孔摩耗量であっても、高温環境下にあってはピン摩耗量の減少が著しいので、ピン摩耗比率は、VCNチェーンがVCチェーンに比して低い。
ついで、VCN皮膜からなるピン表面層21の表面における窒素(N)比率について説明する。Nは、窒化処理によりピン表面から浸透するので、ピン表面層21の表面が最も含有量(比率)が高く、図2(b)に示すように、母材界面に向って徐々に減少する。チェーンの伸び性能は、図9(a)に示すように、N量が10[atom%]以上において、その比率が増加するに従って高くなり、30[atom%]を越える辺りで飽和し、45[atom%]以上では低下する。ピン摩耗性能は、図9(b)に示すように、N量が10[atom%]以上ではその比率が増加するに従って高くなり、30[atom%]を越える辺りで飽和し、45[atom%]以上では低下する。ピン表面層21の表面硬度(ビッカース硬度Hv0.1)は、図9(c)に示すように、N量比率が大きくなる程低くなる。エンジンオイルに混入する煤の硬さは、800〜1500Hvであり、煤による皮膜表面の傷を考慮すると、ピン表面での硬さは、1600[Hv0.1]以上が好ましい。以上を考慮すると、ピン表面層表面の窒素(N)の比率は、10[atom%]以下では、ピン摩耗抑制効果が十分ではなく、45[atom%]以上では、内燃エンジン内で発生する煤より硬さが低くなる可能性があり、該煤によるピン摩耗の増加が懸念されるので、10〜45[atom%]の範囲が好適である。
図10は、N量の摺動面に対する影響を示す。表面層の皮膜靭性は、図10(a)に示すように、N量が多い程高い。また、摺動面粗さは、図10(b)に示すように、N量が多い程小さい。従って、ピン表面の摩耗を考慮した場合、所定量以下の範囲にあっては、N量比率が多い程好ましい。
本発明に係るVCN皮膜からなるピンは、摩耗量はVCピンに比して少ないが、使用により徐々に摩耗する。ピン表面層21におけるN量は、表面から母材界面に向って徐々に減少するため、酸化皮膜の過剰形成の抑制効果も徐々に減少するが、該減少はゆっくりと変化するため、ピン摺動面の鏡面を長期に亘って保つことができ、かつ上記N量の急激な変化点がないので、VCN皮膜の欠損及び剥離を防止できる。
上記実施の形態は、VCN皮膜からなる表面層をサイレントチェーンのピンに形成したが、これに限らず、例えば、サイレントチェーンのピンに加えて内側リンクプレート、特にそのピン孔に表面層を形成してもよい。本VCN皮膜からなるピンは、あらゆるチェーン用ピンに適用可能である。また、サイレントチェーンに限らず、軸受部の一方の部材を構成するピンを有する第1のリンクと、軸受部の他方の部材を構成する嵌合部材を有する第2のリンクとを、上記軸受部により無端状に連結したチェーンに適用可能である。例えば、サイレントチェーンの場合、第1のリンクがガイドリンクプレートを有し、第2のリンクが内側リンクプレートを有する。また、ローラチェーンの場合、軸受部は、一方の部材であるピンと該ピンを嵌合する嵌合部材を構成する他方の部材であるブシュとからなり、第1のリンクがアウタリンクプレートを有し、第2のリンクがインナリンクプレートを有する。
本発明は、内燃エンジン内において、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するタイミングチェーンに用いて好適であるが、これに限らず、カム、バランサ、オイルポンプの駆動を含む内燃エンジン内チェーンに適用してもよく、さらにエンジン内以外のチェーンに適用することも可能である。
また、上記実施の形態は、VCN皮膜の形成方法として、VC皮膜形成後に1000℃以上で窒化処理したが、これに限らず、低温条件やアンモニア雰囲気でもVCN皮膜の形成が可能である。また、VC皮膜の形成と窒化処理とを同時に行ってもよい。
1 (サイレント)チェーン
2 ピン(一方の部材)
3,7 他方の部材(嵌合部材、内側リンクプレート、ピン孔)
,8 リンク
20 (ピン)母材
21 バナジウム炭窒化物皮膜(表面層
22 酸化皮膜

Claims (3)

  1. 多数のリンクを屈曲自在に連結するチェーン用ピンにおいて、
    母材と、
    該母材の表面に被覆された表面層と、を備え
    前記表面層の少なくともその表面側は、バナジウム、炭素及び窒素を有するバナジウム炭窒化物皮膜からなり、
    前記表面層における窒素含有量が、表面から前記母材との界面に向けて徐々に低下するように傾斜変化してなる、
    ことを特徴とするチェーン用ピン。
  2. 前記皮膜の硬さが、1600[Hv]以上である、
    請求項1記載のチェーン用ピン。
  3. 前記皮膜の表面における窒素含有量が、10〜45[atom%]である、
    請求項1又は2記載のチェーン用ピン。
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