JP2008133201A - 高脂血症の予防又は治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ネフローゼ症候群又は慢性腎不全の患者に高い頻度で発症する高脂血症をいかに安全に且つ効果的に抑制するかが臨床上の課題であった。
【解決手段】トロンビンの血液凝固活性を阻害するアンチトロンビン-IIIを5〜2000単位/kg体重/日投与することにより、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症を安全且つ効果的に抑制することができる。
【選択図】なし
【解決手段】トロンビンの血液凝固活性を阻害するアンチトロンビン-IIIを5〜2000単位/kg体重/日投与することにより、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症を安全且つ効果的に抑制することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、アンチトロンビン-IIIを有効成分として含有する高脂血症の予防又は治療剤に関するものであり、特に、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全の合併症である高脂血症の予防又は治療剤に関する。
アンチトロンビン-IIIは、血漿中に存在するα2グロブリンに属する分子量約59,000の糖蛋白質で、肝臓および血管内皮細胞(EC)で産生される。このアンチトロンビン-IIIは、血液凝固系における重要な凝固制御因子で、セリンプロテアーゼ阻害活性により、トロンビンをはじめ、活性型第 IX、XおよびXI因子等を不活化し、血液凝固反応を制御する。アンチトロンビン-IIIは、単独でも血液凝固反応を阻害するが、ヘパリンなどのグリコサミノグリカン(GAGs)と結合することにより、その阻害速度が約1000倍に促進される。生体内でGAGsは、EC表面に存在し、アンチトロンビン-IIIはEC表面で凝固系を制御していると考えられている。血中でのアンチトロンビン-III活性の低下は、血液凝固亢進に伴う血栓傾向の予測、とりわけ、播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断情報として重要度が高く、アンチトロンビン-IIIは先天性アンチトロンビン-III欠乏に基づく血栓形成傾向およびアンチトロンビン-III低下に伴うDICの治療薬として使用されている。
また、ネフローゼ症候群では、大量の尿蛋白排泄に伴う低蛋白血症、低アルブミン血症のために、肝細胞でのアルブミンをはじめとしたリポ蛋白などの各種蛋白合成亢進が見られ、その結果として、血栓傾向に加え、高脂血症が惹起される。ネフローゼ症候群の高脂血症に対する治療として、胆汁酸レジン、ニコチン酸製剤およびスタチン系薬剤が使用されている。
胆汁酸レジンは、腸管再循環する胆汁酸と結合して外因性のコレステロールの阻害と、その結果としての肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化が亢進し、血中コレステロールを低下させるが、逆に中性脂肪を上昇させる欠点がある。ニコチン酸製剤は、消化管からのコレステロールおよび中性脂肪の吸収を抑制するが、そのためには1日5gという大量を服用しなければならないためコンプライアンスの面と副作用として発疹等の過敏症が問題となることがある。
スタチン系薬剤は、コレステロール合成の律速酵素である HMG-CoA 還元酵素を特異的かつ競合的に阻害し、主に肝におけるコレステロール合成を抑制し、肝の LDL 受容体活性が増強し、血中からの LDL の取り込みを増加させ、血中 LDL 濃度を低下させるが、副作用として、横紋筋融解症の報告があるのでその使用にあたっては注意が必要である。また、スタチン剤に抵抗性を示す症例が約1割近くあることも知られており、使用後1年以上経過すると、血清脂質値が再上昇するエスケープ現象を呈することがある。
また高脂血症の治療剤であるフィブラート系は発疹が出現しやすく、肝障害やショック症状などが見られ、特にネフローゼ症候群では使用禁忌とされている。
さらにこれらの治療薬は、ネフローゼ症候群で発症率の高い血栓症を改善する効果がみられず、ネフローゼ症候群の血栓症改善を目的として、ヘパリンなどの併用投与が必須であった。
また、ヘパリンは血栓症改善には効果は認められるものの、高脂血症に対して効果はみられず、ネフローゼ症候群の高脂血症の治療としての使用はできなかった(非特許文献1)。
さらにこれらの治療薬は、ネフローゼ症候群で発症率の高い血栓症を改善する効果がみられず、ネフローゼ症候群の血栓症改善を目的として、ヘパリンなどの併用投与が必須であった。
また、ヘパリンは血栓症改善には効果は認められるものの、高脂血症に対して効果はみられず、ネフローゼ症候群の高脂血症の治療としての使用はできなかった(非特許文献1)。
このような状況の下、特にこれらのネフローゼ症候群又は慢性腎不全を起因とする高脂血症をいかに安全に且つ効果的に抑制するかが臨床上の課題として重要視されるに到った。
Pathology Research and Practice 202 (2006) 157-163(Dos Santos AM et al,)
Pathology Research and Practice 202 (2006) 157-163(Dos Santos AM et al,)
本発明は、ネフローゼ症候群や慢性腎不全で発症する血栓症の改善のみならず、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全の合併症である高脂血症疾患をも安全に且つ効果的に予防又は治療することを可能としたアンチトロンビン-III製剤を提供することを目的としている。
発明者らは、通常生体内に存在するアンチトロンビン-IIIの生理活性の研究に長年従事してきたが、この程偶然にもアンチトロンビン-IIIがコレステロール値及び/又はトリグリセライド値を低減させる効果を持つことを見つけた。
その結果、アンチトロンビン-IIIが血栓症の改善だけではなく、高脂血症を抑制することができることを突き止め、安全且つ効果的な高脂血症疾患の予防・治療薬として用いられることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)アンチトロンビン-IIIを有効成分として含有する高脂血症疾患の予防又は治療剤、
(2)高脂血症が、高コレステロール血症及び/又は高トリグリセライド血症である(1)記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、
(3)高脂血症がネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症である(1)記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、
(4)アンチトロンビン-IIIを5〜2000単位/kg体重/日投与するための(1)〜(3)の何れかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、および
(5)アンチトロンビン-IIIが、開裂したアンチトロンビン-IIIを実質的に含有しないアンチトロンビン-IIIである(1)〜(4)のいずれかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤
である。
すなわち本発明は、
(1)アンチトロンビン-IIIを有効成分として含有する高脂血症疾患の予防又は治療剤、
(2)高脂血症が、高コレステロール血症及び/又は高トリグリセライド血症である(1)記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、
(3)高脂血症がネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症である(1)記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、
(4)アンチトロンビン-IIIを5〜2000単位/kg体重/日投与するための(1)〜(3)の何れかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤、および
(5)アンチトロンビン-IIIが、開裂したアンチトロンビン-IIIを実質的に含有しないアンチトロンビン-IIIである(1)〜(4)のいずれかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤
である。
本発明に用いるアンチトロンビン-IIIは、ヒトの血漿あるいは遺伝子組み換え技術によって発現した産物を含む原液から、例えばゲル電気泳動で単一バンドを示す程度に精製されたものであればよく、精製法や原材料を限定するものではない。
本発明に使用する好ましいアンチトロンビン-IIIの製法は、例えば特開2001-31698に詳しく記載されているが、その概要を以下に述べる。
まず、本発明の原料として用いられるアンチトロンビン-III含有液は、ヒトAT−IIIを含有するヒト血漿または誘導ヒト血漿画分であり、それらとしては、たとえばヒト血漿コーン低温エタノール分画法で得られる上清I,上清II+III,画分IV−1、クエン酸含有血漿から血液凝固第VIII因子を回収した後の残渣画分等ヒト血漿から誘導された画分が挙げられる。これらの中で上清Iは特に好適な原料である。
本発明においては、このヒトAT−IIIを含有するヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を、13℃以下、好ましくは0〜10℃で、固定化ヘパリンを用いる精製法、つまりヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーに付す。この工程自体は公知であり、本発明において好適に用いられる吸着支持体は、たとえばヘパリンがセルロース、アガロース等の不溶性担体に共有結合したものである。この工程により大部分の夾雑物を除去することができる。
得られたAT−IIIを含む溶液は、必要により自体公知の限外濾過に付し、さらに必要により強陰イオン交換体による吸脱着処理工程に付される。これらの工程も13℃以下、好ましくは0〜10℃で行われる。使用される強陰イオン交換体としては、その解離度(pKa)が通常10.3以上、好ましくは10.5以上のものである。その構造的特徴として、4級アミノ基を有するもの、特にトリアルキルアミノアルキル基を有するものが好適に使用される。強陰イオン交換体の具体例としては、たとえばトリメチルアミノメチル基、ジエチルヒドロキシプロピルアミノエチル基などのトリアルキルアミノアルキル基を有するものが挙げられる。これらの中でもトリメチルアミノメチル基を有するものが特に好ましい。
これらの官能基を有する不溶性担体としては、たとえばセルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、アミノ酸共重合体、ポリビニル共重合体、ポリスチレン共重合体などが挙げられる。AT−III含有液と強陰イオン交換体との接触条件はpH6〜8程度、塩濃度0〜0.5M程度が好ましく、このような条件を具有する溶媒としては、たとえば0.05M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH6.5〜7.5)等が挙げられる。また、溶出条件はpH6〜8程度、塩濃度0.1〜0.5M程度のものがよく、具体的には、溶媒として0.17M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7)などが挙げられる。
AT−III含有水溶液と不溶性担体との接触方法はカラム法、バッチ法のいずれでもよい。バッチ法にて行う場合、上記接触条件に調製したAT−III含有水溶液を、同じ条件で平衡化した当該強陰イオン交換体に接触させる。その条件としては、該交換体1mlに対して該水溶液1〜100mlを用い、30分〜2時間程度混和した後に遠心分離して、該交換体を回収する。さらに、該交換体に上記溶出用溶媒を添加する。 混和条件は接触時と同じであるが、遠心分離して上澄を回収する。
一方、カラム法で行う場合、上記の接触条件に調製したAT−III含有水溶液を、同じ条件で平衡化し、且つカラムに充填された当該強陰イオン交換体に通し、非吸着画分を廃棄する。必要に応じてカラムを洗浄した後、溶出用溶媒を流して溶出画分を回収する。
この工程により、ヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーによっても除去しきれなかった、ヘパリンと親和性を有する夾雑物および混在する可能性のある各種ウイルスが実質的に除去される。この後、必要により再度前述の固定化ヘパリンを用いる精製工程に付してもよい。このようにして得られた精製AT−IIIを含む水溶液は水分含量が5%以下、望ましくは3%以下となるよう乾燥される。この乾燥工程においても、処理温度はなるべく低い方が好ましく、通常の凍結乾燥によりこの条件は満たされる。乾燥された組成物の形状は、粉末状、ケーキ状または他のいずれの形態でもよい。
得られた乾燥AT−IIIは、乾燥状態のままウイルスが不活化されるまで加熱される。加熱温度は50〜80℃、好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは60〜70℃であり、加熱時間は24〜120時間、好ましくは72〜108時間、さらに好ましくは84〜100時間程度である。加熱時の雰囲気としては通常大気圧の空気が用いられるが、必要により減圧空気、窒素その他の不活性ガス中で行っても差し支えない。また加熱時のAT−IIIの熱変性を極力防止する目的で糖、糖アルコール、各種アミノ酸、有機酸塩類、及び無機酸塩類等を溶液中に添加しておき、それを乾燥して加熱処理に付してもよい。加熱はどのような手段でもよいが、オーブン、赤外線照射、砂浴または水浴などの手段が適宜使用される。
この加熱工程の操作によりウイルスは不活性化され、しかも液状加熱の場合と違って開裂したAT−IIIが実質的に含まれていない精製AT−IIIが得られる。ここに活性ウイルスを実質的に含有しないAT−IIIとは、ウイルスの不活化処理によりウイルスが培養不可能なレベルにまで減少したAT−IIIを意味し、この状態に至ったAT−IIIはヒトに投与してもウイルス感染の恐れはない。また開裂したAT−IIIを実質的に含まないAT−IIIとは、特開2001-31698記載の方法によりN末端部分アミノ酸配列分析の結果、開裂したAT−IIIの認められないことを意味する。なお、こうした精製工程中にウイルス除去膜処理等を施すことで、より安全な製剤を提供することができる。
製剤としては、水溶液、懸濁剤、凍結乾燥製剤等が挙げられ、これらの製剤化は、医薬上許容される添加剤(希釈剤、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤等)を適宜混合し、製剤上の常套手段により行うことができる。また、該製剤は静脈注射等の注射剤として用いられ、凍結乾燥製剤は用時に注射用蒸留水等の溶解液に溶解して用いられる。
このような一連の操作によって得られたアンチトロンビン-IIIは開裂したアンチトロンビン-IIIを実質的に含まず、さらにウイルスや夾雑物を殆ど含まず、AT-III活性が、450〜700IU/バイアルと非常に高い値を示す。必要により塩、アミノ酸、有機酸、糖アルコール、アルブミンなどのタンパク質、ポリオールなどの好適な安定化剤と共に保存することが可能である。
本発明の薬剤の投与経路は、経口、非経口と特に制限はないが、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射等の非経口投与が好ましく、特に静脈注射が好ましい。注射剤とするには、常法に従い、精製されたアンチトロンビン-IIIの一定量を無菌条件下に注射用蒸留水に溶解すればよいが、その際、緩衝剤、等張化剤、安定剤などを適量配合するのが良い。具体例としては、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、L−グルタミン酸などが好適に用いられる。
本発明の薬剤の投与量は、アンチトロンビン-IIIとして5〜2000IU/kg、好ましくは10〜100IU/kg、特に好ましくは20〜60IU/kgを1日、一回から数回、一日から数日間連日静脈内投与することが標準であるが、症状、年齢、性別、体重等に応じて投与量を適宜増減すればよい。特に本発明の薬剤はネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症疾患に使用することが好ましい。
本発明のアンチトロンビン-III含有高脂血症予防・治療剤は、特にネフローゼ症候群や慢性腎不全で発症する血栓症の改善だけでなく、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全の合併症である高脂血症疾患を副作用がなく安全に且つ効果的に予防又は治療することができる。
以下に実施例及び実験例をあげて本発明を具体的に説明する。
1)アンチトロンビン-IIIの調製法について
コーン低温エタノール分画の上清I約17.5リットルをDEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着画分をプールとして集めた。0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲル約370mlを充填したカラムに前述のプール画分を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。次いで、ヘパリン−セファロースゲルから溶出したAT−III画分を限外濾過装置(フィルトロン社製 ポアサイズ10K)により、5〜10℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約200mlになるまで濃縮した。前記画分を0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で約1.0リットルに希釈した。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア社製、トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約340mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、同温度条件下で0.01Mリン酸緩衝液、0.12M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を6.0リットル送液して洗浄した後、0.01Mのリン酸緩衝液、0.17M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を3.0リットル送液しAT−IIIを溶出した。この溶出画分をさらに精製するため、再度ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち0.02Mのリン酸緩衝液、pH7.3で予め平衡化したヘパリン−セファロースゲル約370mlを充填したカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。
コーン低温エタノール分画の上清I約17.5リットルをDEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着画分をプールとして集めた。0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲル約370mlを充填したカラムに前述のプール画分を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。次いで、ヘパリン−セファロースゲルから溶出したAT−III画分を限外濾過装置(フィルトロン社製 ポアサイズ10K)により、5〜10℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約200mlになるまで濃縮した。前記画分を0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で約1.0リットルに希釈した。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア社製、トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約340mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、同温度条件下で0.01Mリン酸緩衝液、0.12M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を6.0リットル送液して洗浄した後、0.01Mのリン酸緩衝液、0.17M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を3.0リットル送液しAT−IIIを溶出した。この溶出画分をさらに精製するため、再度ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち0.02Mのリン酸緩衝液、pH7.3で予め平衡化したヘパリン−セファロースゲル約370mlを充填したカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。
次いで、ヘパリン−セファロースゲルから溶出した溶液を前述のものと同一の限外濾過装置を用い、10℃以下で濃縮・緩衝液交換を行った。交換緩衝液として、0.02Mクエン酸緩衝液、0.07M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を用い、280nmの吸光度にて10になるよう希釈・調整した。その後前記のAT−III溶液の凍結乾燥を行った。得られた乾燥品を品温66±1℃で96時間加熱処理を行った。本粉末を注射用水で溶解後、L−グルタミン酸ナトリウム10mg/mlとなるよう調製し、ウイルス除去膜(旭化成製、プラノバ35N)処理を実施し、凍結乾燥して、本発明の精製AT−III製剤Aを得た。
得られた精製アンチトロンビン−IIIの性状は、:特願2001-31698の記載と同様の方法で行った。
タンパク質含量:108mg/mL
AT−III活性:606IU/バイアル
比活性:5.6IU/mg
タンパク質含量:108mg/mL
AT−III活性:606IU/バイアル
比活性:5.6IU/mg
AT-IIIによる高脂血症抑制効果の測定
(1)動物実験
10週齢の雌性Wistar系ラットに、ピューロマイシン(PAN)50mg/kgを静脈内に単回投与し、ネフローゼモデルラットを12匹作製した。
上記の方法で調製されたAT−IIIを上記ネフローゼモデルラット6匹に、PAN投与日から10日間、500IU/kg/dayで静脈内投与を行った(AT群)。
また、AT−IIIを投与しなかったネフローゼモデルラット6匹(対照群)および正常ラット6匹(正常群)を比較例とした。
(1)動物実験
10週齢の雌性Wistar系ラットに、ピューロマイシン(PAN)50mg/kgを静脈内に単回投与し、ネフローゼモデルラットを12匹作製した。
上記の方法で調製されたAT−IIIを上記ネフローゼモデルラット6匹に、PAN投与日から10日間、500IU/kg/dayで静脈内投与を行った(AT群)。
また、AT−IIIを投与しなかったネフローゼモデルラット6匹(対照群)および正常ラット6匹(正常群)を比較例とした。
(2)試験例1
高脂血症抑制効果
薬剤投与日から10日後に、中性脂肪(TG)、総コレステロール(T-Cho)、超低比重リポ蛋白コレステロール(VLDL-Cho)、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-Cho)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-Cho)を測定し、それぞれ平均値±標準誤差を算出した。測定結果を表1に示した。
高脂血症抑制効果
薬剤投与日から10日後に、中性脂肪(TG)、総コレステロール(T-Cho)、超低比重リポ蛋白コレステロール(VLDL-Cho)、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-Cho)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-Cho)を測定し、それぞれ平均値±標準誤差を算出した。測定結果を表1に示した。
(3)試験例2
血栓症抑制効果
薬剤投与日から10日後に、血小板数(PLT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン濃度(Fib)およびAT activityで評価を実施し、平均値±標準誤差を算出した。評価結果を表2に示した。
血栓症抑制効果
薬剤投与日から10日後に、血小板数(PLT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン濃度(Fib)およびAT activityで評価を実施し、平均値±標準誤差を算出した。評価結果を表2に示した。
本発明のアンチトロンビン-III含有高脂血症予防・治療剤は、特にネフローゼ症候群や慢性腎不全で発症する血栓症の改善だけでなく、ネフローゼ症候群又は慢性腎不全の合併症である高脂血症疾患を副作用がなく安全且つ効果的に予防又は治療することができるので、高脂血症を伴うまたはその可能性のあるネフローゼ症候群や慢性腎不全を患う患者に投与して病気の予防・治療に役立てることができる。
Claims (5)
- アンチトロンビン-IIIを有効成分として含有する高脂血症疾患の予防又は治療剤。
- 高脂血症が、高コレステロール血症及び/又は高トリグリセライド血症である請求項1記載の高脂血症疾患予防又は治療剤。
- 高脂血症がネフローゼ症候群又は慢性腎不全に起因する高脂血症である請求項1記載の高脂血症疾患予防又は治療剤。
- アンチトロンビン-IIIを5〜2000単位/kg体重/日投与するための請求項1〜3の何れかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤。
- アンチトロンビン-IIIが、開裂したアンチトロンビン-IIIを実質的に含有しないアンチトロンビン-IIIである請求項1〜4のいずれかに記載の高脂血症疾患予防又は治療剤。
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