JP2008130781A - 磁石,磁石を用いたモータ、及び磁石の製造方法 - Google Patents

磁石,磁石を用いたモータ、及び磁石の製造方法 Download PDF

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Takashi Yasuhara
隆 安原
Yutaka Matsunobu
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Abstract

【課題】
希土類ボンド磁石の磁気特性の向上かつ低コスト化を両立し、モータ設計の自由度を向上した磁石成形体を提供することにある。
【解決手段】
第1の磁性粉を有する第1の磁石成形体と、前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を有する第2の磁石成形体と、を積層してなり、前記第1及び第2の磁石成形体は、磁粉と、前記磁粉を結着する酸化物ガラス質からなるバインダーと、を有する積層磁石の構成、またこの積層磁石を用いたモータの構成をとる。
【選択図】図1

Description

本発明は積層磁石,積層磁石を用いたモータ、及び積層磁石の製造方法の構成に関する。
永久磁石は近年著しくその性能が向上している。多く使用されている永久磁石は磁石材料を焼結して製造した焼結磁石である。この焼結磁石は、磁石としての性能が優れているが、生産性に関し課題が多い。
焼結磁石と共に磁石材料を樹脂で固める磁石が研究されている。この磁石は、熱硬化性エポキシ樹脂で磁石材料を接着することで機械的強度を得るものである。しかし、エポキシ樹脂を使用した磁石は、現状では、磁気特性がかなり悪くなる課題があり、十分な磁気特性が得られていない。
一方、磁粉を結着材で結着した磁石の構造については下記特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1には希土類磁石の粉末粒子をSiO2 および/又はAl23粒子で結着した磁石が記載されており、また特許文献2には酸化物磁性粉の微小粒子が分散分布した酸化物ガラス質が充填された無機ボンド磁石が記載されている。
特開平10−321427号公報 特開平8−115809号公報
圧粉磁石をモータに適用する場合、モータ内の配置により、磁石に求められる特性は微妙に異なる。1の磁石内であっても、例えば回転子の外側・内側の配置の違いにより、理想的な磁石の特性は異なる。こうした事情から、特性の異なる多数の磁石成形体を積層して1のブロック磁石を構成することが望まれる。
上記特許文献1,2では、磁粉及び結着材の構成に着目しているのみであり、積層された磁石の構造については開示されていない。
本発明の目的は、1のブロック磁石内で特性の異なる磁石の積層構造を形成し、モータ設計の自由度を向上した磁石を提供することにある。更に、この磁石を用いたモータの構成、及び磁石の製造方法を提示することにある。
上記課題を解決するために、本発明の1の構成として、第1の磁性粉を有する第1の磁石成形体と、前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を有する第2の磁石成形体と、を積層してなり、前記第1及び第2の磁石成形体は、磁性粉と、前記磁性粉を結着する酸化物ガラス質からなるバインダーと、を有する積層磁石の構成をとる。
また、前記第1及び第2の磁性粉は、希土類元素を少なくとも1種以上含む磁性粉である積層磁石の構成をとる。また、前記第1の磁性粉は前記第2の磁性粉に比べ保磁力が高く、前記第2の磁性粉は前記第1の磁性粉に比べ残留磁束密度が高い積層磁石の構成をとる。また、前記第1の磁性粉は保磁力が10kOe以上30kOe以下であり、前記第2の磁性粉は残留磁束密度が0.7T以上1.4T以下である積層磁石の構成をとる。また、前記酸化物ガラス質からなるバインダーは、SiO2 で形成されたバインダーである積層磁石の構成をとる。また、前記SiO2 は非晶質の連続膜を形成する積層磁石の構成をとる。また、前記第1及び第2の磁石成形体は、前記磁性粉と前記バインダーとの間に絶縁膜を有する積層磁石の構成をとる。また、前記絶縁膜はフッ化物で形成される積層磁石の構成をとる。
更に、これらの磁石を、複数のティースを有する固定子鉄心と、前記複数のティース間のスロットに配置する巻線と、前記固定子鉄心内のシャフト孔に配置する回転子と、前記回転子に内蔵させた複数の積層磁石と、を有するモータに適用した構成をとる。
また、積層磁石の製造方法としては、第1の磁性粉を圧縮成形し第1の磁石成形体を成形する工程と、前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を圧縮成形し、前記第1の磁石成形体上に第2の磁石成形体を成形する工程と、前記第1及び第2の磁石成形体に酸化物ガラス質の前駆体溶液を含浸する工程と、前記前駆体を含浸した第1及び第2の磁石成形体を熱処理し、前記前駆体を硬化する工程と、を有する製造方法の構成をとる。
本発明を用いることにより、1の磁石内で配置により特性の異なる磁石を実現することができ、モータへの適用度の向上、モータ設計の自由度の向上を図ることができる。
以下、本発明に係る積層磁石について、図6〜図9を参照し説明する。
〔製造プロセスの概略〕
図8は本発明に係る磁石の製造プロセスの一例を示したものである。最初の工程1では、粉体状の磁石材料を生成する。本発明では積層磁石を製造するため、複数の磁石材料、例えば比較的保磁力の高い磁石材料(保磁力10kOeから40kOe)と比較的残留磁束密度の高い磁石材料(0.8から1.2T)の2種類の材料を生成しておく。工程2では、前記粉体状の磁石材料を圧縮成形する。例えば回転電機に使用する永久磁石を製造する場合は、この工程で、回転電機に使用する永久磁石の最終磁石形状に沿って圧縮成形することが可能である。また、本発明では積層磁石を製造するため、複数層の圧縮成形を行うこととなる。工程3では、圧縮成形体へSiO2 前駆体の含浸を行う。この工程は結着材となるSiO2 の前駆体を圧縮成形後の磁石に浸透させるものであり、特定の前駆体材料を用いることにより、積層磁石への均一な浸透が可能となる。工程4では、前駆体を含浸した圧縮成形体に熱処理を施し、前駆体を硬化する。これにより、非晶質のSiO2 バインダーが形成され、磁性粉の結着材として機能する。これら工程1〜4により、2以上の異なる磁性粉から形成される積層構造を取り、かつ磁粉は非晶質のSiO2 バインダーで結着された構造の磁石を得ることができる。
図9は本発明に係る磁石の製造プロセスの他の例を示したものである。図8のプロセスとの違いは、磁石材料の生成工程と圧縮成形工程との間に、磁石材料を絶縁処理する工程が加わる点である。このように磁粉表面に絶縁処理を施すことにより、渦電流の発生を抑え、磁石を用いた機器全体の効率低下を抑えることができる。
以上、製造プロセスの概略について説明したが、積層磁石の圧縮成形,結着材の生成,絶縁膜の生成、のそれぞれについて以下に詳述する。
〔積層磁石の圧縮成形〕
図6(a)−(c)は積層磁石を圧縮整形する一連の工程を示したものである。ここでは2層の積層磁石にて示しているが、2層以上の磁石についても同様に製造することができる。図6(a)に示すように、磁石を圧縮するための装置は金型枠11,下スペーサ
12,下パンチ13を有する。図6(b)で第1の磁石材料を下パンチ13上に挿入し、下パンチ13と上パンチ14との間で荷重を掛け、第1の磁石成形体15を圧縮成形する。更に図6(c)では上パンチ14を除去後第2の磁石材料を挿入し、下パンチ13と上パンチ14との間で再度荷重を掛け、第2の磁石成形体16を圧縮成形する。この際、第1の磁石成形体15と第2の磁石成形体16との界面で磁粉が動き一部の粉同士が食い込むことにより両者が一体化する。
また図7(a),(b)に示すように、上プレスの圧縮面が湾曲した上パンチ14を使用することで下スペーサ12上の下パンチ13と金型枠11で囲まれた空間に挿入された磁粉を異なる外形に圧縮成形することが出来る。これにより、図7(b)に示すように湾曲した形状の積層磁石を製造することも可能である。
本発明の積層磁石の製造では、圧縮成形された磁石形状の寸法関係がその後の結着材の生成工程であまり変化しない。このため高い精度で磁石を製造することが可能である。
〔結着材の生成〕
含浸する前駆体は、圧縮成形された磁石形成体に対する濡れ性の良好な材料である。磁石形成体に対する濡れ性の良好な結着剤の溶液を含浸することで、磁石形成体を構成する磁石粉体の表面を前記結着剤が被い、結果として多数の粉体あるいは積層体を良好につなぎ合わせる作用を為す。また良好な濡れ性の作用で結着剤の溶液が磁石形成体の細部に入り込むので、量的に少ない結着剤で良好な結着効果が得られる。また良好な濡れ性を利用しているので、エポキシ樹脂の使用に比べ設備が比較的シンプルで安価になる。
さらに前記成形体を熱処理することでSiO2 などの酸化物系材料を結着剤として磁石材料を結着した磁石を得ることができる。以下に詳述するように、含浸後の処理温度は比較的低い温度であり、この熱処理で前記磁石形成体の形状や寸法が変化することがほとんど無く、最終的に製造された磁石の形状や寸法関係の精度がたいへん高い。
また、本発明の形態では非酸化物磁粉を用い、特に希土類磁石、例えばNdFeB等の磁粉を使用する。本発明では、以下に詳述する方法を用いることにより、比較的低温の工程で永久磁石を製造することができる。これにより、非酸化物の磁粉を用いる場合であっても、磁粉の酸化を抑制し、磁気特性の高い磁石を得ることができる。以下に詳述する前駆体は比較的低い温度で硬化するので、120度以上200度以下の温度範囲、特に150度程度の温度条件で行うことができる。これにより、圧縮成形体の寸法,形状が高い精度で維持したまま最終的な磁石が得られる。また、NdFeB等の磁石用磁粉が酸化することを抑制し、磁気特性の低下を防止することができるためである。
結着剤の前駆体の溶液は、SiO2 の前駆体であるアルコキシシロキサン,アルコキシシランを有しており、化学式1や化学式2に示すような末端基及び側鎖にアルコキシ基を有する化合物を有している。
Figure 2008130781
Figure 2008130781
また、溶媒のアルコールにはアルコキシシロキサン,アルコキシシラン中のアルコキシ基と同じ骨格の化合物が好ましいがこれらに限られるものではない。具体的にはメタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等が挙げられる。また、加水分解及び脱水縮合用触媒としては酸触媒,塩基触媒,中性触媒のいずれでも良いが中性触媒が金属の腐食を最小限に抑えられるので最も好ましい。中性触媒としては、オルガノスズ触媒が効果的で、具体的にはビス(2−エチルヘキサノエート)スズ,n−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)スズ,ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキサノエート)スズ,ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ,ジ−n−ブチルジラウリルスズ,ジメチルジネオデカノエートスズ,ジオクチルジラリル酸スズ,ジオクチルジネオデカノエートスズ等が挙げられるがこれらに限られるものではない。また、酸触媒としては希塩酸,希硫酸,希硝酸,蟻酸,酢酸等が、塩基触媒としては水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,アンモニア水等が挙げられるがこれらに限られるものではない。
結着剤の溶液中のSiO2 の前駆体であるアルコキシシロキサン,アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量は体積分率として5vol% 以上かつ96vol% 以下が好ましい。アルコキシシロキサン,アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量が5vol% 未満になると、磁石中の結着剤の含有率が低いため、硬化後の結着剤の材料としての強度がやや小さくなる。一方、アルコキシシロキサン,アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量が96vol% 以上になると、SiO2 の前駆体であるアルコキシシロキサン,アルコキシシランの高分子量化の反応が速いため、結着剤溶液の増粘速度も速くなる。これは結着剤溶液の適正粘度の制御がより困難であることを意味しており、この結着剤溶液を含浸法に用いることが先に説明した材料に比べ難しくなる。
結着剤溶液中のSiO2 の前駆体であるアルコキシシロキサン又はアルコキシシランと水とは、以下の化学式3,化学式4に示した加水分解反応が生じる。ここで化学反応式は加水分解が部分的に生じた時の反応式である。
Figure 2008130781
Figure 2008130781
この際、水の添加量がアルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解反応の進行度を支配する因子の一つとなる。この加水分解反応は硬化後の結着剤の機械的強度が大きくするためには重要である。アルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解反応が発生していないと、その次に起こるアルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解反応物同士の脱水縮合反応が進行しないからである。この脱水縮合反応生成物が
SiO2であり、このSiO2が磁粉との接着性が高く、結着剤の機械的強度を大きくする重要な材料となるからである。更に、シラノールのOH基が磁粉表面のO原子又はOH基と相互作用が強く高接着化に寄与するからである。しかしながら、加水分解反応が進みシラノール基の濃度が高くなるとシラノール基を含む有機ケイ素化合物(アルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解生成物)同士の脱水縮合反応が進行し、有機ケイ素化合物の分子量が大きくなり、結着剤の溶液の粘度は高くなる。これは含浸法に用いる結着剤の溶液としては適正な状態が遠ざかる特性である。従って、結着剤溶液中のSiO2 の前駆体であるアルコキシシロキサン又はアルコキシシランに対する適正な水の添加量が必要となる。
ここで、絶縁層形成処理液中の水の添加量として、化学式3,4に示した加水分解反応における反応当量の1/10〜1が好ましい。水の添加量が化学式3,4に示した加水分解反応における反応当量の1/10以下では、有機ケイ素化合物のシラノール基の濃度が低いため、シラノール基を含む有機ケイ素化合物と磁粉表面との相互作用が低く、また、脱水縮合反応が生じにくいため生成物中にアルコキシ基が多量に残存したSiO2 が生成するため、SiO2 中に欠陥部が多数発生し、SiO2 の強度が低くなる。一方、水の添加量が化学式3,4に示した加水分解反応における反応当量の1より大きくなると、シラノール基を含む有機ケイ素化合物は脱水縮合が発生し易くなり、結着剤溶液が増粘するため、磁粉と磁粉の隙間に結着剤溶液は浸透できなくなり含浸法に用いる結着剤溶液としては適正な状態から遠ざかる特性である。結着剤溶液中の溶媒には通常アルコールを用いる。それは結着剤溶液に用いる溶媒にはアルコキシシロキサン中のアルコキシ基は解離反応が速く、溶媒のアルコールと置換し平衡状態にあるからである。そのため溶媒のアルコールには沸点が水より低く粘度の低いメタノール,エタノール,n−プロパノール,iso−プロパノールが好ましい。しかし、化学的には溶液の安定性が若干低下するものの、結着剤の溶液の粘度が数時間で増加してしまうことが無く、かつ、沸点が水より低い溶媒であれば本発明の結着剤として用いることが可能で、アセトン等のケトン類などの水溶性溶媒であれば適用できる。
以上説明した本発明の結着剤の一態様について、以下の事項を確認できる。
まず、SiO2 の前駆体は、水溶液を溶媒とする溶液ではなく、アルコールを溶媒とする溶液で構成される。水は加水分解反応を調整するために添加されるにすぎない。水溶液ではなく、アルコールをベースとした溶液を使って含浸処理することにより、熱硬化後に水がほとんど残存しないこととなる。永久磁石内の水の残存を抑えているため、酸化等により経時的に磁気特性が劣化することもなくなる。一方、SiO2 の前駆体として、アルコキシシロキサン,アルコキシシラン等を用いて加水分解を行っているため、メトキシが残存することが考えられる。従って、製造された永久磁石には磁粉、磁粉を結着するバインダーの他にメトキシが含有される構成が考えられる。
次に、上記工程により生成した磁石は、NdFeB等の希土類の磁石用磁粉を、SiO系のバインダーで結着した構造となる。このバインダーはアモルファス状(非結晶状態)の連続膜構造をとる。上記のように、バインダーはSiO2 で構成されることを基本とするが、アモルファス状であるため、部分的にSiO等の組成が存在することも考えられる。主としてSiとOとからなる連続膜、即ちSiO系の連続膜からなるバインダーが形成されていれば、本実施形態に係る磁石を構成するものと考えられる。
次に、バインダーとして、SiO系以外の酸化物ガラス質を用いる構成について検討する。上述のように、本発明の製造工程を踏むためには、含浸溶液としての前駆体には様々な要件が課せられる。低粘度であること、浸透性が高いこと、安定性が高いこと、比較的低温で硬化すること、等である。これらの要件を満たすものとして、SiO系のバインダーが最良であることを確認しているが、本製造工程に適した要件を満たせば、他の酸化物ガラス質をバインダーとして用いた場合であっても、ある程度の効果は期待できる。
〔絶縁膜の生成〕
絶縁処理工程では、磁粉表面のできるだけ全面にさらにできるだけ均一に絶縁層を作ることが望ましい。磁石が回転電機など、いろいろな機器に使用される場合、磁束密度状態で使用される場合が多い。例えば回転電機では、巻線により作られ磁石に作用する磁束が周期的に変化する。このように磁束が変化する場合、磁石に渦電流が発生し使用される機器の効率が低下する恐れがある。磁粉表面を絶縁層で被うことによりこの渦電流を抑え、機器全体の効率低下を抑えることができる。
磁石の使用用途として高調波を含む高周波磁界が磁石に対して印加される条件下では、希土類磁石粉体表面に無機絶縁膜を形成されていることが好ましい。こような理由で希土類磁石粉体表面に無機絶縁膜を形成し、無機絶縁膜としてリン酸塩化成処理膜を適用するのが良い。リン酸塩化成処理液にリン酸,マグネシウム,ほう酸を用いた場合、以下のような組成が良い。リン酸量は1〜163g/dm3 が望ましく、163g/dm3 より大きいと磁束密度の低下を招き、1g/dm3 より小さいと絶縁性が悪くなる。また、ほう酸量はリン酸1gに対して0.05〜0.4gが望ましくこの範囲を超えると絶縁層の安定性が悪くなる。磁粉表面の全面に絶縁層を均一に形成するためには、絶縁層形成処理液の磁粉に対する濡れ性を向上させることが有効である。これには界面活性剤の添加が望ましい。こうした界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル系,アルキルベンゼンスルホン酸系,両性イオン系、またはポリエーテル系の界面活性剤が挙げられ、その添加量は、絶縁層形成処理液中に0.01〜1重量%含有させることが望ましく、0.01重量%未満では表面張力を下げて磁粉表面を濡れさせる効果が不十分であり、1重量%を超えてもそれ以上の効果は望めず不経済である。
また、防錆剤の量は0.01〜0.5mol/dm3 が望ましく、0.01mol/dm3 未満では磁粉表面の錆の抑制が難しく、0.5mol/dm3 より多くしても以上の効果は望めず経済的でない。
リン酸塩化成処理液の添加量は、希土類磁石用磁粉の平均粒径に依存する。希土類磁石用磁粉の平均粒径が0.1 〜500μmの場合、希土類磁石用磁粉1kgに対して300〜25mlが望ましい。300mlより多いと磁粉表面の絶縁膜が厚くなりすぎ、また、錆が発生し易くなるために磁石作製時の磁束密度の低下を招き、25mlより少ないと絶縁性が悪く、処理液の濡れない部分で錆の発生量が多くなり、磁石の特性劣化を引起す恐れがある。
コート膜形成処理液中の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤させるのは、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物ゲルがゼラチン状の柔軟な構造を有することと、アルコールが希土類磁石用磁粉に対して優れた濡れ性を有するからである。また、ゲル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の平均粒径が10μm〜数nmレベルまで粉砕する必要があるのは、希土類磁石用磁粉表面に形成されたコート膜が均一厚になり易いからである。更に、アルコールを主成分とした溶媒にすることにより、非常に酸化され易い希土類磁石用磁粉の酸化の抑制が可能となる。
更に、磁粉の絶縁性並びに磁気特性の向上を図ることを目的とした無機絶縁膜としてはフッ化物コート膜が望ましい。かような理由で希土類磁石粉体表面にフッ化物コート膜を形成する場合、フッ化物コート膜形成処理液中の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の濃度に関しては希土類磁石用磁粉表面に形成する膜厚に依存するが、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤されており、ゲル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の平均粒径が10μm〜数
nmレベルまで粉砕され、かつアルコールを主成分とした溶媒に分散された状態を保つことが重要で、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の濃度として200g/dm3から1g/dm3 となる。
希土類フッ化物コート膜形成処理液の添加量は、希土類磁石用磁粉の平均粒径に依存する。希土類磁石用磁粉の平均粒径が0.1 〜500μmの場合、希土類磁石用磁粉1kgに対して300〜10mlが望ましい。これは処理液量が多いと溶媒の除去に時間を要するだけでなく、希土類磁石用磁粉が腐食し易くなるためである。一方、処理液量が少ないと希土類磁石用磁粉表面に処理液の濡れない部分が生じるためである。
〔各実施例の説明〕
以上、本発明に係る積層磁石の構成について説明したが、実際に積層磁石,モータを製造して評価した結果について以下に述べる。
本実施例では積層磁石の製造、及び評価を行った。希土類磁石用磁粉には、組成を調整した母合金を急冷することにより作製したNdFeB系の薄帯を粉砕した磁性粉を用いた。NdFeB系母合金は鉄,Fe−B合金(フェロボロン)にNdを混合して真空あるいは不活性ガス中または還元ガス雰囲気中で溶解し組成を均一化されている。必要に応じて切断した母合金を単ロールや双ロール法などのロールを用いた手法で、回転するロールの表面に溶解させた母合金をアルゴンガスなどの不活性ガスあるいは還元ガス雰囲気で噴射急冷し薄帯とした後、不活性ガス中あるいは還元性ガス雰囲気中で熱処理する。熱処理温度は200℃以上700℃以下でありこの熱処理によりNd2Fe14B の微結晶が成長する。薄帯は10μm以上100μm以下の厚さでありNd2Fe14B の微結晶の大きさは10nm以上100nm以下である。Nd2Fe14B の微結晶が平均30nmの大きさの場合、粒界層はNd70Fe30に近い組成であり、単磁区臨界粒径よりも薄いために
Nd2Fe14B の微結晶内に磁壁が形成されにくい。Nd2Fe14B 微結晶の磁化はそれぞれの微結晶で磁気的に結合しており磁化の反転は磁壁の伝搬によって起こっていると推定されている。磁化反転を抑制するためのひとつの手法として薄帯を粉砕した磁粉同士の磁気的結合をしやすくすることが挙げられる。
本実施例では、高残留磁束密度(残留磁束密度が0.7T以上1.4T以下)のNdFeB系磁粉及び、高保磁力(保磁力が10kOe以上30kOe以下)のNdFeB系磁粉の2種類の磁粉を用意した。
このようにして製造した磁粉を図6で説明した要領で圧縮成形した。本実施例ではまず高残留磁束密度のNdFeB系磁粉を荷重5−20t/cm2 で圧縮成形した後、高保磁力のNdFeB系磁粉を挿入し、再度圧縮成形した。
このようにして成形した積層磁石に下記1)〜3)のSiO2 前駆体溶液を含浸し熱処理した。実施した工程を以下に説明する。
結着剤であるSiO2前駆体には以下1)〜3)の溶液を用いた。
1)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を5ml,水
0.96ml,脱水メチルアルコール95ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
2)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を25ml,水4.8ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
3)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を100ml,水3.84ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、4時間25℃の温度で放置した。
1)〜3)のSiO2 前駆体溶液の粘度はオストワルドの粘度計を用いて30℃の温度で測定した。これらの前駆体を以下(1)〜(5)の手順で含浸し熱処理を行った。
(1)上記Nd2Fe14B の磁粉を成形型に充填し、16t/cm2 の圧力で、磁気特性測定用として縦10mm,横10mm,厚さ5mmの試験片を、また、強度測定用として縦15mm,横10mm,厚さ2mmの圧縮成形試験片を作製した。
(2)(1)で作製した圧縮成形試験片を加圧方向が水平方向になるようにバット内に配置し、結着剤である1)〜3)のSiO2 前駆体溶液をバット中に液面が垂直方向に1mm/min になるように注入した。最終的に圧縮成形試験片の上面から5mm上方になるまで
SiO2 前駆体溶液をバット中に注入した。
(3)(2)で使用した圧縮成形試験片は配置され、SiO2 前駆体溶液が満たされたバットを真空容器内にセットし、80Pa程度まで徐々に排気した。圧縮成形試験片表面からの気泡発生が少なくなるまで放置した。
(4)圧縮成形試験片は配置され、SiO2 前駆体溶液が満たされたバットをセットした真空容器の内圧を徐々に大気圧に戻し、圧縮成形試験片をSiO2 前駆体溶液内から取り出した。
(5)(4)で作製したSiO2 前駆体溶液で含浸された圧縮成形試験片を真空乾燥炉内にセットし、1〜3Paの圧力,200℃の条件で圧縮成形試験片に対して真空熱処理を施した。
以上のようにして製造した縦10mm,横10mm,厚さ5mmの圧縮成形試験片に対して、四探針法で比抵抗を測定した。また、上記比抵抗を調べた圧縮成形試験片に対して、30kOe以上のパルス磁界を印加した。その圧縮成形試験片について磁気特性を調べた。
その結果、以下の事項が明らかとなった。
製造した圧縮成形試験片(積層磁石)全体の保持力については、積層した磁石のうち、高保持力の材料の影響を強く受け、積層磁石全体としての特性も、高保持力材料とほぼ同じ保持力を達成することが分かった。一方、製造した圧縮成形試験片(積層磁石)全体の残留磁束密度については、それぞれの積層材料の平均に近い値となることが分かった。
またSEM観察の結果SiO2 前駆体溶液は磁粉中のクラック内部まで含浸されていることが分かった。
また、(5)で作製した縦10mm,横10mm,厚さ5mmの圧縮成形試験片に対する磁気特性については、残留磁束密度が樹脂含有ボンド磁石と比較して、20〜30%向上可能であり、200℃大気中保持1時間後の熱減磁率はSiO2含浸ボンド磁石で1〜3.0%でありSiO2 含浸無しの場合の熱減磁率(5%)よりも小さい。更に200℃1時間後に室温に戻して再着磁した後の不可逆熱減磁率は含浸処理を施した場合1%未満であるのに対し、エポキシ系ボンド磁石の場合3%近い値であった。これは含浸処理によりクラックを含む粉末表面がSiO2 により保護されるため酸化等の腐食が抑制され、不可逆熱減磁率が低減されたからである。即ち、SiO2 前駆体による含浸処理によりクラックを含む粉末表面が保護されるため酸化等の腐食が抑制され、不可逆熱減磁率が低減される。不可逆熱減磁の抑制だけでなく、PCT試験や塩水噴霧試験でも含浸処理磁石の方が減磁の少ない結果が得られている。
本実施例では、SiO2 前駆体の溶液条件、及び前駆体の熱硬化処理の条件を実施例1と変えて磁石を製造し、評価を行った。
結着剤であるSiO2 前駆体には、実施例1と異なり、以下1)〜3)の溶液を用いた。
1)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を25ml,水0.96ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
2)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を25ml,水4.8ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
3)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を100ml,水9.6ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
また、含浸後の熱処理の工程では、実施例1と異なり、1〜3Paの圧力,150℃の条件で圧縮成形試験片に対して真空熱処理を施した。その他の製造条件は実施例1と同様である。
以上のようにして製造した縦10mm,横10mm,厚さ5mmの圧縮成形試験片に対して評価を行った。
磁気特性については、残留磁束密度が樹脂含有ボンド磁石と比較して、20〜30%向上可能であり、20℃で測定した減磁曲線は、SiO2 含浸前とSiO2 含浸熱処理後の成形体とで残留磁束密度及び保磁力の値がほぼ一致した。また、200℃大気中保持1時間後の熱減磁率はSiO2 含浸ボンド磁石で1.0〜3.0%でありSiO2 含浸無しの場合の熱減磁率(5%)よりも小さい。更に、不可逆熱減磁率も200℃大気中1時間保持後、SiO2 含浸熱処理後で1%以下でありSiO2 含浸無しの場合の3%近い値よりも小さい。これはSiO2 が磁粉の酸化による劣化を抑制しているためである。
尚、磁石の比抵抗については焼結型の希土類磁石に比べて、本発明の磁石は約10倍の値を有したが、圧縮型の希土類ボンド磁石と比較して約1/10の値となった。渦電流損がやや増加するが、使用を妨げるほどの障害とはならない。
本実施例では、積層磁石のモータへの適用を行った。SiO2 前駆体の溶液条件、及び前駆体の熱硬化処理の条件を実施例1と変えて磁石を製造し、モータに適用した。
結着剤であるSiO2 前駆体には以下1)〜3)の溶液を用いた。
1)CH3O−(Si(CH3O)2−O)−CH3を25ml,水5.9ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
2)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは3〜5、平均は4)を25ml,水4.8ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
3)CH3O−(Si(CH3O)2−O)m−CH3 (mは6〜8、平均は7)を25ml,水4.6ml,脱水メチルアルコール75ml,ジラウリン酸ジブチル錫0.05mlを混合し、2昼夜25℃の温度で放置した。
また、前駆体の熱硬化は1〜3Paの圧力,150〜250℃の条件で真空熱処理して行った。その他の製造条件は実施例1と同様である。作製した試験片に対する磁気特性については、残留磁束密度が樹脂含有ボンド磁石と比較して、10〜30%向上可能であり、20℃で測定した減磁曲線は、SiO2 含浸前とSiO2 含浸熱処理後の成形体とで残留磁束密度及び保磁力の値がほぼ一致した。
このようにして製造した積層磁石をモータに適用し、評価を行った。
図1は本発明による高抵抗磁石モータの径方向断面形状を示す。図1において,積層磁石モータの固定子は、固定子鉄心2,ティース6,ティース6間のスロット5,スロット5内にティース6を取り囲むように巻装された集中巻の電機子の巻線4,で構成される。ここで、積層磁石モータは4極6スロットであるから、スロットピッチは電気角で120度である。回転子1はシャフト孔7に挿入し、回転子シャフトの外周表面に積層磁石3を配置する。固定子にはハネウェル社製METGLAS2605TCA、厚さ約25μmのFeSiBのアモルファスを使用し、アモルファス薄帯を打ち抜き後、樹脂を塗布し占積率を高めるためにプレス成形している。占積率が80%のときアモルファス積層体の飽和磁束密度は、1.25T であった。固定子にアモルファスを使用することで、1000
rpm 以上の高速回転で珪素鋼板(0.15mmt )を用いた場合よりも効率が高くなることを確認している。これはアモルファスのヒステリシス損や渦電流損が珪素鋼板に比べて小さいからであり、高効率が要求されるエアコンなどの家電モータ,分散電源用発電機,
HEV駆動モータなどに適している。
図2は図1の回転子1の一部を拡大して表したものである。図1における積層磁石3は図2に示すように、回転子の外側に配置された高保磁力磁石8(保磁力が10kOe以上30kOe以下)と、回転子の内側に配置された高残留磁束密度磁石9(残留磁束密度が0.7T以上1.4T以下)との積層構造を有する。
高抵抗磁石モータでは、磁石の着磁方向と逆向きの方向の磁界が印加された場合に減磁が生じる。このため、減磁を抑制するために保磁力の高い磁石を用いる必要がある。一方で、特性の高いモータを得るためには、残留磁束密度の高い磁石を用いることも求められる。
希土類磁石粉は、重希土類元素であるHo,TbあるいはDyの添加により高保磁力となるが、これらの元素は高価であること及びこれらの元素の添加で残留磁束密度あるいはエネルギー積が低下するため、高保磁力,高残留磁束密度の両立を図ることは困難をきたす。一方で、着磁方向と逆向きの方向の磁界は回転子1の外側から印加されるため、回転子外側ほど逆向き磁界の影響を強く受ける。
これらの観点から、本実施例の構成では、回転子外側には高残留磁束密度よりも高保磁力を優先した磁石を用い、回転子内側には高保磁力よりも高残留磁束密度を優先した磁石を用いる構成をとる。この結果、高保磁力,高残留磁束密度の両立を図ることが可能となり、更にコスト面でも低減が図れる。
実際に本実施例のモータを評価した結果、積層磁石の抵抗は0.2 〜10mΩcmの範囲であり、積層磁石全体として高残留磁束密度を保ち、かつ着磁方向とは逆向きの磁界が印加された場合の減磁を抑制できることを確認した。
本実施例では、実施例3と同じ積層磁石の材料を用い、異なる型のモータへの適用を行った。図3は本発明による高抵抗磁石モータの径方向断面形状を示す。回転子には圧粉磁石1を外周側にリング形状で配置してある。複合磁石201は磁場中で異方性を付加した異方性磁石であっても良い。固定子鉄心6と複合磁石201はどちらも圧粉工程で作製でき、3次元形状も可能である。
図1の構成との大きな違いは、回転子1及び積層磁石3の形状の違いにある。図3の磁石モータでは、磁石の配置を工夫することにより、回転子自身に磁場の流れを生じさせる構成としている。これにより、磁場の流れ易さによる力(リラクタンストルク)を発生させ、磁石磁場の力(磁場トルク)とリラクタンストルクとの合成による力を発生させることができる。また磁石の渦電流損を小さくすることができるので、回転子と固定子の間のギャップに高い磁束を発生させても損失は低減でき、高トルク化に有利である。また異方性磁粉を使用して異方性を付加することでエネルギー積を高くすることでギャップ磁束密度を高くすることができ、ギャップ磁束密度を0.5T 以上とすることが可能であり、高トルクを実現できる。
図4,図5は図3の回転子1の一部を拡大して表したものである。これらはリラクタンストルク及び磁石トルクを利用する構成であり、リラクタンストルクのために磁石を配置しない空間10が設けられている。磁石が挿入される位置はあらかじめ打ち抜きなどの方法で積層鋼板に穴が設けられており、それが磁石挿入孔20となる。この磁石挿入孔20に高保磁力磁石8と高残留磁束密度磁石9との積層構造をとる磁石を挿入することで回転子を作製できる。
図4は、磁石挿入孔20の断面形状の短軸方向に高保磁力磁石8と高残留磁束密度磁石9とを積層した構造をとる。図5は、磁石挿入孔20の断面形状の長軸方向に高保磁力磁石8と高残留磁束密度磁石9とを積層した構造をとる。
いずれの構成においても、逆磁界による影響を強く受ける回転子外側に高保磁力磁石8を配置し、内側に高残留磁束密度磁石9を配置するにより、積層磁石全体として高残留磁束密度を保ち、かつ着磁方向とは逆向きの磁界が印加された場合の減磁を抑制できることを確認した。更に、本実施例のモータ構成により、実施例3の構成よりも高トルク特性を実現でき、HEVモータなどに適していることを確認した。
実施例3における磁石モータの径方向断面形状を示す。 実施例3における磁石モータの回転子部分の拡大図を示す。 実施例4における磁石モータの径方向断面形状を示す。 実施例4における磁石モータの回転子部分の拡大図を示す。 実施例4における磁石モータの回転子部分の拡大図を示す。 積層磁石の形成プロセスを示す。 他の積層磁石の形成プロセスを示す。 磁石の製造プロセスを示す。 他の磁石の製造プロセスを示す。
符号の説明
1 回転子
2 固定子鉄心
3 積層磁石
4 巻線
5 スロット
6 ティース
7 シャフト孔
8 高保磁力磁石
9 高残留磁束密度磁石
10 空間
11 金型枠
12 下スペーサ
13 下パンチ
14 上パンチ
15,17 第1の磁石成形体
16,18 第2の磁石成形体
20 磁石挿入孔

Claims (20)

  1. 第1の磁性粉を有する第1の磁石成形体と、
    前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を有する第2の磁石成形体と、を積層してなり、
    前記第1及び第2の磁石成形体は、磁性粉と、前記磁性粉を結着する酸化物ガラス質からなるバインダーと、を有する
    積層磁石。
  2. 前記第1及び第2の磁性粉は、希土類元素を少なくとも1種以上含む磁性粉である
    請求項1に記載の積層磁石。
  3. 前記第1の磁性粉は前記第2の磁性粉に比べ保磁力が高く、
    前記第2の磁性粉は前記第1の磁性粉に比べ残留磁束密度が高い
    請求項1に記載の積層磁石。
  4. 前記第1の磁性粉は保磁力が10kOe以上30kOe以下であり、
    前記第2の磁性粉は残留磁束密度が0.7T以上1.4T以下である
    請求項3に記載の積層磁石。
  5. 前記酸化物ガラス質からなるバインダーは、SiO2 で形成されたバインダーである
    請求項1に記載の積層磁石。
  6. 前記SiO2 は非晶質の連続膜を形成する
    請求項5に記載の積層磁石。
  7. 前記第1及び第2の磁石成形体は、前記磁性粉と前記バインダーとの間に絶縁膜を有する
    請求項1に記載の積層磁石。
  8. 前記絶縁膜はフッ化物で形成される
    請求項7に記載の積層磁石。
  9. 複数のティースを有する固定子鉄心と、前記複数のティース間のスロットに配置する巻線と、前記固定子鉄心内のシャフト孔に配置する回転子と、前記回転子に内蔵させた複数の積層磁石と、を有し、
    前記積層磁石は、
    第1の磁性粉を有する第1の磁石成形体と、
    前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を有する第2の磁石成形体と、を積層してなり、
    前記第1及び第2の磁石成形体は、磁性粉と、前記磁性粉を結着する酸化物ガラス質からなるバインダーと、を有する
    モータ。
  10. 前記第1及び第2の磁性粉は、希土類元素を少なくとも1種以上含む磁性粉である
    請求項9に記載のモータ。
  11. 前記第1の磁性粉は前記第2の磁性粉に比べ保磁力が高く、
    前記第2の磁性粉は前記第1の磁性粉に比べ残留磁束密度が高い
    請求項9に記載のモータ。
  12. 前記第1の磁性粉は保磁力が10kOe以上30kOe以下であり、
    前記第2の磁性粉は残留磁束密度が0.7T以上1.4T以下である
    請求項11に記載のモータ。
  13. 前記酸化物ガラス質からなるバインダーは、SiO2 で形成されたバインダーである
    請求項9に記載のモータ。
  14. 前記SiO2 は非晶質の連続膜を形成する
    請求項13に記載のモータ。
  15. 前記第1及び第2の磁石成形体は、前記磁性粉と前記バインダーとの間に絶縁膜を有する
    請求項9に記載のモータ。
  16. 前記絶縁膜はフッ化物で形成される
    請求項15に記載のモータ。
  17. 第1の磁性粉を圧縮成形し第1の磁石成形体を成形する工程と、
    前記第1の磁性粉とは異なる第2の磁性粉を圧縮成形し、前記第1の磁石成形体上に第2の磁石成形体を成形する工程と、
    前記第1及び第2の磁石成形体に酸化物ガラス質の前駆体溶液を含浸する工程と、
    前記前駆体を含浸した第1及び第2の磁石成形体を熱処理し、前記前駆体を硬化する工程と、を有する
    積層磁石の製造方法。
  18. 前記第1及び第2の磁性粉は、希土類元素を少なくとも1種以上含む磁性粉である
    請求項17に記載の積層磁石の製造方法。
  19. 前記第1の磁性粉は前記第2の磁性粉に比べ保磁力が高く、
    前記第2の磁性粉は前記第1の磁性粉に比べ残留磁束密度が高い
    請求項17に記載の積層磁石の製造方法。
  20. 前記酸化物ガラス質の前駆体溶液は、SiO2 の前駆体溶液である
    請求項17に記載の積層磁石の製造方法。
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