JP2008126297A - レーザ溶接方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 レーザ溶接において、2枚の金属板間に板間隙間がある場合にも、溶け落ち欠陥を生じることなく、良好な溶接を安定的に実現することができるレーザ溶接方法および装置を実現する。
【解決手段】 2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部における一方の金属板の表面にレーザビームを照射して両金属板を溶接する際に、その照射工程初期は、レーザビームを低エネルギーで照射して前記一方の金属板を溶融させ、次に、該一方の金属板の溶融量が十分に得られた状態で、レーザビームを高エネルギーで照射して他方の金属板も溶融させることにより両金属板を溶接し、板間隙間がある場合における前記一方の金属板の溶融量が不足することによる溶け落ち欠陥を防止する。
【選択図】 図6
【解決手段】 2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部における一方の金属板の表面にレーザビームを照射して両金属板を溶接する際に、その照射工程初期は、レーザビームを低エネルギーで照射して前記一方の金属板を溶融させ、次に、該一方の金属板の溶融量が十分に得られた状態で、レーザビームを高エネルギーで照射して他方の金属板も溶融させることにより両金属板を溶接し、板間隙間がある場合における前記一方の金属板の溶融量が不足することによる溶け落ち欠陥を防止する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、レーザビームを用いた溶接方法および溶接装置に関し、金属溶接技術の分野に属する。
例えば自動車の車体を組み立てる際に用いられる溶接方法としては、複数の金属板を一対の電極間に挟んで行う抵抗発熱を利用したスポット溶接が一般的であるが、ワークの形状等によっては、非接触式のレーザ溶接が用いられることがある。
このレーザ溶接は、所要の溶接強度を確保する上で、溶接箇所に連続的にレーザビームを照射して行うのが通例であるが、特許文献1によれば、この連続照射のレーザ溶接方法として、小径かつ高エネルギーの主ビームと、大径かつ低エネルギーの副ビームとを同時に照射することによって、キーホールの開口部の形状を安定化させるようにしたものが開示されている。
ところで、レーザ溶接の場合、複数枚の金属板を重ね合わせた状態で、溶接部位の近傍を治具により挟んで固定することになるが、この場合、治具で挟んでいる部位では両金属板は密着するものの、治具で直接挟んでいない溶接部位では両金属板間に微小な隙間(以下、「板間隙間」という)が生じることがある。
この状態で一方の金属板側からレーザビームを照射すると、その金属板にエネルギーが集中し、そのため、図10に示すように、ビームが照射された一方の金属板X1が局部的に急速に溶融する。そして、この溶融した金属が板間隙間xを介して他方の金属板X2に溶着して凝固することになるが、金属板X1の溶融量が不十分なため、部分的には溶接されているが、他の部位に非溶接の箇所が発生し、いわゆる溶け落ちという欠陥が生じる。
そこで、本発明は、レーザ溶接において、板間隙間が存在する場合にも、2枚の金属板を常に良好に溶接することができる溶接方法および溶接装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部にレーザビームを照射して両金属板を溶接するレーザ溶接方法において、一方の金属板における他方の金属板との溶接部位の表面に複数のレーザビームを近接して照射すると共に、その照射工程初期は、各レーザビームを低エネルギーで照射して前記一方の金属板を溶融させ、次に、各レーザビームを高エネルギーで照射して他方の金属板も溶融させることにより、これらの金属板を溶接することを特徴とする。
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のレーザ溶接方法において、前記各レーザビームの低エネルギーでの照射は、レーザビームの出力を低下させると共に、ビームの焦点を前記一方の金属板の表面から離間させることにより行うことを特徴とする。
一方、請求項3に記載の発明は、2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部にレーザビームを照射して両金属板を溶接するレーザ溶接装置において、一方の金属板における他方の金属板との溶接部位の表面に複数のレーザビームを近接して照射するレーザ照射手段と、該照射手段による各レーザビームのエネルギーを調整するエネルギー調整手段とを有し、該エネルギー調整手段は、レーザビームの照射工程初期は前記一方の金属板が溶融するように低エネルギーで照射させ、次いで他方の金属板も溶融して両金属板が溶接されるように高エネルギーで照射させることを特徴とする。
そして、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のレーザ溶接装置において、前記エネルギー調整手段は、各レーザビームの照射を低エネルギーで行うときに、レーザビームの出力を低下させると共に、ビームの焦点を前記一方の金属板の表面から離間させることを特徴とする。
以上のように構成したことにより、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
まず、請求項1に記載の発明では、2枚の金属板の重ね合わせ部において、一方の金属板の表面にレーザビームを照射する際に、まず低エネルギーで照射するので、該一方の金属板のビーム照射部位を中心とする一定領域が予め溶融されることになる。このとき、レーザビームは低エネルギーであるから、他方の金属板はほとんど溶融せず、両金属板が溶着する前に、前記一方の金属板が十分に溶融された状態が得られる。
そして、次に一方の金属板の同じ部位に高エネルギーでレーザビームが照射され、これにより他方の金属板も溶融されることになるが、その際、前記一方の金属板は一定領域に亘って既に溶融されており、他方の金属板への溶着量が十分存在するので、板間隙間がある場合にも、2枚の金属板が非溶接部を生じることなく確実に溶接されることになる。
これにより、前記のようなレーザビームが照射された金属板が局部的に急速に溶融して非溶接部が発生する溶け落ちが防止され、欠陥のない良好な溶接が安定的に行われることになる。
そして、特にこの発明では、所定の溶接箇所に複数のレーザビームを近接して照射するので、両金属板が比較的広い範囲で溶接されることになり、所要の溶接強度が得られる。
また、請求項2に記載の発明によれば、照射工程初期に各レーザビームを低エネルギーで照射する際に、レーザビームの出力を低下させるだけでなく、各ビームの焦点を一方の金属板の表面から離間させるので、該金属板表面では各ビームが拡散した状態となり、したがって、金属板表面に照射されるレーザビームのエネルギーが効果的に低下することになる。
そして、焦点を金属板表面から離間させることによって該表面におけるレーザビームの照射面積が広くなり、一方の金属板が所要の範囲に亘って十分にかつ均等に溶融されることになる。これにより、前記の溶け落ち欠陥が一層効果的に防止されることになる。
また、請求項3、請求項4に記載の発明に係るレーザ溶接装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の方法を実施それぞれ実施するものであるから、これらの方法による前記の効果と同様の効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明するレーザ溶接装置は本発明に係るレーザ溶接装置の実施の形態を構成すると共に、その動作は、本発明に係るレーザ溶接方法の実施の形態を構成する。
図1は、レーザ溶接装置の全体構成を示すもので、この溶接装置1は、レーザビームを生成するレーザ発振装置10と、該発振装置10で生成されたレーザビームをファイバーケーブル11を介して入力し、これをワークXに照射するレーザ照射装置20と、前記発振装置10及び照射装置20の作動を制御する制御装置30とを有し、該制御装置10からの信号で、発振装置10で生成されるレーザビームの出力が制御されると共に、照射装置20のフォーカスアクチュエータ21が制御されて、レーザビームの焦点位置が調整されるようになっている。
図2〜図4は、前記レーザ照射装置20の構成の概略説明図で、この装置20は、ハウジング22を有し、該ハウジング22の上面に前記ファイバーケーブル11の下流端部が取り付けられていると共に、内部には、上方から、前記ケーブル11の下流端部から放射されるレーザビームを平行ビームに収束させるコリメーションレンズ23と、この平行ビームを2つのビームに分割する第1プリズムレンズ24と、該第1プリズムレンズ24と分割方向が直行するように配置されて、分割された2つのビームをそれぞれ2つのビームに分割し、合計4つのビームを形成する第2プリズムレンズ25と、各ビームをそれぞれ一点に収束させるフォーカスレンズ26とが配設されている。
そして、前記第1、第2プリズムレンズ24、25とフォーカスレンズ26とは位置関係が固定されてユニット化され、該ユニット27が前記フォーカスアクチュエータ21によって全体として上下動し、下方に配置されたワークXの表面に対する焦点の位置の調整が可能とされている。
次に、このレーザ溶接装置1を用いた溶接作業の動作を説明する。
まず、図5に示すように、レーザ照射装置20の下方にワークとして溶接すべき2枚の金属板X1、X2を重ねて配置する。この金属板X1、X2は、溶接部位の近傍で図示しない治具により挟持されて固定されているが、溶接部位では、両金属板X1、X2の間に板間隙間xが生じているものとする。
ここで、この実施の形態では、レーザビームが直接照射されるレーザ照射装置20側の金属板X1(以下、「第1金属板」という)として亜鉛メッキ鋼板が用いられ、反レーザ照射装置20側の金属板X2(以下、「第2金属板」という)として通常の鋼板が用いられている。
そして、レーザ照射装置20の下方に第1、第2金属板X1、X2を重ねて配置した状態で、制御装置30により、レーザ発振装置10の出力と、レーザ照射装置20におけるフォーカスアクチュエータ21とを制御し、照射工程中、出力及び焦点位置を図6に示すように制御する。
つまり、まず照射工程の初期は、レーザビームの出力を低出力とし、かつ、焦点の位置を、該ビームが照射される第1金属板X1の表面、即ち被照射面X1′より第2金属板2側にオフセットする。
このとき、図7(a)に示すように、レーザビームは拡散した状態で第1金属板X1の被照射面X1′に照射されることになり、出力が低いことと相まって低エネルギーのレーザビームが該被照射面X1′に照射されることになる。また、このレーザビームが近接して4本照射されると共に、各ビームは被照射面X1′上で拡散しているから、該面X1′の比較的広い範囲に均等化されて照射されることになる。
これにより、第1金属板X1の所要面積の領域が溶融することになるが、このとき、照射されているレーザビームは低エネルギーのビームであるので、反レーザ照射装置20側の第2金属板X2は溶融するに至らず、レーザ照射装置20側の第1金属板X1のみが広範囲に溶融した状態となる。
次に、照射開始後、所定時間が経過して、照射工程の中期に移行すれば、制御装置30により、図6に示すように、レーザビームの出力が高出力とされ、かつ、焦点位置が第1金属板X1の被照射面X1′とされる。
これにより、図7(b)に示すように、第1金属板X1の被照射面X1′に、高出力で高密度のレーザビーム、即ち高エネルギーのレーザビームが照射されることになる。
そして、この高エネルギーのレーザビームにより、該ビームが直接照射される第1金属板X1だけでなく、反レーザ照射装置20側の第2金属板X2も溶融されることになるが、その際、前記第1金属板X1は比較的広い範囲に亘って十分な量が既に溶融されているので、高エネルギーのレーザビームの照射を受けて第2金属板X2も溶融されるときに、板間隙間xがあっても非溶接部を生じることがなく、両金属板X1、X2が確実に溶接されることになる。これにより、前記のような高エネルギーのレーザビームにより、金属板が局部的に急速に溶融することによる溶け落ち欠陥が防止される。
そして、前記照射工程初期における低エネルギーのレーザビームによる第1金属板X1の溶融、及び照射工程中期における高エネルギーのレーザビームによる第1、第2金属板X1、X2の溶接が4本のレーザビームにより行われることにより、当該溶接部位が強固に溶接されることになる。
また、この実施の形態では、第1金属板X1として亜鉛メッキ鋼板を用いていることに伴い、図6に示すように、照射工程の後期では、レーザビームの出力を再び低出力とするように制御する。
つまり、亜鉛のように沸点が鋼板の融点より低い金属が存在すると、溶接すべき鋼板が溶融する前に亜鉛が気化し、溶融金属中に亜鉛蒸気が混入することになる。そして、この状態で溶融金属が凝固すると、溶接部位に気泡が閉じ込められるといった欠陥が発生する。
そこで、この実施の形態においては、レーザ照射工程の後期に、レーザビームの出力を再び低出力とすることにより、第1、第2金属板X1、X2の溶融部の凝固を遅延させ、混入した亜鉛蒸気が排出される時間的余裕を与えるようにしているのである。これにより、溶接部位への気泡の閉じ込めによる欠陥が防止される。
以上により、この実施の形態によれば、レーザ照射工程初期における低エネルギーのレーザビームの照射によって、板間隙間がある場合の溶け落ち欠陥が防止されると共に、レーザ照射工程後期における同じく低エネルギーのレーザビームの照射により、亜鉛メッキ鋼板を用いる場合等の沸点の低い金属が含まれる場合の金属蒸気の閉じ込めによる欠陥も防止されることになり、所要の強度を備えた溶接が安定的に得られることになる。
なお、図8は、図6に示すように出力及び焦点位置を制御したレーザビームを一定範囲内の近接した4箇所に順次照射してレーザ溶接を行ったテストピース(図9(a)参照)と、従来のスポット溶接(抵抗溶接)を行ったテストピース(図9(b)参照)の溶接強度(引張りせん断強度)を比較した実験の結果を示すもので、レーザ溶接における4箇所の照射位置を含む範囲の径と、スポット溶接におけるナゲット径が等しい場合、図6に示す制御を行ったレーザ溶接はスポット溶接と同等の溶接強度が得られることが確認された。この実験は、複数のレーザビームを同時に照射しない点で本発明の実施の形態とは異なる点があるが、本発明によるレーザ溶接方法が、従来のスポット溶接と同等の溶接強度を実現できることを推測させるものである。
以上のように本発明によれば、所要の強度を備え、しかも板間隙間がある場合にも溶け落ち欠陥のないレーザ溶接が可能となり、したがって、自動車の車体の製造等、金属板の溶接を伴う各種製造産業において好適に利用される可能性がある。
1 レーザ溶接装置
10 レーザ発振装置
20 レーザ照射装置
30 制御装置
10 レーザ発振装置
20 レーザ照射装置
30 制御装置
Claims (4)
- 2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部にレーザビームを照射して両金属板を溶接するレーザ溶接方法において、
一方の金属板における他方の金属板との溶接部位の表面に複数のレーザビームを近接して照射すると共に、
その照射工程初期は、各レーザビームを低エネルギーで照射して前記一方の金属板を溶融させ、
次に、各レーザビームを高エネルギーで照射して他方の金属板も溶融させることにより、これらの金属板を溶接することを特徴とするレーザ溶接方法。 - 前記請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
前記各レーザビームの低エネルギーでの照射は、レーザビームの出力を低下させると共に、ビームの焦点を前記一方の金属板の表面から離間させることにより行うことを特徴とするレーザ溶接方法。 - 2枚の金属板を重ね、その重ね合わせ部にレーザビームを照射して両金属板を溶接するレーザ溶接装置において、
一方の金属板における他方の金属板との溶接部位の表面に複数のレーザビームを近接して照射するレーザ照射手段と、
該照射手段による各レーザビームのエネルギーを調整するエネルギー調整手段とを有し、
該エネルギー調整手段は、レーザビームの照射工程初期は前記一方の金属板が溶融するように低エネルギーで照射させ、
次いで他方の金属板も溶融して両金属板が溶接されるように高エネルギーで照射させることを特徴とするレーザ溶接装置。 - 前記請求項3に記載のレーザ溶接装置において、
前記エネルギー調整手段は、各レーザビームの照射を低エネルギーで行うときに、レーザビームの出力を低下させると共に、ビームの焦点を前記一方の金属板の表面から離間させることを特徴とするレーザ溶接装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2006316175A JP2008126297A (ja) | 2006-11-22 | 2006-11-22 | レーザ溶接方法およびその装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020187260A1 (zh) * | 2019-03-18 | 2020-09-24 | 中国科学院上海光学精密机械研究所 | 一种激光焊接方法 |
JP2020199524A (ja) * | 2019-06-10 | 2020-12-17 | スズキ株式会社 | レーザスポット溶接方法 |
-
2006
- 2006-11-22 JP JP2006316175A patent/JP2008126297A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2020187260A1 (zh) * | 2019-03-18 | 2020-09-24 | 中国科学院上海光学精密机械研究所 | 一种激光焊接方法 |
JP2020199524A (ja) * | 2019-06-10 | 2020-12-17 | スズキ株式会社 | レーザスポット溶接方法 |
JP7340153B2 (ja) | 2019-06-10 | 2023-09-07 | スズキ株式会社 | レーザスポット溶接方法 |
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