JP2008117691A - ノンハロゲン絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた柔軟性、難燃性、耐油性、電気絶縁性等を有するとともに、従来のノンハロゲン絶縁電線よりさらに優れた耐熱寿命を有するノンハロゲン絶縁電線を提供する。
【解決手段】導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層が、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に、Si化合物とAl化合物との混合物よりなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子、酸化防止剤及び酸化亜鉛を含有する樹脂組成物からなり、かつ前記ベース樹脂が架橋されていることを特徴とするノンハロゲン絶縁電線。
【選択図】 なし
【解決手段】導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層が、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に、Si化合物とAl化合物との混合物よりなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子、酸化防止剤及び酸化亜鉛を含有する樹脂組成物からなり、かつ前記ベース樹脂が架橋されていることを特徴とするノンハロゲン絶縁電線。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ハロゲン系物質を含まず、かつ耐熱性、柔軟性、難燃性、電気絶縁性、耐熱寿命等に優れ、自動車のエンジンルーム内のような高度な耐熱性が要求される部位に好適に使用されるノンハロゲン絶縁電線に関するものである。
自動車のエンジンルーム内のワイヤーハーネスに使用される絶縁電線の絶縁材料には、ハーネスの取り回し性の点から柔軟性に優れたものが求められ、さらに難燃性、耐熱寿命(耐熱老化性)、耐油性、電気絶縁性に優れた材料を適用する必要がある。そこで、加速電子線等の電離放射線を照射する方法で架橋したポリ塩化ビニル、難燃ポリエチレンを絶縁材料に用いた絶縁電線が使用されており、使用部位に求められる耐熱性に応じて適宜使い分けられている。
近年、ワイヤーハーネスの分野では環境負荷の低減のために、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系物質の使用量の低減が望まれており、ポリプロピレン系や架橋ポリエチレン系等のノンハロゲン難燃材料で絶縁被覆された電線(ノンハロゲン絶縁電線)が開発されている。そして、ノンハロゲン絶縁電線としては、すでに、エンジンルーム内のワイヤーハーネス用電線として使用できる優れた柔軟性、難燃性、耐油性、電気絶縁性等を有するとともに、120℃×10000時間に近い耐熱寿命(アレニウス法)を有するものが実用に供されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレン等のポリオレフィンに、金属水酸化物、酸化亜鉛、ヒドロキシベンゾイルイソシアヌレート系化合物、イオウ系酸化防止剤を含有させてなる組成物(絶縁材料)を、導体上に押出被覆した後、加速電子線を照射し架橋して製造されるノンハロゲン絶縁電線が開示されている。
特開平7−54645号公報
しかしながら、近年、自動車の高性能化、高機能化が進むに従い、さらに優れた耐熱寿命を有するノンハロゲン絶縁電線の要求が高まっており、後述するアレニウス法による耐熱寿命が120℃×10000時間を上回るノンハロゲン絶縁電線の開発が望まれている。しかし、現状では120℃×10000時間を上回る耐熱寿命を有するノンハロゲン絶縁電線は実用化されていない。
本発明は、優れた柔軟性、難燃性、耐油性、電気絶縁性等を有するとともに、従来のノンハロゲン絶縁電線よりさらに優れた耐熱寿命を有するノンハロゲン絶縁電線を提供することをその課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、絶縁層が、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に金属水酸化物、酸化亜鉛及び酸化防止剤を含有する絶縁材料からなり、前記ベース樹脂が、加速電子線の照射等により架橋されているノンハロゲン絶縁電線において、金属水酸化物として、Si化合物及びAl化合物との混合物からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を用いることにより、120℃×10000時間を大きく上回る耐熱寿命が得られることを見いだし、かかる知見に基づき、本発明を完成した。
すなわち本発明は、導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層が、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に、Si化合物とAl化合物との混合物よりなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子、酸化防止剤及び酸化亜鉛を含有する樹脂組成物からなり、かつ前記ベース樹脂を架橋してなることを特徴とするノンハロゲン絶縁電線(請求項1)である。
本発明において、ベース樹脂の主成分として用いられるポリエチレンやエチレン系共重合体としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体等を例示できる。これらは、単独で又は複数種をブレンドして用いることもできる。
本発明は、絶縁材料を構成する金属水酸化物として、Si化合物及びAl化合物との混合物からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を用いることを、その特徴の1つとする。(以下、Si化合物及びAl化合物との混合物からなる被覆層を、「Si/Al混合被覆層」と言い、Si化合物及びAl化合物との混合物からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を、「Si/Al混合被覆水酸化マグネシウム」と言う。)
このSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムを絶縁材料の構成成分として用いることにより、120℃×10000時間を上回る耐熱寿命を有するノンハロゲン絶縁電線が得られる。又、Si/Al混合被覆水酸化マグネシウムを用いることにより、電気絶縁性の点でも好ましい結果が得られる。
さらに、このSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムの分解温度は約300℃であるため、本発明の絶縁電線の製造においては、前記樹脂組成物を、200℃以上の高温で押出加工して導体上に被覆し、絶縁層を形成することが十分可能である。難燃性に優れる金属水酸化物としては他にも水酸化アルミニウムが知られている。しかし、水酸化アルミニウムを配合した場合は、その分解が約180℃から始まるために、押出加工温度を低めに設定する必要があり、押出機回転数を上げることができず、電線、ケーブルの生産性を上げることが困難である。
このSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムは、例えば、特開2005−336472号公報に記載されている。この公報に記載の水酸化マグネシウムは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂及びシリコーン樹脂から選ばれる樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ナイロン樹脂(PA)、液晶ポリマー(LCP)等のエンジニアリングプラスチック樹脂の難燃剤として用いられ、優れた耐湿信頼性や耐酸性を与える。本発明者は、このSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムを、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に配合することにより、この樹脂の組成物から得られる絶縁層の耐熱寿命が大きく向上することを見出したのである。
本発明に用いられるSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムとしては、例えば、特開2005−336472号公報に記載されている方法により調整されたものが好適に用いられる。
すなわち、平均粒径が5μm以下の水酸化マグネシウム粒子に、Si/Al混合被覆層を形成して得られ、このSi/Al混合被覆層の割合が、水酸化マグネシウム100質量%に対して、SiO2とAl2O3換算の合計量で0.2〜10質量%であるものが好ましく例示される。
中でも、平均粒径がおよそ0.3〜4μmの水酸化マグネシウムは、樹脂組成物中への混合加工性や導体上への押出被覆性の観点から好ましく使用できる。又、水酸化マグネシウム粒子は、X線回折での[101]/[001]ピーク強度比が0.9以上で、BET比表面積が1〜4m2/gのものが好ましい。
さらに、前記水酸化マグネシウム粒子としては、水酸化マグネシウムもしくは酸化マグネシウムの水懸濁液に、水酸化リチウムもしくは水酸化ナトリウムを、水酸化マグネシウム換算の固形分100質量%に対して、100質量%以上添加して湿式粉砕し、180〜230℃で水熱処理して得られたものが好ましい。
前記Si/Al混合被覆層を構成するSi化合物としては、ケイ酸ソーダ、コロイダルシリカおよびこれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。前記Si/Al混合被覆層を構成するAl化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ、アルミナゾルおよびこれらの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
Si/Al混合被覆水酸化マグネシウムは、好ましくは、脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類で表面処理されている。(請求項2)脂肪酸、脂肪酸金属塩やシランカップリング剤で表面処理を行うことで、絶縁層の機械特性等を向上させることが可能である。
この表面処理剤として、より具体的には、ステアリン酸等の脂肪酸及びその金属塩、ビニルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、エポキシシラン等を挙げることができる。表面処理剤の使用量は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤のいずれの場合もその合計で、水酸化マグネシウム粒子100質量%に対して0.1〜5質量%の割合が好ましい。表面処理の方法としては、スプレー法等の乾式法、脂肪酸塩やアクリルシランの水分散液中で水酸化マグネシウム粒子を処理の後乾燥する湿式法を挙げることができ、適宜、要求特性に応じて使い分けられる。
絶縁層を構成する樹脂組成物中のSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムの配合量の好ましい範囲は、ケーブルのサイズ、導体の種類、絶縁層の構成により変動し、特定の範囲を規定できないが、ベース樹脂としてのポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体100質量部に対し約30質量部以上であれば、自動車用電線に要求される十分な難燃性が得られる。30質量部未満では難燃性が不足する場合がある。一方、200質量部を超えて配合しても難燃化効果が飽和し、難燃剤増量に見合う難燃化効果の向上は得られない反面、押出加工性が低下する傾向にある。
本発明に用いる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤を例示することができる。特に、120℃×10000時間を大きく上回る耐熱寿命を確保する観点からは、酸化防止剤が、ヒンダードフェノール及びイオウ系酸化防止剤の混合物であることが好ましい(請求項3)。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)等の公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、ポリエチレンやエチレン系共重合体100質量部に対し、1〜10質量部が好ましい。1質量部未満では十分な耐熱寿命が得られない場合がある。一方、10質量部を超えて配合すると、絶縁体表面にヒンダードフェノール酸化防止剤がブリードする等の問題が発生しやすくなる。
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリルチオプロピオネート)等のチオエーテル系酸化防止剤、2−メルカプトベカズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩等の誘導体、メルカプトベンズチアゾール等を例示することができる。その配合量は、ポリエチレンもしくはエチレン系重合対100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では耐熱寿命が不足する場合があり、20質量部を超えて配合しても耐熱寿命の向上効果が飽和し、コスト的に不利になる。
イオウ系酸化防止剤としては、前記の例示されたものの中でも、2−メルカプトベンズイミダゾール及び/又はその誘導体が、150℃×10000時間の耐熱寿命が得られる点で特に好ましく使用できる(請求項4)。
又、120℃×10000時間を上回る耐熱寿命を確保するためには、前記樹脂組成物中への酸化亜鉛の配合が必須である。酸化亜鉛としては、一次粒径が0.05〜5μmのものが好ましく使用できる。前記樹脂組成物中への配合量としては、1質量部〜20質量部が好ましい。1質量部未満では耐熱寿命が不足し、20質量部を超えて配合しても耐熱寿命の向上効果が飽和し、コスト的にも不利になる。
前記樹脂組成物中には、必要に応じて、さらに、無水マレイン酸変成ポリマーやエポキシ変性ポリマー等の官能基を有する反応性ポリマー、滑剤、紫外線吸収剤、重金属不活性化剤、安定剤、着色剤等の公知の配合薬品を添加することが可能である。
前記の樹脂組成物は、前記の構成成分を、オープンロールミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸又は二軸の押出型混合機等の公知の混合機を用いて溶融混合する方法で製造することができる。
本発明のノンハロゲン絶縁電線は、前記の樹脂組成物を、導体上に、公知の溶融押出機を用いて被覆して絶縁層を形成後、前記ベース樹脂を架橋することにより得ることができる。導体としては銅や銅合金の線がその代表例として挙げられるが、銀等の他の金属の線も導体に含まれる。導体の径やその断面形状は特に限定されない。
ベース樹脂の架橋は、加速電子線やガンマ線等の電離放射線の照射で行うことができる。加速電子線は架橋処理のスピードの点で好ましい。加速電圧は絶縁体の厚みによって適宜設定され、300kV〜2MeVであれば自動車用電線のサイズに対応できる。照射線量は30〜500kGyの範囲に設定すれば十分な架橋度が得られる。
又、ベース樹脂の架橋には、有機シラン化合物によるシラン架橋も適用できる。シラン架橋の方法としては、有機過酸化物等のラジカル発生剤を用いて、ベース樹脂に有機シラン化合物を予めグラフト重合し、そこへ酸化防止剤、酸化亜鉛を配合して得た「シラン架橋バッチ」と、ベース樹脂に、Si/Al混合被覆水酸化マグネシウム、シラン架橋触媒等を配合して得た「難燃・触媒バッチ」を、押出加工直前にドライブレンドして用いる方法が、最も効果的に適用できる。
自動車用電線の耐熱寿命評価は、JIS規格、JASO規格に従い、アレニウス法で行われており、例えば、絶縁体を200℃、180℃、160℃のギヤオーブンで促進劣化を行い、それぞれの温度において絶縁体の伸びが100%に低下する時間をその温度での寿命とし、3つの温度での寿命から10000時間の老化により伸びが100%になる温度を直線外挿する方法により行われている。このようにして得られた温度を10000時間寿命推定温度と言う。
本発明のノンハロゲン絶縁電線は、10000時間寿命推定温度が120℃を大きく上回るものであり、従来公知のノンハロゲン絶縁電線より優れた耐熱寿命を有する。特に、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール及びイオウ系酸化防止剤の混合物を用い、このイオウ系酸化防止剤が、2−メルカプトベンズイミダゾール及び/又はその誘導体である場合等は、10000時間寿命推定温度が150℃を上回るものが得られる。
本発明のノンハロゲン絶縁電線は、従来のノンハロゲン絶縁電線と同様な優れた柔軟性、難燃性、耐油性、電気絶縁性等を有するとともに、従来よりもさらに優れた耐熱寿命、すなわち120℃×10000時間を上回る耐熱寿命を有する。
次に本発明を実施するための最良の形態を、実施例並びに比較例を用いてさらに詳しく説明する。なお、本発明はこの実施例の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態への変更も可能である。
樹脂組成物のペレットの製造
表1又は表2の配合組成比に従い、10リットルの加圧ニーダーを用いて150℃で溶融混合し、混合物を排出しフィダールーダーを通して樹脂組成物のペレットを得た。なお、この樹脂組成物には、表1又は表2に記載した構成成分以外に、ステアリン酸を0.5質量部、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール1質量部を共通に配合した。
表1又は表2の配合組成比に従い、10リットルの加圧ニーダーを用いて150℃で溶融混合し、混合物を排出しフィダールーダーを通して樹脂組成物のペレットを得た。なお、この樹脂組成物には、表1又は表2に記載した構成成分以外に、ステアリン酸を0.5質量部、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール1質量部を共通に配合した。
試験用電線(絶縁電線)の製造
50mmφ、L/D=24の単軸押出機を用いて、押出機設定温度:160℃、押出線速:10m/分で、前記で得られた樹脂組成物を導体上に0.9mmの厚さで被覆した。導体には、公称断面積8cm2の錫めっき軟銅撚線を用いた。被覆後、電子線照射を2MeV、150kGyで行い、ベース樹脂を架橋し、試験用電線を製造した。
50mmφ、L/D=24の単軸押出機を用いて、押出機設定温度:160℃、押出線速:10m/分で、前記で得られた樹脂組成物を導体上に0.9mmの厚さで被覆した。導体には、公称断面積8cm2の錫めっき軟銅撚線を用いた。被覆後、電子線照射を2MeV、150kGyで行い、ベース樹脂を架橋し、試験用電線を製造した。
絶縁電線の評価
試験用電線(絶縁電線)の評価は、JASO規格(JASO D608「自動車用耐熱低圧電線」)に則り、機械特性(引張強さ、伸び)、耐電圧試験、耐油試験、耐熱性、低温巻付試験、難燃性、絶縁抵抗試験及び耐熱寿命評価を実施した。以下に個々の試験条件を記述する。
試験用電線(絶縁電線)の評価は、JASO規格(JASO D608「自動車用耐熱低圧電線」)に則り、機械特性(引張強さ、伸び)、耐電圧試験、耐油試験、耐熱性、低温巻付試験、難燃性、絶縁抵抗試験及び耐熱寿命評価を実施した。以下に個々の試験条件を記述する。
1.機械特性
試験用電線より導体を除去してパイプ状試験片(以後、試験用絶縁体と言う。)を得て、インストロン引張試験機を用い、標線間距離50mm、引張速度200mm/分で試験を実施し、引張強さ及び伸びを求めた。
試験用電線より導体を除去してパイプ状試験片(以後、試験用絶縁体と言う。)を得て、インストロン引張試験機を用い、標線間距離50mm、引張速度200mm/分で試験を実施し、引張強さ及び伸びを求めた。
2.耐熱寿命評価(10000時間寿命推定温度)
10000時間寿命推定温度は、試験用絶縁体を200℃、180℃、160℃のギヤオーブンで促進劣化を行い、それぞれの温度において絶縁体の伸びが100%に低下した時間をその温度での寿命とし、3つの温度の寿命から10000時間の老化によって伸びが100%になる温度を直線外挿する方法で求めた。
10000時間寿命推定温度は、試験用絶縁体を200℃、180℃、160℃のギヤオーブンで促進劣化を行い、それぞれの温度において絶縁体の伸びが100%に低下した時間をその温度での寿命とし、3つの温度の寿命から10000時間の老化によって伸びが100%になる温度を直線外挿する方法で求めた。
3.耐電圧試験
試験用絶縁体を、水中に5時間浸漬後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
試験用絶縁体を、水中に5時間浸漬後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
4.耐油試験
試験用絶縁体を、50℃油中に20時間浸漬し、屈曲させた後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
試験用絶縁体を、50℃油中に20時間浸漬し、屈曲させた後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
5.耐熱試験
耐熱試験は、以下の2項目を実施した。
耐熱試験は、以下の2項目を実施した。
[耐熱性I]
試験用絶縁体を、180℃で240時間加熱し、屈曲後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
試験用絶縁体を、180℃で240時間加熱し、屈曲後、ACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、絶縁破壊の無いものを合格とした。
[耐熱性II]
試験用電線を、自己径の2倍の径の円筒に6回巻き付け、240℃で30分間保持し、亀裂、溶融のないことを確認し、亀裂、溶融の無いものを合格とした。
試験用電線を、自己径の2倍の径の円筒に6回巻き付け、240℃で30分間保持し、亀裂、溶融のないことを確認し、亀裂、溶融の無いものを合格とした。
6.低温巻付試験
試験用電線を、−45℃で3時間放置後、マンドレルに巻き付け、絶縁層の低温破壊による導体露出の有無を確認し、かつACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、導体露出又は絶縁破壊の無いものを合格とした。
試験用電線を、−45℃で3時間放置後、マンドレルに巻き付け、絶縁層の低温破壊による導体露出の有無を確認し、かつACを1分間、1kVまでステップアップして印可し、絶縁破壊の有無を確認し、導体露出又は絶縁破壊の無いものを合格とした。
7.難燃性
試験用電線を水平に固定し、10秒間炎を当てた後取り去り、電線の延焼状態を評価した。30秒以内に消火した場合を合格とした。
試験用電線を水平に固定し、10秒間炎を当てた後取り去り、電線の延焼状態を評価した。30秒以内に消火した場合を合格とした。
8.絶縁抵抗試験(体積固有抵抗評価)
試験用電線の製造に用いた樹脂組成物と同一の組成の樹脂組成物に、同一の電子線照射架橋条件(2MeV、150kGy)で電子線照射を行い、1mm厚の樹脂組成物シートを得た。この樹脂組成物シートを用い、ASTM D257に準拠し、23℃、60%RHでの体積固有抵抗を測定した。
試験用電線の製造に用いた樹脂組成物と同一の組成の樹脂組成物に、同一の電子線照射架橋条件(2MeV、150kGy)で電子線照射を行い、1mm厚の樹脂組成物シートを得た。この樹脂組成物シートを用い、ASTM D257に準拠し、23℃、60%RHでの体積固有抵抗を測定した。
前記の表1及び表2で使用した成分の内容を以下に示す。
(*1)エチルアクリレート含量23wt%、MFR=0.5
(*2)平均粒径 2μm ステアリン酸処理
(*3)平均粒径 2μm 未処理
(*4)平均粒径 0.8μm ステアリン酸処理
(*5)ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(*6)ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリルチオプロピオネート)
(*7)2−メルカプトベンズイミダゾール
(*1)エチルアクリレート含量23wt%、MFR=0.5
(*2)平均粒径 2μm ステアリン酸処理
(*3)平均粒径 2μm 未処理
(*4)平均粒径 0.8μm ステアリン酸処理
(*5)ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(*6)ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリルチオプロピオネート)
(*7)2−メルカプトベンズイミダゾール
Si/Al混合被覆水酸化マグネシウム、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤及び酸化亜鉛が配合された樹脂組成物を用いた実施例1〜4(本発明例)では、10000時間寿命推定温度が135℃を超え、優れた耐熱寿命が達成されている。特に、イオウ系酸化防止剤として2−メルカプトベンズイミダゾールを用いた実施例3、4では、150℃を超える10000時間寿命推定温度が達成されている。又、機械特性(引張強さ、伸び)、耐電圧試験、耐油試験、耐熱性、低温巻付試験、難燃性、絶縁抵抗試験の結果も良好であり、従来のノンハロゲン絶縁電線と同様な優れた柔軟性、難燃性、耐油性、電気絶縁性等を有することが示されている。
一方、比較例1は、難燃剤としてSi/Al混合被覆水酸化マグネシウムの代わりに、被覆層を有しない水酸化マグネシウム粒子を用いた例であり、他の点では実施例4の組成と同じであるが、10000時間寿命推定温度は、実施例4よりはるかに低い。又、比較例2、3は、酸化亜鉛を配合しない例であるが、10000時間寿命推定温度は100℃程度と低い。
Claims (4)
- 導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線であって、
前記絶縁層が、ポリエチレン及び/又はエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に、Si化合物とAl化合物との混合物よりなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子、酸化防止剤及び酸化亜鉛を含有する樹脂組成物からなり、かつ前記ベース樹脂を架橋してなることを特徴とするノンハロゲン絶縁電線。 - Si化合物とAl化合物との混合物よりなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子が、脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン絶縁電線。
- 前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール及びイオウ系酸化防止剤の混合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノンハロゲン絶縁電線。
- 前記イオウ系酸化防止剤が、2−メルカプトベンズイミダゾール及び/又はその誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のノンハロゲン絶縁電線。
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- 2006-11-07 JP JP2006301451A patent/JP2008117691A/ja active Pending
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