JP2008117129A - 異常解析用データ収集装置及びこれを用いた車載制御装置 - Google Patents

異常解析用データ収集装置及びこれを用いた車載制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】初期に発生した異常の異常解析データを確実に保存すると共により多くの異常解析データを保存し、異常解析を容易にする。
【解決手段】異常が発生したとき、予め設定された、その異常の解析に必要な状態情報種を特定し、指定された状態情報種に対応する状態情報のみを収集する(ステップS23)。このとき、この異常と同等のタイミングで先に発生した異常解析データが既に記憶されており、その異常解析データの中に、今回の異常の解析に必要な状態情報種が含まれるときには(ステップS22、S24)、今回の異常の解析に必要な状態情報種のうち、既に記憶されている状態情報種を除く状態情報種に相当する状態情報のみを収集し、収集した状態情報からなる異常解析データを生成し(ステップS25)、これを上書き許容記憶領域MA2に記憶する共に、空き領域があれば上書き禁止記憶領域MA1にも記憶する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、予め設定した項目について異常監視を行う監視手段と、この監視手段で異常を検出したときに、その異常解析に必要なデータを記憶手段に記憶する解析データ格納手段とを備えた異常解析用データ収集装置及びこれを用いた車載制御装置に関する。
従来、車載の電動パワーステアリング装置の制御装置としては、例えばトルクセンサの故障解析に利用可能なデータを検出するデータ検出手段と、データ検出手段で検出されたデータを一時記憶する一時記憶手段と、この一時記憶手段に記憶されたデータのうち操舵補助力指令が規定値を超えたときのデータ、すなわち、運転者によるハンドル操作が実際に行われたときのデータのみを保存用メモリに書き込むことにより、故障解析に不要なデータを排除し、有用なデータのみを保存して保存用メモリの容量を節約し、また、保存用メモリを上書き用のメモリと永久保存用の不揮発メモリとによって構成し、一時記憶手段に記憶されたデータの大きさが設定範囲を超えた場合、つまり、何らかの異常が生じている可能性が大きい場合に限って永久保存用の不揮発メモリに追加保存するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−337977号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、何らかの異常が生じている可能性が大きい場合に限って永久保存用の不揮発メモリの保存可能個数を越えると永久保存用の不揮発メモリ内で上書きが行われることになり、初期解析データが消去されてしまうという未解決の課題がある。
すなわち、ユーザーがトルクセンサの故障に気がついてからディーラーや修理工場に修理を依頼する場合に、修理作業中を含めて、永久保存用メモリの保存可能回数を超える回数の異常が発生した場合には、最初の解析データが上書きされ、解析に必要な初期異常データが失われてしまい、異常解析に支障をきたすという未解決の課題がある。また、永久保存用メモリの保存回数分の解析データしか保存することができないということは、すなわち最新の解析データしか保存することができないということであり、最新の解析データや初期異常データだけでなく、現在に至るまでの解析データをより多く収集することの可能な、異常解析データ収集装置が望まれていた。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、故障解析に必要とする異常解析データをより多く保存することの可能な、異常解析データ収集装置及びこれを用いた車載制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る異常解析データ収集装置は、予め設定した項目について異常監視を行う監視手段と、当該監視手段で異常が検出されたとき、当該異常の解析に必要な情報を収集し、これを異常解析データとして記憶手段に記憶する異常データ格納手段と、を備え、前記異常解析データの情報量は、予め異常の種類毎に設定されていることを特徴としている。
また、請求項2に係る異常解析データ収集装置において、前記異常データ格納手段は、前記監視手段で異常が検出されたとき、当該異常の解析に必要な情報の情報種を特定する情報種特定手段を備え、前記情報種特定手段で特定された情報種に相当する情報を収集し、この収集した情報を含み且つ検出された異常の種類に応じた情報量からなる異常解析データを生成し、これを前記記憶手段に記憶することを特徴としている。
また、請求項3に係る異常解析データ収集装置において、前記異常データ格納手段は、前記監視手段により、同等のタイミングで複数の異常が検出され、且つこれら複数の異常の解析に必要な情報種の中に共通の情報種が含まれるときには、当該共通の情報種に相当する情報を、何れか一つの異常についてのみ収集し且つ前記共通の情報種を含む異常に対応する各異常解析データに、これらを関連付けるための関連付け情報を付加することを特徴としている。
また、請求項4に係る異常解析データ収集装置において、前記記憶手段は、前記異常解析データのうち、その情報量が最大となるものを記憶可能に構成されていることを特徴としている。
また、請求項5に係る異常解析データ収集装置において、前記記憶手段は、前記異常解析データの上書きを禁止する上書き禁止記憶領域と前記異常解析データを上書き記憶する上書き許容記憶領域とを有し、前記異常データ格納手段は、前記上書き禁止記憶領域に前記異常解析データを記憶するための空き領域がなくなるまでの間、前記監視手段で検出した最初の異常以後、検出される異常毎にその異常解析データを前記上書き記憶領域に記憶し、且つ少なくとも前記上書き記憶領域に記憶した最後の異常解析データに対応する異常の次に検出した異常以降の異常解析データを、検出される異常毎に前記上書き許容記憶領域に記憶するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項6に係る異常解析データ収集装置において、前記上書き禁止記憶領域及び前記上書き許容記憶領域は、それぞれ、前記異常解析データのうち、その情報量が最大となるものを記憶可能に構成されていることを特徴としている。
さらに、本発明の請求項7に係る車載制御装置は、前記請求項1から請求項6の何れか1項に記載の異常解析データ収集装置を、異常解析用のデータ収集装置として備えることを特徴としている。
本発明の請求項1に係る異常解析データ収集装置によれば、異常データ格納手段は、監視手段で異常が検出されたとき、この異常の解析に必要な情報を収集し、これを異常解析データとして記憶手段に記憶する。ここで、異常の種類によって、その異常解析に必要な情報量が異なることから、異常解析データの情報量を異常の種類毎に決めておき、検出された異常の種類に応じて、予め設定された情報量からなる異常解析データを生成し記憶することによって、1又は複数の異常解析データを記憶手段に記憶することができ、このため、より多くの異常解析データを記憶手段に記憶することができる。このため、より多くの異常解析データを用いて異常解析を行うことができることから、より正確に異常解析を行うことができる。
また、請求項2に係る異常解析データ収集装置によれば、異常の種類によってその異常解析に必要な情報種は異なることから、異常の種類毎に必要な情報種の情報のみを収集し、これを用いて異常の種類に応じた情報量相当の異常解析データを生成しこれを記憶することによって、不要な情報を収集することを回避することができ、その分、記憶手段の記憶領域を有効に活用することができる。
また、請求項3に係る異常解析データ収集装置によれば、同等のタイミングで複数の異常を検出し、且つ、これら複数の異常の解析に必要な情報種に共通の情報種が含まれるときには、共通の情報種の情報については、何れか一つの異常についてのみ収集して異常解析データを生成し、且つ、共通の情報種を含む異常に対応する各異常解析データに、これらを関連付けるための関連付け情報を付加するため、記憶手段に、複数の同等の情報を記憶するといった不要な記憶を行うことを回避することができ、その分、記憶手段の記憶領域を有効に活用することができる。
また、請求項4に係る異常解析データ収集装置によれば、記憶手段は、情報量が最大となる異常解析データを記憶可能に構成されているため、少なくとも1つの異常解析データを確実に記憶することができる。
また、請求項5に係る異常解析データ収集装置によれば、検出した初期の異常は上書き禁止記憶領域に記憶し、最新の異常は上書き許容記憶領域に記憶しているため、これら各記憶領域に記憶された初期及び最新の異常解析データを用いて異常解析を行うことによって、より正確に異常解析を行うことができる。
また、請求項6に係る異常解析データ収集装置によれば、上書き禁止記憶領域及び上書き許容記憶領域は、それぞれ、情報量が最大となる異常解析データを記憶可能に構成されているため、上書き禁止記憶領域及び上書き許容記憶領域のそれぞれに、少なくとも1つの異常解析データを確実に記憶することができる。
さらに、本発明の請求項7に係る車載制御装置によれば、初期及び最新の異常解析データを確実に記憶することができると共に、より多くの異常解析データを記憶することができることから、これらを用いて異常解析を行うことによって、車載制御装置の異常解析をより正確に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を、電動パワーステアリング装置の制御装置に適用した場合について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す概略構成図であって、図中、1はステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力がステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aと出力軸2bとを有し、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
ここで、操舵トルクセンサ3は、メイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sと、両トルクセンサ3m及び3sに供給される電源電圧としてのセンサ電圧を検出するセンサ電圧検出部3wとで構成されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらにユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン機構に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての電動モータ13と、を備えている。
操舵トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を例えばポテンショメータで検出するように構成されている。
この操舵トルクセンサ3を構成する、メイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sの出力は、図2に示すようなクロス特性を有し、入力される操舵トルクが零のときには、共に零となる中立電圧を出力し、メイントルクセンサ3mは、操舵トルクが零の状態から右切りすると、操舵トルクの増加に応じて例えば中立電圧から増加する電圧となり、操舵トルクが零の状態から左切りすると操舵トルクの増加に応じて中立電圧から減少する電圧となるトルク検出値Tmを出力する。逆に、サブトルクセンサ3sは、操舵トルクが零の状態から右切りすると、操舵トルクの増加に応じて中立電圧から減少する電圧となり、操舵トルクが零の状態から左切りすると操舵トルクの増加に応じて中立電圧から増加する電圧となるトルク検出値Tsを出力する。
この操舵トルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tm及びTsは、制御装置14に入力される。
この制御装置14には、バッテリ15から電源リレー16を介して電源が供給されていると共に、トルク検出値Tm及びTsの他に車速センサ17で検出した車速検出値V及び後述のモータ電流検出器25で検出した、電動モータ13に流れるモータ電流検出値IMDも入力され、制御装置14では、入力されるトルク検出値Tm及び車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ13で発生するための操舵補助指令値IM *を公知の手順で算出し、算出した操舵補助指令値IM *とモータ電流検出値IMDとにより、電動モータ13に供給する駆動電流をフィードバック制御する。
制御装置14は、主としてマイクロコンピュータ等の演算処理装置14aによって構成されるが、その内部で実行される演算処理の機能は、図3に示すようになる。なお、図3において、例えば、入力トルク制限器31及び位相補償器32は、独立したハードウェアとしての入力トルク制限器、位相補償器を表すものではなく、演算処理装置で実行される演算処理としての入力トルク制限機能、位相補償機能、すなわち、ソフトウェアを示している。
この制御装置14の機能及び作用を説明すると、操舵トルクセンサ3で検出されたメイントルクセンサ3mのトルク検出値Tmは、例えば電動モータ13の性能に則して入力トルクを制限するための入力トルク制限器31で制限された後、操舵系の安定を高めるための位相補償器32で位相補償され、位相補償されたトルク検出値Tmは操舵補助指令値演算器33に入力される。また、車速センサ17で検出された車速検出値Vも操舵補助指令値演算器33に入力される。
操舵補助指令値演算器33は、入力されたトルク検出値Tm及び車速検出値Vに基づいて電動モータ13に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値IM *を算出する。この操舵補助指令値演算器33には図示しないメモリが付設されており、このメモリには、車速検出値Vをパラメータとし、且つ、トルク検出値Tmに対応する操舵補助指令値IM *を格納しており、この格納されたデータに基づいて操舵補助指令値IM *を設定する。
操舵補助指令値IM *は減算器34に入力されると共に、応答速度を高めるためのフィードフォワード系の微分補償器35に入力され、減算器34の出力(IM *−IMD)は比例演算器36に入力されると共に、フィードバック系の特性を改善するための積分補償器37に入力される。そして、比例演算器36の比例出力は加算器38に入力されると共に、微分補償器35の出力及び積分補償器37の出力も加算器38に入力され、その出力である電流制御値が、操舵系に付与する操舵補助力を制限するためのモータ出力制限器39で制限された後、モータ駆動回路40に入力される。電動モータ13のモータ電流検出値IMDは、モータ電流検出器25で検出され、このモータ電流検出値IMDを、減算器34で操舵補助指令値IM *から減算することにより、操舵補助指令値IM *を達成するようにフィードバック制御が行われる。
また、制御装置14には、イグニッションキー41のON/OFF信号も入力され、このON/OFF信号は、イグニッションON/OFF検出器42に入力され、ここで、イグニッションキー41がオン状態であるかオフ状態であるかが判断される。このオンオフ判断結果は、前記入力トルク制限器31に入力されると共に、フェールセーフ処理器43に入力され、入力トルク制限器31では、イグニッションキー41がオン状態であるときにのみ、制限したトルク検出値Tmを位相補償器32に出力する。
フェールセーフ処理器43には、イグニッションON/OFF検出器42からのオンオフ判断結果が入力されると共に、診断処理器44での診断結果が入力される。この診断処理器44は、電動パワーステアリング装置各部の異常監視を行うための予め設定された各種状態情報を入力し、この状態情報に基づいて各部の異常監視を行う。そして、異常を検出した場合には、これをフェールセーフ処理器43に通知する。
フェールセーフ処理器43は、イグニッションON/OFF検出器42からのオンオフ判断結果に基づきイグニッションキー41がオン状態であり且つ診断処理器44から異常が通知されないときに電源リレー16を導通状態に制御し、バッテリ15の電源電圧をモータ駆動回路40に供給すると共に、電動モータ13とモータ駆動回路40との間に介挿されたモータリレー18を導通状態に制御し、電動モータ13への電源供給を可能とする。前記電源リレー16は、例えば図3に示すように、フェールセーフ処理器43と接地との間に介挿される励磁コイル16aと、バッテリ15とモータ駆動回路40との間に介挿された可動接点16bとから構成され、フェールセーフ処理器43は励磁コイル16aを通電することにより可動接点16bを導通させて電源リレー16を導通状態に制御する。同様に、モータリレー18はフェールセーフ処理器43と接地との間に介挿された励磁コイル18aと、電動モータ13とモータ駆動回路40との間に介挿された可動接点18bとから構成され、フェールセーフ処理器43は、励磁コイル18aを通電することによって可動接点18bを導通させてモータリレー18を導通状態に制御する。
一方、イグニッションキー41がオン状態である状態から、診断処理器44の診断結果が異常となった場合には、電源リレー16を遮断状態に切り換え、バッテリ15からモータ駆動回路40への電源供給を遮断すると共に、モータリレー18を遮断状態に切り換え、モータ駆動回路40から電動モータ13への電源供給を遮断する。
また、イグニッションキー41がオフ状態となったとき、電源リレー16及びモータリレー18を遮断状態に切り換え、バッテリ15からモータ駆動回路40への電源供給を遮断すると共に、モータ駆動回路40から電動モータ13への電源供給を遮断する。
また、フェールセーフ処理器43は、診断処理器44での診断結果が異常であるとき、車両状態記憶器45に対して異常解析データの記憶を指示する。
車両状態記憶器45は、診断処理器44から異常解析データの記憶が指示されたとき、診断処理器44での診断結果に基づき発生した異常の種類を判定し、判定した異常の種類に応じた、この異常が発生した原因を解析するために必要な車両情報や制御装置状態情報等の種類を特定し、車両や制御装置14各部の状態を表す状態情報のうち、発生した異常の内容に応じた状態情報を収集し、これを記憶部46の所定の記憶領域に格納する。
この記憶部46は、図4に示すように、EEPROM等の不揮発メモリで構成される、異常発生初期の異常解析データを書き込むための上書き禁止記憶領域MA1を形成した上書き禁止用メモリ46aと、2回目以降の異常解析データを書き込むための上書き許容記憶領域MA2を形成した上書き許容用メモリ46bと、監視処理において異常解析データを収集する際に用いる監視処理情報が記憶される処理情報メモリ46cとで構成される。
上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2のサイズは、後述の異常解析データの情報量に応じて設定される。この異常解析データの情報量は異常の種類毎に必ずしも同一とはならないことから、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2に異常解析データを格納するためには、少なくともその情報量が最も大きい異常解析データの情報量相当以上の記憶領域が必要であり、且つ、複数の異常解析データを格納するためには、少なくとも、情報量が最大となる異常解析データの情報量相当の記憶領域の2倍の記憶領域が必要となる。つまり、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2のサイズは、情報量が最大となる異常解析データの情報量と、その個数とから算出すればよい。
なお、ここでは、異常解析データを2つ以上記憶させる場合について説明したがその個数は任意に設定することができる。例えば、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2を形成する不揮発性メモリのサイズを最小に抑えたい場合には、最大情報量相当の記憶領域を割り当てればよい。
図5は、制御装置14で実行される監視処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置14ではこの監視処理を予め設定した所定周期で実行する。
まず、ステップS1で、各種センサからのセンサ情報を入力し、これをA/D変換する等の入力処理を行う。
具体的には、図6に示すように、ステップS11で、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tmを入力しこれをA/D変換し、同様にステップS12で、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Tsを入力しこれをA/D変換し、次いでステップS13でセンサ電圧検出部3wから入力されるセンサ電圧検出信号を読込み、これをA/D変換する。
次いで、ステップS14に移行し、制御装置14内部の信号入力値、例えば、モータ電流検出器25で検出したモータ電流検出値IMD、モータ駆動回路40から電動モータ13に供給するモータ端子電圧Vm、このモータ端子電圧Vm及びモータ電流検出値IMDから推定される電動モータ13のモータ角速度、また、制御装置14を主として構成する演算処理装置近傍の温度情報等といった、制御装置状態情報を入力する。
次いで、ステップS15に移行し、制御装置14外から入力される、例えば、エンジン回転数、車速検出値、車輪速度等といった車両の走行状態を表す車両状態情報を入力する。そして、図5に戻る。
次いで、ステップS2に移行し、ステップS1で入力した各種センサ等からの検出情報に基づき、異常診断を行う。例えば、入力した検出値が予め設定した正常範囲内の値であるかどうか等、各種情報に基づいて公知の手順で判断する。
異常診断の診断項目としては、例えば、演算処理装置14aのウォッチドッグタイマが所定時間内にクリアコマンドが生成されずにタイムアップしたか否かを判定することにより演算処置装置14aが正常であるかどうか、また、演算処理装置14a近傍に設けた図示しない温度センサで検出した演算処理装置14a近傍の温度が正常温度範囲内であるかどうか、メイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sのトルク検出値Tm、Tsはそれぞれ正常トルク値範囲内であるかどうか、また、トルク検出値Tm及びTsの差が許容範囲内でありクロス特性に相関異常が発生していないかどうか、トルクセンサ3のセンサ電圧検出部3wからのセンサ電圧が正常電圧範囲内であるかどうか等がある。また、バッテリ電圧が、許容電圧範囲内であるかどうか、モータ電流検出器25で検出されたモータ電流検出値IMDが許容範囲外の値である状態が所定時間以上継続していないかどうか、モータ駆動回路40の駆動電源異常、モータ中性点異常、位置信号検出用電源異常、位置検出用ホールIC異常等が発生していないモータ制御系が正常であるか否か等がある。
そして、一つの診断項目について診断を行ったならば、ステップS3に移行し、ステップS2での異常診断の結果、異常が検出されなければステップS6に移行し、全ての診断項目について診断が終了していなければステップS2に戻って次の診断項目について診断を行う。
ステップS2での異常診断の結果、異常が検出された場合にはステップS4に移行して異常解析データ生成処理を実行し、記憶部46の処理情報メモリ46cに格納されている監視処理情報に基づいて、検出した異常の解析に必要な車両状態情報或いは制御状態情報等の、必要収集情報種を特定し、該当する各種状態情報を、予め設定された設定された規定量ずつ収集しこれをもとに異常解析データを生成した後、ステップS5に移行し、生成した異常解析データを記憶部46の所定領域に記憶する格納処理を実行する。
そして、全ての診断項目について診断が終了していなければステップS2に戻って次の診断項目について診断を行い、全ての診断項目について診断が終了したならば監視処理を終了する。
図7は、異常解析データ生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS21で、今回検出された異常の種類毎に設定される故障コードを特定する。具体的には、処理情報メモリ46cに格納されている監視処理情報を参照し、検出された異常の種類に対応する故障コードを特定する。
ここで、監視処理情報は、異常の種類と、この異常の種類を特定するための故障コードと、この異常が発生した原因を解析するために収集すべき車両状態情報或いは制御装置状態情報の種類を表す必要収集情報種と、これらをもとに異常解析コードを生成したときの全体の情報量とが対応づけられている。なお、前記情報量は、必要収集情報種に相当する状態情報を、収集情報種毎に予め設定された規定量ずつ収集したときのその全体の情報量と、故障コードと、この異常が発生したときのタイミングを表す例えば時刻情報等のタイミング情報とからなる異常解析コードを生成したときの全体の情報量を表す。
この監視処理情報を参照し、検出された異常の種類に応じた故障コードを特定し、これに対応する必要収集情報種を特定したならばステップS22に移行し、前記タイミング情報をもとに、記憶部46の上書き禁止記憶領域MA1又は上書き許容記憶領域MA2に、この検出された異常の発生タイミングと同等のタイミングで発生した異常の異常解析データが記憶されているかどうかを判定する。
この判定は、前記異常解析データに含まれる、この異常が発生したタイミングを特定するためのタイミング情報を参照し、この異常が発生したタイミングが、今回検出された異常の発生タイミングと同等であるかどうかを判断する。例えば、今回検出された異常よりも前の時点で発生し、且つ、今回検出された異常の発生タイミングまでの経過時間が予め設定した所定時間内であるとき、同等のタイミングで発生したと判断する。そして、同等のタイミングで発生したとみなすことの可能な異常解析データが存在しなければステップS23に移行し、監視処理情報において、必要収集情報種として指定された車両状態情報或いは制御状態情報を収集し、監視処理情報から特定されるこの異常の故障コードと、必要収集情報種相当の収集した状態情報と、監視処理情報から特定される、これら必要収集情報種相当の状態情報等から形成される異常解析データ全体の情報量とからなる異常解析データを生成する。そして、これを予め設定した一時記憶領域に記憶する。
一方、同等タイミングで発生した異常の異常解析データが記憶部46に格納されているときにはステップS24に移行し、同等タイミングで発生した異常の異常解析データの中に、今回検出された異常の異常解析に必要な必要収集情報種に相当する情報が含まれるかどうかを判断する。この判断は、例えば、同等タイミングで発生した異常の異常解析データからその故障コードを特定し、監視処理情報を参照してこの故障コードに対応する必要収集情報種を特定する。そして、この特定した必要収集情報種と、今回発生した異常の解析に必要な必要収集情報種とを比較し共通の情報種が含まれるかどうかを判断する。
そして、同等タイミングで発生した異常の異常解析データの何れにも、今回検出された異常の異常解析に必要な必要収集情報種に相当する状態情報が含まれない場合には、ステップS23に移行して必要収集情報種に相当する異常解析データを生成し、今回検出された異常に対応する必要収集情報種に相当する状態情報が記憶部46の異常解析データに含まれる場合にはステップS25に移行し、今回検出された異常に対応する必要収集情報種のうち、同等タイミングで発生した異常の異常解析データに含まれる状態情報種を除く状態情報のみを冗長収集情報として収集すると共に、収集した冗長収集情報全体の情報量を、処理情報メモリ46cに格納されている個別情報量情報に基づいて算出する。
この個別情報量情報は、収集すべき状態情報として指定されている全ての必要収集情報種と、状態情報種毎の収集すべき情報量として予め設定された規定量とが対応付けられて構成されている。
したがって、冗長収集情報として収集した状態情報種のそれぞれの情報量を、個別情報量情報から特定し、その総和を算出することにより、冗長収集情報全体の情報量を算出する。そして、検出された異常の故障コードと、収集した冗長収集情報と、検出された異常の発生タイミングを特定するタイミング情報と、異常解析データの情報量とからなる異常解析データを生成する。なお、この異常解析データの情報量は、算出した冗長収集情報全体の情報量と、既知である故障コード、タイミング情報及び情報量それぞれの情報量との総和から算出される。
例えば、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tm異常と、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts異常と、メイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sのクロス特性の相関異常とは、操舵トルクセンサ3に電源を供給するための電源ライン(+又は−)に断線、地絡・短絡等の異常が発生した場合、或いは、メイントルクセンサ3m、サブトルクセンサ3sからのトルク検出値Tm及びTsが異常となった場合には、これらの異常が同等のタイミングで発生する可能性がある。つまり、これら異常の発生には関連性がある。
前記メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tmの異常解析に必要な車両状態情報及び制御装置状態情報は、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tm、メイントルクセンサ3mへ供給される電源電圧、操舵補助指令値IM *等である。同様に、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Tsの異常解析に必要な車両状態情報及び制御装置状態情報は、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts、サブトルクセンサ3sへ供給される電源電圧、操舵補助指令値IM *等である。また、メイン及びサブトルクセンサ3m、3sのクロス特性の相関異常の解析に必要な車両状態情報及び制御装置状態情報は、メイン及びサブトルクセンサ3m、3sのトルク検出Tm及びTsと、メイン及びサブトルクセンサ3m、3sに供給される電源電圧と、操舵補助指令値IM *等である。
ここで、これら異常が同時期に発生した場合、その異常解析を行うためには、異常毎にその異常解析で必要とする状態情報を収集する必要があるが、上述のように、トルク検出値Tm異常の解析に必要な必要収集情報種、トルク検出値Ts異常の解析に必要な必要収集情報種、メイン及びサブトルクセンサ3m、3sのクロス特性の相関異常の解析に必要な必要収集情報種のうち、トルクセンサ3m、3sへ供給される電源電圧、操舵補助指令値IM *等は共通である。したがって、何れかの異常の必要収集情報種としてこれら電源電圧、操舵補助指令値IM *等を収集すれば、これら異常は同等の時期に発生していることから、他の異常解析においては、先に発生した異常の必要収集情報種として収集された電源電圧、操舵補助指令値IM *等を流用することができる。
したがって、メイントルクセンサ3mにトルク検出値Tm異常が発生した場合、この発生タイミングと同等のタイミングで、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts異常が発生しているときには、トルク検出値Tm異常の解析に必要な状態情報として、必要収集情報種ではなく、共通する状態情報種を除いた状態情報を収集する。つまり、トルク検出値Tm異常の解析に必要な情報として、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts異常においてその必要収集情報種に含まれないメイントルクセンサ3mのトルク検出値Tmのみを冗長収集情報として収集する。
同様に、メイントルクセンサ3mにトルク検出値Tm異常が発生した場合、この発生タイミングと同等のタイミングで、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常が発生しているときには、このクロス特性の相関異常の必要収集情報種には、トルク検出値Tm異常の必要収集情報種が全て含まれることから、トルク検出値Tm異常の冗長収集情報として何れの状態情報も収集しない。
また、サブトルクセンサ3sにトルク検出値Ts異常が発生した場合、この発生タイミングと同等のタイミングでメイントルクセンサ3mにトルク検出値Tm異常が発生しているときには、サブトルク検出値Tsのみが冗長収集情報として収集される。また、サブトルクセンサ3sにトルク検出値Ts異常が発生した場合に、トルクセンサ3にクロス特性の相関異常が発生しているときには、何れの状態情報も冗長収集情報として収集されない。
また、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常が発生した場合、これと同等のタイミングで、メイントルクセンサ3mにトルク検出値Tm異常が発生しているときには、その冗長収集情報としてサブトルクセンサ3sのサブトルク検出値Tsが収集される。同様に、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常が発生したときに、サブトルクセンサ3sにトルク検出値Ts異常が発生しているときには、メイントルクセンサ3mのメイントルク検出値Tmが冗長収集情報として収集される。
そして、このようにして冗長収集情報からなる異常解析データを生成したならばこれを、所定の一時記憶領域に記憶する。そして、異常解析データ生成処理を終了する。
図8は、格納処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この格納処理では、まずステップS31で、上書き禁止用メモリ46aの上書き禁止記憶領域MA1に、既に異常解析データが格納されているかどうかを判断する。具体的には、上書き禁止記憶領域MA1に異常解析データの書き込みが行われたときに“1”に設定される上書き禁止フラグF1が“1”に設定されているかどうかに基づき判断する。
そして、上書き禁止フラグF1が“0”に設定されており、上書き禁止記憶領域MA1にまだ異常解析データが格納されていないときにはステップS32に移行する。ステップS32では、異常解析データの書き込み開始位置として、上書き禁止用メモリ46aの上書き禁止記憶領域MA1の先頭位置を設定する。
次いで、ステップS33に移行し、ステップS32で指定された書き込み開始位置への異常解析データの書き込みを行う。すなわち、図5のステップS4で収集し所定の記憶領域に一時記憶した異常解析データを、上書き禁止記憶領域MA1の先頭から順に書き込む。そして、上書き禁止フラグF1を“1”に設定する。
一方、ステップS31で、上書き禁止フラグF1が“1”であって、上書き禁止記憶領域MA1に既に異常解析データが書き込まれている場合には、ステップS34に移行し、検出対象を上書き禁止記憶領域M1とし、この上書き禁止記憶領域M1に書き込みを行う際の、異常解析データの書き込み開始位置を算出する。
この異常解析データの書き込み開始位置の算出は、図9のフローチャートに示す手順で行う。
まず、ステップS51で、検出対象である上書き禁止記憶領域MA1に既に書き込まれている異常解析データの記憶量の総和を算出するための記憶量算出値SUMを初期化し、SUM=0とする。
次いでステップS52に移行し、上書き禁止記憶領域MA1に記憶されている、発生した異常毎の異常解析データについてその故障コードを参照し、一番目の故障コードについて、この故障コードの異常が発生した場合に収集すべき車両情報の情報量を、その異常解析データから特定する。そして、特定した情報量を記憶量算出値SUMに加算し、これを新たな記憶量算出値SUMとして更新記憶する。
次いでステップS53に移行し、上書き禁止記憶領域MA1において一番目の故障コードに対応する異常解析データに続けて他の異常解析データが格納されているかを判断し、他の異常解析データが格納されている場合にはステップS52に戻り、その異常解析データの情報量から二番目の異常解析データの情報量を特定し、これを記憶量算出値SUMに加算する。
そして、さらに他の異常解析データが格納されていればステップS52に戻って同様の手順でその情報量を記憶量算出値SUMに加算し、上書き禁止記憶領域MA1に記憶された全ての異常解析データについてその情報量を順次加算し、その総和である記憶量算出値SUMを算出したならば、これを所定の記憶領域に一時記憶する。また、上書き禁止記憶領域MA1の先頭から記憶量算出値SUM相当だけ進んだ位置、すなわち、情報未書き込み領域を書き込み開始位置として設定する。そして、異常解析データの書き込み開始位置の算出処理を終了する。
このようにして、異常解析データの書き込み開始位置を算出したならば、図8に戻ってステップS34からステップS35に移行し、上書き禁止記憶領域MA1に、発生した異常に対応する異常解析データを格納できるかどうかを判断する。具体的には、既知の上書き禁止記憶領域MA1の記憶可能情報量と、算出した記憶量算出値SUMとから、格納可能な情報量、つまり上書き禁止記憶領域MA1の空き領域のサイズを推定し、これと、一時記憶している発生した異常に対応する異常解析データに含まれる情報量とを比較することにより判断する。
格納すべき異常解析データの情報量が、算出した空き領域のサイズよりも小さく、上書き禁止記憶領域MA1に、発生した異常に対応する異常解析データを格納可能と判断されるときにはステップS33に移行し、上書き禁止記憶領域MA1への異常解析データの書き込みを行い、書き込み開始位置として指定された位置への書き込みを行う。つまり、上書き禁止記憶領域MA1の先頭から記憶量算出値SUM相当だけ進んだ位置が、書き込み開始位置として設定されていることから、既に書き込まれている異常解析データに続いて、新たな異常解析データが書き込まれることになる。そして、ステップS36に移行する。
一方、格納すべき異常解析データの情報量が、算出した空き領域のサイズよりも大きく、上書き禁止領域MA1に異常解析データの格納は不可と判断されるときには、上書き禁止記憶領域MA1への異常解析データの書き込みは行わず、そのままステップS36に移行する。
このステップS36では、上書き許容記憶領域MA2に、既に異常解析データが格納されているかどうかを判断する。具体的には、上書き許容記憶領域MA2に異常解析データの書き込みが行われたときに“1”に設定される上書き許容フラグF2が“1”に設定されているかどうかに基づき判断する。
そして、上書き許容フラグF2が“0”に設定されており、上書き許容記憶領域MA2にまだ異常解析データが格納されていないときにはステップS37に移行する。ステップS37では、異常解析データの書き込み開始位置として、上書き許容メモリ46bの上書き許容記憶領域MA2の先頭位置を設定する。
次いで、ステップS38に移行し、ステップS37で指定された書き込み開始位置への異常解析データの書き込みを行う。すなわち、上書き許容記憶領域MA2の先頭から順に、一時記憶した異常解析データを書き込む。そして、上書き許容フラグF2を“1”に設定する。一方、ステップS36で、上書き許容フラグF2が“1”であって、上書き許容記憶領域MA2への異常解析データの書き込みが既に行われている場合には、ステップS39に移行し、検出対象を上書き許容記憶領域M2とし、この上書き許容記憶領域M2に書き込みを行う際の、異常解析データの書き込み開始位置を算出する。この書き込み開始位置の算出は、図9に示す上記と同様の手順で行う。つまり、上書き許容記憶領域M2に既に記憶されている異常解析データの情報量の総和(記憶量算出値SUM)を算出し、これに基づき、書き込み開始位置を設定する。
このようにして、書き込み開始位置を算出したならば、ステップS40に移行し、発生した異常に相当する異常解析データを、上書き許容記憶領域M2に書き込み可能かどうかを判定する。この判定は、上書き許容記憶領域M2の既知の記憶可能な情報量と、現在書き込み許容記憶領域M2に記憶されている情報量の総和である記憶量算出値SUMと、格納すべき異常解析データの情報量とから、上記ステップS35での判断と同様の手順で行う。
上書き許容記憶領域M2の空き領域が、格納すべき異常解析データの情報量よりも大きく、異常解析データの記憶が可能と判断されるときにはそのままステップS38に移行し、上書き許容記憶領域M2のステップS39で設定された書き込み開始位置から順に、一時記憶した異常解析データを格納する。
一方、上書き許容記憶領域M2の空き領域が、格納すべき異常解析データの情報量よりも小さく、上書き許容記憶領域M2への異常解析データの記憶が不可と判断されるときには、ステップS41に移行し、上書き許容記憶領域M2に格納されている異常解析データのうち不要なデータ、すなわち、古いものから順に削除して、今回の異常解析データを記憶するための空き領域を形成する。また、削除によって、上書き許容記憶領域M2の先頭に形成された空き領域を詰め、上書き許容記憶領域M2の先頭から、異常解析データが古い順に格納されるようにデータ移動を行う。そして、空き領域の先頭位置、すなわち既に格納されている異常解析データの次の位置を、書き込み開始位置として設定する。そして、ステップS38に移行し、指定された領域への異常解析データの書き込みを行う。
次に、上記実施の形態の動作を説明する。
今、製作工場で電動パワーステアリング装置の制御装置の組み付けが完了した出荷段階であって、この段階では、上書き禁止用メモリ46a、上書き許容用メモリ46bには異常解析データが全く記憶されていないクリア状態とすると共に、上書き禁止フラグF1及び上書き許容フラグF2は共に“0”にリセットしておく。
この出荷状態から車両の使用を開始するために、キースイッチをオン状態とすることにより、電源リレー16及びモータリレー18が導通状態となり、制御装置14への電源供給が開始され、図3に示す操舵補助制御が実行開始されると共に、図5に示す監視処理が開始される。
このため、トルクセンサ3で検出したトルク検出値Tm、車速センサ17で検出した車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ13で発生するための操舵補助指令値IM *が算出され、算出された操舵補助指令値IM *とモータ電流検出値IMDとにより、フィードバック制御された駆動電流がモータ駆動回路40から電動モータ13に供給されることによって、電動モータ13でステアリングホイール1に作用された操舵トルクに応じた操舵補助力が発生され、これが減速ギヤ11を介して出力軸2bに伝達される。
このとき、異常監視処理では、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tm、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts、トルクセンサ3のセンサ電圧検出部3wから入力される電圧信号や、モータ電流検出値IMD、モータ端子電圧Vm、モータ角速度、演算処理装置近傍の温度情報等の制御装置14内部の各種制御装置状態情報や、エンジン回転数、車速検出値、車輪速度等の制御装置14外から入力される各種車両情報を入力し(ステップS1)、これらに基づき、公知の手順で所定の診断項目について異常診断を行う(ステップS2)。そして、何れの診断項目についても異常が発生していなければ、そのまま処理を終了し、予め設定した所定周期でこの監視処理を実行し、各部の作動状況を常時監視する。
この制御装置14の各部が正常な状態から例えばトルクセンサ3のメイントルクセンサ3mに短絡や断線等が発生して、トルク検出値Tmが正常範囲外に逸脱する状態となると、図5の処理においてステップS3からステップS4に移行し、記憶部46の処理情報メモリ46cに格納されている監視処理情報に基づいて、トルク検出値Tmの異常に相当する故障コードが特定される。また、トルク検出値Tm異常の解析に必要な必要収集情報種が特定される(図7のステップS21)。
この時点では、何れの異常もまだ発生しておらず、上書き禁止フラグF1及び上書き許容フラグF2は共に“0”であって、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2の何れにも異常解析データは格納されていないことから、図7のステップS22からステップS23を経てステップS23に移行し、必要収集情報種として指定された状態情報が収集される。そして、このトルク検出値Tm異常に対応する故障コードと、収集した必要収集情報種に相当する状態情報と、このトルク検出値Tm異常が発生したタイミングを表すタイミング情報と、これらから形成される異常解析データの情報量とからなる異常解析データが生成され、所定の領域に一時記憶される。
そして、この時点では、上書き禁止フラグF1は“0”であって、上書き禁止記憶領域MA1には異常解析データが格納されていないことから、図8のステップS31からステップS32に移行して、上書き禁止記憶領域MA1の先頭位置が書き込み開始位置として設定されるため、一時記憶されていたトルク検出値Tmの異常解析データは、上書き禁止記憶領域MA1の先頭位置から順に格納され、上書き禁止フラグF1は“1”に更新される。
さらに、この時点では、上書き許容フラグF2は“0”であって、上書き許容記憶領域MA2には異常解析データは格納されていないことから、ステップS36からステップS37に移行し、上書き許容記憶領域MA2の先頭位置が書き込み開始位置として設定される。このため、一時記憶されていたトルク検出値Tmの異常解析データは、上書き許容記憶領域MA2の先頭位置から順に書き込まれる(ステップS38)。そして、上書き許容フラグF2が“1”に更新される。
これによって、トルク検出値Tm異常の異常解析データが、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2の両方に格納されることになる。
この状態からさらに車速センサと温度センサに異常が発生した場合には、まず車速センサ異常について上記と同様にして処理情報メモリ46cに格納されている監視処理情報から、故障コードが特定されると共に、必要収集情報種が特定される。このとき、トルク検出値Tm異常の発生タイミングよりも所定時間以上の後に発生したものとすると、ステップS22からステップS23に移行し、必要収集情報種相当の状態情報が収集されこれをもとに異常解析データが生成される。
この時点で、記憶部46の上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2には既にトルク検出値Tm異常の異常解析データが格納されていることから、図8のステップS31からステップS34に移行し、上書き禁止記憶領域MA1に記憶されている異常解析データ毎の情報量を加算し上書き禁止記憶領域MA1に記憶されている情報量の総和SUMを算出する。この場合、トルク検出値Tm異常の異常解析データの情報量が総和SUMとなり、その異常解析データに続くアドレスが書き込み開始位置として設定される。
そして、上書き禁止記憶領域MA1の記憶可能情報量から記憶量算出値SUMを減算した上書き禁止記憶領域MA1の空き領域のサイズが、格納すべき車速センサ異常の異常解析データの情報量よりも大きければ、上書き禁止記憶領域MA1へのさらなるデータの書き込みが可能として、車速センサ異常の異常解析データは、上書き禁止記憶領域MA1に既に書き込まれているトルク検出値Tm異常の異常解析データの次の書き込み位置から、書き込みが行われる(ステップS33)。同様にして、上書き許容記憶領域MA2においても、トルク検出値Tm以上の異常解析データの次の書き込み位置が、書き込み開始位置として設定され、この位置から、車速センサ異常の異常解析データの書き込みが行われる。
これによって、車速センサ異常の異常解析データは、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2の両方に記憶されることになり、これら記憶領域MA1及びMA2のそれぞれには、トルク検出値Tm異常及び車速センサ異常の異常解析データが共に格納されることになる。
続いて、温度センサ故障に対する処理が行われ、上記と同様にして故障コードが特定されると共に必要収集情報種が特定される(ステップS21)。そして、この温度センサ故障の発生タイミングと、上書き禁止記憶領域MA1、上書き許容記憶領域MA2に格納されている異常解析データのタイミング情報とから同等タイミングで発生した異常が存在するかどうかが検索され、この場合、車速センサ異常と温度センサ故障とが同等のタイミングで発生しており、そのタイミング情報から発生タイミングが所定時間内であって同等のタイミングで発生されたと判断されることから、ステップS22からステップS24に移行し、車速センサ異常の異常解析データの中に温度センサ故障の必要収集情報種が含まれるかどうかが検索され、温度センサ故障の必要収集情報種が含まれないものとすると、ステップS24からステップS23に移行し、必要収集情報種相当の状態情報からなる異常解析データが生成されこれが所定の記憶領域に一時記憶される。
そして、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2に新たな異常解析データの書き込みが可能な場合は、上記と同様の手順で異常解析データはこれら上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2に順次格納される。これによって、図10(a)に示すように、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2には、共に同一の異常解析データが格納されることになる。
この状態から、さらに何らかの異常、例えば車輪速度異常が発生し、上書き禁止記憶領域MA1に格納されている異常解析データの記憶量算出値SUMから算出される、上書き禁止記憶領域MA1の空き領域のサイズと、車輪速度異常の異常解析データの情報量とから、この車輪速度異常の異常解析データの書き込みは不可と判断されるときには、上書き禁止記憶領域MA1への書き込みは行わずステップS35からそのままステップS36に移行し、上書き許容記憶領域MA2について書き込み可能かどうかを判断する。そして、上書き許容記憶領域MA2へ記憶されている異常解析データの記憶量算出値SUMから、車輪速度異常の異常解析データの書き込みは不可と判断されるとステップS40からステップS41に移行し、上書き許容記憶領域MA2に格納されている異常解析データのうち、最も古いものから順に異常解析データを削除し、車輪速度異常の異常解析データの情報量相当の空き領域が形成されるまで削除する。例えば、削除前の上書き許容記憶領域MA2の空き領域と、削除した異常解析データの情報量とを順次加算して空き領域のサイズを算出し、この空き領域のサイズが車輪速度異常の異常解析データの情報量以上となるまで異常解析データを削除する。
上書き許容記憶領域MA2に、車輪速度異常の異常解析データを格納可能な空き領域を形成した場合、上書き許容記憶領域MA2への書き込みはその先頭位置から行われるため、古い順に異常解析データを削除すると、上書き許容記憶領域MA2の先頭位置、及び上書き許容記憶領域MA2に格納されている異常解析データの後部に空き領域が形成されることから、上書き許容記憶領域MA2内で異常解析データの移動を行い、その先頭位置から古い順に異常解析データを格納し、これに続いて連続した空き領域を形成する。そして、格納されている異常解析データに続く書き込み位置を、車輪速度異常の異常解析データの格納位置として指定し、この書き込み位置を先頭として車輪速度異常の異常解析データを書き込む(ステップS38)。
続いて新たな異常が発生した場合も同様の手順で処理を行って、上書き禁止記憶領域MA1の空き領域に異常解析データを書き込み可能であればここに書き込みを行う。また上書き許容記憶領域MA2の空き領域に新たな異常解析データを書き込み可能であればここに書き込みを行い、書き込み不可であれば、上書き許容記憶領域MA2の古いデータから順に削除して、新たな異常解析データを格納するための連続した空き領域を形成し、ここに新たな異常解析データを格納する。
これによって、図10(b)に示すように、最新の異常解析データから順に、新しい異常解析データが格納され、且つ、上書き許容記憶領域MA2の先頭から古いものから順に格納されることになる。
したがって、出荷後初期に発生した異常については上書き禁止記憶領域MA1に記憶されその後上書きが禁止されるので、電動パワーステアリング制御装置で発生する最初の異常を確実に保持することができると共に、その後の異常については、上書き許容記録領域MA2に記憶されることになり最新の異常解析データが格納されることになる。
このため、異常解析を行う場合には、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2に記憶されている異常解析データを読み出すことにより、最初の異常の発生原因を確実に解析することができると共に、その後の異常についても、上書き記憶されてはいるが、他の異常が発生しているか否かを把握することができる。
また、異常解析データを生成する際には、異常の種類毎に、この異常の原因を解析するために必要な情報のみを規定量だけ収集することで異常の種類毎に異常解析データの情報量を規定している。
つまり、異常の種類によって、その異常解析に必要な情報は異なっており、図11に示すように、車速センサの異常が発生した場合、温度センサ故障が発生した場合、駆動回路故障が発生した場合においてそれぞれで必要な情報種は異なっている。例えば、駆動回路故障が発生した場合に備えて、駆動回路故障の異常解析に必要な情報種を、どの異常が発生した場合でも収集するようにした場合、車速センサや温度センサ故障では実際に不必要な情報も含まれていることから、車速センサや温度センサ故障の解析に真に必要な異常解析データよりもその情報量は大きい。しかしながら、上述のように、個々の異常の種類に応じたその異常解析に必要な情報のみを収集し異常解析データを生成しているから、異常解析データの情報量を最小限に抑えることができる。
したがって、このように、その異常解析に必要な状態情報のみを規定量ずつ収集して異常解析データの情報量を異常の種類毎に規定することで、異常解析データの情報量を最小限に抑え、各記憶領域を有効に利用することができ、より多くの異常解析データを記憶することができる。したがって、その分、異常解析を容易に行うことができる。
また、このとき、初期の異常解析データを、上書き禁止記憶領域MA1だけでなく上書き許容記憶領域MA2にも書き込むようにしている。したがって、異常の発生回数やその異常解析データの情報量によっては、上書き許容記憶領域MA2にも初期の異常解析データが残っている可能性がある。
したがって、上書き禁止記憶領域MA1に書き込み異常が発生した場合或いは読み出し時に読み出し異常が発生し、上書き禁止記憶領域MA1から初期の異常解析データを獲得することができない場合には、上書き許容記憶領域MA2に初期の異常解析データが残っていればこれを参照することによって、初期に発生した異常の状態を把握することができる。
この状態から、さらに、メイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sへの電源ラインが共に切断され、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tm異常、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts異常、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常が検出されると、上記と同様にして、異常が検出された順に、まず、例えばメイントルクセンサ3m異常についてその異常解析データが生成される。この時点で、上書き禁止記憶領域MA1、上書き許容記憶領域MA2には、同等タイミングで発生した異常が記録されていないものとすると、ステップS22からステップS23に移行し、まず、メイントルクセンサ3m異常の異常解析に必要な必要収集情報種として設定されている、メイントルク検出値Tm、バッテリ電圧、操舵補助指令が収集されて異常解析データが生成される。そして、上記と同様の手順で上書き許容記憶領域MA2に空き領域が形成され、ここに書き込まれる。
次に、サブトルクセンサ3s異常についてその異常解析データが生成される。この場合、サブトルクセンサ3s異常とメイントルクセンサ3m異常とは同等タイミングで発生されており、上書き許容記憶領域MA2に格納されている、メイントルクセンサ3m異常の異常解析データのタイミング情報から、メイントルクセンサ3m異常は、サブトルクセンサ3s異常と同等タイミングで発生したと判定されることから、ステップS22からステップS24に移行し、サブトルクセンサ3s異常と同等タイミングで発生したと判定されるメイントルクセンサ3m異常の異常解析データにおいて、サブトルクセンサ3s異常の必要収集情報種のうちの何れかが含まれるかどうかが判定される。この場合、サブトルクセンサ3s異常の必要収集情報種は、サブトルク検出値Ts、バッテリ電圧、操舵補助指令であり、メイントルクセンサ3m異常の異常解析データには、メイントルク検出値Tm、バッテリ電圧、操舵補助指令が含まれ、サブトルクセンサ3s異常の必要収集情報種である、バッテリ電圧及び操舵補助指令が含まれることから、サブトルクセンサ3s異常の必要収集情報種である、サブトルク検出値Ts、バッテリ電圧及び操舵補助指令のうち、メイントルク検出値Tm異常の異常解析データに含まれる、バッテリ電圧及び操舵補助指令を除く、サブトルク検出値Tsのみが冗長収集情報として収集される。また、処理情報メモリ46cに格納されている個別情報量情報から、このサブトルク検出値Tsの情報量が特定され、これに基づき、冗長収集情報としてサブトルク検出値Tsのみを含む異常解析データ全体の情報量が算出され、これに基づき異常解析データが生成される。そして、上記と同様の手順で上書き許容記憶領域MA2に空き領域が形成され、ここに格納される。
このとき、この冗長収集情報からなる異常解析データの情報量が小さく、上書き禁止記憶領域MA1の空き領域に格納可能な場合には、上書き禁止記憶領域MA1に記憶する。上書き禁止記憶領域MA1には、最初の異常から異常が発生する毎にその異常解析データが格納されており、上書き禁止記憶領域MA1の空き領域と、格納すべき異常解析データの情報量との関係から異常解析データの記憶が不可であるものについてはその異常解析データを上書き禁止記憶領域MA1への記憶は行わないが、その後、空き領域に格納可能な異常解析データを有する異常が発生した時点でその異常解析データを上書き禁止記憶領域MA1に記憶するから、上書き禁止記憶領域MA1を可能な範囲で有効に活用することができる。また、仮に、上書き許容記憶領域MA2へのこの冗長収集情報からなる異常解析データの書き込みや読み出しが不可となった場合であっても、この異常解析データは、上書き禁止記憶領域MA1にも記憶されていることから、この上書き禁止記憶領域MA1に記憶されている異常解析データを用いることで、より確実に異常解析を行うことができる。また、このとき、上書き禁止記憶領域MA1には、最初の異常から順に異常が発生する毎に異常解析データが記憶され、その後は、全ての異常の異常解析データではなく、記憶可能な異常解析データのみが記憶されることになるが、各異常解析データにはタイミング情報が含まれるため、このタイミング情報を参照することによって、初期に発生した異常かどうかを容易に認識することができる。
そして、このようにしてサブトルクセンサ3s異常についてその異常解析データが生成されると続いて、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常についてその異常解析データが生成される。このクロス特性の相関異常は、メイントルク検出値Tm異常及びサブトルク検出値Ts異常と同等のタイミングで発生していることから、上書き許容記憶領域MA2に格納されているこれらの異常解析データのタイミング情報に基づき、メイントルク検出値Tm異常及びサブトルク検出値Ts異常が、クロス特性の相関異常と同等のタイミングで発生したと判定される(ステップS22)。ここで、メイントルク検出値Tm異常の異常解析データには、メイントルク検出値Tm、バッテリ電圧、及び操舵補助指令が含まれ、サブトルク検出値Ts異常の異常解析データには、サブトルク検出値Tsが含まれる。クロス特性の相関異常の必要収集情報種は、メイントルク検出値Tm、サブトルク検出値Ts、バッテリ電圧及び操舵補助指令であって、これら状態情報は、全て、メイントルク検出値Tm異常の異常解析データ及びサブトルク検出値Ts異常の異常解析データに含まれることから、クロス特性の相関異常では、必要収集情報種相当の状態情報の収集は行わず、冗長収集情報としても何れの状態情報の収集も行わず、故障データと、タイミング情報と、情報量とからなる異常解析データを生成する。そして、上書き許容記憶領域MA2に空き領域を形成し、ここに格納する。
ここで、本来、サブトルクセンサ3s異常の異常解析には、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Tsだけでなく、バッテリ電圧と、操舵補助指令値も必要であり、また、トルクセンサ3のクロス特性の相関異常の解析には、メイン及びサブトルクセンサ3m、3sのトルク検出値Tm、Tsと、バッテリ電圧と、操舵補助指令値とが必要である。
しかしながら、これらトルクセンサ3に関連した3つの異常は同等のタイミングで発生していることから、3つの異常解析データのうちの何れかで収集していればこれを流用することができる。したがって、収集すべき同一種の情報であり且つ同等のタイミングで発生した情報が既に記憶領域に記憶されている場合にはその情報は収集しないようにすることによって、その分、記憶領域に記憶する情報量を削減することができる。よって、その分、より多くの他の情報を記憶領域に記憶することができる。
そして、このようにして収集された異常解析データに基づき異常解析を行う場合には、記憶部46に記憶されている故障コードからその異常内容を特定し、その異常解析データをもとに異常解析を行う。このとき、この異常の解析に必要な情報全てがその異常解析データに含まれるかどうかを判定し、必要な情報全てが含まれない場合、つまり、必要情報種相当の情報からなる異常解析データで有る場合にはその収集データを用いて解析を行い、異常解析データに必要な情報全てが含まれない場合、つまり、冗長情報種相当の情報からなる異常解析データである場合には、記憶部46に格納されている異常解析データのうち、そのタイミング情報から特定される発生タイミングが、解析対象の異常のタイミング情報から特定される発生タイミングよりも前であり且つ解析対象の異常との発生タイミングが同等とみなすことの可能な所定時間内に発生した異常の中から、解析対象の異常で必要としている必要情報種のうちの不足分を収集し、解析対象の異常解析に必要な情報種相当の情報を記憶部46から収集した後、これを用いて異常解析を行う。
この場合、解析対象の異常の異常解析データには、その異常解析に必要な情報全ては含まれないが、同等のタイミングで発生した他の異常の異常解析データに含まれる、該当する情報を流用することで何ら問題なく異常解析を行うことができる。よって、このように、同等タイミングで発生した複数の異常においては、その異常解析に必要な必要収集情報種として同一の情報が設定されている場合は、何れか1つの異常の異常解析データにおいてのみ収集するようにし、他の異常解析データでは収集せず、実際に異常解析を行う際に、同等のタイミング情報を有する異常解析データに含まれる情報を流用することによって、複数の異常解析データに同一情報種の情報として同等の情報が複数記憶されることを回避しその分、記憶部46への格納情報の情報量の削減を行うことができる。
よって、その分他の異常解析データをより多く記憶することができることから、異常解析をより的確に行うことができる。
また、上記実施の形態においては、発生した異常の種類や、必要収集情報種相当の状態情報を収集したか冗長収集情報を収集したか等によって異なる異常解析データの情報量を、異常解析データ毎に設定したり、或いは共通の状態情報を含む複数の異常が同等タイミングで発生した場合には算出したりすることで、その情報量情報を、異常解析データと対応付けて保持している。したがって、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2の既知の記憶可能情報量と、書き込みが行われている異常解析データそれぞれの情報量とから、上書き禁止記憶領域MA1及び上書き許容記憶領域MA2の空き領域のサイズを把握することができる。よって、新たな書き込み対象の異常解析データの情報量と、空き領域のサイズとから、新たな異常解析データの書き込みが可能かどうかを容易に判断することができる。特に、上書き禁止記憶領域の場合、空き領域のサイズと新たな書き込み対象の異常解析データの情報量との関係から、ある異常解析データについては書き込みを行うことができない場合であっても、これよりも情報量の少ない異常解析データの場合には書き込みを行うことができることから、初期の異常解析データのうち、格納可能なものを書き込むことができすなわち上書き禁止記憶領域をより有効に活用することができる。同様に、上書き許容記憶領域の場合も、空き領域のサイズと新たな書き込み対象の異常解析データの情報量との関係から、削除すべき異常解析データ数を的確に選定することができる。よって、上書き許容記憶領域をより有効に活用することができる。
また、このように、上書き禁止記憶領域及び上書き許容記憶領域の空き領域のサイズを確実に把握することができることから、例えば、これら上書き禁止記憶領域及び上書き許容記憶領域が、異常解析データの最大情報量相当に設定され、異常解析データの情報量が最大となる異常が発生した場合には、この異常解析データのみしか記憶することができない場合であっても、最大量よりも少ない情報量の異常が発生した場合には空き領域が形成されることから、空き領域のサイズの範囲内で新たな異常解析データを格納することができ、すなわち複数の異常解析データを記憶することができる。
また、異常解析データにタイミング情報を含めている。よって、上書き禁止記憶領域MA1と上書き禁止記憶領域MA2に記憶された情報が同一であるか、或いは別のタイミングで発生した異常であるのかを容易に検出することができる。
なお、上記実施の形態においては、異常解析データを作成する際に、この異常と同等のタイミングで発生した異常の異常解析データが記憶部46に格納されているかどうか、且つ、作成対象の異常の必要収集情報種に相当する情報が含まれるかどうかを判定し、該当する情報が含まれる場合には、この情報を除く必要収集種相当の情報からなる異常解析データを生成するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、上述のように、メイントルクセンサ3mのトルク検出値Tm異常、サブトルクセンサ3sのトルク検出値Ts異常、及びメイントルクセンサ3m及びサブトルクセンサ3sのクロス特性の相関異常のように、その異常の発生に関連性のある組合せと、この組合せの異常が発生したときにこの組合せを構成する各異常の異常解析データとして収集すべき状態情報とを予め重複しないように設定しておき、前記組合せに対応する異常が発生したとき、指定されている異常解析データのみを収集するようにしてもよい。要は、同等のタイミングにおける同一の情報が記憶部46に記憶されることを回避することの可能な方法であれば、どのような手順であっても適用することができる。
また、上記実施の形態においては、状態情報として予め設定された規定量の情報量相当のデータを収集する場合について説明したがこれに限らず、異常の種類毎に、収集すべき情報量を変更してもよい。つまり、異常解析に状態情報を必要とする場合であっても、その異常の種類によっては、ある程度の期間の時系列データが必要であったり、逆に、ある時点におけるデータだけで十分であったりする。よって、異常の種類に応じて状態情報として必要な情報量をそれぞれ規定しておき、各異常の種類に応じて、それぞれの異常解析に必要な情報量の状態情報のみを収集することで、異常解析の精度は維持したまま、異常解析データ全体の情報量を削減することができる。
また、上記実施の形態においては、異常発生時における各種センサの値を異常解析データとして収集する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、異常が発生した時点から予め設定した期間における時系列データを収集し、これを異常解析データとして収集するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、異常解析データにタイミング情報を含めることで、同等のタイミングで発生した異常解析データどうしを関連付ける場合について説明したがこれに限るものではなく、例えば、故障コードとその発生タイミングを表すタイミング情報とを関連づけて記憶し且つこれを、少なくとも前述の、発生タイミングが同等と判断するための所定時間相当の間記憶するようにし、異常が発生したとき、この異常の発生タイミングと、一時記憶領域に記憶されているタイミング情報とから所定時間内と判定される関連異常が存在するかどうかを判定するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、上書き許容記憶領域MA2において新たな異常解析データを書き込むため古いものから順に異常解析データを削除した後、既に書き込まれている異常解析データを先頭に移動し、上書き許容記憶領域MA2の最後に連続した空き領域を形成する場合について説明したが、これに限るものではなく、書き込み対象の異常解析データを場合によっては分割して、空き領域に格納するようにしてもよく、上書き保養記憶領域MA2に異常解析データを書き込むことができればどのような書き込み方法であってもよい。
また、このとき、異常解析データを、例えば8や16の倍数単位の情報量となるように形成することによって、古い異常解析データを削除することで、8や16の倍数単位の情報量相当の空き領域を形成することができ、ここに異常解析データを格納することによって、連続した空き領域を形成する手間を削減しつつ、且つ書き込み許容記憶領域への記憶を有効に行うことができる。
また、上記実施の形態においては、故障が発生し、異常解析データが生成された後に、書き込み領域を決定する場合について説明したが、これに限るものではなく、任意のタイミングで実行することができる。
例えば、制御装置の起動時処理等、故障発生前に予め異常解析データの書き込み領域を決定する構成とすることによって、異常発生後に必要となる異常解析データの記憶処理に要する所要時間を短縮することができる。例えば、電源障害等が発生し、辛うじて記憶部46への記憶を行うことが可能な状況にある状態で異常解析データの書き込み先の検索を行うと、場合によっては、記憶部46への記憶処理中に電源オフとなってしまい、異常解析データの書き込みを正常に行うことができない可能性があるが、上述のように、起動時処理等、異常が発生する以前に予め異常解析データの書き込み領域を決定しておくことによって、異常解析データをより確実に記憶することができる。
また、上書き禁止記憶領域MA1への記憶が可能な状況にあるかどうか、記憶可能な記憶領域への書き込み開始位置、また、異常解析データを格納するための空き領域を形成する、異常解析データの移動処理(ソーティング処理)等を、異常が発生する以前に予め行っておくことによって、異常発生から、その異常解析データを記憶部46に格納するまでの所要時間をより短縮することができ、異常解析データの記憶をより確実に行うことができる。
またさらに、上記実施の形態においては、異常解析データに、その情報量を含め、記憶部46に格納されている情報量を表す記憶量算出値を算出する際には、異常解析データからその情報量を獲得する場合について説明したが、これに限るものではなく、異常解析データに、その情報量を含めずに、監視処理情報から、その故障コードに対応する異常解析データの情報量を獲得するようにしてもよい。要は、故障コードに対応する異常解析データの情報量を獲得することができれば、異常解析データの情報量を、異常解析データ或いは、監視処理情報の何れに含めてもよい。
さらにまた、上記実施の形態においては、電動パワーステアリング装置の制御装置において、その異常解析用のデータを収集する場合について説明したがこれに限るものではなく、例えば、先行車両と所定の距離を保って自動で追従走行するように自動走行制御装置等、どのような制御装置であっても適用することができる。特に車両に搭載された制御装置においては、最新のデータだけでなく初期のデータをも確実に記憶することができることから、好適である。
ここで、上記実施の形態において、図5のステップS2の処理が監視手段に対応し、図5のステップS21の処理が情報種特定手段に対応し、図7のステップS22からステップS25の処理及び図5のステップS5の処理が異常データ格納手段に対応し、記憶部46が記憶手段に対応している。
本発明の一実施形態を示す概略構成図である。 トルクセンサの出力特性図である。 図1の制御装置の機能構成を示すブロック図である。 図1の記憶部の構成を示す説明図である。 図1の制御装置で実行される監視処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 図5の入力処理(ステップS1)の処理手順の一例を示すフローチャートである。 図5の異常解析データ生成処理(ステップS4)の処理手順の一例を示すフローチャートである。 図5の格納処理(ステップS5)の処理手順の一例を示すフローチャートである。 図8の書き込み開始位置の算出手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の動作説明に供する説明図である。 本発明の動作説明に供する説明図である。
符号の説明
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 操舵トルクセンサ
3m メイントルクセンサ
3s サブトルクセンサ
13 電動モータ
14 制御装置
17 車速センサ
21 車速センサ
25 モータ電流検出器
40 モータ駆動回路
46 記憶部

Claims (7)

  1. 予め設定した項目について異常監視を行う監視手段と、
    当該監視手段で異常が検出されたとき、当該異常の解析に必要な情報を収集し、これを異常解析データとして記憶手段に記憶する異常データ格納手段と、を備え、
    前記異常解析データの情報量は、予め異常の種類毎に設定されていることを特徴とする異常解析データ収集装置。
  2. 前記異常データ格納手段は、前記監視手段で異常が検出されたとき、当該異常の解析に必要な情報の情報種を特定する情報種特定手段を備え、
    前記情報種特定手段で特定された情報種に相当する情報を収集し、この収集した情報を含み且つ検出された異常の種類に応じた情報量からなる異常解析データを生成し、これを前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1記載の異常解析データ収集装置。
  3. 前記異常データ格納手段は、同等のタイミングで複数の異常を検出し、且つこれら複数の異常の解析に必要な情報種の中に共通の情報種が含まれるときには、当該共通の情報種に相当する情報を、何れか一つの異常についてのみ収集し且つ前記共通の情報種を含む異常に対応する各異常解析データに、これらを関連付けるための関連付け情報を付加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異常解析データ収集装置。
  4. 前記記憶手段は、前記異常解析データのうち、その情報量が最大となるものを記憶可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の異常解析データ収集装置。
  5. 前記記憶手段は、前記異常解析データの上書きを禁止する上書き禁止記憶領域と前記異常解析データを上書き記憶する上書き許容記憶領域とを有し、
    前記異常データ格納手段は、前記上書き禁止記憶領域に前記異常解析データを記憶するための空き領域がなくなるまでの間、前記監視手段で検出した最初の異常以後、検出される異常毎にその異常解析データを前記上書き記憶領域に記憶し、且つ少なくとも前記上書き記憶領域に記憶した最後の異常解析データに対応する異常の次に検出した異常以降の異常解析データを、検出される異常毎に前記上書き許容記憶領域に記憶するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の異常解析データ収集装置。
  6. 前記上書き禁止記憶領域及び前記上書き許容記憶領域は、それぞれ、前記異常解析データのうち、その情報量が最大となるものを記憶可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の異常解析データ収集装置。
  7. 前記請求項1から請求項6の何れか1項に記載の異常解析データ収集装置を、異常解析用のデータ収集装置として備えることを特徴とする車載制御装置。
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