JP2008115345A - 摺動部材および摺動部材の製造方法 - Google Patents

摺動部材および摺動部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、摺動面への潤滑油供給を十分に行い、良好な油膜を形成して摩擦係数を十分に低いレベルに抑制できる被覆膜を有する摺動部材と、その被覆膜を短時間で形成することのできる製造方法とを提供することである。
【解決手段】本発明の摺動部材は、摺動面に摺動用樹脂組成物よりなる被覆膜を備え、その被覆膜は表面に開口する多数の気孔を有している。そして、この気孔の合計開口面積は被覆膜表面積の10〜85%である。気孔は、塗布された摺動用樹脂組成物を急速加熱して溶剤を突沸させることで形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動用樹脂組成物からなる被覆層が形成された摺動部材とその製造方法とに関する。
相手材と摩擦しつつ当接する摺動部材としては、従来より種々のものが知られている。このような摺動部材の基材表面には、通常、樹脂バインダ、硬質粒子、固体潤滑剤などの材料よりなる被覆層を形成し、この被覆層によって摺動部材の耐摩耗性や摩擦係数の向上を図ることがなされている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、摩擦係数を低減するために固体潤滑剤の配合量を増量すると、耐摩耗性が低下しやすい。一方、耐摩耗性や耐焼き付きなどを向上させるためにバインダの機械的強度を上げると、内部応力が増幅し、基材との接着力が損なわれたり摩擦係数が増大することが多い、などの問題があり必ずしも満足できるものではなかった。
このため、特許文献2では、所定の硬度を有する板状の摩耗抑制材とポリアミドイミド樹脂とを用い、低摩擦係数で且つ耐摩耗性と耐焼き付き性に優れた塗膜を形成可能な摺動用樹脂組成物を提案している。
また、特許文献3には、摺動部分に形成される表面被膜が10%以上の連通孔率を有する多孔質樹脂被膜であるピストンが開示されている。この多孔質樹脂被膜は、塗料中に無機塩化合物や有機塩化合物等の気孔形成材を添加して塗膜を形成し、その後に気孔形成材のみを溶解抽出して連通孔を形成させたものであり、この連通孔に潤滑油が含浸されて低摩擦係数を得ることができるとしている。
しかし、いずれの技術においても、ポリアミドイミド樹脂をバインダとする既存の樹脂組成物に、新たに摩耗抑制材や気孔形成材の添加が必要であり、摺動部材用樹脂組成物のコストを増加させることになる。また、特許文献3に記載の技術では、気孔形成材を溶解抽出する抽出工程を必要とするために工程数が増加して生産性に影響を及ぼすという問題がある。さらに、塗膜を形成するための塗工後の焼成工程において、摺動用樹脂組成物を乾燥、硬化させるための焼成時間が長く、生産性を向上するための大きな阻害要因となっていた。
特開2004−149622号公報 特開2006−045463号公報 特開2006−077836号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、摺動面への潤滑油供給を十分に行い、良好な油膜を形成して摩擦係数を十分に低いレベルに抑制できる被覆膜を有する摺動部材と、その被覆膜を短時間で形成することのできる製造方法とを提供することを目的とする。
本発明の摺動部材は、基材と、この基材の摺動面となる表面の少なくとも一部に形成されている摺動用樹脂組成物よりなる被覆膜とを有する摺動部材であって、被覆膜は、その被覆膜表面に開口する多数の気孔を有し、この気孔の合計開口面積は被覆膜表面積の10〜85%であることを特徴とする。ここで、気孔の開口径は0.1〜1000μmであることが望ましい。
本発明の摺動部材において、摺動用樹脂組成物は、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、及び樹脂溶媒を含むことができ、樹脂溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、ダイアセトンアルコールの群から選ばれる1種以上であることが望ましい。
本発明の摺動部材の製造方法は、基材表面に摺動用樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
塗布された摺動用樹脂組成物を加熱して被覆層を形成する加熱工程とを備え、加熱工程は、塗布された摺動用樹脂組成物を急速加熱する急速加熱手段を備えることを特徴とする。ここで、急速加熱手段は、近赤外線ランプであることが望ましい。
また、本発明の摺動部材の製造方法において、被覆膜の温度が100〜300℃に到達する時間を1〜120secとするとよい。
本発明の摺動部材は、表面に多数の気孔が開口している被覆層が摺動面に形成されているので、摺接する相手材との接触面積を減少することができる。また、この気孔内にエンジンオイルなどの潤滑油を含浸してオイル溜まりとすることができるので、摩擦係数をさらに低く抑えることができる。
また、本発明の摺動部材の製造方法によれば、塗布された摺動用樹脂組成物中の溶剤を突沸させることで被覆膜表面に開口する多数の気孔を形成することができる。従って、被覆膜の形成時間を大幅に短縮することができる。これにより、被覆膜の塗布、焼成工程をインライン化することができ、生産性を大幅に向上することが可能となる。
本発明の摺動部材は、基材の摺動面に形成される被覆膜に特徴があり、その好適な実施の形態を図1に示す。図1(a)は、摺動部材の摺動部の部分断面を示す模式図である。摺動部材1は、基材2と、この基材表面に一体的に形成された摺動用樹脂組成物よりなる被覆膜3とから構成される。被覆膜3には、その表面3aに開口する多数の気孔4、4・・が形成されており、気孔開口部4aの合計面積は被覆膜表面積の10〜85%である。気孔開口部面積が10%未満では、顕著な摩擦係数の低下効果を得ることができない。また、85%を越えて大きくなると、摩擦係数が増大する傾向にあるので適当ではなく、より好ましくは、50〜65%である。
また、各気孔の開口径φは、0.1〜1000μmであることが望ましい。開口径φが0.1μm未満では、気孔内に潤滑油を貯留する油溜まりとしての効果が小さく、また、1000μmを越えて大きい場合には、気孔4の開口周縁部4bに摺動用樹脂組成物の凸部4c(図1(b)参照)が形成され易いために被覆膜の摩擦係数の低下を阻害することがあるので好ましくない。気孔4の開口径φは、20〜500μmがより好ましい。
図2に上記のような気孔開口部を有する被覆膜表面の観察例を示す。(a)は開口径φが約20μmの気孔40がほぼ均一に分散している例であり、(b)は開口径φが約500μmの気孔41と150〜250μmの気孔42とが混在している例である。また、(c)は開口径φが1000μmを越える気孔43を含む例である。これらの例は、後述する被覆膜形成の焼成条件を変化させることで得られたものであり、(a)と(b)とはいずれも本発明の摺動部材の被覆膜として好適なものである。すなわち、本発明の摺動部材の被覆膜は、必ずしも(a)のようにほぼ同じ大きさの開口を有する気孔が均一に形成されている必要はなく、(b)のように本発明の範囲内で大小さまざまな大きさの開口を有する気孔が混在していてもよい。
本発明において、被覆膜の厚さtは、5〜30μmであることが望ましい。被覆膜厚さtが、5μm未満では、被覆膜の十分な耐久性を得ることができない。また、30μmを越えて厚すぎると、塗膜時に摺動用樹脂組成物が垂れて被覆膜の厚さが不均一となり、相手部材と摺動部材との摩擦抵抗も不均一となるので好ましくない。このような厚さtを有する被覆膜3においては、気孔4の深さは0.1μm以上(ただし、膜厚t未満)であることがよい。深さが0.1μm未満では、潤滑油を貯留することが困難であり、所望の効果を得ることができない。
次に、摺動用樹脂組成物を構成する樹脂と樹脂溶媒について説明する。
本発明の摺動用樹脂組成物に使用できる樹脂としては、特に限定されることなく従来摺動用樹脂組成物として用いられているものを使用することができる。例えば、ポリイミド系樹脂(PI系樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE樹脂)、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などを挙げることができる。これらの中でも特にPI系樹脂およびPTFE樹脂からなる混合物に後述の樹脂溶媒を配合した摺動用樹脂組成物が低摩擦係数を有し耐摩耗性に優れた摺動部材の被覆膜を形成するのに好適である。
本発明に使用することのできるPI系樹脂とは、少なくともイミド結合を有する樹脂であってPTFE樹脂を主体とする固体潤滑剤などを結着するとともに、基材表面との接着性に優れた樹脂であれば使用することができる。例えば、PI樹脂、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂)、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステルアミドイミド樹脂などを挙げることができる。これらPI系樹脂のなかで、PI樹脂、およびPAI樹脂が好適である。
なお、固体潤滑剤であるPTFE樹脂は、融点が327℃であり、融点を超えても流動しがたく、優れた耐熱性により、例えば内燃機関のピストンのように高温雰囲気下に曝されるような摺動部材には好適である。
本発明に使用できる樹脂溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルイソピロリドン(MIP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン系極性の樹脂溶媒、ダイアセトンアルコール、メタノールなどのアルコール類などを使用することができる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、ダイアセトンアルコールは、表1に示すように高沸点を有するので好適である。なお、これらの樹脂溶媒は、単独で用いても、あるいは、数種を混合して用いてもよい。
Figure 2008115345
以上のような被覆膜を有する本発明の摺動部材は、次のようにして得ることができる。
まず、例えば、前記のPI系樹脂をN−メチル−2−ピロリドンなど適宜の樹脂溶媒に溶解してなる樹脂ワニスにPTFE樹脂などの固体潤滑剤を配合し、均一に攪拌して摺動用樹脂組成物を調整する。
得られた摺動用樹脂組成物を基材の所定表面に塗布する。塗布する方法は、ディピング法、ローラ法、刷毛塗り法、スプレー塗布法、印刷塗布法など種々の方法を採用することができる。これらの方法の中でも、ピストンスカートなど塗膜の膜厚精度が要求されるような場合には、スクリーン印刷法を採用することが好ましい。
次に、塗布された摺動用樹脂組成物を乾燥・焼成して所定の耐摩耗性と摩擦係数を有する被覆膜を形成する。一般的には、常温から350℃の範囲の焼成温度で5〜180分間焼成することで、摺動用樹脂組成物から樹脂溶媒を除去して乾燥するとともに、樹脂組成物を硬化させ被覆膜を形成する。
しかし、本発明の摺動部材においては、塗布された摺動用樹脂組成物を所定の温度にまで急速加熱して、乾燥と焼成とを同時に行う。これは、急速加熱することで摺動用樹脂組成物中の溶剤を突沸させて、被覆膜表面に開口する多数の気孔を形成するためである。摺動用樹脂組成物中の溶剤は、塗布後、極めて短時間でその沸点以上の温度にまで加熱されるので、摺動用樹脂組成物中で発泡すると同時に表面から噴出する。溶剤が噴出して形成された空洞が組成物表面に開口する気孔であり、加熱された摺動用樹脂組成物は硬化して多数の気孔を有する所望の被覆膜を得ることができる。
このように溶媒を突沸させて被覆膜表面に多数の開口を形成するためには、加熱開始から1〜120秒で塗布された摺動用樹脂組成物の表面温度を100〜300℃にまで昇温する急速加熱が望ましい。加熱時間が120秒を越えて長い場合、あるいは、表面温度が100℃未満の場合には、溶媒の突沸がほとんど生じないために気孔の開口径が小さくなるとともに、開口する気孔の数も減少するので、適当ではない。また、表面温度が300℃を越えて高い場合には、基材の変形や硬度低下、あるいは、被覆膜の変質を生じることがあるので適当ではない。より好ましくは、30〜120秒で表面温度を180〜220℃とするとよい。
かかる急速加熱を実現する急速加熱手段としては、図3に示すような近赤外線ランプを用いるのがよい。ここで、近赤外線とは、波長領域が800nm〜1500nmの赤外線であり、被加熱物に瞬時に高エネルギを与えることができるので、溶剤の分子を振動させて突沸を生じることができる。また、近赤外線ランプの出力を調整することで昇温速度を調節し、形成される開口の大きさや分布などを適宜変化させることができる。図3は、近赤外線ランプ5の一例を示す斜視図であり、直管状の近赤外線源6と、この近赤外線源6を収容する正面開放の反射部材7とを備えている。そして、開放側面から近赤外線を被加熱物に照射することができる。
一例として、ピストンを基材として、そのスカート部に摺動用樹脂組成物を塗布して被覆膜を形成する場合について説明する。図4は、ピストン10の斜視図であり、ピストン10のオイルリング溝11の下方の部分がピストンスカート部12であり、その外周面に被覆膜13を形成する。なお、14はピストンピン挿通孔であり、図4では被覆膜13は、ピストンピン挿通方向と直交する直径方向の両側のスカート部12、12の外周面に形成する。まず、両側のスカート部12、12の所定の範囲に摺動用樹脂組成物をスクリーン印刷法など適宜の方法で塗布する。次に、図5に示すように、ピストン10を挟んで近赤外線ランプ5、5を対向して配置し、スカート部12、12に塗布した摺動用樹脂組成物13、13に近赤外線Rを照射すればよい。この時、近赤外線ランプ5と摺動用樹脂組成物13との距離dは、近赤外線の出力や目標とする昇温温度によって異なるが、概ね5〜100mmとするとよい。
本発明の摺動部材は、相手材と接触する被覆膜に多くの気孔開口部が形成されているので相手材との接触面積が小さい。さらに、気孔内に潤滑油を含浸させることで摺動部の摩擦係数を顕著に低減することができる。
また、本発明の摺動部材の製造方法によれば、近赤外線をごく短時間照射することで被覆膜を形成することができる。従って、摺動部材の焼成時間を大幅に短縮することができる。さらに、この時間短縮により焼成工程をインライン化することが可能となり、生産性を大幅に向上することが期待できる。
また、本発明の摺動部材は、以上のように従来の摺動用樹脂組成物に新たな材料や新たな添加剤を加えるものではないため、材料コストは変化しない。
以下、試験例によって本発明をさらに詳しく説明する。
平板基材(30×30×5mm、材質:AC8A)の表面に摺動用樹脂組成物として樹脂コートPA−744(ダウコーニングアジア社製)をスクリーン印刷機にて10±2μmの厚さで塗布した。なお、樹脂コートPA−744は、PAI樹脂を主成分とするPI系樹脂をN−メチル−2−ピロリドンを主とし、キシレンおよびダイアセトンアルコールを含む溶媒に溶解した樹脂ワニスに、PTFE樹脂などの固体潤滑剤を配合した摺動用樹脂組成物である。
次に、図3に示す近赤外線ランプ5を塗布面から20mm離して設置し、樹脂コートPA−744に近赤外線を垂直に照射して被覆層を形成した。
ここで、樹脂コート表面の到達温度を160、180、200、220℃の4水準とし、各温度に到達するまでの時間を、20、30、60、90、120秒の5水準に変化させ、それぞれを表2に示すように組み合わせて試験例1〜試験例7の各供試材を得た。
なお、近赤外線による加熱は、樹脂コートの表面温度が各到達温度に到達するまでであり、各供試材は表面温度が到達温度に達した時点で均熱保持することなく直ちに空冷した。
このようにして得られた各供試材について、以下の測定方法により、摩擦係数μ、気孔開口径φ、開口面積率(%)を測定した。なお、従来の熱風循環により形成した被覆膜についても同様の測定を行って従来例とした。
(摩擦係数μの測定方法)
本試験例では、図6に示すスラスト試験機20(中央工機(株)社製)を用いて摩擦係数の測定を行った。
上記で得られた供試材21の被覆膜13形成面に、中空円筒状の相手材(外径25.6mm、内径20mm、材質:FC250)22を載置して、供試材21を矢印23方向に1000rpmの回転速度で回転させるとともに、矢印Y方向に押し付け荷重Wを加え、この押し付け荷重Wを4900Nとした時の摩擦係数を測定した。なお、この試験は、油温80℃の潤滑油(SH−5W−30ベースオイル)中で実施した。
(気孔開口径の測定方法)
気孔開口径は、通常の金属顕微鏡により測定した。気孔開口部はほぼ円形であるので任意の直径長さを気孔開口径とした。なお、表2の気孔開口径(μm)は、任意の0.25mm×0.19mm視野に観察される全気孔の開口径のうちで最大の気孔開口径である。
(開口面積率の測定方法)
開口面積率は、被覆膜表面の任意の0.25mm×0.19mm視野を倍率200倍で顕微鏡観察し、画像解析により求めた。
(測定結果)
結果を表2に示す。
Figure 2008115345
表2から、試験例3〜6の本発明では、到達温度が同一ならば昇温時間の増加に伴い形成される気孔開口径は小さくなることが分かる。また、試験例2〜6の被覆膜は、いずれも開口面積率および気孔開口径ともに本発明の範囲内にあるので、摩擦係数は0.020〜0.030と従来例に比べて低下し良好な結果を得ることができた。
しかし、試験例1、試験例7は到達温度、昇温時間ともに本発明の範囲内であり、気孔開口径も本発明の範囲となったが、気孔の開口面積率が、試験例1では5%と低く、また、試験例7では90%と大きすぎるために摩擦係数は従来例に比べて高くなった。
従来例は、180℃までの昇温時間が1500秒(25分)であり、さらに180℃で5400秒(90分)保持しているので、塗布された樹脂組成物は発泡することなく形成された被覆膜表面には、5μm程度のごく小径の開口が僅かに認められるにすぎない。このため、相手部材との接触面積が大きく且つ潤滑油の含浸効果も望めないので各試験例に比べて摩擦係数は高い。
なお、試験例1〜3の被覆膜は、耐摩耗性や密着性などの上記の摩擦係数以外の特性については、従来の比較例と同等であることを確認している。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。例えば、前記の実施の形態では急速加熱手段として近赤外線ランプを用いたが、急速加熱手段を高周波加熱としても同等の効果を得ることができる。
本発明の摺動部材は、優れた耐熱性、低摩擦係数、耐摩耗性などを併せ持つものであり、内燃機関のピストンや軸受などの摺動部材として好適に用いることができる。
摺動部材の要部構成を説明する部分断面概要図である。(a)は部分断面、(b)は気孔の断面例である。 被覆膜表面の開口の態様を示す模式図である。(a)、(b)は好適な例であり、(c)は不適当な例である。 近赤外線ランプの一例を示す斜視図である。 ピストンの一例を示す斜視図である。 被覆膜形成方法を例示する側面概要図である。 摩擦係数の測定方法を示す説明図である。
符号の説明
1:摺動部材 2:基材 3:被覆膜(摺動用樹脂組成物) 4:気孔 4a:気孔開口部 5:近赤外線ランプ 10:ピストン 12:ピストンスカート部 13:被覆膜 20:スラスト試験機 21:供試材 22:相手材

Claims (7)

  1. 基材と、該基材の摺動面となる表面の少なくとも一部に形成されている摺動用樹脂組成物よりなる被覆膜と、を有する摺動部材であって、
    該被覆膜は、該被覆膜表面に開口する多数の気孔を有し、該気孔の合計開口面積は該被覆膜表面積の10〜85%であることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記気孔の開口径は0.1〜1000μmである請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記摺動用樹脂組成物は、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、及び樹脂溶媒を含む請求項1又は2に記載の摺動部材。
  4. 前記樹脂溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、ダイアセトンアルコールの群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. 基材表面に摺動用樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
    該塗布された摺動用樹脂組成物を加熱して被覆層を形成する加熱工程とを備え、
    該加熱工程は、前記塗布された摺動用樹脂組成物を急速加熱する急速加熱手段を備えることを特徴とする摺動部材の製造方法。
  6. 前記急速加熱手段は、近赤外線ランプである請求項5に記載の摺動部材の製造方法。
  7. 前記被覆膜の温度が100〜300℃に到達する時間を1〜120secとする請求項5又は6に記載の摺動部材の製造方法。
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