JP2008113275A - スピーカー振動板およびこれを用いたスピーカー - Google Patents
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Abstract
【課題】 スピーカー振動板とボイスコイルとの接着強度が高く、伝達ロスを低減させ、かつ、S/N比を改善でき、音圧周波数特性上のピーク・ディップが少なく、再生音質に優れたスピーカー振動板およびスピーカーを提供する。
【解決手段】 スピーカー振動板は、第1振動板部分と、第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、第1振動板部分と第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備え、第1振動板部分および第2振動板部分が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、取付部が、熱硬化性樹脂が硬化されて成形され、リブ部が、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 スピーカー振動板は、第1振動板部分と、第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、第1振動板部分と第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備え、第1振動板部分および第2振動板部分が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、取付部が、熱硬化性樹脂が硬化されて成形され、リブ部が、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ボイスコイルボビンとの接合強度が高いスピーカー振動板およびこれを用いたスピーカーに関し、特に、長軸および短軸を有する外形が略楕円形、トラック形もしくは長方形のスピーカー振動板、ならびに、このスピーカー振動板を備えるスピーカーに関する。
スピーカーにおいて、ボイスコイルボビンとスピーカー振動板との接着強度は、再生する音声の特性に影響を与える。従来には、本願発明の出願人によるボイスコイルボビンとスピーカー振動板との接着強度を向上させるスピーカー振動板がある(特許文献1)。特許文献1の図2に示すように、このスピーカー振動板1は、第1振動板部分5と、第1振動板部分5と一体成形された第2振動板部分6と、第1振動板部分5と第2振動板部分6との結合部の背面側に突出して設けられボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部7とを備え、第1振動板部分5および第2振動板部分6が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなり、取付部7が、熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。このスピーカー振動板は、ボイスコイルボビンからの駆動力の伝達ロスを低減させ、これを用いたスピーカーは、S/N比を改善することができる。
映像ならびに音声を再生するディスプレイ装置等に用いられるスピーカーでは、主に映像を投影する画面部を大きく確保するために、スピーカーの振動板の外形や、その構造に制約がある場合がある。具体的には、ディスプレイ装置の画面部分の周囲には、スピーカーを取り付けるバッフル部分が幅広く確保できないので、長軸および短軸を有する外形が略楕円形、トラック形もしくは長方形のスピーカー振動板(以下、細長形状振動板という)を用いた正面から見た場合に細長い形状のスピーカーが使用されることが多い。多用される円形コーン型振動板のスピーカーに比較して、細長形状振動板のスピーカーでは、細長形状振動板の強度不足(特に、細長い長手方向の強度不足)のために共振が発生しやすく、その結果、音圧周波数特性にピーク・ディップが出現して、再生音質の低下を招くという問題がある。
スピーカー振動板の振動板部分に強度を持たせて特性改善を図るため、振動板にリブを設けるものがある。従来には、合成樹脂の射出成型による振動板本体に、放射方向の補強リブを複数本射出成型時に一体に形成するスピーカー振動板がある(特許文献2)。また、従来には、長手方向の異常振動を抑制するように、トラック型振動板を音が放射する方向に凹凸状に連続的に湾曲させるものがある(特許文献3)。
しかしながら、接合強度を高めた特許文献1のスピーカー振動板であっても、振動板形状が細長形状振動板の場合には、強度不足(特に、細長い長手方向の強度不足)のために共振が発生しやすく、その結果、音圧周波数特性にピーク・ディップが出現して、再生音質の低下を招くことがあるという問題がある。
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スピーカー振動板とボイスコイルとの接着強度が高く、伝達ロスを低減させ、かつ、S/N比を改善でき、音圧周波数特性上のピーク・ディップが少なく、再生音質に優れたスピーカー振動板およびスピーカーを提供することにある。
本発明のスピーカー振動板は、第1振動板部分と、第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、第1振動板部分と第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備え、第1振動板部分および第2振動板部分が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、取付部が、熱硬化性樹脂が硬化されて成形され、リブ部が、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。
好ましくは、本発明のスピーカー振動板は、リブ部の突出部の最大高hが、第1振動板部分のリブ部を除く部分での振動板厚t以下であり、リブ部の突出部の最小幅wが振動板厚t以上である。
好ましくは、本発明のスピーカー振動板は、リブ部が、第1振動板部分の中央側から外側へ放射状に形成される放射状リブ部であり、取付部および放射状リブ部が連結されて一体に成形されている。
また、好ましくは、本発明のスピーカー振動板は、長軸および短軸を有する外形が、略楕円形、トラック形もしくは長方形のスピーカー振動板であり、放射状リブ部の中心軸と長軸とが交わる角度が、45度より小さい。
さらに好ましくは、本発明のスピーカー振動板は、熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である。
また、本発明のスピーカーは、上記のいずれかの本発明のスピーカー振動板を備える。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明のスピーカー振動板は、第1振動板部分と、第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、第1振動板部分と第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備える。第1振動板部分および第2振動板部分は、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、取付部は、熱硬化性樹脂が硬化されて成形されているので、スピーカー振動板とボイスコイルとの接着強度が高く、伝達ロスを低減させ、かつ、S/N比を改善できるスピーカーが実現される。
加えて、本発明のスピーカー振動板では、第1振動板部分にリブ部が設けられることにより、音圧周波数特性上のピーク・ディップを少なくすることができる。リブ部が、第1振動板部分の中央側から外側へ放射状に形成される放射状リブ部であり、取付部および放射状リブ部が連結されて一体に成形されていれば、振動板形状が細長形状振動板の場合(長軸および短軸を有する外形が、略楕円形、トラック形もしくは長方形のスピーカー振動板の場合)であっても、音圧周波数特性上のピーク・ディップを少なくすることができる。放射状リブ部は、放射状リブ部の中心軸と該長軸とが交わる角度が、45度より小さくなるように配置されると、第1振動板部分の分割共振が発生しやすい部分の剛性を高めるので、より効果的にピーク・ディップが減少する。
ここで、リブ部は、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。リブ部の突出部とは、スピーカー振動板のリブのないところの表面に比較して突出した部分を指し、突出部の分だけ振動板厚が厚くなっている部分である。つまり、本発明のスピーカー振動板のリブ部は、基材がリブ部の突出した部分の内部にも入り込んだ状態で熱硬化性樹脂が硬化しているので、他の第1振動板部分の構成により近い材質構成で形成されている。その結果、第1振動板部分に単なる樹脂のみで形成したリブ部を形成する場合に比べて、リブ部における音響インピーダンスの整合がとれ、ヤング率または内部損失の値も近くなるため、振動の反射が少なく、音圧周波数特性上のピーク・ディップをより少なくすることができる。
なお、リブ部は、その突出部の最大高hの半分以上に基材を含んでおり、基材に含浸された熱硬化性樹脂が硬化されて成形されていればよい。スピーカー振動板を構成する基材には剛性が求められるので、リブ部の突出部に伸々と入り込むような材料は、剛性が不足する場合があるので採用し難い。したがって、リブ部の突出部の内部に、ある程度の基材が入り込んだ状態で熱硬化性樹脂が硬化するように、リブ部の突出部の最大高hは、第1振動板部分のリブ部を除く部分での振動板厚t以下であればよく、また、リブ部の突出部の最小幅wは、振動板厚t以上であればよい。
また、本発明のスピーカー振動板では、熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂である。従って、硬化速度が速く、硬化温度が低いので製造が容易であり、かつ、優れた内部損失を有する第1振動板部分、第2振動板部分、取付部およびリブ部を備えたスピーカー振動板が得られる。
本発明のスピーカー振動板は、スピーカー振動板とボイスコイルとの接着強度が高く、伝達ロスを低減させ、かつ、S/N比を改善でき、音圧周波数特性上のピーク・ディップが少なく、再生音質に優れたスピーカーを実現できる。
本発明のスピーカー振動板およびこれを用いたスピーカーは、スピーカー振動板とボイスコイルとの接着強度が高く、伝達ロスを低減させ、かつ、S/N比を改善でき、音圧周波数特性上のピーク・ディップが少なく、再生音質に優れたおよびスピーカーを実現するという目的を、スピーカー振動板が、第1振動板部分と、第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、第1振動板部分と第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備え、第1振動板部分および第2振動板部分が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、取付部が、熱硬化性樹脂が硬化されて成形され、リブ部が、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されるようにすることにより、実現した。
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー振動板およびこれを用いたスピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー100の概略断面図である。図2は、スピーカー100を構成するスピーカー振動板1について説明する図である。図3は、スピーカー振動板1の要部拡大図である。スピーカー100は、スピーカー振動板1と、スピーカー振動板1に接着されるボイスコイルボビン2と、ボイスコイルボビン2の下端部に巻回されたボイスコイル3とを有する。ボイスコイル3は、磁気回路4の磁気ギャップに配され、入力信号に応じて磁気ギャップ内を変位することによりスピーカー振動板1を駆動する。
スピーカー振動板1は、第1振動板部分5と、第1振動板部分5と一体成形された第2振動板部分6とを有する。必要に応じて、スピーカー振動板1は、第1振動板部分5と一体成形されたエッジ部分11を含む(エッジ部分11は一体成形されていなくてもよい)。第1振動板部分5は、コーン型振動板を形成しており、スピーカー振動板1の外周部分を形成する。第2振動板部分6は、ドーム型振動板を形成しており(ダストキャプとしての機能を有していてもよい)、スピーカー振動板1の内周部分を形成する。第1振動板部分5と第2振動板部分6とが一体成形されることにより、第1振動板部分5と第2振動板部分6との結合部において、ボイスコイルボビン2の振動をよりスムーズに(反射することなく)伝達できるので、伝達ロスを防止できる。スピーカー振動板1は、ボイスコイルボビン2が接着剤によって取り付けられる取付部7をさらに有する。取付部7は、スピーカー振動板1(具体的には、第1振動板部分5と第2振動板部分6との結合部)の背面側に突出するように設けられている。背面側とは、スピーカー振動板1のボイスコイルボビン2が接着される側である。また、結合部とは、第1振動板部分5と第2振動板部分6とが結合している部分およびその近傍を意味する。言い換えると、結合部は、スピーカー振動板1の曲面が凹状から凸状に変化する位置及びその近傍である。スピーカー振動板1の表面側ではなく背面側に取付部7を突出させているので、取付部7を形成するために第1振動板部分5および第2振動板部分6に折り曲げ部を形成する必要がない。そのため、スピーカー振動板1の表面側には取付部7が露出しないので、スピーカー振動板1の美感がきわめて優れたものになる。
取付部7は、第1振動板部分5および第2振動板部分6に一体成形されている。一体成形されているので、製造行程が簡素化され、かつ、取付部7が第1振動板部分5および第2振動板部分6から剥離することを防止できる。取付部7は、第1振動板部分5から背面側に延設された第1延設部8と、第2振動板部分6から背面側に延設された第2延設部9とを含み、第1延設部8および第2延設部9との間にボビン接着溝10が規定されている。第1延設部8および第2延設部9の厚みは、好ましくは、0.5〜20mmである。0.5mmより小さければ接着強度が不十分であり、20mm以上であれば第1振動板部分5と第2振動板部分6との結合部の重量が増加しすぎ、音圧が低下するからである。取付部7のボビン接着溝10にボイスコイルボビン2の一端が挿入され、第1および第2延設部によって挟み込まれた状態でボイスコイルボビン2が接着される。ここで、ボイスコイルボビン2の一端は第1振動板部分5および第2振動板部分6に当接しているので、ボイスコイルボビン2のZ方向の振動は、第1および第2延設部を介さずに直接、第1振動板部分5および第2振動板部分6に伝達される。ボイスコイルボビン2の振動は、図1のZ1およびZ2に示す通り、第1振動板部分5および第2振動板部分6において、反射されることなく伝達される。
本実施例において、スピーカー振動板1の第1振動板部分5および第2振動板部分6は、基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる。例えば、基材は、天然繊維織布層と天然繊維不織布層とを含む積層体であり、熱硬化性樹脂は、任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得るが、好ましくは、不飽和ポリエステルである。硬化速度が速く、硬化温度が低いので製造が容易であり、かつ、優れた内部損失を有する第1振動板部分5および第2振動板部分6が得られるからである。本実施例のスピーカー振動板1の平均の振動板厚tは、後述する第1振動板部分5のリブ部12の突出部を除いて、約0.32mmである。
基材は、用途および目的に応じて、任意の適切な織布または不織布が採用され得る。織布または不織布単独であってもよく、複数の不織布を有する積層体、あるいは織布と不織布との積層体であってもよい。不織布としては、代表的には、パラ型アラミド繊維、メタ型アラミド繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリアリレート系繊維などが挙げられる。織布としては、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などが挙げられる。また、織布または不織布の繊維は、上記のように天然繊維でも、無機繊維でもよい。
スピーカー振動板1は、長軸Xおよび短軸Yを有する外形が12×6cmのトラック形のスピーカー振動板であり、スピーカー振動板1の第1振動板部分5は、その背面側に突出して設けられるリブ部12を備える。後述するように、リブ部12は、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。また、リブ部12は、図示するように、第1振動板部分5の中央から外側へ放射状に形成される放射状リブ部12a〜12dであり、放射状リブ部12aの中心軸aと長軸Xとが交わる角度αは、約25度である。取付部7および放射状リブ部12a〜12dは、連結されて一体に成形されているので、短軸Y方向に比べて広い面積を有する第1振動板部分5の長軸X方向における強度を向上させる。つまり、取付部7および放射状リブ部12a〜12dは、細長形状振動板の分割共振が発生しやすい部分の剛性を高める。リブ部12の第1振動板部分5の背面側へ突出する部分である突出部の最大高hは約0.31mmであり、振動板厚t以下である。また、本実施例の放射状リブ部12a〜12dは、外径に向かうにつれてその幅が大きくなるリブ形状であり、取付部に最も近いところでの最小幅wは約0.58mmで振動板厚t以上であり、最大幅は約2.15mmである。
図4は、実施例のスピーカー振動板1の切断面を拡大して撮影した図である。図4(a)は、取付部7(第1延設部8および第2延設部9)のO−X切断拡大図であり、図4(b)は、放射状リブ部12aのB−B’
切断拡大図である。図4(a)のように、第1振動板部分5と第2振動板部分6は、基材を含んで樹脂によって成形されており、取付部7は、樹脂によって成形されている。好ましくは、取付部7は、第1振動板部分5および第2振動板部分6に用いられる熱硬化性樹脂が硬化することによって成形されている。すなわち、取付部7は、好ましくは不飽和ポリエステルによって成形されている。硬化速度が速く、硬化温度が低いので製造が容易であり、かつ、優れた内部損失を有する取付部が得られるからである。詳細は後述するが、取付部7は、第1振動板部分5および第2振動板部分6の基材に熱硬化性樹脂が含浸されると同時に、金型の取付部7の形状部分に熱硬化性樹脂が滴下され、硬化されるので、製造がきわめて簡素化される。
切断拡大図である。図4(a)のように、第1振動板部分5と第2振動板部分6は、基材を含んで樹脂によって成形されており、取付部7は、樹脂によって成形されている。好ましくは、取付部7は、第1振動板部分5および第2振動板部分6に用いられる熱硬化性樹脂が硬化することによって成形されている。すなわち、取付部7は、好ましくは不飽和ポリエステルによって成形されている。硬化速度が速く、硬化温度が低いので製造が容易であり、かつ、優れた内部損失を有する取付部が得られるからである。詳細は後述するが、取付部7は、第1振動板部分5および第2振動板部分6の基材に熱硬化性樹脂が含浸されると同時に、金型の取付部7の形状部分に熱硬化性樹脂が滴下され、硬化されるので、製造がきわめて簡素化される。
さらに、取付部7は熱硬化性樹脂のみによって成形されているので、基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる第1振動板部分5および第2振動板部分6と比べて内部損失が高い。例えば、基材がPEN繊維であり、熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステルである場合には、取付部7と、第1振動板部分5(および第2振動板部分6)との内部損失の比は3:1〜1.2:1となる(取付部7の内部損失は0.3〜0.6であり、第1振動板部分5および第2振動板部分6の内部損失は0.1〜0.5である)。従って、ボイスコイルボビン2の垂直方向の振動は、内部損失の高い取付部7によって減衰され、第1振動板部分5および第2振動板部分6には伝達されない。そのため、ボイスコイルボビン2の垂直方向の振動によって、歪みまたはノイズが発生することを防止でき、S/N比を改善できる。
一方、放射状リブ部12a〜12dは、図4(b)のように、それらの突出部に基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている。つまり、第1振動板部分5および第2振動板部分6が、振動板厚tの全体に渡って基材を含んで熱硬化性樹脂が硬化しているのと同様に、放射状リブ部12a〜12dは、基材がリブ部12の突出した突出部の内部にも入り込んだ状態で熱硬化性樹脂が硬化している。放射状リブ部12a〜12dの端部では、基材が少なくなって熱硬化性樹脂の比率が高くなる場合があっても、図4(b)のように突出部の最大高hの半分以上に基材を含んでいるのが好ましい。リブ部12の第2振動板部分6の背面側へ突出する部分である突出部の高さは、振動板厚tよりも小さく、最大高hは約0.31mmであるので、基材が突出部に深く入り込むことができる。また、本実施例の放射状リブ部12a〜12dは、その最小幅wは取付部7に最も近いところで約0.58mmであり、振動板厚t以上である。したがって、第1振動板部分5の放射状リブ部12a〜12dは、単なる樹脂のみで形成したリブ部を第1振動板部分5に形成する場合に比べて、後述するように音響インピーダンスの整合がとれるという利点を有する。
次にスピーカー振動板1の製造方法について、図5を参照して説明する。基材501aは、供給装置501にロール状に巻かれて準備され、工程の流れに応じて供給装置501から送り出される。成形時の変形を防止するために、送り出された基材501aの送り方向に対する両側部がクランプ502により移動可能に支持される。
次いで、熱硬化性樹脂が、樹脂供給ノズル503aから基材501aの第1振動板部分5および第2振動板部分6に選択的に供給される。
次いで、熱硬化性樹脂が供給された基材501aを、振動板1の形状の上側金型504aおよび下側金型504bを用いて熱プレスする。上側金型504aはスピーカー振動板1の表面(第1振動板部分5および第2振動板部分6)の形状を有しており、下側金型504bは振動板1の背面(第1振動板部分5、第2振動板部分6、取付部7、放射状リブ部12a〜12d)の形状を有している。その結果、熱硬化性樹脂が圧延により基材501aの第1振動板部分および第2振動板部分に含浸されおよび硬化して、第1振動板部分5および第2振動板部分6が形成され、同時に、下側金型504bの取付部7の形状部分に供給された熱硬化性樹脂が硬化され、取付部7が形成される。下側金型504bのみが取付部7および放射状リブ部12a〜12dの形状を有しているので、スピーカー振動板1の背面側に取付部7と、放射状リブ部12a〜12dが成形される。最後に、型抜きと外周切断が行われ、振動板1が得られる。
なお、熱プレスの条件(例えば、金型温度、プレス圧力、プレス時間、金型クリアランス)は、目的や用いる不織布基材に応じて、任意の適切な条件が採用され得る。代表的には、金型温度は100〜130℃、加熱時間は0.5〜3分間、プレス時の圧力は15〜25kg/cm2、金型クリアランス(得られるスピーカー用部材の厚みに対応する)は0.1〜0.5mmである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部およびパーセントは重量基準である。
下記の組成を有する不飽和ポリエステル溶液を調製した:
不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒(株)製;N350L) :100(部)
低収縮化剤(日本油脂(株);モディパーS501) :5
パーオクタO(日本油脂(株)) :1.3
一方、表側に綿繊維の織布(綿番手20 密度40×40(本/inch) 目付け110g/m^2)を2層と、その間に綿不織布(未晒し繊維100%をスパンレース(水流絡合)法により結合させたもの、目付け:110g/m^2)と、を積層して3層構造にして18cm角に切断したものを基材とする。約30cm角のステンレス板の中央に直径約14cmの円形の穴を開けた冶具をクランプとし、このクランプ2枚の間に積層した基材を挟んだ後、調合した上記の不飽和ポリエステル溶液(約5g)をクランプした基材の中央付近に滴下する。図6の振動板形状のマッチドダイ金型で130℃で30秒間成形することにより口径12x6cm、厚さ0.32mmの振動板を得た。下側金型のみに掘り込みが設けてあるため、取付部7は、スピーカー振動板1の背面側のみに不飽和ポリエステル樹脂が硬化して形成される。また、放射状リブ部12a〜12dは、第1振動板部分5の背面側に形成されるが、下側金型のみに形成される突出部の最大高hを規定する掘り込みは深くないので、基材がリブ部12の突出した突出部の内部にも入り込んだ状態で熱硬化性樹脂が硬化する。
不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒(株)製;N350L) :100(部)
低収縮化剤(日本油脂(株);モディパーS501) :5
パーオクタO(日本油脂(株)) :1.3
一方、表側に綿繊維の織布(綿番手20 密度40×40(本/inch) 目付け110g/m^2)を2層と、その間に綿不織布(未晒し繊維100%をスパンレース(水流絡合)法により結合させたもの、目付け:110g/m^2)と、を積層して3層構造にして18cm角に切断したものを基材とする。約30cm角のステンレス板の中央に直径約14cmの円形の穴を開けた冶具をクランプとし、このクランプ2枚の間に積層した基材を挟んだ後、調合した上記の不飽和ポリエステル溶液(約5g)をクランプした基材の中央付近に滴下する。図6の振動板形状のマッチドダイ金型で130℃で30秒間成形することにより口径12x6cm、厚さ0.32mmの振動板を得た。下側金型のみに掘り込みが設けてあるため、取付部7は、スピーカー振動板1の背面側のみに不飽和ポリエステル樹脂が硬化して形成される。また、放射状リブ部12a〜12dは、第1振動板部分5の背面側に形成されるが、下側金型のみに形成される突出部の最大高hを規定する掘り込みは深くないので、基材がリブ部12の突出した突出部の内部にも入り込んだ状態で熱硬化性樹脂が硬化する。
得られた振動板について、第1振動板部分5(リブ部12を含まない)と、リブ部12と、取付部7と、の比重、ヤング率および内部損失を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
表1に示す通り、第1振動板部分5、リブ部12および取付部7の比重は、それほど大きく変化しない。一方、第1振動板部分5(および第2振動板部分6)のヤング率は、取付部7のヤング率の約3.9倍であり、取付部7の内部損失は、第1振動板部分5(および第2振動板部分6)の内部損失の約7.78倍である。そのため、ボイスコイルボビンの垂直方向の振動は内部損失の高い取付部7によって減衰され、第1振動板部分5(および第2振動板部分6)には伝達されにくい。従って、歪みの発生を防止できる。また、第1振動板部分5のリブ部12の比重、ヤング率および内部損失は、第1振動板部分5と取付部7との中間の値であり、内部損失の値は比較的に第1振動板部分5の値に近い。つまり、取付部7のように樹脂のみで形成するリブ部を設ける場合に比べると、基材が突出部の内部にも入り込んだリブ部12は、ヤング率の値が第1振動板部分5の値に近くなり、また、内部損失の値も極端に違わないようになるので、リブ部12における音響インピーダンスの整合がとれて、振動の反射が少なく、音圧周波数特性上のピーク・ディップをより少なくすることができる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
なお、第1振動板部分5に設けられるリブ部12は、上記のような放射状に形成される放射状リブ部12a〜12dには限定されない。放射状リブ部12a〜12dのリブの幅は一定幅でもよく、また、リブの本数も4本よりも多くてもよい。振動板形状が細長形状振動板の場合(長軸および短軸を有する外形が、略楕円形、トラック形もしくは長方形のスピーカー振動板の場合)に、第1振動板部分5に設けられるリブ部12であり、取付部およびリブ部が連結されて一体に成形されていれば、例えば、放射状リブ部12a〜12dのそれぞれに平行に形成された複数の放射状リブをさらに有するような、他のリブ形状であってもよい。また、リブ部12は、長軸および短軸に平行であってもよい。基材が突出部の内部にも入り込んだリブ部12を形成することで、取付部7のように樹脂のみで形成するリブ部を設ける場合に比べると、リブ部12における音響インピーダンスの整合がとれて、振動の反射が少なく、音圧周波数特性上のピーク・ディップをより少なくすることができる。
本発明のスピーカー振動板は、様々な用途(家庭用、車載用)に用いられるスピーカーに好適に適用され得る。さらに、特に低周波数領域を再生するウーファー、または高周波数領域を再生するツィータ等、特性に問わず任意のスピーカーに適用され得る。また、本発明のスピーカー振動板は、スピーカーのみならず、細長形状の振動板を備えるマイクロホンにも適用が可能である。
1 スピーカー振動板
2 ボイスコイルボビン
3 ボイスコイル
4 磁気回路
5 第1振動板部分
6 第2振動板部分
7 取付部
8 第1延設部
9 第2延設部
10 ボビン接着溝
11 エッジ部分
12 リブ部
2 ボイスコイルボビン
3 ボイスコイル
4 磁気回路
5 第1振動板部分
6 第2振動板部分
7 取付部
8 第1延設部
9 第2延設部
10 ボビン接着溝
11 エッジ部分
12 リブ部
Claims (6)
- 第1振動板部分と、該第1振動板部分と一体成形された第2振動板部分と、該第1振動板部分と該第2振動板部分との結合部の背面側に突出して設けられてボイスコイルボビンの一端が取り付けられる取付部と、該第1振動板部分の背面側に突出して設けられるリブ部と、を備え、
該第1振動板部分および該第2振動板部分が、基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形され、該取付部が、該熱硬化性樹脂が硬化されて成形され、該リブ部が、それらの突出部に該基材を含んで該熱硬化性樹脂が硬化されて成形されている、スピーカー振動板。 - 前記リブ部の前記突出部の最大高hが、前記第1振動板部分の該リブ部を除く部分での振動板厚t以下であり、該リブ部の該突出部の最小幅wが該振動板厚t以上である、請求項1に記載のスピーカー振動板。
- 前記リブ部が、前記第1振動板部分の中央側から外側へ放射状に形成される放射状リブ部であり、前記取付部および該放射状リブ部が連結されて一体に成形されている、請求項1または2に記載のスピーカー振動板。
- 長軸および短軸を有する外形が、略楕円形、トラック形もしくは長方形の前記スピーカー振動板であり、前記放射状リブ部の中心軸と該長軸とが交わる角度が、45度より小さい、請求項3に記載のスピーカー振動板。
- 前記熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である、請求項1から4のいずれかに記載のスピーカー振動板。
- 請求項1から5のいずれかに記載の前記スピーカー振動板を備える、スピーカー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006295200A JP2008113275A (ja) | 2006-10-31 | 2006-10-31 | スピーカー振動板およびこれを用いたスピーカー |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2021532706A (ja) * | 2018-08-07 | 2021-11-25 | 永春 ▲張▼ | スピーカーユニット及びスピーカー装置 |
-
2006
- 2006-10-31 JP JP2006295200A patent/JP2008113275A/ja active Pending
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Legal Events
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090224 |
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A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090311 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090407 |