第1の発明は、吸引風を発生させる電動送風機と、前記電動送風機に流れる電流を検出する電流検出手段と、複数の位相角と前記位相角の各々に1対1に対応して前記電流検出手段の出力に対して位相角を切り換えるための電流判定値とで構成される位相−電流判定値特性とを有し、前記電流検出手段の出力が前記位相−電流判定値特性上の電流値とほぼ一致するように、前記位相角と前記位相角と対になる前記電流判定値とを段階的に切り換えて、前記電動送風機への供給電力を制御する制御手段を有する電気掃除機において、前記制御手段は、前記電流検出手段の検出する電流値が下降するときと、上昇するときとで、異なった位相−電流判定値特性を有して前記位相角を制御する構成としたので、上昇するときと下降するときとで、異なった位相−電流判定値特性を有して電動送風機への供給電力を段階的に変化させることにより、上昇時と下降時で、各々、所望の電流―電力特性で、電動送風機に流れる電流に応じて電力を安定して滑らかに変化させることができる。
第2の発明は、第1の発明に加えて、ゴミの入っていない開放風量付近の位相−電流判定値特性は、電流検出手段の検出する電流の下降時と上昇時で略同一とする構成としたので、開放風量付近は、電流の上昇、下降に関わらず、変動のない安定した電力で電動送風機を制御することができる。
第3の発明は、第1の発明に加えて、消費電力が最大となる風量付近の位相−電流判定値特性は、電流検出手段の検出する電流の下降時と上昇時で略同一とする構成としたので、電流の変動が発生しても、最大の消費電力以下で、電力の制御を行うことができる。
第4の発明は、第1の発明に加えて、吸い込み仕事率が最大となる風量付近の位相−電流判定値特性は、電流検出手段の検出する電流の下降時と上昇時で略同一とする構成としたので、電流の変動に関わらず、吸い込み仕事率が最大となる風量付近の電力を安定させることができ、安定した最大の吸い込み仕事率を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態について図1〜図13を用いて説明する。なお、従来例と同一構成の部品については同一符号を付し、説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態1における電気掃除機における制御部分のブロック図である。
図1において、2は電動送風機であり、12は電動送風機2を駆動する双方向性サイリスタであり、13は電動送風機2に流れる電流を検出し、信号レベル電圧へ変換して出力する電流検出手段であり、14は電流検出手段13の出力する信号を増幅する増幅手段である。増幅手段14は、電流検出手段13が出力する電流信号を、増幅度の異なる2つの増幅信号「増幅1」と「増幅2」に変換して出力している。
ここで、図2に電動送風機2に流れる電流と風量の関係(風量−電流特性)を示すが、電動送風機2の特性が決まれば、電動送風機2に流れる電流と風量の関係は、1対1で決まり、風量と電流値の関係を予め設定してやれば、電流検出手段13により、風量の検出が可能となる。従って、本実施例では、電流検出手段13は風量を検出する風量検出手段の役割も兼ねる。
15は、マイクロコンピュータであり、電動送風機2への供給電力を制御する制御手段も兼ねている。また、マイクロコンピュータ15は、A/D(アナログ/ディジタル)変換機能を有しており、「増幅1」を「AD1」へ、「増幅2」を「AD2」へ、入力している。「増幅1」と「増幅2」から入力される信号は、マイクロコンピュータ15内の処理の用途に応じて使い分けされる。
11はAC100Vの商用電源であり、16は、マイクロコンピュータ15の電源Vdd(5V)を作る電源回路であり、17は、商用電源のゼロクロスを検出してゼロクロスのタイミング信号を出力するゼロクロス検出回路である。ゼロクロスとは、ACである商用電源の極性が反転する時に、0Vを通過するタイミングである。
マイクロコンピュータ15は、ゼロクロス検出手段16から入力されるゼロクロスのタイミング信号により、ゼロクロスのタイミングを認識し、ゼロクロスに同期して、所定のタイミングで、双方向性サイリスタ12をトリガオンし、電動送風機2への供給電力を制御する位相制御を行う。
図3に商用電源周波数の一周期分(商用電源11の周波数が50Hzであれば20msとなり、60Hzであれば16.66msとなる)の波形を示すが、斜線部が通電している領域であり、図3中の入力ライン1がフル通電、つまり、ゼロクロスと同時に、双方向性サイリスタ12をトリガオンしている波形である。入力ライン2、入力ライン3、入力ライン4となるに従って、トリガオンのタイミングが後ろへ遅れてゆき、電動送風機2に印可される電圧の実効値も低下し、供給電力も低下する。
ここで、位相制御による電動送風機2への供給電力について図4を用いて説明する。図4において、固定された異なる位相で位相制御される入力ラインAと入力ラインBという風量−電力特性がある。入力ラインAの方が、トリガオンのタイミングが、ゼロクロスに近く、印可電圧も高いため、供給電力も高くなる。今、電動送風機2の消費電力を測定しようとした時、入力ラインAで、風量Qaとなる状況に設定した時と、入力ラインBで風量Qbとした時とでは、同じ電力の値を示すことになる。つまり、電動送風機2にて実際に消費される電力は、電動送風機2が吸引する風量によっても異なるため、以降、入力ラインに関わらず、実際に消費される電力を「電力」と称し、双方向性サイリスタ12をトリガオンするタイミングによって固定される入力ラインを「供給電力」と称する。なお、印可電圧とは、図3に示す、斜線部の領域の実効値を言う事にする。
また、電動送風機2に吸引される風量は、図5に示すように、集塵室に蓄積される塵埃の量と関係があり、塵埃の配合を所定の配合に固定して、塵埃の量(質量)と風量の関係を測定すると、図5に示すような特性となる。図5に示すように、双方向性サイリスタ12のトリガタイミングを、ゼロクロス、つまり、全導通(入力ライン1)に近づければ近づけるほど、同一質量の塵埃を吸引した時の風量の低下が遅く、吸引できる塵埃の量(質量)も多くなる。
図2に示す電動送風機2の風量−電流特性は、全導通(入力ライン1)での特性と一致し、各供給電力での風量−電流特性を算出することができる。図6(b)に各供給電力毎の風量−電流検出手段出力特性を示すが、電流検出手段13の出力は、電流値を信号レベルに変換したものであるので、各供給電力毎の風量−電流特性として見ることができる。各供給電力毎の風量−電流特性と、図5に示す各供給電力毎の塵埃量−風量特性が分かれば、電流検出手段13の出力により、集塵室6に吸引されている塵埃の量に応じて電動送風機2への供給電力を可変し、電力を制御する事ができるが、塵埃量と風量の関係は分かっているので、ここでは、風量に対しての動作で説明する。
また、マイクロコンピュータ15の内部には、予め設定された上昇用位相−電流判定値特性と下降用位相−電流判定値特性を有しており、「AD1」から取り込まれる信号に応じて、上昇用位相−電流判定値特性もしくは、下降用位相−電流判定値特性上の位相とその位相と対になったAD1の入力値に対する判定値が設定され、設定された位相、つまり、トリガタイミングで、双方向サイリスタ12をオンし、所定の供給電力で制御される。マイクロコンピュータ15は、上昇用位相−電流判定値特性もしくは、下降用位相−電流判定値特性上の、位相とその位相と対になるAD1の入力に対する判定値を、段階的に順次切り替えながら、電動送風機2への供給電力を制御する。
以上のように構成された電気掃除機について、以下その動作を説明する。
表1に、マイクロコンピュータ15に設定する位相−電流判定値特性の値を、図7に表1に基づいた、位相と電流判定値(「AD1」から入力される値に対する判定値)と風量と電力の関係を示す。
図7と表1を用いて、位相−電流判定値特性の作り方と、電動送風機2の制御の基本の考え方を説明する。
図7において、位相角θと電力Wと電流値Iと風量Qの4つのパラメータが存在し、これらのパラメータの組み合わせにより、6つの特性を導き出す事ができる。
特性を導き出す時の考え方にいくつかあるが、1つは、電力に対して電流値(電流判定値)を導き、設定する考え方である。図7に示すように、位相θが固定され、位相θ上の所定の電流値が決定されれば、位相θでの電力が一義的に決まる。言い換えると、例えば、位相θ9での所望の電力W9を設定しようとした時には、電流値(電流判定値)I9が一義的に決まる。従って、異なる2つの狙いの電力間を滑らかに結ぼうとすると、段階的に切り換えようとする位相角の始点(θ9)と終端(θp)と、それぞれの位相角での狙いの電力が分かっている場合、始点の電力と終端の電力を徐々に変化させて結ぶような狙いの電力と、位相角θ8〜θ0を決定すると、各位相での狙いの電力に対する電流値(電流判定値)I8〜I0も決まるので、風量には関係なく、電流−電力特性を導く事ができる。
位相θ8〜θ0は、位相を切り換えた時に、電力をどれだけ変化させたいかで決定できる。図7においては、始点と終端の位相付近では、オーバーシュート等を防ぎ、電力を安定させるため、位相切り換え時の電力の変化を小さくするように設定している。
その結果、図7中の太線の実線で示す、風量−電力特性や、太線の点線で示す風量−電流特性(風量−電流検出手段出力特性)が得られる。
また、特性を導き出す、他の考え方として、風量に対して、どれだけの電力としたいかで、位相角と電流判定値を決定する考え方である。これは、図7中の太線の実線で示した風量−電力特性を決定し、位相角を決定すれば、風量−電力特性を得るための各位相角に対する電流判定値I0〜I9が決定されるものであり、結果、位相−電流判定値特性が得られ、電流−電力特性も得られる。
前者の考え方は、位相角、電力、電流値の3つのパラメータで、特性を導く事ができるというメリットを有しているが、後者の考え方は、逆に、風量、位相角、電力、電流値の4つのパラメータで、特性を導かなくてはならないというデメリットを有している。
従って、吸い込み仕事率が最大となる風量付近で、電力が最大となるような電力が得たい場合等、つまり所望の領域が風量に依存する場合のみ、後者の考え方で、所望の風量−電力特性となるように、位相−電流判定値特性を設定するとよい。
従って、位相−電流判定値特性を作成するに当たり、まず、ゴミの入っていない開放風量付近の電力を決定するが、この付近では、集塵室6には、ほとんど塵埃は蓄積していないので、吸引力は必要ではなく、省電力化と静音化のために、電力が低くなるようにし、そうでない、ゴミの入っている領域に存在する全導通となる風量Qp付近では、吸引力が必要と判断して、電力が高くなるようにし、異なる電力となる開放状態での位相角θ9付近と位相角θp付近の位相角と電力を徐々に変化させ、スムーズに電動送風機2への供給電力を可変するような電流−電力特性を得る。
図7において、開放風量とは異なる任意の風量で設定される、位相−電流判定値特性の終端となる所定の位相角を全導通θpとし、入力ラインに対応する位相の数を、θ0〜θ9とθpの11本としている。尚、θ9は、開放時の位相となる。
表1において、電力と電流判定値と位相角は全てが対応して関連づけられている。例えば、図7において、全導通θpの入力ラインの風量−電力特性上の電力がWpとなる電流検出手段出力(電流値)はIp、となるように一義的に決定しておく。
ここで、Wpは、最大の電力であり、他の位相θ0〜θ9において設定される電力W0〜W9は、Wp以下となるよう設定し、また、特に、位相θpの付近と、開放位相θ9付近の位相での話であるが、Wp≧W0、Wn≧Wn+1(n=0〜8)となるよう設定する。これは、例えば、W0<W1とするより、W0≧W1とした方が、電流変化による電力の変化幅が小さくなり、電動送風機2の電力がより安定するからである。
まず、所望の電流−電力特性を作成するにあたって、開放、つまり集塵室6に全く塵埃が蓄積されていない状態での、目標電力W9を決定する。そして、開放状態で電力がW9となる位相θ9を決定する。この時風量Q9と電流検出手段出力に対する判定値I9は一義に決定する。このI9とW9が電流−電力特性の一端となり、θ9とI9が位相−電流判定値特性の一端となる。
次に、位相−電流判定値特性の他端の位相を決定するが、本実施の形態では、θpとしており既に決定している。θpはフル通電であり、高い吸い込み力が発揮されることが期待される入力ラインである。
吸い込み力(吸い込み仕事率)は、図7にも示すように、2次近似が可能な特性であり、電動送風機2と本体1の特性や構成によって決まる所定の風量でピークが出現する特性であるので、ピークの出現する風量より、やや開放側の風量で、θpに切り換える設定が、最も効率的に最大の吸い込み力を得ることができるため、ピークの出現する風量よりやや開放側の風量をQpと設定し、位相θpの風量−電力特性上の風量Qpとなる電力Wpを決定する考え方と、Wpそのものを上限の電力として決定してしまう考え方があるが、状況に応じて決定すればよい。
いずれにしても、Qp、もしくはWpが決定すれば、電流検出手段出力に対する判定値Ipは一義的に決定される。このQpとWpが風量−電力特性の他端となり、IpとWpが電流−電力特性となり、θpとIpが位相−電流判定値特性の他端となる。
位相切り換えの動作については後述するが、位相θpは到達位相であるため、Ipは、位相をI0へ切り換えるための判定値となる。従って、次に、位相θ0から位相θpへ切り換えるための設定を行う。
I0の設定については、位相θp付近を拡大した図9を参照して行う。
θ0はθpと最も近接した位相であり、電力W0を、W0≦Wpとなるように設定する場合、W0とWpの差が大きくなれば、位相が切り替わった時の電動送風機2の電力の変動が大きくなり、位相切り替わり時の過渡的な電流値の増加等により、Wpを越えてしまう可能性がある。従って、位相をθpに向けて変化させる時、θp付近では、徐々に電力の変化率が小さくなるようなW0を狙いの電力として設定する。位相θ0が明確になっているので、このW0に対しては、風量Q0が一義的に決まり、電流検出手段出力に対する判定値I0も決まる。
同様に、θpに向けて徐々に電力の変化率を小さくしていくように、θ1、θ2、θ3についても、電力を決定し、電流判定値を決定する。
図8に、開放状態付近、つまり、位相θ9付近の特性グラフを示すが、開放状態は、集塵室6に塵埃がほとんど蓄積していない状態であり、高い吸い込み力も不要であるので、なるべく、低消費電力となるよう設定し、風量の変化、つまり、塵埃の蓄積量による変化に対しても、あまり電力を変化させないようにする。これは、電動送風機2や本体1の製造における個体のバラツキ等に起因する特性公差によって、塵埃の全く入っていない風量に対する全導通での消費電力と電流値の異なる2つの固体が存在しても、電力はほぼ一定となり、特性公差を吸収できる効果も有している。更に、開放状態での、消費電力の検査や騒音の検査等においても、バラツキが改善されるため、製造管理もしやすくなるという利点も有している。
従って、開放の風量Q9に対して、電力変化を極小で抑えたい風量幅を決定し、その風量幅に対応した絶対値での風量をQ8として決定すると、位相θ9での電力W9に対して、変化量を極小にしたW8を決定する。風量Q8と電力W9が決定されると、位相θ8と電流検出手段出力判定値I8も一義的に決まる。
風量−電力特性の両端付近の特性は決定したので、後は、両端の電力を結ぶ特性を作成する。位相θ7〜位相θ3までを特性を結ぶ領域に使用される。このとき、風量に対して、この領域の電力の変化率がなるべく小さくする方が、安定して電力を切り換える事ができる。更にいうと、電流値に対しての電力の変化率がなるべく小さくする方がより安定する。
上記のθp、θ0、θ8、θ9と同様に、風量と電力と位相と電流検出手段出力判定値を決定し、最終的に、表1に示す特性ができあがる。表1の中で、実際にマイクロコンピュータ15が、使用するパラメータは、電流判定値と位相値の2つであり、これらが位相−電流判定値特性となり、マイクロコンピュータ15が、AD1の入力に応じて、位相角を段階的に切り換えることにより、図7の実線で示すような、風量に対する電力の軌跡を得ることもできる。
ここで、AD1の入力値、つまり、電流値に対する判定値の設定の前提条件として、必ず、In<In+1(n:p,0〜8)としなければならない。この関係が逆転していたりすると、位相が切り換わった後に、また、下の位相に戻ったりと、不安定な動作を引き起こす可能性がある。つまり、図7の横軸に風量を、縦軸に電流の信号値をとったグラフに示す、太点線の特性で、傾きが大きな(信号値の変化率が大きな)方が、安定して電力を切り換えられる。従って、開放状態付近と全導通θp付近を結ぶ、電力の変化率の大きなエリアは、太点線の傾きが小さく、不安定に近いエリアとなっている。この傾きを大きくするには、その領域に割り当てる位相(入力ライン)の密度を高くすればよい。
次に、AD1の変化による位相切り換えの動作を図10と図11を参照しながら説明する。図10は、風量の変化に対する位相の切り換えを示した図であり、図11はその動作のフローチャートを示す。
図10において、今、集塵室6に蓄積している塵埃の量が、位相θs3で風量Qs3となる状態であった所に、電動送風機2の更なる吸引により、蓄積される塵埃の量が増え、位相θs1で風量QS1となる状態に変化したとする。位相θs1で風量QS1となる塵埃の量では、位相θs3においては、QS1より小さな風量となるため、位相θs3における電流値が図10中の太点線で示すように低下する。すると、図11のフローチャートに示すように、I<Ijdjとなるため、位相をθs2に切り換えて、同時にAD1の入力に対する判定値もIs2に切り替わって、供給電力を上昇して電動送風機2が制御される。
供給電力を上昇させるよう位相が切り換わると、吸い込み力も上昇するため、集塵室6に蓄積している塵埃の量が同じであれば、つまり、空気的な負荷が同じであれば、位相切り換わり直後の風量は、一旦、上昇方向に移行する。同様の原理で、位相θS1での風量Qs1となる塵埃量では、位相θS3では、風量Qs1未満となる。
しかし、位相切り換わり後、実線で示すようにIs2まで電流値が低下した後、位相θs2においても、風量はQs1より小さくなるため、電流値が太点線のように低下し、位相がθs1に切り換わる。ここでも、位相がθs1に切り換わった直後は、風量が、一旦回復するが、電流値が低下し、Is1で平衡するため、位相の切り換えは発生せず、以降、塵埃の蓄積量が変化するまで、電動送風機2への供給電力は、位相θs1で制御される。
図10に示すように、位相が切り換わる瞬間にΔWの電力変動が必ず発生する。しかし、隣あった位相の間隔を狭くすることによって、ΔWは小さくでき、計測器で検出できる位相切り換わり時の電力の変動を微小にしたり、聴感上は全く判別する事ができないレベルまでにする事が可能である。
本実施の形態においては、開放風量とは異なる風量で設定される、位相−電流判定値特性の終端となる所定の位相角としては、全導通θpを設定しており、また、位相(入力ライン)の数を11本に分割した例で説明したが、実際は、終端の位相は、任意の位相に設定してもよく、また、入力ラインの数も、多くしても良い。商用電源のゼロクロスを基点とした位相制御においては、双方向性サイリスタ12のトリガオンのタイミングは、商用電源周波数が50Hzで10ms未満であり、60Hzで8.33ms未満である。従って、位相の分割数、入力ラインの数を増やせば増やすほど、段階的に変化させる位相の間隔が狭くなり、位相を切り換えた時の電動送風機2の電力変動が抑えられ、動作音の変化がスムーズになり、違和感を感じることがなくなる。但し、位相の分割数を増やす場合には、分割した各位相に対応した電流判定値の分解能も必要になってくる。近年では、この手の位相制御は、マイクロコンピュータ15にて実現し、電流値の判断は、マイクロコンピュータ15の有するA/D機能を使用して行うが、一般に、民生用のマイクロコンピュータの有するA/D機能の分解能は、10ビット前後であり、現実的には限界がある。また、増幅手段14の増幅率を上げて、電流検出の精度を上げる手段もあるが、電動送風機2の受ける電気的、物理的な外乱も増幅されてしまう欠点がある。
また、限られた位相分割数では、位相−電流判定値特性により電力や電流が一定となるような制御を行う場合に比べ、異なる電力間を結ぶような特性で電力を制御する場合の方が、位相−電流判定値特性の始点と終端の位相差の幅が大きくなり、位相−電流判定値特性上の隣り合った位相間の幅が大きくなるため、位相を切り換えた時の電動送風機2の動作が不安定になりやすいという特徴を有している。
マイクロコンピュータ15の有する上昇用位相−電流判定値特性と下降用位相−電流判定値特性は、前述した考え方に従って作成した結果、図12に示す風量−電力特性となる。
制御による結果を、風量−電力特性で表現したのは、電流検出手段13の検出する電流値によって、電力を制御していても、機器としては、ゴミの量、つまり、風量によって電力が決定されるよう動作するからである。
図12において、太実線で示した風量−電力特性が、下降用位相−電流判定値特性に対応しものであり、太点線で示した風量−電力特性が、上昇用位相−電流判定値特性に対応したものである。
図12の領域Aとして、囲んだ領域は、前述したように、最大の電力Wpを越えないように、尚かつ、全導通θpとなる風量Qpでは、確実にWpを確保して、吸い込み力を最大限に発揮させたいため、電力の変化率を徐々に下げていき、電力の変動を極力抑えたい領域であるため、電流値の上昇時であっても、下降時であっても、同一の電力−風量特性となるような、下降用位相−電流判定値特性と、上昇用位相−電流判定値特性としている。
図12中の領域Bとして囲んだエリアについても、前述したように、電力の変動を極力抑えたいエリアであり、電流値の上昇時であっても、下降時であっても、同一の電力−風量特性となるような、下降用位相−電流判定値特性と、上昇用位相−電流判定値特性としている。
表2に、上昇用位相−電流判定値特性と下降用位相−電流判定値特性の設定例を示す。
上記設定例においては、下降用位相−電流判定値特性と上昇用位相−電流判定値特性の分割数を同じにし、また、各々の分割における位相角を一致させている。こうすることによって、マイクロコンピュータ15内で、この制御を実現する処理を作成する際、簡単な構成で実現できるという利点を有するからである。また、同一の位相角に対しては、下降用の電流判定値Idn(n:0〜8)と、上昇用の電流判定値Iun(n:0〜8)は、必ず、Idn≦Iunとなるように設定する。尚、同一の位相に対して前記関係が維持できればよく、下降用と上昇用とで、必ずしも、nが一致している必要はない。下降時と上昇時とで、各々異なった所望の風量−電力特性となるようにした場合、同じ位相でも、出現する段階、順序が異なる場合もある。
また、下降用位相−電流判定値特性の分割数と上昇用位相−電流判定値特性の分割数は、同じにする必要はなく、異なっても良いが、同一位相では、Idn≦Iunとなるような、関係は維持しておく。
マイクロコンピュータ15は、図13のフローチャートに示すように、ステップ1では、まず、開放状態での位相となるθ9を設定すると共に、下降用のAD1の入力に対する判定値IdjdgをId9に設定する。図13においては、上昇用の判定値Iujdgは、Iu9としているが、θ9は、上昇用位相−電流判定値特性の開放側に一端であり、表2にも記載しているようにIu9は存在せず、ダミーデータを設定しておく。
ステップ2では、設定された位相のタイミングで、双方向性サイリスタ12をトリガオンする。ここでは、位相θ9にて、電動送風機2の供給電力が制御される。
ステップ3では、電動送風機2に流れている電流を検知し、AD1より入力する。ここでは、位相θ9で運転されている時の電流値が信号として入力されるが、集塵室6に蓄積された塵埃の量によって、その値は異なってくる。
ステップ4では、下降用のAD1の入力値に対する判定値と、AD1で入力された値を比較し、判定値未満であれば、ステップ6に進み、未満でなければステップ5へ進む。
ステップ5では、上昇用のAD1の入力値に対する判定値と、AD1で入力された値を比較し、判定値より大であれば、ステップ7に進み、そうでなければ全ての設定をそのままにして、ステップ2へと戻る。
ステップ6においては、電流値が下降している、つまり集塵室6の塵埃の量が増えたと判断されて通過するステップであり、下降用位相−電流判定値特性を、供給電力を1段階上昇させる設定を行い、ステップ8へ進む。
ステップ7においては、電流値が上昇している、つまり何らかの理由により、一旦、風量が低下していたが、風量を低下させていた原因が解除され、風量が増えたと判断されて通過するステップであり、上昇用位相−電流判定値特性を、供給電力を1段階下降させる設定を行い、ステップ8へ進む。
ステップ8においては、ステップ6、もしくはステップ7にて行われた設定をもとに、次のループで出力する位相と、下降用のAD1の入力値に対する判定値と、上昇用のAD1の入力値に対する判定値とを設定して、ステップ2へと戻る。
以降、下降用の判定値と上昇用の判定値と位相を、下降用位相−電流判定値特性、もしくは、上昇用位相−電流判定値特性に従って切り換え、これを繰り返し、電動送風機2への供給電力制御を行う。
従って、下降時に位相が切り換わる場合、AD1の入力値(電流値)は、必ず、その位相での電流判定値を通過し、位相が切り換わる毎に繰り返すので、風量に応じて下降用位相−電流判定値特性上の電流判定値の前後を推移することになり、常に、電流判定値とほぼ一致した電流値となる。上昇時にも、同様に、上昇用位相−電流判定値特性上の電流判定値とほぼ一致した電流値となる。
上記の構成によって、下降時と上昇時で、異なる位相−電流判定値特性を作成しながら、同一の位相においては、位相を切り換えるための電流判定値に幅ができるため、位相切り換わり時の電力を、より安定させることができる。また、下降用位相−電流判定値特性と上昇用位相−電流判定値特性として、下降時と上昇時で、所望の風量−電力特性となるよう設定すれば、同一位相での下降用の電流判定値と上昇用の電流判定値の幅を、意識することなく特性に合わせて可変でき、下降用位相−電流判定値特性と上昇用位相−電流判定値特性が合流して、同一の特性になる付近においても、滑らかに合流、もしくは分岐する事ができるので、安定した電力を得ることができる。
限られた位相分割数の中では、図7や図12に示すように、電力の変動を抑えたいエリアの位相の密度が高くなり、そうでないところの密度が低くなってしまうが、本来、高い密度が必要な電力の狙いが変化するエリアの密度を低くせざるを得ないため、領域Bと領域Aを結ぶ中間のエリアが、非常に電力が不安定になる領域になってしまう。しかしながら、下降時と上昇時の異なった位相電流判定値特性を有して、下降時と上昇時とで異なった軌跡で電力供給できる事により、領域Aと領域Bの位相の密度(入力ラインの数)を更に高くでき、領域Aと領域Bの電力の安定性を向上できるのみではなく、領域Aと領域Bを結ぶ電力変化の大きなエリアも、位相切り換わり後の、位相戻り等の不安定な動作もなく、塵埃の量に応じて、所望の風量−電力特性でスムーズに広範囲な電力の変化を行う制御ができる。
また、領域Aと領域Bでは、風量の上昇、下降に関わらず、変動のない狙い通りの電力で、電動送風機2を制御する事ができる。
また、吸い込み力(吸い込み仕事率)が最大となる風量が、Qpと異なる場合は、図12中の領域Aのエリアを、吸い込み力(吸い込み仕事率)が最大となる風量を含むように設定する事によって、安定した最大の吸い込み力を得る事ができる。
また、本手法のメリットとしては、電動送風機2の位相制御を構築する際、一旦、塵埃の量、風量を無視して電流と位相と電力のみで構築できる点もある。
尚、本実施の形態においては、表2に示すような組み合わせデータとして、特性の値そのものを予め設定する構成とし、下降用位相−電流判定値特性と上昇用位相−電流判定値特性とで、位相が共通になるようなデータとしたが、これらの特性のデータを位相を異ならせて作成し、そのデータから、現在の位相に対して、下降用の電流判定値と上昇用の電流判定値を演算して算出し、位相切り換えの判断をしてもよい。
また、本実施の形態においては、位相−電流判定値特性を、表2に示すような組み合わせのデータとして、特性の値そのものを予め設定する構成を取ったが、前述したように、所望の位相−電流判定値特性を得られれば、特性を算出するためのパラメータを設定して、位相に対する電流判定値を演算により算出し、判断しても、同様の制御が実現可能であることは言うまでもない。
また、本発明においては、電流検出手段13を用いて、電動送風機2の負荷状態を検出し、供給電力の制御を行ったが、図2にも示すように、電動送風機2の特性、もしくは、電動送風機2と本体1を組み合わせた特性が決まれば、吸引される風量と電流と電動送風機2の回転数と真空圧力は相関があり、いずれかが分かれば、同様の制御が可能であり、電流検出手段13を、風量検出手段や回転数検出手段や、圧力検出手段で構成しても良い事は言うまでもない。