JP2008087473A - ポリマーフィルムの製造方法及び製造設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】欠陥や表面の凹凸が少ない良好な品質のフィルムを高速かつ安定に製造する。
【解決手段】外周面に電気絶縁膜70を有する流延ドラム34を設ける。吐出口よりも上流側に設けた電極バー50に直流高電圧を与えて流延ドラム34に向かって放電させる。ビードは静電引力により帯電する流延ドラム34に引き寄せられる。これにより、ビードと流延ドラム34との付着性が向上してエアの巻き込みが抑制される。流延ドラム34から剥ぎ取った流延膜12を乾燥すると、空隙等の欠陥が少なく、優れた平面性を示す品質が良好なフィルムを高速かつ安定して製造することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ポリマーフィルムの製造方法及び製造設備に関するものである。
液晶ディスプレイ(LCD)の主要構成部材である偏光板の表面には、例えば、偏光板の表面を保護するための保護フィルム、光のズレを補正するための位相差フィルム、反射防止フィルム等の光学用途のポリマーフィルムが利用されているが、LCDの著しい需要拡大に伴い、その需要も拡大している。以下の説明では、ポリマーフィルムを単にフィルムと称し、光学用途のポリマーフィルムを光学フィルムと称する。
ポリマーフィルムの製造方法としては、一般的に溶液製膜方法と溶融製膜方法とが用いられている。溶融製膜方法は、ポリマーペレットを加熱溶解した後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性に優れ、かつ簡易設備で製造可能である一方で、加熱溶解時にポリマーが熱ダメージを受けてフィルムの透明度が低下したり、均一な膜厚のフィルムを製造することが困難である。そこで、高い透明度が要求される光学フィルムの製造方法としては、溶液製膜方法が主流とされる。
溶液製膜方法は、走行する支持体上に、ポリマー、溶剤及び添加剤を混合した混合液であるドープを流延して流延膜を形成した後、支持体より剥ぎ取った流延膜を乾燥してフィルムとする方法である。本方法では、透明度が高く、かつ平面性に優れる等の品質に優れるフィルムを製造することが重要になるが、予てより、製膜速度の高速化による生産性の向上が望まれており、その一環として、ドープの流延速度を向上させる検討が行なわれている。ただし、ドープの流延速度を上げると、吐出口から支持体までの間においてドープの流れであるビードにエアが巻き込まれ、流延膜の内部に空隙が生じたり、その表面に凹凸が生じて平面性が低下したりする等の問題がある。
そこで、エアの巻き込みを抑制する方法としては、例えば、特許文献1には、ビードと支持体との間に静電印加する方法が提案されている。この方法では、ビードの近傍、すなわち吐出口の近傍に電極を設け、酸素濃度を規定した環境下でビードと支持体との間に電圧をかける方法が提案されている。また、特許文献2には、ビードの幅方向に対して複数の区画を有する吸引口を備えた減圧装置を用いて、各区画の圧力をそれぞれ制御することで整流しながらビード近傍を減圧する方法が提案されている。
特開2001−113544号公報 特開2002―103359号公報
しかしながら、特許文献1では、ビードの近傍に電極を設けているために、連続的に製膜を続ける間に、ドープから揮発した溶剤ガスや添加剤が電極に付着したり電極が劣化するなどして、電圧を印加することが困難となる。したがって、特許文献1の方法は、エアの巻き込みを抑制する効果が低下していくという問題を抱える。また、特許文献2のように減圧チャンバ等の装置を用いるだけでは、エアの巻き込みを抑制する効果が弱く、更には、製膜速度を上げるにつれて、ビードの両端付近が波打つ等して不安定になるため平面性に劣る流延膜が形成されるという問題を抱える。
本発明は、エアの巻き込みを抑制しながら流延膜を形成し、欠陥が少なく平面性に優れるフィルムを高速かつ安定して製造することができるポリマーフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のポリマーフィルムの製造方法は、流延ダイから、連続して走行する支持体の上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを吐出し、流延ダイと支持体との間にビードを形成し、ビードを支持体の上に流延して流延膜を形成する工程と、支持体から剥ぎ取った後の流延膜を乾燥してフィルムとする工程とを備え、支持体の表面近傍に配される電圧印加装置を用いて支持体の表面を帯電させることを特徴とする。
電圧印加装置は、支持体に向かい放電して支持体に電荷を付与する電極体であり、ビードに対し支持体の走行方向上流側に設置されることが好ましい。
支持体の表面に電気絶縁膜を設けることが好ましい。
支持体の表面電位Vは、0.1kV≦|V|≦3kVとすることが好ましい。また、流延は、酸素濃度が10重量%未満の環境下で行うことが好ましい。
ビードの上流側に備えられる減圧チャンバにより、前記ビードの上流側のエリアを減圧することが好ましく、前記電気絶縁膜は複層構造であることが好ましい。互いに異なる2つ以上のビードを支持体に密着させるための密着手段を使用することが好ましい。密着手段は、ビードの後方を減圧するための減圧チャンバであることが好ましい。
本発明のポリマーフィルムの製造設備は、流延ダイから、連続して走行する支持体の上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを吐出して流延ダイと支持体との間にビードを形成し、このビードを支持体上に流延して流延膜を形成する流延膜形成装置と、支持体から剥ぎ取った流延膜を乾燥してフィルムとする乾燥装置と、支持体の表面を帯電させるために支持体の表面近傍に配される電圧印加装置とを有することを特徴とする。
本発明により、ビードを支持体の表面に引き寄せてエアの巻き込みを抑制しながら高速で流延膜を形成することができる。また、この流延膜を乾燥することで、欠陥が少なく平面性に優れるフィルムを高速かつ安定して製造することができる。
本発明に係るポリマーフィルムの製造方法について、実施形態を示しながら具体的に説明する。図1は、本実施形態で用いられるフィルム製造設備10の概略図である。
フィルム製造設備10には、走行する支持体上にドープを流延して流延膜12を形成するための流延室14と、支持体から剥ぎ取った流延膜12である湿潤フィルム13を搬送する間に乾燥を促進させるための渡り部16と、固定手段で両側端部を保持した湿潤フィルム13を搬送する間に、乾燥を促進させてフィルム18とするためのテンタ19と、フィルム18の両側端部を切断するための耳切装置20と、フィルム18を十分に乾燥させるための乾燥室22と、乾燥後のフィルム18を冷却するための冷却室23と、フィルム18の帯電圧を調整するための強制除電装置25と、フィルム18にナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ26と、フィルム18をロール状に巻き取るための巻取室28とが備えられている。なお、フィルム製造設備10は、ドープの流路となる配管を介してドープ製造設備30と接続されており、適宜適量のドープが送り込まれる仕組みとなっている。
流延室14には、ドープ製造設備30からドープが送り込まれるフィードブロック31と、スリット状の吐出口を有し、この吐出口からドープを支持体上に吐出させる流延ダイ33と、支持体として作用する流延ドラム34と、流延ドラム34の表面温度を調整するために、流延ドラム34の内部に形成された流路に温調した伝熱媒体を供給するための伝熱媒体供給装置36と、流延ドラム34から流延膜12を剥ぎ取るために湿潤フィルム13を支持するための剥取ローラ38と、流延室14内に浮遊する溶剤ガスを凝縮液化するための凝縮器(コンデンサ)40と、液化した溶剤を回収するための回収装置41とが備えられている。また、流延室14の外部には、流延室14の内部温度を調整するための温調装置43が取り付けられている。
フィードブロック31の内部にはドープの流路が形成されている。この流路の配置を調整することにより、所望の構造の流延膜12を形成することができる。流延ダイ33には、減圧チャンバ45が取り付けられている。流延ダイ33の吐出口から流延ドラム34にかけてビードが形成され、ビードの上流側に備えられる減圧チャンバ45は、ビードの後方のエリア、すなわち上流側のエリアを減圧させるために用いられる。減圧チャンバ45の外面には、温度を調整した伝熱媒体を流すことで内部温度を調整するためのジャケット(図示しない)が備えられており、内部温度を調整することで、ドープやビードや流延膜12から揮発した溶剤ガスが表面に付着するのを防止する。
流延ダイ33の形状や材質、大きさ等は特に限定されるものではないが、コートハンガー型のものを用いるとドープの流延幅を略均一に保持することができるので好ましい。また、ドープの流延幅に対して1.1〜2.0倍程度の吐出口を有するものが好ましい。材質は、耐久性、耐熱性、等の観点から、析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましく、ジクロロメタン、メタノール、水の混合用液に3ヶ月浸漬させても気液界面に孔開きを生じることがないような耐腐食性を有するものが好ましい。電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも好適に用いることができる。なお、耐熱性の観点からは、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であるものを用いることが好ましい。
上記の吐出口の先端には、耐摩耗性向上等を目的として硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、窒化処理等が挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であること、気孔率が低いこと、更には、脆性及び耐腐食性に優れること、流延ダイ33に対する密着度は高いが、ドープに対する密着度が低いこと等の条件を満たすものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)、Al、TiN、Cr等が挙げられ、中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは公知の溶射法により行うことができる。
平面性に優れる流延膜12を形成するために、流延ダイ33におけるドープの接触面は、研磨される等して平滑化されているものが好ましい。また、流延ダイ33のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けてエッジ吸引風量を1〜100L/分としながら吸引することが好ましい。これにより、ビードの表面に凹凸を形成する原因となる風の流れを低減することができる。
流延ドラム34は連続走行が可能な機能を有することが好ましい。なお、本実施形態では支持体として流延ドラム34を使用するが、支持体の形態は特に限定されるものではなく、例えば、1機の駆動ローラを含む1対のローラに巻き掛けられ、無端で走行する流延バンドを支持体として好適に用いることができる。また、支持体の形態に係らず、その寸法や材質等は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅に対して1.1〜2.0倍程度の幅を有するものが好ましく、耐腐食性や高強度を有する等の点からステンレス製であることが好ましい。更に、平面性に優れる流延膜を形成するため、その表面ができる限り研磨されていることが好ましい。本実施形態では、駆動装置(図示しない)により連続回転が可能なステンレス製ドラムを用いて、ドープを流延する間、連続的に回転させる。
流延ドラム34上にビードが着地する位置より上流側には、電圧印加装置としての電極バー50が配されている。電極バー50は、流延ドラム34と略同等の幅を有している。電極バー50に直流高電圧が与えられることで流延ドラム34に向かって放電する。これにより、流延ドラム34は帯電される。また、流延室14には、酸素濃度計52とコントローラ53とが設けられている。この酸素濃度計52を使用して流延室14内の酸素濃度は常時測定され、この測定値に応じて電極バー50の起動/停止が制御される。なお、電極バー50は、流延ドラム34の幅方向に延びた棒状部材であり、本実施形態では、流延ドラム34の幅と略同等の長さの電極バー50をひとつのみ設けているが、電極バー50を流延ドラム34の周方向に複数並べて配してもよい。これにより、流延ドラム34の帯電量がより均一となるように、流延ドラム34を帯電させることができる。
渡り部16には、湿潤フィルム13を支持するための複数の搬送ローラと、搬送される湿潤フィルム13に乾燥風を吹き付けるための送風装置54とが配されている。テンタ19には、湿潤フィルム13の両側端部を保持して固定するための固定手段である複数のピンを有するピンプレートを備えた1対のチェーン(図示しない)と、テンタ19の内部温度を調整するための温調装置(図示しない)とが備えられている。上記のチェーンは、テンタ19の入口から出口に向かうに従い、すなわち上流側から下流側に向かうに従い徐々に互いに距離が拡がるように配された1対のレールにそれぞれ巻き掛けられており、このレールに従ってチェーンは走行する。
耳切装置20には、切断したフィルム18の両側端部をチップとなるように細かくするためのクラッシャ56が接続されている。乾燥室22の内部には、フィルム18を巻き掛けて搬送するための複数のローラ58と内部温度を調整するための温調機(図示しない)とが備えられており、更に、その外部には、フィルム18から揮発した溶剤ガスを吸着回収するための吸着回収装置59が取り付けられている。そして、巻取室28には、フィルム18に押し圧を加えるためのプレスローラ61を備えた巻取ローラ62が備えられている。
次に、上記のフィルム製造設備10を用いてフィルム18を製造する流れを具体的に説明する。先ず、ドープ製造設備30で調製したドープが、フィードブロック31を介して流延ダイ33に送られる。
図2は、ドープの流延部付近の概略図である。図2に示すように、流延室14の内部は、ドープの吐出口を有する流延ダイ33及び減圧チャンバ45を含む流延部を取り囲むようにラビリンスシール65を用いて仕切られており、流延ドラム34の走行等に伴い流延室14内に発生する風の影響を受けてビードの面状が変動するのが抑制される。
ドープを流延する前には、流延ドラム34に向かって電極バー50による放電を行なう。外周面に電気絶縁膜70を設けた流延ドラム34を使用することで流延ドラム34をプラスまたはマイナスに帯電させる。このような流延ドラム34に向かって流延ダイ33からドープを吐出させると、吐出されたドープ、すなわちビードは、静電引力により流延ドラム34に引き寄せられる。これにより、双方間の付着性が向上するのでエアの巻き込みが抑制される。なお、電極バー50の設置箇所は、ビードに対し流延ドラム34の走行方向上流側に設けることが好ましい。これにより、流延室14の内部に浮遊する溶剤ガスが電極バー50に付着して帯電効率が低下するおそれを低減することができる。本実施形態のようにラビリンスシール65で区切られた流延部の外部に設けると、電極バー50に対する溶剤ガスの付着をよりいっそう抑制される。
エアの巻き込みを効果的に抑制するために、流延ドラム34の表面電位Vは0.1kV≦|V|≦3kVとすることが好ましい。この表面電位Vは電極バー50からの放電量を調整することで容易に制御可能である。Vが0.1kV未満の場合には、ビードと流延ドラム34との間に微弱な力しか作用させることができないので、エアの巻き込みを抑制することが困難な場合がある。一方で、Vが3kVを超えると、流延ドラム34の帯電量が大きすぎてビードが揺れるようになることがあり、また、帯電量が流延ドラム34の幅方向で不均一になる場合もある。また、Vが3kVを超えると、電気絶縁膜70に絶縁破壊が生じる場合がある。
流延膜12を形成する間は、酸素濃度計53を用いて流延室14の内部の酸素濃度が常時測定され、流延室14内の酸素濃度が常時10重量%未満となるように測定値に応じて窒素ガスの流入量が調整される。これにより、流延室14内での火災や爆発の危険性が低減される。酸素濃度は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス、或いは不活性ガスと空気とを混合した混合ガス等を流延室14の内部に供給することで容易に調整することができる。なお、何らかの原因で酸素濃度が10重量%以上となったときには、アラームを発するとともに、コントローラ52を介して電極バー50の放電を停止させる。
流延ドラム34の帯電方法は、特に限定されるものではないが、上記の様に放電処理とすると流延ドラム34に対して均一に電荷を付与することができるので好ましい。上記のような放電処理は、直流コロナ放電として知られている。なお、流延ドラム34に付与する電荷を同じ符号の電荷だけを持つ単極性電荷とすると、ビードを引き付ける強い力を得ることができるので好ましい。
電気絶縁膜70は、絶縁性物質を溶融蒸着する等して形成させた電気絶縁性を示す膜である。このように、流延ドラム34の流延すべき周面に電気絶縁膜70を設けて、上記の放電処理を実施することにより、電気絶縁膜70の表面に沿った樹枝状の放電路を形成し、ステンレス製の流延ドラム34を容易に帯電させることができる。電気絶縁膜70は、絶縁性物質を溶融蒸着させる等により形成される。絶縁性物質は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミックス、PTFE、プラスチック等が挙げられる。前記セラミックスは、アルミナ、ジルコニア、酸化クロム、チタニア、または、これらのうちの少なくともいずれか2つが含まれる混合物を含む。形成方法や膜厚等も特に限定されるものではないが、流延ドラム34の表面全域で均一な膜厚を持つように形成されることが好ましい。なお、本実施形態の電気絶縁膜70は、アルミナを主体とするセラミックスを溶融接着させて皮膜とされたものである。
電気絶縁膜70は、単層構造ではなく、複層構造であることが好ましい。例えば、流延膜12に接する第1層70aと、この第1層70aに重なり第1層70aよりも厚い第2層70bとを有する複層構造とすることがより好ましい。第1層70aは、流延膜12の第1層70aと接する表面をできるだけ平滑にするために、露出する面が平滑であることが好ましい。流延膜12の表面が粗いと、得られるフィルム18(図1参照)の表面も粗くなることが多いからである。セラミックスからなる第1層70aを、露出面が平滑になるように形成するためには、粒径が小さい粒子のセラミックスを原料として用いることが好ましい。第1層70aの材料として、セラミックスに代えてPTFEを用いる場合も同様である。
第1層70aに用いるセラミックスやPTFEの粒径を小さくする場合ほど、第1層70aは割れやすいものとなる、あるいは、ひびが入って形成される傾向がある。この傾向は、流延ドラム34の周面に電気絶縁性を付与するために第1層70aを厚くしようとするほど大きくなる。そこで、第2層70bを第1層70aの内側に設け、すなわち流延ドラム34に接して露出しない層として第2層70bを設ける。そして、この第2層70bを、第1層70aの材料よりも大きな粒径のセラミックスやPTFEで形成する。これにより、電気絶縁膜70は、ひびがはいらずに平滑に形成され、長期の使用でも割れが生じにくくなる。そして、電気絶縁膜70を、以上のような材料からなる第1層70aと第2層70bとの複層構造とすることにより、露出面が平滑で、かつ、電気絶縁性が大きなものとすることができる。なお、第2層70bは、複数重ねて設けてもよい。
流延時には、減圧チャンバ45を用いてビードの後方の圧力が大気圧よりも低くなるよう調整される。これにより、ビードは後方、すなわち流延ドラム34の方へ引き寄せられるので、エアの巻き込みがよりいっそう抑制されると共に、ビード近傍における風の流れを低減させて、表面変動を抑制しながらビードを流延することができる。また、前述したように、流延部はラビリンスシール65で囲まれているので、減圧チャンバ45により効率良くビード近傍の圧力を低くすることができる。なお、ビードの後方は(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下とすることが好ましい。
流延ドラム34は、その表面温度が−40〜30℃の範囲で略一定とされる。本実施形態では、流延ドラム34の内部に形成された流路に冷媒供給装置36から温度を調整した伝熱媒体を供給させることで−10℃に調整する。また、流延時のドープは−10〜55℃の範囲で略一定とされることが好ましい。フィードブロック31や流延ダイ33の内部温度を調整することで容易に調整することができ、ここでのドープの温度は−5℃とする。これにより、流延ドラム34の上で、ビードは効率良くかつ効果的に冷却され、ゲル状の流延膜12が短時間のうちに形成される。
流延ドラム34と流延膜12との密着度を調整する密着装置としてエアナイフを使用しても良い。エアナイフを用いる場合には、ビードに対して流延ドラム34の走行方向下流側に設けて形成された流延膜12に対し風を吹き付けることが好ましい。これによりビードが流延ドラム34に押し当てられて双方の密着度が向上する。ここで、エアの吹き付ける速度や風量を調整することにより、流延膜12と流延ドラム34の表面との密着度を適度に調節することができる。
流延ダイ33の吐出口の端に溶剤供給装置(図示しない)を取り付けて、所望の溶剤をビードの両端部や吐出口と外気との両気液界面に供給することが好ましい。溶剤は、ドープを溶解することができる溶剤が好ましく用いられ、例えば、ジクロロメタンを86.5重量部と、メタノールを13重量部と、n−ブタノールを0.5重量部とを混合した混合物が挙げられる。これにより、ドープが局所的に乾燥して固化することがないので、安定してビードを形成することができる。加えて、固化したドープが異物としてビードや流延膜12に混入するおそれが低減されるので、欠陥がなく、透明度の高いフィルム18を得ることができる。また、上記のような混合物を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いて、その供給量が吐出口の端部の片側ごとに0.1〜1.0mL/分の範囲となるように供給することが好ましい。
流延室14内に浮遊する溶剤ガスは、凝縮器40を用いて凝縮液化された後、回収装置41で回収される。これにより、流延室14内の溶剤ガスを低減させる効果が得られる。また、回収された溶剤は、再生装置(図示しない)で再生されドープ調製用溶剤として再利用される。これにより、材料コストの削減が実現される。なお、流延室14の内部温度は、温調装置43により−10〜57℃の範囲で略一定とすることが好ましい。
流延ドラム34上の流延膜12は、時間の経過に伴って、よりいっそう冷却ゲル化が進行する。そして、ゲル化が進行して自己支持性を持った流延膜12は、剥取ローラ38で支持されながら流延ドラム34から剥ぎ取られる。剥取直後の流延膜12は、その残留溶剤量が10〜200質量%であることが好ましい。残留溶剤量は、流延膜やフィルム等、対象となるサンプル中の主溶剤量である。サンプル中に多くの溶剤が存在する場合には、もっとも含有量の多い溶剤を主溶剤とみなす。また、残留溶剤量は乾量基準であり、採取時でのサンプルの重量をx、サンプルを完全に乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
剥取された流延膜12は渡り部16に送られ、複数の搬送ローラで支持し搬送される間に、送風装置54から乾燥風が吹き付けられて乾燥が促進する。乾燥風は、その温度を20〜250℃の範囲内で略一定とすることで、熱ダメージを与えることなく効果的に流延膜12を乾燥することができる。また、渡り部16の入口側に配する搬送ローラよりも出口付近に配する搬送ローラの回転速度を速くする。これにより、流延膜12の搬送方向に張力が付与されるので、流延膜12の表面にしわやつれ等を発生させることなく搬送することができる。
乾燥を促進させた流延膜12はテンタ19に送られ、その入口付近で両側端部に複数のピンが突き刺され固定される。テンタ19の内部は、予め、温調装置(図示しない)により温度が調整される。また、テンタ19の入口から出口に向かうに従い幅が拡がるようにレールが設置されているので、流延膜12はレールに従い搬送される間に幅方向に徐々に拡げられる。これにより、流延膜12は幅方向の分子配向が制御され、かつ乾燥が促進されて、高レタデーション値を示すフィルム18となる。なお、レールによる拡張延伸を行なわずに、収縮機で幅方向に延伸させても良い。テンタ19の出口付近では、ピンによるフィルム18の固定が解放される。また、本実施形態では、固定手段としてピンを有するピン型テンタを示したが、特に限定されるものではなく、フィルムの両側端部の把持が可能であれば固定手段として流延膜12の両側端部を把持するクリップを複数備えたクリップ型テンタを用いても良い。
テンタ19から搬出されたフィルム18は、耳切装置20を用いてその両側端部が切断される。これにより、フィルム18の両側端部に形成されたピンによる突き刺しキズを切除される。なお、当該切除処理は省略することもできるが、欠陥の少ないフィルム18を得るためにも流延室12から巻取室28までのいずれかで行うことが好ましい。
フィルム18は乾燥室22に送られ、多数のローラ58で支持し搬送される間、温調機(図示しない)を用いてフィルム18の膜面温度が60〜145℃の範囲内で略一定となるように調整される、これにより、熱ダメージを受けることなくフィルム18の乾燥が促進される。フィルム18の膜面温度は、フィルム18の搬送路上かつ表面近傍に設けた温度計(図示しない)により容易に知ることができる。また、乾燥室22では、フィルム18から揮発した溶剤ガスが吸着回収装置59で回収された後、溶剤成分が除去され、再度、乾燥室22に乾燥風として供給される。これにより、フィルム18の表面に溶剤ガスが付着せず、かつエネルギーコストの削減を図ることができる。
フィルム18は冷却室23に送られ、略室温となるまで冷却される。冷却方法は特に限定されるものではなく、例えば、略室温とした冷却室23にフィルム18を放置して自然冷却させる方法でも良いし、冷却室23に送風機を取り付けて冷風を供給する方法でも良い。なお、乾燥室22と冷却室23との間に調湿室(図示しない)を設けてフィルム18を調湿した後に冷却すると、既にフィルム18の表面にしわが生じている場合でも、そのしわを効果的に伸ばす効果を得することができるので好ましい。
強制除電装置25により略室温とされたフィルム18の帯電圧が調整される。フィルム18の帯電圧は特に限定されるものではないが、−3kV以上+3kV以下の範囲で略一定とすることが好ましい。この後、ナーリング付与ローラ26によりフィルム18の両側端部にはナーリングが付与される。最後に、フィルム18は巻取室28に送られ、プレスローラ61で表面に押し圧が付与されて平面性が整えられながら巻取ローラ62で巻き取られる。フィルム18を巻取る際の張力は、巻取開始時から終了時までの間で徐々に変化させることが好ましい。これにより、しわやつれを発生させることなく巻き取ることが可能となる。
以上より、平面性に優れるフィルム18を高速かつ安定して製造することができる。本発明によると、搬送方向に少なくとも100m以上であり、幅方向が1400〜2500mmであるフィルム18を製造することが可能である。ただし、本発明は、2500mmより大きい場合にも効果を発揮する。完成したフィルム18の膜厚は特に限定されるものではないが、20〜500μmであることが好ましい。より好ましくは30〜300μmであり、特に好ましくは35〜200μmであるが、フィルム18の膜厚が15〜100μmのように薄い場合でも、本発明の効果を得ることができる。
なお、流延ドラム34を帯電させる方法としては、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、摩擦部材を使用する方法が挙げられる。この場合、摩擦部材を流延ドラム34に接触させ静電気を起こすことで流延ドラム34を帯電することができる。摩擦部材としては、例えば、表面に布を巻きつけた金属棒や、ベルト、ゴム製品等が挙げられ特に限定されるものではないが、流延ドラム34の表面に出来る限りキズを付けることがないよう部材を選択すると共に、接触させる際の圧力を適宜調整することが好ましい。
上記の説明では、1種類のドープを用いて単層のフィルムを製造する形態を示したが、本発明は複層構造の流延膜を形成する場合にも効果を発揮する。なお、複層構造の流延膜は所望数のドープを同時或いは逐次に流延する等の公知の方法を用いれば良く、特に限定されない。また、流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶剤回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。なお、完成したフィルムの性能や、カールの度合い、厚み、及びこれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
完成したフィルムの少なくとも一方の面に表面処理を施すと、偏光板等の光学部材との接着度を高めることができるので好ましい。表面処理としては、例えば、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理等が挙げられ、これらの中から少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
完成したフィルムをベースとし、その両面或いは一方の面に所望の機能性層を設けると、各種機能性フィルムとして用いることができる。機能性層としては、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層等が挙げられる。例えば、反射防止層を設けると、光の反射を防止して高画質を提供することができる反射防止フィルムが得られる。なお、上記の機能性層や形成方法等に関しては、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、本発明のポリマーフィルムの具体的用途に関しては、例えば、特開2005−104148号公報の[1088]段落から[1265]段落に記載される、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型等の液晶表示装置への利用等が挙げられる。
次に、本発明に係る各種ドープ原料について、具体的に説明する。
ドープ原料としてセルロースエステルを用いると、透明度の高いフィルムを得ることができるので好ましい。セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアシレートブチレート等のセルロースの低級脂肪酸エステルが挙げられる。中でも、透明度の高さから、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、トリアセチルセルロース(TAC)を用いることが好ましい。なお、本実施形態で用いるドープは、ポリマーとしてトリアセチルセルロース(TAC)を含むものとする。このようにTACを用いる場合には、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。なお、ドープのポリマー成分は、セルロースエステルに限定されず、溶媒に溶かしてドープをつくることができる公知のものであればよい。
上記のセルロースアシレートとしては、より透明度の高いフィルムを得るためにも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。下記式中のA、Bは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わしており、具体的には、Aはアセチル基の置換度であり、Bは炭素数が3〜22のアシル基の置換度である。
(a) 2.5≦A+B≦3.0
(b) 0≦A≦3.0
(c) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を炭素数が2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合を意味する。なお、100%のエステル化の場合を置換度1とする。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合である。
セルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、2種類以上のアシル基が用いられていても良い。なお、2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。更に、DSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、33%以上であることが特に好ましい。更に、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましい。このようなセルロースアシレートを用いると、非常に溶解性に優れたドープを調製することができる。なお、上記のようなセルロースアシレートを用いる場合には、非塩素系溶剤を用いると、非常に優れた溶解性を有し、低粘度であり、かつ濾過性に優れるドープを調製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
セルロースアシレートの炭素数が2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられる。更に、それぞれが置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
なお、本発明で用いることができるセルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープ原料となる溶剤は、用いられるポリマーを溶解することができる有機化合物を用いることが好ましい。ただし、本発明においてドープとは、ポリマーを溶剤に溶解又は分散させることで得られる混合物を意味するため、ポリマーとの溶解性が低いような溶剤も用いることができる。好適に用いることができる溶剤としては、例えば、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタンやクロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、メタノールやエタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等のアルコール、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル、テトラヒドロフランやメチルセロソルブ等のエーテル等が挙げられる。これらの溶剤の中から2種類以上の溶剤を選択し、混合した混合溶剤を用いても良い。中でもジクロロメタンを用いると、溶解度に優れるドープを得ることが出来ると共に、短時間のうちに流延膜中の溶剤を揮発させてフィルムとすることができるので好ましい。
上記のハロゲン化炭化水素としては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。更に、ポリマーとの相溶性や、支持体から剥ぎ取る流延膜の剥ぎ取る易さの指標である剥ぎ取り性、フィルムの機械強度、光学特性等の観点から、ジクロロメタンに炭素数が1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合させたものを用いることが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、n−ブタノール、或いはこれらの混合物を用いることが好ましい。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶剤組成も提案されている。この目的に対しては、炭素数が4〜12のエーテル、炭素数が3〜12のケトン、炭素数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることが好ましい。これらの化合物は環状構造を有していても良いし、エーテル、ケトン及びエステルの官能基、すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。その他にも、溶剤は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。なお、2種類以上の官能基を有する場合には、その炭素数がいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
ドープには、目的に応じて可塑剤、紫外線吸収剤(UV剤)、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の公知である各種添加剤を添加させても良い。例えば、可塑剤としては、トリフェニルフィスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート等のリン酸エステル系可塑剤や、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、及びポリエステルポリウレタンエラストマー等の公知の各種可塑剤を用いることができる。
また、ドープには、フィルム同士の接着を防止したり、屈折率を調整したりする目的で微粒子を添加させることが好ましい。この微粒子としては、二酸化ケイ素誘導体を用いることが好ましい。本発明における二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素や、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このような二酸化ケイ素誘導体は、その表面がアルキル化処理されたものを用いることが好ましい。アルキル化処理のような疎水化処理が施されている微粒子は、溶剤に対する分散性に優れるため、微粒子同士が凝集することなくドープを調製し、更には、フィルムを製造することができるので、面状欠陥が少なく、透明度の高いフィルムを製造することが可能となる。
上記の様に、表面にアルキル化処理された微粒子としては、例えば、表面にオクチル基が導入された二酸化ケイ素誘導体として市販されているアエロジルR805(日本アエロジル(株)製)等を用いることができる。なお、微粒子を添加させる効果を確保しつつ、透明度の高いフィルムを得るためにも、ドープの固形分に対する微粒子の含有量は0.2%以下となるようにすることが好ましい。更に、微粒子が光の通過を阻害させないように、その平均粒径は1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは、0.4〜0.8μmである。
先に説明した通り、本発明では、透明度の高いポリマーフィルムを得るためにもポリマーとしてTACを利用してドープを調製することが好ましい。この場合、溶剤や添加剤等を混合した後のドープの全量に対して、TACを含有する割合が5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、TACを含有する割合が15〜30重量%であり、特に好ましくは17〜25重量%である。また、添加剤(主に可塑剤)を含有させる割合は、ドープ中に含まれるポリマーやその他添加剤等を含めた固形分全体に対して、1〜20重量%とすることが好ましい。
なお、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、剥離剤等の各種添加剤及び微粒子については、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、TACを利用したドープの製造方法であり、例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡等についても同様に、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験1]
図1に示すフィルム製造設備10を用いてフィルム18を製造した。適量のドープをドープ製造設備30からフィードブロック31を介して流延ダイ33へ送った後、図2に示すように連続して回転させた流延ドラム34の上に、流延ダイ33の吐出口からドープを吐出させた。このとき、減圧チャンバ45の圧力を600Paとしてビード後方を減圧し、また、ドープの吐出量は、乾燥後のフィルム18の厚みが80μmとなるように調整した。
流延ドラム34は、駆動装置(図示しない)により回転数を制御することができるステンレス製のドラムを用いて、伝熱媒体供給装置36から冷媒を供給することにより表面温度を−10℃とした。図2に示すように、ドープを流延する前に、電極バー50に直流高電圧を与えて放電し、流延ドラム34を帯電させた。流延ドラム34の表面電位Vは1.0kVであった。また、流延室14内に窒素ガスを供給して、酸素濃度が常時10重量%未満となるように調整した。更に、温調装置43を用いて流延室14内の温度を常時35℃とした。なお、流延ダイ33は、幅が1.8mのスリットからなる吐出口と内部温度を調整するためのジャケット(図示しない)とを有する形態を用いて、流延するドープの温度を36℃とした。フィードブロック31やドープの流路となる配管等は温度調整機能を有する形態を用いて、その内部温度を全て36℃に保温した。
自己支持性を持つまで冷却ゲル化を進行させた流延膜12を剥取ローラ38で支持しながら流延ドラム34から剥ぎ取って湿潤フィルム13とした。次に、湿潤フィルム13を渡り部16に送り、複数の搬送ローラで支持しながら搬送する間に、乾燥装置44から40℃に調整した乾燥風を供給して湿潤フィルム13を乾燥した。この後、湿潤フィルム13をピン型のテンタ19に送り、複数のピンを両側端部に突き刺して固定した後、流延膜12を幅方向に延伸しながら搬送する間に、乾燥装置(図示しない)から乾燥風を供給し乾燥させてフィルム18とした。
テンタ19の出口から30秒以内に配するNT型カッタを備える耳切装置20を用いてフィルム18の両側端部から内側に向かって50mmの位置を切断した。切断したフィルム18の両側端部は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ56に送って平均80mm程度のチップに粉砕した。
耳切装置20と乾燥室22との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて100℃の乾燥風を供給することによりフィルム18を予備加熱した後、乾燥室22へ搬入した。乾燥室22では、フィルム18の膜面温度が140℃となるように温度調整装置(図示しない)で内部温度を調整した乾燥室22内を、複数のローラ58に巻き掛けながらフィルム18を搬送する間に乾燥した。乾燥室22によるフィルム18の乾燥時間は10分とした。フィルム18の膜面温度は、フィルム18の搬送路の真上かつ表面近傍に設けた温度計(図示しない)を用いて測定した。乾燥室22では、活性炭からなる吸着剤と乾燥窒素からなる脱着剤とを有する吸着回収装置59を用いて、フィルム18から揮発した溶剤ガスを回収した後、水分量が0.3重量%以下になるまで溶剤ガスの水分を除去した。
乾燥室22と冷却室23との間に調湿室(図示しない)を設けて、フィルム18に対して、温度50℃、露点20℃のエアを供給した後、直接的に90℃、湿度70%のエアを吹き付けて調湿し、フィルム18に発生しているカールを矯正した。次に、フィルム18を冷却室23に送り、30℃以下になるまでフィルム18を徐々に冷却した後、強制除電装置25を用いてフィルム18の帯電圧を−3kv以上+3kV以下とした。そして、ナーリング付与ローラ26を用いてフィルム18の両側端部にナーリングの付与を行い表面に生じている凹凸を矯正した。なお、フィルム18にナーリングを付与する幅を10mmとし、凹凸の高さがフィルム18の平均厚みよりも平均して12μm高くなるようにナーリング付与ローラ26による押し圧を調整して、フィルム18にエンボス加工を行った。
フィルム18を巻取室28に送り、プレスローラ61によりフィルム18に対して50N/mの押し圧を付与しながらφ169mmの巻取ローラ62で巻き取った。巻取り時には、フィルム18の巻き始めの張力を300N/mとし、巻き終わりの張力を200N/mとした。以上より、ロール状のフィルム18を得た。完成したフィルム18は膜厚が80μmであった。また、全製膜工程を通じて、湿潤フィルム13やフィルム18の平均乾燥速度を20重量%/分とした。
本実験1で用いたドープの原料を下記に示す。
〔ドープ原料〕
セルローストリアセテート 100重量部
ジクロロメタン 320重量部
メタノール 83重量部
1−ブタノール 3重量部
可塑剤A 7.6重量部
可塑剤B 3.8重量部
UV剤a 0.7重量部
UV剤b 0.3重量部
クエン酸エステル混合物 0.006重量部
微粒子 0.05重量部
上記のセルローストリアセテートは、置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中の6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mm、標準偏差0.5mmの粉体であり、可塑剤Aは、トリフェニルフォスフェートであり、可塑剤Bは、ジフェニルフォスフェートであり、UV剤aは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、UV剤bは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールであり、クエン酸エステル化合物はクエン酸とモノエチルエステルとジエチルエステルとトリエチルエステルとの混合物であり、微粒子は平均粒径が15nm、モース硬度が約7の二酸化ケイ素である。また、ドープの調製時には、レタデーション制御剤(N−N−ジ−m−トルイル−N−p−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)をフィルムとしたときの全重量に対して4.0重量%となるように添加した。
本発明の効果を評価するため、ビードに生じるエアの巻き込みの発生を目視により観察した。すなわち、ドープの流延速度を上げていき、エアの巻き込みが確認されるようになる流延速度を調べた。その結果、本実験1では、流延速度を120m/min.とするまでエアの巻き込みは観察されなかった。
[実験2]〜[実験14]及び[比較実験1]
流延ドラム34の表面電位Vが表1の実験2〜実験14の各欄に示す値となるように、流延ドラム34を帯電させ、実験1と同じ方法によりエアの巻き込みの発生を観察した。なお、比較実験1は、本発明に対する比較実験であり、電極バー50を使用せず、流延ドラム34の帯電を実施しなかった。したがって、比較実験1における流延ドラム34の表面電位Vは「0(ゼロ)」である。表1の「流延速度」欄に記載の値は、実験1と同様に、流延速度を上げていきエアの巻き込みが発生した流延速度である。流延ドラム34の表面電位以外の条件は、実験1と同じである。
Figure 2008087473
比較実験1では90m/min.の流延速度にも係らずエアの巻き込みが確認された。以上の実施例1の結果から、従来の方法によるとドープの流延速度は最高でも90m/min.程度であったが、本発明により、エアの巻き込みを発生させることなく流延速度を110〜120m/min.程度にまで向上させることができることが確認された。したがって、本発明によると、エアの巻き込みを抑制しながら製膜速度を向上させて、空隙がなく、平面性に優れる流延膜を安定して形成することができるので、欠陥が少なく、平面性に優れる等の良好な品質を示すフィルムを高速かつ安定して製造することができることを確認した。なお、実験1と実験14とでは、エアの巻き込みは流延速度が120m/min.となるまでは確認されなかったが、120m/min.ではフィルムに段状のムラも確認されたことから、流延ドラムの表面電位Vの絶対値を1以上3以下とすることがより好ましいと言える。
本発明に係わるフィルム製造設備の概略図である。 本発明に係るドープの流延部付近の概略図である。
符号の説明
10 フィルム製造設備
12 流延膜
34 流延ドラム
45 減圧チャンバ
50 電極バー
70 電気絶縁膜

Claims (8)

  1. 流延ダイから、連続して走行する支持体の上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを吐出し、前記流延ダイと前記支持体との間にビードを形成し、前記ビードを前記支持体の上に流延して流延膜を形成する工程と、
    前記支持体から剥ぎ取った後の流延膜を乾燥してフィルムとする工程とを備え、
    前記支持体の表面近傍に配される電圧印加装置を用いて前記支持体の表面を帯電させることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
  2. 前記電圧印加装置は、前記支持体に向かい放電して前記支持体に電荷を付与する電極体であり、前記ビードに対し前記支持体の走行方向上流側に設置されることを特徴とする請求項1に記載のポリマーフィルムの製造方法。
  3. 前記支持体の表面に電気絶縁膜を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーフィルムの製造方法。
  4. 前記支持体の表面電位Vは、0.1kV≦|V|≦3kVとすることを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつに記載のポリマーフィルムの製造方法。
  5. 前記流延は、酸素濃度が10重量%未満の環境下で行うことを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつに記載のポリマーフィルムの製造方法。
  6. 前記ビードの上流側に備えられる減圧チャンバにより、前記ビードの上流側のエリアを減圧することを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつに記載のポリマーフィルムの製造方法。
  7. 前記電気絶縁膜は、複層構造であることを特徴とする請求項3ないし6いずれかひとつに記載のポリマーフィルムの製造方法。
  8. 流延ダイから、連続して走行する支持体の上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを吐出して前記流延ダイと前記支持体との間にビードを形成し、前記ビードを前記支持体上に流延して流延膜を形成する流延膜形成装置と、
    前記支持体から剥ぎ取った流延膜を乾燥してフィルムとする乾燥装置と、
    前記支持体の表面を帯電させるために前記支持体の表面近傍に配される電圧印加装置とを有することを特徴とするポリマーフィルムの製造設備。
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