JP2008087277A - 感熱転写受像シート、感熱転写方式を用いた画像形成方法および感熱転写受像シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、マット剤を含む少なくとも1層の受容層を有し、該マット剤の平均粒子径がマット剤を含む層の厚さの50%〜200%であり、且つ、該マット剤を含む層が離型剤を含む感熱転写受像シート、その製造方法および画像形成方法。
【選択図】なし
Description
またインクシートの搬送には、受像シートと相対して搬送されるため、受像シート表面とインクシートとの摩擦により発生する力が寄与する傾向にある。従って、インクシートと受像シートとの摩擦力が適性な範囲にないとインクシートと受像シートの搬送にズレが生じ、転写ズレやインクシート皺等による各種ムラ、更には搬送中にインクシートが切断してしまうなどの搬送故障を生じることがある。
特許文献1、2、3では、感熱転写受像シートの受容層に、離型剤としてポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)、ウレタン変性ワックス等のワックス類を添加することが記載されている。これらの離型剤を添加していくことで、離型性がよくなることが開示されているが、インクシートと受像シート間の摩擦、つまり搬送性に対する影響については記載されていない。
特許文献4、5では、感熱転写受像シートの受容層に有機系フィラーとしてスチレン樹脂や尿素−ホルマリン縮重合物樹脂等を含有させることが記載されている。しかし、ここでは熱転写画像の濃度を高めることが目的である。この当時では、上述したプリンターの高速化による問題は顕著化しておらず、その結果、特許文献4、5では転写材と被転写材の離型性、摩擦による搬送性に及ぼす影響ついては明記されていない。
特許文献6では、無機フィラーを表面性の改質手段として用いているが、これは筆記性付与の観点であり、無機フィラーを加えることによる離型性付与の機能はない。
一方、銀塩写真業界では光沢度制御の観点から、微粒子を添加して表面に凹凸をつける検討が以前よりなされており、このような表面に凹凸をつける機能を有する微粒子を広くマット剤と称している。光沢制御の観点以外にも、表面の接着、摩擦制御などの観点で表面凹凸の制御の検討がマット剤を用いてなされており、具体的には、フィルム同士の張り付き、擦り傷、熱現像時のマット剤の変形、剥がれ落ち等が問題となっておりマット剤のさまざまな検討が行われている(たとえば特許文献7)。
しかしながら、このようなハロゲン化銀写真感光材料では、色素の転写で画像を形成するものでなく、転写シートと受像シートとの離型性を考慮する必要はない。しかも転写シートから受像シートへの転写時の転写阻害、転写ムラを全く考慮する必要がない。
なお、カラーフィルターなどの転写材料でもマット剤の使用が提案(特許文献8)されているが、転写層ではなく、バック層に使用するものである。
(1)支持体上に、マット剤を含む少なくとも1層の受容層を有し、該マット剤の平均粒子径がマット剤を含む層の厚さの50%〜200%であり、且つ、該マット剤を含む層が離型剤を含むことを特徴とする感熱転写受像シート。
(2)前記離型剤がワックス、シリコーン系化合物およびフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする(1)に記載の感熱転写受像シート。
(3)少なくとも1種の中空ポリマーを含有する断熱層を少なくとも1層含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の感熱転写受像シート。
(4)前記受容層が、少なくとも塩化ビニルから得られる繰り返し単位を含むポリマーラテックスを含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(5)少なくとも2色以上のインク層を順次に形成した感熱転写シートと相対して重ね合わせて用いられる感熱転写受像シートであって、画像形成の際に最初に転写させるインク面と、未転写の感熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(6)画像形成の際に2番目以降に転写させるインク面と、該インク面が転写される以前のインクが最高濃度で転写した熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする(5)に記載の感熱転写受像シート。
(7)前記受容層が水系の塗布方式により形成されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(8)前記受容層と前記断熱層が、同時重層塗布により形成されていることを特徴とする(7)に記載の感熱転写受像シート。
(9)少なくとも2色以上のインク層を順次に形成した感熱転写シートと、支持体上にマット剤を含む少なくとも1層の受容層を有し、該マット剤の平均粒子径がマット剤を含む層の厚さの50%〜200%であり、且つ、該マット剤を含む層が離型剤を含む感熱転写受像シートとを使用する画像形成方法であって、該感熱転写シートを該感熱転写受像シートと重ね合わせて画像形成する際、最初に転写させる該感熱転写シートのインク面と、未転写の該感熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上である感熱受像シートとを使用することを特徴とする画像形成方法。
(10)2番目以降に転写させる前記感熱転写シートのインク面と、該インク面が転写される以前のインクが最高濃度で転写した熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする(9)に記載の画像形成方法。
(11)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートの製造工程において、前記受容層を水系の塗布方式で塗布することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
(12)前記受容層と前記断熱層が、同時重層塗布することを特徴とする(11)に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも支持体上に染料受容層(受容層)が形成されており、特に好ましくはさらに断熱層(好ましくは該受容層と支持体との間に形成)が形成されている。受容層と支持体との間には下地層が形成されていることが好ましく、例えば白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層が形成される。また、下地層と支持体との間には断熱層が形成されていることが好ましい。さらに、支持体の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていることが好ましい。各層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、カーテンコート等の一般的な方法で行われるが、スライドコート、カーテンコート等の複数の層を同時重層塗布できる方法が好ましい。
受容層は、インクシートから移行してくる染料を受容し、形成された画像を維持する役割を果たす。本発明に用いられる受像シートは、少なくとも染料を受容し得る熱可塑性の受容ポリマーを有する少なくとも1層の受容層を有する。
受容層は、受容ポリマー及び、その他の機能を有する化合物を、溶剤に溶解していわゆる溶剤塗布により塗布、乾燥させて形成してもよく、受容ポリマーをポリマーラテックスとして水溶性の分散媒中に分散して、更にその他の機能を有する化合物を溶解もしくは分散していわゆる水系塗布により塗布、乾燥させてもよい。
一般に溶剤塗布で形成させた受容層は、均一な受容ポリマー組成の塗膜を得ることができ、均質な熱応答性を示す上で好ましく用いられる。
一方で、水系塗布で形成させた受容層は、その不均一な受容ポリマー組成を利用して、転写後の経時による画像の先鋭性の変化を低減、異なる性質をもつラテックスを併用するなどして受容層の力学的性質の制御など特徴ある機能設計が可能となるため好ましく用いられる。また水系塗布で形成させた受容層は、溶剤を使用しないため環境負荷も少なく、高速塗布、重層塗布による低コスト化も可能であり好ましく用いられるという側面もある。
また、受容層は、インクシートとの離型性を制御するために離型剤を含有する。さらに、本発明における受容層は、マット剤を受容層に含有する。
その他、受容層は、塗布性向上のため界面活性剤・増粘剤・セット剤、帯電調節剤等、各種機能性素材を含有することができる。
本発明において、受容層の厚みは特に制限はないが、2〜10μmが好ましく、2.5〜8μmがより好ましい。
受容ポリマーとして使用できる熱可塑性ポリマーは、転写材から転写する染料を受容できるものであれば特に制限はないが、塩化ビニル類、アクリレート類、ポリエステル類(ポリカーボネート構造を含む)、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、ポリ酢酸ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリオレフィン類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。
より好ましくは塩化ビニル類、ポリエステル類(ポリカーボネート構造を含む)、アクリルレート類、ゴム類(例えばSBR類)、ポリ酢酸ビニル類であり、さらに好ましくは塩化ビニル類である。
受容ポリマーは、溶剤に溶解して使用する溶剤塗布系のポリマー、水溶性の分散媒中に分散にして使用するポリマーラテックスなど、その形態に特に制限はない。
以下に本発明の好ましい形態の一つである水系塗布に好ましく使われるポリマーラテックス型の受容ポリマーを説明するが、溶剤塗布系の受容ポリマーもこれに順じた性質のものを使用することができる。
<ポリマーラテックス>
本発明の好ましい形態の一つである水系塗布により形成する受容層に好ましく用いられるポリマーラテックスについて説明する。
本発明の感熱転写受像シートにおいて受容層に用いうるポリマーラテックスは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。ポリマーラテックスとしては、転写材から転写する染料を受容できる熱可塑性のポリマーを少なくとも1種使用すれば特に制限はない。特定構造のポリマーラテックスを単独で使用してもよいし、異なる数種類のポリマーラテックスを併用してもよい。
分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なおポリマーラテックスについては、奥田平,稲垣寛編集,「合成樹脂エマルジョン」,高分子刊行会発行(1978年)、杉村孝明,片岡靖男,鈴木聡一,笠原啓司編集,「合成ラテックスの応用」,高分子刊行会発行(1993年)、室井宗一著,「合成ラテックスの化学」,高分子刊行会発行(1970年)、三代澤良明監修,「水性コーティング材料の開発と応用」,シーエムシー出版(2004年)および特開昭64-538号公報などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。
分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は「Polymer Handbook(3rd Edition)」(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用できる
(a) 共役ジエン類:1,3−ペンタジエン、イソプレン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等。
(b) オレフィン類:エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン等。
(e) 不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(f) スチレン及びその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、p−スチレンスルフィン酸カリウム塩、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等。
(g) ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等。
(h) ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等。
(i) α,β−不飽和カルボン酸及びその塩類:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸カリウム等。
(j) その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等。
アクリル系ポリマーの例としては、ダイセル化学工業(株)製セビアンA−4635,4718,4601、日本ゼオン(株)製Nipol Lx811、814、821、820、855(P−17:Tg36℃)、857x2(P−18:Tg43℃)、大日本インキ化学(株)製Voncoat R3370(P−19:Tg25℃)、4280(P−20:Tg15℃)、日本純薬(株)製ジュリマーET−410(P−21:Tg44℃)、JSR(株)製AE116(P−22:Tg50℃)、AE119(P−23:Tg55℃)、AE121(P−24:Tg58℃)、AE125(P−25:Tg60℃)、AE134(P−26:Tg48℃)、AE137(P−27:Tg48℃)、AE140(P−28:Tg53℃)、AE173(P−29:Tg60℃)、東亞合成(株)製アロンA−104(P−30:Tg45℃)、高松油脂(株)製NS−600X、NS−620X、日信化学工業(株)製ビニブラン2580、2583、2641、2770、2770H、2635、2886、5202C、2706などが挙げられる(いずれも商品名)。
本発明における受容層においては塩化ビニルをモノマー単位として含むポリマーラテックスは層中の全固形分に占める比率で50%以上であることが好ましい。
Z−1:ベンジルアルコール
Z−2:2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート
Z−3:2−ジメチルアミノエタノール
Z−4:ジエチレングルコール
なお、本発明に用いられる受像シートにおけるポリマーラテックスは、塗布後に溶媒の一部を乾燥させることにより形成されるゲルまたは乾燥皮膜の状態を含む。
本発明の好ましい一つの態様である水系塗布で形成した受容層に用いられる水溶性ポリマーについて以下に説明する。
ここで、水溶性ポリマーとは、20℃における水100gに対し0.05g以上溶解すればよく、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上、特に好ましくは1g以上である。
受容層を水系塗布で形成する場合、受容層は水溶性ポリマーを含有することが好ましい。本発明に用いることのできる水溶性ポリマーは、天然高分子(多糖類系、微生物系、動物系)、半合成高分子(セルロース系、デンプン系、アルギン酸系)および合成高分子系(ビニル系、その他)であり、以下に述べるポリビニルアルコールを始めとする合成ポリマーや、植物由来のセルロース等を原料とする天然あるいは半合成ポリマーが本発明で使用できる水溶性ポリマーに該当する。なお、本発明における水溶性ポリマーには、前記ポリマーラテックスは含まれない。
本発明において、水溶性ポリマーを前記ポリマーラテックスと区別するためにバインダーと標記することもある。
本発明においてはゼラチンが好ましい態様の一つである。本発明に用いるゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることができる。本発明に用いられるゼラチンはCl-、SO4 2-等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、Zn2+などの陽イオンを含んでいても良い。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
以下に、ポリビニルアルコールについてさらに詳しく説明する。
完全けん化物としては、PVA−105[ポリビニルアルコール(PVA)含有率94.0質量%以上、けん化度98.5±0.5モル%、酢酸ナトリウム含有率1.5質量%以下、揮発分5.0質量%以下、粘度(4質量%、20℃)5.6±0.4CPS]、PVA−110[PVA含有率94.0質量%、けん化度98.5±0.5モル%、酢酸ナトリウム含有率1.5質量%、揮発分5.0質量%、粘度(4質量%、20℃)11.0±0.8CPS]、PVA−117[PVA含有率94.0質量%、けん化度98.5±0.5モル%、酢酸ナトリウム含有率1.0質量%、揮発分5.0質量%、粘度(4質量%、20℃)28.0±3.0CPS]、
受容層における水溶性ポリマーの添加量は、当該受容層全体の1〜25質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
本発明には架橋剤を使用することが好ましい。
架橋剤として本発明に好ましく用いられる硬膜剤は、受像シートの塗設層(例えば、受容層、断熱層、下塗層など)中に添加することができる。
本発明で用いることができる硬膜剤としては、特開平1−214845号公報17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表わされる化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報8頁右下の式(6)で表わされる化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物などが好ましく用いられる。硬膜剤の例としては米国特許第4,678,739号明細書の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、特開平4−218044号の公報または明細書等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N’−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)が挙げられる。
好ましくはビニルスルホン系硬膜剤やクロロトリアジン類が挙げられる。
本発明においてさらに好ましい硬膜剤は下記一般式(B)または(C)で表される化合物である。
一般式(B)
(CH2=CH−SO2)n−L
一般式(C)
(X−CH2−CH2−SO2)n−L
一般式(B)、(C)中でXはハロゲン原子を表し、Lはn価の有機連結基を表す。一般式(B)または(C)で表される化合物が低分子化合物である場合nは1ないし4の整数を表す。高分子化合物である場合Lはポリマー鎖を含む有機連結基であり、このときnは10〜1000の範囲である。
また、クロロトリアジン系硬膜剤としては、少なくとも1個のクロル原子が、2位、4位または6位に置換した1,3,5−トリアジン化合物が好ましい。
塩素原子は、2位、4位または6位に、2個または3個置換したものもがより好ましい。2位、4位または6位に、少なくとも1個の塩素原子が置換して、残りの位置に、塩素原子以外の基が置換してもよく、これらの基としては、水素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケノキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルオキシもしくはアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。
クロロトリアジン系硬膜剤の具体的な例は、4,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンもしくはこのNa塩、2−クロロ−4,6−ジフェノキシトリアジン、2−クロロ−4,6−ビス〔2,4,6−トリメチルフェノキシ〕トリアジン、2−ク
ロロ−4,6−ジグリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(n−ブトキシ)−6−グリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−6−グリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−クロロエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ブロモエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ジ−n−ブチルホスファトエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ジ−n−ブチルホスファトエトキシ)−6−(2,6−キシレノキシ)−1,3,5−トリアジン等であるが、本発明においてこれらに限定されない。
このような化合物は、塩化シアヌル(すなわち2,4,6−トリクロロトリアジン)を、複素環上の置換基に対応するヒドロキシ化合物、チオ化合物またはアミノ化合物等と反応させることによって容易に製造できる。
本発明の好ましい一つの態様として水系塗布により受容層を形成する場合に用いられる乳化物について以下に説明する。
本発明の好ましい一つの態様として水系塗布により受容層を形成する場合に、感熱転写受像シートの受容層には、乳化物を含有することが好ましい。
離型剤、酸化防止剤などの疎水性添加剤は米国特許第2,322,027号明細書に記載の方法などの公知の方法により受像シートの層(例えば、受容層、断熱層、下塗層など)中に導入することができる。この場合には、米国特許第4,555,470号、同第4,536,466号、同第4,536,467号、同第4,587,206号、同第4,555,476号、同第4,599,296号、特公平3−62256号の公報または明細書などに記載のような高沸点有機溶媒を、必要に応じて沸点50℃〜160℃の低沸点有機溶媒と併用して用いることができる。またこれら離型剤や酸化防止剤、高沸点有機溶媒などは2種以上併用することができる。
一般式(E−1)〜(E−3)のいずれかで表わされる化合物について、本発明の効果の点での好ましい置換基について述べる。
一般式(E−1)〜(E−3)において、R41は脂肪族基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはフォスホリル基であって、R42、R43、R45及びR46は各々独立に、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基またはアシルアミノ基である場合が好ましく、R41は脂肪族基であって、R42、R43、R45及びR46は各々独立に、水素原子または脂肪族基である場合はさらに好ましい。
以下に、一般式(E−1)〜(E−3)のいずれかで表される好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
できる。反応性シリコーンオイルには、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシ変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性がある。アミノ変性シリコーンオイルとしては、KF−393、KF−857、KF−858、X−22−3680、X−22−3801C、KF−8010、X−22−161A、KF−8012(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性シリコーンオイルとしては、KF−100T、KF−101、KF−60−164、KF−103、X−22−343、X−22−3000T(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。カルボキシル変性シリコーンオイルとしては、X−22−162C(商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、ヒドロキシ変性シリコーンオイルとしては、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176D、X−22−176DF(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、メタクリル変性シリコーンオイルとしては、X−22−164A、X−22−164C、X−24−8201、X−22−174D、X−22−2426(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
好ましくは以下の化合物が用いられる。
疎水性化合物を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば特開昭59−157636号公報の37〜38頁に記載の界面活性剤として挙げたものを使うことができる。また、特開平7−56267号、同7−228589号、西独公開特許第1,932,299A号の公報または明細書に記載のリン酸エステル型界面活性剤も使用することができる。
また、本発明では耐光性を向上するために受容層に紫外線吸収剤が添加してもよい。このとき、紫外線吸収剤を高分子量化することで受容層に固定でき、インクシートへの拡散や加熱による昇華・蒸散などを防ぐことができる。
紫外線吸収剤としては、情報記録分野において広く知られている各種紫外線吸収剤骨格を有する化合物を使用することができる。具体的には、2−ヒドロキシベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾトリアジン型紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン型紫外線吸収剤骨格を有する化合物を挙げることができる。紫外線吸収能(吸光係数)・安定性の観点では、ベンゾトリアゾール型、トリアジン骨格を有する化合物が好ましく、高分子量化・ラテックス化の観点ではベンゾトリアゾール型、ベンゾフェノン型の骨格を有する化合物が好ましい。具体的には、特開2004−361936号公報などに記載された紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤をグラフトしたポリマーをラテックス化する場合、前記の染着性受容ポリマーのラテックスと混合してから塗布することで紫外線吸収剤が均一に分散した受容層を形成することができる。
受容層には、画像形成時に熱転写シートとの熱融着を防ぐために、離型剤を配合する。離型剤は、シリコーンオイル、リン酸エステル系離型剤、フッ素系化合物、及び各種ワックス分散物を用いることができる。特にシリコーンオイル、ワックス、フッ素系化合物が好ましく用いられる。
離型剤の添加量は、後述するインクシートと受像シートの転写後剥離時の離型性と、搬送性に影響するインクシートと受像シートとの摩擦の関係、更に離型剤がその他の性能に及ぼす影響を勘案して決定される。
これらの離型剤は、受容層の塗布溶媒に応じて、溶解、もしくは分散して用いられる。
これらの離型剤は単独で用いても良いし併用して用いても良いが、一般に併用して用いた方が、離型性とその他の性能を調節する観点において有利に働くことが多い。
本発明の好ましい態様の一つとして水系塗布で受容層を形成する場合、シリコーンオイルは、乳化分散して用いることが好ましい。この場合前述の乳化物の項で導入方法を説明した。
このワックスは融点が25℃〜120℃のものから選ばれ、好ましくは40℃〜100℃、更に好ましくは60℃〜90℃のものから選ばれる。
本発明の好ましい態様の一つとして水系塗布で受容層を形成する場合、ワックスは水分散物が好ましく、更に微粒子化したものがより好ましい。水分散の方法、および微粒子化させる方法は、「改定 ワックスの性質と応用」(幸書房、1989年)に記載の方法で達成される。
ワックスの添加量は、離型剤の添加量は前述の通り、他の性能と合わせて調整されるべきものであるが、好ましい範囲は、受容層全固形量の0.5質量%〜30質量%であり、質量%〜20質量%がより好ましく、1.5質量%〜15質量%が更に好ましい。
本発明において、表面凹凸の制御のためにマット剤を添加する。
マット剤の添加と離型剤の併用により、インクシートと受像シートの摩擦力の制御と、熱転写後の剥離時のインクシートと受像シートの離型性の改良が両立できることを見出したことにより本発明は達成された。
本発明において、マット剤は感熱転写受像シートの画像形成面の最外表面層若しくは最外表面層として機能する層、または外表面に近い層に含有されるのが好ましい。最外表面層は必要に応じて2層にすることもできる。最も好ましいのは、最外層に位置する受容層に添加する場合である。また、マット剤はバック面にも添加することが可能である。
また、有機マット剤の例には澱粉、セルロースエステル(例えばセルロースアセテートプロピオネート等)、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース等)、ゼラチン、合成樹脂等である。合成樹脂の例としては、溶媒に不溶または難溶性合成ポリマーであり、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート、アルコキシアルキルアクリレート、アルコキシアルキルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アクリルアミドメタアクリルアミド、ビニルエステル、アクリロニトリル、オレフィン、スチレン、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物などの単独もしくは組合せ、またはこれらとアクリル酸、メタクリル酸、α,β−不飽和ジカルボン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタアクリレート、スチレンスルホン酸等の組合せを単量体成分とするポリマーを用いることができる。その他エポキシ樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリ塩化ビニリデン等も用いることができる。このほかに米国特許第1,055,713号、同1,939,213号、同2,221,873号、同4,268,662号、同2,322,037号、同2,376,005号、同2,391,181号の各明細書等に記載の有機マット剤を用いることができる。
また、有機/無機ハイブリットの微粒子も好ましく使用できる。
マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては受容層の厚みの50%〜200%の粒径のものを用いるのが好ましい。より好ましくは60%〜150%である。
また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。サイズ分布の変動係数は50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
一方、マット剤は塗膜のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時の条件調整または複数のマット剤の混合により、粒径、形状及び粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
本発明において、好ましいマット剤は、上記に挙げた有機化合物のようなポリマーからなるものであって、特に、ガラス転位温度が、60℃以上150℃以下のポリマーであることが好ましい。より好ましくは、ガラス転位温度が、80℃以上130℃以下のポリマーである。
M−2:ポリエチレン粒子(フロービーズEAー209 住友精化(株)製)
M−3:ポリエチレン粒子(フロービーズHE−3040 住友精化(株)製)
M−4:シリコーン粒子
M−5:シリコーン粒子 (E701 東レダウシリコーン(株)製)
M−6:シリコーン粒子
M−7:ポリスチレン粒子(SB−6 積水化成品工業(株)製)
M−8:ポリ(St/MAA=97/3)共重合体粒子
M−9:ポリ(St/MAA=90/10)共重合体粒子
M−10:ポリ(St/MMA/MAA=50/40/10)共重合体粒子
M−11:架橋ポリエチレン粒子
M−12:架橋ポリエチレン粒子
M−13:架橋ポリエチレン粒子
M−14:架橋シリコーン粒子
M−15:架橋シリコーン粒子
M−16:架橋シリコーン粒子
M−17:ポリ(St/DVB=90/10)粒子(SX−713 綜研化学(株)製)
M−18:ポリ(St/DVB=80/20)粒子(SX−713 綜研化学(株)製)
M−19:ポリ(St/DVB=70/30)粒子(SX−713 綜研化学(株)製)
M−20:ポリ(St/MAA/DVB=87/3/10)共重合体粒子
(SX−713A 綜研化学(株)製)
M−21:ポリ(St/MAA/DVB=80/10/10)共重合体粒子
(SX−713B 綜研化学(株)製)
M−22:ポリ(St/MMA/MAA/DVB=40/40/10/10)共重合体粒子
M−23:メラミン-シリカ樹脂(オプトビーズ500s 日産化学工業(株)製)
M−24:メラミン-シリカ樹脂(オプトビーズ2000M 日産化学工業(株)製)
M−25:メラミン-シリカ樹脂(オプトビーズ3500M 日産化学工業(株)製)
M−26:メラミン-シリカ樹脂(オプトビーズ6500s 日産化学工業(株)製)
M−27:メラミン-シリカ樹脂(オプトビーズ10500s 日産化学工業(株)製)
M−28:架橋PMMA粒子 (MXシリーズ 綜研化学(株)製)
M−29:架橋PMMA粒子 (MRシリーズ 綜研化学(株)製)
ここで、Stはスチレンを、DVBはジビニルベンゼンを、MAAはメタクリル酸を、MMAはメタクリル酸メチルを、PMMAはポリ(メタクリル酸メチル)を、それぞれ表す。
画像形成層面側にマット剤を含有させるときは、マット剤の含有量を星屑故障が生じない程度にするのが一般的であり、好ましくはベック平滑度が500秒以上10,000秒以下になる程度とし、さらに好ましくは500秒以上2,000秒以下になる程度にする。バック層にマット剤を含有させるときは、ベック平滑度が2000秒以下10秒以上になる程度にするのが好ましく、1500秒以下50秒以上になる程度にするのがさらに好ましい。なお、本明細書におけるベック平滑度は、JIS
P8119及びTAPPI T479より求められる。
機械的に分散する手段以外にも、pHをコントロールすることで、分散後のマット剤分散物の安定性を増しても良い。また、分散には補助的に極少量の低沸点有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は、微粒子化終了後除去される。
調製された分散物は、保存時のマット剤の沈降を抑える目的で、撹拌しながら保存した
り、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状態にする)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で、防腐剤を添加することが好ましい。
バインダーは、マット剤に対して5質量%以上300質量%以下となるように添加し分散させることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上200質量以下となるように添加する。
特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましく、より好ましくは1〜8g/m2、更に好ましくは2〜7g/m2の塗布量が好ましい。受容層の膜厚は1〜20μmであることが好ましい。
インクシートと受像シートの転写後剥離時の離型性は、離型剤の添加量に依存しており、添加量を上げることにより改良されていく。しかし、離型剤の添加量を増やせば、インクシートと受像シートとの摩擦は低下していき、これによりインクシートの搬送性が悪影響を及ぼすことがある。
本発明者らの検討によれば、インクシートの搬送性に悪影響を及ぼさないためには、インクシートと受像シートのインクシート搬送時に接触する面の静止摩擦係数を0.280以上に調整することが必要であることがわかった。
すなわち、少なくとも2色以上のインク層を順次に形成した感熱転写シートと感熱転写受像シートを相対して重ね合わせて画像形成する際、画像形成の最初に転写させるインク面と、未転写の感熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上となるように感熱受像シートを調整することが好ましい。さらに、画像形成の際に2番目以降に転写させるインク面と、該インク面が転写される以前のインクが最高濃度で転写した熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上となるように感熱受像シートを調整することがより好ましい。
この範囲に受像シートの表面を調節する制約上、受容層に添加できる離型剤の量に制限が生じ、十分な離型性が得られないことがあるが、マット剤を添加することにより、インクシートと受像シートの摩擦が離型剤の添加量に依存し難くなることがわかった。
つまり、マット剤を受容層に一定量添加することにより、離型剤の添加量を増大させ、十分な離型性を保ちつつ、インクシートの搬送性に悪影響を及ぼさないための条件である、インクシートと受像シートのインクシート搬送時に接触する面の静止摩擦係数を0.280以上を両立することが可能となる。
受容層へのマット剤の添加は、インクシートと受像シートの摩擦を低下させるため、上記の関係を満たす範囲で添加量を調節する必要がある。
インクシートと受像シートのインクシート搬送時に接触する面の静止摩擦係数は、一般に市販されている静摩擦計(例えば、新東科学株式会社製 静摩擦係数測定機 TYPE:10)で測定することができ、未転写の受像シートの画像形成面と、インクシートの最初に転写されるインク面との静止摩擦係数、及び、転写が起こった受像シートの画像形成面と次に転写するインク面との静止摩擦係数をそれぞれ測定して決定する。
インクシートと受像シートの転写後剥離時の離型性は、実際にインクシートと受像シートを昇華プリンターに装填し出力させ、プリント時の剥離音、プリントの均一性、プリンター内での剥離状況を観察することなどにより可能であるが、モデル実験としては、インクシートと受像シートを相対して重ね合わせ加熱圧着させ、その後剥離するときの負荷を測定することにより評価することができる。
本発明においては、断熱層を有することが特に好ましく、該断熱層は、サーマルヘッド等を用いた加熱転写時における熱から支持体を保護する役割を果たす。また、高いクッション性を有するので、基材として紙を用いた場合であっても、印字感度の高い熱転写受像シートを得ることができる。断熱層は1層でも2層以上でも良い。断熱層は、受容層より支持体側に設けられる。
本発明における中空ポリマーとは粒子内部に独立した気孔を有するポリマー粒子であり、例えば、[1]ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水などの分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の分散媒が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空粒子、[2]ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれか又はそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、[3]上記の[2]をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
個別中空率(%)=(空隙の円相当直径)3/(中空ポリマーの粒子径)3×100
ここで、「有機溶剤に耐性の無い」とは、有機溶剤(メチルエチルケトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)への溶解度が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であることをいう。例えば前記ポリマーラテックスは、「有機溶剤に耐性の無い樹脂」に含まれる。
断熱層における水溶性ポリマーの添加量は、当該断熱層全体の1〜75質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましい。
断熱層中の水溶性ポリマーは、架橋剤の種類によっても異なるが、水溶性ポリマーに対して、0.1〜20質量%架橋されていることが好ましく、1〜10質量%架橋されていることがより好ましい。
本発明において断熱層の空隙率、下式(b)にて算出される値Vである。
受容層と断熱層との間には下地層が形成されていてもよく、例えば白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層が形成される。これらの層については、例えば特許第3585599号公報、特許第2925244号公報などに記載されたものと同様の構成とすることができる。
本発明では、従来から公知のどのような支持体でも使用することができるが、耐水性支持体を用いることで支持体中に水分が吸収されるのを防止して、受容層の経時による性能変化を防止することができる。耐水性支持体としては例えばコート紙やラミネート紙を用いることができる。
前記コート紙は、原紙等のシートに、各種の樹脂、ゴムラテックス又は高分子材料を片面又は両面に塗工した紙であり、用途に応じて、塗工量が異なる。このようなコート紙としては、例えば、アート紙、キャストコート紙、ヤンキー紙等が挙げられる。
(ロ)エステル結合を有する熱可塑性樹脂である。例えば、ジカルボン酸成分(これらのジカルボン酸成分にはスルホン酸基、カルボキシル基等が置換していてもよい)と、アルコール成分(これらのアルコール成分には水酸基などが置換されていてもよい)との縮合により得られるポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリブチルアクリレート等のポリアクリル酸エステル樹脂又はポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレンアクリレート樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂等が挙げられる。
具体的には、特開昭59−101395号公報、同63−7971号公報、同63−7972号公報、同63−7973号公報、同60−294862号公報などに記載のものを挙げることができる。
また、市販品としては、東洋紡(株)製のバイロン290、バイロン200、バイロン280、バイロン300、バイロン103、バイロンGK−140、バイロンGK−130;花王(株)製のタフトンNE−382、タフトンU−5、ATR−2009、ATR−2010;ユニチカ(株)製のエリーテルUE3500、UE3210、XA−8153、KZA−7049、KZA−1449;日本合成化学(株)製のポリエスターTP−220、R−188;星光化学工業(株)製のハイロスシリーズの各種熱可塑性樹脂(いずれも商品名)等が挙げられる。
(ニ)ポリアミド樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
(ホ)ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
(ヘ)ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。
(ト)ポリビニルブチラール等の、ポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂等が挙げられる。
(チ)ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
なお、前記熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ラミネート紙は、原紙等のシートに、各種の樹脂、ゴム又は高分子シート又はフィルム等をラミネートした紙である。前記ラミネート材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、トリアセチルセルロース等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、これらのシート又はフィルムには、白色反射性を与える処理を行ってもよい。このような処理方法としては、例えば、これらのシート又はフィルム中に酸化チタンなどの顔料を配合する方法が挙げられる。
支持体がそのまま露出していると環境中の湿度・温度により感熱転写受像シートがカールしてしまうことがあるため、支持体の裏面側にカール調整層を形成することが好ましい。カール調整層は、受像シートのカールを防止するだけでなく防水の役割も果たす。カール調整層には、ポリエチレンラミネートやポリプロピレンラミネート等が用いられる。具体的には、例えば特開昭61−110135号公報、特開平6−202295号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
筆記層・帯電調整層には、無機酸化物コロイドやイオン性ポリマー等を用いることができる。帯電防止剤として、例えば第四級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等のカチオン系帯電防止剤、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、脂肪酸エステル等のノニオン系帯電防止剤など任意のものを用いることができる。具体的には、例えば特許第3585585号明細書などに記載されたものと同様にして形成することができる。
本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも1層の受容層、中間層および断熱層を支持体上に同時重層塗布することで形成することができる。
支持体上に複数の機能の異なる複数の層(気泡層、断熱層、中間層、受容層など)からなる多層構成の受像シートを製造する場合、特開2004−106283号、同2004−181888号、同2004−345267号等の各公報に示されている如く各層を順次塗り重ねていくか、あらかじめ各層を支持体上に塗布したものを張り合わせることにより製造することが知られている。一方、写真業界では例えば複数の層を同時に重層塗布することにより生産性を大幅に向上させることが知られている。例えば特開米国特許第2,761,791号、同第2,681,234号、同第3,508,947号、同第4,457,256号、同第3,993,019号、特開昭63−54975号、特開昭61−278848号、同55−86557号、同52−31727号、同55−142565号、同50−43140号、同63−80872号、同54−54020号、特開平5−104061号、同5−127305号、特公昭49−7050号の公報または明細書やEdgar B. Gutoffら著,「Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems」,John Wiley&Sons社,1995年,101〜103頁などに記載のいわゆるスライド塗布(スライドコーティング法)、カーテン塗布(カーテンコーティング法)といわれる方法が知られている。
本発明では、上記同時重層塗布を多層構成の受像シートの製造に用いることにより、生産性を大幅に向上させると同時に画像欠陥を大幅に減少させることができる。
本発明では米国特許2,761,791号明細書に記載の方法で支持体上に複数の層の積層体を形成した後速やかに固化させる事が好ましい。一例として樹脂により固化する多層構成の場合、支持体上に複数の層を形成した後すばやく温度を上げることが好ましい。またゼラチンなど低温でゲル化するバインダーを含む場合には支持体上に複数の層を形成した後すばやく温度を下げることが好ましい場合もある。
本発明においては多層構成を構成する1層あたりの塗布液の塗布量は1g/m2〜500g/m2の範囲が好ましい。多層構成の層数は2以上で任意に選択できる。受容層は支持体から最も遠く離れた層として設けられることが好ましい。
また、本発明の感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
(インクシート)
富士写真フイルム(株)製 昇華プリンター ASK−2000用 専用インクリボンを使用した。
(支持体の作製)
アカシアからなるLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)50質量部及びアスペンからなるLBKP 50質量部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlに叩解しパルプスラリーを調製した。
次いで、上記で得られたパルプスラリーに、対パルプ当り、カチオン変性でんぷん(日本NSC(株)製CAT0304L)1.3%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC(株)製 DA4104)0.15%、アルキルケテンダイマー(荒川化学(株)製サイズパインK)O.29%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(荒川化学(株)製:アラフィックス100)0.32%を加えた後、消泡剤0.12%を加えた。
上記のように作成した支持体上に下層から順に下塗層、断熱層、受容層の構成の多層構成塗布物を同時重層塗布した。塗工液の組成と塗布量を以下に示す。
(組成)
スチレンブタジエンラテックス 93質量部
(日本エイアンドエル社製 SR103)
PVA 8.7%水溶液 57質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 21ml/m2
(組成)
中空ポリマーラテックス 38質量部
(日本ゼオン(株)製 MH5055)
16%ゼラチン水溶液 26質量部
水 4質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 45ml/m2
(組成)
塩ビアクリルラテックス 44質量部
(日信化学(株)製 ビニブラン900)
塩ビアクリルラテックス 27質量部
(日信化学(株)製 ビニブラン276)
16%ゼラチン水溶液 3.5質量部
離型剤 マイクロクリスタリンワックス 6質量部
(日本製蝋(株)製 EMUSTAR−42X)
マット剤 PMMA粒子3.5μm 1.5質量部
水 30質量部
下記化合物A 0.05質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 10ml/m2
化合物A
化合物B
感熱転写受像シート101の離型剤、マット剤を、表1に従い変更して感熱転写受像シート102〜118を作成した。
それぞれの添加量は表1に従い変更したが、水以外の素材の塗布量が変わらないように、水の量を変更して調節した。また、感熱転写受像シート102〜118のいずれにおいても、受容層の厚さは5.8μmとした。
インクシートと、感熱転写受像シート101〜118を装填可能なように加工し、昇華型熱転写プリンターASK2000 (富士写真フィルム(株)社製) を用いて、高速プリントモードで、35℃70%の環境下で出力した。感熱転写受像シートは、35℃70%の環境下で2h調湿した後、プリンターに装填した。出力画像は、下記の2種の画像を用いた。
1)高濃度の全面黒画像(黒ベタ画像)
2)各種単色とグレーの、白〜最高濃度までの階調画像配置したテストパターン
これらの2種の画像を、各々30枚連続して画像出力した。
なお高速プリントモードでは、1枚目が排出されてから、2枚目が排出されるまでの時間は8秒間であった。
インクシートのイエロー(Y)インク面と、感熱転写受像シート101〜118をそれぞれ5cm角に加工し、転写可能な面同士を相対して貼りあわせ、90℃、2kg重の加重で密着させた後、インクシートと受像シートを90℃の条件化で剥離し、剥離にかかる負荷を測定した。剥離角は180°、剥離速度は5cm/sとし、ほぼ均一な負荷で剥離が起こったときの負荷を測定してその平均値を剥離力として評価した。
さらに、上記の画像形成で説明した出力画像の出力状況も観察して離型性を評価した。
インクシートのY面と、感熱受像シート101〜118の画像形成面の静止摩擦係数及び、インクシートのマゼンタ(M)面と、感熱受像シート101〜118とインクシートとをASK−2000に装填し画像形成させることでYベタを形成させた面(Yの転写が起こった後すぐに画像形成をとめて作成した)の静止摩擦係数を測定(新東科学株式会社製 静摩擦係数測定機 TYPE:10を使用)した。この値が0.28以下になることで搬送性が不良となる。
また、受像シートとインクシートの静止摩擦係数が、0.28以上であり、マット剤と離型剤が添加されている試料において、離型性と搬送性を両立できている。
マット剤の粒径が受像層の膜厚の200%を超えた試料114は、離型性が不十分で、搬送性も不十分で画像出力の際、一部JAM(搬送できなくなり、処理が途中で止まる現象)が発生したが、この試料は表面を観察するとマット剤が一部脱落していることがわかった。このため、離型性が不安定な結果を示し、且つ搬送性も一定の性能が出なかったと推定される。なお、上記表2において、スティッキングとは、剥離異常により、画像に線状のムラが発生する現象である。
(乳化物Aの作成)
乳化分散物Aを以下の手順で調製した。
酸化防止剤(EB−9)、及びアミノ変性シリコーンオイルKF-857を12gを、高沸点溶媒(Solv−5)30g及び酢酸エチル20mlに溶解し、この液を1gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液250g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて380gの乳化物Aの調製を行った。酸化防止剤(EB−9)の添加量は乳化物A中に30mmolとなるようにした。
感熱転写受像シート101〜103の受容層で使用している16%ゼラチン水溶液の代わりに乳化物Aを4.2質量部添加し、水の添加量を各々0.7質量部づつ減らした以外同様にして感熱転写受像シート201〜203を作成した。
作成した感熱転写受像シート201〜203は、各々感熱転写受像シートに対して、参加防止剤(EB-9)と高沸点溶媒、及び離型剤であるアミノ変性シリコーンオイルが乳化分散して添加されたものである。
この結果を下記表3に示す。
Claims (12)
- 支持体上に、マット剤を含む少なくとも1層の受容層を有し、該マット剤の平均粒子径がマット剤を含む層の厚さの50%〜200%であり、且つ、該マット剤を含む層が離型剤を含むことを特徴とする感熱転写受像シート。
- 前記離型剤がワックス、シリコーン系化合物およびフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写受像シート。
- 少なくとも1種の中空ポリマーを含有する断熱層を少なくとも1層含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写受像シート。
- 前記受容層が、少なくとも塩化ビニルから得られる繰り返し単位を含むポリマーラテックスを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
- 少なくとも2色以上のインク層を順次に形成した感熱転写シートと相対して重ね合わせて用いられる感熱転写受像シートであって、画像形成の際に最初に転写させるインク面と、未転写の感熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
- 画像形成の際に2番目以降に転写させるインク面と、該インク面が転写される以前のインクが最高濃度で転写した熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする請求項5に記載の感熱転写受像シート。
- 前記受容層が水系の塗布方式により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
- 前記受容層と前記断熱層が、同時重層塗布により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の感熱転写受像シート。
- 少なくとも2色以上のインク層を順次に形成した感熱転写シートと、支持体上にマット剤を含む少なくとも1層の受容層を有し、該マット剤の平均粒子径がマット剤を含む層の厚さの50%〜200%であり、且つ、該マット剤を含む層が離型剤を含む感熱転写受像シートとを使用する画像形成方法であって、該感熱転写シートを該感熱転写受像シートと重ね合わせて画像形成する際、最初に転写させる該感熱転写シートのインク面と、未転写の該感熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上である感熱受像シートとを使用することを特徴とする画像形成方法。
- 2番目以降に転写させる前記感熱転写シートのインク面と、該インク面が転写される以前のインクが最高濃度で転写した熱転写受像シートの受容層面との静止摩擦係数が0.280以上であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートの製造工程において、前記受容層を水系の塗布方式で塗布することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
- 前記受容層と前記断熱層が、同時重層塗布することを特徴とする請求項11に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
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