JP2008084487A - 記録再生装置 - Google Patents

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Shinya Aoki
伸也 青木
Koichi Kubo
光一 久保
Junichi Ito
順一 伊藤
Junichi Akiyama
純一 秋山
Kenichi Murooka
賢一 室岡
Yoshihisa Iwata
佳久 岩田
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Abstract

【課題】情報の再生時におけるプローブ先端または記録媒体上面の磨耗を抑制する。
【解決手段】記録再生装置は、下部電極層16と、下部電極層16上に設けられかつ印加される電流パルスにより抵抗状態が変化する記録層17とを含む記録媒体14と、記録媒体14を走査し、かつ記録媒体14に電流パルスを印加するプローブ11と、プローブ11と下部電極層16との電位差がゼロの場合に、記録媒体14の上面から一定間隔を空けるようにしてプローブ11を支持するカンチレバー12と、記録媒体14から情報を再生する場合に、プローブ11と下部電極層16との間に再生電圧を印加する再生回路33とを具備する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、記録再生装置に係り、特にプローブを用いて情報の記録および再生を行う記録再生装置に関する。
情報記録ストレージ・メモリとして従来から磁気ディスク、光ディスク、あるいはフラッシュメモリを代表とする半導体メモリが広く用いられている。しかし、いずれのストレージ・メモリにおいても今後の大容量化および高速化は困難度が増しており、特に1Tbpsi(bits per square inch)を超える面記録密度を実用化するに当たっては従来型の記録方式では多大なる困難を伴うと予測される。
このような背景の下、これらに代わる小型で大容量、高速しかも安価な新規ストレージ・メモリの実用化が求められており、昨今、新原理に基づく記録再生方式の研究開発が国内外で精力的に進められている。
その中で、注目すべき記録再生原理の1つとして、記録層への電流パルス印加による抵抗状態の変化を利用した抵抗変化型のRRAM(Resistance Random Access Memory)を挙げることができる(特許文献1および特許文献2参照)。この記録再生原理は、将来の固体メモリへの適用を主眼に開発が進められているものである。しかし、昨今、リソグラフィ技術の微細化の困難度が技術的にも、またプロセスコストの点からも増大しており、現状技術の延長線上では20nm以下の配線幅を得ることは困難と予想される。したがって、上述の記録再生原理を適用しても、配線幅20nm以下の1Tbpsi超級の高密度固体メモリを実現することは、非常に困難と予想される。
一方、配線幅に依存せず、高密度記録再生に適するメモリとして、昨今、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製したカンチレバーを用いたプローブメモリが知られている。これは、有機ポリマー材料から成る記録層にプローブによって熱的にトポ記録するメモリである。信号再生は、記録の有無によって生じるカンチレバー抵抗器の抵抗変化を検出することにより行われる。シングル・プローブでのデモンストレーションではあるが、記録密度においては既にHDDのレベルを遥かに凌ぐ1.14Tbpsiが実証されている。
このメモリは将来のモバイルストレージとしての実用化が期待されるが、SDカードサイズのメモリを想定した場合、転送速度が現行のHDDと比較して1/10程度以下と非常に遅いことが欠点である。また、熱による記録であるために高密度化に伴って消費電力が増大することも欠点である。
そこで、ポリマーへの熱トポ記録に代えて、高速、かつ低消費電力の記録再生が期待できるRRAM記録原理を適用すれば、より高速、低消費電力、および高密度のプローブメモリが実現できると考えられる。なお、プローブメモリの記録密度は配線幅の制限を受けないため、固体メモリよりも高密度化に適すると考えられる。また、プローブによる記録再生をHDDのようなディスク装置へ適用することも可能で、記録密度1Tbpsi超級の大容量・超高速ディスク装置を実用化できる可能性がある。
しかし、RRAM原理をディスク装置やMEMSメモリに適用する場合には、記録時にも再生時にもプローブを記録媒体上面に接触させて、記録媒体とプローブとの間に実電流を通電する必要がある。特に、再生時には、記録の有無に関わらずプローブ先端を記録媒体上面に接触させて、記録媒体の記録部分と非記録部分との抵抗値の差を読み取る必要がある。
実際には、再生時にプローブ先端を記録媒体上面に常時接触させて走査することが考えられる。しかし、記録部分の読み出しのためにプローブを記録媒体上面に接触させて多数回走査することによって、プローブ先端あるいは記録媒体上面が徐々に磨耗および損傷を受け、多数回の読み出し動作の後には読み出しが困難になるという問題点がある。
特開2004−185756号公報 特開2004−234707号公報
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、情報の再生時におけるプローブ先端または記録媒体上面の磨耗および損傷を抑制し、これにより再生動作の寿命を改善することが可能な記録再生装置を提供する。
本発明の一視点に係る記録再生装置は、下部電極層と、この下部電極層上に設けられかつ印加される電流パルスにより導電性状態と絶縁体状態との抵抗状態が変化する記録層とを含む記録媒体と、前記記録媒体を走査し、かつ前記記録媒体に電流パルスを印加するプローブと、前記プローブと前記下部電極層との電位差がゼロの場合に、前記記録媒体の上面から一定間隔を空けるようにして前記プローブを支持するカンチレバーと、前記記録媒体から情報を再生する場合に、前記プローブと前記下部電極層との間に再生電圧を印加する再生回路とを具備する。前記記録層のうち導電性状態の第1の部分と前記プローブとが接触する場合の前記プローブと前記下部電極層との間の電圧の下限値をV1、前記記録層のうち絶縁体状態の第2の部分と前記プローブとが接触しない場合の前記プローブと前記下部電極層との間の電圧の上限値をV2とすると、前記再生電圧Vは、V2≧V≧V1に設定される。
本発明によれば、情報の再生時におけるプローブ先端または記録媒体上面の磨耗および損傷を抑制し、これにより再生動作の寿命を改善することが可能な記録再生装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
図1は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置を説明する概略図である。図2は、図1に示した領域Aを拡大した概略図である。記録再生装置は、カンチレバーアレイ13と、それに相対配置された記録媒体14とを備えている。
カンチレバーアレイ13は、マトリクス状に配置された複数のカンチレバー12を備えている。この複数のカンチレバー12はそれぞれ、基板に設けられており、この基板の底面から記録媒体14に対向するように設けられている。各カンチレバー12の先端には、導電性プローブ11が設けられている。各導電性プローブ11は、上記基板に設けられた配線を介して再生回路、記録回路、及び消去回路に電気的に接続されている。
図3は、図1に示した記録媒体14を説明する断面図である。記録媒体14は、基板15上に下部電極層16、記録層17が順次積層されて構成されている。そして、カンチレバーアレイ13に相対する面が記録層17となっている。また、下部電極層16は接地される。
記録媒体14は、この記録媒体14とカンチレバーアレイ13とを相対変位(図1中のx、y方向の変位)させるためのx−y駆動ステージ18上に載置される。x−y駆動ステージ18には、このx−y駆動ステージ18を駆動するアクチュエータ19が接続されている。アクチュエータ19は、直線状に複数本のトラックを有する記録媒体をトラック方向とその垂直方向とに精密に送り、記録及び再生の位置を決定する。なお、x−y駆動ステージ18およびアクチュエータ19は、カンチレバーアレイ13側に接続されていても良い。
また、記録媒体14とカンチレバーアレイ13との距離(図1中のz方向の記録媒体14とカンチレバーアレイ13との距離)を調整するためのzアクチュエータ(図示せず)が記録媒体14側またはカンチレバーアレイ13側に接続されていても良い。カンチレバーアレイ13側に接続される場合、カンチレバーアレイ13全体にzアクチュエータが接続されていても良いし、個々のカンチレバー12にzアクチュエータが接続されていても良い。
カンチレバーアレイ13は、導電性プローブ11と下部電極層16との電位差をゼロとしたとき、導電性プローブ11先端と記録層17上面とが所望のほぼ一定間隔(図1中のz方向における間隔が所望のほぼ一定間隔)となるように配置される。また、カンチレバーアレイ13は、記録媒体14とほぼ平行な状態を保ったまま配置される。
z方向のプローブ11先端と記録層17上面との距離調整に関しては、zアクチュエータによらずとも、この距離が所望のほぼ一定間隔を保持できる機構であれば良い。以下、これらのプローブ11先端と記録層17上面との距離調整(一定距離保持)機構を高さ調整機構と呼ぶ。
これらのアクチュエータ19およびz方向の高さ調整機構によって、導電性プローブ11先端が記録層17上面に対して所望のほぼ一定間隔を保持したまま、x−y方向に相対的に変位(走査)することが可能となる。特に、x−y方向の変位の大きさは、それぞれx方向またはy方向に隣接するカンチレバーとの間の距離にほぼ等しく、1つの導電性プローブが記録媒体14上を走査する領域が、その導電性プローブが受け持つ記録エリアに相当する。
記録エリアの記録媒体への記録、再生、および消去は後述するように、下部電極層16を接地し、導電性プローブ11に正または負の電圧を印加することで、記録層17を介してプローブ11と下部電極層16との間を通電させることによって行われる。
特に図1に示した構成例では、マトリクス状に配置されたカンチレバー12の各々を並列動作させることによって、高速大容量の記録が可能となる。なお、図1では、カンチレバー12をマトリクス状に配置した場合を示したが、カンチレバー12がx方向またはy方向に1列のみに配列していても良いし、カンチレバー12がただ1つであっても良い。
図4は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の第2の構成例を説明する概略図である。図5は、図4に示した領域Bを拡大した概略図である。
記録再生装置は、記録媒体14と、この記録媒体14の上方に配置されたアーム23とを備えており、アーム23の先端にカンチレバー12が設けられている。さらに、カンチレバー12の先端には、導電性プローブ11が設けられている。基板15上に下部電極層16、記録層17が順次積層された記録媒体14は、円盤状を有している。
円盤状の記録媒体(ディスク)14は、例えばチャックを介してスピンドルモータ等の回転装置21の回転軸22に固定されている。回転装置21は接地されており、下部電極層16は回転装置21の回転軸22を介して接地されている。
導電性プローブ11と下部電極層16との電位差をゼロとしたとき、ディスク14回転時に導電性プローブ11先端が記録層17上面から所望のほぼ一定間隔となるように、導電性プローブ11の高さが調整されている(図1の場合と同様に、簡単のために高さ調整機構と呼ぶ)。例えばハードディスクドライブ技術で用いられるように、アームにスライダおよびサスペンション(図示せず)を配置して、ディスク14回転時のスライダへの浮上力を用いて導電性プローブ11と記録層17上面とを所望の一定間隔に保っても良い。
また、アーム23は、ボイスコイルモータ等のアーム駆動装置(図示せず)に接続されており、導電性プローブ11先端はディスク14の半径方向に移動可能となっている。ディスク14回転時のディスク同心円部分が記録部分となるトラックであり、導電性プローブ11はディスク半径方向の移動によりトラック間を移動する。
記録媒体14への記録、再生、および消去は、図1の場合と同様、後述するように、下部電極層16を接地し、導電性プローブ11に正または負の電圧を印加することで、記録層17を介してプローブ11と下部電極層16との間を通電させることによって行われる。なお、上述の例は1つのアームに1つの導電性プローブを配置した場合であるが、1つのアームに複数の導電性プローブを配置しても良いし、複数のアームに複数の導電性プローブを配置しても良い。
図6は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置を説明する構成図である。なお、図6には、カンチレバー12が1つの場合を一例として示している。記録媒体14は、図3にも示したように、基板15上に下部電極層16、記録層17が順次積層されて形成されており、x−y駆動ステージ18もしくは回転装置21に載置されている。
x−y駆動ステージ18もしくは回転装置21には、位置制御回路32が接続されている。位置制御回路32は、x−y駆動ステージ18(具体的にはアクチュエータ19)もしくは回転装置21の動作を制御する。この位置制御回路32によって、記録媒体14は、x、y変位もしくは回転可能となっている。
カンチレバー12には、高さ調整機構31が接続されている。高さ調整機構31は、カンチレバー12と記録媒体14との距離を調整する。この高さ調整機構31によって、導電性プローブ11と下部電極層16との電位差がゼロのとき、カンチレバー12先端に設けられた導電性プローブ11先端が記録層17上面に対して所望の一定間隔を保つように配置される。なお、高さ調整機構31が記録媒体14に接続され、カンチレバー12と記録媒体14との距離を調整するようにしても良い。
記録媒体14の下部電極層16は、接地されている。記録層17は、通電されることにより、この通電された部分の抵抗値が不揮発的に変化する可変抵抗である。すなわち、電流パルスが印加された記録層17の記録部分(記録ビット)17Bは低抵抗状態(本実施形態では、導電性状態という)となり、電流パルスが印加されていない非記録部分17Aは高抵抗状態(本実施形態では、絶縁体状態という)となる。
このような特性を有する記録層17としては、下記の(1)〜(3)の群から選択される材料があげられる。
(1)NiO、TiO、CuO、Fe、CoO、Nb、MnO、Al、Ta、MgO、ZrO、ZnO、HfO、WO等の二元金属酸化物
(2)PrCa1−xMnO、Crが添加されたSrTiO、Crが添加されたSrZrO、Nbが添加されたSrTiO、AMn(A=Zn、Mg、Co、Cu、Fe)、ACo(A=Zn、Mg、Cu)、ATiO(A=Ni、Fe、Co)等の複合酸化物
(3)CuS、AgGeS、CuGeS、ZnCdS等の硫化物
記録再生装置は、再生回路33、記録回路34、消去回路35、および制御部36を備えている。制御部36は、記録再生装置の統括的な制御を行うと共に、再生回路33、記録回路34、及び消去回路35と導電性プローブ11との電気的な接続を制御する。具体的には、制御部36は、スイッチ回路37のオン/オフを制御することで、再生回路33、記録回路34、および消去回路35と、導電性プローブ11との電気的な接続を制御する。
導電性プローブ11は、カンチレバー12に設けられた配線を介して、再生回路33、記録回路34、および消去回路35に接続されている。特に再生回路33は、プローブ11と下部電極層16との間に所定の一定電圧(再生電圧)を印加するための定電圧源、保護抵抗、再生信号検出回路等を備えている。
記録層17に形成された記録ビット(導電性ビット)の再生には、プローブ11と下部電極層16との間に再生電圧を印加しながら、導電性プローブ11先端を記録媒体14の上方に走査する。この走査によって、記録層17の導電性の変化(導電性ビットの有無)に応じて、導電性プローブ11と記録層17との電気的接触の有無を自発的に引き起こすことが可能となる。これにより、電気的接触時に記録層17を介してプローブ11と下部電極層16との間に流れる実電流をビット再生信号として検出することが可能となる。
以下、この再生動作原理について図を用いてより詳細に説明する。図7は、記録再生装置に係る情報再生原理を説明するための主要部分の一例を示す概略断面図である。図7に示した記録層17の非記録部分17Aは絶縁体状態であり、記録部分(記録ビット)17Bは導電性状態である。また、図7に示した破線は、導電性プローブ11先端が動く跡を示している。
再生回路33によりプローブ11と下部電極層16との間に電圧が印加されていないとき、カンチレバー12に接続される高さ調整機構31によって、導電性プローブ11先端の記録媒体14上面にもっとも近い部分が、記録媒体14上面から高さzの位置になるように、カンチレバー12の高さが調整されている。
まず、再生回路33によりプローブ11と下部電極層16との間に再生電圧が印加されると、導電性プローブ11先端と記録媒体14とに互いに反対符号の電荷が誘起される。これにより、プローブ11と記録媒体14との間に静電引力が働き、導電性プローブ11先端は記録媒体14に近づこうとする。なお、図7においては、プローブ11側に正の電荷が誘起される場合を示したが、再生電圧の極性を逆にしてプローブ11側に負の電荷が誘起されるようにしても良い。
一方、導電性プローブ11先端が記録媒体14上方に変位すると、導電性プローブ11を支持するカンチレバー12の復元力が働き、導電性プローブ11先端は記録媒体14から離れようとする。したがって、プローブ11と下部電極層16との間に再生電圧を印加したときの導電性プローブ11先端の安定な位置(高さ)は、静電引力と復元力とのつり合いによって決定される。
このとき、導電性プローブ11先端が導電性状態の記録ビット17B上にあるときと、絶縁体状態の非記録部分17A上にあるときとでは、導電性プローブ11先端に誘起される電荷量が異なる。これは、導電性プローブ11側および記録媒体14側に誘起される電荷は、記録層17が導電性状態にある場合には、導電性プローブ11と記録層17とのギャップのみから形成されるキャパシタの両極板に誘起される電荷となる。一方、記録層17が絶縁体状態にある場合には、導電性プローブ11と記録層17とのギャップ、および絶縁層(絶縁体状態の非記録部分17Aに対応する)とから形成されるキャパシタの両極板に誘起される電荷となる。これにより、前者のキャパシタの静電容量は、後者のそれよりも大きくなるからである。
したがって、導電性プローブ11と下部電極層16との間に印加される再生電圧が一定の場合、導電性プローブ11が絶縁体状態の非記録部分17A上方にあるときよりも、導電性プローブ11が導電性状態の記録ビット17B上方にあるときの方が、記録ビット17B上と記録媒体14との間に働く静電引力は大きいことになる。このことを利用して、カンチレバー12のばね定数、プローブ11と記録層17との距離、記録層17の膜厚を調整することにより、記録層17の非記録部分17Aで導電性プローブ11が非接触、かつ記録ビット17Bで接触となるような再生電圧を設定することが可能となる。
また、この一定の再生電圧を導電性プローブ11と下部電極層16との間に印加して導電性プローブ11を記録媒体14上方に走査することにより、導電性プローブ11が導電性状態の記録ビット17Bに接触した時にプローブ11と記録層17との間に流れるDC電流で記録ビットを読み出すことが可能となる。
以下、この記録再生装置における情報再生の動作について数式および図面を用いてより具体的に説明する。なお、数式化を簡略化するために、導電性プローブ11先端の形状等を簡略化して説明するが、本発明はこれらに何ら拘泥されるものではない。
記録層17に接触する導電性プローブ11先端の導電性平坦面の面積をS、カンチレバー12のばね定数をk、記録層17の膜厚をd、記録層17が絶縁体状態にあるときの誘電率をε、真空の誘電率をε、導電性プローブ11先端の導電性平坦面と記録層17上面との距離をz、導電性プローブ11と下部電極層16との間に印加される再生電圧をV、とする。この再生電圧Vは、図6に示した再生回路33により生成される。
導電性プローブ11先端の導電性平坦面が導電性状態の記録層17(記録ビット17B)の上方にある場合に、導電性プローブ11と記録媒体14との間に働く静電引力F1は、次式で与えられる。
F1=εSV/(2z
一方、導電性プローブ11先端の導電性平坦面が絶縁体状態の記録層17(非記録部分17A)の上方にある場合に、導電性プローブ11と記録媒体14との間に働く静電引力F2は、次式で与えられる。
F2=εSV/{2(z+dε/ε}
また、カンチレバー12の復元力F3は、次式で与えられる。
F3=k(z−z)
図8は、静電引力F1、F2、および復元力F3の関係を示す図である。zは導電性プローブ11と下部電極層16との間の印加電圧が0Vのときの、導電性プローブ11先端の導電性平坦面と記録層17との距離である。復元力F3の力の向きは、z>zのとき記録層17上面から離れる方向、すなわち静電引力と反対向きである。
したがって、導電性プローブ11先端の導電性平坦面が導電性状態の記録層17に接触し、かつ、絶縁体状態の記録層17に接触しないための力の条件は、次式で与えられる。
≧z≧0を満たす全てのzについて、
εSV/(2z)≧k(z−z) ・・・(1)
かつ、
≧a>0を満たすあるaの値に対し、a≧z≧0を満たす全てのzについて、
k(z−z)>εSV/{2(z+dε/ε} ・・・(2)
ここで、絶縁体状態の記録層17の上方で導電性プローブ11先端が接触しない条件(条件式(2))は、導電性プローブ11と記録層17との距離zが0(接触時)および0に近いある正の値の範囲、すなわち、ある正のaの値についてa≧z≧0の範囲で復元力>静電引力であれば、絶縁体状態の記録層17の上方で導電性プローブ11先端は非接触状態を安定に保持する、ということである。
ただし、ここで言う非接触状態とは、導電性プローブ11先端が記録層17へ貼りつかない状態、あるいは長時間接触しない状態という意味であって、導電性プローブ11先端の振動に起因する絶縁体状態の記録層17への一時的な接触は、ここでは接触に含めないものとする。
導電性状態の記録層17上方での静電引力F1はzの関数として下に凸であるから、条件式(1)は、εSV/(2z)の接線の傾きが−kとなるときのεSV/(2z)の接線が、z≧z≧0を満たす全てのzについてF3より大きいかまたは等しい条件と同じとなって、次式のように簡略化することができる。
εSV/(2z )≧k(z−z) ・・・(3)
ただし、z=(εSV/k)1/3
なお、図8に示したP点(z,εSV/(2z ))は、静電引力F1の接線の傾きが−kとなる点である。
また、条件式(2)は、絶縁体状態の記録層17上での静電引力F2がzの関数として下に凸であるから、次式のように簡略化することができる。
kz>εSV/{2(dε/ε} ・・・(4)
なお、図8に示したQ点(0,εSV/{2(dε/ε})は、z=0(すなわち、導電性プローブ11が絶縁体状態の記録層17に接触する)の場合における静電引力F2の値を示している。
条件式(1)かつ(2)、すなわち条件式(3)かつ(4)は、導電性プローブ11先端の導電性平坦面が絶縁体状態の記録層17に接触せず、かつ、導電性状態の記録層17に接触するという条件を満たすための、プローブ11と下部電極層16との間に印加する再生電圧Vの範囲を定める。以下に、これを具体的に説明する。
条件式(3)の等号が成り立つときの印加電圧をV3、また条件式(4)の不等式の両辺が等しいときの印加電圧をV4とすると、V3及びV4はそれぞれ、次式(5)および(6)で与えられる。
V3={8kz /(27εS)}1/2 ・・・(5)
V4={2εkz /(ε S)}1/2 ・・・(6)
(ε)/(ε)>2/(3√3)のときV4>V3となるから、このときV4>V≧V3となる範囲にある一定の再生電圧Vを設定すれば、導電性プローブ11先端の導電性平坦面が絶縁体状態の記録層17に接触せず、かつ、導電性状態の記録層17に接触するという条件が満たされる。(ε)/(ε)>2/(3√3)なる条件は、εすなわち記録層17の材料、記録層17の膜厚d、印加電圧0V時のプローブ11と記録層17との距離zを調整することにより達成される。
この一定の再生電圧Vに設定して導電性プローブ11を記録媒体14の上方に走査すれば、絶縁体状態の記録層17(非記録部分17A)では、導電性プローブ11先端は記録層17に非接触状態で走査される。
また、導電性プローブ11先端が導電性状態の記録層17(記録ビット17B)の上方に達すると、導電性プローブ11先端にかかる静電引力が増加して、導電性プローブ11先端が記録層17に接触する。この接触と同時に、導電性プローブ11先端および記録ビット17B上面にある互いに逆符号の電荷が瞬時に消滅するとともに、プローブ11と下部電極層16との間に印加された再生電圧によって、導電性プローブ11と記録ビット17Bとの間に瞬時に実電流が流れる。この実電流を再生回路33により検出することで、記録ビットを読み出すことが可能となる。
なお、接触時の導電性プローブ11先端および記録ビット17B上面の電荷消滅によって、プローブ11と記録媒体14との間に働く静電引力は消滅するため、カンチレバー12の復元力によって導電性プローブ11は記録層17から離れようとする。しかし、導電性プローブ11先端が記録層17に接触してから離れるまでの時間は十分長いため、プローブ11と記録層17との間に流れる実電流の検出は可能である。
ここで、導電性プローブ11を走査させるとは、導電性プローブ11を記録媒体14の上方で連続的な速度で移動させる場合を含んでいても良いし、また、導電性プローブ11を記録媒体14上である速度で移動させた後、一旦停止させ、再びある速度で移動させる、いわゆるステップ・アンド・リピート方式で移動させる場合を含んでいても良い。
この実施形態の場合、V3は、導電性プローブ11先端の導電性平坦面のうち少なくとも一部が記録ビット17B上面に接触する際のプローブ11と下部電極層16との間の電圧の下限値V1に等しい(V1=V3)。また、V4は、導電性プローブ11先端と非記録部分17A上面とが接触する際のプローブ11と下部電極層16との間の電圧の下限値である。よって、V4は導電性プローブ11先端と非記録部分17Aとの間に所定の間隔を有する際(すなわち、導電性プローブ11先端と非記録部分17Aとが接触しない際)のプローブ11と下部電極層16との間の電圧の上限値V2よりも僅かに大きい電圧であるが、V2はV4に限りなく近く、かつ実質的にV4と区別して設定可能な電圧とすることが可能である。
すなわち、この実施形態の場合、プローブ11と下部電極層16との間の再生電圧VをV2≧V≧V1なる範囲に設定して導電性プローブ11を記録媒体14の上方に走査すれば、導電性状態の記録ビット17B上でのみで導電性プローブ11は記録媒体14に接触し、かつプローブ−記録ビット間に実電流が流れる。これにより、記録ビットを読み出すことができる。
次に、記録再生装置における情報の記録動作の一例について説明する。情報の記録は、絶縁体状態の記録層17(非記録部分17A)を導電性状態に変化させることにより行われる。
絶縁体状態の記録層17(非記録部分17A)に導電性状態のビットを記録する場合、記録回路34は、V2より大きく、かつ絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1よりも大きいか等しい電圧パルスVwを、プローブ−下部電極層間に印加する。これにより、導電性プローブ11先端が絶縁体状態の記録層17に接触し、かつ記録層17にスイッチング電圧Vsw1より大きいか等しい電圧Vwが印加されるため、絶縁体状態の記録層17のうちプローブ接触部分が導電性状態へ変化する。このようにして、記録層17に記録ビット17Bが形成される。
次に、記録再生装置における情報の消去動作の一例について説明する。情報の消去は、導電性状態の記録層17(記録ビット17B)を絶縁体状態に変化させることにより行われる。
導電性状態の記録ビットを消去して絶縁体状態に戻す場合、消去回路35は、V1より大きく、かつ導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2よりも大きいか等しい電圧Veを、プローブ−下部電極層間に印加する。これにより、導電性プローブ11先端が導電性状態の記録ビット17Bに接触し、かつビット部分にスイッチング電圧Vsw2よりも大きいか等しい電圧Veが印加されるため、ビット部分が絶縁体状態へ変化する。このようにして、記録層17に記録されたビットが消去される。
なお、情報の再生動作に用いられ、かつ再生回路33により生成される再生電圧は、例えば、絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1よりも小さく、かつ導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2よりも小さい値に設定される。ここで、多くの記録層材料では導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2は、絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1よりも小さい。再生電圧をVsw2よりも小さい値に設定することにより、情報の再生時に情報を破壊せずに再生動作を行うことが可能となる。
しかし、これに限定されず、例えば再生電圧を導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2よりも大きいか等しい値に設定し、破壊読み出しにより情報を再生するようにしても良い。この場合、絶縁体状態の記録層17へのプローブ11先端の偶然の一時的接触によるスイッチングを回避するために、再生電圧は絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1よりも小さいことが望ましい。
また、導電性状態から絶縁体状態へのスイッチングに要する時間が長い、例えば1μsecよりも長い記録層材料を用い、再生動作時に記録ビットを走査する速度を上げることによって、記録ビットへの再生電圧印加時間をスイッチング時間より短くすれば、導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2よりも大きいか等しい値の再生電圧を用いても記録ビットを破壊せずに再生することが可能である。
さらに、記録層材料によっては、導電性状態から絶縁体状態へのスイッチング電圧Vsw2が、絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1と逆極性のもの、すなわち、導電性状態から絶縁体状態へのスイッチングが、絶縁体状態から導電性状態へのスイッチング電圧Vsw1と逆極性でなければ起こらないものも存在する。このとき、Vsw1とVsw2の大きさ(絶対値)については、Vsw1がVsw2よりも大きい材料もあれば、Vsw1がVsw2よりも小さい材料もある。
このような記録層材料を用いる場合には、例えば再生電圧の極性をVsw1と同極性にすれば、記録ビットを破壊せずに再生することが可能である。この場合、再生電圧はVsw1よりも小さいことが望ましい。また、例えば再生電圧の極性をVsw2と同極性としてもよい。この場合、再生電圧をVsw2よりも小さく設定して記録ビットを破壊せずに再生するようにしても良いし、再生電圧をVsw2よりも大きいか等しい値に設定して、破壊読み出しにより再生するようにしても良い。
ところで、前述の説明では、導電性プローブ11先端が導電性平坦面を構成する場合を一例として示している。そして、この導電性平坦面が記録媒体14上面に平行となって、記録媒体14との接触面を構成している。しかし、導電性プローブ11先端の記録媒体14との接触部位の導電性領域の形状はこれに限定されるものではない。
導電性プローブ11の形状は円柱、角柱、円錐、角錐等の形状であっても良いし、その先端部分の形状は平板であっても良いし、先鋭なものであっても良いし、ほぼ球体の一部分となるようなものであってもよい。また、先端部分の形状が不定形であってもよい。これらの場合、導電性プローブ11先端の記録媒体14との接触部位の少なくとも一部に導電性領域が含まれており、接触時に導電性プローブ11と記録層17との間に実電流を流すことができれば良い。
また、導電性プローブ11先端のうち記録媒体14との接触部位の導電性領域とは別個に、導電性プローブ11先端部分の側面に、記録媒体14とは接触しない導電性領域、例えば導電性平坦部分を設け、導電性プローブ11と記録媒体14との間に働く静電引力の大きさを調整してもよい。例えば、図9乃至図11に示す断面図のような形態をあげることができる。
図9は、導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図である。導電性プローブ11は、導電性プローブ11の先端部分11Aに電気的に接続された導電性平坦部分11Bを備えている。導電性平坦部分11Bは、先端部分11Aの側面の周囲を覆うように設けられている。このとき、先端部分11Aは、この周囲の導電性平坦部分11Bの底面よりも記録媒体14側に突き出している。
図10は、導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図である。図10の導電性プローブ11では、導電性平坦部分11Bの底面(すなわち、記録媒体14側の面)が絶縁層11Cで被覆されている。この場合も、導電性プローブ11の先端部分11Aは、絶縁層11Cの底面(すなわち、記録媒体14側の面)よりも記録媒体14側に突き出している。この絶縁層11Cは、導電性平坦部分11Bと記録層17とが接触しないようにするために設けられている。
図11は、導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図である。図11の導電性プローブ11では、導電性平坦部分11Bの底面が絶縁層11Cで被覆されている。そして、絶縁層11Cの底面は、導電性プローブ11の先端部分11Aの底面と同一平面上にある。この場合、先端部分11A周囲の絶縁層11Cによって、先端部分11A底面と記録媒体14上面との電気的接触が阻害されなければ良い。
これらの形態では、導電性プローブ11の先端部分11Aと、導電性平坦部分11Bとが電気的に接続され、導通していれば良い。このとき、先端部分11Aと導電性平坦部分11Bとは実質的に同電位となることが望ましいが、小さい電位勾配があっても良い。特に、先端部分11Aと導電性平坦部分11Bとを構成する導電性材料は、同一の材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。
図9乃至図11のいずれの場合も、導電性プローブ11の先端部分11Aおよびそれに対向する記録媒体14側に誘起される互いに逆符号の電荷に加え、導電性平坦部分11Bおよびそれに対向する下部電極層16または記録層17上面に誘起される互いに逆符号の電荷が、プローブ11と記録媒体14との間の静電引力に寄与する。したがって、いずれの場合も、導電性平坦部分11Bが無い場合に比べて静電引力は大きくなる。
すなわち、導電性平坦部分11Bの面積を調整することによって、プローブ11と記録媒体14との間の静電引力を大きくする方向に調整することが可能である。このことは、カンチレバー12のばね定数がある一定値であるとすると、導電性平坦部分11Bが無い場合に比べて、平坦部分11Bがある場合の方が所望の再生電圧が低電圧となることを意味する。これは、動作電圧の低減の点からみて有利である。
また、動作電圧が一定であるとすると、導電性平坦部分11Bが無い場合に比べて、有る場合の方がカンチレバー12のばね定数を大きくすることができることになる。一般的に、カンチレバー12の材質が同じ場合には、ばね定数を小さくするためにはカンチレバー12の厚さを薄くすること、あるいはカンチレバー12の長さを長くすることが必要であり、設計上、および作製プロセス上の制約が大きくなる。ばね定数を大きくできることは、設計上、および作製プロセス上のマージンの点からみても有利である。
なお、図9乃至11では、導電性平坦部分11Bの底面が平坦である場合を示したが、この底面形状は任意の形状であっても良い。この場合、導電性プローブ11の先端部分11Aの底面と記録媒体14の上面との電気的接触が、導電性平坦部分11Bまたは絶縁層11Cの底面によって阻害されないか、あるいは先端部分11Aの底面と記録媒体14の上面との電気的接触の際に、導電性平坦部分11Bの底面が記録媒体14の上面に接触しなければ良い。
また、前述の説明では、説明の簡略化のために、一例として導電性プローブ11の先端部分11Aの底面の大きさが1つの記録ビット17Bの上面の大きさよりも小さく、先端部分11Aの底面直下の記録層17が全て導電性状態である場合について説明した。しかし、先端部分11Aの底面の大きさと、記録ビット17Bの上面の大きさとの関係は、この場合のみに限定されるものではない。
例えば、先端部分11Aの底面の大きさが、記録ビット17Bの上面の大きさよりも大きく、先端部分11Aの一部分のみが記録ビット17Bの上面上にあり、残り部分が絶縁体状態の非記録部分17Aの上面上にある場合が考えられる。この場合には、記録ビット17Bに誘起される電荷、および先端部分11A直下にある非記録部分17Aに対応する下部電極層16の一部分に誘起される電荷が、導電性プローブ11と記録媒体14との間の静電引力に寄与することになる。この静電引力は、導電性プローブ11の先端部分11Aの全部が非記録部分17Aの上面上にある場合の静電引力よりも大きい。
また、先端部分11Aの底面の大きさが、記録ビット17Bの上面の大きさと同程度または小さくとも、先端部分11Aの位置によっては先端部分11Aの一部分のみが記録ビット17Bの上面上にあり、残り部分が絶縁体状態の非記録部分17Aの上面上にある場合が生じる。この場合には、記録ビット17Bの一部分に誘起される電荷、および先端部分11A直下にある非記録部分17Aに対応する下部電極層16の一部分に誘起される電荷が、導電性プローブ11と記録媒体14との静電引力に寄与することになる。この静電引力は、導電性プローブ11の先端部分11Aの全部が非記録部分17Aの上面上にある場合の静電引力よりも大きい。
より一般的に言って、導電性プローブ11の先端部分11Aと記録媒体14との距離が同じとして、導電性プローブ11直下の記録層17が概ね絶縁体状態にある場合と、導電性プローブ11直下の記録層17が概ね導電性状態にある場合とを比較する。すると、導電性プローブ11直下の記録層17が概ね絶縁体状態にある場合に比べ、導電性プローブ11直下の記録層17が概ね導電性状態にある場合の方が、先端部分11A近傍の導電性部位と、それに対向する記録媒体14側に誘起される電荷によって生じるプローブ11と記録媒体14との間の静電引力は大きい。
なぜなら、記録媒体14側に誘起される電荷は、記録層17が導電性状態にある場合には記録層17のプローブ11に近い上面側に誘起されるが、記録層17が絶縁体状態にある場合には記録層17内には電荷は誘起されず、記録層17と下部電極層16との界面の下部電極層16側に誘起されるからである。
これらいずれの場合にも、記録層17の抵抗状態の違いによって静電引力が異なるため、記録層17の材料、記録層17の膜厚、または印加電圧0V時のプローブ11と記録媒体14との距離zを調整することによって、導電性プローブ11先端の導電性平坦面が絶縁体状態の記録層17に接触せず、かつ、導電性平坦面が導電性状態の記録層17に接触するという条件を満たすための、プローブ11と下部電極層16との間に印加される再生電圧Vの範囲を定めることが可能となる。
また、導電性プローブ11先端の接触面の一部分のみが導電性状態の記録層17上面上にあり、残り部分が絶縁体状態の記録層17上面上にある場合と、導電性プローブ11先端の接触面のほぼ全部が導電性状態の記録層17上面上にある場合とを比較すると、後者の場合の方が、プローブ11と記録媒体14との間の静電引力は大きい。
したがって、導電性プローブ11先端の導電性平坦面のうち少なくとも一部が導電性状態の記録層17に接触し始める際のプローブ11と下部電極層16との間の電圧は複数存在することになる。しかし、その下限値V1以上の再生電圧であれば、導電性プローブ11先端の導電性平坦面のうち少なくとも一部が導電性状態の記録層17に接触し、プローブ11と記録層17との間に実電流が流れる。このとき、一定の再生電圧VをV1より遠い値に設定してプローブ11を走査すると、プローブ11先端の接触面の一部分が記録ビット17Bの一部分の上に来たときに、プローブ11先端が記録ビット17Bに接触する。
一方、一定の再生電圧VをV1に近い値に設定すると、プローブ11先端の接触面の中央部分が記録ビット17Bの中央部分に来たときに、プローブ11先端が記録ビット17Bに接触する。いずれの場合も接触と同時にプローブ11と記録層17との間に実電流が流れるため、記録ビットの検出が可能である。
また、プローブ11先端の接触面が絶縁体状態の記録層17上にあって、プローブ11先端の接触面近傍の接触面でない導電性領域が絶縁体状態の記録層17上にある場合と、プローブ11先端の接触面が絶縁体状態の記録層17上にあって、プローブ11先端の接触面近傍の接触面でない導電性領域が導電性状態の記録層17上にある場合とを比較すると、後者の場合の方がプローブ11と記録媒体14との間の静電引力は大きい。
したがって、プローブ11先端の接触面が絶縁体状態の記録層17上で接触しない再生電圧の条件も、プローブ11位置によって複数存在することになる。しかしこの場合も、プローブ11先端の接触面が絶縁体状態の記録層17上にあるという条件のもとであらゆるプローブ11位置を考えたとき、プローブ11先端の接触面が絶縁体状態の記録層17上で接触しない再生電圧の上限値V2が存在する。実際には、V2はプローブ11先端に対向する記録層17が全て絶縁体状態であるときの、接触しない再生電圧の上限値である。一定の再生電圧VをV2≧Vに設定してプローブ11を走査すれば、概ね絶縁体状態の記録層17上で非接触という目的は達せられる。
したがって、より一般的に言えば、プローブ11先端の導電性領域のうち少なくとも一部が導電性状態の記録層17に接触する際のプローブ11と下部電極層16との間の電圧の下限値をV1、プローブ11先端と絶縁体状態の記録層17上面との間に所定の間隔を有する際のプローブ11と下部電極層16との間の電圧の上限値をV2としたとき、再生電圧VをV2≧V≧V1なる一定電圧に設定してプローブ11を記録媒体14上方に走査すれば、プローブ11は絶縁体状態の記録層17上方で概ね非接触状態で走査され、導電性状態の記録層17上で瞬時接触してプローブ11と記録層17との間に流れる実電流を検出することが可能である。
以上詳述したように本実施形態によれば、情報の再生時に、導電性プローブ11は、導電性状態の記録ビット17B上でのみで記録媒体14に接触する。これにより、記録媒体14に記録された情報を読み出すことが可能となる。
また、導電性プローブ11は、絶縁体状態の非記録部分17A上方では、記録媒体14に接触しない。これにより、情報の再生時における導電性プローブ11先端または記録媒体14上面の磨耗および損傷を抑制することができる。この結果、再生動作の寿命を改善することが可能となる。
次に、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の第1の実施例について説明する。まず、記録媒体14の構成について説明する。
p型シリコン(Si)基板15上に、例えばチタン(Ti)からなる接着層、例えば白金(Pt)からなる下部電極層16を形成する。接着層の膜厚は例えば5nm、下部電極層16の膜厚は例えば50nmである。
次に、下部電極層16上に、反応性スパッタリングにより例えば酸化ニッケル(NiO)からなる記録層17を形成する。記録層17の膜厚は、例えば20nmである。反応性スパッタリングは、ニッケル(Ni)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスおよび酸素(O)ガスを導入したDCスパッタリング装置を用いて行われる。酸化ニッケル(NiO)成膜時の基板(Pt/Ti/Si)温度を300℃程度に設定し、酸素(O)分圧を15%程度に設定する。
次に、カンチレバー12の構成について説明する。カンチレバー12は、不純物が高濃度にドープされた導電性シリコン(Si)が用いられる。カンチレバー12は、長さが約10μm、幅が約2μmの矩形であり、厚さは約50nmである。このカンチレバー12のばね定数は、以下のように計算式から見積もることができる。
長さl、幅w、厚さtの矩形カンチレバー12のばね定数kは、次式で与えられる。
k=E・t・w/4・l
Eはカンチレバー材質のヤング率であり、シリコンの場合、E=1.9×1011N/mである。長さ10μm、幅2μm、厚さ50nmのシリコンカンチレバーの場合、ばね定数kは約0.01N/mとなる。図12は、矩形カンチレバー12において長さと幅の比が5:1で、ばね定数kが0.01N/mの場合の、カンチレバー12の長さと厚さとの関係を示す図である。この図12から、カンチレバー12の厚さ50nmが算出される。
カンチレバー12先端に設けられたチップの先端表面を白金(Pt)でコートしたものを導電性プローブ11として用いる。導電性プローブ11の形状はほぼ平坦な先端面を有するコーン状(円錐台形状)で、この先端面の直径は約20nmである。プローブ11先端表面への白金(Pt)コートについては、まずプローブ11先端表面へ接着層としてチタン(Ti)を膜厚7nm程度形成した後、白金(Pt)層を膜厚5nm程度形成する。
次に、このように形成された記録再生装置を用いて電流パルス印加による記録、再生の実験を行った。プローブ11先端と記録媒体14上面との距離が約3nmとなるように、カンチレバー12の高さを高さ調整機構31により設定する。
まず、下部電極層16を接地し、プローブ11を記録媒体14上方の一方向に走査させる。そして、プローブ11にパルス高さ2V、パルス幅1μsec、パルス間隔10μsecの20点の電圧パルス列を印加し、記録層17に記録ビット17B列を作製した。
次に、下部電極層16を接地して、プローブ11に200mVの再生電圧を印加したまま、記録ビット17B列を再度走査し、プローブ11と下部電極層16との間に流れる電流をモニターした。この走査によって、1μA、100nsec程度の再生信号電流パルスを20点検出することができた。
さらに、再生時に、導電性プローブ11は、導電性状態の記録ビット17B上でのみで記録媒体14に接触していた。また、導電性プローブ11先端または記録媒体14上面の磨耗はほとんど確認されなかった。
次に、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の第2の実施例について説明する。記録媒体14の構成は、実施例1と同様である。
まず、カンチレバー12の構成について説明する。カンチレバー12は、不純物が高濃度にドープされた導電性シリコン(Si)が用いられる。カンチレバー12は、長さが約10μm、幅が約2μmの矩形であり、厚さは約80nmである。このカンチレバー12のばね定数は、実施例1と同様に計算式から0.05N/mと見積もることができた。
カンチレバー12先端に設けられたチップの先端表面を粒状構造の金(Au)でコートしたものを導電性プローブ11として用いる。チップの形状はほぼ球面形状の先端を有するコーン状で、この先端の曲率半径は約50nmである。チップ先端表面への金(Au)コートについては、スパッタにより、まずチップ先端表面へ接着層としてチタン(Ti)を膜厚7nm程度形成したのち、金(Au)層を平均膜厚として5nm程度形成することにより、金の粒状構造を形成する。
同様に形成したプローブ11の断面TEM(Transmission Electron Microscope)観察により、チップ先端には、粒径15nm程度の金の粒状構造(グレイン)がほぼ密集して形成されており、チップ先端の中央部分にある1個のグレインが、周囲のグレインよりも3nm程度、チップ先端から突出していることが確認できた。すなわち、近似的に図9に示される構造、つまり1個の金グレインからなる導電性先端部分11A側面に、複数個の金グレインからなる導電性部分11Bが設けられた構造が形成されていることが確認できた。
次に、このように形成された記録再生装置を用いて実施例1と同様に電流パルス印加による記録、再生の実験を行った。プローブ11先端と記録媒体14上面との距離が約2nmとなるように、カンチレバー12の高さを高さ調整機構31により設定する。
まず、下部電極層16を接地し、プローブ11を記録媒体14上方の一方向に走査させる。そして、プローブ11にパルス高さ2V、パルス幅1μsec、パルス間隔10μsecの20点の電圧パルス列を印加し、記録層17に記録ビット17B列を作製した。
次に、下部電極層16を接地して、プローブ11に200mVの再生電圧を印加したまま、記録ビット17B列を再度走査し、プローブ11と下部電極層16との間に流れる電流をモニターした。この走査によって、1μA、100nsec程度の再生信号電流パルスを20点検出することができた。
さらに、再生時に、導電性プローブ11は、導電性状態の記録ビット17B上でのみで記録媒体14に接触していた。また、導電性プローブ11先端または記録媒体14上面の磨耗はほとんど確認されなかった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化できる。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明の一実施形態に係る記録再生装置を説明する概略図。 図1に示した領域Aを拡大した概略図。 図1に示した記録媒体14を説明する断面図。 本発明の一実施形態に係る記録再生装置の第2の構成例を説明する概略図。 図4に示した領域Bを拡大した概略図。 本発明の一実施形態に係る記録再生装置を説明する構成図。 記録再生装置に係る情報再生原理を説明するための主要部分の一例を示す概略断面図。 静電引力F1、F2、および復元力F3の関係を示す図。 導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図。 導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図。 導電性プローブ11の他の構成例を示す断面図。 矩形カンチレバー12において長さと幅の比が5:1で、ばね定数kが0.01N/mの場合の、カンチレバー12の長さと厚さとの関係を示す図。
符号の説明
11…導電性プローブ、11A…先端部分、11B…導電性平坦部分、11C…絶縁層、12…カンチレバー、13…カンチレバーアレイ、14…記録媒体、15…基板、16…下部電極層、17…記録層、17B…記録部分(記録ビット)、17A…非記録部分、18…x−y駆動ステージ、19…アクチュエータ、21…回転装置、22…回転軸、23…アーム、31…高さ調整機構、32…位置制御回路、33…再生回路、34…記録回路、35…消去回路、36…制御部、37…スイッチ回路。

Claims (6)

  1. 下部電極層と、この下部電極層上に設けられかつ印加される電流パルスにより導電性状態と絶縁体状態との抵抗状態が変化する記録層とを含む記録媒体と、
    前記記録媒体を走査し、かつ前記記録媒体に電流パルスを印加するプローブと、
    前記プローブと前記下部電極層との電位差がゼロの場合に、前記記録媒体の上面から一定間隔を空けるようにして前記プローブを支持するカンチレバーと、
    前記記録媒体から情報を再生する場合に、前記プローブと前記下部電極層との間に再生電圧を印加する再生回路と
    を具備し、
    前記記録層のうち導電性状態の第1の部分と前記プローブとが接触する場合の前記プローブと前記下部電極層との間の電圧の下限値をV1、前記記録層のうち絶縁体状態の第2の部分と前記プローブとが接触しない場合の前記プローブと前記下部電極層との間の電圧の上限値をV2とすると、前記再生電圧Vは、V2≧V≧V1に設定されることを特徴とする記録再生装置。
  2. 前記プローブと前記記録媒体との間の静電引力は、前記第1の部分では前記カンチレバーの復元力以上であり、前記第2の部分では前記カンチレバーの復元力より小さいことを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
  3. 前記再生電圧は、前記導電性状態と前記絶縁体状態とのスイッチング電圧よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録再生装置。
  4. 前記カンチレバーが複数個アレイ状に配列されたカンチレバーアレイをさらに具備し、
    複数のカンチレバーを並列動作させることにより、前記記録媒体に記録された複数ビットの再生を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の記録再生装置。
  5. 前記記録層は、NiO、TiO、CuO、Fe、CoO、Nb、MnO、Al、Ta、MgO、ZrO、ZnO、HfO、WO、PrCa1−xMnO、Crが添加されたSrTiO、Crが添加されたSrZrO、Nbが添加されたSrTiO、AMn(A=Zn、Mg、Co、Cu、Fe)、ACo(A=Zn、Mg、Cu)、ATiO(A=Ni、Fe、Co)、CuS、AgGeS、CuGeS、およびZnCdSを含む群から選択される材料からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の記録再生装置。
  6. 前記プローブに電気的に接続され、かつ前記プローブの側面に設けられた導電部分をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録再生装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013062447A (ja) * 2011-09-14 2013-04-04 Toshiba Corp 記憶装置

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