JP2008081330A - 吸液用セラミック部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 蒸散速度のばらつきを少なくするとともに、容器に取りつけた場合における容器の内部と外部との通気を確保できる吸液用セラミック部材を提供する。
【解決手段】 多孔質セラミックスからなり、気孔径の分布が複数のピークを持ち、また、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINが20以上であり、さらに、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔が存在しており、この気孔が表面において吸液方向に非連続に存在している吸液用セラミック部材である。異なった気孔径の分布の複数のピークを持つので、蒸散速度が大きく、かつ蒸散速度のばらつきが少ない。
【選択図】 図1

Description

本発明は、加湿用途、芳香用途、消臭用途および殺虫用途として、水、芳香剤、消臭剤および殺虫剤などの液体を毛細管現象を利用して吸液し、表面より蒸散させるための吸液用セラミック部材に関するものである。
近年、加湿用途、芳香用途、消臭用途および殺虫用途として、水、芳香剤、消臭剤および殺虫剤などの液体(以下、単に薬液と称す。)を蒸散させる方式として、薬液中に多孔質体の一部を浸漬して、多孔質体の毛細管現象を利用して薬液を供給するとともに、多孔質体の表面より薬液を蒸散させる蒸散方式が知られている。
このような蒸散方式の多孔質体として、従来はフェルトが用いられてきたが、フェルトでは一般に吸液量が多すぎたり、保管、輸送および使用時に薬液が芯を介してあふれる、あるいはフェルトが柔軟性を有しているので芯を正しくセットしにくいなどの問題があった。
このため、無機粉体あるいは無機粉体と木粉体等を水溶性糊剤で固着成形した吸液芯が考えられたが、無機粉体の表面活性のために薬液が化学的に分解を受ける、あるいは薬液が水性溶液の場合は、糊剤の溶解や溶出および膨潤により吸液芯の物理的劣化が起こるので使用に耐えないという問題が残っていた。
このような問題を解決するために特許文献1では、アルミナ、シリカ、タルク、マイカおよび珪藻土などの無機質粉体、有機物質および無機質粘結剤からなる混合物を、600〜2000℃で焼成することによって、これらの無機質粉体の表面活性を薬剤の分解を生ぜしめない程度にまで下げ、しかも無機物が主体のため薬液が水性溶液であっても物理的劣化のない吸液芯が開示されている。
そして、この吸液芯によれば、組成原料の種類、配合量、間隙の大きさや粗密および表面積などを適宜選ぶことによって、吸液量と揮散速度とを適宜調節できるほか、薬液の分解を引き起こす心配がなく、また、従来の例えばフェルト単独の吸液芯に見られた過度の吸液量の問題や、保管、輸送および使用時の薬液のあふれ等の問題を解消することができるというものである。
また、特許文献2には、気温や気圧の変化に伴う薬液膨張によって薬液容器内の内圧が高まり、薬液が吸液芯中を押し上げられても、また、誤って薬液容器を倒したりまたは逆さにされたりしても液漏れが発生するのを防ぐために、薬液蒸散容器の口部に嵌着される中栓に保持される吸液芯であって、該吸液芯の外周面の少なくとも一部に上下に通じる微細な凹凸からなる通気溝を設け、該通気溝の深さを3μm〜250μmの範囲とした吸液芯が開示されている。
特開平4−117303号公報 特開2001−86919号公報
しかしながら、このような特許文献1,2に開示された吸液芯は、物理的劣化がなく、薬剤を分解することがなく、また薬液が漏れることがない吸液芯であるとしても、薬液を均一に蒸散して、例えば芳香用途や消臭用途では均一な香りや消臭を得るには不十分でばらつきがあったり、また、殺虫用途では殺虫効果にばらつきが発生して効果が得にくかったり、さらに、使用期間についてもばらつきが生じて使用しづらかったりという課題があった。
さらには、特許文献1に開示された吸液芯は、物理的劣化がなく、薬剤を分解することがなく、また薬液が漏れることがなく、さらに、組成原料の種類、配合量、間隙の大きさや粗密および表面積などを適宜選ぶことによって吸液量や揮散速度を適宜調節できる吸液芯であったとしても、蒸散速度の速い用途(例えば加湿用途)に用いると、使用初期には蒸散速度の安定領域を超えて薬液が蒸散し、蒸散速度が安定するまでに時間がかかるという問題があった。また、逆に蒸散速度が遅い用途に用いる場合は、蒸散速度が安定する領域までの立ち上がりに時間がかかり、蒸散速度が安定しないという問題があった。特に、このような問題は、薬液を補充して用いる場合には顕著な問題であった。
また、特許文献2に開示された吸液芯を用いたとしても、薬液が漏れて早期に消費されるなどの蒸散速度がばらつくという不具合の問題が残っていた。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、液体を均一に蒸散することができ、使用期間のばらつきのない吸液用セラミック部材を提供することを目的とする。
本発明の吸液用セラミック部材は、多孔質セラミックスからなり、水銀圧入法による気孔径分布試験(JIS R 1655:2003)において、気孔径の分布が複数のピークを持つことを特徴とするものである。
また、本発明の吸液用セラミック部材は、上記構成において、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINが20以上であることを特徴とするものである。
さらに、本発明の吸液用セラミック部材は、上記各構成において、表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔が存在しており、該気孔が表面において吸液方向に非連続に存在していることを特徴とするものである。
本発明の吸液用セラミック部材によれば、多孔質セラミックスからなり、水銀圧入法による気孔径分布試験(JIS R 1655:2003)において、気孔径の分布が複数のピークを持つことから、時間経過に対して初期にはすばやく蒸散速度が大きくなるが、その後蒸散速度が低下する大きい気孔径を持つ吸液用セラミック部材と、時間に対して初期には蒸散速度の立ち上がりが遅いが、その後の蒸散速度の低下が遅い安定した蒸散速度を有する小さい気孔径の吸液用セラミック部材とのそれぞれのピークを持つ気孔径が有する薬液の蒸散時間と蒸散速度との関係が重なり合って互いに補いあうために、安定した蒸散速度を得ることができる。
また、本発明の吸液用セラミック部材によれば、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINが20以上であるときには、使用初期にはすばやく薬液の蒸散速度が大きくなり、その後蒸散速度が安定する気孔径を有するので、使用期間中の安定した蒸散速度を得ることができる。
さらに、本発明の吸液用セラミック部材によれば、表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔が存在しており、この気孔が表面において吸液方向に非連続に存在しているときには、薬液容器の内部と外部とに圧力差が生じた際に、高圧側の気体が低圧方向へ、表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔に保持されている薬液を押し出すため、また、薬液容器の内部と外部とで気孔を通して通気を確保することができるとともに、表面に開口した気孔が非連続に存在しているために薬液が気孔を伝わって薬液容器外部へ漏出することがないため、薬液容器の内部が低圧になった場合における薬液容器の変形を防止することができるとともに、周囲温度の変化における薬液容器の内部の圧力上昇を防止でき、さらに、薬液容器の転倒による液漏れも防止できるという効果がある。
以下、本発明の吸液用セラミック部材について実施の形態の例を説明する。
図1は本発明の吸液用セラミック部材における気孔径の分布の状態の一例を示す図表である。また、図2(a)は本発明の吸液用セラミック部材における吸液方向に垂直な断面の一例を示す部分断面図であり、図2(b)は(a)の円部Aを示す部分拡大断面図である。
本発明の吸液用セラミック部材1は、図2(a)に示すように、吸液方向(同図では紙面に垂直な方向)に連続した複数の気孔2を有する多孔質セラミックスからなる。そして、このような気孔2は、例えば気孔径の大きい順に2a,2b,2cに示すような大きさの異なる複数の気孔2を有している。
つまり、本発明の吸液用セラミック部材1は、多孔質セラミックスからなり、水銀圧入法による気孔径分布試験(JIS R 1655:2003)において、気孔径の分布が複数のピークを持つことを特徴とするものである。
一般的に吸液用セラミック部材に用いられる多孔質セラミックスは特定の方向に連続した複数の気孔を有するが、このような気孔の気孔径は、その気孔径の分布を調べると、おおよそ1つのピークに気孔径が集中した正規分布の構成となるために、多孔質セラミックスの特性はこの気孔径のピークに基づく特性値を示すことになる。
吸液用セラミック部材1は、図1に横軸に気孔径(μm)を、縦軸に気孔容積(cm/g)を表して特性曲線で気孔の分布を示すように、気孔径の違う気孔2a,2b,2cの複数のピークが生じるようにしたものである。
このような気孔径の違う気孔2a,2b,2cのそれぞれのピークを中心とした正規分布をなす各気孔径に対応する気孔5a,5b,5cをそれぞれ有した3種の多孔質セラミックスを作製して円柱状の吸液用セラミック部材11,12,13とし、図4に断面図で構成を示すような蒸散速度測定器10を用いて、薬液容器6の中に蓋7によって支持された中栓8(例えばシリコン栓等)で固定した円柱状の吸液用セラミック部材11,12,13を立てて、時間経過とともに蒸散速度の状態を調べると、吸液用セラミック部材11,12,13は、図3に図表で吸液用セラミック部材が有する気孔径分布に対する蒸散速度の時間変化を示すように、気孔5a,5b,5cに対応してそれぞれ異なった蒸散速度を有する。
ここで、蒸散速度の測定方法としては、薬液容器6内に100mlの純水を入れ、薬液容器6と蓋7との間に保持した中栓8で固定した吸液用セラミック部材11の先端が蓋7から30mm突出するように配置し、突出した吸液用セラミック部材11の上端部10mmの範囲を100℃に加熱して、純水の蒸散速度、すなわち1時間毎に減少した純水の重量を測定し、時間当たりの純水の蒸散速度を測定した。吸液用セラミック部材12,13についても同様の方法で測定を行なった。なお、9は薬液容器6の内外圧力差を測定する差圧計である。
この結果、例えば気孔径の分布のピークが50μm程度と大きい気孔5aを有する吸液用セラミック部材11では、時間経過とともに急激に蒸散速度は大きくなるが、その後の蒸散速度は急激に低下する傾向がある。気孔径の分布のピークが2μm程度と気孔5aよりも小さい気孔5bを有する吸液用セラミック部材12は、気孔径が大きい気孔5aを有した吸液用セラミック部材11ほど急激に蒸散速度は立ち上がらないが、一方で蒸散速度の低下は気孔5aよりも少ない傾向がある。そして、気孔径の分布のピークが0.08μm程度と最も小さい気孔5cを有した吸液用セラミック部材13は、蒸散速度の立ち上がりは気孔5a,5bに比べてさらに遅いが、蒸散速度の低下はこの二つに比べれば少ない傾向がある。この理由は定かではないが、気孔径が大きいと気孔の中を伝わる薬液の量は気孔径の小さい気孔より多くなり、薬液が蒸散する部位に早く多く到達できて蒸散でき、それに対して、気孔径が小さいと気孔径の大きな気孔よりも薬液の到達が遅れて少ない蒸散となるからであり、そのために、気孔径の大きな気孔からは薬液がどんどん蒸散し、薬液容器内の液圧が気孔を通って上昇する薬液に及ぼす圧力が減少して、薬液が蒸散する部位への薬液の到達が気孔径の小さな気孔に比べて時間経過とともに少なくなるからと考えられる。
つまり、気孔径が正規分布をなす大きな値の1つのピークを有する気孔5aのような吸液用セラミック部材11では、薬液の蒸散速度は使用初期において立ち上がりは早いが、その後、蒸散速度は低下していくために、安定性には欠けることになり、使用期間にばらつきが発生することとなる。
一方、気孔径の分布のピークが気孔5aよりも順に小さい気孔5b,5cを有する吸液用セラミック部材12,13では、初期の蒸散速度は気孔5aよりも順に遅いが、より長い時間薬液の液圧を受けるので、安定した蒸散が可能となるのである。
本発明はこのような気孔径によって蒸散速度が時間とともに変化することに着目し、気孔径の分布が複数のピークを有するようにしたことから、使用初期段階から長時間にわたって蒸散速度の安定した吸液用セラミック部材を提供できるのである。
また、本発明の吸液用セラミック部材1は、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINが20以上であることが好ましい。
本発明の吸液用セラミック部材1は、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在することが好ましいのは、気孔径の分布のピークが0.03μm以上であると、気孔径の分布のピークが小さい気孔2cについて説明したような使用初期の蒸散速度の立ち上がりが遅れることを防ぐことができて好ましく、気孔径の分布のピークが0.03μm未満だと、蒸散速度が遅れることに加えて、多孔質セラミックスを作製するときに連続した気孔を形成することが難しくなるからである。また、気孔径の分布のピークは10μm以下であることが、時間経過とともに蒸散速度が安定することから好ましい。10μmを超えると、使用初期の蒸散速度の立ち上がりは速くなるが、その後の安定性は低下するとともに、気孔径が大きくなるので部分的に強度が低下する部分が発生するおそれがあるからである。
また、DMAX/DMINが20未満となると、気孔径の分布のピーク同士が近づき過ぎることとなり、互いの蒸散速度の傾向が近似した効果になるため、前術のように蒸散速度の立ち上がりと蒸散速度の安定との相乗効果を発現することが難しくなるからである。
さらに、本発明の吸液用セラミック部材1は、表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔が存在しており、この気孔が表面において吸液方向に非連続に存在していることが好ましい。
ここで言う表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積とは、図2(b)に示す表面に開口した気孔3についての吸液用セラミック部材1の表面に垂直な断面の断面積のことであり、この断面積の範囲は、吸液用セラミック部材1の表面の輪郭線4で仕切られた開口を境界とする、吸液用セラミック部材1の表面に垂直な断面での気孔3の断面積(図2(b)に示す輪郭線4で仕切られた白抜き部の気孔3の断面積)を示す部分である。
この断面積が3.5μm以上の気孔3が吸液用セラミック部材1に存在することによって、さらに、このような気孔3が吸液方向(吸液用セラミック部材1の表面に平行な薬液を輸送する方向)に非連続に存在することによって、薬液容器の内部と外部とに通気が確保できるため、蒸散が進んだ際に薬液容器の内部の圧力が負圧になることを防止できるため、薬液の蒸散が負圧によって阻害されることがない。また、薬液容器の内部と外部とに圧力差が生じても、高圧側の気体が低圧方向へ表面に開口した、表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の気孔3に保持されている液体を押し出すため、薬液容器の内部と外部とで通気を確保することができる。
そして、このような気孔3が吸液用セラミック部材1の表面において吸液方向に非連続に存在しているために、薬液が連続した気孔3を伝わって薬液容器の外部へ漏出することがなく、また、薬液容器の内部が外部に比べて低圧になった場合における薬液容器の変形を防止することができるとともに、周囲温度の変化などにおける薬液容器の内部の圧力上昇を防止でき、さらに、薬液容器の転倒等による液漏れも防止することができるので好ましい。
なお、吸液用セラミック部材1の表面に垂直な断面に開口した気孔3の断面積が3.5μm未満となると、気孔3内に留まろうとする薬液の表面張力が強く作用するため、薬液容器の内部の圧力変化だけでは通気に必要な圧力差が発生し難くなる。
次に、本発明の吸液用セラミック部材1の製造方法について説明する。
まず、アルミナ、シリカ、ジルコニア、タルク、マイカおよびカオリン等から、複数の原料粉を混合し、メチルセルロースなどの有機結合剤粉末を添加し、万能撹拌機にて撹拌した後に、水、ワックスエマルジョンなどの潤滑剤、分散剤などの液体を添加し、さらに撹拌を行ない、押出成形用の原料坏土を得る。
ここで、気孔径分布のピークを複数にするためには、粒度の異なる原料を混合して使用することで作製できる。
また、ケイ酸質の粘土など、層状結晶を成す原料を用いてセラミックスの焼結前の温度で焼成することによれば、1種の原料でも複数のピークを存在させることができる。
またさらに、異なる気孔径を形成するために異なる大きさの樹脂粉末や繊維、発泡剤などの気孔形成剤を添加することによっても、複数のピークを存在させることができる。
このうち、粒度の異なる複数の原料を混合して使用する方法が、容易に気孔径を調整することができるため好ましい。
また、気孔径の分布のピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINを20以上とする吸液用セラミック部材1を製造するには、複数の原料を混合して使用することが好ましいが、粒径の異なる原料を混合して使用する際は、複数の原料のうち最も粒径の大きい原料における粒径と最も粒径の小さい原料における粒径との比が20以上となる原料を用いるとよい。
さらに、吸液用セラミック部材1の表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の表面に開口した気孔3を形成するには、粒径が10μm以上の原料粉を用いて作製し、表面を研削や切削などによって加工することで、このような気孔3を表面に開口させることにより形成することができる。
次に、得られた原料坏土を押出成形にて成形し、得られた成形体を自然乾燥した後、熱風乾燥にて乾燥させ、焼成炉にて450℃まで昇温し、5時間保持して脱脂した後に、続けて800〜1300℃の範囲に昇温し、8時間程度保持して焼成を行なう。そして、得られた焼成体をセンタレス研削機で外周を研削加工し、これを、超音波洗浄機にて洗浄した後、乾燥させ、本発明の吸液用セラミック部材1を得る。
得られた吸液用セラミック部材1は、JIS R 1655:2003に準拠して、水銀圧入法にて気孔径分布を測定することができる。
なお、気孔径分布の測定におけるピークとは、JIS R 1655:2003に準じた水銀圧入法による気孔径分布測定において、気孔径に対する気孔容積を測定した際に、直前の測定圧力に対し1.1倍を超え1.5倍を超えない測定圧力で気孔容積を連続的に測定し、直前の測定値より±5%を超える変化率で3測定値以上連続的に変化している領域における最大値で、かつこの最大値が上記領域における最小値の2倍以上の測定値であるものをいう。
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
まず、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、タルク、マイカ、およびカオリン等から選ばれる原料粉から適宜原料粉を選択して、気孔径のピークの数とピークを有する気孔径とが表2に示す値となるように表1の粒径を示す原料粉を用いて混合し、メチルセルロースなどの有機結合剤粉末を混合原料粉に対して5重量%添加し、万能撹拌機にて30分間撹拌した後、ワックスエマルジョンなどの潤滑剤、分散剤、および水などの液体を混合原料粉に対して30重量%添加し、さらに30分間撹拌を行ない、押出成形用の原料坏土を得た。
Figure 2008081330
次に、得られた原料坏土を押出成形機にて、焼成後に直径11mmの棒状体となるような金型を用いて成形した。
得られた成形体を、室温にて自然乾燥を行なった後、60℃の熱風乾燥室において24時間静置し、焼成後に70mmの長さとなるように切断した。
次に、焼成炉にて大気雰囲気内で450℃まで昇温し、2時間保持して脱脂した後に、続けて800〜1300℃の範囲で昇温し、8時間保持して焼成を行ない焼成体を得た。
得られた焼成体を直径10mmとなるようにセンタレス加工機にて外周を研削加工し、この研削加工したものを流水中で超音波洗浄した後、乾燥させて、吸液用セラミック部材として試料No.1〜19を得た。
得られた吸液用セラミック部材は、JIS R 1655:2003に準拠し、水銀圧入法にて気孔径分布を測定し表2に示す通りのピーク数と気孔径を有していることを確認した。
作製した各試料は、図4に示す蒸散速度測定器10内に100mlの純水を入れ、試料を配置して試料の上端部から10mmを100℃に加熱し、純水の蒸散速度を測定した。
また、蒸散速度は、1時間毎に減少した純水の重量を測定し、時間当りの純水の蒸散速度として算出した。蒸散速度のばらつきは、蒸散開始1時間後の蒸散速度を初期蒸散速度とし、蒸散開始100時間後の蒸散速度の初期蒸散速度に対する減少率を算出した数値とした。
試料No.1〜19の初期の蒸散速度ならびに蒸散速度のばらつきの結果を表2に示す。
なお、試料No.1は気孔径の分布のピークの数が1つである、本発明の範囲外を示すものである。
また、表2に示す評価では、初期の蒸散速度が0.72g/時間以上あって、蒸散速度のばらつきが5%未満のものを◎とし、10%未満のものを○とし、15%未満のものを△とし、これ以上のものを不良として×とした。
Figure 2008081330
表2に示す結果から、本発明の範囲外である試料No.1は、ピークの数が1つであることから、初期の蒸散速度は0.72g/時間以上で問題ないが、初期の蒸散速度に対して24%のばらつきが生じ、安定した蒸散速度を得ることができない結果となった。
また、本発明の試料No.2〜19では、初期の蒸散速度はいずれも0.72g/時間以上で問題なく、蒸散速度のばらつきも15%未満であり、試料No.1に比べて良好な結果であった。また、このうち試料No.4〜9,11,13〜16,18は、気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつDMAX/DMINの値が20以上であるので、これらの範囲外である試料No.2,3,10,12,17,19に比べ、蒸散速度のばらつきにおいて優れていることが分かった。
以上の結果から、本発明の範囲内であれば蒸散速度やそのばらつきにおいて良好な結果が得られることが分かる。
なお、以上の例では本発明の実施例の一例を示したが、気孔径の分布のピークの数やピークの位置が共に本発明の範囲内に入れば、原料粉の比率や気孔径DにおけるDMAX/DMINの値はこの比率に限定されるものでない。
(実施例2)
実施例1における試料No.7の吸液用セラミック部材を用いて、表面に開口した気孔の断面積および気孔の連続性または非連続性による薬液容器の内部と外部との圧力差(差圧)および液漏れについて調べた。
実施例1の試料No.7と同様にして、試料No.20〜27に示すような表面に開口した気孔の断面積を有する吸液用セラミック部材を作製し、図4に示す蒸散速度測定器10に配置して、純水を95g蒸散した時点で差圧計9を観察し、純水が減少したことによる内圧変化の有無を確認した。
また、各試料においては、蒸散速度の測定前に、容器を上下逆さにして液漏れが発生しないかを目視にて確認した。
各試料の薬液容器の内部と外部との圧力変化および液漏れの評価結果を表3に示す。
なお、差圧の無いものおよび液漏れのないもののいずれか一方のみを満足するものを△、両方とも満足するものを○として評価した。
Figure 2008081330
試料No.20は、部材の表面に開口した気孔の断面積が3μmと小さかったが、この気孔が吸液方向において連続した気孔であったため、容器内外の通気をすることができ、差圧が生じることはなかった。しかし、部材の表面に開口した気孔が連続して存在していたため、微量の液漏れが確認された。
試料No.21は、部材の表面に開口した気孔の断面積が3μmと小さく、この気孔が吸液方向において不連続であったため、良好な通気をすることができずに容器の内圧が負圧となり、容器内外での差圧が生じてしまった。なお、この気孔が吸液方向において不連続に存在していたため、液漏れは発生しなかった。
試料No.22,24は、部材の表面に開口した気孔の断面積がそれぞれ3.5μm、5μmと十分大きいが、この気孔が吸液方向において連続に存在していたため、良好な通気をすることができ差圧が発生することはなかったものの、微量の液漏れが確認された。
試料No.26は、部材の表面に開口した気孔の断面積が10μmと大きく、この気孔が吸液方向において連続して存在していたため、良好な通気をすることができ、容器内外に差圧が生じることはなかったものの、液漏れが生じてしまった。
試料No.23,25,27は、部材の表面に開口した気孔の断面積がそれぞれ3.5μm、5μm、10μmと十分大きく、この気孔が吸液方向において不連続に存在していたため、良好な通気をすることができ、容器内外に差圧が発生することがなく、かつ液漏れも発生しなかった。
以上説明したように、本発明の吸液用セラミック部材1は、主として毛細管現象を利用して、例えば芳香剤、消臭剤、殺菌剤、殺虫剤などを含んだ液体を吸い上げ、大気開放部より液体を蒸散させる液体蒸散用の吸液部材や、水などを吸い上げ、大気開放部より蒸散させる加湿用途などの吸水部材などとして好適に用いることができる。また、本発明の吸液用セラミック部材は、その高温における信頼性より、大気開放部を加熱して蒸散する加熱蒸散装置などの吸液部材としても好適に用いることができる。
本発明の吸液用セラミック部材における気孔径の分布の状態の一例を示す図表である。 (a)は本発明の吸液用セラミック部材における吸液方向に垂直な断面の一例を示す部分断面図であり、(b)は(a)の円部Aを示す部分拡大断面図である。 吸液用セラミック部材が有する気孔径分布に対する蒸散速度の時間変化を示す図表である。 蒸散速度測定装置を示す断面図である。
符号の説明
1,11,12,13:吸液用セラミック部材
2,2a,2b,2c:気孔
3:開口した気孔
4:輪郭線
5a,5b,5c:気孔
6:薬液容器
7:蓋
8:中栓
9:差圧計
10:蒸散速度測定器

Claims (3)

  1. 多孔質セラミックスからなり、水銀圧入法による気孔径分布試験(JIS R 1655:2003に準拠)において、気孔径の分布が複数のピークを持つことを特徴とする吸液用セラミック部材。
  2. 前記気孔径の分布のピークが0.03〜10μmの間に複数存在し、かつ前記ピークのうち最も大きい気孔径DMAXを最も小さい気孔径DMINで除した値DMAX/DMINが20以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸液用セラミック部材。
  3. 表面に開口した、前記表面に垂直な断面の断面積が3.5μm以上の前記気孔が存在しており、該気孔が前記表面において吸液方向に非連続に存在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸液用セラミック部材。
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