JP2008080763A - 射出成形用金型およびこの金型を用いた射出発泡成形体の製造方法 - Google Patents

射出成形用金型およびこの金型を用いた射出発泡成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金型内にガスを充填しなくてもガスカウンタープレッシャー法による射出発泡成形を行なうことができる射出成形用金型およびこの金型を用いた発泡成形体の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】型閉め状態のとき、型内でスライド可能で、型閉め完了までは、キャビティの型面から後退した状態に保持され、型閉め完了後から樹脂充填前の間に、その端面を前記キャビティの型面に一致させるようにスライドして、キャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧に加圧可能なスライド型を可動型および固定型の少なくともいずれかに備えている金型を用いて成形するようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、射出成形用金型およびこの金型を用いた射出発泡成形体の製造方法に関する。
化学発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(以下、「発泡性溶融樹脂」と記す)をキャビティ内に射出充填したのち、可動型をわずかに後退移動させて発泡処理を行うようにした射出発泡成形方法において、得られる成形体表面に破泡跡を生じさせない成形方法として、いわゆるガスカウンタープレッシャー法と呼ばれる成形方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
これは、金型キャビティ内に予め発泡圧以上の圧力のガスを充填し、このガスによって金型キャビティ内を保圧しておき、保圧された状態の金型キャビティ内に射出機から発泡性溶融樹脂を射出充填し、その後金型キャビティ内からガスを抜くようになっている。
すなわち、ガスカウンタープレッシャー法は、金型内に発泡性溶融樹脂を射出する直前に、金型キャビティ内にガスを充填することによって、キャビティ内を発泡圧力以上の高圧にし、次に発泡性溶融樹脂をキャビティ内に射出するため、樹脂流動先端部で発泡ガスの気泡が飛び出さない。したがって、成形体表面は、全面にわたって平滑になるとともに、発泡性溶融樹脂を充填完了後に金型内の加圧ガスを金型外に抜くようになっているため、成形体内部に体積収縮分に相当する起泡力が発生し、成形体表面のヒケを防ぐことが出来るという利点を備えている。
特開2005-153446号公報
しかし、従来のガスカウンタープレッシャー法では、ガス注入箇所や注入箇所数の不明確さ、ガス注入管の長さや口径及び形状により圧力損失や流量差及び流速差が生じて、注入圧力とキャビティ内圧力とに差ができたり、ガスの温度や注入タイミングのズレ或いはシール方法などで本来のガス圧力が有効に使われなかったりするなど、ガスの圧力制御が満足に出来ていないのが現状である。
また、ガス(例えばCO2)ボンベ或いは圧縮空気源についても、金型への配管方法や配管長さ、ボンベ保管,メンテナンスなど管理するにも手間がかかるなどの問題もある。また、ガスの場合、使用量も多くなり金額がかさばる等の問題もある。
本発明は、上記事情に鑑みて、金型内にガスを充填しなくてもガスカウンタープレッシャー法による射出発泡成形を行なうことができる射出成形用金型およびこの金型を用いた発泡成形体の製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明にかかる射出成形用金型(以下、「本発明の金型」と記す)は、型閉め状態のとき、型内でスライド可能で、型閉め完了までは、キャビティの型面から後退した状態に保持され、型閉め完了後から樹脂充填前の間に、その端面を前記キャビティの型面に一致させるようにスライドして、キャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧に加圧可能なスライド型を可動型および固定型の少なくともいずれかに備えていることを特徴としている。
本発明の金型は、型閉め状態で、キャビティ内の空気を排気可能な排気流路を備えている構成、スライド型が型開き後、製品を突き出す方向に作動する構成としてもよい。
本発明にかかる射出発泡成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記す)は、上記本発明の金型を、スライド型がキャビティの型面から後退した状態で型閉めしたのち、型閉め状態を保持しながら、スライド型をその端面がキャビティの型面に一致するようにスライドさせてキャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定の加圧状態にして、化学発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をキャビティ内に射出充填するとともに、射出充填開始直前から充填完了直後の間でキャビティ内の空気の一部を排気してキャビティ内の気圧を減圧したのち、可動型をわずかに後退移動させて発泡処理を行う工程を備えていることを特徴としている。
本発明の製造方法において、スライド型の移動によって、加圧されるキャビティ内の気圧は、得ようとする成形体の形状、発泡性樹脂組成物の化学発泡剤の配合量等によって適宜決定され、(大気圧+0.05)MPa以上であれば特に限定されないが、(大気圧+0.05)MPa以上(大気圧+1)MPa以下とすることが好ましい。
すなわち、キャビティ内の気圧が(大気圧+1)MPaを超えると、気密性や移動型に関して相当の精度で金型加工をしなくてはならず、少しでもバランスを崩すと金属どうしのカジリや焼き付きが発生する虞がある。
したがって、金型の剛性アップや移動型の高強度化が必要になり、かつ、高精度のシール材やシール方法が必要となり、金型製作のコストアップにつながりやすい。
一方、低圧(大気圧+0.05)MPa未満であると、気密性や金型の剛性などには問題ないが、得られる発泡成形品の表面にスワールマークやシルバーと言われる泡が破裂した連続模様が発生し外観不良の大きな原因となる。
なお、(大気圧+0.05)MPaとは、圧力計のゲージ圧0.05MPa、(大気圧+1)MPaとはゲージ圧1MPaと略同じである。
上記充填開始直前とは、射出充填開始前2秒以内を意味し、好ましくは0.5秒以内である。また、上記充填完了直後とは、射出充填完了から2秒以内を意味し、好ましくは0.5秒以内である。
本発明において、上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,プロピレン/エチレンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
化学発泡剤としては、特に限定されないが、アゾジカルボンアミド(有機化合物)や重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩(無機化合物)などが挙げられる。
また、上記熱可塑性樹脂組成物には、化学発泡剤以外に、必要に応じて、公知の、発泡助剤、発泡核剤、発泡成形安定剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、難燃剤、架橋剤および/または充填剤を配合することができる。
因みに、発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸塩、モンタン酸(オクタコサン酸のことである)カルシウム、モンタン酸亜鉛などのモンタン酸塩等の高級脂肪酸金属塩、尿素もしくは尿素系化合物、パラフィン、その他ステアロアミド等が挙げられる。
発泡核剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の無機フィラー等が挙げられる。
また、本発明の金型は、キャビティ内の気密性が高いことが好ましく、可動型と固定型との当たり面では、Oリングやパッキンによるシールまたは凸凹によるハメアイシールなどを施し、固定部には、Oリングやパッキンによるシール、スライドコアや突き出しピンなどの金属どうしの摺動面などは精密なハメアイ加工を施すことがこのましい。
射出機の射出ノズルに関しては、ノズルタッチ面にOリングやパッキンによるシールまたは凸凹によるハメアイシールなどを施して気密性を高め、シャットオフバルブなどで射出スクリュ側への気密性を高めることが好ましい。
キャビティ内の空気圧の調整は、スライド型の移動ストロークや、可動型の型閉め時の移動距離を調整することによって行なうことができる。すなわち、スライド型の移動距離や可動型の型閉め時の移動距離を大きくすれば、キャビティ内の空気圧を大きくすることができる。
本発明の金型は、以上のように、型閉め状態のとき、型内でスライド可能で、型閉め完了までは、キャビティの型面から後退した状態に保持され、型閉め完了後から樹脂充填前の間に、その端面を前記キャビティの型面に一致させるようにスライドして、キャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧に加圧可能なスライド型を可動型および固定型の少なくともいずれかに備えているので、ガス注入しなくてもガスカウンタープレッシャー法を用いた射出発泡成形が可能になる。
したがって、金型構造が簡易化され、金型コストを低減できるとともに、ガスボンベ,圧縮空気源などのガス発生装置などが不要となりランニングコストも低減できる。
しかも、スライド型の移動だけであるので、キャビティ内のガス圧の制御も容易にできる。
また、この型構造では圧縮成形にも活用出来るし、圧縮拡大成形或いは部分拡大成形等、型の拡縮を利用する成形法にも利用可能である。
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかる射出成形用金型の第1の実施の形態をあらわしている。
図1〜図3に示すように、この金型Aは、板状の発泡成形体Wを成形するためのものであって、固定型1aと可動型2aとを備えている。
固定型1aは、図2および図3に示すように、スプルー10を備え、可動型2aは、可動型本体3aと、3つのスライド型4aとを備えている。
可動型本体3aは、固定型1aと閉合することによって図2(b)、(c)および図3(a)に示すキャビティK1を形成する凹部31を備えるとともに、図1に示すように、凹部31の周囲のパーティング面32にシリコーン樹脂製Oリング33が装着されている。
また、可動型本体3aには、後述するスライド型操作板41が凹部31方向にスライド自在に収容される操作板収容部34が設けられているとともに、操作板収容部34から凹部31に向かって3本のスライド型挿通穴(以下、「挿通穴」とのみ記す)35が平行に穿設されている。
スライド型操作板41は、油圧シリンダー42によって凹部31方向に進退自在になっていて、3本のスライド型4aの一端がそれぞれ固定されている。
各スライド型4aは、一端にキャビティ形成面40を備える円柱状をしていて、スライド型挿通穴35に挿通されて、挿通穴35の軸方向へスライド自在となっているとともに、その外周面にスライド型4aとスライド型挿通穴35との間で挟まれてキャビティK1内を気密に保つOリング43が外嵌されている。
また、この金型Aは、図示していないが、ウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれキャビティK1内の空気圧を減圧させるための排気管バルブが設けられている。
なお、図2,3中、Nは射出機のノズルである。
この金型Aは、上記のようになっており、以下のようにして発泡成形体を成形することができる。
(1)図2(a)に示すように、油圧シリンダー42を操作してスライド型4aがそのキャビティ形成面40をキャビティ壁面より後退した状態にして、可動型2aを固定型1a側に移動させて図2(b)に示すように型閉めする。
(2)図2(c)に示すように、油圧シリンダー42を操作してスライド型4aをキャビティ形成面40がキャビティ壁面に一致する位置まで固定型1a方向に移動させる。すなわち、このスライド型4aの移動によって、キャビティK1内の空気圧が(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態になる。
(3)このようにして(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態のキャビティK1内に図3(a)に示すように発泡性溶融樹脂Pを射出充填する。そして、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく開閉作動させてキャビティ内の空気圧を大気圧近傍まで低減するようにキャビティK1内の空気を排気する。
(4)図3(b)に示すように、可動型2aを少し型開き方向に移動させてキャビティ容量を拡大して発泡性溶融樹脂Pを発泡させる。
(5)発泡性溶融樹脂Pを冷却硬化させたのち、図3(c)に示すように、型を完全に開いくとともに、油圧シリンダー42を操作してスライド型4aの先端が凹部31内に突突き出すことによって発泡成形体W1を突き出す。
この金型Aを用いた発泡成形体の製造方法によれば、ガスをキャビティ内に注入しなくても型閉め後にスライド型4aをキャビティ方向に移動させることによってキャビティK1内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧にできるので、加圧ガスを別途キャビティ内に充填しなくても、従来のガスカウンタープレッシャー法と同様に樹脂流動先端部で発泡ガスの気泡が飛び出さず表面が平滑な発泡成形体が安定して得られる。しかも、
加圧ガスを別途用意しなくてもよいとともに、金型内に加圧ガスの充填経路を設ける必要がなく金型が簡素化され、金型コストおよび製造コストを低減することができる。
また、スライド型4aが突き出しピンの働きをするようになっているので、別途突き出しピンを設ける必要がなく、金型をより簡略化することができる。
図4は、本発明にかかる射出発泡金型の第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この金型Bは、固定型1bのパーティング面に嵌め合い突条11が設けられていて、可動型2bのパーティング面にこの嵌め合い突条11が嵌合する嵌め合い溝32aが設けられ、嵌め合い溝32a内にOリング32bがはめ込まれている以外は、上記金型Aと同様になっている。
図5は、本発明にかかる射出発泡金型の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この金型Cは、固定型1cのパーティング面に嵌め合い突条11および嵌め合い溝12が設けられていて、可動型2cのパーティング面にこの嵌め合い突条11が嵌合する嵌め合い溝32aおよび嵌め合い溝12に嵌まり込む嵌め合い突条32cが設けられている以外は、上記金型Aと同様になっている。
図6〜図8は、本発明にかかる射出成形用金型の第4の実施の形態をあらわしている。
図6〜図8に示すように、この金型Dは、箱型の発泡成形体を成形する金型であって、固定型1dと可動型2dとを備えている。
固定型1dは、図6および図7に示すように、スプルー10と、可動型2dとの間でキャビティK2を形成する凹部14とを備えている。
可動型2dは、可動型本体3dと、スライド型4dと、4つのスライド型操作桿(以下、「操作桿]とのみ記す」)5a、5a、5b、5bとを備えている。
可動型本体3dは、スライド型嵌合穴35と、4つの操作桿ガイド穴36とを備えている。
スライド型嵌合穴35は、固定型1d側で開口し、スライド型4dがキャビティ方向にスライド自在に嵌め込まれている。
4つの操作桿ガイド穴36は、2つずつ対向して設けられ、一端が外部に開口し、他端がスライド型嵌合穴35に開口している。
スライド型4dは、図8に示すように、一端がキャビティ壁面の一部を形成する平面状をしたキャビティ形成面44、他端が中心軸を挟んで対称に傾斜する2つの傾斜面46、46で形成されていて、中間部に操作桿5aの先端部が入り込む、スライド穴45が穿設されている。
スライド型4dのキャビティK2側の端部外周面には、スライド型4dとスライド型嵌合穴35との間で挟まれてキャビティK2内を気密に保つOリング47が外嵌されている。
スライド穴45は、キャビティ形成面44側の壁面45aがキャビティ形成面44と平行になっていて、この壁面45aに対向する壁面が入口から内側に向かって徐々に壁面45aに近づく対称な2つの傾斜面45b、45bで構成されている。
傾斜面45bと傾斜面46とは、スライド型4dのスライド軸に対し同じ角度の傾斜角を有している。
また、傾斜面45bには、それぞれ、図8に示すように、後述する操作桿5aのガイドレールRが傾斜方向に平行に固着されている。
キャビティK2に近い側の2つの操作桿5a、5aは、キャビティK2に近い側の操作桿ガイド穴36にスライド自在に挿通されているとともに、その先端部がスライド型4dのスライド穴45内に臨んでいる。
各操作桿5a、5bは、空圧シリンダー(図示していない)の働きによって図8に示す矢印方向に進退するようになっている。
操作桿5aの先端部は、対向する傾斜面45b、45bと同じ角度で傾斜する傾斜面51を備える断面楔形をしていて、傾斜面51にガイドレールRにスライド自在に支持されるスライダーSが固着されている。
一方、キャビティK2から遠い側の2つの操作桿5b、5bは、キャビティK2から遠い側の操作桿ガイド穴36にスライド自在に挿通されているとともに、その先端部が対向する傾斜面46,46と同じ角度で傾斜する傾斜面52,52を備える断面楔形をしている。
そして、傾斜面52,52にはオイルレスプレート52aが嵌め込まれて、このオイルレスプレート52aが傾斜面46にスライド自在に当接している。
また、この金型Dは、図示していないが、ウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれキャビティK2内の空気圧を減圧させるための排気管バルブが設けられている。
この金型Dは、上記のようになっており、以下のようにして発泡成形体を成形することができる。
(1)図6(a)に示すように、操作桿5a、5bをそれぞれ矢印の方向に操作してスライド型4dを図6(a)に示す矢印方向にスライドさせ、図6(b)に示すようにそのキャビティ形成面44をキャビティ壁面より後退させた状態にした状態で、可動型2dを固定型1d側に移動させて型閉めする。
(2)図6(c)に示すように、操作桿5a、5aをスライド型4dから後退させ、操作桿5b、5bをスライド型4d方向に進出させて、スライド型4dのキャビティ形成面44をキャビティ壁面に一致するように固定型1d方向に移動させる。すなわち、このスライド型4dの移動によって、キャビティK2内の空気圧が(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態になる。なお、このとき、スライド型4dがキャビティK2内の圧力によって後退しないように、操作桿5b、5bには矢印で示す方向に圧力を加え続けた状態にしておく。または、ロック手段を設けて操作桿5b、5bの固定するようにしても構わない。
(3)図7(a)に示すように操作桿5b、5bに矢印で示す方向に圧力を加え続けた状態で、上記のようにして(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態のキャビティK2内に発泡性溶融樹脂Pを射出充填する。そして、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく作動させて圧力を排気解放させる。
(4)図7(b)に示すように、可動型2dを少し型開き方向に移動させてキャビティ容量を拡大して発泡性溶融樹脂Pを発泡させる。
(5)発泡性溶融樹脂Pを冷却硬化させたのち、図7(c)に示すように、型を完全に開いて発泡成形体W2を取り出す。
図9は、本発明にかかる射出発泡金型の第5の実施の形態をあらわしている。
図9に示すように、この金型Eは、可動型2eのスライド型4eが可動型本体3eに設けられたボールねじ30eの働きによって進退するようになっている以外は、上記金型Dと同様になっている。
図10および図11は、本発明にかかる金型の第6の実施の形態をあらわしている。
図10および図11に示すように、この金型Fは、円板状の発泡成形体W3を成形する金型であって、固定型1fと可動型2fとを備えている。
固定型1fは、固定型本体7と、スライド型4fと、スライド型操作桿8a,8bとを備えている。
固定型本体7は、スプルー70が設けられたスプルー部71の周囲に筒状をしたキャビティK3側で開口するスライド型嵌合穴73が設けられている。
また、固定型本体7の外壁面には、スライド型嵌合穴73に連通する2つの操作桿ガイド穴74が対面するように穿設されている。
スライド型4fは、スライド型嵌合穴73に嵌合される筒状をしていて、一端がキャビティ壁面の一部を形成する平面状をしたキャビティ形成面40fとなっているとともに、2つのスライド穴48,49がスライド型4fの軸方向にずれた位置に穿設されている。
キャビティK3側のスライド穴48は、キャビティ形成面40f側の壁面48aがキャビティ形成面40fと平行になっていて、この壁面48aに対向する壁面48bが入口から内側に向かって徐々に壁面48aに近づく傾斜面となっている。
他方のスライド穴49は、キャビティ形成面40f側の壁面49aが壁面48bに平行な傾斜面となっていて、この壁面49aに対向する壁面49bがキャビティ形成面40fと平行になっている。
また、壁面48bおよび壁面49aには、図示していないが、金型Dの傾斜面45bと同様のガイドレールが設けられている。
各操作桿8a,8bは、それぞれ空圧シリンダー(図示していない)の働きによって図10(a)に示すX−Y方向に進退するようになっている。
操作桿8a,8bの先端部は、対向する壁面48b、49aと同じ角度で傾斜する傾斜面81を備える断面楔形をしていて、傾斜面81にそれぞれ図示していないが壁面48bおよび壁面49aのガイドレールにスライド自在に支持されるスライダーが固着されている。
この金型Fは、上記のようになっており、以下のようにして発泡成形体を成形することができる。
(1)図10(a)に示すように、操作桿8a,8bを矢印方向に操作してスライド型4fを図10(a)に示す矢印方向にスライドさせ、図10(b)に示すように、そのキャビティ形成面40fをキャビティ壁面より後退させた状態にした状態で、可動型2fを固定型1f側(矢印方向)に移動させて型閉めする。
(2)図10(c)に示すように、操作桿8aをスライド型4fから後退させ、操作桿8bをスライド型4f方向に進出させて、スライド型4fのキャビティ形成面40fをキャビティ壁面に一致するように固定型1f方向に移動させる。すなわち、このスライド型4fの移動によって、キャビティK3内の空気圧が(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態になる。なお、このとき、スライド型4fがキャビティK3内の圧力によって後退しないように、操作桿8bには矢印で示す方向に圧力を加え続けた状態にしておく。または、ロック手段を設けて操作桿8bの固定するようにしても構わない。
(3)図11(a)に示すように、操作桿8bには矢印で示す方向に圧力を加え続けた状態で、上記のようにして(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧まで加圧された状態のキャビティK3内に発泡性溶融樹脂Pを射出充填する。そして、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく作動させて圧力を排気解放させる。
(4)図11(b)に示すように、可動型2dを少し型開き方向に移動させてキャビティ容量を拡大して発泡性溶融樹脂Pを発泡させる。
(5)発泡性溶融樹脂Pを冷却硬化させたのち、図11(c)に示すように、型を完全に開いて発泡成形体Wを取り出す。
図12は、本発明にかかる金型の第7の実施の形態をあらわしている。
図12に示すように、この金型Gは、第4の実施の形態の金型Dの固定型1dの代わりに、第6の実施の形態の金型Fの固定型1fの構造を採用した以外は、上記金型Dと同様になっている。
この金型Gの構造にすれば、可動型2dおよび固定型1fのそれぞれにスライド型4d、4fを設けるようにしたので、キャビティ内の空気圧をより高いものにすることができる。
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
縦300mm,横200mm,高さ30mm,厚さ5mmの箱形状で422.5cm3のキャビティ容積(発泡前の状態)を持つ図6〜図8に示す金型Dを用いて以下のようにして発泡成形体を成形した。
すなわち、金型Dが開き、先に成形された発泡成形体Wが排出され一定時間経過後に図6(a)に示すように金型Dが閉まり始める時、射出成形機側からの型閉開始信号により
スライド型4dを0.5秒間かけて後退させながら可動型2dを固定型1d方向に移動させて図6(b)に示すように型閉め状態にした。
つぎに、型閉め完了から0.5秒後に操作桿5a,5bを操作して1秒かけてスライド型4dをキャビティ形成面44がキャビティ壁面に一致するように移動させてキャビティK2内の空気圧を(大気圧+0.8)MPaとした。
1秒間その状態で圧力保持((大気圧+0.77)MPa〜(大気圧+0.75)MPa)した後、図7(a)に示すように、型閉完了信号の制御にて以下に記す組成の発泡性溶融樹脂PをキャビティK2内に射出充填し、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある圧力の排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく作動させて圧力を排気解放させた。
その後、図7(b)に示すように、発泡倍率が5倍になるよう金型Dを型開きして発泡処理し、冷却工程を経て図7(c)に示すように、発泡成形体を得た。
〔発泡性樹脂組成物〕
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製 MFR30g/10分、融点160℃)100重量部と化学発泡剤である重炭酸ナトリウム6重量部との混合物。
(実施例2)
φ250mm,厚さ1.5mmの円盤形状で73.6cm3のキャビティ容積を持つ(発泡前の状態)図10および図11に示す金型Fを用いて以下のようにして発泡成形体を成形した。
すなわち、金型Fが開き、先に成形された発泡成形体かが排出され一定時間経過後に図10(a)に示すように金型Dが閉まり始める時、射出成形機側からの型閉開始信号によりスライド型4fを0.5秒間をかけて後退させながら可動型2fを固定型1f方向に移
動させて図10(b)に示すように型閉め状態にした。
つぎに、型閉め完了から0.5秒後に操作桿8a,8bを操作して1秒かけてスライド型4fをキャビティ形成面40fがキャビティ壁面に一致するように移動させてキャビティK3内の空気圧を(大気圧+0.5)MPaとした。
1秒間その状態で圧力保持((大気圧+0.48)MPa〜(大気圧+0.45)MPa)した後、図11(a)に示すように、型閉完了信号の制御にて実施例1と同じ組成の発泡性溶融樹脂PをキャビティK3内に射出充填し、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある圧力の排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく作動させて圧力を排気解放させた。
(実施例3)
縦200mm,横100mm,厚さ1mmの板形状で20.0cm3のキャビティ容積を持つ(発泡前の状態)図1〜図3に示す金型Aを用いて以下のようにして発泡成形体を成形した。
すなわち、金型Aが開き、先に成形された発泡成形体かが排出され一定時間経過後に図2(a)に示すように金型Aが閉まり始める時、射出成形機側からの型閉開始信号によりスライド型4aを0.5秒間をかけて後退させながら可動型2aを固定型1a方向に移動させて図2(b)に示すように型閉め状態にした。
つぎに、型閉め完了から0.5秒後に油圧シリンダー42を操作して1秒かけてスライド型4aをキャビティ形成面40がキャビティ壁面に一致するように移動させてキャビティK1内の空気圧を(大気圧+0.3)MPaとした。
1秒間その状態で圧力保持((大気圧+0.27)MPa〜(大気圧+0.25)MPa)した後、図3(a)に示すように、型閉完了信号の制御にて実施例1と同じ組成の発泡性溶融樹脂PをキャビティK1内に射出充填し、充填完了直前にウェルド近傍及び溶融樹脂流動末端部にそれぞれ設けてある圧力の排気管バルブを型閉開始信号の制御でタイミングよく作動させて圧力を排気解放させた。
その後、図3(b)に示すように、発泡倍率が3倍になるよう金型Aを型開きして発泡処理し、冷却工程を経て図3(c)に示すように、発泡成形体を得た。
(比較例1)
実施例1で示した図6に示す金型Dに類似した縦300mm,横200mm,高さ30mm,厚さ5mmの箱形状で422.5cm3(発泡前の状態)のキャビティ容量を有し、加圧力を得る可動型の移動制御など行なわず、また、それらの構成がない一般的な金型でかつ一般的な加工精度で製作されたものを用いて以下のようにして発泡成形体を得た。
すなわち、型閉め後キャビティ内にコンプレッサーの圧縮空気((大気圧+0.5)MPa)を3秒間加圧して封入した。1秒間その状態で圧力保持((大気圧+0.49)MPa〜(大気圧+0.01)MPa以下)した後、型閉完了信号の制御にて実施例1と同様の発泡性樹脂組成物を射出充填し、樹脂充填直後から充填完了までの間に排気解放をパーティング面から排気溝を通して行った。その後、発泡倍率が1.5倍になるよう金型を型開きして発泡処理し、冷却工程を経て発泡成形体を得た。
なお、 圧力保持は、封入直後に(大気圧+0.01)MPa以下になった。
上記のようにして得られた実施例1〜3の発泡成形体および比較例1の発泡成形体について、最大ヒケ(成形品の表面に発生する凹み現象をいう。)量、表面破泡有無、光沢度、実発泡倍率を調べ、その結果を表1に示した。
なお、最大ヒケ量は、ディプスゲージを用いて、発泡成形品の表面の平坦部から凹みの最深部の深さを測定した。
光沢度は、光沢度計を用い、発泡成形品の表面に入射角度60°の光を当てた時の反射光の量を測定して求めた(JIS−Z−8741−1959 光沢度測定方法)。
実発泡倍率は、以下の式に基づいて求めた。
発泡成形品の体積( cc )÷発泡成形品の重量( g ) =発泡倍率 ( cc/g )
Figure 2008080763
本発明の射出成形用金型およびこの金型を用いた発泡成形体の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、自動車内装材,家電部品,家庭用品,工業部品などの製造に好適に用いることができる。
本発明にかかる射出成形用金型の第1の実施の形態をあらわす一部切欠断面斜視図である。 図1の射出成形用金型を用いた発泡成形体の製造方法を、金型の動作順に説明する断面図である。 図2の後工程の金型の動作を順に説明する断面図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第2の実施の形態をあらわす要部断面斜視図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第3の実施の形態をあらわす要部断面斜視図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第4の実施の形態であって、この金型を用いた発泡成形体の製造方法を、金型の動作順に説明する断面図である。 図6の後工程の金型の動作を順に説明する断面図である。 図6および図7の金型のスライド型の動作機構を説明する切欠断面斜視図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第5の実施の形態あらわす要部断面図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第6の実施の形態であって、この金型を用いた発泡成形体の製造方法を、金型の動作順に説明する断面図である。 図10の後工程の金型の動作を順に説明する断面図である。 本発明にかかる射出成形用金型の第7の実施の形態をあらわす断面図である。
符号の説明
A,B,C,D,E,F,G 金型
1a,1b,1c,1d,1e,1f 固定型
2a,2b,2c,2d,2e,2f 可動型
4a,4b,4c,4d,4e,4f スライド型
K1,K2,K3 キャビティ
W1,W2,W3 発泡成形体
P 発泡性溶融樹脂(化学発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂組成物)

Claims (4)

  1. 型閉め状態のとき、型内でスライド可能で、型閉め完了までは、キャビティの型面から後退した状態に保持され、型閉め完了後から樹脂充填前の間に、その端面を前記キャビティの型面に一致させるようにスライドして、キャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定圧に加圧可能なスライド型を可動型および固定型の少なくともいずれかに備えていることを特徴とする射出成形用金型。
  2. 型閉め状態で、キャビティ内の空気を排気可能な排気流路を備えている請求項1に記載の射出成形用金型。
  3. スライド型が型開き後、製品を突き出す方向に作動する請求項1または請求項2に記載の射出成形用金型。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の射出成形用金型を、スライド型がキャビティの型面から後退した状態で型閉めしたのち、型閉め状態を保持しながら、スライド型をその端面がキャビティの型面に一致するようにスライドさせてキャビティ内の気圧を(大気圧+0.05)MPa以上の所定の加圧状態にして、化学発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をキャビティ内に射出充填するとともに、射出充填開始直前から充填完了直後の間でキャビティ内の空気の一部を排気してキャビティ内の気圧を減圧したのち、可動型をわずかに後退移動させて発泡処理を行う工程を備えていることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010083124A (ja) * 2008-09-30 2010-04-15 Mitac Precision Technology (Kunshan) Corp 微細発泡成形品の射出成形システム及びその方法
JP2010264645A (ja) * 2009-05-14 2010-11-25 Mazda Motor Corp 発泡樹脂成形品の成形方法および成形装置

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