JP2008075833A - 転がり軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】突き当てられた二個の内輪の端面間を通って外輪と内輪の間に異物が侵入することを防止する密封装置を有し、その密封装置が組付容易な構成になっている転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】外輪２と、二個の内輪３と、外輪２と各内輪３の間に設けられる複数の転動体４とを有する転がり軸受装置１であって、外輪２と二個の内輪３の間に設けられる密封装置５を有している。密封装置５は、外輪２の二列の軌道面２ａ間における内周面に嵌合される金属環５ａと、金属環５ａから各内輪３に向けて延出する二つのシールリップ５ｂ，５ｃとを有し、一つのシールリップ５ｂが一つの内輪３の外周面に摺接し、他のシールリップ５ｃが他の内輪３の外周面に摺接する構成になっている。
【選択図】図２

Description

本発明は、転がり軸受装置に関し、例えば自動車の車輪の懸架装置に取付けられるホイール用ハブユニットの転がり軸受装置に関する。

従来、様々な転がり軸受装置が知られており、例えば特許文献１，２に記載の転がり軸受装置が知られている。これら転がり軸受装置は、一個の外輪と、二個の内輪と、これら外輪と内輪の間に設けられる複数の転動体を有している。そして二個の内輪の突き当てられた端面間には、これらをシールするシール部材が設けられていた。したがって二個の内輪間から泥水などが軸受内に侵入することがシール部材によって防止され、泥水の侵入による軸受内のグリースの劣化や、泥水等に含まれる異物による軸受装置の破損などが防止されていた。しかしこの転がり軸受装置は、組付け性が悪いなどの問題を有していた。
特開２００１−２８９２５５号公報 特開平１１−３２１２１１号公報

そこで本発明は、突き当てられた二個の内輪の端面間を通って外輪と内輪の間に異物が侵入することを防止する密封装置を有し、その密封装置が組付容易な構成になっている転がり軸受装置を提供することを課題とする。

前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える転がり軸受装置であることを特徴とする。
請求項１に記載の発明によると、外輪と二個の内輪の間に設けられる密封装置を有している。そして密封装置は、外輪の二列の軌道面間における内周面に嵌合される金属環と、その金属環から各内輪に向けて延出する二つのシールリップとを有し、一つのシールリップが一つの内輪の外周面に摺接し、他のシールリップが他の内輪の外周面に摺接する構成になっている。

したがって密封装置は、外輪の内周に嵌合されることで外輪に組付けられる。そして外輪の内周側に内輪を挿入することで、シールリップが内輪の外周面に摺接可能に当接する。そのため密封装置は、外輪と内輪との間に容易に組付けられる。そして突き当てられた二個の内輪の端面間を通って外輪と内輪との間に侵入しようとするオイルや異物などの侵入を密封装置によって防止することができる。また密封装置は、金属環が外輪に嵌合されるために、安定良く外輪に組付けられる。また二個のシールリップは、二個の内輪に別々に摺接するため、各内輪に対し確実に摺接する。これにより密封装置のシール性が高くなっている。

請求項２に記載の発明によると、内輪は、他の内輪に突き当てられる端面側の外周面に面取りを有し、その面取りにシールリップが摺接される構成になっている。したがって内輪を外輪に挿入することで、シールリップが内輪の面取りに当接する。そのためシールリップは、確実に内輪の面取り位置にて内輪に対し摺接する。その結果、密封装置のシール性が安定する。

（実施の形態１）
実施の形態１を図１〜３にしたがって説明する。図１に示すように転がり軸受装置１は、トラック用の駆動輪支持装置１０などに使用される。駆動輪支持装置１０は、フルフローティングタイプであって、車軸管１１と、車軸管１１の外周面に取付けられる転がり軸受装置１と、車軸管１１に挿通される駆動軸１２を有している。転がり軸受装置１の外輪２の外周面には、ハブ輪１５が固定される。ハブ輪１５は、駆動軸１２の先端部に形成されたフランジ１２ａとボルト１４を介して固定される。

ハブ輪１５の車両側には、ブレーキロータ１７が取付けられ、ハブ輪１５のフランジ部には、駆動輪１６が取付けられる。駆動軸１２は、車軸管１１を通ってデファレンシャルと連結されており、回転することで、ハブ輪１５、駆動輪１６、ブレーキロータ１７および転がり軸受装置１の外輪２とともに回転する。

転がり軸受装置１は、図２に示すように一個の外輪２と、二個の内輪３と、複数の転動体４と、外輪２と内輪３の間に設けられる密封装置５を有している。外輪２は、内周面に二列の軌道面２ａを有している。内輪３は、軌道面２ａに対向する外周面に軌道面３ｂを有している。軌道面２ａと軌道面３ｂの間には、複数の転動体４が転動可能に設けられている。これら転動体４は、円錐ころであって、保持器７によって周方向に所定間隔で保持されている。

外輪２は、図２に示すように二列の軌道面２ａ間に肩部２ｂを有している。肩部２ｂに対向する位置には、二個の内輪３の端面（内輪小端面）３ａ同士が突き当てられている。内輪３の端面３ａ側の外周面には、全周に渡って面取り３ｃが形成されている。この面取り３ｃには、熱処理や旋削による表面仕上げが施されていても良いが、表面処理が施されていなくても良い。

密封装置５は、図３に示すように突き当てられた二個の内輪３の端面３ａ間を通って外輪２と内輪３の間に侵入しようとするオイルや異物などの侵入を防止する装置であって、金属製の金属環５ａと、二つのシールリップ５ｂ，５ｃを一体に有している。金属環５ａは、円筒状の円筒部５ａ１と、円筒部５ａ１の軸方向両端部から径方向中心に張出す張出部５ａ２，５ａ３を一体に有している。円筒部５ａ１は、外輪２の肩部２ｂに嵌合されて肩部２ｂに固定される。張出部５ａ２，５ａ３は、円筒部５ａ１の端部全周に形成されており、ドーナツ円盤状になっている。

シールリップ５ｂ，５ｃは、図３に示すように弾性部材から形成されており、張出部５ａ２，５ａ３の先端部に固着される固着部５ｂ１，５ｃ１と、固着部５ｂ１，５ｃ１から内輪３に向けて延出する二つのリップ部５ｂ２，５ｂ３，５ｃ２，５ｃ３を有している。リップ部５ｂ２，５ｂ３，５ｃ２，５ｃ３は、固着部５ｂ１，５ｃ１からＹ字状に分岐して内輪３の面取り３ｃに摺接する。

左右両側位置のリップ部５ｂ２，５ｃ２は、図３に示すように先端部が内輪３の中央に向いているため、内輪３と外輪２の間に封入されたグリースが漏れ出ることを好適に防止する。一方、中央寄り位置のリップ部５ｂ３，５ｃ３は、先端部が内輪３の端面３ａ側に向いているため、内輪３の端面３ａ間から侵入してきた異物が軸受内に侵入することを好適に防止する。

密封装置５は、先ず図３に示すように外輪２の肩部２ｂに固定される。次に、外輪２の内周側に二つの内輪３を軸方向両側から挿入することにより、二個の内輪３の面取り３ｃに当接する。このため密封装置５は、位置合わせすることなく外輪２と内輪３の間に設けられ、面取り３ｃに摺接可能に当接する。

図２に示すように外輪２の両端部には、ゴム製のシールリング８が取付けられる。シールリング８は、外輪２の端部と内輪３の端部の間をシールして軸受内をシールする。そしてシールされた外輪２と内輪３の間にグリースが封入される。

転がり軸受装置１の内輪３は、図１に示すように車軸管１１の外周側に設置され、ボルト１３によって車軸管１１に取付けられる。そのため車軸管１１と内輪３の間には、わずかな隙間が形成され、ルーズな嵌め合いになっている。そのため車軸管１１側からデフオイルがその隙間内に流れ込んだり、外部からの泥水がその隙間内に流れ込んだりすることがある。そのためデフオイルや泥水や、これらに含まれている異物などが内輪３の内周側から端面３ａ間を通って軸受内に侵入するおそれがある。これに対して転がり軸受装置１は、密封装置５を有しており、密封装置５によって軸受内へのデフオイルや異物などの侵入を防止することができる。

以上のようにして実施の形態１が形成されている。すなわち図２に示すように外輪２と二個の内輪３の間に設けられる密封装置５を有している。そして密封装置５は、外輪２の二列の軌道面２ａ間における内周面に嵌合される金属環５ａと、金属環５ａから各内輪３に向けて延出する二つのシールリップ５ｂ，５ｃとを有し、一つのシールリップ５ｂが一つの内輪３の外周面に摺接し、他のシールリップ５ｃが他の内輪３の外周面に摺接する構成になっている。

したがって密封装置５は、外輪２の内周に嵌合されることで外輪２に組付けられる。そして外輪２の内周側に内輪３を挿入することで、シールリップ５ｂ，５ｃが内輪３の外周面に摺接可能に当接する。そのため密封装置５は、外輪２と内輪３との間に容易に組付けられる。そして突き当てられた二個の内輪３の端面３ａ間を通って外輪２と内輪３との間に侵入しようとするオイルや異物などの侵入を密封装置５によって防止することができる。また密封装置５は、金属環５ａが外輪２に嵌合されるために、安定良く外輪２に組付けられる。また二個のシールリップ５ｂ，５ｃは、二個の内輪３に別々に摺接するため、各内輪３に対し確実に摺接する。これにより密封装置５は、シール性が高くなっている。

内輪３は、図３に示すように他の内輪３に突き当てられる端面３ａ側の外周面に面取り３ｃを有し、その面取り３ｃにシールリップ５ｂ，５ｃが摺接される構成になっている。したがって内輪３を外輪２に挿入することで、シールリップ５ｂ，５ｃが内輪３の面取り３ｃに当接する。そのためシールリップ５ｂ，５ｃは、確実に内輪３の面取り３ｃ位置にて内輪３に対し摺接する。その結果、密封装置５のシール性が安定する。

（実施の形態２）
実施の形態２を図４にしたがって説明する。実施の形態２は、実施の形態１と同様に形成されているが、図４に示す密封装置６を図３に示す密封装置５に代えて有している。以下、相違点を中心に実施の形態２について説明する。

密封装置６は、図４に示すように金属製の金属環６ａと、弾性部材から形成された二つのシールリップ６ｂ，６ｃを一体に有している。金属環６ａは、円筒状の円筒部６ａ１と、円筒部６ａ１の軸方向一端部から径方向中心に張出す張出部６ａ２を一体に有している。円筒部６ａ１は、外輪２の肩部２ｂに嵌合されて肩部２ｂに固定される。張出部６ａ２は、円筒部６ａ１の端部全周に形成されてドーナツ円盤状になっている。

シールリップ６ｂ，６ｃは、図３に示すように一端部が張出部６ａ２に固着され、他端部に内輪３の面取り３ｃに摺接するリップ部を有している。したがって密封装置６は、端面３ａ間から軸受内部に侵入しようとする異物の侵入を防止するとともに、各内輪３と外輪２との間に封入されたグリースの漏れを防止する。

（他の実施の形態）
本発明は、実施の形態１，２に限定されず、以下の形態であっても良い。
（１）例えば実施の形態１，２の内輪３は、端面３ａ側の外周面角部に面取りを有していた。しかし面取りを有さず、内輪３の外周面の一部に密封装置のシールリップが摺接される構成になっていても良い。
（２）実施の形態１，２の密封装置５，６は、図３，４に示すように金属環５ａ，６ａと、金属環５ａ，６ａに固着される二つのシールリップ５ｂ，５ｃ，６ｂ，６ｃを有しており、二つのシールリップ５ｂ，５ｃ，６ｂ，６ｃは、それぞれ別々に金属環５ａ，６ａに固着されていた。しかし二つのシールリップが金属環に固着される共通の端部を有している形態であっても良い。
（３）実施の形態１のシールリップ５ｂ，５ｃは、二つのリップ部を有していた。しかし二つのリップ部のいずれか一つのみを有する形態であっても良い。
（４）実施の形態２のシールリップ６ｂ，６ｃは、内輪３に摺接するリップ部を各一つ有していた。しかしシールリップが分岐されて内輪に摺接する二つのリップ部を有している形態であっても良い。
（５）実施の形態２の金属環６ａの張出部６ａ２は、ドーナツ円盤状に形成されており、二つの内輪間を仕切る構成になっていた。しかし貫通孔などを有し、二つの内輪間を仕切らない構成になっていても良い。

駆動輪支持装置の断面図である。 転がり軸受装置の一部断面図である。 密封装置近傍における転がり軸受装置の一部拡大断面図である。 密封装置近傍における実施の形態２の転がり軸受装置の一部拡大断面図である。

符号の説明

１・・・転がり軸受装置
２・・・外輪
２ａ・・・軌道面
２ｂ・・・肩部
３・・・内輪
３ａ・・・端面
３ｂ・・・軌道面
４・・・転動体
５，６・・・密封装置
５ａ，６ａ・・・金属環
５ｂ，５ｃ，６ｂ，６ｃ・・・シールリップ
１０・・・駆動輪支持装置
１１・・・車軸管
１２・・・駆動軸
１５・・・ハブ輪

Claims (2)

1. 内周面に二列の軌道面を有する外輪と、外輪の各軌道面に対向する軌道面を外周面に有する二個の内輪と、前記外輪と前記各内輪の軌道面間に設けられる複数の転動体とを有する転がり軸受装置であって、
   前記外輪と前記二個の内輪の間に設けられる密封装置を有し、その密封装置は、前記外輪の二列の軌道面間における内周面に嵌合される金属環と、その金属環から前記各内輪に向けて延出する二つのシールリップとを有し、一つのシールリップが一つの内輪の外周面に摺接し、他のシールリップが他の内輪の外周面に摺接する構成になっていることを特徴とする転がり軸受装置。
2. 請求項１に記載の転がり軸受装置であって、
   内輪は、他の内輪に突き当てられる端面側の外周面に面取りを有し、その面取りにシールリップが摺接される構成になっていることを特徴とする転がり軸受装置。
   
   

Images