JP2008074820A - インフルエンザ予防用若しくは治療用の経口薬又は健康食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全かつ効果的に、インフルエンザを予防若しくは治療する医薬組成物(特に、経口薬)又は健康食品、及びそれらを用いたインフルエンザ予防方法又は治療方法を提供する。
【解決手段】インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来抗体を含有させて経口薬とし、あるいは健康食品とし、これを経口的に摂取してインフルエンザを予防又は治療する。
【選択図】なし。

Description

本発明は、インフルエンザを予防若しくは治療するのに有効な経口薬又は健康食品、及びそれらを用いたインフルエンザ予防方法又は治療方法に関するものである。
インフルエンザウイルスは、A型、B型及びC型に分類される。特にA型ウイルスには、表面抗原の異なる亜型が突然出現する特異な現象があり、これが数十年周期で発生してインフルエンザの大流行の原因となっている。また、同一亜型内でも毎年のように変異を起こし、それにより小流行を繰り返している。
インフルエンザに対する予防又は治療については、従来、ワクチン及び抗インフルエンザ剤による方法が用いられている。ここで、ワクチンは、鶏の受精卵で増殖させたインフルエンザウイルスを不活化して不活化ワクチンを調製し、これを接種して、体内に抗体を産生させて予防する方法である。また、抗インフルエンザ剤による方法は、インフルエンザウイルス粒子の成熟に必要なノイラミダーゼあるいはイオンチャンネル形成分子であるM2蛋白質に対する阻害剤を利用するものであり、治療目的に留まらず予防剤ともなりうる。
一方、呼吸器疾患の病原体(インフルエンザウイルス等)で免疫したメンドリが産生する卵から調製した免疫グロブリンであって呼吸器疾患の病原体に感染防御能を有する抗体、及びこれを有効成分とする鼻腔又は咽喉内へのスプレー剤については、下記特許文献1で提案されている。
また、呼吸器感染症病原体(コクサッキーウイルス、エコーウイルス等のエンテロウイルス)で免疫して得られた抗体を経口的に摂取して、これらの呼吸器感染症を予防しようとする加工食品、飲料、洗浄液等の感染防御組成物は下記特許文献2で提案されている。
特開昭62−175426号公報 特開平6−345668号公報
インフルエンザを予防又は治療するための前記ワクチンによる方法は、インフルエンザウイルスの感染が気道表面の粘膜上皮細胞に限られているため、血液中に産生される抗体がその効果を発揮し難い面がある。
また、前記抗インフルエンザ剤による方法は、重度の副作用を併発する場合があり、耐性ウイルスの出現も危惧されている。
本発明は、安全かつ効果的に、インフルエンザを予防若しくは治療する医薬組成物(特に、経口薬)又は健康食品、及びそれらを用いたインフルエンザ予防方法又は治療方法を提供することを目的とする。
〔発明の概要〕
前記目的を達成するため、本発明者らは種々検討した結果、意外にも、インフルエンザウイルスに対し反応性を示す鶏卵由来の抗体を「経口的に」摂取することによっても、有効にインフルエンザを予防若しくは治療することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を含むインフルエンザ予防用若しくは治療用の経口薬、である。
また、本発明は、インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を含む健康食品、でもある。
更には、本発明は、インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を、経口的に摂取することを特徴とするインフルエンザの予防若しくは治療方法、でもある。
本発明では、インフルエンザウイルスに対する鶏卵由来抗体を経口的に摂取するので、使い勝手がよく、また、安全性が高い。
また、近年では、鳥インフルエンザが世界各国で大量発生しており、ヒトへの感染による死亡例も多数報告されているが、この鳥インフルエンザの予防若しくは治療へも応用できる。
本発明を更に詳しく説明する。
本発明におけるインフルエンザの予防又は治療の対象については、ヒトをはじめとする哺乳動物、鶏をはじめとする鳥類等に適用することができる。
本発明で、インフルエンザウイルスに対して反応性を示すとは、当該インフルエンザウイルスに結合し、ヒト等への感染を阻害できることを意味し、あるいは、血球凝集抑制反応、中和反応等を引き起こすことをいう。また、抗原のインフルエンザウイルスについては、特に制限はないが、好ましくは、A型を含むものである。血清型としては、ヒトでのインフルエンザを対象とする場合には、H1N1及びH3N2、また、鳥インフルエンザを対象とする場合には、高病原性に分類されるH5N1、H5N2及びH7N7等を含むことが好ましい。
本発明で使用される抗体は、インフルエンザウイルス(抗原)を産卵鶏に免疫して得られる免疫グロブリン(「鶏卵抗体」、「鶏卵由来抗体」ともいう)であり、このような抗体は通常行われる公知の方法によって調製できる。具体的には、例えば以下の方法によって調製できる。使用される鶏(免疫される鶏)としては、抗体の産生量の点から、好ましくは、白色レグホン系、ロードアイランドレッド系、横班プリマスロック系、ニューハンプシャー系等の卵用種を用いる。免疫方法としては、静脈注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内投与等、鶏に免疫することのできる方法であれば特に制限はない。抗原物質としては、ウイルス粒子そのもの又はその一部分を使用することができ、一種類又は目的に応じて複数の抗原を混合して用いればよい。また、抗原の投与量は所望の抗体価が得られ、かつ鶏に対して悪影響を与えない程度の量を適宜選択すればよい。
通常、初回免疫を行い、その数週間後に追加免疫を実施すると、卵黄中に鶏卵抗体が得られる。その後、抗体価の維持を目的として数ヶ月ごとに追加免疫をするとよい。また、必要に応じてFCA(フロイント完全アジュバント)、FICA(フロイント不完全アジュバント)、水酸化アルミニウム等のアジュバントを併用して免疫してもよい。抗体価は、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、マイクロタイター法等を用いて測定することができ、免疫後に2週間程度の間隔で抗体価を測定することにより抗体価の推移を追跡することができる。
本発明で使用される鶏卵抗体は、必ずしも純粋な免疫グロブリンである必要はない。すなわち、鶏卵抗体の部分精製物である抗体含有画分でもよく、より高度に精製された精製鶏卵抗体でもよい。具体的には、上述のように免疫した鶏卵の卵黄液をそのまま、又は噴霧乾燥等の通常の方法により乾燥粉末化した粉末、その粉末を超臨界流体抽出法等で脱脂した脱脂卵黄粉末、卵黄液をカラギナン等により卵黄リポタンパク質を除去して得られる卵黄水溶性タンパク質を粉末化した卵黄水溶性タンパク質粉末、あるいは卵黄水溶性タンパク質をイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、硫酸ナトリウム塩析等の公知のタンパク質精製法により精製して得たものでもよい。
このようにして得られた鶏卵抗体の純度は、当該形態の粉末重量に対する鶏卵抗体重量で算出すると、卵黄粉末の形態では、通常、鶏卵抗体が1〜2重量%、脱脂卵黄粉末の形態では、通常、2〜8重量%、卵黄水溶性タンパク質粉末の形態では、通常、8〜12重量%、精製鶏卵抗体では、通常、95重量%以上である。
鶏卵由来の抗体の摂取方法は、経口的な摂取であれば特に制限はなく、食品(健康食品)として、あるいは経口用医薬組成物として、口から摂取すればよい。
鶏卵由来の抗体を配合する食品(健康食品)については、特に制限はなく、一般食品、菓子類、飲料等に配合することができる。なかでも、ガム、キャンディー、グミ等のように口腔内で長時間滞留する食品が好ましい。また、病院等で使用される流動食等に配合することもできる。鶏卵由来の抗体を食品(健康食品)に配合する場合は、好ましくは、卵黄粉末、脱脂卵黄粉末又は卵黄水溶性タンパク質粉末を用い、食品に対して、0.01〜10重量%、特に0.1〜1重量%配合することが好ましい。食品の種類によって前記範囲よりも少なく又は多く配合することもできる。
鶏卵由来の抗体を含む経口薬は、通常の製剤化法により、そのままあるいは慣用の添加剤と共に、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、トローチ剤、ドロップ剤、チュアブル剤、丸剤、ドライシロップ剤、発泡錠、チューインガム剤、ゼリー剤、口腔用軟膏剤、口腔内崩壊錠、噴霧剤、付着性フィルム等の経口用製剤とすることができる。添加剤には、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤等があり、必要に応じて使用することができる。口腔内で長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。配合する鶏卵由来の抗体は、精製鶏卵抗体が好ましく、医薬組成物に対して、0.001〜1重量%、特に0.01〜0.1重量%配合することが好ましいが、経口薬の種類によっては前記の範囲よりも少なく又は多く配合することもできる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
<インフルエンザウイルス>
インフルエンザウイルスA/Udorn/72(H3N2)(以下、「Udorn」という)を10日齢の鶏受精卵200個に接種し、34℃で3日間培養後その感染漿尿液を採取した。分画遠心1回(7,000rpmで20分間及び7,000rpmで16時間)及びショ糖濃度勾配遠心2回(30〜50%ショ糖中36,000rpmで1時間)により漿尿液中のウイルスを精製し、0.001M EDTAを含むpH7.4の0.01Mトリス緩衝液に浮遊して保存した。
<免疫>
上記で精製されたUdorn(8,000HAU/ml)0.4mlを等量の完全フロイントアジュバントとともにW/Oとして、18G針を用いて5ヶ月齢の白色レグホン3羽の腹股部4ヶ所及び脇下部4ヶ所に0.1m1ずつ接種し、3週間後に同様の方法で追加免疫を行った。追加免疫の2週間後から得た卵黄液をプールし、100mlを量り取り、等量の0.01Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl,pH7.5)と混合し、金属網で濾過した後、7gのポリエチレングリコール(PEG6000)を加え、15分間攪拌した。
ついで、7,000rpmで15分間遠心し、上清をガーゼで濾過し、11gのポリエチレングリコール(PEG6000)を加え、さらに15分間攪拌し、8,000rpmで15分間遠心した。
得られた沈殿物を70mlのリン酸緩衝液(0.1M NaCl,pH7.5)に溶解し、それに8.4gのポリエチレングリコール(PEG6000)を加え15分間攪拌し、ついで8,000rpmで15分間遠心した。上清を捨てさらに8,000rpmで15分間遠心し、得られた沈殿物に10mlの0.015Mリン酸緩衝液(pH8.0)を加えた。得られたサンプルをUdorn抗体サンプルとして以下の実験に使用した。また、非免疫鶏の鶏卵を用いて同様の操作を行い、コントロール抗体として使用した。
<赤血球凝集抑制(HI)テスト>
得られた抗体サンプルについてHIテストを行った。
すなわち、生理的食塩水を用いて各抗体サンプル0.25mlの2倍段階希釈液列を作製した。ついで、この希釈抗体サンプルにインフルエンザウイルス(Udorn又はWSN(H1N1))0.25mlを添加し、よく混和し、37℃に30分間静置し、抗原と抗体を反応させた。ついで、0.5%ニワトリ赤血球浮遊液0.5mlを添加し、よく混合し室温に1時間静置後、管底像から赤血球凝集の有無を判定した。赤血球凝集を完全に抑えた抗体サンプルの最高希釈度の逆数をHI抗体価とした。
HIテスト結果を表1に示した。Udorn抗体サンプルはUdornに対して特異的に反応し、そのHI抗体価は1:8,000であった。
<中和テスト>
得られた抗体サンプルについて中和テストを行った。
すなわち、生理的食塩水を用いて各抗体サンプルの10倍段階希釈液列を作製した。ついで、この希釈抗体サンプル0.15mlにインフルエンザウイルス(Udorn又はWSN(H1N1))液0.15ml(2,000PFU/ml)を加え、よく混合し、37℃で1時間静置し、ウイルスと抗体を反応させた。ついで、その0.1mlずつをコースター社製6穴プレート中に用意したMDCK(Madin−Darby Canine Kidney)単層培養細胞2穴に接種し、室温で1時間静置しウイルスを細胞に吸着させた後、1.5%ゼラチン、2.5μg/mlトリプシン及び0.6%アガロースを含むL15培地2.0mlを重層し、5%CO濃度、34℃で3日間培養した。培養したプレート上のプラーク数をカウントし、プラーク数を抗体サンプルを加えない場合(100プラーク)の1/2以下に減少させる最高希釈度の逆数を中和抗体価とした。
中和テスト結果を表1に示した。Udorn抗体サンプルはUdornに対し特異的に中和反応を示し、その中和抗体価は1:20,000であった。
Figure 2008074820
<動物実験>
Udorn抗体サンプル(HI,1:8,000)及びコントロール抗体を各6匹のゴールデンハムスター(雌、4週齢)に0.1ml/匹で経口投与し、30分後にUdornを10PFU/0.1ml/匹で経鼻的に感染させた。2日間経過後の鼻及び肺のウイルスの感染状況を調べた。
その結果を表2に示した。表2から、Udorn抗体サンプルを経口的に投与することにより、インフルエンザの感染を完全に阻害することができることが分かる。
Figure 2008074820

Claims (3)

  1. インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を含む、インフルエンザ予防用若しくは治療用の経口薬。
  2. インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を含む、健康食品。
  3. インフルエンザウイルスに対して反応性を示す鶏卵由来の抗体を、経口的に摂取することを特徴とするインフルエンザの予防若しくは治療方法。
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