JP2008074746A - エゾウコギ抽出物を含有する体重増加抑制剤、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 エゾウコギの表面部を炭化度が約10%以上となるまで焼いた後に、適当な溶媒(例えば、約70℃の温水、エタノール、エタノールと水の混合溶液)を用いて約1昼夜に渡ってエキスを抽出する。これを遠心分離して、抽出液1と残渣とに分離する。残渣に4倍量の溶媒を加えて、約1昼夜抽出した後に遠心分離し、抽出液2と残渣とに分離する。抽出液1及び抽出液2は、体重増加抑制効果を備えている。この作用本体は、カフェ酸誘導体であった。
【選択図】 なし
Description
本発明者は、長らくエゾウコギの研究に携わっており、多くの研究開発を行ってきている。例えば、特開2002−284695号公報、特開2002−3391号公報、特開2005−206509号公報には、本発明者の成果の一部が開示されている。
また、特開2005−304422号公報には、霊芝とエゾウコギとを組合せることによって、抗肥満効果が認められたと開示されている。しかしながら、エゾウコギの作用については、十分に解明されているとは言い難い状況である。
こうして、第1の発明に係る体重増加抑制剤は、エゾウコギの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。このとき、前記エゾウコギの表面部を炭化度が約10%以上となるまで焼いた後に、この材料を溶媒にかけて抽出した抽出物を含有することが好ましい。また、本発明においては、下記式1で表されるカフェ酸誘導体
また、第3の発明に係るカフェ酸誘導体は、下記式1
「抽出物」とは、エゾウコギを適当な溶媒(例えば、水(湯、熱水、蒸気を含む)、有機溶媒などを含む)に供して、抽出したものを意味している。
「表面部」とは、具体的には、断面上の表面から内部に向かって約5%〜約80%の断面積を意味している。
「焼いた」とは、材料の表面部分を火にかけることを意味している。焼く方法には、エゾウコギと火が直接に当たる方法(直火方法、網を用いて焼く方法を含む)と、エゾウコギと火の間に金属板材を介して焼く方法などが含まれる。このうち、金属板材を用いる方法では、エゾウコギの焼き方を制御しやすく、抽出物の成分が安定しやすいことから好ましい。金属板材を構成する金属としては、特に限定されず、例えば鉄、アルミ、銅、ニッケル、各種合金などが使用できる。なお、最も安価であることから、鉄板材を用いることができる。
「溶媒」とは、例えば、水または熱水、アルコール等の有機溶媒、或いはアルコール等の有機溶媒と水との適当な混合比の混合溶媒を意味している。熱水の場合には、約50℃以上に熱せられた水を用いることができる。抽出時間については、エゾウコギの量などに応じて適宜に設定することができる。一般的には、抽出時間としては、数時間以上〜約1昼夜以上が好ましく、約2昼夜がさらに好ましい。
本発明に係るカフェ酸誘導体(式(1))は、エゾウコギ中のクロロゲン酸が修治加工されることによって、誘導されたものであると考えられる。このため、本発明のカフェ酸誘導体を製造するには、必ずしもエゾウコギを原料とする必要はなく、例えばクロロゲン酸を多く持つ原料を修治加工することにより、製造することが可能である。
エゾウコギ原木(直径が、約5mm〜2cm程度:平均すると約1cm〜1.3cm程度)を3cm〜4cm程度の長さに切断し、約300gずつに分けたものを1ロットとした。修治加工工程として、網焼き方法、および鉄板(金属板材)上で焼く方法の二つの方法を実施した。また、修治加工を行わないエゾウコギ(未修治エゾウコギ)についても、抽出物(実施例2を参照)を調製した。
網焼き方法では、コンロ(KG−10BE、リンナイ株式会社製)の上に網を置き、その網上にエゾウコギを載置した。コンロの火を付け、エゾウコギの修治加工を行った。修治加工中には、エゾウコギをこまめに回転させて表面のみを焼くようにした。修治加工済みのエゾウコギの色は、こげ茶から炭化寸前までとし、黒くはならない程度とした。炎は目視できる先端が網に接しない程度の大きさとした。修治加工中のエゾウコギ付近の温度を測定しようとしたが、揺らぎが大きく測定できなかった。修治加工したエゾウコギの表面部の炭化度は、約10%であった。以下、この方法により修治加工したエゾウコギを「網焼きエゾウコギ」という。
上記3種類のエゾウコギ(未修治エゾウコギ、網焼きエゾウコギ、及び鉄板焼きエゾウコギ)について、下記4種類の抽出方法を用いて、抽出工程を実施した。
(1)熱水抽出法
エゾウコギに4倍量(w/v)の約70℃の温水を加えて、1昼夜に渡って抽出を行った。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液1−1と残渣1−1とに分離した。残渣1−1については、更に4倍量の約70℃の温水中に入れて、有効成分を約1昼夜抽出した。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液1−2と残渣1−2とに分離した。
上記抽出液1−1と抽出液1−2とを混合した後、ろ紙(ADVANTEC社製、ろ紙No.5A)を用いて吸引ろ過し、ロータリーエバポレータで適当に濃縮した後、凍結乾燥し、エゾウコギ抽出物を得た。
なお、抽出液1−1と抽出液1−2とは、エキス含量を増加させるために混合したものであり、いずれか一方を単独で用いても、本実施例の効果を奏することができる。
エゾウコギに4倍量(w/v)の約70℃の温水を加えて、1昼夜に渡って抽出を行った。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液2−1と残渣2−1とに分離した。残渣2−1については、更に4倍量の約60℃のエタノール中に入れて、有効成分を約1昼夜抽出した。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液2−2と残渣2−2とに分離した。
上記抽出液2−1と抽出液2−2とについては、それぞれ別々に、ろ紙(ADVANTEC社製、ろ紙No.5A)を用いて吸引ろ過し、ロータリーエバポレータで適当に濃縮した後、凍結乾燥した。抽出液2−1と抽出液2−2から得た凍結乾燥物を混合し、エゾウコギ抽出物を得た。
なお、抽出液2−1と抽出液2−2から得た凍結乾燥物は、エキス含量を増加させるために混合したものであり、いずれか一方を単独で用いても、本実施例の効果を奏することができる。
エゾウコギに4倍量(w/v)の水を加えて、オートクレーブ処理(105℃、60分間)を行った後、約70℃として、1昼夜に渡って抽出を行った。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液3−1と残渣3−1とに分離した。残渣3−1については、更に4倍量の約60℃のエタノール中に入れて、有効成分を約1昼夜抽出した。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液3−2と残渣3−2とに分離した。
上記抽出液3−1と抽出液3−2とについては、それぞれ別々に、ろ紙(ADVANTEC社製、ろ紙No.5A)を用いて吸引ろ過し、ロータリーエバポレータで適当に濃縮した後、凍結乾燥した。抽出液3−1と抽出液3−2から得た凍結乾燥物を混合し、エゾウコギ抽出物を得た。
なお、抽出液3−1と抽出液3−2から得た凍結乾燥物は、エキス含量を増加させるために混合したものであり、いずれか一方を単独で用いても、本実施例の効果を奏することができる。
エゾウコギに4倍量(w/v)の約60℃の水・エタノール混合液(水:エタノール=50:50、または95:5)を加えて、1昼夜に渡って抽出を行った。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液4−1と残渣4−1とに分離した。残渣4−1については、更に4倍量の約70℃の水・エタノール混合液(水:エタノール=50:50、または95:5)中に入れて、有効成分を約1昼夜抽出した。抽出後の溶液を遠心分離して、抽出液4−2と残渣4−2とに分離した。
上記抽出液4−1と抽出液4−2とを混合した後、ろ紙(ADVANTEC社製、ろ紙No.5A)を用いて吸引ろ過し、ロータリーエバポレータで適当に濃縮した後、凍結乾燥し、エゾウコギ抽出物を得た。
なお、抽出液4−1と抽出液4−2から得た凍結乾燥物は、エキス含量を増加させるために混合したものであり、いずれか一方を単独で用いても、本実施例の効果を奏することができる。
各エゾウコギ抽出物については、必要に応じて蒸留水に溶解して用いた。
4週齢オスSDラットを用いて、エゾウコギ抽出物の効果確認試験を行った。一群当り8匹のラットを5群に分け、次の通りの処理を行った。
C1群(陰性コントロール):1週間の予備飼育後、通常食(ND)を与えた。飲料水として、水(H2O)を自由摂取させた。
C2群(陽性コントロール):1週間の予備飼育後、35%高脂肪食(HFD)を与えた。飲料水として、水(H2O)を自由摂取させた。
A1群:1週間の予備飼育後、HFDを与えた。飲料水として、未修治エゾウコギを上記実施例2(表4の20)の方法で抽出した乾燥エキス(ASH)を35%HFDの中に9%含有(ASH9%)するように餌を調整し、それを自由摂取させた。
B1群:1週間の予備飼育後、HFDを与えた。飲料水として、網焼きエゾウコギを上記実施例2(表4の21)の方法で抽出した乾燥エキス(MASH1)を35%HFDの中に9%含有(MASH1 9%)するように餌を調整し、それを自由摂取させた。
B2群:1週間の予備飼育後、HFDを与えた。飲料水として、鉄板焼きエゾウコギを上記実施例2(表4の22)の方法で抽出した乾燥エキス(MASH2)を35%HFDの中に9%含有(MASH2 9%)するように餌を調整し、それを自由摂取させた。
結果を表1〜表3、及び図1に示した。
図1は、C2群(H2O/HFD)では、C1群(H2O/ND)に比べると、WATrが肥大したが、B2群(MASH2/HFD)では、HFDを摂取したにもかかわらず、WATrはC2群と同程度の大きさ(或いは、逆に縮小)であったことを示している。
修治加工したエゾウコギ抽出物(特に、B2群(MASH2)は、高脂肪食条件下、A1群(ASH)の1日あたりの体重増加率の低下作用をさらに増強させた(32.3%低下 vs ASH)。
修治加工したエゾウコギ抽出物(特に、B2群(MASH2))は、高脂肪食条件下、A1群(ASH)の脂肪重量減少作用の増強を引き起こした。その増強効果は、腰回り及び下腹部の内臓脂肪重量の顕著な低下を示した(WATr:25.2%低下 vs ASH,WATt:18.6%低下 vs ASH)。
B1群(MASH1)及びB2群(MASH2)は、高脂肪食条件下、A1群(ASH)と同様に中性脂肪(TG)の合成を抑制し、かつTGの分解をさらに促進させている可能性が示唆された。
B1群(MASH1)及びB2群(MASH2)は、高脂肪食条件下、A1群(ASH)と同様に高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)値を増加させた。一方、B1群(MASH1)のみ、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)値を増加させた。
B1群(MASH1)及びB2群(MASH2)は、A1群(ASH)と同様に高脂肪食によるインスリン値の増加を顕著に抑制した。また、未修治及び修治エゾウコギは、アディポネクチンを増加させ、レジスチンを減少させた。一方、ASHのみ高脂肪食によるレプチン値の増加を顕著に抑制した。
このように、エゾウコギ抽出物は、体重増加抑制効果を示すことが明らかとなった。
次に、エゾウコギ抽出物の有効成分を分離するため、各抽出物をHPLCに供した。HPLCの条件は、次の通りであった。
カラム : Hypersil ODS−2 column(200 x 4.6mm, 5μm)
移動相 : MeOH:0.2M NaH2PO4(pH 3.6)=15:85
流量 : 1.0 ml/min.
カラム温度 : 30℃
測定波長 : 300nm
注入量 : 20μl
図3には、各種エゾウコギ抽出物について、クロロゲン酸(ピークJ)と、未知成分(ピークL)との量比を示した。
各サンプルの調製方法は、下表4に示す通りであった。
ピークLについて、質量分析を行ったところ、分子量は196であった。また、NMRによる分析の結果、ピークLは、下記式1に示すカフェ酸誘導体であることが分かった。
Claims (7)
- エゾウコギの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする体重増加抑制剤。
- 前記エゾウコギの表面部を炭化度が約10%以上となるまで焼いた後に、この材料を溶媒にかけて抽出した抽出物を含有することを特徴とする請求項1に記載の体重増加抑制剤。
- 下記式1で表されるカフェ酸誘導体
- (1)エゾウコギの表面部を炭化度が約10%以上となるまで焼く修治加工工程、及び(2)修治加工工程後のエゾウコギを溶媒にかけて抽出物を得る抽出工程、を含むことを特徴とする体重増加抑制剤の製造方法。
- 前記修治加工工程は、エゾウコギを金属板材の表面で焼くことを特徴とする請求項4に記載の体重増加抑制剤の製造方法。
- 下記式1で表されるカフェ酸誘導体
- 下記式1
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