以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の概略断面図である。図1を参照するに、垂直磁気記録媒体(磁気ディスク)10は、基板1上に、軟磁性裏打ちの下地層3、硬磁性ナノ粒子からなる記録層群4、5、6、保護層7および潤滑層8を順次積層した構成となっている。
基板1は、例えば、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、Si基板、ポリイミドフィルムなどの耐熱性フィルムなどを用いることができる。
軟磁性裏打ちの下地層3は、例えば、厚さが50nmから1μmであり、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Nb、CおよびBよりなる群から選択されたうち少なくとも1種類の元素を含む非晶質もしくは微結晶の合金、またはこれらの合金の積層膜などの、飽和磁束密度Bsの高い軟磁性材料により構成される。例えば、FeSi、FeAlSi、FeTaC、NiFeNb、CoCrNbなどを用いることができる。軟磁性裏打ちの下地層3は、メッキ法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法(化学気相成長法)などにより形成され、特にスパッタリング法が用いることが好ましい。軟磁性裏打ちの下地層3は、単磁極ヘッドにより記録する場合に、単磁極のヘッドからの全磁束を吸収するためのもので、飽和記録するためには、飽和磁束密度Bsと膜厚の積の値が大きい方が好ましい。また、軟磁性裏打ちの下地層3は、高周波透磁率が高い方が好ましい。高転送レートでの書込性が向上する。なお、リング型ヘッドにより記録する場合は、軟磁性裏打ちの下地層3を設けなくて、誘電体材料、金属材料からなる下地層であってもよい。
さらに第2の下地層3を用いて、例えば、Fe2O3、NiFe(パーマロイ)等の軟磁性材料よりなり、軟磁性ナノ粒子同士の間はアモルファスカーボン等により充填され、粒径は1nm以上20nm以下(以下1nm〜20nmと記載)に設定され、好ましくは、第2の下地層3上に形成される記録層4の硬磁性ナノ粒子の粒径と略同等の粒径が設定される。下地層と記録層4との界面が均一となり、記録層4表面を平坦化することができる。
なお、下地層3の軟磁性ナノ粒子の平均粒径Dに対する標準偏差σの比率σ/Dは10%以下に設定されることが好ましい。また、軟磁性ナノ粒子同士の間隙の大きさは1nmから5nmに設定されることが好ましく、記録層4の硬磁性ナノ粒子同士の間隙の大きさと略同等であることが好ましい。
軟磁性ナノ粒子は、1層〜5層の範囲に積層されて形成されている。情報を記録する際に印加された記録磁界に係る磁束が記録層4を垂直に流れ、軟磁性裏打ちの下地層に流れ込む前にカーボン相中に隔離されて配列された軟磁性ナノ粒子中を流れるため磁束が狭窄される。したがって、記録磁界に係る磁束が記録層4と第2に下地層である、中間下地層3との界面付近で面内方向に広がることを防止して磁束を集中させることができ、書込み性、例えばオーバーライト特性が向上される。特に狭窄効果の観点からは、中間下地層3は単層の軟磁性ナノ粒子よりなることが好ましい。
なお、中間下地層3は、軟磁性ナノ粒子の代わりに、厚さが1nmから50nmであり、Ti、C、Pt、TiCr、CoCr、SiO2、MgO、Al2O3などの非磁性材料により構成してもよい。また、中間下地層3は、これらの合金を用いた積層膜であってもよい。軟磁性裏打ちの下地層3と記録層4の静磁気的相互作用を遮断することができる。この場合の中間下地層3は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などにより形成される。
記録層4は、配列された硬磁性ナノ粒子と、その硬磁性微粒子間を埋めるようにして配列を固定する、例えば、カーボン相とから構成されている。記録層4は、例えば、厚さが3nmから50nmに設定される。また、記録層4は、硬磁性ナノ粒子の層が膜厚方向に数層で積層されていてもよく、単層であってもよい。
硬磁性ナノ粒子は、例えば、FePt、FePd、CoPtの合金よりなり、後述する方法により形成される。これらの合金は磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。例えば、Fe100−XPtX、Fe100−XPdX、Co100−XPtX、およびCo100−XPdXは、好ましくは、X=20at%〜60at%、さらに好ましくはX=35at%〜55at%の範囲から選択される。このような範囲の組成では、より磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。また、硬磁性ナノ粒子は、Fe3Pt、FePt3、Fe3Pd、FePd3、Co3Pt、CoPt3から形成されてもよい。
さらに、これらの合金に第3の元素として、例えばAg、Au、Cu、Sb、Niが添加されていてもよい。上記2元合金のみでは磁気異方性エネルギーが高すぎる場合に、磁気ヘッドの記録磁界の大きさに対応して磁気異方性エネルギーを低減して調整することにより、書込み性を高めることができる。
硬磁性ナノ粒子の平均粒径は、2nm以上10nm以下の範囲に設定される。平均粒径が10nmを越えると、硬磁性ナノ粒子間の非磁性である間隙部分の体積が大きくなり、媒体ノイズが増加する。平均粒径が2nm未満になると、硬磁性ナノ粒子は室温において超常磁性になり易く、強磁性を保つことが困難になる。
また、硬磁性ナノ粒子の粒径の標準偏差は、平均粒径の10%以下の範囲に設定される。平均粒径の10%を越えると、硬磁性ナノ粒子の静磁気的相互作用の分布が大きくなり、媒体ノイズが増加する。
硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸は、基板1面に対して略垂直方向に向いている。すなわち、個々の硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸が、この垂直方向を中心として角度分布している。この角度分布は、垂直保磁力Hc1と面内保磁力Hc2との比Hc2/Hc1により表される。Hc2/Hc1は、40%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。このような範囲では、記録後の残留磁化状態の磁化遷移領域の幅が狭小となり、高密度記録に適した垂直磁気記録媒体が得られる。
後述する本実施の形態の磁気記録媒体の製造方法では、硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸を硬磁性ナノ粒子を含むヘキサンを基板上に塗布する際に、磁場を印加して室温下で配向させる。
保護層7は、例えば、厚さが0.5nmから15nmであり、カーボン、水素化カーボン、窒化カーボンなどにより構成される。
さらにこの上に、潤滑層8が、厚さが0.5nmから5nmであり、例えば、パーフルオロポリエーテルが主鎖の潤滑剤などのより構成される。潤滑剤としては、例えば、ZDol(Monte Fluos社製 末端基:−OH)、AM3001(アウジモント社製、末端基:ベンゼン環)、あるいは末端基を有さないZ25(Monte Fluos社製)等を用いることができる。
図1、及び、図2は本発明の実施の形態1における磁気ディスク10の構造を示す断面図である。図1において、1はガラスからなる透明なディスク基板、2は表面形状の凹凸ピットを形成したフォトポリマー層、その上の、3は下地層、4、5、6はそれぞれ、記録層、中間層、再生層の磁性記録膜である。さらに、7は記録膜を保護し磁気ヘッドを摺動させるための保護層、8は潤滑保護層である。
ここで、下地層3形成前のディスク基板1は、ピットを形成したスタンパを用いて、ガラスのディスク基板1に塗布したフォトポリマー2に転写させて、硬化させた構成である。この構成により、トラッキングサーボとアドレス検出のための、ピットが形成され、記録トラックは、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とが検出できる構成となる。
図1で示した本発明の実施の形態1の磁気記録媒体は、ディスク基板側からレーザ光ビームを照射し、記録膜4、5、6が形成された潤滑保護層8側から、磁気ヘッド102により信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、再生時のレーザ光スポット19の検出限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
ここで、本実施の形態の記録層は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、また、再生層は、温度Tの上昇と共に飽和磁化Msが増加する特性を有している。このことにより、磁気ヘッドでの記録が容易で、GMRヘッドで再生した場合にも、再生信号の検出感度を向上させることができる。
図1で示した構成の本発明の実施の形態1の磁気記録媒体は、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させ、この磁壁の移動を光学ヘッドにより検出することによって、再生時に信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
上述した構成に積層した記録膜は磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくする方法であるDWDD方式(Domain Wall Displacement Detection)の一例であり、例えば特開平6−290496号公報に記載される如く、大きな界面飽和保磁力を有する磁性膜を記録層とし、小さな界面飽和保磁力を有する磁性膜を磁壁移動する再生層とし、比較的低いキュリー温度を有する磁性膜を切り換えのための中間層として用いている。したがって、DWDD方式を可能にする磁性膜を用いていれば良く、この膜構成に限るものではない。
上記したDWDD方式の再生原理について、図8を参照しながら説明する。
図8(a)は、回転している磁気ディスクの記録膜の断面を示す図であり、ディスク基板、誘電体層(図示していない)に、再生層201、中間層202、(制御層は省略)、記録層203の3層構成の記録膜により構成され、さらに図示していないが、誘電体保護層、オーバーコート層あるいは潤滑摺動層が形成されている。
再生層201としては、磁壁抗磁力の小さい磁性膜材料を用いており、中間層202はキュリー温度の小さい磁性膜、記録層203は小さなドメイン径でも記録磁区を保持できる磁性膜を用いている。ここで、磁気記録媒体は再生層は、記録トラック間をガードバンド等を形成することにより、閉じていない磁壁を含む磁区構造を形成している。
図に示すように、情報信号は、記録層に熱アシストして磁気記録された記録磁区として形成されている。レーザ光スポットの照射されていない室温での記録膜は記録層、中間層、再生層がそれぞれ強く交換結合しているため、記録層の記録磁区は、そのまま再生層に転写形成される。
図8(b)は、(a)の断面図に対応した位置χと記録膜の温度Tとの関係を表す。図示されているように、記録信号の再生時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光による再生ビームスポットが照射される。この時、記録膜は、図8(b)に示すような温度分布を示し、中間層(あるいは中間遮断層、スイッチング層)がキュリー温度Tc以上となる温度領域Tsが存在し、再生層と記録層との交換結合が遮断される。
また、再生ビームが照射されると、図8(c)の磁壁エネルギー密度σに対する依存性に示すように、図8(a)、(b)の位置に対応するディスク回転方向のχ方向に磁壁エネルギー密度σの勾配が存在するために、図8(d)に示すように、位置χでの各層の磁壁に対して磁壁を駆動させる力Fが作用する。
この記録膜に作用する力Fは、図に示すように磁壁エネルギー密度σの低い方に磁壁を移動させるように作用する。再生層は、磁壁抗磁力が小さく磁壁の移動度が大きいので、閉じていない磁壁を有する場合の再生層単独では、この力Fによって容易に磁壁が移動する。従って、再生層の磁壁は、矢印で示したように、より温度が高く磁壁エネルギー密度の小さい領域へと瞬時に移動する。そして、光ビームスポット内を磁壁が通過すると、スポット内での再生層の磁化は光スポットの広い領域で同じ方向に揃う。
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、GMRヘッド等の磁気ヘッド、あるいは、光学ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による熱アシストの温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。
次に、本願発明の実施の形態1の磁気ディスク10の構成と作製方法について詳細に説明する。
図2に示すように、ディスク基板1に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板1は、記録トラックにピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施の形態の磁気ディスク10のトラックピッチは0.3μmである。
まず、図示すように、スタンパを用いて、グルーブとランドからなる記録トラック14とフォーマット信号を、フォトポリマー層2に転写形成することにより、ディスク基板1上に形成する。
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10−6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体の下地層3を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Tb、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、TbFeCoの記録膜4を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。そして、Tb、Fe、Co、Crそれぞれのターゲットを用いて、TbFeCoCrの中間層5を20nm、さらに、Gd、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、GdFeCoの再生層6を35nm、それぞれDCマグネトロンスパッタリング法により形成する。
ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
そして、さらに保護層7の上には、ポリウレタン系材料からなる、紫外線硬化型の樹脂をスピンコータで塗布し、紫外線を照射して硬化させて、オーバーコート層7を形成する。さらに、パーフロロポリエーテル(PFPE)からなる潤滑層8を、5nmの膜厚にスピンオートにより塗布する。
さらに、ディスク基板を1200rpmで回転させながら、レーザ光スポット19を照射しながら、記録層をアニール処理する。記録トラック間は、記録層4のキュリー温度310℃の2倍の620℃以上に昇温させることにより、膜面垂直方向の磁気異方性が低下し、ガードバンドを形成する。また、トラック上もアニール処理により、膜構造を安定化させることができる。
本願発明の実施の形態の製造方法では、TbFeCoからなる記録層4は補償組成温度が80℃であり、キュリー温度は310℃になるように各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整して製膜した。この組成により、室温での保磁力が18koeと大きく、また、アニール処理により、膜構造が安定化し膜面垂直方向の磁気異方性も大きいため、情報信号の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。
本願発明の実施の形態の製造方法では、記録層製膜時に、記録膜をアニール処理することにより、トラック間を遮断し、安定してDWDD動作させることが可能となり、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成し、再生信号を検出できる。また、信号の繰り返し記録再生した場合にも、信号特性の劣化の少ない、優れた記録再生が可能となる。
また、本実施の形態の磁気記録媒体10は、熱アシストを用いた磁気記録再生に用いることもできるものであり、ガラス等の透明支持基板上に、フェリ磁性体からなる磁性記録膜が形成されている。ここで、本実施の形態では、磁性記録膜としては、記録層4が100nm、中間層5が25nm、再生層6が40nmという膜厚の構成であるが、特にこの膜厚に限定されるものではない。
また、このような磁気記録媒体10の記録層4は、磁気的補償温度は室温近傍の温度である、−100℃〜180℃、より好ましくは−60℃〜100℃、さらに好ましくは−20℃〜80℃に設定されている。また、記録層4のキュリー温度は、200℃〜400℃、より好ましくは250℃〜360℃の範囲内となるように設定されている。
このような記録層4の材料としては、例えばTb、Fe、Coの3つの金属からなる合金が挙げられる。このような合金からなる磁性膜では、Tbの含有量により磁気的補償温度が変化することが、一般的に知られている。
本実施の形態1にて作製した磁性膜は、その組成が例えばTb27Fe54Co19(数字はそれぞれ原子at%を示す)であり、磁気的補償温度が約80℃付近に、キュリー点が310℃以上とそれぞれなっている。したがって、この記録磁性膜の温度特性を調べると、保磁力が温度上昇に伴って低下するため、熱アシストした場合には、磁気ヘッドを用いて、小さい磁界での記録可能となる。
また、中間層5は、磁気的補償温度が室温以下で、キュリー温度が、180℃のTbFeCoCr、中間層と再生層の間に制御層を設けた場合には、磁気的補償温度が40℃で、キュリー温度が、230℃のTbFeCoCrである。
さらに、上記磁気記録媒体10における再生層6は、磁気的補償温度が50℃、キュリー温度が290℃の、GdFeCo磁性薄膜を用いている。
なお、再生層の磁気的補償温度を室温近傍にすることにより、再生層の飽和磁化は温度上昇と共に増加し、100℃から220℃の再生温度付近で最大となった後、減少する特性にすることも可能である。その場合、DWDD方式による、磁壁移動による再生磁区の拡大と合わせて、飽和磁化が増大するため、再生信号出力はさらに大きくすることが可能となる。
本実施の形態では、レーザ光ビームを、記録トラック間にトラッキングさせて照射することにより、トラック間の記録層4を熱処理し、膜面垂直方向の磁気異方性が低下させることにより、ガードバンドを形成する。また、トラック上もアニール処理により、膜構造を安定化させることができる。ここで、レーザ光ビーム照射時に、記録層のキュリー温度310℃の2倍の620℃以上に昇温させる構成であったが、特にこの条件に限定されるものではない。また、記録トラックの記録層4のアニール温度も、微細構造の安定化させる温度であれば、同様の効果が得られる。
再生層は、レーザ光を照射して昇温した状態での温度、150℃で、飽和磁化Msが極大となる。また、記録層の保磁力Hcは、温度上昇と共に減少するという膜特性を有しており、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。このような、本実施の形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録磁界を変調することにより記録される。この時、記録層は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドの磁界で記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、上記したDWDD方式を用いて、磁壁移動により、転写磁区を拡大させながら、GMRヘッドにより、再生磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msも温度と共に上昇する構成であれば、昇温時に再生信号が極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
この磁気記録媒体10に、熱アシスト用の記録再生装置を用いて記録再生を行なった、磁気記録媒体10の記録トラックへの情報信号の記録再生実験について説明する。使用した磁気ヘッド102はトラックに対して垂直な方向に0.5μm幅を有し、光スポットサイズは約1.2μmで、光パワーは記録時4mW、再生時3mWで実施した。ディスク回転数は4000rpmで記録時の基準周波数は200MHzである。
このように、本発明の実施の形態1の磁気記録媒体の記録再生方法では、記録時には、光源のレーザパワーを4mWと大きくし、フォーカスをオフセットさせて、記録用磁気ヘッド近傍の磁気記録媒体10に熱アシストを行なった。この時、磁気記録媒体10の記録領域では、温度分布がゆるやかとなり、また、磁気記録媒体10の記録領域の温度は、150℃以上であるために、保磁力が6koe以下となる。このため、磁気ヘッド102は小さい磁界で記録できるために、高い周波数での磁界を変調が容易となり、記録時の、温度勾配による磁壁の移動の影響が少なく、記録マークの形状が変化しないため、安定化する。
また、信号再生時には、磁気記録媒体の記録膜にフォーカスしたレーザ光源により熱アシストしており、温度分布のピークが再生用GMRヘッドの位置より後方にある構成により、磁気記録媒体からの信号再生検出されるGMRヘッド近傍の領域では、磁気記録媒体の温度勾配が急峻になり、上記したDWDD方式での磁区拡大した信号の再生が可能となる。
したがって、熱アシストした記録再生方式において、微細な磁区を高密度に記録した場合にも安定した記録ドメインを形成し、また、信号再生時にも、良好なS/Nを有する信号の記録再生方法が得られるという効果を十分に得ることが可能となった。
また、信号再生時には、熱アシストによる磁気記録媒体10の温度分布が急峻であるために、読み出し領域以外の温度は120℃以下と低くなっている。このため、上記磁気記録媒体10における記録層の光ビームが照射されない読み出し領域外の温度は、磁気記録媒体10における磁性膜の読み出し領域が達する温度である、150℃から250℃までの温度範囲と十分に離れているので、再生時のクロストークが発生するという問題も防止できる。
またさらに、磁気記録媒体10の室温近傍での飽和磁化を小さくしておくことで、上記光ビームを照射しない領域、つまり読み出し領域外の磁性膜からの残留磁化による磁束の影響が小さくなるため、さらにクロストーク、クロスライトの低減効果は大きい。
本発明の磁気記録媒体10は、磁気記録再生装置が一般的なハードディスクのように磁気記録媒体とヘッドが密閉された状況下においても特に有効である。それは、磁気記録媒体とヘッドが固定されたクローズの状態であるため、熱アシストの安定した制御により記録再生の効果が安定して得られるものである。
以上のように、本実施の形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した記録磁区が形成でき、優れた再生信号が検出でき、しかも、信頼性の高い、磁気記録媒体、および、記録再生方法を実現できるものである。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る垂直磁気記録媒体の製造方法について説明する。
図3は、本発明の本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の概略の斜視図である。図3を参照するに、垂直磁気記録媒体20は、基板21上に、軟磁性裏打ちの下地層26、硬磁性ナノ粒子からなる記録層群27、保護層および潤滑層28を順次積層した構成となっている。
基板21は、例えば、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、Si基板、ポリイミドフィルムなどの耐熱性フィルムなどを用いることができる。
軟磁性裏打ちの下地層26は、例えば、厚さが50nmから1μmであり、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Nb、CおよびBよりなる群から選択されたうち少なくとも1種類の元素を含む非晶質もしくは微結晶の合金、またはこれらの合金の積層膜などの、飽和磁束密度Bsの高い軟磁性材料により構成される。例えば、FeSi、FeAlSi、FeTaC、NiFeNb、CoCrNbなどを用いることができる。軟磁性裏打ちの下地層26は、メッキ法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法(化学気相成長法)などにより形成され、特にスパッタリング法が用いることが好ましい。軟磁性裏打ちの下地層26は、単磁極ヘッドにより記録する場合に、単磁極のヘッドからの全磁束を吸収するためのもので、飽和記録するためには、飽和磁束密度Bsと膜厚の積の値が大きい方が好ましい。また、軟磁性裏打ちの下地層26は、高周波透磁率が高い方が好ましい。高転送レートでの書込性が向上する。なお、リング型ヘッドにより記録する場合は、軟磁性裏打ちの下地層26を設けなくて、誘電体材料、金属材料からなる下地層であってもよい。
さらに第2の下地層26は、自己組織的に配列された軟磁性ナノ粒子がカーボン相に隔離されて配列された構成となっている。軟磁性ナノ粒子は、例えば、Fe2O3、NiFe(パーマロイ)等の軟磁性材料よりなり、軟磁性ナノ粒子同士の間はアモルファスカーボン等により充填されている。軟磁性ナノ粒子は、後述する化学的方法により得られるものである。粒径は1nm以上20nm以下(以下1nm〜20nmと記載)に設定され、好ましくは、第2の下地層26上に形成される記録層27の硬磁性ナノ粒子の粒径と略同等の粒径が設定される。下地層と記録層27との界面が均一となり、記録層27表面を平坦化することができる。
なお、下地層26の軟磁性ナノ粒子の平均粒径Dに対する標準偏差σの比率σ/Dは10%以下に設定されることが好ましい。また、軟磁性ナノ粒子同士の間隙の大きさは1nmから5nmに設定されることが好ましく、記録層27の硬磁性ナノ粒子同士の間隙の大きさと略同等であることが好ましい。
軟磁性ナノ粒子は、1層〜5層の範囲に積層されて形成されている。情報を記録する際に印加された記録磁界に係る磁束が記録層27を垂直に流れ、軟磁性裏打ちの下地層に流れ込む前にカーボン相中に隔離されて配列された軟磁性ナノ粒子中を流れるため磁束が狭窄される。したがって、記録磁界に係る磁束が記録層27と第2に下地層である、中間下地層26との界面付近で面内方向に広がることを防止して磁束を集中させることができ、書込み性、例えばオーバーライト特性が向上される。特に狭窄効果の観点からは、中間下地層26は単層の軟磁性ナノ粒子よりなることが好ましい。
なお、中間下地層26は、軟磁性ナノ粒子の代わりに、厚さが1nmから50nmであり、Ti、C、Pt、TiCr、CoCr、SiO2、MgO、Al2O3などの非磁性材料により構成してもよい。また、中間下地層26は、これらの合金を用いた積層膜であってもよい。軟磁性裏打ちの下地層26と記録層27の静磁気的相互作用を遮断することができる。この場合の中間下地層26は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などにより形成される。
記録層27は、配列された硬磁性ナノ粒子と、その硬磁性微粒子間を埋めるようにして配列を固定する、例えば、カーボン相とから構成されている。記録層27は、例えば、厚さが3nmから50nmに設定される。また、記録層27は、硬磁性ナノ粒子の層が膜厚方向に数層で積層されていてもよく、単層であってもよい。
硬磁性ナノ粒子は、例えば、FePt、FePd、CoPtの合金よりなり、後述する方法により形成される。これらの合金は磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。例えば、Fe100−XPtX、Fe100−XPdX、Co100−XPtX、およびCo100−XPdXは、好ましくは、X=20at%〜60at%、さらに好ましくはX=35at%〜55at%の範囲から選択される。このような範囲の組成では、より磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。また、硬磁性ナノ粒子は、Fe3Pt、FePt3、Fe3Pd、FePd3、Co3Pt、CoPt3から形成されてもよい。
さらに、これらの合金に第3の元素として、例えばAg、Au、Cu、Sb、Niが添加されていてもよい。上記2元合金のみでは磁気異方性エネルギーが高すぎる場合に、磁気ヘッドの記録磁界の大きさに対応して磁気異方性エネルギーを低減して調整することにより、書込み性を高めることができる。
硬磁性ナノ粒子の平均粒径は、2nm以上10nm以下の範囲に設定される。平均粒径が10nmを越えると、硬磁性ナノ粒子間の非磁性である間隙部分の体積が大きくなり、媒体ノイズが増加する。平均粒径が2nm未満になると、硬磁性ナノ粒子は室温において超常磁性になり易く、強磁性を保つことが困難になる。
また、硬磁性ナノ粒子の粒径の標準偏差は、平均粒径の10%以下の範囲に設定される。平均粒径の10%を越えると、硬磁性ナノ粒子の静磁気的相互作用の分布が大きくなり、媒体ノイズが増加する。
硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸は、基板21面に対して略垂直方向に向いている。すなわち、個々の硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸が、この垂直方向を中心として角度分布している。この角度分布は、垂直保磁力Hc1と面内保磁力Hc2との比Hc2/Hc1により表される。Hc2/Hc1は、40%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。このような範囲では、記録後の残留磁化状態の磁化遷移領域の幅が狭小となり、高密度記録に適した垂直磁気記録媒体が得られる。
後述する本実施の形態の磁気記録媒体の製造方法では、硬磁性ナノ粒子の磁化容易軸を硬磁性ナノ粒子を含むヘキサンを基板上に塗布する際に、磁場を印加して室温下で配向させる。
保護層28は、例えば、厚さが0.5nmから15nmであり、カーボン、水素化カーボン、窒化カーボンなどにより構成される。
さらにこの上に、潤滑層28が、厚さが0.5nmから5nmであり、例えば、パーフルオロポリエーテルが主鎖の潤滑剤などのより構成される。潤滑剤としては、例えば、ZDol(Monte Fluos社製 末端基:−OH)、AM3001(アウジモント社製、末端基:ベンゼン環)、あるいは末端基を有さないZ25(Monte Fluos社製)等を用いることができる。
本実施の形態の垂直磁気記録媒体20は、記録層27が優れた垂直配向性を有すると共に自己整列的に配列された硬磁性ナノ粒子27より形成されているので高出力及び低ノイズという特徴を有し、その結果高密度記録が可能である。また、硬磁性ナノ粒子20はfct構造を有するFe系またはCo系合金により形成され、高い磁気異方性エネルギーを有しているので熱揺らぎ耐性が高い。
ここで、情報の書込の際の磁気ヘッドより印加される磁束の流れの模式的に示すと、垂直磁気記録用の単磁極ヘッドからの磁束が記録層27を通過して中間層を介して軟磁性裏打ち層26に流入し磁束は広がる。本実施の形態の垂直磁気記録媒体20では、中間層27は一定の間隔で整列され孤立した軟磁性ナノ粒子27と軟磁性ナノ粒子27間に形成されたアモルファスカーボン部28から形成されているので、磁束は軟磁性ナノ粒子27のみ流れる。したがって、記録層27を通過した磁束が軟磁性裏打ち層26に流入する前に軟磁性ナノ粒子27により磁束が一旦狭窄され磁束密度が増加する。すなわち、軟磁性裏打ち層26の鏡像効果に、軟磁性ナノ粒子27による磁束の狭窄による磁束密度の増加による効果が加わることにより、垂直磁気記録媒体の書込性が顕著に向上し、オーバーライト特性やNLTS等の書込性が顕著に向上する。その結果、一層の高密度記録が可能となる。
次に本実施の形態の磁気記録媒体の製造方法を説明する。
(硬磁性ナノ粒子の形成)
始めに垂直磁気記録媒体の記録層を形成する硬磁性ナノ粒子の形成方法について説明する。
[ナノ粒子の形成]
先ず、硬磁性ナノ粒子の前駆体であるナノ粒子を化学合成法を用いて形成する。例えば、アルゴン雰囲気下においてフラスコにPt錯体、例えば、197mg(0.5mmol)のアセチルアセトナト白金Pt(C5H7O2)2と、還元剤、例えば、390mg(1.5mmol)の1、2−ヘキサデカンジオールと、溶媒、例えば20mLのジオクチルエーテルを加える。
次いで、フラスコに、有機安定剤、例えば0.32mL(1.0mmol)のオレイン酸と、0.34mL(1.0mmol)のオレイルアミンを加え、Fe錯体、例えば、0.13mL(1.0mmol)のペンタカルボニル鉄Fe(CO)5を加える。フラスコ内の溶液を230℃の温度下において約30分間撹拌し反応させる。具体的には100℃〜300℃の温度下において10〜30分間反応させる。その結果、フラスコ内にはFePtよりなるナノ粒子が生成される。なお、この状態ではナノ粒子は不規則相よりなり強磁性は発現していない。また、Pt錯体とFe錯体の量の比により、生成するFePtのナノ粒子の組成を制御することができる。
次いで、フラスコ内の溶液を室温まで冷却する。次いでフラスコ内にエタノールを40mL加えて、遠心分離機によりナノ粒子及び有機安定剤の沈殿物が取り出される。
次いで、フラスコ内にナノ粒子及び有機安定剤の沈殿物にヘキサンを加える。こうして、ヘキサン中に分散するナノ粒子が得られる。上記の条件では、平均粒径4.3nm、組成比Fe:Pt=50原子%:50原子%のFePtのナノ粒子が得られる。
なお、上記Fe錯体であるFe(CO)5の替わりに、Fe2(CO)9、Fe3(CO)12を用いていてもよい。また、アセチルアセトナト白金などのアセチルアセトナト塩、Fe(CO)5の替わりに、金属化合物、例えば、カルボン酸の塩、青酸の塩、スルホン酸の塩、ホスホン酸の塩から選択される有機酸の塩が用いられてもよい。このような金属化合物に含まれる金属元素には、例えばFe、Co、Ni、Pt、Cu、及びAgが含まれればよい。ナノ粒子の形成にあたって例えば2種類以上の金属化合物が含まれてもよい。
また、FePtのナノ粒子の組成比はアセチルアセトナト白金とペンタカルボニル鉄の使用量との比により制御することが可能である。また、同様に上記金属化合物の使用量との比により、FePd、CoPt、FePtAg、FePtCu等の組成を制御可能である。
[ナノ粒子の結晶規則化]
次いで、ナノ粒子の結晶規則化を行う。本実施の形態に従ってシリカゲルにナノ粒子を埋め込む装置、及びシリカゲル、ナノ粒子が空孔に埋め込まれた様子を参照するに、ヘキサン中に分散するナノ粒子27が入ったフラスコ内に約3gの平均径(直径)が7.5nmの空孔を有するシリカゲル(和光純薬工業社商品名Silica Gel CQ−3)を加え撹拌する。具体的には、空孔の平均径が2nm〜20nmの範囲のシリカゲルを用いことができる。なお、シリカゲルの替わりに、かかる範囲の空孔を有するテンプレートを用いることができる。例えば、テンプレートはシリコン酸化膜の表面にホトリソグラフィ法及びエッチングにより空孔を設けたものでもよく、アルマイトを陽極酸化して細孔を設けたものでもよい。また、空孔のアスペクト比(=空孔の深さ/平均径(直径))が1〜4であることが好ましい。次に説明する加熱処理の際に、空孔内に保持されナノ粒子が飛散することがない。次いで、このまま室温下で約2日間放置することにより、図(A)及び(B)に示すように、シリカゲルの空孔31−1内にナノ粒子27が充填される。
次いで、ナノ粒子が埋め込まれたシリカゲルを取り出し石英容器を用いて、ファーネスなどの真空熱処理装置を使用して、1.33×10−4Paの真空度及び800℃の温度下において30分間加熱する。この加熱処理によりFePtのナノ粒子の結晶は、fcc(体心立方)構造からfct(体心正方)構造への規則化が生じ、ナノ粒子に強磁性が発現して硬磁性ナノ粒子が形成される。具体的には、加熱温度は400〜900℃、加熱時間は20〜60分間に設定される。この加熱処理では雰囲気ガスを用いずに真空中で加熱処理を行う。雰囲気ガス、例えばArガス等を用いるとナノ粒子を自己整列させている有機安定剤との相互作用により、有機安定剤がナノ粒子間より除去されてしまい、ナノ粒子同士を接触・融着させてしまうと推察され、真空中で加熱処理を行うことにより、上記合成後の状態のナノ粒子の粒径及び粒径分布を保持したまま結晶の規則化を行うことができる。また、ナノ粒子はシリカゲルの細孔中に保持されているので、真空雰囲気を形成する際や加熱処理の際にナノ粒子の飛散を防止することができる。
さらに、硬磁性ナノ粒子は、互いに加熱処理により有機安定剤が焼成されて生じたアモルファスカーボンにより接続されているが、空孔中に積み上げられた状態で加熱処理されているので、隣合うナノ粒子同士の結合が弱く、容易に結合を切ることができる。
次いで、Ar雰囲気下において、加熱後の硬磁性ナノ粒子が含まれるシリカゲルを99vol%のフッ酸を加え、約60分間浸漬することによりシリカゲルを溶解する。遠心分離機を用いてナノ粒子とシリカゲルとが溶融しているフッ酸の溶液を分離して、沈殿している硬磁性ナノ粒子のみをスポイトを用いて取り出す。取り出した硬磁性ナノ粒子にエタノールを5mL加え、さらに遠心分離機を用いて洗浄後、沈殿している硬磁性ナノ粒子を抽出する。
次いで、フラスコ内に硬磁性ナノ粒子に0.32mL(1.0mmol)のオレイン酸と、0.34mL(1.0mmol)のオレイルアミンを加え撹拌する。硬磁性ナノ粒子はオレイン酸やオレイルアミンといった有機安定剤に包まれる。次いで10mLのヘキサンを加え硬磁性ナノ粒子を分散させる。なお、硬磁性ナノ粒子はこの状態では磁化されていないので、磁気的な凝集力は弱く比較的容易に分散させることができる。以上により、ヘキサン中に分散された硬磁性ナノ粒子が形成される。
(軟磁性ナノ粒子の形成)
次に磁気記録媒体の中間層に用いられる軟磁性ナノ粒子の形成方法について説明する。例えば、アルゴン雰囲気下においてフラスコにFe錯体、例えば、0.13mL(1.0mmol)のペンタカルボニル鉄Fe(CO)5と、還元剤、例えば、390mg(1.5mmol)の1、2−ヘキサデカンジオールと、溶媒、例えば20mLのジオクチルエーテルを加える。
次いで、フラスコに、0.32mL(1.0mmol)のオレイン酸と、0.34mL(1.0mmol)のオレイルアミンを加え、フラスコ内の溶液を230℃の温度下において約30分間撹拌する。その結果、フラスコ内にはFe2O3よりなる軟磁性ナノ粒子が生成される。
次いで、フラスコ内の溶液を室温まで冷却する。次いでフラスコ内にエタノールを40mL加えて、遠心分離機によりナノ粒子及び有機安定剤の沈殿物が取り出される。
次いで、フラスコ内に軟磁性ナノ粒子及び有機安定剤の沈殿物にヘキサンを加える。こうして、ヘキサン中に分散する軟磁性ナノ粒子が得られる。上記の条件では、平均粒径20nmのFe2O3のナノ粒子が得られる。
なお、NiFe(パーマロイ)よりなる軟磁性ナノ粒子を形成する場合は、例えば、上記Fe錯体とNi錯体、例えばアセチルアセトナトNi(II)を用いて同様に形成することができる。
(垂直磁気記録媒体の形成)
次に磁気記録媒体の形成方法を説明する。まず、例えば2.5インチの結晶化ガラス基板等のディスク状の基板21を洗浄後、ディスク基板上にスパッタリング法により厚さ200nmの、例えばFeSiよりなる軟磁性裏打ち層26を形成する。上述したように、メッキ法やCVD法により形成してもよい。
次いで、スピンコート法、または浸漬法により軟磁性ナノ粒子よりなる中間層を形成する。
本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の製造に用いられるスピンコータは、密閉型の容器と、容器内には軟磁性裏打ち層26を形成した基板21を真空吸引により固定するハブ部を有する回転軸と、容器内空間に臨むように設けられたコート液用ノズル及びヘキサン用ノズルと、ヘキサン用ノズルから滴下されたヘキサンを気化させる気化器と、気化ガスの蒸気圧を検出する蒸気圧センサと、容器内空間にガスを充填し、基板21に向かって噴出させるガス導入口と、容器内空間のガスを排気する真空ポンプなどより構成されている。さらに、基板21に磁場を印加するために、基板21を挟んで対向する1組の電磁石が設けられ、基板21に垂直に磁場を印加可能となっている。
スピンコータのハブ部に基板21を真空吸引により固定した後、基板21を300rpmで回転させた。容器内を密閉し、真空に排気後、容器内にヘキサン用ノズルからヘキサンを100mL導入し、気化器を約80℃に加熱することによりヘキサンを気化させて、容器内を予めヘキサン雰囲気とした。
次いで、溶媒のヘキサンにFe2O3の軟磁性ナノ粒子とカルボン酸及びアミンを含んだ有機混合物を分散させた濃度10mg/mLの200μLのコート液を、コート液用ノズルから5秒間で滴下した。
コート液の滴下は、基板21を60rpmのゆっくりした回転数で回転させた状態で、コート液用ノズルを半径方向に0.5cm/秒の速度で移動させながら滴下した。これにより、コート液は基板21に対し渦巻状態で滴下されることになる。
次いで、基板21を1000rpmで10秒間回転させることにより、コート液を基板21の表面全面に広げた。このスピンコート工程においては、容器内はヘキサン蒸気で満たされているので、コート液中のヘキサンが揮発することはない。
次いで、基板21表面の残存ヘキサンを乾燥させるために、基板21を300rpmで回転させた状態で、容器内に窒素ガスを10sccmの流量で120秒間導入して、コート液中のヘキサンを蒸発させた。
このとき、複数のガス導入管を概略均一に面内分布させているので、基板21の表面全面に窒素ガスが均一に当たり、基板全面においてゆっくりと均一にヘキサンの蒸発が生じるので、Fe2O3の軟磁性ナノ粒子が整然と均一な厚さで整列したナノ粒子膜を成膜することができる。
Fe2O3の軟磁性ナノ粒子よりなる中間層の表面のSEM写真を参照するに、整然とFe2O3の軟磁性ナノ粒子が配列されている様子が確認できる。
次いで、スピンコート法、または浸漬法により硬磁性ナノ粒子よりなる記録層を形成する。記録層は、磁場を印加して硬磁性ナノ粒子を配向させる以外は上記軟磁性ナノ粒子よりなる中間層と同様に形成する。具体的には、容器内を密閉し、真空に排気後、容器内にヘキサン用ノズルからヘキサンを100mL導入し、気化器を約80℃に加熱することによりヘキサンを気化させて、容器内を予めヘキサン雰囲気とした。
次いで、溶媒のヘキサンにFePtの硬磁性ナノ粒子とカルボン酸及びアミンを含んだ有機混合物を分散させた濃度10mg/mLの200μLのコート液を、コート液用ノズルから5秒間で滴下した。
コート液の滴下は、基板21を60rpmのゆっくりした回転数で回転させた状態で、コート液用ノズルを半径方向に0.5cm/秒の速度で移動させながら滴下した。これにより、コート液は基板21に対し渦巻状態で滴下されることになる。
次いで、基板21を1000rpmで10秒間回転させることにより、コート液を基板21の表面全面に広げた。このスピンコート工程においては、容器内はヘキサン蒸気で満たされているので、コート液中のヘキサンが揮発することはない。
次いで、スピンコータの電磁石をオンにして、基板21を例えば60rpmで回転させた状態で、磁場7.9×103〜1.58×104A/m(1000〜2000Oe)を基板21面に略垂直方向、例えば上から下に印加する。磁場を印加することにより記録層27の硬磁性ナノ粒子27の磁化容易軸を基板21面に対して略垂直方向に配向することができる。この際印加する磁場の大きさは、硬磁性ナノ粒子が回転する程度の磁場でよく上記の磁場の範囲内で小さい程良い。硬磁性ナノ粒子が強く磁化してしまうと残留磁化が大となり、磁気的な凝集力が増大してしまう。同時に基板21表面の残存ヘキサンを乾燥させるために、容器内に窒素ガスを10sccmの流量で120秒間導入する。なお、磁界はコート液の滴下からヘキサンを乾燥させる間、連続して印加してもよい。また、電磁石の替わりに永久磁石を用いてもよい。
なお、電磁石はスピンコータの容器の外に、容器全体を挟むように設けてもよい。基板21全体に一様に磁場を印加することができる。
以上により、FePtの硬磁性ナノ粒子27が整然と整列した厚さ10nmの記録層27を形成することができる。
次いで、記録層27表面に平坦化加熱処理を行う。例えば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下において100℃〜300℃の温度範囲に設定される。平坦化加熱処理の時間は例えば1分〜60分の範囲に設定される。その結果、中間層26の軟磁性ナノ粒子及び記録層27の硬磁性ナノ粒子の分布が均一化され、中間層26及び記録層27の表面がさらに平坦化される。平坦化加熱処理は、中間層26及び記録層27の形成後にそれぞれ行ってもよい。なお、平坦化加熱処理において、記録層27を形成する際と同様に磁場をディスク基板に印加してもよい。なお、平坦化加熱処理は行わなくてもよい。
次いで、有機安定剤をアモルファスカーボンよりなるカーボン相に変換して、軟磁性ナノ粒子及び硬磁性ナノ粒子を固定化するための熱処理を行う。記録層27まで形成したディスク基板を熱処理装置のチャンバ内に配置し、チャンバ内を例えば真空度10−5Pa程度まで排気し、例えば加熱温度350℃、30分間の熱処理を行う。具体的には加熱温度は300℃〜550℃、好ましくは300℃〜400℃に設定される。また、熱処理時間は10分〜120分に設定される。
次いで記録層27上に保護層28の成膜を行う。スパッタ装置内に水素ガス分圧が調整された水素とアルゴンとの混合ガス雰囲気下で厚さが5nmの水素化カーボンを形成する。保護層28は、スパッタ法の他、CVD法、FCA(Filtered CathodArc)法などにより形成してもよい。
最後に、保護層28上に厚さ3nmの潤滑層28を例えば潤滑剤AM3001を含むフロン系溶剤を用いて引き上げ法、液面降下法等により塗布する。
次いで、有機安定剤をアモルファスカーボンよりなるカーボン相に変換して、軟磁性ナノ粒子及び硬磁性ナノ粒子を固定化するための熱処理を行う。上記保護層28まで形成したディスク基板を熱処理装置の半導体レーザを配置した熱処理装置に取り付け、ディスクを回転させながら、記録層27に、例えば、レーザ光を照射し、フォーカスポイントからオフセットさせることにより、広い範囲を同時に熱処理をする。また、レーザ光強度を調整し、複数トラックでの記録層のナノ粒子の熱処理温度を調整しながら製造することができる。ここで、記録層の温度が380℃に昇温するように熱処理を行う。具体的には、ディスクの回転数、1500rpm、波長830nm、開口数N.A.0.45のレーザ光スポットの照射により、加熱温度は280℃〜650℃、好ましくは350℃〜450℃に設定される。従来の、ナノ粒子よりなる記録層27を形成した後に結晶の規則化を行っていた方法と比較して、より低温の加熱温度とすることができる。400℃以下の加熱温度とすることで、軟磁性裏打ち層の非晶質材料又は微結晶材料の結晶化あるいは結晶粒の成長を防止し、高周波透磁率の低下を回避することができる。さらに、ディスク基板には、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、Si基板、テープ状基板にはポリイミドフィルムを用いることができる。
400℃以下の加熱温度とすることで、軟磁性裏打ち層の非晶質材料又は微結晶材料の結晶化あるいは結晶粒の成長を防止し、保護層、潤滑層の特性劣化を防止し、高周波透磁率の低下を回避することができる。さらに、ディスク基板には、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、Si基板、テープ状基板にはポリイミドフィルムを用いることができる。また、熱処理は、レーザ光スポットが、ディスク上を1回通過、あるいは、複数回通過するように設定される。
なお、保護層28上の潤滑層28は、熱処理後に塗布しても良い。
以上により本実施の形態の垂直記録媒体が形成される。
本実施の形態によれば、レーザ光スポットの照射により、記録層、硬磁性ナノ粒子をの結晶規則化の熱処理が行われているので、結晶規則化のための高温にディスク基板や軟磁性裏打ち層をさらすことがないので、基板材料の選択の幅が広がると共に、軟磁性裏打ち層の高周波透磁率を低下、保護層、潤滑層の特性が劣化することを回避できる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る垂直磁気記録媒体の製造方法について説明する。本実施の形態は、垂直磁気記録媒体の製造方法において、ナノ粒子の結晶規則化工程に特徴があり、ナノ粒子の結晶規則化工程が異なる以外は実施の形態2と同様である。ナノ粒子の結晶規則化工程以外の工程の説明を省略し、本実施の形態の製造方法により製造された垂直磁気記録媒体についても、実施の形態2に係る垂直磁気記録媒体と同様の構成であるので、説明を省略する。
本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の製造方法では、結晶規則化工程において、実施の形態2と同様にして形成したナノ粒子を、実施の形態2のシリカゲルに換えて、水溶性塩の表面に吸着させて結晶規則化工程を行う。
実施の形態3の結晶規則化工程おける処理フローにより結晶規則化工程について説明する。
最初に、フラスコ内にナノ粒子が分散した有機溶媒、例えばヘキサンに水溶性塩を加え撹拌し、さらに30分程度静置し、ナノ粒子を水溶性塩の表面に吸着させたナノ粒子担持体を形成する。水溶性塩は、特に限定されないが、結晶水を有する塩(含水塩)から結晶水を脱水した無水塩、例えば、MgSO4・7H2O(硫酸マグネシウム七水和物)から結晶水を脱水したMgSO4が、表面エネルギーが高くナノ粒子を吸着しやすい点で好ましい。このような無水塩としては、MgSO4、Na2O4、PdSO4、(NH4)2MgSO4(III型)、Ce(III)SO4、NiSO4、CdSO4等の硫酸塩、Ca2(NO3)2、Sr(NO3)2等の硝酸塩が挙げられ、無水塩の単位質量当たりのナノ粒子の吸着量が多い点で、MgSO4、Na2O4が特に好ましい。
ナノ粒子担持体のナノ粒子が吸着した様子を拡大して参照するに、水溶性塩の表面にナノ粒子27が吸着する。本願発明者の検討によれば、水溶性塩はその表面に微小な凹凸や数nmの大きさの開口部を有する細孔が形成されている方がナノ粒子を吸着する量が多く好ましいことが確認されている。この凹凸は、例えば上述水溶性塩は、ナノ粒子の1質量部に対して、20質量部以上添加することが好ましい。水溶性塩が20質量部より少ないと水溶性塩の表面にナノ粒子同士が積層し、規則化加熱処理において融着するおそれがある。また、水溶性塩は、ナノ粒子の1質量部に対して添加する最大量について特に制限がないが、ナノ粒子担持体の取扱いおよび水溶性塩の効率的使用の点で400質量部以下が好ましい。
図6に戻り、次いで、有機溶媒を蒸発させ、ナノ粒子担持体を石英容器に移し規則化加熱処理を行う(S1O4)。規則化加熱処理は真空熱処理装置を使用し、1.33×10−4Paの真空度及び800℃の温度下において30分間加熱する。規則化加熱処理によりFePtのナノ粒子の結晶は、fcc(体心立方構)構造よりfct(体心正方)構造に規則化し、ナノ粒子に強磁性が発現して硬磁性ナノ粒子が形成される。具体的には、加熱温度は500〜900℃、加熱時間は20〜60分間に設定される。真空中で加熱処理を行うことにより、上記合成後の状態のナノ粒子の粒径及び粒径分布を保持したまま結晶の規則化を行うことができる。
次いで、ナノ粒子担持体を冷却し硬磁性ナノ粒子の抽出する(S1O6)。硬磁性ナノ粒子の抽出は、例えば、硬磁性ナノ粒子と水溶性塩を硬磁性ナノ粒子100mgに対してヘキサン10mLにオレイン酸0.1mLを含む溶媒に加え撹拌し、さらに、ヘキサンとほぼ等量の水を加えて撹拌し水溶性塩を溶解する。次いで、分液ロートにより水相を分離し、次いでエタノールで洗浄することで水を除去した後にヘキサンに分散することで、ヘキサン中に分散された硬磁性ナノ粒子を得る。以上により、ヘキサン中に分散された硬磁性ナノ粒子が形成される。
本実施の形態では、ナノ粒子を吸着させるナノ粒子担持体に水溶性塩を用いることで、水溶性塩を水で溶解することで容易な処理でかつ硬磁性ナノ粒子に影響を与えることなく抽出することができる。また、ナノ粒子担持体を形成する時間が、第2の実施の形態のシリカゲルを用いる場合より短縮され、ナノ粒子の結晶規則化工程のプロセス時間を短縮することができる。
次に実施の形態3の第1変形例を説明する。第1変形例は、図に示したS1O4の規則化加熱処理において、真空中の代わりに還元雰囲気中でナノ粒子担持体を加熱処理する以外は実施の形態2と同様である。
次いで、有機溶媒を蒸発させ、ナノ粒子担持体を石英容器に移し規則化加熱処理を行う(S1O4)。規則化加熱処理は真空熱処理装置を使用し、1.33×10−4Paの真空度下において、赤外線ランプを用いて、記録層に照射することにより、ディスク全面を一括でアニール処理できる。この結果、記録層のナノ粒子は、膜面垂直方向の磁気異方性を増大させることができ、高密度記録可能となる。加熱処理により、規則化加熱処理によりFePtのナノ粒子の結晶は、fcc(体心立方構)構造よりfct(体心正方)構造に規則化し、ナノ粒子に強磁性が発現して硬磁性ナノ粒子が形成される。具体的には、加熱温度は500〜900℃、加熱時間は0.2〜10秒間に設定される。さらに、真空中で加熱処理を行うことにより、上記合成後の状態のナノ粒子の粒径及び粒径分布を保持したまま結晶の規則化を行うことができる。
第1変形例の規則化加熱処理は、具体的には、還元雰囲気、例えば水素ガスを1vol%〜7vol%含むArガス雰囲気中で、圧力1.01×104Pa〜1.52×105Pa、加熱温度を500〜900℃(好ましくは550度〜650℃)、加熱時間を2〜10秒間に設定して石英容器に入れたナノ粒子担持体をランプの照射により加熱処理する。
ナノ粒子の表面には自然酸化膜等の酸化膜が形成されているが、このような酸化膜は規則化の際にナノ粒子を構成する金属原子の拡散を抑制し、規則化のための活性化エネルギーを高めている、すなわち規則化温度を高温化している。水素ガスを使用することで、水素ガスの還元作用により酸化膜をナノ粒子内部と同じ合金に変換することにより、金属原子の拡散を容易化し規則化温度を低下させることができる。本願発明者の検討によれば、実施の形態2の真空中で規則化加熱処理を行う場合と比較して、同程度の規則化された硬磁性ナノ粒子を得る場合、加熱温度を200℃程度低下させることができることが確認されている。すなわち、実施の形態2の規則化加熱処理において800℃〜900℃の加熱処理により得られる規則化状態は、第1変形例では600℃〜700℃の加熱処理により得ることができる。
また、水素ガスの濃度は、安全性を確保できる限り1vol%〜7vol%に限定されず、水素濃度は高い方がよく、100vol%でもよい。また、希ガスはArガスに限定されず、Ar、He、Ne、Kr、Xeの各ガスを1種あるいは2種以上含んでいていもよい。
第1変形例の一実施の形態として、ヘキサン1mL中においてFePt(Fe:50原子%、Pt:50原子%)のナノ粒子3mgとMgS460mgによりナノ粒子担持体を形成し、ヘキサンごと石英容器に移した後にヘキサンを蒸発させ、水素ガス3vol%のArガス雰囲気中で700℃、圧力1.01×105Pa、30分の加熱処理を行った。このようにして得られた硬磁性ナノ粒子をMgSO4と共にX線ディフラクトメータを用いて2θ/θスキャンによりX線解析を行った。
規則化されたナノ粒子、すなわち硬磁性ナノ粒子のX線回折パターンを参照するに、FePtのfct構造の回折線(110)面(2θ=33.1度)、(111)面(40.7度)、(200)面(47.1度)、(002)面(48.7度)、(201)面(53.4度)に現れており、硬磁性ナノ粒子がfct構造を有することが分かる。なお、回折線AはMgSO4に由来するものである。
本変形例によれば、規則化加熱処理の際に水素ガス含有雰囲気中で、ランプ照射により加熱処理を行うことにより、真空中の加熱温度より低い加熱温度で規則化が進んだfct構造の硬磁性ナノ粒子を形成することができる。
次に、実施の形態2の第2変形例を説明する。第2変形例は、第1変形例の還元雰囲気での規則化加熱処理の代わりに、還元処理(S1O2)をナノ粒子担持体の形成(S1O0)の後に、還元雰囲気中で、第1変形例よりも低温の加熱温度で還元処理を行い、次いで真空中で規則化加熱処理(S1O4)を行い、それ以外は第1変形例と同様である。
第2変形例の還元処理(S1O2)は、具体的には、第1変形例と同様の水素ガス含有雰囲気中で、圧力5.07×104Pa〜1.52×105Pa、加熱温度を100〜450℃、加熱時間を20分〜120分間に設定して石英容器に入れたナノ粒子担持体を加熱処理し、ナノ粒子表面の酸化膜を還元し合金に変換する。
次いで、水素ガス含有希ガスを排気して真空中で規則化加熱処理(S1O4)を行う。具体的には、1.33×10−4Paの真空中で、加熱温度500℃〜900℃(好ましくは、600℃〜700℃)に設定し、20分〜60分間に設定し、ナノ粒子担持体の加熱処理を行い、規則化させる。本願発明者の検討によれば、実施の形態2の真空中で規則化加熱処理を行う場合と比較して、同程度の規則化された硬磁性ナノ粒子を得る場合、加熱温度を200℃程度低下させることができる。すなわち、実施の形態2の規則化加熱処理において800℃〜900℃の加熱処理により得られる規則化状態は、第1変形例では600℃〜700℃の加熱処理により得ることができる。
また、第2変形例によれば、規則化加熱処理を真空中で行うことにより、ナノ粒子同士の熱融着を一層抑制することができる。
次に、実施の形態2の第3変形例を説明する。第3変形例は、実施の形態2のナノ粒子担持体形成処理を省略し、有機溶媒中でナノ粒子の還元処理を行い、次いで還元されたナノ粒子を有機溶媒中で規則化熱処理を行い、次いで硬磁性ナノ粒子の抽出処理を行う。
第3変形例の還元処理および規則化加熱処理は、ナノ粒子を還元剤を含む有機溶媒中で続けて行い、沸点の高い有機溶媒を使用することで、有機溶媒中で還元処理および規則化加熱処理を行うことができ、また、還元されたナノ粒子の表面が再び酸化されることを防止して低い加熱温度で規則化することができる。
最初に、還元処理は、ナノ粒子を有機溶媒、例えばジオクチルエーテルに還元剤を添加し、この中にナノ粒子を分散させる。還元剤としては公知の還元剤を用いることができ特に限定されないが、例えば、LiAlH4、Li(C2H5)3BH、BH3、BxHy(xは2以上の整数、y=2x)で表されるボラン、NaH、KH、CaH2等の水素化物を用いてもよい。例えば、ジオクチルエーテルにNaHを20mg添加し、さらにナノ粒子を10mgを添加・撹拌し、加熱温度を例えば100℃、10分間に設定し加熱して、ナノ粒子の表面を還元する。還元処理は、具体的には、加熱温度が50℃〜200℃、加熱時間は5分〜20分間に設定する。
次いで、還元されたナノ粒子を含む有機溶媒を例えば300℃に昇温し30分間に設定して撹拌しながら加熱し、ナノ粒子の規則化加熱処理を行う。ナノ粒子の表面が還元されているので、このような低温の加熱温度で、ナノ粒子がfct構造に規則化し硬磁性ナノ粒子が形成される。規則化加熱処理は、具体的には、加熱温度を250℃〜400℃、加熱時間を20分〜60分間に設定する。なお、還元処理および規則化加熱処理に用いられる有機溶媒は、大気圧下でこれらの処理を行う場合は、沸点の点で、炭素数が10以上20以下のエーテル類を用いることが好ましい。
このようにして得られた硬磁性ナノ粒子を含む有機溶媒にアルコール、例えばエタノールを添加して沈殿を形成し、上澄み液を除去して沈殿を得る。この沈殿をさらにエタノールで洗浄する。これら処理によりほぼ反応残渣を除去することができる。さらに、このようにして得られた沈殿を、オレイン酸を添加したヘキサンに分散させ、遠心分離機により得られた上澄み液を得ることにより、硬磁性ナノ粒子が分散したヘキサン溶液が得られる。
本変形例によれば、高製造コストの真空プロセスの代わりに還元処理および規則化加熱処理を有機溶媒中、不活性溶媒中、あるいは、不活性ガス中で行うことができるため、製造コストを低減できると共に、規則化処理工程を簡略化することができる。
なお、第3変形例の還元処理の加熱温度を規則化加熱処理の加熱温度と同様にして、還元処理と規則化加熱処理を同時に行ってもよい。
また、結晶規則化工程の前工程であるナノ粒子の形成工程において、生成されたナノ粒子と、Pt錯体や還元剤などの未反応物が残るフラスコ内に上記還元剤および有機溶媒を添加して還元処理を行い、硬磁性ナノ粒子の形成工程における遠心分離機による未反応物の分離処理を省略してもよい。また、規則化を一層進めるために、上述した第2変形例と同様に真空中でナノ粒子を規則化熱処理してもよい。また、ランプの光照射面には、光学フィルター37を用いて、特定波長のみを照射する構成であっても良い。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る磁気記録媒体について説明する。
図5は本発明の実施の形態4における磁気ディスク40の構造を示す断面図である。図5において、41はAlからなる金属のディスク基板、その上の、46は下地軟磁性層、47は、FePtからなる記録層、である。さらに、48は記録膜を保護し磁気ヘッドを摺動させるための保護層、と潤滑保護層である。本実施の形態では、磁気記録媒体の記録層は、Fe/Ptを超格子構造に積層して形成した構造である。
次に、本願発明の実施の形態4の磁気ディスク40の構成と作製方法について詳細に説明する。
図5に示すように、ディスク基板41に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。磁気記録媒体40には、記録トラックにフォーマット信号のピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施の形態の磁気ディスクのトラックピッチは0.3μmである。
まず、ディスク基板41上に、マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10−6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガス及びN2ガスを導入し、基板を回転させながら、FeAlSiからなる軟磁性の裏打ち下地層46を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Pt、Feそれぞれのターゲットを用いて、PtFeの記録層47を40nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、Pt、Feは交互に1nnmずつ積層し、超格子構造になるように、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワーによる膜厚比を調整することにより、所望の膜組成と膜構造に合せることができる。
そして、さらに記録層47の上には、ArとCH4により、プラズマCVDにより、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる、保護層48を7nmの膜厚に形成する。さらに、パーフロロポリエーテル(PFPE)からなる潤滑保護層を、3nmの膜厚にディッピングにより塗布形成する。
さらに、ディスク基板を1800rpmで回転させながら、レーザ光を照射しながら、記録層をアニール処理する。ここで、照射するレーザ光スポットは、レーザ光波長780nm、開口数N.A.0.45の光学系のレーザ光スポットを照射し、直径10μmφに集光することにより、複数トラックを同時にアニール処理することができる。この時、記録層の複数のトラックを同時に昇温させ、温度550℃以上にすることにより、アニール処理することにより、結晶構造を安定化させることができる。また、高速でディスクを回転させながら、熱処理することができ、しかも、金属のディスク基板がヒートシンクの役割もするため、ディスク基板、下地層、保護層を劣化させることなく、記録層の結晶化を促進して磁気異方性を増大させ、膜構造を安定化させることにより、高密度に記録することができる。
本願発明の実施形態の製造方法では、Fe100−XPtXからなる記録層47は、X=20at%〜60at%、さらに好ましくはX=35at%〜55at%の範囲から選択される組成比を有し、投入パワーを調整して超格子構造に積層して形成されている。この膜構造と組成、アニール処理により、膜構造が安定化し膜面垂直方向の磁気異方性も大きいため、情報信号の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。
図5で示した本発明の実施の形態4の磁気記録媒体は、記録層側からレーザ光ビームを照射し、記録膜47が形成された潤滑保護層48上から、磁気ヘッド102により信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、レーザ光スポットの検出限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
ここで、本実施の形態の記録層は温度Tの上昇と共に、記録層47の保磁力Hcが減少する特性を有していれば、磁気ヘッドでの記録が容易で、GMRヘッドで再生した場合にも、再生信号の検出感度を向上させることができる。
また、実施の形態1で示した磁気記録媒体と同様に、DWDD方式等の磁気的超解像方式を用いれば、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させ、この磁壁の移動を磁気ヘッドにより検出することによって、再生時に信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
ここで、ディスクのフォーマットは、膜形成と熱処理後に、サーボ信号等のフォーマット信号を記録することにより、記録再生可能であるが、ディスク基板、あるいは、下地層形成前に、ディスクリートされたピットを形成したディスク基板を用いた構成により、トラッキングサーボとアドレス検出のための、ピットが形成され、記録トラックは、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とが検出できる構成であっても良い。
さらに、記録層は、結晶規則化されたナノ粒子の構造を用いて製造された垂直磁気記録媒体についても、同等以上の効果が得られる。
ここで、レーザ光波長780nm、開口数N.A.0.45の光学系のレーザ光スポットを照射し、複数トラックを同時にアニール処理する製造方法について述べてきたが、特に、このレーザ波長、光学構成に限定されるものではなく、異なる波長、NAであっても良い。また、複数のトラックのみでなく、セクターごとを同時に熱処理する構成であっても良い。さらに、赤外線ランプを用いて、記録層に照射することにより、ディスク全面を一括でアニール処理できる。この結果、記録層のナノ粒子は、膜面垂直方向の磁気異方性を増大させることができ、高密度記録可能となる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る磁気記録媒体について説明する。
図6は本発明の実施の形態5における磁気ディスク50の構造を示す断面図である。図6において、51はガラスからなる透明なディスク基板、その上の、56は下地軟磁性層、57は、FePdとSiO2の材料からなる記録層、である。さらに、58は記録膜を保護し磁気ヘッドを摺動させるための保護層、と潤滑保護層である。本実施の形態では、磁気記録媒体の記録層は、FePdとSiO2を混合させた構造に形成した構造である。
次に、本願発明の実施の形態5の磁気ディスク50の構成と作製方法について詳細に説明する。
図6に示すように、ディスク基板51に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。磁気記録媒体50には、記録トラックにフォーマット信号のピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施の形態の磁気ディスク50のトラックピッチは0.25μmである。
まず、ディスク基板上に、マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.4Paとなるまでチャンバー内にArガス及びN2ガスを導入し、基板を回転させながら、FeSiからなる軟磁性の裏打ち下地層56を60nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、FePdとSiO2をそれぞれのターゲットを用いて、記録層57を45nm、マグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、FePdとSiO2は同時にマグネトロンスパッタリングしグラニュラー状に混合させて、コ−スパッタリング法により形成する。ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワーと組成比を調整することにより、所望の膜組成と膜構造に合せることができる。
そして、さらに記録層57の上には、ArとCH4により、プラズマCVDにより、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる、保護層58を8nmの膜厚に形成する。さらに、パーフロロポリエーテル(PFPE)からなる潤滑保護層を、4nmの膜厚にディッピングにより塗布形成する。
さらに、透明なディスク基板を通して基板側からレーザ光を照射しながら、1500rpmで回転させながら、記録層をアニール処理する。ここで、照射するレーザ光スポットは、レーザ光波長680nm、開口数N.A.0.5の光学系のレーザ光スポットを照射し、直径8μmφに集光することにより、複数トラックを同時にアニール処理することができる。この時、記録層の複数のトラックを同時に昇温させ、温度550℃以上にすることにより、アニール処理することにより、結晶構造を安定化させることができる。また、高速でディスクを回転させながら、熱処理することができ、しかも、保護層、潤滑保護層を直接加熱することなくアニール処理できるため、ディスク基板、下地層、保護層を劣化させることなく、記録層の結晶化を促進して磁気異方性を増大させ、膜構造を安定化させることにより、高密度に記録することができる。
本願発明の実施の形態の製造方法では、(Fe100−XPdX)Y(SiO2)100−Yからなる記録層57は、X=20at%〜60at%、さらに好ましくはX=35at%〜55at%の範囲から選択される組成比を有し、さらに、Y=20at%〜60at%、さらに好ましくはY=35at%〜55at%の範囲から選択される組成比を有し、投入パワーを調整して組成を調整して混合させて形成されている。この膜構造と組成、アニール処理により、膜構造が安定化し膜面垂直方向の磁気異方性も大きいため、情報信号の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。
図6で示した本発明の実施の形態5の磁気記録媒体は、記録層側からレーザ光ビームを照射し、記録層57が形成された潤滑保護層58上から、磁気ヘッド102により信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、レーザ光スポットの検出限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
ここで、本実施の形態の記録層は温度Tの上昇と共に、記録層57の保磁力Hcが減少する特性を有していれば、磁気ヘッドでの記録が容易で、GMRヘッドで再生した場合にも、再生信号の検出感度を向上させることができる。
また、実施の形態1で示した磁気記録媒体と同様に、DWDD方式等の磁気的超解像方式を用いれば、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させ、この磁壁の移動を磁気ヘッドにより検出することによって、再生時に信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
ここで、ディスクのフォーマットは、膜形成と熱処理後に、サーボ信号等のフォーマット信号を記録することにより、記録再生可能であるが、ディスク基板、あるいは、下地層形成前に、ディスクリートされたピットを形成したディスク基板を用いた構成により、トラッキングサーボとアドレス検出のための、ピットが形成され、記録トラックは、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とが検出できる構成であっても良い。
さらに、記録層は、実施の形態1、2同様に、結晶規則化されたナノ粒子の構造を用いて製造された垂直磁気記録媒体についても、同等以上の効果が得られる。ここで、(FeXPd1−X)Y(SiO2)1−Yをナノ粒子の構成に形成した記録層、あるいは、FePdのナノ微粒子とSiO2を混合、あるいは、SiO2のナノ微粒子とFePdを混合して形成した構成であっても同等以上の効果が得られる。
ここで、レーザ光波長680nm、開口数N.A.0.5の光学系のレーザ光スポットを照射し、複数トラックを同時にアニール処理する製造方法について述べてきたが、基板側から、複数のトラックを同時に熱処理するだけでなく、赤外線ランプ、ハロゲンランプ等の加熱ランプを照射し、磁気ディスクの一定の領域を同時にアニール処理する、あるいは、ディスク全面を一括アニール処理する、製造方法であっても良い。また、レーザ光スポットは、上記とは、異なる波長、NAであっても良い。さらに、レーザ光スポット、あるいは、ランプでのアニール処理時に、ディスク周辺を、Heガス等の熱伝導率の大きい媒質中で熱処理する方法であっても良い。この結果、記録層は、膜面垂直方向の磁気異方性を増大させることができ、高密度記録可能となる。また、記録層は、ナノ粒子で形成されたは、膜面垂直方向の磁気異方性を増大させることができ、高密度記録可能となる。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態は、実施の形態6に係る磁気記録媒体を備えた磁気記憶装置に係るものである。
本発明の実施の形態における磁気記録媒体の記録再生装置は、図7に示すような要部の構成を有する。図7を参照するに、記録再生装置(あるいは、磁気記憶装置)100は大略ハウジングからなる。ハウジング内には、スピンドル103により駆動されるハブ(図示されず)、ハブに固定され回転される磁気記録媒体101、アクチュエータユニット、アクチュエータユニットに取り付けられ垂直磁気記録媒体101の半径方向に移動されるアーム及びサスペンションに支持された垂直磁気記録ヘッド102が設けられている。
図7に示すように、スピンドルモータ103に取り付けられた磁気記録媒体(以下、磁気ディスク)101は、磁気ヘッド制御、検出回路106でコントロールされた磁気ヘッドにより、信号が記録再生される。また、磁気記録媒体を熱アシストするための光学ヘッド104は、レーザ駆動回路105により制御されたレーザ光をディスク上に照射しながら、磁気ヘッドでの記録再生を行なう。この時、モータ駆動回路107により、モータの回転駆動制御と、レーザ光のサーボ制御等が行われる。
このような構成の記録再生装置を用いて、本実施の形態の磁気記録媒体は、表面形状の凹凸ピット、あるいは磁気的に記録されたピットにより、トラッキングサーボをかけながら、情報信号の記録再生が可能となる。
ここで、光学ヘッドは、磁気ヘッドと反対方向に配置した構成について示してあるが、磁気ヘッドと同じ側から照射する構成、あるいは、磁気ヘッドと光学ヘッドとなった構成、あるいはさらに、磁気ヘッドが光源とつながった導波路と一体となった構成であっても良い。
以上のような構成により、本実施の形態の記録再生装置は、光ヘッドにより磁気記録媒体を加熱しながら、磁気ヘッド102により、情報信号の記録再生が可能となる。
ここで、磁気ヘッド102は、アルチックのスライダ上にアルミナ絶縁層を介して、単磁極型記録ヘッドとGMR(Giant Magneto Resistive)素子を用いた再生ヘッドが形成された構成となっている。単磁極型記録ヘッドは、垂直磁気記録媒体に記録磁界を印加するための軟磁性体よりなる主磁極と、主磁極に磁気的に接続されたリターンヨークと、主磁極とリターンヨークに記録磁界を誘導するための記録用コイルなどから構成されている。また、再生ヘッドは、主磁極を下部シールドとし、主磁極上にアルミナ絶縁層を介して形成されたGMR素子と、さらにアルミナ絶縁層を介して形成された上部シールドより構成されている。単磁極型記録ヘッドは、主磁極から記録磁界を垂直磁気記録媒体に対して垂直方向に印加して、垂直磁気記録媒体に垂直方向の磁化を形成する。
磁気記録ヘッドの、主磁極の先端部は先端に向かう程先細、すなわち断面積が小となっている。記録磁界に係る磁束密度を高めて垂直保磁力の高い垂直磁気記録媒体101を磁化することができる。主磁極の先端部の軟磁性材料は飽和磁束密度の高い、例えば50at%Ni−50at%Fe、FeCoNi合金、FeCoAlOなどよりなることが好ましい。磁気飽和を防止して高い磁束密度の磁束を集中して垂直磁気記録媒体101に印加することができる。
また、再生ヘッドは、垂直磁気記録媒体101の磁化が漏洩する磁界を感知して、その方向に対応するGMR素子の抵抗値の変化により垂直磁気記録媒体101に記録された情報を得ることができる。なお、GMR素子の替わりにTMR(Ferromagnetic Tunnel Junction Magneto Resistive)素子を用いることができる。
本実施の形態の磁気記憶装置100は、垂直磁気記録媒体101に特徴がある。例えば、垂直磁気記録媒体101は実施の形態1〜5の垂直磁気記録媒体である。
磁気記憶装置100の基本構成は、図7に示すものに限定されるものではない。本発明で用いる垂直磁気記録媒体101は、磁気ディスクに限定されず磁気テープであってもよい。
本実施の形態によれば、磁気記憶装置100は、垂直磁気記録媒体101の記録層が高出力及び低ノイズという特徴を有しているので高密度記録が可能である。また、高い熱揺らぎ耐性を有しているので、長期信頼性に優れている。
以上本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態に係る磁気記録媒体として磁気ディスクを例に説明したが、磁気ディスクに限定されず、例えば、ポリイミドフィルムをテープ基板材料として磁気テープを形成してもよく、このような磁気テープでは上記実施の形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態の磁気記録媒体の記録再生方法では、光照射による熱アシストした構成について述べてきたが、磁気記録媒体の構成、熱アシストと記録再生の方式により、記録時、あるいは再生時に光を照射する構成、あるいは、光パルスに高速で発光させる等の方法、さらに、記録時あるいは再生時に熱アシストしない構成の磁気記録媒体の記録再生方法、装置であってもよい。
特に、記録時には、照射光の光パルスの発光のタイミングを、記録マークエッジと位相が異なる方法による記録再生方法により、さらに効果的に昇温させることができる。
なお、本実施の形態の磁気記録媒体の記録再生方法では、光照射による熱アシストの方法について述べてきたが、その方法に限定するものではなく、熱伝導等を用いた加熱方法で熱アシストする方法でも、記録時と再生時とで、磁気記録媒体の温度分布を変化させる方法であれば同等の効果が得られる。さらに、記録時には、記録膜の温度分布を利用して、浮遊磁界をキャンセルする構成であれば、さらに効果が大きい。
また、本願発明の熱アシストする方法は、記録時と再生時とで、レーザ光照射により、磁気記録媒体の記録領域の最大加熱温度が異なる構成であれば、同等の効果が得られる。
また、本実施の形態の磁気記録媒体は、光照射面側の干渉層が、照射光の波長により吸収係数が異なることを特徴とする磁気記録媒体の構成であったが、磁気記録媒体の記録層近傍に、照射光の波長によって、吸収係数が異なる熱吸収層を設ける、あるいは、記録層の中に、波長によって吸収係数が異なる材料を含有する構成の磁気記録媒体であっても良い。
また、アニール処理の方法として、レーザ光を照射、あるいは、赤外線ランプ、ハロゲンランプを用いた方法について述べてきたが、光を照射することにより、記録層の温度が400℃以上に昇温させる構成であれば、上記の方法に限定されるものではない。
また、複数トラックを同時にアニール処理する製造方法について述べてきたが、膜面側、基板側から、複数のトラックを同時に熱処理するだけでなく、赤外線ランプ、ハロゲンランプ等の加熱ランプを照射し、磁気ディスクの一定の領域を同時にアニール処理する、あるいは、ディスク全面を一括アニール処理する、製造方法であっても良い。また、レーザ光スポットは、異なる波長、NAであって、同等以上の効果が得られる。
さらに、Heガス等の熱伝導率の大きい媒質中で熱処理する方法についても述べてきたが、不活性なガス中、あるいは、不活性な溶液中であっても、レーザ光スポット等の、光を照射することにより、記録層を熱処理することにより、結晶の規則化を促進する方法であれば、同等以上の効果が得られる。
さらに、光学フィルターにより、特定波長のみを照射する構成であっても良い。
また、本実施の形態の記録層の構成は、DWDD方式による、磁気的超解像を用いた多層構造について述べてきたが、記録情報を保持しておく記録層を有し、再生情報の信号量を増大させるための再生層を含む構成であり、2層間は互いに磁気的に結合されている構成であっても良い。あるいは、単層であっても、記録時と再生時に同等の機能を有する構成であれば、同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、DWDD方式を用いた磁気的超解像であって、その膜構成は、再生層、中間層、記録層、あるいはさらに制御層を含む構成について述べてきたが、この構成に限定されるものではなく、RAD、FAD、CAD、あるいは、ダブルマスク方式の磁気的超解像方式、あるいは、MAMMOS方式等の転写した磁区が拡大再生されるような膜構成の磁気記録媒体であっても良い。また、記録膜の構成も、記録層、中間層、再生層の3層構造に限定されず、必要な機能を有した多層膜を形成した構成であれば良い。ここで、MAMMOS方式等を用いた場合には、記録情報に同期させて、再生時間を印加する、あるいは、磁界を交番させながら再生する方法であっても良い。その場合には、記録用磁気ヘッドにより、記録磁界より小さい磁界を印加することになる。
また、DWDD方式を用いた磁気記録媒体では、記録トラック間をアニール処理した構成について述べてきたが、凹凸、あるいは、面粗さを変化させたグルーブ、あるいは、ランドを有し、記録トラック間を分離する構成であっても良い。あるいは、トラック間に案内溝なしで、アニール処理をする構成であっても良い。このような構成であれば、情報の記録されるトラック間が磁性的遮断され、再生層に転写された記録磁区が容易に磁壁移動する構成を実現でき、DWDD方式での信号特性が、さらに優れた磁気記録媒体を実現できる。このように、グルーブ、あるいは、ランドの凹凸により、記録トラック間の分離を行なうと、0.1μm以下の微小磁区を安定して形成し、DWDD方式による転写磁区の磁壁の移動度を確保でき、再生信号特性に優れた磁気ディスクを実現することができる。さらに、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
また、ここで、記録層としては、FePt、FePd、CoPtの群のうち、いずれか1つの合金を主成分として含む磁性薄膜であれば良い。
そして、軟磁性裏打ちの下地層としては、例えば、厚さが50nmから1μmであり、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Nb、CおよびBよりなる群から選択されたうち少なくとも1種類の元素を含む非晶質もしくは微結晶の合金、またはこれらの合金の積層膜などの、飽和磁束密度Bsの高い軟磁性材料により構成されたもの、例えば、FeSi、FeAlSi、FeTaC、NiFeNb、CoCrNbなどを用いることができる。さらに、軟磁性裏打ちの下地層26は、メッキ法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法(化学気相成長法)などにより形成され、特にスパッタリング法が用いることが好ましい。
さらに、下地層と記録層との間の中間層としては、Ti、C、Pt、TiCr、CoCr、SiO2、MgO、およびAl2O3のからなる群のうちいずれか1種の非磁性材料よりなること薄膜であれば良い。
また、ここで、TbFeCoからなる記録層について述べてきたが、希土類金属−遷移金属合金を用いた磁性薄膜であって、少なくともTb、Gd、Dy、Nd、Ho、Pr、Er等の希土類金属材料のひとつと、Fe、Co、Ni等の遷移金属を含む磁性薄膜であれば良い。
また、GdFeCoCrの再生層について、述べてきたが、GdFeCoAl、あるいはその他の材料組成、あるいは、さらに、それらの材料を用いた構成、あるいは、多層に積層した構成であってもよい。
あるいはさらに、記録層のTbFeCo製膜時に、製膜速度、ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの遷移金属とを、周期構造に積層した構成であっても良い。この時の積層周期としては、少なくとも2.0nm以下の周期的な積層構造にすることにより、記録層の飽和磁化Msと保磁力Hcとの積Ms・Hcを増大させることができる。実際、1.0nmの積層周期の記録層では、4.0×106erg/cm3という大きなMs・Hc値が得られ、さらに、本実施形態の磁気記録媒体の記録再生方式により、50nm以下の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
また、本実施の形態の光磁気記録媒体の記録層の膜厚は、100nmであったが、これに限定されるものではなく、記録層の膜厚は20nm以上、より好ましくは、40nmから200nmに形成した構成であれば、同等の効果が得られる。
また、TbFeCoからなる記録層のキュリー温度は300℃から330℃に設定していたが、磁気ヘッドの特性、光学ヘッドによる温度上昇の条件、さらに、環境温度の許容範囲に応じて、少なくとも150℃以上の温度範囲に設定すれば良い。
なお、ここで、磁気記録媒体の記録膜の磁気特性の変化は、ディスク基板、あるいは下地層の変化にも依存しており、保磁力、飽和磁化、磁束密度、磁気異方性、あるいはそれらの温度特性等を含めて本願発明の磁気記録媒体とその記録再生方式に適用できる記録層に調整すれば、同等以上の効果が得られる。
なお、ディスク基板の材料は、ガラス、Al合金の金属、に限定されるものではなく、その他の金属材料、プラスチック材料、結晶化ガラス等を用いても良い。あるいは、磁気ディスクに限定されず、例えば、ポリイミドフィルムをテープ基板材料として磁気テープを形成してもよく、このような磁気テープでは上記実施の形態と同様の効果が得られる。
また、上記本実施の形態の磁気ディスクは、ディスク基板表面にフォトポリマーによりピット、あるいは、案内溝を有する構成について述べてきたが、インプリント等を用いた方法、ディスク基板表面を直接エッチングにより加工した構成、あるいは、直接ピットの加工、あるいは、ガラスを加熱溶融して転写させることによりピット形成を行なっても良い。あるいは、インプリント等を用いてフォトポリマーに転写させる方法、また、フォトレジスト原盤を加工して作製したスタンパを用いて、ディスク基板に転写させて形成させる方法でも良い。
さらにまた、ディスク基板上に塗布した自己組織化された有機の微粒子に、記録層を形成する方法を用いた場合でも、微粒子のパターンの大きさまで高密度に記録が可能となる。さらに、微粒子を、均一な特性を有し、直径の小さいものを用いれば、さらに高密度での記録が可能となる。あるいは、自己組織化された微粒子の形状を、ディスク基板上に、転写形成した構成であっても良い。特に、微粒子を塗布、あるいは、転写してからエッチング等を行なえば、同等の効果が得られる。
また、情報の記録されるトラック幅が0.6μm以下の構成、より好ましくは、トラックピッチが、0.4μm以下の磁気記録媒体に、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であればさらにその効果は大きい。特に、記録トラックが小さく、線記録密度が大きくなった場合には、より効果が大きい。
なお、本実施の形態のプリピットの深さ、大きさは限定していないが、より好ましくは、10nmから200nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成、またサーボピット、アドレスピット等のプリピットからの信号が磁気ヘッドにより検出可能でできるだけ小さい構成であれば、同等以上の効果を実現できる。
また、本実施の形態では、表面形状の異なるプリピット、あるいは、磁気的な記録によるプリピットが形成し、アドレスを検出する方法について述べてきたが、グルーブ、あるいは、ランドをウォブルさせてアドレス情報を検出する方法であっても良い。その場合、グルーブ、あるいは、ランドの片側のみをウォブルさせることもできる。
また、ディスク基板と誘電体の下地層との間に、照射光の波長による熱伝導係数の異なる熱吸収層を形成し、ディスク内での温度分布、熱伝導を制御した構成であっても良い。
また、誘電体層としては、ディスク基板上にSiN、AlTiN、ZnSSiO2、TaO、AgCuについて述べてきたが、AlTi、AlCr、Cr、Ti、Taあるいはその他の材料の酸化物、あるいは窒化物、あるいはカルコゲン系化合物等のII−VI族、III−V族化合物、あるいはさらに、Al、Cu、Ag、Au、Pt等の金属材料、あるいはそれらを含む混合材料であっても良い。またさらに、これらの材料を、保護膜材料として用いても良い。
そして、保護層には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる固体潤滑層をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより形成する方法、あるいは、CVD等を用いてDLC膜を形成する方法により、さらに緻密な膜の形成が可能な方法でもよい。
あるいは、スパッタリングで形成したアモルファスカーボンの保護層でも同様の効果が得られ、さらに、表面粗さ、Raが小さく、摩擦係数の小さい材料で、膜強度の大きい材料であれば、これに限定されるものではない。
また、さらにオーバーコートする保護層として、エポキシアクリレート系からなる樹脂、あるいはウレタン系樹脂を用いて、スピンコートにより5μm程度の均一な膜厚に塗布し、紫外線ランプを照射して硬化、あるいは、熱的に硬化させることにより形成する方法であっても良い。
さらに、潤滑保護層のパーフルオロポリエーテルを塗布する構成については、フッ素系溶剤で希釈して、スピンコート、あるいは、ディッピング等を用いて均一に塗布する方法であれば良い。また、潤滑層材料も下地の保護層上で安定した材料であれば良い。
また、本願発明の磁気記録媒体上に、テープバーニッシュ処理をさらに追加して、表面を傷つくことなく異物、突起などが除去され、内周から外周端まで膜厚分布で均一で平滑性の良好な塗布する工程を用いても良い。
また、磁気記録媒体の記録再生方法は、両面タイプの磁気記録媒体であっても良い。その場合には、ディスク基板両面に、記録層、保護層、を形成した構成の磁気ディスクに、記録層の膜面側から、熱アシストを行ないながら、磁気記録再生する方法となる。また、記録再生装置では、記録膜両面に、熱アシストできる磁気ヘッドを取り付けたドライブ構成にすることが望ましい。
さらに、両面に成膜後、媒体表面をテープバーニッシュ装置に装着し、回転させながら両面を内周から外周に向かってテープバーニッシュすることで、異物、突起などを除去する方法も可能である。
以上述べてきたように、本願発明の磁気記録媒体の記録再生方法では、磁気記録媒体の信号記録領域に、熱アシストしながら、磁気記録再生を行なう方法であって、記録時と再生時では、温度プロファイルの異なる構成により、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、周辺の温度変化に対しても、クロストークが小さく、サーボ特性も安定し、信頼性の高い優れた磁気記録媒体とその記録再生方法を実現できる。
さらに、高密度記録での、繰り返し書き換えを行なった場合にも、安定した記録再生特性が得られ、信号特性に優れた信号特性の磁気記録媒体、および、その記録再生方法を提供することが実現可能となる。
また、本願発明の磁気記録媒体の記録再生装置では、磁気記録媒体を昇温させる加熱手段と、前記磁気記録媒体に磁気的に信号を記録再生する磁気ヘッドとを備え、前記加熱手段により、前記磁気記録媒体を昇温させながら前記磁気記録媒体上に情報信号を記録再生する磁気記録媒体の記録再生装置であって、前記磁気記録媒体を光照射により熱処理する方法により製造することにより、前記磁気記録媒体を記録再生装置により記録再生した際に、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、周辺の温度変化に対しても、クロストークが小さく、サーボ特性も安定し、信頼性の高い優れた磁気記録媒体とその記録再生装置を実現できる。
また、本願発明の磁気記録媒体では、記録領域にレーザ光を照射して加熱し、磁気的に情報の記録再生を行なう熱アシスト記録再生のための磁気記録媒体において、少なくとも、記録層、再生層を備え、前記記録層に記録された情報信号を、前記再生層に転写し、前記再生層の磁壁移動により転写磁区を拡大し、磁気ヘッドを用いて、磁気的に前記再生層の信号の記録再生を行なう前記磁気記録媒体であって、前記磁気記録媒体の記録層あるいは再生層の少なくともひとつは、前記レーザ光波長により吸収係数が変化する構成、あるいは、ガードバンドを設けた構成の磁気記録媒体により、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際にも、磁気ディスクの記録膜での温度分布を容易に変化させることができる。この結果、記録層に、微細な記録磁区を安定して記録可能となり、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。また、周辺の温度変化に対しても、クロストークが小さく、サーボ特性も安定して、信頼性の高い優れた磁気記録媒体とその記録再生方法を実現できる。
このことから、従来の磁気記録媒体の、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇に伴い、微小な記録磁区が劣化するという課題を解決できるものである。特に、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題、さらに、磁気的にサーボピットを形成した場合には、サーボ信号の特性も変動する、あるいはそれに伴い記録再生特性が低下する等の課題を解決するものである。
したがって、本願発明の磁気記録媒体とその記録再生方式は、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度変化にも、微細な記録磁区を安定して記録が可能となる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
以上のように、本実施の形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。