JP2008069197A - ポリ乳酸系2軸延伸フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性、透明性に優れ、包装材料として好適なポリ乳酸系2軸延伸フィルムに関するものである。
【解決手段】ポリ乳酸(A)50〜90質量%と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量%からなる2軸延伸フィルムであって、該フィルム中に含まれるラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であることを特徴とする2軸延伸フィルム。ガラス転移温度が40℃〜55℃、融点が140℃以上である前記ポリ乳酸系2軸延伸フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は柔軟性、透明性に優れ、包装材料として好適なポリ乳酸系2軸延伸フィルムに関するものである。
新聞・雑誌・食品などの包装材料として使用されるフィルムは、近年の環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、生分解性ポリマーにて形成されることが望まれている。中でも自然界に広く存在し、動植物や人畜に対して無害なポリ乳酸は、融点が140〜175℃であり十分な耐熱性を有し、非常に高い透明性を有するとともに、比較的安価な熱可塑性樹脂であるため、実用性に優れた生分解性ポリマーとして期待されている。
しかし、ポリ乳酸からなるフィルムは、剛性が高く柔軟性に劣り、デッドホールド性が高くてシワが残り易く、また、ヒートシールや溶断シール等のシール強度に劣るため、包装材料として実用に適しておらず、このような物性の改善が求められている。
そこで、特許文献1には、ポリ乳酸系フィルムの柔軟性を改善するために、ポリ乳酸あるいは乳酸と他のヒドロキシカルボン酸に可塑剤を配合して樹脂組成物の可塑化を促してフィルムを作成する方法が提案されている。しかし、実用に適した柔軟性を付与するには、ポリ乳酸に対し相当量の可塑剤を配合しなければならず、さらに、元来、ポリ乳酸との相溶性が良好な可塑剤は非常に少ないため、前記のように相当量の可塑剤を配合してフィルム化するとほとんどの可塑剤はブリードアウトしてしまい、フィルムの製膜時にブロッキングが発生したり、フィルムの印刷時にインクがのらず印刷できなかったり、あるいは印刷できたとしてもインクが流出するという問題がある。
特許文献2には、ポリ乳酸系重合体とガラス転移温度が0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとからなるフィルムが開示されている。この方法では、可塑剤を添加しないためブリードアウトの問題がなく、かつ、フィルムに柔軟性を付与することはできるものの、使用される生分解性脂肪族ポリエステルはポリ乳酸との相溶性が低いため、フィルムの透明性を下げてしまう欠点があった。
また、特許文献3には、ポリ乳酸とガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族ポリエステルと可塑剤とからなるフィルムが開示されている。この方法では、脂肪族ポリエステルと可塑剤を併用することで、脂肪族ポリエステルの配合量を少なくでき、透明性の低下を抑えることができるが十分ではなく、しかも、ポリ乳酸の可塑化を目的として配合された可塑剤は、結晶性の高い脂肪族ポリエステルにも分配されるため、フィルムの形成過程において脂肪族ポリエステルに分配された可塑剤がブリードアウトする問題があった。
一方、特許文献4には、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体と乳酸系樹脂とからなるインフレーションフィルムが開示されている。この方法では、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体を主成分として使用することにより、透明性に優れ、高い柔軟性を付与することが出来るが、共重合体を多量に添加する必要があり、包装材料としては、耐熱性や強度が不足する問題があった。
また、特許文献5には、乳酸系樹脂、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体、および低分子可塑剤からなるフィルムが開示されている。この方法では、ラップ用フィルムとして十分な柔軟性と透明性を付与できるが、低分子可塑剤を使用するため、ブリードアウトの問題があった。
特許第3105020号公報 特開平9−111107号公報 特開2000−273207号公報 特開2005−336468号公報 特開2006−16605号公報
本発明は前記問題点を解決し、生分解性を有し、柔軟性および透明性に優れ、またブロッキングやブリードアウトといった保存時の性能変化の少なく、フィルム製膜時の操業性に優れたポリ乳酸系2軸延伸フィルムを提供するものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸(A)に、乳酸成分を特定量含有したポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を特定量配合することにより、高い透明性を保持したまま、柔軟性を付与することができ、また、フィルム中に含まれるラクチド量を0.5質量%以下にすることにより、フィルムの表面特性に優れ、かつ製膜時の操業性に優れることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
ポリ乳酸(A)50〜90質量%と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量%からなる2軸延伸フィルムであって、該フィルム中に含まれるラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系2軸延伸フィルム。
本発明によれば、ポリ乳酸(A)にポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を配合することで、室温で硬くて脆いという性質を有するポリ乳酸に、柔軟性を付与できる。また、ポリ乳酸(A)と相溶性の高いポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を配合することで、ポリ乳酸フィルムの高い透明性を維持できる。さらに低分子のラクチドや可塑剤のフィルム表面析出がないため、フィルムに印刷を施してもインクが流出したり剥がれたりすることがなく、良好な印刷性が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムは、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)とを構成成分とする樹脂組成物にて形成される必要がある。
本発明におけるポリ乳酸(A)としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、またはこれらの混合体が挙げられる。その重量平均分子量は15万〜30万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは16万〜20万である。主成分であるポリ乳酸の重量平均分子量が15万未満であると得られるフィルムは機械的特性に劣るものになり、重量平均分子量が30万を超えると溶融粘度が高くなりすぎて溶融押出が困難となる。
また、ポリ乳酸(A)は、結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸とを併用することができるが、ポリ乳酸の結晶化による製膜安定性と耐熱性の確保を考慮すると、結晶性ポリ乳酸を用いるのが好ましい。ここでいう結晶性ポリ乳酸とは、140〜175℃の範囲の融点を有するポリ乳酸樹脂を指し、非晶性ポリ乳酸とは実質的に融点を保有しないポリ乳酸樹脂を指す。結晶性ポリ乳酸と非晶製ポリ乳酸との配合割合は、質量比で(結晶性ポリ乳酸)/(非晶性ポリ乳酸)=90/20〜100/0(質量%)の範囲にあることが好ましい。結晶性ポリ乳酸の配合割合が80質量%未満であると、ポリ乳酸の結晶化に劣るため安定した製膜が行えない。
本発明に用いられるポリ乳酸系共重合ポリマー(B)は、乳酸成分を30〜70質量%含むことが必要である。乳酸成分が70質量%を超えると、得られるフィルムの柔軟性を付与するためにポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を多量に使用する必要があり好ましくない。乳酸成分が30質量%未満であると、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)との相溶性が低くなり、得られるフィルムの透明性は悪くなり、好ましくない。
本発明におけるポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を構成する、乳酸成分は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかであればよいが、ポリ乳酸(A)の主成分をなす乳酸系樹脂の構造単位と同じ構造のものが特に好ましい。
乳酸成分以外の共重合成分としては、ジカルボン酸とジオールからなるポリエステルもしくはポリエーテルであることが好ましい。ジカルボン酸成分は特に限定するものではないが、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。ポリ乳酸との相溶性の面から炭素数が10以下のジカルボン酸が好ましい。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。ポリ乳酸との相溶性の面から炭素数が10以下のグリコールが好ましい。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル成分が共重合されていることが好ましく、特に、ポリエーテルの重量平均分子量は200〜5000であることが好ましい。特定の重量平均分子量のポリエーテル成分を共重合することにより、ポリ乳酸との相溶性を低下させずに、ポリ乳酸に柔軟性を付与するができる。
さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分は2種以上併用しても良い。
本発明に用いられるポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の重量平均分子量は、1万〜10万の範囲であることが好ましく、特に2万〜8万であることが好ましい。重量平均分子量が1万未満であると、得られるフィルムの強度が著しく低下するだけでなく、フィルムを製膜する際に溶融粘度の差が大きすぎて混練性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量が10万を超えると、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の可塑化効果が低下し、得られるフィルムに十分な柔軟性を付与することができないため、好ましくない。
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)のガラス転移温度は柔軟性を考慮すると、40℃以下であることが好ましく、0〜30℃が特に好ましい。ガラス転移温度が40℃よりも高いと、ポリ乳酸の可塑化効果が小さい。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムを構成するポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)との配合割合は、(ポリ乳酸(A))/(ポリ乳酸系共重合ポリマー(B))=90/10〜50/50質量%であることが必要であり、85/15〜60/40質量%、特に85/15〜70/30質量%が好ましいの範囲である。ポリ乳酸(A)成分が90質量%を超えると、得られるフィルムの柔軟性が十分ではなく、引張弾性率が3.0GPaを超え、好ましくない。ポリ乳酸(B)成分が50質量%未満であると、得られるフィルムの強度が著しく低下するため、好ましくない。
本発明のポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)から得られる樹脂組成物の重量平均分子量は10万以上が好ましく、特に12万〜20万が好ましい。重量平均分子量が10万未満であると、2軸延伸フィルムを包装材料として使用する際に強度が劣る場合がある。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルム中に含まれるラクチド量は0.5質量%以下であることが必要であり、特に0.1〜0.4質量%であることが好ましい。ラクチド量が0.5質量%より多いと、フィルム製膜時に発煙が著しく、ダイス近辺の装置が汚染されたり、酷い場合にはキャストロールを介してフィルム表面に転写されたりして、操業性が悪化する。
ラクチド量を低減する方法としては、ポリ乳酸(A)およびポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の重合時に融点以上の温度で減圧して低減する方法や、ペレット状のポリ乳酸(A)およびポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を、高温、減圧下でガス化除去する方法や、あるいは、温水中に浸漬して抽出除去する方法が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムはガラス転移温度が40℃〜55℃であることが好ましい。柔軟性の面からすると、ガラス転移温度は低い方が好ましいが、本発明では40℃未満にまで低下させることは好ましくない。ガラス転移温度が低下すると、フィルム製膜時のキャストロール温度をそれに応じて低くする必要があるが、ポリ乳酸系樹脂の場合、ラクチドのフィルム表面への析出やキャストロールへの付着等の問題がありキャストロールの温度は30℃以上が好ましく、それに伴ってガラス転移温度としては40℃以上が好ましい。一方、55℃を超えると柔軟効果が小さい。
また、本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムの融点は140℃以上が好ましく、特に150℃以上が好ましい。融点が140℃未満であると、印刷やラミネートといった加熱処理が必要な場合に、耐熱性に劣る。
なお、本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムを構成するポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)には、製膜時の溶融張力の低下を抑制する目的で、必要に応じて有機過酸化物などの架橋剤および架橋助剤を併用して樹脂組成物に軽度の架橋を施してもよい。
架橋剤の具体例としては、n−ブチル−4,4−ビス−t−ブチルパーオキシバリレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−t−ブチルパーオキシヘキシン−3などの有機過酸化物、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメチルアジピン酸、無水トリメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシドなどの金属錯体、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルなどのエポキシ化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物などが挙げられる。
架橋助剤の具体例としては、グリシジルメタクリレート、ノルマル−ブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムには、帯電防止性が付与されていることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂は疎水性が強く、帯電し易い性能を有しているため、静電気トラブルを避けるために、帯電防止性を付与することが好ましい。フィルムの帯電防止性は、一般に表面固有抵抗値で評価でき、表面固有抵抗値がより低い方が好ましいが、フィルム生産時の巻き取りやスリット工程や印刷、製袋といった2次加工に供する際に、蛇行やシワ、さらには感電などの問題が発生しなければよい。そのためには、フィルムの表面固有抵抗値LOGで14.0[Ω]未満が好ましく、さらに13.0[Ω]未満が好ましい。
帯電防止性を付与する方法としては、一般的に練り込み法やコート法が実施されており、本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムでも特にその方法は限定されない。練り込み法は、コートする必要がないため、製造工程を簡素化でき、しかもコートに由来する作業環境の悪化や、干渉縞やブロッキングといった品質上の問題の発生がないことから好ましい方法である。
練り込み法で使用される帯電防止剤としては、アニオン系やカチオン系のイオン系と、非イオン系の帯電防止剤が使用できるが、イオン系の帯電防止剤をポリ乳酸に使用すると押出機中で熱分解を引き起こし、分子量が低下するという問題があり、特に、カチオン系は少量で高い帯電防止効果が得られるものの分子量低下が著しく使用が困難である。従って、本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムでは、非イオン系のものを帯電防止剤の主成分とすることが好ましい。
本発明で好適に使用される非イオン系の帯電防止剤は、特に限定されないが、脂肪酸アミンもしくはアミドを含有することが好ましく、特に、多価アルコールと高級脂肪酸とほう酸との反応物(以下、ほう酸エステルと略記する。)を、前記脂肪族アミンもしくはアミドと併用することが好ましい。脂肪酸アミンもしくはアミドと、ほう酸エステルとを併用することにより、ポリ乳酸の分子量低下を抑えつつ、少量で高い帯電防止効果が得られる。
脂肪族アミンもしくはアミドは、脂肪酸の炭素数が1〜30、好ましくは1つ以上の脂肪酸の炭素数が8〜20であることが好ましい。脂肪酸は、特にラウリル(C12)、セチル(C16)、ステアリル(C18)、オレイル(C18)の高級脂肪酸であることが望ましく、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸も好適に使用できる。
ほう酸エステルは、多価アルコールと高級脂肪酸とをエステル化反応させた後、ほう酸と反応させて得られる化合物、または、多価アルコールとほう酸とをエステル化反応させた後、高級脂肪酸と反応させて得られる化合物である。
多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、アラビトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グルコース、ラクトース、単糖類、あるいは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられるが、特に限定されない。
高級脂肪酸は、その炭素数が1〜30であるものであり、8〜24であることが好ましく、飽和脂肪酸でも不飽脂肪酸でもよく、直鎖でも分岐鎖を有していても構わない。
ほう酸の添加量は、多価アルコールと高級脂肪酸のエステル化物1モルに対し、0.1〜2.0モルが好ましく、0.5〜1.0モルが特に好ましい。ほう酸添加量が多く、未反応残存量が多いと、延伸フィルムの保存時にブリードアウトし白粉化するので好ましくない。
脂肪族アミンもしくはアミド(a)とほう酸エステル(b)の配合比(a/b)は、5〜50/95〜50質量%が好ましく、10〜40/90〜60質量%が特に好ましい。脂肪族アミンもしくはアミドが5質量%未満であると、延伸フィルムにした際の帯電防止性能に劣り、50質量%を超えると分子量低下が生じる場合がある。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムに、脂肪族アミンもしくはアミドとほう酸エステルとからなる混合物を0.1〜3.0質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%含有させることにより、フィルムの表面固有抵抗値LOGを14.0[Ω]未満にすることができ、フィルムに優れた帯電防止性を付与することが出来る。
また、本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムには、用途に応じて紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料など上記以外の添加剤も添加できる。
次に、本発明の乳酸系2軸延伸フィルムを製造する方法について説明するが、この方法に特に限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムの製造方法は特に限定されず、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等の製膜方法が例示できるが、Tダイを用いて溶融混練して押出すTダイ法が好ましい。
Tダイ法では、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)とを配合した樹脂組成物を、押出機ホッパーに供給し、押出機を例えばシリンダー温度180〜250℃、Tダイ温度200〜250℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20〜40℃に制御されたキャストロールで冷却し、厚み100〜500μmの未延伸シートを得る。
未延伸シートの延伸方法としては、ロール法、テンター法等による二軸延伸法が挙げられる。二軸延伸法としては、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法のどちらを採用してもよい。また、二軸延伸での面倍率は6〜16倍であることが好ましい。面倍率が6倍未満であると、得られるフィルムの機械物性、特に引張強度が低く、実用に耐えないことがある。また、面倍率が16倍を超えると、フィルムが延伸途中で延伸応力に耐えきれず破断してしまうことがあるため好ましくない。
延伸温度としては、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。延伸温度が50℃未満であると、延伸のための熱量不足によりフィルムが延伸初期で破断することがある。また90℃を超えると、フィルムに熱が加わりすぎてドロー延伸となり延伸斑を多発することがあるため好ましくない。
また、押し出された未延伸シートは、冷却されたキャストロールで冷却固化された後、必要に応じてコート剤をシート状物にコーティングすることもできる。このコーティング方法としては特に限定されないが、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が採用される。
また、フィルムには寸法安定性を付与する目的で、延伸後、熱弛緩処理を実施してもよい。熱弛緩処理の方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等が選択でき、均一に精度良く加熱できる点で熱風を吹き付ける方法が好ましい。その際、80〜160℃の範囲で1秒以上であることが好ましく、かつ、2〜8%のリラックス率の条件下で実施することが好ましい。
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例におけるフィルムの原料、および、特性値の測定法は、次の通りである。
(原料)
(A)ポリ乳酸
A−1:ネイチャーワークス社製 4032D、D体含有量1.2モル%、残留ラクチド量0.22質量%、重量平均分子量20万
(B)ポリ乳酸系共重合ポリマー
B−1:大日本インキ社製 プラメートPD350、乳酸成分含有量50質量%、融点158℃、ガラス転移温度18℃、重量平均分子量5万、ラクチド含有量2.02質量%
B−2:上記B−1を110℃、0.5mmHg以下の減圧下で24時間熱処理し、ラクチド含有量を0.54質量%にまで低減したもの。
B−3:大日本インキ社製 プラメートPD150、乳酸成分含有量50質量%、融点165℃、ガラス転移温度52℃、ラクチド含有量0.50質量%
(C)脂肪族ポリエステル:
昭和高分子社製 ビオノーレ#3001、ポリブチレンサクシネートアジペート、融点95℃、ガラス転移温度−45℃、結晶融解熱量45J/g
(D)可塑剤:
理研ビタミン製 ポエムG−038
(E)帯電防止剤
E−1:ヤシ油ジエタノールアミド(三洋化成社製 ケミスタット2500)
E−2:グリセリンステアリン酸エステルとほう酸との反応物
ガラス製オートクレーブに、グリセリン1.0モル及びステアリン酸1.0モルを仕込み、Nガスを導入しつつ、塩基性触媒下220〜250℃に昇温し5時間エステル化し、グリセリンモノステアリン酸エステルを合成した。続いて合成したグリセリンモノステアリン酸エステル1.0モルに対して0.5モルのホウ酸を仕込み、130〜135℃まで徐々に加熱脱水し、その後230℃まで徐々に昇温して、グリセリンモノラステアリン酸エステルとホウ酸との反応物(E−2)を合成した。
(測定法)
(1)ラクチド量:
Hewlett Packard 社製 HP−6890 Series GC Systemおよびカラム30m×0.25mm ID DB―17 キャピラリーカラム(0.25μm f.t.)を用いて、ヘリウムをキャリアガスとして使用し、測定した。
(2)重量平均分子量:
島津製作所製GPC装置LC−VPを用い、溶離液テトラヒドロフラン、温度40℃、流速1mL/分で測定を行い、分子量分布曲線を得た。分子量は、分子量1千〜300万の範囲の標準ポリスチレン試料6点を用いた検量線に基づき、ポリスチレン換算で評価した。
(3)融点、ガラス転移温度(℃):
Perkin Elmer社製の示差走査熱量計DSC−7型を用いて、昇温速度を20℃/分で測定した。
(4)引張弾性率(GPa)、引張強度(MPa)、引張伸度(%):
JIS K―7127に記載の方法に準じて測定した。
(5)ヘイズ(透明性):
JIS−K7105に準じて測定した。本発明においては、5以下を合格とした。
(6)表面固有抵抗値:
23℃、50%RH条件下で1日静置した後、JIS−K6911に準じて測定した。
(7)ブリード性:
延伸フィルムを50℃、40%RH雰囲気下に30日間放置し、ブリード性を以下のように評価した。
○:ブリードアウトは見られなかった。
△:ややブリードアウトが見られたが、実用上の問題なし。
×:ブリードアウトが顕著に見られた。
(8)操業性
3時間連続製膜後のTダイ付近の汚染、発煙状況とキャストロールの汚れの程度を、目視により以下の基準に従い評価した。
○:汚染・発煙が少なく、キャストロールの汚れ認められず。
△:汚染・発煙が少しあり、キャストロールの汚れやや有り。
×:汚染・発煙があり、キャストロールの汚れ有り。
実施例1
A−1を75質量%とB−1を15質量%とを計量後、ドライブレンドし、90mmφの単軸押出機にてTダイ温度230℃で溶融押出しし、35℃に温度制御されたキャストロールに密着急冷し、厚さ240μmの未延伸シートを得た。次いで、この未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、70℃の予熱ゾーンを走行させた後、温度68℃でMDに3.0倍、TDに3.3倍で同時二軸延伸した。その後TDの弛緩率を5%として、温度140℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの2軸延伸フィルムを得た。押出機での製膜を3時間連続で行い操業性を評価し、得られた2軸延伸フィルムを(1)〜(7)の測定法で評価した。
実施例2〜5、比較例1〜6
原料樹脂および添加剤を、表1に示したように変更し、実施例1と同様にして各種フィルムを得た。比較例3および4については、延伸温度を予熱60℃、延伸58℃に変更して実施した。
実施例1〜4に示すように、本発明で特定した範囲にあるものは、ヘイズが5%以下で透明性が高く、引張弾性率が3.0GPaで柔軟性に優れ、かつ、フィルム製膜時の操業性や、ブリード性といった保存時の性能変化の少ない良好なフィルムであった。
実施例5〜7に示すように、帯電防止剤を添加することにより、表面固有抵抗値が低下した。特に、実施例5に使用した組成の帯電防止剤は、帯電防止効果が高く良好であった。実施例6は帯電防止剤中に脂肪酸アミドを含有が少なかったため、帯電防止効果が低かった。また、実施例7は帯電防止剤中の脂肪酸アミドの含有量が多かったため、フィルムの分子量が低下し、それに伴って強度も低下した。
比較例1では、フィルム中のラクチド量が多かったため、操業性に劣っていた。
比較例2では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が少なかったため、得られたフィルムは柔軟性に劣っていた。
比較例3では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が多かったため、得られたフィルムは柔軟性には優れるものの、ラクチド量が多くて操業性が著しく悪く、また、フィルムの分子量が低く、引張強度も低かった。
比較例4では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が多かったが、ラクチド量が少なかったため、ダイス付近の汚染や発煙は許容範囲であったが、ガラス転移温度が低いため、キャストロールの温度を20℃まで低下させる必要があり、そのためキャストロールの汚れが認められ、操業性に劣った。
比較例5では、低分子の可塑剤を5%含有するため、ブリード性に劣った。
比較例6では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)に代えて脂肪族ポリエステルを含有するため、柔軟性には優れるものの、透明性に劣った。

Claims (3)

  1. ポリ乳酸(A)50〜90質量%と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量%からなる2軸延伸フィルムであって、該フィルム中に含まれるラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系2軸延伸フィルム。
  2. ガラス転移温度が40℃〜55℃、融点が140℃以上である請求項1記載のポリ乳酸系2軸延伸フィルム。
  3. 表面固有抵抗値LOGが14.0[Ω]未満である請求項1または2記載のポリ乳酸系2軸延伸フィルム。

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