JP2008063423A - ポリ塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、耐衝撃性を損なわずに耐成形着色性と成形加工性(ゲル化時間、平衡トルクの維持性)を向上させる、特に押出成形用として好適なポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部およびTgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物であって、実質的に可塑剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%))
【選択図】なし
【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部およびTgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物であって、実質的に可塑剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%))
【選択図】なし
Description
本発明は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、工業的に安価であり、剛性、引張特性などの機械物性、耐薬品性、耐油性などに優れるとともに、配合によって硬質から軟質まで多様な製品が自由に成形できるため、非常に広い工業用途で利用されている。特に、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部以下の範囲で配合した、いわゆる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂は、剛性に優れた特徴を有し、窓枠、パイプ、硬質シートなどの各種工業用途に使用されている。
しかしながら、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂は、樹脂の性質上、高い成形温度領域で溶融成形する必要があるため、溶融成形時にポリ塩化ビニル系樹脂が分解し、劣化するという問題があった。いわゆる熱安定性がより高いレベルで求められている。特に、高い意匠性が必要とされる樹脂サッシや窓枠等の成形品を得るための異形押出成形では、より高い成形温度が必要とされるため、樹脂成形品に黄着色等の発生が起こりやすく、溶融成形時の熱安定性が必要となる。
しかしながら、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂は、樹脂の性質上、高い成形温度領域で溶融成形する必要があるため、溶融成形時にポリ塩化ビニル系樹脂が分解し、劣化するという問題があった。いわゆる熱安定性がより高いレベルで求められている。特に、高い意匠性が必要とされる樹脂サッシや窓枠等の成形品を得るための異形押出成形では、より高い成形温度が必要とされるため、樹脂成形品に黄着色等の発生が起こりやすく、溶融成形時の熱安定性が必要となる。
この熱安定性を向上させる方法としては、各種鉛系やカドミウム系安定剤を添加する方法が知られているものの、これら安定剤には、毒性の問題があり、使用が制限されている。
一方、低毒、無毒性の安定剤として、Ca、Ba、Mg、Zn系の金属石鹸系安定剤が知られているが、このうち、一般的なCa−Zn系の複合金属石鹸系安定剤においても、熱安定性は十分ではなく、溶融成形に適した高い熱安定性を示すためには、安定剤の増量が必要となる。しかしながら、Ca−Zn系の複合金属石鹸系安定剤を増量した場合、Znバーニングの懸念があり、滑剤の増量によって熱安定性とのバランスをとる必要があるが、この方法では、得られるポリ塩化ビニル系樹脂成形品の耐衝撃性の低下や成形中のプレートアウトが発生し易くなるため、十分な方法であるとは言えない。
一方、低毒、無毒性の安定剤として、Ca、Ba、Mg、Zn系の金属石鹸系安定剤が知られているが、このうち、一般的なCa−Zn系の複合金属石鹸系安定剤においても、熱安定性は十分ではなく、溶融成形に適した高い熱安定性を示すためには、安定剤の増量が必要となる。しかしながら、Ca−Zn系の複合金属石鹸系安定剤を増量した場合、Znバーニングの懸念があり、滑剤の増量によって熱安定性とのバランスをとる必要があるが、この方法では、得られるポリ塩化ビニル系樹脂成形品の耐衝撃性の低下や成形中のプレートアウトが発生し易くなるため、十分な方法であるとは言えない。
また、溶融成形に用いる金属石鹸系安定剤の熱安定性を補うため、安定化助剤として、βジケトン化合物、フォスファイト化合物、ポリオール化合物、含イオウ化合物、含窒素化合物、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物などを1種以上用いる方法が提案されている。しかしながら、これらの熱安定性向上技術は、必ずしも十分ではなく、配合により、得られる成形品の耐熱性や耐衝撃性の低下を招くのみならず、成形加工性の低下を招くことが知られている。
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性とは、良好な物性、意匠性を示す成形品を効率よく得ることであり、例えば、押出成形法においては、樹脂配合物が可塑化に要する時間(ゲル化時間)、および溶融樹脂配合物が可塑化した後に受けるスクリューからのせん断エネルギーに対する平衡トルクの維持性(混練性)が重要な因子となる。これらゲル化時間および平衡トルクの維持性は、いずれも押出成形における成形速度、すなわち生産性に大きく影響を及ぼすものである。
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性とは、良好な物性、意匠性を示す成形品を効率よく得ることであり、例えば、押出成形法においては、樹脂配合物が可塑化に要する時間(ゲル化時間)、および溶融樹脂配合物が可塑化した後に受けるスクリューからのせん断エネルギーに対する平衡トルクの維持性(混練性)が重要な因子となる。これらゲル化時間および平衡トルクの維持性は、いずれも押出成形における成形速度、すなわち生産性に大きく影響を及ぼすものである。
一般に、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性を向上させる方法としては、例えば、高分子量のアクリル重合体を含有する加工助剤を添加する方法等が知られているが、これら加工助剤の添加では、成形加工性は向上するものの、上述の熱安定性を改良することはできないのが現状である。すなわち、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の分野では、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性を損なわず、高いレベルの熱安定性と成形加工性を同時に示す加工助剤がないのが現状であり、その開発が強く望まれていた。
一方、金属石鹸系安定剤を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の熱安定性を向上させる別の方法として、エポキシ基を含有する重合体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
一方、金属石鹸系安定剤を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の熱安定性を向上させる別の方法として、エポキシ基を含有する重合体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、特定のグリシジル(メタ)アクリレートと炭素数16〜22のアルキル基またはアルケニル基を有する長鎖(メタ)アクリレートからなる共重合体を、特定の有機金属系安定剤と組み合わせた塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている。特許文献1には、上記特定の塩化ビニル系樹脂組成物が、動的熱安定性、成形機への樹脂の付着防止性、成形時の初期着色性、透明性、印刷性、表面べとつき防止性に対して効果があったことが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されている動的熱安定性は、加工混練時のトルク上昇を評価することによる樹脂の分解安定性(成形加工時の熱分解性)についてであり、窓枠、樹脂サッシ等の高度な意匠性が要求される用途では、成形加工時のトルク上昇に対する熱分解性のみでは不十分である。すなわち、高度な意匠性が要求される用途においては、成形加工時のトルク上昇のみならず、樹脂成形品の着色に対する耐性(耐成形着色性)が必要となる。しかしながら、本特許文献1に記載された塩化ビニル系樹脂組成物では、この耐成形着色性が低位であり、使用できる用途に制限あるため、工業的利用価値が低かった。また、成形加工時の混練性が低位であり、成形速度に制限があるため工業的利用価値が低かった。
また、特許文献2には、塩素含有樹脂、カルボン酸金属塩、β−ジケトン化合物、エポキシ基を含有する重合体およびポリオール化合物を構成成分とした塩素含有樹脂組成物が提案されている。特許文献2には、ポリ塩化ビニル樹脂に対してグリシジルメタクリレート単位の量が0.5質量%となる例が記載されているが、このようにポリ塩化ビニル樹脂に対するグリシジルメタクリレート単位の質量%の小さい樹脂組成物では、例えば異形押出成形法のように高度な熱安定性が必要となる用途には、使用が困難となる。
また、特許文献3には、塩素含有樹脂、芳香族カルボン酸の亜鉛塩、カルボン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、エポキシ基含有重合体および/またはポリオール化合物を組み合わせた塩素含有樹脂組成物が提案されている。特許文献3には、ポリ塩化ビニル樹脂に対して、グリシジルメタクリレート単位の量が0.4〜0.5質量%となる例が記載されているが、このようにポリ塩化ビニルに対するグリシジルメタクリレート単位の質量%の小さい樹脂組成物では、例えば、パイプ用途等の意匠性要求が低位の用途では使用できるものの、各種着色剤を用いて調色したポリ塩化ビニル系成形品を用いる窓枠や樹脂サッシの用途のように、より高度な意匠性が必要となる用途では、耐成形着色性が低いため、工業的利用価値が低かった。
特開平11−343375号公報
特開平 5−239297号公報
特開平 7−216172号公報
本発明の目的は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物において、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性を損なわずに耐成形着色性と成形加工性(ゲル化時間、平衡トルクの維持性)を向上させる、特に押出成形用として好適なポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部およびTgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物であって、実質的に可塑剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関するものであり、また、本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部、Tgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部、および可塑剤0.01〜20質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部を表し、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)を表す。)
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部を表し、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)を表す。)
本発明は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物において、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性を損なわずに耐成形着色性と成形加工性(ゲル化時間、平衡トルクの維持性)を向上させ、特に押出成形用として好適なポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものであり、窓枠、パイプ、硬質シートに代表される硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を押出成形する分野において、幅広く使用することが可能であり、工業上極めて有益なものである。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂およびグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体を含有する。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、安価かつ機械的物性に優れていることから、塩化ビニル重合体が好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に制限されないが、700〜3000の範囲が好ましい。ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が700以上である場合に、耐衝撃性、耐熱性が良好となる傾向にある。また、ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が3000以下である場合に、溶融樹脂温度が低い領域での成形加工性が良好となり、熱安定性の低下を抑えることができる傾向にある。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、安価かつ機械的物性に優れていることから、塩化ビニル重合体が好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に制限されないが、700〜3000の範囲が好ましい。ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が700以上である場合に、耐衝撃性、耐熱性が良好となる傾向にある。また、ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が3000以下である場合に、溶融樹脂温度が低い領域での成形加工性が良好となり、熱安定性の低下を抑えることができる傾向にある。
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体のTgは、0〜150℃である。
本発明におけるTgとは、下記式(2)のFoxの式から計算される共重合体のガラス転移温度である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi) (2)
(ただし、Wiはモノマー単位iの全モノマー単位に対する質量%、Tgiはモノマー単位iのホモポリマーのTgを示す。)
本発明におけるTgとは、下記式(2)のFoxの式から計算される共重合体のガラス転移温度である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi) (2)
(ただし、Wiはモノマー単位iの全モノマー単位に対する質量%、Tgiはモノマー単位iのホモポリマーのTgを示す。)
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体のTgが0℃以上の場合に、ポリ塩化ビニル系樹脂を製造する際の取り扱い性(重合体のブロッキング防止性、融着防止性)が良好となるとともに、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工する際の溶融樹脂組成物の平衡トルクの維持性が良好となる。一方、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体のTgが150℃以下の場合、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工する際のゲル化時間を短縮することができる。
なお、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工時のゲル化時間と平衡トルクの維持性の両方を考慮すると、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体のTgの下限値は、好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、Tgの上限値は、好ましくは90℃、さらに好ましくは75℃である。
なお、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工時のゲル化時間と平衡トルクの維持性の両方を考慮すると、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体のTgの下限値は、好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、Tgの上限値は、好ましくは90℃、さらに好ましくは75℃である。
ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の含有量は、0.1〜30質量部の範囲である。
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の含有量が、0.1質量部以上の場合は、これを含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の耐成形着色性及びポリ塩化ビニル系樹脂組成物を加工する際のゲル化時間が良好となる。さらに好ましくは、0.75質量部以上である。一方、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の含有量が、30質量部以下の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂成形品の外観が良好となる傾向にある。より好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の含有量が、0.1質量部以上の場合は、これを含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の耐成形着色性及びポリ塩化ビニル系樹脂組成物を加工する際のゲル化時間が良好となる。さらに好ましくは、0.75質量部以上である。一方、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の含有量が、30質量部以下の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂成形品の外観が良好となる傾向にある。より好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部を(A)、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)を(B)とした場合に、下記式(1)を満足するものである。(A)×(B)/100が0.75以上の場合に、良好な耐成形着色性と良好な成形加工性、特に良好なゲル化時間を得ることができる。より好ましくは0.85以上である。一方、(A)×(B)/100が1.75を超えた場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の耐成形着色性が低下するため、成形加工を施した際に成形品に黄着色が発生するといった問題点が生じる。より好ましくは1.65以下である。すなわち、耐成形着色性の観点から、(A)×(B)/100の値は、0.75以上1.75以下の範囲で特異な効果を示す。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体におけるグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)(B)は、式(1)を満たす範囲であれば、特に制限されないが、10〜100質量%の範囲が好ましい。重合体中のグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量が10質量%以上の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を有する重合体の割合を低くすることが可能となり、得られるポリ塩化ビニル系樹脂成形品の耐衝撃性や機械強度が良好となる傾向にある。さらに重合体中のグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量を50質量%以上にした場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性が良好となり、特にゲル化時間が短縮し良好となる傾向にある。さらに好ましい重合体中のグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量は100質量%である。
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体は、グリシジル(メタ)アクリレート単位以外にも、その他の単量体単位を含有してもよい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、5−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルシュウ酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルシュウ酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ソルビン酸等の酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトンまたはε−カプロラクトン等との付加物単量体単位;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二量体または三量体の単量体単位;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体単位等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。中でも、メチルメタクリレートが好ましい。
グリシジル(メタ)アクリレート単位以外のその他の単量体単位の含有量は、特に制限されないが、重合体中、0〜90質量%の範囲が好ましい。90質量%以下の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を有する重合体の割合を低くすることが可能となり、得られるポリ塩化ビニル系樹脂成形品の耐衝撃性や機械強度が良好となる傾向にある。さらに50質量%以下の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性が良好となり、特にゲル化時間が短縮し良好となる傾向にある。より好ましくは、重合体中のグリシジル(メタ)アクリレート単位以外のその他の単量体単位を含有しない場合である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤を実質的に含まないか、あるいは含む場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲である。可塑剤の含有量をポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20質量部以下とすることにより、本発明の特徴である優れた耐成形着色性と成形加工性が発現される。一方、可塑剤含有量がポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20質量部を越えた範囲の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工する際の成形温度を低く設定しても、良好な流動性および良好な成形品外観を得ることができるため、成形加工の際の耐成形着色性を必要としない。すなわち本発明のグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の特徴である良好な耐成形着色性は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対する可塑剤含有量が20質量部以下の場合にのみ発現されるものである。なお、成形時の耐成形着色性と成形加工性の両方を考慮すると、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対する好ましい可塑剤含有量は10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは実質的に可塑剤を含有しない場合である。
可塑剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−sec−ブチルフタレート、ジ−ヘプチルフタレート、C7〜C9(アルファノール)フタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−3,5,5−トリメチルヘキシルフタレート、n−オクチル−n−デシルフタレート、i−オクチル−i−デシルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−メトキシエチルフタレート、ジ−ブトキシエチルフタレート、ジ−ブチルフタレート、ジ−ヘキシルフタレート、bis−(ジエチルグリコールモノメチルエーテル)フタレート等のフタル酸エステル;ジ−i−ブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−i−オクチルアジペート、n−オクチル−n−デシルアジペート、i−オクチル−i−デシルアジペート、ジ−i−デシルアジペート、ジ−ブトキシエチルアジペート、ジ−3,5,5−トリメチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル;ジ−n−ブチルセバケート、ジ−sec−ブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−アルファノールセバケート、ジ−シクロヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル;ジ−sec−ブチルアゼレート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレ−ト、ジ−i−オクチルアゼレート等のアゼライン酸エステル、トリ−2−エチルヘキシルフォスフェート、トリ−ブトキシエチルフォスフェート、トリ−クレシルフォスフェート、トリ−o−クレシルフォスフェート、トリ−m−クレシルフォスフェート、トリ−p−クレシルフォスフェート、フェニルジクレシルフォスフェート、キシレニルジクレシルフォスフェート、クレシルジキシレニルフォスフェート等の燐酸エステル;トリメリット酸エステル、ポリエステル系高分子可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系可塑剤等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
本発明のグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体は、球状粒子であることが好ましい。
球状粒子は、運搬や取り扱い時の粒子の破損が少なく、また、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性が良好となる傾向にある。また、球状粒子を使用すると、成形加工時のスクリュー等、駆動部への配合物の噛み込み性に起因してゲル化時間が短縮する傾向にある。
球状粒子は、レーザー回折式粒度分布計を用いることによって、その特徴すなわち分散度、メジアン径を表すことができる。小粒子径側から質量を積算し、10,50,90質量%目にあたる粒子径をそれぞれD10,D50,D90と表した場合、分散度は(D90−D10)/D50で表すことができる。分散度が3.0以下の場合に、運搬や取り扱い時の粒子の破損防止、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性向上および、成形加工の際のスクリュー等の駆動部への配合物の噛み込み性に起因してゲル化時間が短縮する傾向にある。より好ましくは、2.0以下である。
D50(メジアン径)は、30〜1000μmの範囲であることが好ましい。D50が30μm以上の場合に、取り扱い時の粒子の飛散が少なくなる傾向にある。より好ましくは、50μm以上である。また、D50が1000μm以下の場合に、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性が良好となる傾向にある。より好ましくは、500μm以下である。
なお、球状粒子とは、粒子の短径をa、長径をbとした場合に、1.0≦b/a≦1.5の関係を満足するものである。
球状粒子は、運搬や取り扱い時の粒子の破損が少なく、また、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性が良好となる傾向にある。また、球状粒子を使用すると、成形加工時のスクリュー等、駆動部への配合物の噛み込み性に起因してゲル化時間が短縮する傾向にある。
球状粒子は、レーザー回折式粒度分布計を用いることによって、その特徴すなわち分散度、メジアン径を表すことができる。小粒子径側から質量を積算し、10,50,90質量%目にあたる粒子径をそれぞれD10,D50,D90と表した場合、分散度は(D90−D10)/D50で表すことができる。分散度が3.0以下の場合に、運搬や取り扱い時の粒子の破損防止、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性向上および、成形加工の際のスクリュー等の駆動部への配合物の噛み込み性に起因してゲル化時間が短縮する傾向にある。より好ましくは、2.0以下である。
D50(メジアン径)は、30〜1000μmの範囲であることが好ましい。D50が30μm以上の場合に、取り扱い時の粒子の飛散が少なくなる傾向にある。より好ましくは、50μm以上である。また、D50が1000μm以下の場合に、ポリ塩化ビニル系樹脂との混合性が良好となる傾向にある。より好ましくは、500μm以下である。
なお、球状粒子とは、粒子の短径をa、長径をbとした場合に、1.0≦b/a≦1.5の関係を満足するものである。
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、懸濁、塊状、溶液、乳化等の公知の重合法を利用することができる。このうち、懸濁重合法を用いた場合は、水等の分散媒体から、濾過、脱水、乾燥することによって、容易に球状粒子の重合体を得ることができるため、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体を得る方法として最も好ましい。
以下、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体について、懸濁重合法を用いた製造例を説明する。説明中の「部」は質量部を示す。
重合に用いる重合開始剤については、特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。中でも、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
分子量調整を目的として、連鎖移動剤を使用することができる。使用する連鎖移動剤は、特に限定されないが、例えば、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類;α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。中でも、n−ドデシルメルカプタンが好ましい。
分散安定剤は、特に限定されないが、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機化合物;ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンオキサイド、セルロ−ス誘導体等のノニオン系高分子化合物;ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルの共重合物のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸スルホン酸エステルアルカリ金属塩の共重合物等のアニオン系高分子化合物等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。中でも、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸スルホン酸エステルアルカリ金属塩の共重合物が好ましい。
また、分散安定剤の量は、特に限定されないが、水性懸濁液に対し0.005〜5質量%の範囲が好ましい。分散剤の量が0.005質量%以上含有する場合に、懸濁重合時の分散安定性が良好となる傾向にある。より好ましくは、0.01質量%以上である。また、5質量%以下を含有する場合にグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の洗浄性、脱水性、乾燥性、及び重合体粒子の流動性が良好となる傾向にある。より好ましくは、1質量%以下である。
分散安定性向上を目的として、無機金属塩を使用することができる。使用する無機金属塩は、特に限定されないが、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マンガン等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
さらに、重合に支障を来たさない範囲において、必要に応じて公知の添加剤を使用することができる。使用する公知の添加剤は、特に限定されないが、例えば、染料、顔料等の添加剤、可塑剤、離型剤、紫外線吸収剤等の光安定剤が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
懸濁重合の際に使用される水の種類は、特に限定されないが、純水、イオン交換水、脱イオン水等が挙げられる。また、水の使用量は、特に限定されないが、前記単量体混合物100質量部に対して100〜1000質量部の範囲が好ましく、より好ましくは125〜400質量部の範囲である。
重合温度は、特に限定されないが、生産速度、重合安定性の観点から、30〜150℃の範囲が好ましい。より好ましくは、50〜130℃の範囲である。
上述のような方法で得られた懸濁重合スラリーを、必要に応じて熱処理した後、洗浄、脱水、乾燥し、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体を得る。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、衝撃強度改質剤、安定剤、滑剤、充填剤、顔料、発泡剤、紫外線安定剤等の各種添加剤を添加することができる。
上述のような方法で得られた懸濁重合スラリーを、必要に応じて熱処理した後、洗浄、脱水、乾燥し、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体を得る。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、衝撃強度改質剤、安定剤、滑剤、充填剤、顔料、発泡剤、紫外線安定剤等の各種添加剤を添加することができる。
衝撃強度改質剤としては、特に限定されないが、例えば、ゴム質重合体に、これと共重合可能な一種類以上のビニル系単量体がグラフト重合されたゴム系グラフト共重合体、または、塩素化ポリオレフィンが挙げられる。ここで、ゴム系グラフト共重合体としては、ゴム質重合体としてジエン系ゴム共重合体を使用したジエン系ゴムグラフト共重合体、ゴム質重合体としてアクリル系ゴム共重合体を使用したアクリル系ゴムグラフト共重合体、ゴム質重合体としてシリコーン/アクリル系ゴム共重合体を使用したシリコーン/アクリル系ゴムグラフト重合体が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛系安定剤;カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛等の金属と2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、i−ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ベヘン酸等の脂肪酸から誘導される金属石鹸系安定剤;アルキル基、エステル基と脂肪酸塩、マレイン酸塩、含硫化物から誘導される有機スズ系安定剤;Ba−Zn系、Ca−Zn系、Ba−Ca−Sn系、Ca−Mg−Sn系、Ca−Zn−Sn系、Pb−Sn系、Pb−Ba−Ca系等の複合金属石鹸系安定剤;バリウム、亜鉛等の金属基と2−エチルヘキサン酸、i−デカン酸、トリアルキル酢酸等の分岐脂肪酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、ナフテン酸等の脂肪環族酸、石炭酸、安息香酸、サリチル酸、それらの置換誘導体等の芳香族酸といった通常二種以上の有機酸から誘導される金属塩系安定剤;これら安定剤を石油系炭化水素、アルコール、グリセリン誘導体等の有機溶剤に溶解し、さらに亜リン酸エステル、エポキシ化合物、発色防止剤、透明性改良剤、光安定剤、酸化防止剤、プレートアウト防止剤、滑剤等の安定化助剤を含有する金属塩液状安定剤等の金属系安定剤;上記を除いたエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化植物油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ化合物、リンがアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基などで置換され、かつプロピレングリコールなどの2価アルコール;ヒドロキノン、ビスフェノールA等の芳香族化合物を有する有機亜リン酸エステル;BHTや硫黄やメチレン基等で二量体化したビスフェノール等のヒンダードフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミンまたはニッケル錯塩の光安定剤、カーボンブラック、ルチル型酸化チタン等の紫外線遮蔽剤;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の多価アルコール;β−アミノクロトン酸エステル、2−フェニルインドール、ジフェニルチオ尿素、ジシアンジアミド等の含窒素化合物;ジアルキルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物;アセト酢酸エステル、デヒドロ酢酸、β−ジケトン等のケト化合物;有機珪素化合物;ほう酸エステル等の非金属系安定剤が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。中でも、低毒性、安価であるCa−Zn系の複合金属石鹸系安定剤が好ましい。
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンワックス、脂肪酸と多価アルコールとのエステル系ワックス、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン等の純炭化水素系;ハロゲン化炭化水素系;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系;ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸またはステアリン酸のナトリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などの高級脂肪酸金属塩、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル等;ポリアルキル(メタ)アクリレート系共重合体等の高分子滑剤等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
充填剤とは、物性を向上させるとともに、増量させるものであり、特に限定されないが、例えば、金属粉、酸化物、水酸化物、珪酸または珪酸塩、炭酸塩、炭化珪素、植物性繊維、動物性繊維、合成繊維等が挙げられる。これらの具体的な代表例としては、アルミニウム粉、銅粉、鉄粉、アルミナ、天然木材、紙、炭酸カルシウム、タルク、硝子繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、クレー、ゼオライト、および廃木材料、古紙、木粉、紙粉、皮革粉等の再生充填材材料、アセテート粉、絹粉、アラミド繊維、アゾジカルボン酸アミド等や、グラファイト等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、チタンホワイト、チタンイエロー、ベンガラ、コバルトブルー、カーボンブラック、群青等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
発泡剤としては、特に限定されないが、大別すると、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤等が挙げられ、無機発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、空気、窒素等が挙げられる。また、揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、これらの発泡剤を適宜混合して用いることができる。また、発泡剤を使用する場合には、熱可塑性樹脂組成物の溶融混練物中に、更に気泡調整剤を添加しても良い。気泡調整剤としてはタルク、シリカ等の無機粉末や多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムあるいは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の混合方法は、特に限定されないが、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合できる。このようにして得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工する方法としては特に制限はなく、例えば、押出成形、カレンダー成形、インジェクション成形、注型成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成形等の成形方法を用いることができる。また、成形の際の成形加工温度としては、通常のポリ塩化ビニル系樹脂の成形加工温度である160〜210℃の範囲が好適である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の特徴である耐成形着色性とは、成形加工中に受ける熱履歴に対するポリ塩化ビニル系樹脂組成物の熱安定性であり、例えば、押出成形やロール成形等の際に受ける熱履歴に対し、樹脂成形品に発生する、ポリ塩化ビニルの劣化、分解等に起因する黄着色により、そのレベルを判断することができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂の耐成形着色性を評価する方法としては、種々の方法が知られているが、最も的確に耐成形着色性を評価する方法の一つは、テストロール等を用いて、所定温度で所定時間混練したポリ塩化ビニル系樹脂の色相を測定し、熱安定性不良に起因する黄色度を評価することにより実施することができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂の耐成形着色性を評価する方法としては、種々の方法が知られているが、最も的確に耐成形着色性を評価する方法の一つは、テストロール等を用いて、所定温度で所定時間混練したポリ塩化ビニル系樹脂の色相を測定し、熱安定性不良に起因する黄色度を評価することにより実施することができる。
なお、テストロールにて混練する際の温度は、一般的なポリ塩化ビニル系樹脂の成形温度である160〜210℃程度にて実施することが好適である。また、テストロールにて混練する時間としては、一般的なポリ塩化ビニル系樹脂の成形時の加熱時間、すなわち成形加工機中のポリ塩化ビニル系樹脂の滞在時間に相当する時間が好適であり、例えば、窓枠、樹脂サッシ等を成形する際に用いられる異形押出成形法では、加熱時間は5〜10分程度である。
なお、上述の方法で混練したポリ塩化ビニル系樹脂組成物の色相は、分光光度計や色差計等の計測機器を用いて測定することができる。
なお、上述の方法で混練したポリ塩化ビニル系樹脂組成物の色相は、分光光度計や色差計等の計測機器を用いて測定することができる。
耐成形着色性は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含有する成形品の物性および意匠性に影響を及ぼし、耐成形着色性が不良のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含有する成形品は、所望の機械強度や耐衝撃性が得られにくいばかりではなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の色相、特に黄色度(YI値)が高くなることで、例えば白系顔料にて調色し、白色成形品として使用する用途において、十分な白色度の成形品が得られないといった不具合が生じる。
この耐成形着色性の指標となるポリ塩化ビニル系樹脂のYI値としては、ポリ塩化ビニル系樹脂成形品の用いられる用途によって異なるが、例えば、窓枠、樹脂サッシ等の高度な意匠性が必要となる用途に用いる場合は、着色剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂成形品として、YI値が20以下であることが好ましく、より好ましくは17以下である。着色剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂成形品のYI値が20以下の場合は、白色、アイボリー等の淡色系の調色を施した際の色相の調整が容易となり、一方、YI値が20を超えた場合は、淡色系の調色が困難となるか、あるいは、調色のために必要な着色剤をポリ塩化ビニル系樹脂組成物へ添加する量が増えることで、耐衝撃性、機械強度等の物性を損ねてしまう。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いると、着色剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂成形品のYI値が20以下となり、例えば窓枠、樹脂サッシ等の高度な意匠性が必要となる用途に使用することができる。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いると、着色剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂成形品のYI値が20以下となり、例えば窓枠、樹脂サッシ等の高度な意匠性が必要となる用途に使用することができる。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の特徴である成形加工性とは、溶融成形する際のポリ塩化ビニル系樹脂組成物のゲル化時間と平衡トルクの維持性である。
成形加工性の第一の指標であるゲル化時間は、溶融成形する際のポリ塩化ビニル系樹脂の可塑化に要する時間で表すことができる。ゲル化時間が短い場合は、迅速なポリ塩化ビニル系樹脂の可塑化が可能となり、例えば、押出成形において吐出速度すなわち成形速度を速くすることができる。一方、ゲル化時間が長い場合は、成形速度が遅いため、成形加工品の生産性を低下させたり、また、用いる押出機の大きさを大きくする必要があるなど、経済的に不利益を生じる場合がある。
成形加工性の第一の指標であるゲル化時間は、溶融成形する際のポリ塩化ビニル系樹脂の可塑化に要する時間で表すことができる。ゲル化時間が短い場合は、迅速なポリ塩化ビニル系樹脂の可塑化が可能となり、例えば、押出成形において吐出速度すなわち成形速度を速くすることができる。一方、ゲル化時間が長い場合は、成形速度が遅いため、成形加工品の生産性を低下させたり、また、用いる押出機の大きさを大きくする必要があるなど、経済的に不利益を生じる場合がある。
ゲル化時間は、用いる成形機の大きさ、スクリュー形状、あるいは成形温度、せん断力等によって変化するが、ポリ塩化ビニル系樹脂のゲル化時間は、プラストミル等を用いて測定する時間−トルク曲線において、トルク値が最大値を示す時間にてそのレベルを評価することができる。尚、プラストミル等にて混練する際の温度は、評価するポリ塩化ビニル系樹脂の可塑化挙動、すなわちゲル化挙動を的確に再現させるために、一般的なポリ塩化ビニル系樹脂の成形温度よりも10〜30℃程度低い温度にて行なうことが好適である。
プラストミル等で測定したトルク値の最大値までの時間(ゲル化時間)が短いポリ塩化ビニル系樹脂ほど、ゲル化時間が短くなり、成形速度を速くすることができる。尚、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いると、プラストミルで測定したゲル化時間は、成形加工法によって異なるが、例えば、窓枠、樹脂サッシ等の加工に用いる異形押出成形法では、押出速度と必要となる押出成形機の大きさから、5分以内であることが好ましく、さらに好ましくは4分以内である。
成形加工性の第2の指標である平衡トルクの維持性は、溶融成形する際、可塑化後すなわちゲル化後にポリ塩化ビニル系樹脂組成物がスクリューから受けるせん断エネルギーの伝達性の度合いであり、成形加工機の混練工程におけるスクリュー等の駆動部にかかる負荷(スクリューにかかるトルク等)により、そのレベルを評価することができる。特に、押出成形法ではゲル化後のスクリューにかかる平衡トルクの維持性が重要であり、この平衡トルクの経時低下が少ない場合は、押出機の混練ゾーンにて十分な樹脂配合物の混練を行なうことができ、良好な外観と物性を有する成形品を得ることができる。
一方、ゲル化後の平衡トルクの維持低下が大きく、平衡トルクの維持性が低位な場合は、押出機の混練ゾーンにて十分な樹脂配合物の混練を行なうことができず、成形外観や物性の低下を招く傾向がある。また、ゲル化後の平衡トルクの維持性が低位な場合も、押出機等のスクリュー回転数を上げ、混練性を高めることは可能であるが、余分なエネルギーが必要となる同時に、せん断発熱に伴い耐成形着色性が低下するといった不利益が生じやすくなる。
一方、ゲル化後の平衡トルクの維持低下が大きく、平衡トルクの維持性が低位な場合は、押出機の混練ゾーンにて十分な樹脂配合物の混練を行なうことができず、成形外観や物性の低下を招く傾向がある。また、ゲル化後の平衡トルクの維持性が低位な場合も、押出機等のスクリュー回転数を上げ、混練性を高めることは可能であるが、余分なエネルギーが必要となる同時に、せん断発熱に伴い耐成形着色性が低下するといった不利益が生じやすくなる。
平衡トルクの維持性は、用いる成形機の大きさ、スクリュー形状、あるいは成形温度、せん断力等によって変化するが、プラストミル等を用いて測定する時間−トルク曲線においては、ゲル化後の測定トルク値の単位時間当りの変化量でそのレベルを評価することができる。尚、プラストミル等で測定したゲル化時間後の測定トルク値の単位時間当りの低下量は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工法によって異なるが、窓枠、樹脂サッシ等の加工に用いる異形押出成形法では、得られる成形品の物性、成形外観および押出速度の観点から、2.0N・m/分以下であることが好ましい。ゲル化時間後の測定トルク値の単位時間当りの低下量が2.0N・m/分以下の場合は、通常の押出機を用い、通常の範囲の成形速度で良好な物性と成形外観を有する成形品を得ることができる。尚、さらに好ましいゲル化時間後の測定トルク値の単位時間当りの低下量は、1.5N・m/分以下である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、プラストミル等で測定するゲル化時間が5分以下かつゲル化時間後の測定トルク値の単位時間当りの低下量が2.0N・m/分以下であり、このようにゲル化時間および平衡トルクの維持性の両方に優れた特徴を有するポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、特に押出成形法において良好な物性および成形外観を有する成形品を優れた成形速度にて製造することができ、工業的利用価値が極めて高い。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の評価は、下記の方法を用いて実施した。
〔粒子径、分散度〕
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の粒子径及び分散度は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)にて測定した。分散度(D90−D10)/D50が3.0以下、かつメジアン径(D50)が30〜1000μmの場合、粒子形状良好とした。
〔粒子径、分散度〕
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の粒子径及び分散度は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)にて測定した。分散度(D90−D10)/D50が3.0以下、かつメジアン径(D50)が30〜1000μmの場合、粒子形状良好とした。
〔ゲル化速度および平衡トルクの維持性〕
東洋精機社製ラボプラストミルにミキサー型ヘッド:R−60/3ゾーンを装着し、容器温度160℃、充填量60g、保持時間4分、ミキサー回転数40rpmで、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のゲル化時間および平衡トルクの維持性を測定した。時間−トルク曲線において、トルクが最大値を示す点をゲル化時間とし、ゲル化時間が5分以内の場合は、ゲル化速度良好と判断、5分を越えた場合は、成形加工性を低下させる傾向があるため、ゲル化速度不良と判断した。また、平衡トルクの維持性は、プラストミルの時間−トルク曲線において、トルクが最大値を示す時間−トルク点を基準として、4分間の平均のトルク経時低下率(単位時間当りのトルク値低下量)を測定した。本評価においては、2.0[N・m/min]以下の場合、平衡トルクの維持性良好、2.0[N・m/min]を上回った場合は、成形加工性を低下させる傾向があるため、平衡トルクの維持性不良と判断した。
東洋精機社製ラボプラストミルにミキサー型ヘッド:R−60/3ゾーンを装着し、容器温度160℃、充填量60g、保持時間4分、ミキサー回転数40rpmで、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のゲル化時間および平衡トルクの維持性を測定した。時間−トルク曲線において、トルクが最大値を示す点をゲル化時間とし、ゲル化時間が5分以内の場合は、ゲル化速度良好と判断、5分を越えた場合は、成形加工性を低下させる傾向があるため、ゲル化速度不良と判断した。また、平衡トルクの維持性は、プラストミルの時間−トルク曲線において、トルクが最大値を示す時間−トルク点を基準として、4分間の平均のトルク経時低下率(単位時間当りのトルク値低下量)を測定した。本評価においては、2.0[N・m/min]以下の場合、平衡トルクの維持性良好、2.0[N・m/min]を上回った場合は、成形加工性を低下させる傾向があるため、平衡トルクの維持性不良と判断した。
〔耐衝撃性〕
JIS K−7111に準拠し、23℃における成形品(シート)のシャルピー衝撃強度を測定した。衝撃強度が7.5kJ/m2以上の場合、衝撃強度改質剤の効果を維持することができ、実用上、使用可能な範囲と判断し、良好とした。7.5kJ/m2未満の場合、衝撃強度改質剤の効果を維持することができないため、実用上、使用不可能な範囲と判断し、不良とした。
JIS K−7111に準拠し、23℃における成形品(シート)のシャルピー衝撃強度を測定した。衝撃強度が7.5kJ/m2以上の場合、衝撃強度改質剤の効果を維持することができ、実用上、使用可能な範囲と判断し、良好とした。7.5kJ/m2未満の場合、衝撃強度改質剤の効果を維持することができないため、実用上、使用不可能な範囲と判断し、不良とした。
〔耐成形着色性(YI値)〕
JIS K−7105に準拠し、分光式色差計(日本電色工業製SE2000)にて23℃における成形品(シート)のYI値を測定した。YI値が20以下の場合、耐成形着色性良好と判断し、20を越える場合、不良と判断した。
JIS K−7105に準拠し、分光式色差計(日本電色工業製SE2000)にて23℃における成形品(シート)のYI値を測定した。YI値が20以下の場合、耐成形着色性良好と判断し、20を越える場合、不良と判断した。
[参考例1] グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体(1)の製造
攪拌機、温度計、及び還流凝縮器を備え、加温及び冷却がいずれも可能な重合装置中に、脱イオン水200質量部に、(メタ)アクリル酸とメチル(メタ)アクリレートの共重合物のアルカリ金属塩0.01質量部とを投入、撹拌し、分散剤水溶液を得た。
撹拌を停止してから、グリシジルメタクリレート100質量部を投入した後、攪拌を再度開始してから2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5質量部及びn−ドデシルメルカプタン1.0質量部を添加し、75℃に加温して反応温度を75〜80℃に維持しながら1時間反応させ、次いで95℃に昇温して1時間反応させ、重合体スラリーを得た。重合体スラリーは、目開き30μmのメッシュで濾過、脱水後、35℃で乾燥させ、グリシジルメタクリレート重合体粒子を得た。Tgの計算値は46℃であり、得られたグリシジルメタクリレート重合体(1)の重量平均分子量は41,000であった。また、分散度、粒子径は、分散度(D90−D10)/D50が0.85、メジアン径(D50)が92μmを満足する粒子形状良好な結果であった。
攪拌機、温度計、及び還流凝縮器を備え、加温及び冷却がいずれも可能な重合装置中に、脱イオン水200質量部に、(メタ)アクリル酸とメチル(メタ)アクリレートの共重合物のアルカリ金属塩0.01質量部とを投入、撹拌し、分散剤水溶液を得た。
撹拌を停止してから、グリシジルメタクリレート100質量部を投入した後、攪拌を再度開始してから2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5質量部及びn−ドデシルメルカプタン1.0質量部を添加し、75℃に加温して反応温度を75〜80℃に維持しながら1時間反応させ、次いで95℃に昇温して1時間反応させ、重合体スラリーを得た。重合体スラリーは、目開き30μmのメッシュで濾過、脱水後、35℃で乾燥させ、グリシジルメタクリレート重合体粒子を得た。Tgの計算値は46℃であり、得られたグリシジルメタクリレート重合体(1)の重量平均分子量は41,000であった。また、分散度、粒子径は、分散度(D90−D10)/D50が0.85、メジアン径(D50)が92μmを満足する粒子形状良好な結果であった。
[参考例2〜6、8]重合体 (2)〜(6)、(8)の製造
表1の組成欄に示す、各単量体の混合組成を用いた以外は、全て参考例1の対応する操作と同様にして、重合体(2)〜(6)、(8)の重合を行った。得られた重合体スラリーを用いて、参考例1と同様の操作を行って、重合体粒子を得た。各重合体の特性値を表1に示す。
表1の組成欄に示す、各単量体の混合組成を用いた以外は、全て参考例1の対応する操作と同様にして、重合体(2)〜(6)、(8)の重合を行った。得られた重合体スラリーを用いて、参考例1と同様の操作を行って、重合体粒子を得た。各重合体の特性値を表1に示す。
[参考例7]グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体 (7)の製造
表1の組成欄に示す、各単量体の混合組成を用いた以外は、全て参考例1の対応する操作と同様にして、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体(7)の重合を行った。得られた重合体スラリーは、目開き30μmのメッシュで濾過、脱水後、10℃で乾燥して重合体粒子を得た。重合体の特性値を表1に示す。
表1の組成欄に示す、各単量体の混合組成を用いた以外は、全て参考例1の対応する操作と同様にして、グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体(7)の重合を行った。得られた重合体スラリーは、目開き30μmのメッシュで濾過、脱水後、10℃で乾燥して重合体粒子を得た。重合体の特性値を表1に示す。
GMA :グリシジルメタクリレート
MMA :メチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
SLMA :三菱レイヨン社製 アクリエステルSL
MA :メチルアクリレート
[実施例1〜7、比較例1〜8]
塩化ビニル樹脂100質量部(信越化学社製TK1300、平均重合度:1300)、カルシウム亜鉛系安定剤(コグニス社製StabiloxCZ3122GN)3.0質量部、内部滑剤(コグニス社製LoxiolG15)0.3質量部、外部滑剤(コグニス社製LoxiolG21)0.2質量部およびポリエチレン系外部滑剤(三菱化学社製Hi−WAX220MP)0.1質量部およびアクリルゴム系衝撃性改質剤(三菱レイヨン社製メタブレンW450A)7.0質量部を計量し、ヘンシェルミキサーを用いてプレミックスした。
塩化ビニル樹脂100質量部(信越化学社製TK1300、平均重合度:1300)、カルシウム亜鉛系安定剤(コグニス社製StabiloxCZ3122GN)3.0質量部、内部滑剤(コグニス社製LoxiolG15)0.3質量部、外部滑剤(コグニス社製LoxiolG21)0.2質量部およびポリエチレン系外部滑剤(三菱化学社製Hi−WAX220MP)0.1質量部およびアクリルゴム系衝撃性改質剤(三菱レイヨン社製メタブレンW450A)7.0質量部を計量し、ヘンシェルミキサーを用いてプレミックスした。
上記のプレミックスした原料に、表2、表3に示すように、重合体(1)〜(8)、エポキシ化大豆油(東京ファインケミカル社製EMBILIZER NF−3200)、アクリル系高分子加工助剤(三菱レイヨン社製メタブレンP501A)をそれぞれ添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た。このポリ塩化ビニル系樹脂組成物を、プラストミルを用いて、ゲル化時間、平衡トルクの維持性を評価した。また、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物100gを200℃に調節した6インチロールにて、回転数が前ロール14rpm、後ロール16rpmの条件で混練を開始し、ロール巻付き後3.0分混練し、サンプルを採取した。このサンプルを成形温度200℃で厚さ約3mmのシートにプレス成形し、シャルピー衝撃強度を測定した。同様に、ロール巻付き後7.5分混練したサンプルをプレス成形し、YI値を評価した。以上の評価結果を表2および表3に示す。
実施例、比較例により、以下のことが判明した。
(1)実施例1〜7のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐成形着色性、成形加工性、耐衝撃性に優れていた。特に、実施例1のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐成形着色性と成形加工性のバランスが最も優れていた。
(2)ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部とグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)の積が、2.0である比較例1のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。
(1)実施例1〜7のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐成形着色性、成形加工性、耐衝撃性に優れていた。特に、実施例1のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐成形着色性と成形加工性のバランスが最も優れていた。
(2)ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部とグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)の積が、2.0である比較例1のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。
(3)ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部とグリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)の積が、0.5である比較例2のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。また、ゲル化時間が5分を超えており、このように成形加工性が不良なポリ塩化ビニル系樹脂成形品は、生産性が低位となる。
(4)Tgが−2.5℃である比較例3のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、平衡トルクの維持性が2.0[N・m/min]を越えていた。このように、ゲル化後の平衡トルクの維持低下率が大きいポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、混練性が低位であり、成形外観や物性の低下を招くため、工業的利用価値が低い。
(4)Tgが−2.5℃である比較例3のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、平衡トルクの維持性が2.0[N・m/min]を越えていた。このように、ゲル化後の平衡トルクの維持低下率が大きいポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、混練性が低位であり、成形外観や物性の低下を招くため、工業的利用価値が低い。
(5)グリシジル(メタ)アクリレート単位を含有しない重合体を用いた比較例4のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。また、ゲル化時間が5分を超えており、このように成形加工性が不良なポリ塩化ビニル系樹脂成形品は、生産性が低位となる。
(6)エポキシ化大豆油2.0質量部である比較例5のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、衝撃強度が、7.5kJ/m2未満であり、衝撃強度改質剤の効果を維持できない。また、平衡トルクの維持性が2.0[N・m/min]を越えており、このように、ゲル化後の平衡トルクの維持低下率が大きいポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、混練性が低位であり、成形外観や物性の低下を招くため、工業的利用価値が低い。
(6)エポキシ化大豆油2.0質量部である比較例5のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、衝撃強度が、7.5kJ/m2未満であり、衝撃強度改質剤の効果を維持できない。また、平衡トルクの維持性が2.0[N・m/min]を越えており、このように、ゲル化後の平衡トルクの維持低下率が大きいポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、混練性が低位であり、成形外観や物性の低下を招くため、工業的利用価値が低い。
(7)アクリル系高分子加工助剤1.5質量部の比較例6のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。
(8)エポキシ化大豆油、アクリル系加工助剤のいずれも含まない比較例7のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。また、ゲル化時間が5分を超えており、このように成形加工性が不良なポリ塩化ビニル系樹脂成形品は、生産性が低位となる。
(8)エポキシ化大豆油、アクリル系加工助剤のいずれも含まない比較例7のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、YI値が20を超えていた。このように、耐成形着色性が低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高度な意匠性が必要となる用途には使用することができないため、工業的利用価値が低い。また、ゲル化時間が5分を超えており、このように成形加工性が不良なポリ塩化ビニル系樹脂成形品は、生産性が低位となる。
本発明の硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の用途としては、窓枠、樹脂サッシ、パイプ、硬質シート、フィルム、医療用、自動車用、電線用、ラップ等が挙げられる。
Claims (2)
- ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部およびTgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物であって、実質的に可塑剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部を表し、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)を表す。) - ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部、Tgが0〜150℃の範囲であってグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体0.1〜30質量部、および可塑剤0.01〜20質量部を含有し、下記式(1)を満足するポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
0.75≦(A)×(B)/100≦1.75 (1)
(式(1)中、(A)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対するグリシジル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の質量部を表し、(B)は、グリシジル(メタ)アクリレート単位の含有量(質量%)を表す。)
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