JP2008063255A - アレルギー疾患抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、安全であり毎日の服用も可能であって、アレルギー疾患を有意に抑制できる薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のアレルギー疾患抑制剤は、枇杷種子の抽出物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のアレルギー疾患抑制剤は、枇杷種子の抽出物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、アレルギー疾患を抑制するための薬剤に関するものである。
近年、アレルギー疾患の種類や患者が増大しており、社会的な問題となっている。例えば、花粉など過去には問題とならなかったものが抗原となり、花粉症などの患者は年々増大している。
アレルギー疾患の治療には、従来、ステロイド剤や抗ヒスタミン薬などが用いられていた。しかしアレルギー疾患は完治し難く、継続的な投薬が必要となるため、これら化学薬剤では副作用が生じ易い。そこで、比較的副作用が少ないと考えられる天然成分から、抗アレルギー作用を有するものの探索が行われている。
例えば特許文献1には、果実外皮の組織中にトレハロースを浸透させた機能性食品が開示されており、果実として枇杷が例示されている。また、その実施例では、当該機能性食品の抗アレルギー作用の試験結果が記載されている。
また、特許文献2には、海水濃縮物から塩化ナトリウムと有毒成分を除去した残留物が、アレルギー治療剤等になる旨が記載されており、当該残留物を服用することによって、アレルギー性鼻炎の発症が無くなったとされている。
ところで本発明者らは、枇杷種子抽出物の様々な効能を見出している。例えば、枇杷種子抽出物は、肝臓等の細胞繊維化を抑制し(特許文献3)、また、フリーラジカルを消去する(特許文献4)。
特開2001−346537号公報(請求項5、実施例)
特開平10−120578号公報(請求項1と6、実施例12)
特開2001−240553号公報(特許請求の範囲、実施例)
特開2003−246745号公報(特許請求の範囲、実施例)
上述した様に、これまでにも抗アレルギー作用を示す天然成分の探索は行われている。しかし、その効果は、必ずしも満足できるものではない。
例えば特許文献1で抗アレルギー作用が確認されているのは蜜柑等の外皮にトレハロースを含浸させたもののみであり、枇杷外皮は、その味しか評価されていない。また、特許文献2に記載の抗アレルギー作用試験の結果はたった1人の被験者のものであり、その試験条件や結果も、信憑性に欠ける。
そこで、本発明が解決すべき課題は、安全であり毎日の服用も可能であって、アレルギー疾患を有意に抑制できる薬剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねた。その結果、本発明者らが研究を続けている枇杷種子抽出物が、特に花粉症やアレルギー性皮膚炎に対して顕著な抑制効果を有することを見出して、本発明を完成した。
本発明のアレルギー疾患抑制剤は、枇杷種子の抽出物を含むことを特徴とする。
上記抽出物としては、アルコール水抽出物が好適である。アルコール水を抽出溶媒として用いれば、疎水性成分から親水性成分まで万遍なく抽出することができ、その抽出物の抗アレルギー作用が優れているからである。
上記アレルギー疾患抑制剤としては、さらに海洋深層水由来のミネラルを含むものが好ましい。当該ミネラルの有する抗アレルギー作用が相乗的に作用し、組成物の抗アレルギー作用がより一層高まるからである。
本発明のアレルギー疾患抑制剤は、特に花粉症やアレルギー皮膚炎の治療に効果を発揮することができる。
本発明のアレルギー疾患抑制剤は、枇杷種子の抽出物を主要な有効成分とするものであることから安全性に優れ、毎日の服用も可能である。その上、極めて優れたヒスタミン遊離抑制作用や、くしゃみなどアレルギー疾患の症状の抑制作用を示す。従って、本発明のアレルギー疾患抑制剤は、近年問題となっているアレルギー疾患の優れた抑制剤として、産業上極めて有用である。
本発明のアレルギー疾患抑制剤は、枇杷種子の抽出物を含むことを特徴とする。なお、本発明において「抑制」とは、アレルギー症状を軽減する全ての態様を含む概念であり、例えば、予防や治療なども含まれる。
枇杷は中国原産のバラ科の常緑樹であり、日本へは古代に持ち込まれたと考えられており、その果実は日本でも親しまれている。また、その葉はビタミンB17やクエン酸などを含み、枇杷茶や生薬として利用されてきた。しかし枇杷種子に関しては、枇杷果実に占める割合は大きいにも関わらず、その利用方法はほとんど検討されず、廃棄されていた。一方、本発明者らは枇杷種子が有する優れた薬効を見出し、研究を継続してきた。本発明は、その研究の一環として完成されたものである。
本発明で用いる枇杷種子は、果実から皮と果肉を除いたものを用いればよい。続いて、保存や効率的な粉砕のために洗浄や乾燥を行う。乾燥の条件は特に制限されないが、例えば、ニトロソ化合物であるアミグダリンを分解酵素であるエムルジンで分解するために、40℃前後で1週間程度乾燥する。
抽出を効率的なものとするために、枇杷種子は、抽出前に粉砕することが好ましい。粉砕の方法は特に制限されないが、例えば、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、エヒスインテグレーター、冷却装置付きブレンダーなどを用いることができる。
次に、粉砕した枇杷種子を溶媒に浸漬することにより有効成分を抽出する。抽出溶媒の種類は特に制限されず、対象であるアレルギー疾患の種類と抽出された成分の有効性を考慮しつつ適宜選択できるが、生体に無害か害の少ないものが好適である。例えば、水、または、メタノールやエタノール等のアルコール;テトラヒドロフランやジオキサン等のエーテル;アセトン等のケトン;などの水混和性有機溶媒と、水との混合溶媒を用いることができる。好適には、50〜80容量%程度のエタノール水を用いる。なお、ここでのエタノール水は、エタノール:水の容量が50:50〜80:20のものをいう。
浸漬条件は、適宜調節することができる。例えば、用いる溶媒量は、少なくとも粉砕した枇杷種子が万遍なく漬かる程度とし、また、有効成分の抽出量や濃縮する際の効率などを考慮して調節すればよい。抽出温度も特に制限されず、抽出効率を高めるために30〜50℃程度に加温してもよいが、有効成分が分解されるおそれがあるので、好適には室温とする。また、抽出効率を高めるために、溶媒を攪拌してもよい。抽出時間も適宜調節すればよいが、通常は5〜10日間程度とする。
抽出後は、濾過等により枇杷種子の残渣を除去する。得られた抽出液は、溶媒によってはそのままアレルギー疾患抑制剤として使用してもよいが、保存安定性を高めるために、いったん濃縮したり、さらに好適な溶媒に再溶解することが好ましい。濃縮処理では、濃縮温度を抑制するためや効率の観点からエバポレーターを用いて減圧することが好適である。
枇杷種子から抽出される成分やその量は、使用する溶媒の種類などにより異なるが、50〜80容量%程度のエタノール水を抽出溶媒として用いれば、極性の高い化合物から比較的極性の低い化合物まで、満遍なく抽出することができる。
本発明者らによる研究によれば、70%エタノール水を抽出溶媒として用いて得られる枇杷種子抽出物には、リノレン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸、β−シトステロール等のステロール類、β−シトステロールモノグリコサイド等の糖誘導体が含まれていた。本発明において、何れの有効成分が抗アレルギー疾患作用を示すのかは必ずしも明らかではないが、複数の化合物が相加的または相乗的に効果を示していることが考えられる。
本発明に係る抽出物は、枇杷種子由来のものであることから安全性は高いと考えられる。実際、後述する安全性試験でも、高い安全性が確認されている。従って、本発明のアレルギー疾患抑制剤は、アレルギー疾患の治療目的のみならず、恒常的に服用することによりアレルギー疾患の予防目的で用いることも可能である。
本発明に係るアレルギー疾患抑制剤の投与量は、投与すべき患者の状態や年齢など、また、抽出された成分の構成などによる。ラットにおいては、少なくとも375mg/kg/日程度投与すべきであるが、ヒトに対しては、より少ない量であることが好ましい。何れにせよ、投与開始から患者の状態等により、投与量は適宜調節すればよい。
本発明に係る抽出物へは、公知の製剤成分を添加し、様々な製剤とすることができる。例えば、基材、賦形剤、着色剤、滑沢剤、矯味剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、安定剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、抗酸化剤、佐薬、緩衝剤、pH調整剤、甘味料、香料などを添加することができる。また、これら添加剤の配合量は、本願発明の作用効果を妨げない様な量で有る限り、必要に応じて適宜設定することができる。
剤形としては、液剤、シロップ剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、坐剤、注射剤とすることができるが、長期投与する場合を考慮して、液剤などの経口剤とすることが好ましい。
液剤とする場合、いったん濃縮して粉末とした枇杷種子抽出物を、水等の溶媒に再溶解または再分散する。この際における枇杷種子抽出物の濃度は特に制限されず、患者の状態等により適宜調節すればよいが、例えば、乾燥状態の枇杷種子抽出物の濃度に換算して、2〜80g/L程度とすることができる。
液剤とする場合の溶媒としては、海洋深層水の脱塩水を用いることが好ましい。後述する様に、本発明者らが見出した知見によれば、海洋深層水に含まれるミネラルにもアレルギー疾患の抑制作用がある。海洋深層水の脱塩水は、海洋深層水からミネラルを分離すると同時に得られるので、溶媒として利用すれば効率が良い。また、当該脱塩水は、もともと清浄な海洋深層水から得られるものであり、また、ミネラルを極めて微量ながら含んでおり、生体にも有効であると考えられる。
海洋深層水は、深度数百メートル以上から汲み上げられる海水であり、有用なミネラルが豊富に含まれ、表層海水に比べて栄養分が豊富に含まれている一方で、有機物や細菌などが非常に少ない。日本では、高知県室戸沖、知床深海、沖縄県、富山県などで海洋深層水が汲み上げられ、利用されている。
本発明で用いる海洋深層水由来のミネラルは、海洋深層水を脱塩することにより得られる。このミネラルは、生体に有効な成分を含み、アレルギー疾患の抑制作用を有するものである。海洋深層水由来のミネラルを得る方法は特に制限されないが、例えば、通常のフィルター等により固体成分やプランクトン等を除去した後、逆浸透膜を介して圧力をかけ、脱塩する。
より具体的には、海洋深層水を脱塩した場合、ミネラルがほとんど含まれていない脱塩水と共に、ミネラルが濃縮されたミネラル濃縮水が得られる。このミネラル濃縮水を更に濃縮してニガリ液としたり、また、ミネラル濃縮水から硫酸カルシウム等のミネラルを析出させてもよい。よって、液状のアレルギー疾患抑制剤を製造する場合には、上記ミネラル濃縮水、ニガリ液、ミネラル、またはこれらの混合物を上記脱塩水へ適量加え、さらに枇杷種子抽出物を加えればよい。また、粉末状のアレルギー疾患抑制剤の場合は、枇杷種子抽出物と、硫酸カルシウム等のミネラルを混合すればよい。
海洋深層水の脱塩水にミネラル濃縮液等を加えて溶媒とする場合には、当該混合液の硬度を300〜20程度に調節することが好ましい。硬度20以上であれば、当該ミネラルの抗アレルギー作用を十分に発揮できる。一方、硬度が過剰に高いと枇杷種子抽出物と混合した際に沈殿が生じるおそれがあるため、硬度は300以下が好ましい。より好ましい硬度は100以下であり、さらに好ましくは50以下である。
脱塩水の硬度は、通常の方法で測定すればよい。例えば、脱塩水のpHを10に調節した後、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で滴定し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンのppm濃度を求める。このppm濃度を硬度とする。
本発明のアレルギー疾患抑制剤は、アレルギー疾患の抑制、即ち予防や治療に適用することができる。アレルギー疾患には、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、また、これらを伴う花粉症が含まれる。本発明のアレルギー疾患抑制剤は、特に、花粉症、花粉症に伴うアレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎の抑制に、特に効果を発揮することができる。また、本発明のアレルギー疾患抑制剤は安全性が高いので、上記疾患の予防剤として、或いは上記疾患の予防効果を有する健康食品または健康飲料として、恒常的に継続して服用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
製造例1 本発明に係るアレルギー疾患抑制剤の製造
高知県室戸市あるいは須崎市で採取した枇杷種子を日干しにより十分に乾燥した。乾燥した枇杷種子1kgを冷却装置付ブレンダーにより粉砕し、70%エタノール水2Lに浸漬し、室温で1週間攪拌した。その後、液体部分を分取し、エバポレーターにより減圧濃縮した。得られた抽出物約120gを、精製水20Lに溶解した。さらに当該溶液を、精製水で2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍に希釈した。また、同様の処理により得られた抽出物約120gを精製水2Lまたは200mLに溶解したものも調製した。以下、これらをそれぞれ10倍濃度液および100倍濃度液という。さらに、これを精製水で希釈して、3倍濃度液も調製した。
高知県室戸市あるいは須崎市で採取した枇杷種子を日干しにより十分に乾燥した。乾燥した枇杷種子1kgを冷却装置付ブレンダーにより粉砕し、70%エタノール水2Lに浸漬し、室温で1週間攪拌した。その後、液体部分を分取し、エバポレーターにより減圧濃縮した。得られた抽出物約120gを、精製水20Lに溶解した。さらに当該溶液を、精製水で2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍に希釈した。また、同様の処理により得られた抽出物約120gを精製水2Lまたは200mLに溶解したものも調製した。以下、これらをそれぞれ10倍濃度液および100倍濃度液という。さらに、これを精製水で希釈して、3倍濃度液も調製した。
試験例1 ヒスタミン遊離抑制効果の評価
10週齢のWistar系雄性ラット6匹を断頭放血死させた後、腹腔内から肥満細胞を採取した。製造例1で得た枇杷種子抽出物を試験管に1.8mLずつ入れ、そこへ得られた肥満細胞を104個ずつ播種した。ヒスタミン遊離剤であるCompound48/80、または対照として生理食塩水を、各試験管へ0.2mLずつ加えた。各試験管における細胞内および遊離のヒスタミン量を蛍光法により測定し、下記式により遊離率を求め、さらに対照に対するヒスタミン遊離抑制率を計算した。結果を図1に示す。
ヒスタミン遊離率(%)=PS/(PS+PR)
[式中、PSは遊離したヒスタミン量を示し、PRは細胞内のヒスタミン量を示す。]
10週齢のWistar系雄性ラット6匹を断頭放血死させた後、腹腔内から肥満細胞を採取した。製造例1で得た枇杷種子抽出物を試験管に1.8mLずつ入れ、そこへ得られた肥満細胞を104個ずつ播種した。ヒスタミン遊離剤であるCompound48/80、または対照として生理食塩水を、各試験管へ0.2mLずつ加えた。各試験管における細胞内および遊離のヒスタミン量を蛍光法により測定し、下記式により遊離率を求め、さらに対照に対するヒスタミン遊離抑制率を計算した。結果を図1に示す。
ヒスタミン遊離率(%)=PS/(PS+PR)
[式中、PSは遊離したヒスタミン量を示し、PRは細胞内のヒスタミン量を示す。]
図1の通り、ラット肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制率は、枇杷種子抽出物の濃度に比例して高まり、製造例1の2倍希釈液(濃度:3g/L)で75.8%という高値を示した。かかる結果の通り、本発明に係る枇杷種子抽出物のヒスタミン遊離抑制効果が実証された。
試験例2 血管透過性の抑制効果の評価
ヒスタミンは、小動脈を拡張して血管透過性を亢進させ、浮腫を引き起こす。そこで、本発明に係る枇杷種子抽出物がヒスタミンによる血管透過性亢進作用に与える影響を試験した。
ヒスタミンは、小動脈を拡張して血管透過性を亢進させ、浮腫を引き起こす。そこで、本発明に係る枇杷種子抽出物がヒスタミンによる血管透過性亢進作用に与える影響を試験した。
当該試験では、8週齢のWistar系雄性ラットを用い、Passive Cutaneous Anaphylaxis(PCA)反応を利用した。具体的には、ラット背部に抗ジニトロフェニル(DNP)抗体の生理食塩水溶液を皮内投与し、48時間後、抗原としてDNP−ウシ血清アルブミンを含むEvans blue溶液を静脈内投与した。また、製造例1の枇杷種子抽出物溶液の100倍濃度液2mLを、抗原投与の1時間前または2時間前投与した。また、2時間前に、投与量を0.5mLまたは1mLに変えて投与した。対照としては、生理食塩水を2mL投与した。
抗原の投与から30分後にラットを放血死させ、背部皮膚を0.3g採取し、色素を0.6Nリン酸・アセトン混液により抽出した。当該抽出液の吸光度を測定し、検量線より各試料内の色素(Evans blue)の量を求めた。試験は各6例ずつ行い、平均値を求めた。結果を図2に示す。図中、「*」はstudent t−テストによりp<0.05で有意差がある場合を示し、「**」はp<0.01で有意差がある場合を示す。
図2の通り、抗原投与前に本発明に係る枇杷種子抽出物を投与すれば、血管透過性を容量依存的に抑制できることが分かる。よって、本発明に係る枇杷種子抽出物を恒常的に投与すれば、ヒスタミンを原因とする浮腫などのアレルギー疾患を予防できると考えられる。
試験例3 花粉症モデルに対する効果の評価
スギ花粉を生理食塩水に50mg/mLの濃度で懸濁し、4℃で18時間緩除に攪拌した。次いで、当該懸濁液を4℃、7000×gで遠心分離し、上清を得た。得られた上清に精製水を加えて全タンパクの濃度が150mg/mLとなる様に調節した。得られたタンパク質溶液を、3週齢のHartley系雄性モルモットの両鼻に、7日間にわたり1日2回3μLずつ滴下した。さらに1週間ごとに、専用の吸入器を使ってスギ花粉1.8mgを吸入させた。その後、製造例1で得た枇杷種子抽出物の10倍濃度液を、1日100mLずつ給水瓶に入れ、10週間にわたりモルモットに自由摂取させた。また、対照として、同様に水道水を自由摂取させた。くしゃみの回数と鼻かきの回数を計測した。一週間ごとのくしゃみの累積回数を図3に、鼻かきの累積回数を図4に示す。なお、「鼻かき」とは、モルモットが前肢で鼻を擦るという行動を示す。
スギ花粉を生理食塩水に50mg/mLの濃度で懸濁し、4℃で18時間緩除に攪拌した。次いで、当該懸濁液を4℃、7000×gで遠心分離し、上清を得た。得られた上清に精製水を加えて全タンパクの濃度が150mg/mLとなる様に調節した。得られたタンパク質溶液を、3週齢のHartley系雄性モルモットの両鼻に、7日間にわたり1日2回3μLずつ滴下した。さらに1週間ごとに、専用の吸入器を使ってスギ花粉1.8mgを吸入させた。その後、製造例1で得た枇杷種子抽出物の10倍濃度液を、1日100mLずつ給水瓶に入れ、10週間にわたりモルモットに自由摂取させた。また、対照として、同様に水道水を自由摂取させた。くしゃみの回数と鼻かきの回数を計測した。一週間ごとのくしゃみの累積回数を図3に、鼻かきの累積回数を図4に示す。なお、「鼻かき」とは、モルモットが前肢で鼻を擦るという行動を示す。
図3と4の結果の通り、本発明に係る枇杷種子抽出物の投与によって、花粉症モデルのくしゃみの回数は投与後4週目から減少し、鼻かきの回数は投与後5週目から減少した。そして各累積回数は、投与後10週目においては投与群が対照群に比べて半分であった。当該結果の通り、本発明に係る枇杷種子抽出物は、花粉症の症状を軽減できることが実験的に証明された。
試験例4 安全性の評価
製造例1で得た枇杷種子抽出物、または対照として精製水を96ウェル培養プレートへ0.2mLずつ入れ、そこへ、試験例1で用いた肥満細胞を104個ずつ播種した。CO2インキュベーターで48時間培養後、細胞死により細胞内より留出する乳酸脱水素酵素(LDH)を、Wako製のセルカウンティングキットにより発色させ、450nmでの吸光度を測定した。同一濃度溶液につき、6例ずつ測定した。結果を図5に示す。
製造例1で得た枇杷種子抽出物、または対照として精製水を96ウェル培養プレートへ0.2mLずつ入れ、そこへ、試験例1で用いた肥満細胞を104個ずつ播種した。CO2インキュベーターで48時間培養後、細胞死により細胞内より留出する乳酸脱水素酵素(LDH)を、Wako製のセルカウンティングキットにより発色させ、450nmでの吸光度を測定した。同一濃度溶液につき、6例ずつ測定した。結果を図5に示す。
図5の結果の通り、製造例1における2〜50倍希釈液の場合、対照に比べてLDH放出量は変わらず、細胞毒性はほとんど無いと考えられる。1倍液の場合、対照群よりもLDH放出量が多い場合もあったが、student t−テストで検定したところ、有意差はなかった。以上の結果から、本発明に係る枇杷種子抽出物は、細胞毒性を示さないと判断することができる。
製造例2 本発明に係るアレルギー疾患抑制剤の製造
高知県の室戸岬沖の深海から得た海洋深層水を、逆浸透膜を用いて濾過することにより、脱塩水と濃縮液を得た。得られた脱塩水99.62315%に対して濃縮液を0.37685%加えることによって、硬度を28に調節した。
高知県の室戸岬沖の深海から得た海洋深層水を、逆浸透膜を用いて濾過することにより、脱塩水と濃縮液を得た。得られた脱塩水99.62315%に対して濃縮液を0.37685%加えることによって、硬度を28に調節した。
別途、製造例1と同様の方法によって、枇杷種子から抽出物を得た。得られた抽出物(0.6g)を、上記脱塩水(140mL)に溶解した。
試験例5 臨床試験
アレルギー性結膜炎を伴う花粉症患者20人に、製造例2のアレルギー疾患抑制剤140mLを4週間にわたり1日2回朝夕に投与した。投与開始から1週間後、2週間後、および4週間後に医師が表1に示す項目につき、明らかな症状が見られる状態から症状が見られない状態まで5段階で判定し、ノンパラメトリック直線回帰法で結果を解析した。
アレルギー性結膜炎を伴う花粉症患者20人に、製造例2のアレルギー疾患抑制剤140mLを4週間にわたり1日2回朝夕に投与した。投与開始から1週間後、2週間後、および4週間後に医師が表1に示す項目につき、明らかな症状が見られる状態から症状が見られない状態まで5段階で判定し、ノンパラメトリック直線回帰法で結果を解析した。
詳しくは、各経過時間における医師の判定データをプロットし、任意の2点を結んで得られる直線の傾き全てを計算し、それぞれの傾きを小さい順に並べ、その中間値を平均と傾きとした。この方法は、大きな外れ値が1点あってもそのデータを自動的に除外できる特性があり、データ量が少なくノイズを含み得る対象を解析するのに有利である。
上記傾きが正の場合は明らかな改善が見られることの証明になる。この場合を、表1中「◎」で示す。また、花粉症には未だ特効薬が見出されておらず、花粉が飛散する季節では、通常、発症から経時的に症状が悪化する。従って、上記傾きがほとんど0の場合、即ち症状が当初とほとんど変わらない場合は、症状の進行が抑制されていることの証明となる。この場合を、表1中「○」で示す。一方、患者によっては、症状の改善と悪化の両方が見られ、改善または悪化傾向が把握できない場合があった。この場合を、表1中「−」で示す。
上記結果の通り、本発明のアレルギー疾患抑制剤を投与した場合、明確な抑制効果が見られない場合はあるものの、多くの患者で花粉症のアレルギー症状が抑制でき、眼球結膜充血など、項目によっては明らかな改善が見られる場合があった。少なくとも、本発明のアレルギー疾患抑制剤の投与によって、症状が悪化した例は無かった。従って、本発明のアレルギー疾患抑制剤は、花粉症などのアレルギー疾患を抑制できることが実証された。
試験例6 臨床試験
アレルギー性結膜炎を伴う花粉症患者34人に、製造例2のアレルギー疾患抑制剤140mLを4週間にわたり1日2回朝夕に投与した。投与開始直前、投与開始から2週間後、および4週間後に、フローサイトメトリー(シスメックス(株)製、SE9000)を用いて、計数法により、白血球に対する血中好酸球の比率を求めた。結果を図6に示す。
アレルギー性結膜炎を伴う花粉症患者34人に、製造例2のアレルギー疾患抑制剤140mLを4週間にわたり1日2回朝夕に投与した。投与開始直前、投与開始から2週間後、および4週間後に、フローサイトメトリー(シスメックス(株)製、SE9000)を用いて、計数法により、白血球に対する血中好酸球の比率を求めた。結果を図6に示す。
図6の通り、本発明のアレルギー疾患抑制剤を継続的に投与することにより、血中の好酸球を低減することができる。当該結果より、本発明のアレルギー疾患抑制剤がアレルギー疾患を抑制できることが明らかにされた。
試験例7 臨床試験
試験例5の被験者において、協力が得られた患者16人に、自覚症状の改善度を評価してもらった。具体的には、製造例2のアレルギー疾患抑制剤の投与開始から1週間後、2週間後、および4週間後に、眼のかゆみと痛み、眼の充血、眼の異物感、めやにの量、なみだの量、日常生活への支障度に関し、右目および左目について、「全くない」から「非常に強い」まで5段階評価してもらい、本発明のアレルギー疾患抑制剤が自覚症状の改善に「有用である」か、「どちらともいえない」か、「あまり好ましくない」かを、総合的に評価してもらった。結果を図7に示す。
試験例5の被験者において、協力が得られた患者16人に、自覚症状の改善度を評価してもらった。具体的には、製造例2のアレルギー疾患抑制剤の投与開始から1週間後、2週間後、および4週間後に、眼のかゆみと痛み、眼の充血、眼の異物感、めやにの量、なみだの量、日常生活への支障度に関し、右目および左目について、「全くない」から「非常に強い」まで5段階評価してもらい、本発明のアレルギー疾患抑制剤が自覚症状の改善に「有用である」か、「どちらともいえない」か、「あまり好ましくない」かを、総合的に評価してもらった。結果を図7に示す。
図7の結果の通り、本発明のアレルギー疾患抑制剤の投与開始後から、アレルギー症状の抑制効果につき「どちらともいえない」と判断した患者の割合は経時的に減少し、代わりに「有用」と判断した患者の割合が増加した。従って、当該結果により、本発明のアレルギー疾患抑制剤は、花粉症などのアレルギー疾患を抑制できることが証明された。
試験例8 アレルギー性皮膚炎の抑制効果の評価
6週齢のSD系雄性ラット21匹をエーテル麻酔下、2%オキサゾロンエタノール溶液300μLを腹部に塗布することにより感作した。感作から7日後に再びエーテル麻酔し、1.6%オキサゾロン−アセトン・オリ−ブ油溶液100μLを耳介に塗布することによって、初回の抗原刺激を行った。その後、3日毎に刺激の反復を行い、耳介浮腫モデルを作成した。作成した耳介浮腫モデルを7匹ずつ分け、対照群、抗原刺激群、枇杷種子抽出物投与群とした。枇杷種子抽出物投与群には、感作1週間前より、製造例1の3倍濃度液を、1日当たり15mL給水瓶にて実験終了時まで投与した。抗原刺激群は、枇杷種子抽出物投与群と同様の感作と抗原刺激を施すが、枇杷種子抽出物は投与しなかった群である。対照群は、感作と抗原刺激を行わないラットとした。3日毎の刺激から24時間後および72時間後における耳介の肥厚を測定した。対照群の耳介の肥厚の測定も同時に行った。結果を図8に示す。
6週齢のSD系雄性ラット21匹をエーテル麻酔下、2%オキサゾロンエタノール溶液300μLを腹部に塗布することにより感作した。感作から7日後に再びエーテル麻酔し、1.6%オキサゾロン−アセトン・オリ−ブ油溶液100μLを耳介に塗布することによって、初回の抗原刺激を行った。その後、3日毎に刺激の反復を行い、耳介浮腫モデルを作成した。作成した耳介浮腫モデルを7匹ずつ分け、対照群、抗原刺激群、枇杷種子抽出物投与群とした。枇杷種子抽出物投与群には、感作1週間前より、製造例1の3倍濃度液を、1日当たり15mL給水瓶にて実験終了時まで投与した。抗原刺激群は、枇杷種子抽出物投与群と同様の感作と抗原刺激を施すが、枇杷種子抽出物は投与しなかった群である。対照群は、感作と抗原刺激を行わないラットとした。3日毎の刺激から24時間後および72時間後における耳介の肥厚を測定した。対照群の耳介の肥厚の測定も同時に行った。結果を図8に示す。
図8の結果の通り、抗原刺激群では、対照群に対して耳介の肥厚が著しく増大した。しかし、本発明に係る枇杷種子抽出物を投与することによって、耳介肥厚を抑制することができた。
また、上記耳介浮腫モデルラットの耳介組織を採取して切片を作成し、HE染色法にて炎症細胞を染色し、炎症細胞の分布を顕微鏡下で観察した。炎症細胞は、白血球、組織球、肥満細胞等であり、炎症時に血管内から組織中に浸潤してくる細胞である。対照群の結果を図9(1)に、抗原刺激群の結果を図9(2)に、枇杷種子抽出物投与群の結果を図9(3)に示す。
図9の結果の通り、抗原刺激群では、対照群に比して明らかな炎症細胞の浸潤が認められた。しかし、本発明に係る枇杷種子抽出物を投与した群では、炎症細胞の浸潤は顕著に抑制されている。
以上の結果より、本発明のアレルギー疾患抑制剤は、アレルギー性の浮腫を抑制できることが分かった。
Claims (5)
- 枇杷種子の抽出物を含むことを特徴とするアレルギー疾患抑制剤。
- 上記抽出物が、アルコール水抽出物である請求項1に記載のアレルギー疾患抑制剤。
- さらに海洋深層水由来のミネラルを含む請求項1または2に記載のアレルギー疾患抑制剤。
- 花粉症を抑制するためのものである請求項1〜3の何れかに記載のアレルギー疾患抑制剤。
- アレルギー性皮膚炎を抑制するためのものである請求項1〜3の何れかに記載のアレルギー疾患抑制剤。
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JP2009235035A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-15 | Kochi Univ | アレルギー性気管支喘息抑制剤 |
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2006
- 2006-09-05 JP JP2006240714A patent/JP2008063255A/ja active Pending
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