JP2008062562A - 表示用フィルム - Google Patents

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隆行 相川
Hideki Etori
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進 栗嶋
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Abstract

【課題】視認する角度によって、反射光の色相が変化し、しかも、ぎらつきを抑制して、色相が明確に認識できる表示用フィルムを提供する。
【解決手段】基材と、この基材上に順に積層された、干渉反射膜と、前方散乱層とを備えることを特徴とする表示用フィルムを提供する。干渉反射膜を基材上に一様に設けることにより、膜面全体で一様な色相を呈することができる。しかも、干渉反射膜の上に前方散乱層を備えることにより、干渉反射膜が鏡面のように反射することによる、ぎらつきや映り込みを防止でき、干渉反射膜の色相を鮮明に認識することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、視認する角度によって表示色が変化する装飾性に優れた表示用フィルムに関する。
店舗の看板や案内板等の表示物や装飾物には、種々の色相のフィルムを組み合わせて色分けにより表示や模様を表したものが多く、デザイナーや製造者には、表示の見やすさと装飾性の高さの両方が常に求められている。このような表示用フィルムとして、各種の顔料を含んだフィルム等種々のフィルムが用いられている。
特許文献1には、細かく裁断した干渉膜の切片を分散した印刷層を、不透明印刷層と、透明フィルムとの間に挟んだ装飾フィルムが開示されている。この装飾フィルムは、干渉膜の各切片が光の反射点となり、点在する輝点として視認される。各反射点からの反射光は、干渉光であるため、その波長が様々であり、多彩な色合いを呈することができる。
一方、特許文献2には、多層干渉反射膜の細かい切片を透明基材に分散させたフィルム状構造体が開示されている。この構造体は、分散している多層干渉反射膜切片による干渉反射光の色相と、多層干渉反射膜切片および透明基材を透過した透過光の色相と、多層干渉反射膜切片を透過することなく透明基材のみを透過した透過光の色相とを、視認することが可能である。干渉反射光の色相は、見る角度によって変化する。また、入射光源側から干渉反射光を視認する場合と、その裏面側から透過光を視認する場合とで色相が著しく異なる。これにより、従来のメタリックカラーやパールカラーとは異なる装飾性を備えた新規な材料が提供できると特許文献2は記載している。
特開2004−262192号公報 特開2000−246829号公報
特許文献1、2に記載のフィルムは、いずれも切片状の干渉反射膜を基材に分散させたものであり、点在する干渉反射膜切片からの種々の波長の反射光を得ることによって、装飾性を高めている。したがって、多数の輝点が光ることによって装飾性を得ているという点では、メタリックカラーと同様である。また、輝点毎に波長が様々であるため、フィルム面では輝点ごとに異なる色を呈する。
しかしながら、表示物の用途によっては、キラキラする輝点が、好まれないことがある。また、フィルム面全体で一様な色相を呈することが望まれることも多い。輝点をなくし一様な色相を呈するためには、干渉性反射膜をフィルム全体に設けることが考えられるが、干渉膜の反射率が高いため、実際には膜面がぎらつき、却って視認者は干渉光の色相を認識しにくくなるという問題が生じる。また、干渉膜の表面には、鏡のように、周囲の風景や物品が映り込みやすくなり、それが表示の視認の妨げになる。
本発明の目的は、視認する角度によって、反射光の色相が変化し、しかも、ぎらつきを抑制して、色相が明確に認識できる表示用フィルムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、基材と、この基材上に順に積層された、干渉反射膜と、前方散乱層とを備えることを特徴とする表示用フィルムを提供する。干渉反射膜を基材上に一様に設けることにより、膜面全体で一様な色相を呈することができる。しかも、干渉反射膜の上に前方散乱層を備えることにより、干渉反射膜が鏡面のように反射することによる、ぎらつきや映り込みを防止でき、干渉反射膜の色相を鮮明に認識することができる。
上述の前方散乱層は、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光拡散層を含み、球状微粒子の平均粒径が1.0μm以上10.0μm以下であり、透明高分子バインダーの屈折率に対する球状微粒子の相対屈折率nは、0.91<n<1.09(ただし、n=1.0を除く)であるものを用いることができる。また、前方散乱層は、光拡散層の少なくとも上面に配置された透明層をさらに含み、光拡散層の上面及び下面は、平滑であるものを用いることが可能である。このような構成の前方散乱層は、後方散乱光が少ない。
上述の基材は、干渉反射膜を透過した可視光を吸収する性質のものを用いることが可能である。
また、本発明の第2の態様によれば、少なくとも一部の領域に干渉反射膜と、その上に配置された前方散乱層とを備える表示物が提供される。
本発明の第1の態様の表示用フィルムは、メタリックとは異なり、干渉反射膜が膜面で一様な色相を呈し、しかも、見る角度によって色相が変化する。また、前方散乱層を配置したことにより、干渉反射膜の反射光を散乱して出射することができるため、ぎらつきや映り込みを抑制して、色相を鮮明に認識することができ、美観に優れている。本発明の第2の態様の表示物は、第1の態様の表示用フィルムの構造を少なくとも一部領域に備えるため、美観および装飾性に優れ、認識しやすい表示物を実現できる。
本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1を用いて、第1の実施の形態の表示用フィルムの構成を説明する。図1のように、この表示用フィルムは、基材10と、その上に順に積層された多層干渉反射膜11と、前方散乱層12とを備えている。
多層干渉反射膜11は、所定の波長帯域を選択的に反射する干渉反射膜であり、入射光の入射角が大きくなるにつれ反射波長(干渉波長)がシフトする性質を有する。よって、視認する角度が一定のときは、膜面全体は一様な色相を呈するが、視認する角度を変えることによって膜面全体の色が変化する。多層干渉反射膜は、選択反射波長の反射率が高いため、多層干渉反射膜11のみでは鏡面反射に近く、膜面のぎらつき、周囲の風景や物品の映り込みが生じやすく、視認者は干渉光の色相を認識しにくく、表示の視認の妨げになる。そこで本実施の形態では、多層干渉反射膜11の上に散乱層を配置し、多層干渉反射膜11による反射光を散乱させることにより、膜面のぎらつきおよび周囲の風景等の映り込みを防止する。
本実施の形態では散乱層として、前方散乱層を用いる。前方散乱層12は、散乱光のほとんどを入射面とは反対の面から出射し、入射面側に出射する散乱光(後方散乱光)はほとんどないという特性を有する。言い換えるならば、前方散乱層12は、散乱角(入射光の進行方向に対して散乱光の進行方向の成す角度)が90°以下の散乱光(前方散乱光)が大部分であり、散乱角が90°より大きい散乱光(後方散乱光)はほとんどない。このような前方散乱層12を備えることにより、多層干渉反射膜11による干渉反射光を前方に(視認者側に)散乱して、出射することができる。よって、膜面のぎらつき、周囲の映り込みを防止でき、視認者は干渉反射光の色相をはっきりと視認することができる。なお、前方散乱層12に代えて、後方散乱の多い散乱層を用いた場合には、後方散乱光によって干渉反射光の色相が白っぽく見え、濃い色の色相が認識しにくくなるため好ましくない。その理由については後述する。
以下、本実施の形態の表示用フィルムについて、詳しく説明する。
多層干渉反射膜11は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した構成であり、これらの層の屈折率および膜厚を設計することにより、所定の波長光を選択的に反射し、他の可視波長光を透過するように構成されている。高屈折率層および低屈折率層は、無機材料または、樹脂等の有機材料により構成することが可能である。多層干渉反射膜11は、膜に対して光が入射する角度によって、高屈折率層および低屈折率層における光路差が変化するため、選択反射する波長が短波長側にシフトする性質を有する。
一例として、樹脂性の緑色多層干渉反射膜11は、垂直入射光(入射角0°)に対する反射波長が緑色(550nm付近)であるが、入射角が大きくなるにつれて反射波長が短波長側にシフトし、入射角30°で青緑色(520nm付近)、入射角60°では青色(450nm付近)まで変化する。入射角と波長シフト量との関係は、多層干渉反射膜11を構成する層の屈折率および膜厚によって異なる。
一方、前方散乱層12は、種々の構成のものを用いることができる。
例えば、前方散乱層12は、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光散乱層を有するものを用いることができる。前方散乱層12は、光散乱層12単層であってもよいが、好ましくは光散乱層の上面および下面に、透明樹脂フィルムや粘着層等の他の層を有する構成であることが望ましい。このように、他の層で光散乱層が挟まれた構成にすることにより、光拡散層の表面から微粒子が突出するのを防止でき、光拡散層の表面を平滑にすることができる。これにより、光拡散層の表面から突出する粒子に起因する後方散乱光を無くすことができる。
前方散乱層12の光散乱層の上面(視認者側の面)に配置する他の層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の透明樹脂フィルムを用いることができる。また、前方散乱層12の下面(多層干渉反射膜11側の面)に配置する他の層としては、粘着層のみ、または透明樹脂フィルムと粘着層の2層構造にすることができる。この粘着層によって前方散乱層12を多層干渉反射膜11に接着することができる。
また、光散乱層を構成する透明高分子バインダーとして粘着性のあるものを用いることにより、光散乱層自体に粘着性をもたせ、光散乱層を直接多層干渉反射膜11に接着することも可能である。この場合、多層干渉反射膜11が、光散乱層の下面に接する他の層となる。
前方散乱層12の光散乱層を構成する透明高分子バインダーとしては、熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性のバインダーを使用することができる。粘着性を有する透明高分子バインダーとして、天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブタジエン系等のエラストマー粘着剤、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シアノアクリレート系等の合成樹脂粘着剤、その他、UV・EB硬化系粘着剤、エマルジョン系粘着剤等の公知の粘着剤が使用できる。
球状微粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、ジルコニア、酸化亜鉛、二酸化チタン等の無機系の微粒子、ならびに、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂等の有機系の微粒子を用いることができる。特に、有機系の微粒子は球形形状が得やすく好適である。
球状微粒子の粒径としては、平均粒径で1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、より好適には2.0μm以上6.0μm以下であることが望ましい。平均粒径を1.0μm以上10.0μm以下にすることにより、散乱光線中の後方散乱光の占める割合を小さくすることができる。
また、透明高分子バインダーの屈折率に対する球状微粒子の相対屈折率n(n=球状微粒子の屈折率/透明高分子バインダーの屈折率)は、0.91<n<1.09(ただし、n=1.0を除く)であることが好ましい。このような相対屈折率に設定することにより、散乱光線中の後方散乱光が占める割合を小さくすることができる。
前方散乱層12の特性としては、ヘーズ30%以上、像鮮明度60.0%以上であることが望ましい。
前方散乱層12の具体例としては、透明高分子バインダーに、平均粒径2.0μm、相対屈折率n=0.98の球状微粒子を所定量分散させたものを、透明樹脂フィルム上に塗布した後、乾燥させて光拡散層を形成し、その上に粘着剤等を塗布後、乾燥させて粘着層を形成し、粘着層にセパレータフィルム(剥離用フィルム)に貼り合わせたものを用いることができる。セパレータフィルムを剥がし、粘着層を多層干渉反射膜11に貼り合わせることにより、多層干渉反射膜11と前方散乱層12とを積層することができる。なお、セパレータフィルムを用いず、粘着剤等を塗布・乾燥させた後、直接多層干渉反射膜11に貼り合わせることも可能である。
基材10は、多層干渉反射膜11および前方散乱層12を支持できるものであれば、どのようなものであってもよいが、多層干渉反射膜11を透過した可視光を吸収する作用をする基材10が、干渉反射光を明確に視認することができるため望ましい。例えば黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。また、黒色基材10として、透明基材等に黒色の塗料を塗布したものを用いることも可能である。黒色以外の濃い色の基材10や、可視光を透過して反射しないように表面が加工された基材等を用いることも可能である。
つぎに、本実施の形態の表示用フィルムの表示色について、緑色多層干渉反射膜11を用いる場合を例に説明する。この表示用フィルムを、図2のようにほぼ正面から視認した場合には、視認者は、前方散乱層12を通過し、多層干渉反射膜11にほぼ垂直に入射し、反射した光を視認する。
表示用フィルムにほぼ垂直に入射した光は、ほとんど後方散乱を生じることなく前方散乱層12に入射し、前方散乱層12を散乱しながら透過し、緑色多層干渉反射膜11に入射する。緑色多層干渉反射膜11は、垂直入射光に対する反射波長が上述したように550nm付近であるため、緑色光が反射される。反射された緑色光は、前方散乱層12を通過することにより、視認者側に多く散乱し、出射される。よって、視認者は、前方散乱層12により散乱された緑色光を視認することができる。
このとき、多層干渉反射膜11は、膜面全面に一様に設けられているため、視認される色相も膜面全体で一様に緑色である。なお、緑色多層干渉反射膜11を透過した可視波長光は、黒色基材10により吸収される。
つぎに、斜め方向から視認した場合には、図3に示すように視認者は、前方散乱層12を通過し、多層干渉反射膜11に斜め方向から入射し、反射した光を視認する。斜め方向からの入射角に対する多層干渉反射膜11の反射波長は短波長側にシフトしている。例えば、斜め30°から視認した場合には、多層干渉反射膜11の選択反射波長は、上述したように520nm付近(青緑色)であり、斜め60°方向からこの表示用フィルムを視認した場合には、450nm付近(青色)である。反射光は、前方散乱層12を斜めに通過することにより、視認者側に多く散乱し、出射される。よって、視認者は、斜め30°方向から視認した場合には、前方散乱層12により散乱された青緑色を視認し、斜め60°方向から視認した場合には、散乱された青色光を視認することができる。
このとき、多層干渉反射膜11は、膜面全面に一様に設けられているため、視認される色相も膜面全体で一様にあり、斜め30°方向の場合は青緑色、斜め60°方向の場合は青色である。なお、緑色多層干渉反射膜11を透過した可視波長光は、黒色基材10により吸収される。
このように、本実施の形態の表示用フィルムは、フィルム面に全体に多層干渉反射膜11が配置されているため、膜面全体で一様な色相を呈する。しかも、視認する角度を変化させることにより、連続的に視認される色相がシフトしていき、視認する人に対して、干渉色の連続変化による美観を与えることができる。また、前方散乱層12が配置されているため、ぎらつきや、周囲の風景等の映り込みがなく、視認者は多層干渉反射膜11の表示色をはっきりと視認することができるという効果が得られる。よって、この表示用フィルムを店舗の看板や案内板等の表示物や装飾品に用いることにより、装飾性の高い表示物や装飾品を提供できる。
なお、上述したように前方散乱層12に代えて、後方散乱の多い散乱層を用いた場合、後方散乱光によって干渉反射光の色相が白っぽく見え、濃い色の色相が認識しにくくなるため好ましくない。その理由は、表示用フィルムに入射する光は、後方散乱層に入射する際に後方散乱を生じ、後方散乱光が視認されるためである。視認者は、表示フィルムに光が入射する際の後方散乱光と、後方散乱の多い散乱層を透過し、干渉反射膜で反射され、再び後方散乱の多い散乱層を透過した光との混合光を視認することになる。後方散乱光は、波長選択されていない白色光であるため、干渉反射膜からの反射光と混合されることにより、表示フィルムは干渉反射膜の反射光色に白色を重ねた白っぽい表示色として視認される。このため、干渉反射膜の明度の低い濃い色の色相が認識しにくくなり、好ましくない。
また、色覚障害のある人には、表示用フィルムの正面もしくは所定の入射角の色相が、周囲に配置されている物等の色相に対して見分けにくい場合であっても、視認する角度を変えることにより、他の色相に変化するため、周囲の色相に対して見分けやすくなる。よって、色覚障害のある人もない人も、同時に同じ表示用フィルムを見て、表示内容や装飾性を認識することができ、単なる装飾性にとどまらず色覚バリアフリーも同時に実現できる。したがって、同時に多数の人が見る店舗の看板、駅や劇場等の案内板等の表示物ならびに装飾物に使用する表示用フィルムとして用いるのに本実施の形態の表示用フィルムは適している。
つぎに、本実施の形態の表示用フィルムを用いた表示物の一例を図4を用いて説明する。表示物の基体10の一部の領域には、図1の表示用フィルムの多層干渉反射膜11が配置され、周囲の領域には、干渉反射膜ではない通常の着色膜21が配置されている。多層干渉反射膜11および着色膜21の上には、全面に前方散乱層12が積層されている。よって、図4の表示物は、一部領域が図1の表示用フィルムの構成であり、その周囲の領域は、着色膜21と前方散乱層12の積層体となっている。着色膜21は、印刷技術により、図4のように容易に領域分けして形成することができる。
図4の表示物を正面から視認した場合には、表示用フィルム1の構成の領域において、多層干渉反射膜11が緑色光(550nm)を反射し、この反射光が前方散乱されて出射される。多層干渉反射膜11の選択反射波長の反射率は大きいため、前方散乱された緑色光は、明度および彩度が高く、しかも、散乱されているため、ぎらつきがなく、その色相をはっきりと認識できる。よって、周囲の領域の着色膜21が通常の顔料インク等で印刷されている場合には、表示用フィルム1の構成の領域の反射光量が周囲よりも大きく、明度および彩度が高い緑色で強調されてはっきり認識できる。視認者は、表示用フィルム1の領域があたかも緑色蛍光ペンで着色されているかのようにその散乱光の色相を、周囲の着色膜21との色分けによりはっきりと視認できる。
一方、この表示物を斜め30°方向から視認すると表示用フィルム1の領域の多層干渉反射膜11が青緑色光(520nm)を高反射率で反射し、それが前方散乱層12で散乱された散乱光が視認される。同様に、この表示物を斜め60°方向から視認すると、表示用フィルム1の領域の多層干渉反射膜11が青色光(450nm)を高反射率で反射し、それが前方散乱層12で散乱された散乱光が視認される。よって、斜め方向から見た場合には、表示用フィルム1の領域の色相が正面からみた場合とは異なる色相、すなわち青緑色から青色に視認され、周囲の領域の色相は、斜め方向から見ても変化しないため、表示用フィルムの領域がより強調されて、その美観が認識される。表示用フィルム1の領域の明度および彩度が高く、しかも、ぎらつきがないという効果については正面から見た場合と同様である。
また、色覚障害のある人は、図4のように色分けされた表示物を認識しにくいことがある。例えば、第1色盲または第2色盲の人、ならびに、第1色弱または第2色弱の人のように赤緑色覚障害のある人は、下記文献によれば、緑色が黄色に認識されるため、着色膜21が黄色である場合には、図4の表示物を正面から見た場合には、表示用フィルム1の領域も周囲の着色膜21の領域も黄色に見え、色分けを認識しにくい。しかしながら、60°以上の斜め方向から見た場合には、表示用フィルム1の領域が青色に変化して見えるため、色分けを認識することができる。よって、表示フィルム1を用いることにより、色覚障害がある人にとっても、認識可能な表示物を提供できる。
文献:細胞工学 Vol.21 No.7〜9 2002 「色覚多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション(全3回)」
また、本実施の形態の表示用フィルムは、この表示用フィルムを用いて表示物や装飾を製造する人が、色覚障害がある人の見分けにくい色相の組み合わせや見やすい色相の組み合わせを知らなくても、正面から見た場合に色覚障害がない人にとって美観のある表示物や装飾を製造するだけで、色覚障害がある人にとっても認識できる表示物や装飾物を製造できる。よって、本実施の形態の表示用フィルムを用いることにより、色覚障害がある人に配慮した表示物や装飾を容易に製造することができ、色覚に関するバリアフリーを進めることができる。
また、上記実施の形態では、垂直方向の反射波長が緑色多層干渉反射膜11を用いた例について説明したが、この波長に限定されるものではなく、垂直方向の反射波長が赤や青等他の所望の色相の多層干渉反射膜11を用いることも可能である。
本発明の実施例として、上述の実施の形態の図1の構成の表示用フィルムを作製した。
(実施例1)
黒色基材10としては、黒色フィルム(ルミラーX30 100μm:東レ社)を用いた。
多層干渉反射膜11として、垂直入射角近傍で緑色光を反射し、入射角が大きくなるにつれて反射スペクトルのピーク波長が短波長側にシフトする緑色多層干渉反射膜を用いた。この緑色多層干渉反射膜11は、屈折率の異なる樹脂を交互に積層したものである。本実施例で用いた緑色多層干渉反射膜11の入射角5°、30°、60°における反射スペクトルを、それぞれ緑5°、緑30°、緑60°と付して図5に示す。図5より、入射角5°では反射スペクトルのピーク波長が564nmであるが入射角30°では502nm、入射角60°では448nmにシフトすることがわかる。
前方散乱層12として、株式会社きもと製のディラッドスクリーンT40Sを用いた。
本実施例の表示フィルムの入射角5°、30°、60°による反射スペクトルを調べたところ、図6に緑5°、30°、60°と付して示した通りであった。図6のように入射角が大きくなるにつれ、表示フィルムの反射スペクトルのピークが、550nm、538nm、472nmと短波長側にシフトしていた。これにより、見る方向により反射波長がシフトし、表示する色相が変化することが確認できた。また、表面のぎらつき、周囲の映り込みを目視で評価したところ、ぎらつきおよび周囲の映り込みが抑制されていることが確認された。
(実施例2)
多層干渉反射膜11として、垂直入射角近傍で赤色光を反射し、入射角が大きくなるにつれて反射スペクトルのピーク波長が短波長側にシフトする赤色多層干渉反射膜を用いた。この赤色多層干渉反射膜11の入射角5°、30°、60°における反射スペクトルを、それぞれ赤5°、赤30°、赤60°と付して図5に示す。図5より、入射角5°では反射スペクトルのピーク波長が650nmであるが入射角30°では625nm、入射角60°では557nmにシフトすることがわかる。他の構成は実施例1と同様にして、図1の構成の表示用フィルムを作製した
実施例2の表示フィルムの入射角5°、30°、60°による反射スペクトルを調べたところ、図6に赤5°、赤30°、赤60°と付して示した通りであった。図6のように入射角が5°、30°、60°と大きくなるにつれ、表示フィルムの反射スペクトルのピークは、683nm、650nm、568nmと短波長側にシフトしていた。これにより、見る方向により反射波長がシフトし、表示する色相が変化することが確認できた。また、表面のぎらつき、周囲の映り込みを目視で評価したところ、ぎらつきおよび周囲の映り込みが抑制されていることが確認された。
(実施例3)
多層干渉反射膜11として、垂直入射角近傍で青色光を反射し、入射角が大きくなるにつれて反射スペクトルのピーク波長が短波長側にシフトする青色多層干渉反射膜を用いた。この青色多層干渉反射膜11の入射角5°、30°、60°における反射スペクトルを、それぞれ青5°、青30°、青60°と付して図5に示す。図5より、入射角5°では反射スペクトルのピーク波長が456nmであるが入射角30°では422nm、入射角60°では380nmにシフトすることがわかる。他の構成は実施例1と同様にして、図1の構成の表示用フィルムを作製した
実施例3の表示フィルムの入射角5°、30°、60°による反射スペクトルを調べたところ、図6に青5°、青30°、青60°と付して示した通りであった。図6のように入射角が5°、30°、60°と大きくなるにつれ、表示フィルムの反射スペクトルのピークは、455nm、438nm、380nmと短波長側にシフトしていた。これにより、見る方向により反射波長がシフトし、表示する色相が変化することが確認できた。また、表面のぎらつき、周囲の映り込みを目視で評価したところ、ぎらつきおよび周囲の映り込みが抑制されていることが確認された。
このように、実施例1〜3によれば、見る方向によって、色相が変化し、しかも、膜面全面が一様な色相であり、ぎらつきおよび周囲の映り込みも抑制された装飾性に優れた表示用フィルムが得られた。また、この表示用フィルム1は、赤緑色覚障害がある人にとっても、視認する角度を変えることによって、色を認識しやすくなる。よって、色覚障害の有無にかかわらず、装飾性にすぐれ、周囲と見分けやすい、色覚に関してバリアフリーの表示用フィルムを実現できた。また、本実施例1〜3の表示用フィルムを用いて、図4の構成の表示物等、様々な表示物を作製することが可能である。
本発明の第1の実施の形態の表示用フィルム1の構成を示す断面図。 図1の表示用フィルム1を正面から視認する場合の反射光の散乱を示す説明図。 図1の表示用フィルム1を60°斜め方向から視認する場合の反射光の散乱を示す説明図。 図1の表示用フィルム1を用いた表示物の構成を示す説明図。 実施例の赤、緑、青の多層干渉反射膜11のそれぞれについて、入射角5°、30°、60°による反射スペクトルを示すグラフ。 実施例の表示用フィルムの入射角5°、30°、60°による反射スペクトルを示すグラフ。
符号の説明
1…表示用フィルム、10…基材、11…多層干渉反射膜、12…前方散乱層、21…着色膜。

Claims (5)

  1. 基材と、該基材上に順に積層された、干渉反射膜と、前方散乱層とを備えることを特徴とする表示用フィルム。
  2. 請求項1に記載の表示用フィルムにおいて、前記前方散乱層は、球状微粒子を含有する透明高分子バインダーからなる光拡散層を含み、前記球状微粒子の平均粒径が1.0μm以上10.0μm以下であり、前記透明高分子バインダーの屈折率に対する前記球状微粒子の相対屈折率nは、0.91<n<1.09(ただし、n=1.0を除く)であることを特徴とする表示用フィルム。
  3. 請求項2に記載の表示用フィルムにおいて、前記前方散乱層は、前記光拡散層の少なくとも上面に配置された透明層をさらに含み、前記光拡散層の上面及び下面は、平滑であることを特徴とする表示用フィルム。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示用フィルムにおいて、前記基材は、前記干渉反射膜を透過した可視光を吸収することを特徴とする表示フィルム。
  5. 少なくとも一部の領域に干渉反射膜と、その上に配置された前方散乱層とを備えることを特徴とする表示物。
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