JP2008060715A - エコー消去装置、その方法、そのプログラム、およびその記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】受話信号を再生手段により、再生信号に変換・放声し、メインマイクロホン61よりの話者受音信号とスピーカ4よりのエコー信号からなる受音信号からエコー信号を除去して、送話信号を出力するエコー消去装置において、メインマイクロホン61から、エコー信号より、話者受音信号を大きく含む受音信号を収音し、サブマイクロホン6m(m=1、...、M)から、話者受音信号より、エコー信号を大きく含む受音信号を収音し、受話信号から、第1の擬似エコー信号を生成し、サブマイクロホン6mよりの受音信号が入力され、第2の擬似エコー信号を生成し、メインマイクロホン61で収音された受音信号から上記第1、第2の擬似エコー信号を減算し、第1、第2の可変フィルタのフィルタ係数を更新する。
【選択図】図3
Description
以下の説明において、再生手段はスピーカとして、収音手段はマイクロホンとして説明する。また、図示しない遠端話者よりの通信網2を経由した音声信号を受話信号x(t)と表し、近端話者7が発した音声を話者音声s(t)と表し、マイクロホンで収音された話者音声s(t)を話者受音信号a(t)と表し、スピーカから放声された再生音がマイクロホンにまわり込み、収音された音声信号をエコー信号d(t)と表し、マイクロホンで収音した音声信号を受音信号y(t)と表し、遠端話者への送話信号または誤差信号をe(t)と表す。ただしtは離散的時刻を表す。
従来のエコー消去装置14は可変フィルタ8、減算部10、フィルタ係数更新部12、とで構成されている。従来のエコー消去装置14はスピーカ4とマイクロホン6を用いた拡声通話において、受音信号y(t)に混入されたエコー信号d(t)を消去する。エコー消去装置14の入力信号、(マイクロホン6で収音される音声信号)つまり受音信号y(t)はエコー信号d(t)と話者受音信号a(t)とからなる。従来のエコー消去装置14は、受音信号y(t)に含まれるエコー信号d(t)を推定して、受音信号y(t)から差し引くことにより、受音信号y(t)に含まれるエコー信号d(t)を消去する。
d(t)=g(t)*r1(t)*x(t) (1)
ただし*は畳み込み演算を表す。次に、近端話者7からマイクロホン6までのインパルス応答をc1(t)と表し、上述したように、近端話者7からの音声はs(t)であるので、受音信号y(t)は以下の式(2)で表すことができる。
y(t)=g(t)*r1(t)*x(t)+c1(t)*s(t) (2)
ここで、エコー消去装置14に求められるのは、受音信号y(t)に含まれるエコー信号d(t)を消去することである。つまり、式(2)の右辺の第1項g(t)*r1(t)*x(t)の成分を消去することである。
可変フィルタ8で、推定したインパルス応答(以下、擬似インパルス応答h(t)という)を受話信号x(t)に畳み込み、可変フィルタ8よりの出力信号である擬似エコー信号h(t)*x(t)を出力する。減算部10で受音信号y(t)から擬似エコー信号h(t)*x(t)を減算して、減算部10はエコー信号d(t)を消去した送話信号e(t)を出力する。送話信号e(t)を式で表せば以下の式(3)になる。
e(t)={g(t)*r1(t)−h(t)}*x(t)+c1(t)*s(t) (3)
H(t+1)=H(t)+a・X(t)・e(t)/X(t)TX(t) (4)
ここで、aは事前に設定されたステップサイズであり、0<a<2の値をとり、ATはベクトルAの転置行列を表し、H(t)は時刻tにおけるフィルタ係数H(t)=(h(0),h(1),…,h(L−1))Tで表され、Lは可変フィルタ8のフィルタのタップ長であり、X(t)は時刻tにおける受話信号x(t)のLサンプル分のベクトルであり、X(t)=(x(t−0),x(t−1),…,x(t−L+1))Tで表す。
即ち、一般的に、スピーカ特性は、振幅の大きな入力信号(受話信号x(t))に対して、出力が頭打ちになるような非線形の特性をもっているので、スピーカ特性は線形と非線形の特性に分けて考えられる。即ちスピーカ特性は、図2に示すように、線形特性の部分のスピーカ4のインパルス応答をg(t)、非線形の部分の特性を関数f(・)との並列特性で表すことが出来る。このスピーカ特性を考慮するとエコー信号d(t)は以下の式(5)で表すことができる。
d(t)=g(t)*r1(t)*x(t)+r1(t)*f(x(t)) (5)
また受音信号y(t)は以下の式(6)で表すことができる。
y(t)=d(t)+c1(t)*s(t)
=g(t)*r1(t)*x(t)+r1(t)*f(x(t))+c1(t)*s(t) (6)
従って、送話信号e(t)は以下の式(7)になる。
e(t)={g(t)*r1(t)−h(t)}*x(t)+r1(t)*f(x(t))+c1(t)*s(t) (7)
しかし、従来のエコー消去装置14においては、消去可能なエコーは、線形のエコー経路を通って、マイクロホン6に到達したエコーのみで、非線形のエコーは消去できない。つまり、上記式(6)の右辺の第1項であるg(t)*r1(t)*x(t)のみが消去され、第2項であるr1(t)*f(x(t))の成分を消去することができず、送話信号e(t)に非線形のエコー信号が混入してしまう。従って、非線形が強いスピーカ等を用いた場合、十分にエコー信号を消去できないという問題があった。
エコー消去装置40は、第1の可変フィルタ24、第2の可変フィルタ26m(m=2、...、M)、加算部36、減算部38、第1のフィルタ係数更新部34、第2のフィルタ係数更新部32、とで構成されている。また、マイクロホンの数は、複数個であるM個(M≧2)になり、マイクロホンを6m(m=1、...、M)と表す。
この発明のエコー消去装置40の入力信号は、スピーカ4よりの再生信号がまわり込んだエコー信号と近端話者7よりの音声信号であり、つまりマイクロホン6mで収音された受音信号ym(t)である。出力信号は図示しない遠端話者への送話信号e(t)である。エコー消去装置40は、エコー信号d(t)を消去し、会話をしやすくする。また、エコー消去装置40の各入力信号は図示しないAD変換部で、アナログ信号から離散時間の信号(ディジタル信号)に変換され、エコー消去装置40の各出力信号は、図示しないDA変換部で離散時間の信号(ディジタル信号)からアナログ信号に変換される。
ym(t)=g(t)*rm(t)*x(t)+rm(t)*f(x(t))+cm(t)*s(t) (8)
この実施例1では、図示しない話者受音信号選出手段は、複数のマイクロホン6mから、エコー信号レベル対話者受音信号レベルの比の時間平均値が、他のマイクロホン6mに比べて小さいマイクロホン6mをメインマイクロホン61として選出した場合である。(ステップS2)。
話者受音信号選出手段の選出の仕方の一例として、図3に記載のように、1つのマイクロホンをメインマイクロホン61とし、メインマイクロホン61の感度の高い方向を近端話者7方向に向け、その他のマイクロホンを全てサブマイクロホン6m(m=2、...、M)として、サブマイクロホン6mの感度の高い方向をスピーカ4方向に向けることが考えられる。メインマイクロホン61、サブマイクロホン6mの感度の方向については後ほど詳細に述べる。この場合、メインマイクロホン61に向かって近端話者7は音声を発することになる。
メインマイクロホン61および、サブマイクロホン6mで収音された受音信号ym(t)(m=1、...、M)は上記式(8)と同様に表すことができる。サブマイクロホン6mの受音信号ym(t)がそれぞれ対応する第2の可変フィルタ26m(m=2、...、M)に入力される。第2の可変フィルタ26mが受音信号ym(t)に第2のフィルタ係数hm(t)を畳み込んで、つまり以下の式(9)を計算して第2の擬似エコー信号βm(t)(m=2、...、M)が生成される(ステップS4)。
第2の擬似エコー信号βm(t)はそれぞれ加算部36へ入力される。
α(t)=x(t)*h1(t) (10)
第1の擬似エコー信号α(t)および第2の擬似エコー信号βm(t)は加算部36へ入力され、α(t)+Σi=2 Mβi(t)が計算される。加算された信号α(t)+Σi=2 Mβi(t)は、減算部38に入力される。
e(t)=y1(t)−α(t)−Σi=2 Mβi(t)
=y1(t)−h1(t)*x(t)−Σi=2 Myi(t)*hi(t)
(11)
上記式(8)より
yi(t)=g(t)*ri(t)*x(t)+ri(t)*f(x(t))+ci(t)*s(t) (13)
となるので、式(12)(13)を上記式(11)へ代入すると、以下の式(14)になる。
−h1(t)*x(t)−Σi=2 Mhi(t)*{g(t)*ri(t)*x(t)
+ri(t)*f(x(t))+ci(t)*s(t)}
={g(t)*r1(t)−h1(t)−Σi=2 Mhi(t)*g(t)*ri(t)}*x(t)
+{r1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ri(t)}*f(x(t))
+{c1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ci(t)}*s(t) (14)
式(14)の第2項{r1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ri(t)}*f(x(t))は、非線形の音響エコー成分であり、r1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ri(t)=0となるhm(t)を設定すれば、非線形の音響エコーを消去することが出来る。
上記話者受音信号選出手段および、エコー受音信号選出手段は必ずしも設けなくても良い。この場合は話者受音信号選出手段が設けられないメインマイクロホン61からの話者音声を収音した受音信号が減算部38へ入力され、エコー受音信号選出手段が設けられないサブマイクロホン6mよりの受音信号が第2の可変フィルタ26mへ入力される。
式(14)の第3項{c1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ci(t)}*s(t)は近端話者7の音声成分であり、メインマイクロホン61で収音された近端話者7の音声成分c1(t)*s(t)に加え、劣化成分であるΣi=2 Mhi(t)*ci(t)*s(t)が存在している。
上記{c1(t)−Σi=2 Mhi(t)*ci(t)}*s(t)に基づく近端話者7の音声の劣化を防ぐためには、h2(t)とc2(t)を小さくする必要がある。このためには、上記話者受音信号選出手段およびエコー受音信号選出手段を設ければよい。例えば、メインマイクロホン61およびサブマイクロホン62の配置を変えることが考えられる。図5に示すように、メインマイクロホン61およびサブマイクロホン62として単一指向性マイクロホンを使用する。メインマイクロホン61の感度の高い部分61aを近端話者7に向け、感度の低い部分61bをスピーカ4に向ける。また、サブマイクロホン62の感度の高い部分62aをスピーカ4に向けて、感度の低い部分62bを近端話者7に向ける。このような配置をすることで、メインマイクロホン61において、c2(t)の振幅が、c1(t)の振幅より小さくなる。さらに、r1(t)の振幅がr2(t)の振幅よりも小さくなることで、エコーを消去するためのフィルタh2(t)の振幅も小さくなる。何故なら、上記式(14)の第2項において、r1(t)−h2(t)*r2(t)=0となるh2(t)を設定しているからである。この配置により、近端話者7の音声の劣化成分h2(t)*c2(t)*s(t)を小さくすることが出来る。
この実施例1において、図6に示すように、メインマイクロホン61の感度の高い部分61aを近端話者7に向け、マイクロホン6mの感度の高い部分6maをスピーカ4に向けることで、近端話者7の音声の劣化成分を小さくすることが出来る。
このフィルタ係数を逐次更新するアルゴリズムの代表的なものには、学習同定(NLMS:NormalizedLeast−Mean−Squares)アルゴリズム、もしくは射影アルゴリズム、もしくは逐次最小二乗(RecursiveLeastSquare)アルゴリズム、もしくはLMS(LeastMeanSquare)アルゴリズム等がある。以下、それぞれのアルゴリズムを簡単に説明する。
NLMSアルゴリズムは観測された最新の1サンプルの送話信号e(t)のみを用いてフィルタ係数を更新するアルゴリズムであり、演算量が少ない特徴をもつ。第1のフィルタ係数更新部34による更新式は以下の式(15)で表され、第2のフィルタ係数更新部32による更新式は以下の式(16)で表される。
H1(t+1)=H1(t)+a1・X(t)・e(t)/{X(t)TX(t)+Σi=2 MYi(t)TYi(t)} (15)
Hm(t+1)=Hm(t)+am・Ym(t)・e(t)/{X(t)TX(t)+Σi=2 MYi(t)TYi(t)} (16)
ただし、H1(t)、Hm(t)(m=2、...、M)は、時刻tにおける受話信号x(t)に対するフィルタ係数のベクトルであり、Hm(t)=(hm(0),hm(1),…,hm(L−1))T(m=1、...、M)で表され、Lはタップ数である。a1とamは事前に設定されたNLMSアルゴリズムのステップサイズであり、
0<a1、am<2を満たす。また、Y(t)は時刻tにおける送話信号y(t)のLサンプル分のベクトルであり、Ym(t)=(ym(t−0),ym(t−1),…,ym(t−L+1))Tで表す。
また、上記式(4)の右辺の分母と、上記式(15)(16)の右辺の分母を比較すると、上記式(15)(16)の右辺の分母で、余分にΣi=2 MYi(t)TYi(t)が足されている。Σi=2 MYi(t)TYi(t)は、各マイクロホン6mで収音された受音信号ym(t)のパワーの和である。分母に受音信号ym(t)のパワーの和を足しておくことで、フィルタ係数の発散を防ぐことが出来る。
LMSアルゴリズムもNLMSアルゴリズム同様、観測された最新の1サンプルの送話信号e(t)のみを用いてフィルタ係数を更新するアルゴリズムであり、演算量が少ない特徴をもつ。LMSアルゴリズムの更新式は、以下の式(17)、(18)で表すことができる。
H1(t+1)=H1(t)+b・X(t)・e(t) (17)
Hm(t+1)=Hm(t)+bm・Ym(t)・e(t) (18)
射影アルゴリズムは、過去uサンプル分の送話信号e(t)を用いて、フィルタ係数を更新するアルゴリズムである。射影アルゴリズムは隣り合う入力信号ベクトルの間の相関を取り除くことを基本的な考え方とするアルゴリズムである。射影アルゴリズムは上述したNLMSアルゴリズムに比べ、演算量が多くなるが送話信号e(t)の収束速度が速いという特徴がある。第1のフィルタ係数h1(t)および第2のフィルタ係数hm(t)(m=2、...、M)は以下の式(19)で更新される。なお、以下の式(19)は2次のフィルタ係数の更新式である。
RLSアルゴリズムは、過去全ての送話信号e(t)を利用して、フィルタ係数を更新するアルゴリズムであり、上述した射影アルゴリズムよりも送話信号e(t)の収束速度が速いが、演算量は多い。RLSアルゴリズムは過去の全入出力の関係を最小2乗誤差で近似させるフィルタ係数ベクトルH^(t)を求めることにある。第1のフィルタ係数h1(t)および第2のフィルタ係数hm(t)(m=2、...、M)は以下の式(21)で更新される。
これらのアルゴリズムの詳細については、「音響エコーキャンセラのための適応信号処理の研究 牧野昭二 博士論文 1993 東北大学」に記載されている。
また第1のフィルタ係数更新部34および、第2のフィルタ係数更新部32の更新アルゴリズムは各々違うアルゴリズムを用いても良い。
実施例1の機能構成により、スピーカ4に非線形性などがある場合に発生する非線形な音響エコーと、線形の音響エコーとの両方のエコーを消去することが出来、高い消去性能を実現することが出来る。
従来のエコー消去装置14と実施例2のエコー消去装置40を実際のハンズフリー装置に適用して、効果を比較するための実験結果を説明する。この実験で使用した実施例1で説明したエコー消去装置40、スピーカ4、近端話者7などの配置を図7に示す。また、メインマイクロホン、サブマイクロホンをそれぞれ1つとした。メインマイクロホン61とサブマイクロホン62とを結ぶ直線と、スピーカ4と近端話者7とを結ぶ直線と、が直交するように、メインマイクロホン61、サブマイクロホン62、スピーカ4、近端話者7を配置させる。メインマイクロホン61とサブマイクロホン62との距離を2cm、スピーカ4と近端話者7との距離を50cm、スピーカ4とメインマイクロホン61との距離を5cmとし、スピーカ4の直径は4cmである。スピーカ特性は過大入力に対してクリップする特性を模擬したシグモイド関数とし、空間応答c1(t)、c2(t)、r1(t)、r2(t)は図7の配置で計測したインパルス応答とした。
図8、図9に実験結果を示す。図8は受話信号x(t)に白色雑音を入力したときのエコー消去量を示しているグラフであり、値が大きいほどより多くのエコーを消去できていることを示す。横軸が時刻(s)であり、縦軸がその時刻のエコー消去量を示す。細線が従来技術のエコー消去装置14によるエコー消去量を示し、太線が実施例1で説明したエコー消去装置40によるエコー消去量を示す。
従来技術のエコー消去装置14を用いた場合のエコー消去量は20dB程度が最大であることが理解できる。これは、スピーカ4に非線形性があるために生じる非線形な音響エコーを従来技術で説明したエコー消去装置14では消去できないためである。
図9は、近端話者7に対するインパルス応答を示したグラフである。横軸が周波数(Hz)を示し、縦軸が、近端話者7からメインマイクロホン61までのインパルス応答c1(t)である。細線がエコー消去装置40の処理前を示し、太線がエコー消去装置40の処理後を示す。図8のグラフより、処理前と処理後のインパルス応答c1(t)を比較しても、殆ど差が無いことが理解できる。以上のことから、実施例1では、近端話者7の音声の劣化成分が小さいことがわかる。
以上の説明から、実施例1によれば、線形の音響エコーと、スピーカ4の非線形性により発生する非線形な音響エコーの両方を消去し、高いエコー消去方法を実現出来る。さらに、近端話者7の音声の劣化を小さく高品質な収音が実現できる。
図10に実施例2の機能構成例を示す。実施例2のエコー消去装置40は実施例2で説明したエコー消去装置40と比較して、上記サブビームフォーマ50とメインビームフォーマ52とが加えられる。また、この実施例では、マイクロホン6mにおいては、メインマイクロホン(話者用収音手段)、サブマイクロホンとに分けられることなく、全てのマイクロホン6mが並列的に作動する。
メインビームフォーマ52は近端話者7方向に感度を高くし、スピーカ4に対する感度を低くする。また、サブビームフォーマ50は、スピーカ4に対する感度を高くして、近端話者7に対する感度を低くする。メインビームフォーマ52とサブビームフォーマ50を使用することで、任意の方向に対して指向性が高い部分と低い部分を作ることができ、様々なスピーカとマイクロホンの配置に適用することができる。
また、この実施例2の説明では、簡略化のため、周波数領域ωで説明する。近端話者からマイクロホン6mまでの伝達関数をCm(ω)とし、スピーカ4からマイクロホン6mまでの伝達関数をRm(ω)とし、メインビームフォーマ52中のmチャネルのメイン固定フィルタ52mの各固定フィルタ係数をPm(ω)とし、サブビームフォーマ50のサブ固定フィルタ50mの固定フィルタ係数をQm(ω)とする。
サブ固定フィルタ50mおよびメイン固定フィルタ52mの各固定フィルタ係数は予め与えられた値から固定されたものである。以下に、固定フィルタ係数の設計を説明する。
Σi=1 MCi’(ω)・Pi(ω)=D(ω) (24)
Σi=1 MRi’(ω)・Pi(ω)=0 (25)
ここで、D(ω)は目標とするインパルス応答である。目標とするインパルス応答とは、例えば、振幅値が固定値であり、位相が直線位相(時間領域における固定遅延)となっているようなインパルス応答である。Cm’(ω)、Rm’(ω)はマイク6m、スピーカ4、近端話者7の配置から計算される直接波の理論的な応答を事前に設定する。以下の式(26)(27)でも同様である。上記式(24)(25)を満たす固定フィルタ係数Pm(ω)を設定すれば良い。次に、サブビームフォーマ50に要求されるのは、近端話者7の音声s(ω)を抑圧し、スピーカ4からの再生音を収音することである。これらの条件を式で表すと、以下の式(26)(27)になる。
Σi=1 MCi’(ω)・Qi(ω)=0 (26)
Σi=1 MRi’(ω)・Qi(ω)=K(ω) (27)
ただし、K(ω)は目標とするインパルス応答である。目標とするインパルス応答とは、例えば、振幅値が固定値であり、位相が直線位相(時間領域における固定遅延)となっているようなインパルス応答である。
その他の処理は実施例1と同様である。
図11に実施例3の機能構成例を示す。通信網2よりの音声信号j(t)は第1の可変フィルタ24のほかに、受話検出部60にも入力される。受話検出部60は、音声信号j(t)のレベルを観測し、受話信号x(t)のある区間を検出する。検出は例えば、予め、与えられた閾値と音声信号j(t)のレベル(パワー)とを比較し、音声信号j(t)の方が大きい場合はその区間に受話信号x(t)が含まれていると判断する。
受話信号x(t)が含まれている区間では、受話検出部60がスイッチ62mのオン接続とし、第2の可変フィルタ26mをそれぞれ、加算部36へ接続させる。また、受話信号x(t)が含まれていない区間では、受話検出部60が、スイッチ62mの接続をオフとし、第2の可変フィルタ26mをそれぞれ加算部36から切り離す。
また音声信号j(t)中に受話信号x(t)が含まれている区間ではスイッチ62mがオン接続になっているので、実施例2で説明したとおり、エコー信号d(t)を消去する。
また受話信号x(t)が含まれている区間で、かつ近端話者7が発話しているいわゆるダブルトークの区間では、スイッチ62mがオン接続となり、エコー信号d(t)を消去する。このダブルトーク区間では、近端話者7の音声の劣化が生じるが、ダブルトーク時は、近端話者7から音声信号s(t)と受話信号x(t)の両方が聴こえるため、聴覚のマスキング効果により、音声の劣化が聞こえにくくなっているので、劣化の知覚が少なくなる。
以上の各実施形態の他、本発明であるエコー消去装置は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、エコー消去装置において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
また、この発明のエコー消去装置における処理をコンピュータによって実現する場合、エコー消去装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、エコー消去装置における処理機能がコンピュータ上で実現される。
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、エコー消去装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
Claims (14)
- 再生手段により受話信号を再生音に変換して、放声し、近端話者音声が話者用収音手段により受音された信号(以下、話者受音信号という)と上記再生音が上記話者用収音手段により受音された信号(以下、エコー信号という)からなる受音信号から、上記エコー信号を除去して、送話信号として出力するエコー消去装置において、
上記受話信号が入力され、第1の擬似エコー信号を生成する第1の可変フィルタと、
1以上のエコー用収音信号手段により、受音された受話信号が入力され、第2の擬似エコー信号を生成する第2の可変フィルタと、
上記話者用収音手段での受音信号から、上記第1の擬似エコー信号及び上記第2の擬似エコー信号を減算して、上記送話信号を出力する減算部と、
少なくとも、上記受話信号と上記送話信号とが入力され、上記第1の可変フィルタのフィルタ係数を更新する第1のフィルタ係数更新部と、
少なくとも、上記エコー用収音手段での受音信号と上記送話信号とが入力され、上記第2の可変フィルタのフィルタ係数を更新する第2のフィルタ係数更新部とを備えることを特徴とするエコー消去装置。 - 請求項1記載のエコー消去装置において、
更に、複数の上記収音手段中から、エコー信号レベル対話者音信号レベルの比の時間平均値が、他の受音信号に比べて小さい受音信号を選出して、上記減算部へ入力する話者受音信号選出手段と、
複数の上記収音手段中から、エコー信号レベル対話者音信号レベルの比の時間平均値が、他の受音信号に比べて大きい受音信号を選出して、上記第2の可変フィルタへ入力するエコー受音信号選出手段と、を備えることを特徴とするエコー消去装置。 - 請求項2記載のエコー消去装置において、
上記話者受音信号選出手段は、話者方向に感度が高く、上記複数の収音手段中の上記話者用収音手段としての1つの収音手段(以下、主収音手段という)からの収音信号を得る手段であり、
上記エコー受音信号選出手段は、上記再生手段方向に感度が高く、上記主収音手段以外である収音手段からの収音信号を得る手段であることを特徴とするエコー消去装置。 - 請求項2記載のエコー消去装置において、
上記話者受音信号選出手段は、全ての上記複数の収音手段からの上記受音信号が入力され、上記受音信号中の上記エコー信号の成分を抑圧するメインビームフォーマであり、
上記エコー受音信号選出手段は、全ての上記複数の収音手段からの上記受音信号が入力され、上記受音信号中の上記話者受音信号の成分を抑圧するサブビームフォーマであることを特徴とするエコー消去装置。 - 請求項1〜4の何れかに記載のエコー消去装置において、
更に、上記受話信号のレベルを検出し、検出されたレベルが予め決められた閾値より小さい場合は、上記第2の可変フィルタを稼動させず、出力を0とする受話検出部を備えることを特徴とするエコー消去装置。 - 請求項1〜5の何れかに記載のエコー消去装置において、
上記第1のフィルタ係数更新部および、上記第2のフィルタ係数更新部のフィルタ係数の更新は、学習同定(NLMS:NormalizedLeast−Mean−Squares)アルゴリズム、もしくは射影アルゴリズム、もしくは逐次最小二乗(RecursiveLeastSquare)アルゴリズム、もしくはLMS(LeastMeanSquare)アルゴリズムを用いて、逐次更新するものであることを特徴とするエコー消去装置。 - 再生手段により受話信号を再生音に変換して、放声し、近端話者音声が話者用収音手段により受音された信号(以下、話者受音信号という)と上記再生音が上記話者用収音手段により受音された信号(以下、エコー信号という)からなる受音信号から、上記エコー信号を除去して、送話信号として出力するエコー消去方法において、
第1の可変フィルタが、上記受話信号から第1の擬似エコー信号を生成する第1の擬似エコー信号生成過程と、
第2の可変フィルタが、1以上のエコー用収音信号手段により、受音された受話信号から第2の擬似エコー信号を生成する第2の擬似エコー信号生成過程と、
減算手段が、上記話者用収音手段よりの受音信号から上記第1の擬似エコー信号及び上記第2の擬似エコー信号を減算して、上記送話信号を出力する減算過程と、
第1のフィルタ係数更新手段が、少なくとも、上記受話信号と上記送話信号とから、上記第1の可変フィルタのフィルタ係数を更新する第1のフィルタ係数更新過程と、
第2のフィルタ係数更新手段が、少なくとも、上記エコー用収音手段での受音信号と上記送話信号とから、上記第2の可変フィルタのフィルタ係数を更新する第2のフィルタ係数更新過程と、を有することを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項7記載のエコー消去方法において、
更に、話者受音信号選出手段が、複数の上記収音手段中から、エコー信号レベル対話者音信号レベルの比の時間平均値が、他の受音信号に比べて小さい受音信号を選出する話者受音信号選出過程と、
エコー受音信号選出手段が、複数の上記収音手段中から、エコー信号レベル対話者音信号レベルの比の時間平均値が、他の受音信号に比べて大きい受音信号を選出するエコー受音信号選出過程と、を有することを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項8記載のエコー消去方法において、
上記話者受音信号選出過程は、上記話者受音信号選出手段が、話者方向に感度が高く、上記複数の収音手段中の上記話者用収音手段としての1つの収音手段(以下、主収音手段という)からの収音信号を得る過程であり、
上記エコー受音信号選出過程は、上記エコー受音信号選出手段が、上記再生手段方向に感度が高く、上記主収音手段以外である収音手段からの収音信号を得る過程であることを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項8記載のエコー消去方法において、
上記話者受音信号選出過程は、メインビームフォーマにより、全ての上記複数の収音手段からの上記受音信号中の上記エコー信号の成分を抑圧する過程であり、
上記エコー受音信号選出過程は、サブビームフォーマにより、全ての上記複数の収音手段からの上記受音信号中の上記話者受音信号の成分を抑圧する過程であることを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項7〜10の何れかに記載のエコー消去方法において、
更に、受話検出手段が、上記受話信号のレベルを検出し、検出されたレベルが予め決められた閾値より小さい場合は、上記第2の可変フィルタを稼動させず、出力を0とする受話検出過程を有することを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項7〜11の何れかに記載のエコー消去方法において、
上記第1のフィルタ係数更新過程および、上記第2のフィルタ係数更新過程のフィルタ係数の更新は、学習同定(NLMS:NormalizedLeast−Mean−Squares)アルゴリズム、もしくは射影アルゴリズム、もしくは逐次最小二乗(RecursiveLeastSquare)アルゴリズム、もしくはLMS(LeastMeanSquare)アルゴリズムを用いて、逐次更新する過程であることを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項7〜12の何れかに記載したエコー消去方法の各過程をコンピュータに実行させるためのエコー消去プログラム。
- 請求項13記載のエコー消去プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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