JP2008056649A - 金属用プライマー - Google Patents

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Abstract

【課題】A)分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなる金属用プライマーにおいて、C)有機溶媒が、生体為害性が少なく、適度な揮発性を有するアルコール系のものでありながら、該A)分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の使用量が少量であり、且つ長期保存後においても充分な接着性が安定的に維持されるものを開発すること。
【解決手段】上記組成の有機溶液からなる金属用プライマーにおいて、プライマー全体の質量を基準としてA)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量を0.01〜3質量%として、さらに、C)有機溶媒として、第二アルコールまたは第三アルコールを用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属用プライマー、および金属またはセラミックス用プライマーキットに関する。
歯科医療を始めとする医療、電子材料、精密機械、宝飾等の分野では、各種接着技術が重要である。すなわち、歯科治療の分野においては、卑金属合金や貴金属合金等の金属製修復材やセラミックス製修復材に、レジンセメント、アクリルレジン、即時重合レジン等の歯科用の硬化性レジンを接着させることが必要になり、その際には、その接着性を高めるために前処理として、プライマー(表面処理剤)が使用されている。
例えば、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等の卑金属を主成分とする卑金属合金製の金属床で義歯を作製し、これにアクリルレジン等で裏装する場合、該金属床の前処理には、リン酸エステル基やカルボキシル基等の酸性基を有するラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなるプライマーが用いられている。また、金、白金、パラジウム、銀等を主成分とする貴金属合金製歯冠修復物を硬化性レジンを用いて歯牙に接着する場合には、該歯冠修復物の前処理には、チオリン酸基を有する化合物(特許文献1)、チオリン酸ジクロリド基を有する化合物(特許文献2)、トリアジンジチオン誘導体(特許文献3)、メルカプトチアジアゾール誘導体(特許文献4)、さらにはチオウラシル誘導体(特許文献5)等の分子内にイオウ原子を有するラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなるプライマーが用いられている。さらに、歯冠修復物がセラミックス製である場合には、シランカップリング剤を含む有機溶液からなるプライマーが用いられている。
そうして臨床上、処理する部材の材質の違いにより、それぞれのプライマーを使いわけるのは面倒であるため、いずれの材質に対しても充分な接着性を発現させるプライマーの開発が望まれている。こうした要求から、上記の酸性基を有するラジカル重合性単量体、分子内にイオウ原子を有するラジカル重合性単量体、さらにはシランカップリング剤を併用することで、卑金属金属と貴金属の両方の材質、さらにはセラミックスに対しても使用可能なプライマーが提案されている(特許文献6、特許文献7)。なお、こうしたプライマーにおいて、上記各材質への接着性を向上させるための成分を溶解させるための有機溶媒は、各種のものが使用可能であるが、その中でも、プライマー塗布後において、該塗布面と非塗布面の判別が容易なように、しばらくは液状が保たれる適度な揮発性を有し、口腔粘膜への刺激も少ない等の理由からエタノールが好適である。
特開平1−138282号公報 特開平5−117595号公報 特開昭64−83254号公報 特開平8−113763号公報 特開平10−1409号公報 特開平2−152915号公報 特開2000−248201号公報
しかしながら、こうした卑金属金属と貴金属の両方の材質に使用可能なプライマーには、以下の点で未だ改良の余地があった。
すなわち、これらのプライマーにおいて、貴金属に対する接着性を主に高める成分である、分子内にイオウ原子を有するラジカル重合性単量体は、生体への為害性が低いこと、および(メタ)アクリレート系単量体を含む歯科用レジンとの相性がよいことから、(メタ)アクリレート系単量体が好適に使用されている。そして、この分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体は、0.001質量%の少量から20質量%の多量に及ぶまでの広い範囲で使用されている(特許文献7)。
しかし、斯様な分子内にイオウ原子を有する特殊な構造の(メタ)アクリレート系単量体は、上記使用範囲の多めの範囲のように含有させなくても、比較的少量の配合でも充分な接着性を発現させることができる優れたものである反面、価格が高価であり、しかも、この化合物は、高濃度で使用した場合に逆に、重合性基の重合阻害を生じる虞があった。したがって、その使用量は、貴金属に対する所望の接着力が得られる限りにおいて、極力少量に抑えることが望ましかった。
一方、上記分子内にイオウ原子を有する構造のものも含めて、(メタ)アクリレート系単量体は、酸性条件下で、前記エタノール溶液とし長期に保存すると、そのメタアクリロイル基に由来するエステル結合が、加水分解反応やエステル交換反応して、その重合性が損なわれる現象が生じる。よって、上記卑金属金属と貴金属の両方の材質に使用可能なプライマーにおいて、分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体と酸性基含有ラジカル重合性単量体とを併用し、これをエタノール溶液とすると、このものにおいても液の保存中において、上記分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体のメタアクリロイル基の加水分解反応やエステル交換反応が生じる。しかして、この分解や変性は、該分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体を多量に使用しているプライマーにおいては、その貴金属に対する接着力にはあまり影響は与えない程度ですむが、前記した如くにその使用量を必要最小に抑えている時には、影響が大きくなり、必要とする接着力が得られなくなったり、安定的な接着力の発現が困難になったりする。
以上から、A)分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなる金属用プライマーにおいて、C)有機溶媒が、生体為害性が少なく、適度な揮発性を有するアルコール系のものでありながら、該A)分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の使用量が少量であり、且つ長期保存後においても充分な接着性が安定的に維持されるものを開発することが大きな課題であった。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行なった。その結果、A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を溶解する、C)有機溶媒として、第二アルコールまたは第三アルコールを使用すれば、該A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量が0.01〜3質量%であっても、その接着性の付与効果は、プライマーの長期保存後においても良好に維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなる金属用プライマーであって、該プライマー全体の質量を基準としてA)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量が0.01〜3質量%であり、C)有機溶媒が、第二アルコールまたは第三アルコールであることを特徴とする金属用プライマーである。
また、本発明は、(I)A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液であって、C)有機溶媒が、第二アルコールまたは第三アルコールである第一プライマー構成液、並びに(II)シランカップリング剤の有機溶液からなる第ニプライマー構成液により構成されてなり、上記(I)第一プライマー構成液中のA)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量が、使用時における該(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合してプライマーとした際の該プライマー全体の質量を基準として0.01〜3質量%になる量であることを特徴とする金属またはセラミックス用プライマーキットも提供する。
本発明の金属用プライマーは、A)分子内にイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなる金属用プライマーにおいて、C)有機溶媒としてイソプロパノールを使用したものである。この金属用プライマーは、卑金属金属と貴金属のいずれの材質からなる部材に対しても、これに硬化性組成物からなるレジン材料を接着させる際に、上記金属部材の前処理材として使用することにより、接着性を向上させる効果を発揮する。そして、保存安定性に極めて優れるため、該プライマーの長期間の保存後においても上記効果を良好に保持させることができる。また、適度な揮発性を有すため取り扱いが容易であり、低刺激性である。
そのため、医療、電子材料、精密機械、宝飾等の分野において、上記金属部材と硬化性組成物からなるレジン材料を接着させる際に有効に使用でき、特に、歯科治療用途において歯科金属製修復材に、レジンセメントや即時重合レジン等の硬化性レジンを接着させる際に好適に使用できる。具体的には、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等の卑金属を主成分とする卑金属合金製の金属床で義歯を作製し、これをアクリルレジンで裏装する場合や、金、白金、パラジウム、銀等を主成分とする貴金属合金製歯冠修復物を硬化性レジンを用いて歯牙に接着する場合等に、これら金属部材の前処理材として使用できる。
また、こうしたC)有機溶媒としてイソプロパノールを用いた金属用プライマーを(I)第一プライマー構成液として、これに、(II)シランカップリング剤の有機溶液からなる第ニプライマー構成液を組合せて構成したプライマーキットは、上記効果は保持しつつ、金属だけでなく、セラミックスにも良好に接着するものになるため、その利用範囲を広げることができ好ましい。例えば、歯科治療用途であれば、セラミックス製修復材、例えばセラミックス製歯冠修復物に、レジンセメントや即時重合レジン等の硬化性レジンを接着させる際に好適に使用できる。
本発明の金属用プライマーにおいて、A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体(以下、「含硫黄(メタ)アクリレート系単量体」と略する)は、貴金属に対する接着性を高める成分として主に作用する。この含硫黄(メタ)アクリレート系単量体は、分子内に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と硫黄原子とを含有しているものであれば特に限定されず、下記一般式で示される化合物が使用できる。
すなわち、下記一般式A1〜A5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性化合物;下記一般式A6に示される=P(=S)基を有する化合物;下記一般式A7〜A10に示されるジスルフィド化合物;下記一般式A11〜A12に示される鎖状若しくは環状のチオエーテル化合物等が挙げられる。
Figure 2008056649
{式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基、−CH2−C64−CH2−基、−(CH2O−Si(CH32−O−Si(CH32−(CH2P−基(但し、o及びpはそれぞれ1〜5の整数である。)、又は−CH2CH2OCH2CH2−基であり、ZおよびZ’は−OC(=O)−基であり(但し、これらいずれの基Zおよび基Z’においても右端の炭素原子は不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子は基R2に結合している。)、Yは−S−、−O−、−N(R’)−であり(R’は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。)、XはOH、又はClである。}
これら含硫黄(メタ)アクリレート系単量体を具体的に例示すれば、前記一般式A1〜A5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性化合物、及び一般式A6に示される=P(=S)基を有する化合物としては、次に示す化合物が挙げられる。
Figure 2008056649
Figure 2008056649
Figure 2008056649
また、前記一般式A7〜A10に示されるジスルフィド化合物としては、次に示す化合物等が挙げられる。
Figure 2008056649
さらに、前記一般式A11〜A12に示される鎖状若しくは環状のチオエーテル化合物としては、次に示す化合物等が挙げられる。
Figure 2008056649
これらの含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の中でも、プライマーとしたときの保存安定性や接着強度の観点から、互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性化合物、又はジスルフィド化合物が好適に用いられ、特に互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性化合物が、保存安定性が高いため好適に使用される。また、該含硫黄(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリロイル基に由来するエステル結合以外に、更に少なくとも1つ以上の(即ち分子内に少なくとも2つ以上の)エステル基を有する単量体を使用した場合は、この(メタ)アクリロイル基に由来する部分以外のエステル結合の分解や変性も抑制することができるようになり、本発明の効果がより顕著に発揮されて好ましい。こうした単量体としては、具体的には次に示す化合物等が挙げられる。
Figure 2008056649
上記のA)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の金属用プライマーにおいて、A)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、プライマー全体の質量を基準として0.01〜3質量%である。前記したように含硫黄(メタ)アクリレート系単量体は、価格が高価であり、しかも、この化合物は、高濃度で使用した場合に重合性基の重合阻害を生じる虞があるため、上記含有量の上限値以下で使用される。また、このように含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量が少量であると、C)有機溶媒として、エタノールやメタノールの第一アルコールを使用した場合において、該化合物のメタアクリロイル基が分解や変性して重合性を失う影響が、その貴金属に対する接着性に対して大きくなるため、この現象を防止する本発明の効果が顕著に発揮されるようになる。なお、この含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量が0.01質量%より少ないと、貴金属に対する十分な接着力が得られなくなる。これらの観点を考慮すると、本発明のプライマーにおいて、A)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、0.04〜3質量%が好ましく、0.08〜2質量%が特に好ましい。
本発明の金属用プライマーにおいて、B)酸性基含有ラジカル重合性単量体は、卑金属に対する接着性を高める成分として主に作用する。こうしたB)酸性基含有ラジカル重合性単量体としては、1分子中に少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つのラジカル重合性基を持つ重合性化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
ここで、酸性基としては、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、スルホ基(−SO3H)、及び酸無水物骨格{−C(=O)−O−C(=O)−}等を有する有機基等の水溶液中で酸性を示す基を意味する。
他方、ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等のメタアクリロイル基の誘導体基;ビニル基;アリル基;スチリル基等を意味する。
B)酸性基含有重合性単量体としては、接着強度の観点から、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物が好適に使用できる。
Figure 2008056649
{式中、R3及びR’3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、W及びW’はそれぞれ独立にオキシカルボニル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、またはフェニレン基(−C64−)を表し、R4及びR’4はそれぞれ独立に結合手、またはエーテル結合および/或いはエステル結合を有していてもよい炭素数1〜30の2〜6価の有機残基を表し、W、W’がオキシカルボニル基又はアミド基の場合にはR4は結合手にはならず、Xは1価又は2価の酸性基を表し、m及びm’はそれぞれ独立に1〜4の整数を表し、m+nはR4の価数を表し、m’+n’はR’4の価数を表す。}
上記一般式(1)及び(2)中、R4の構造は特に制限されることはなく、結合手、または公知のエーテル結合および/或いはエステル結合を有してもよい炭素数1〜30の2〜6価の有機残基が採用され得るが、具体的に例示すると次の通りである。尚、R4が結合手の場合とは基Wと基Xが直接結合した状態をいい、Wがオキシカルボニル基またはアミド基の場合にはR4は結合手とはならない。
Figure 2008056649
(式中、m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に0〜10の整数であり、かつm1+m2+m3は1以上である。)
一般式(1)及び(2)で表されるB)酸性基含有ラジカル重合性単量体の好ましい具体例を挙げると次の通りである。
Figure 2008056649
Figure 2008056649
(式中、l、m、及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数である。なお、式中、最下段の化合物は、l、m、及びnがそれぞれ異なる化合物として得られることが多く、該混合物におけるl、m、及びnの和の平均は3.5である。)
Figure 2008056649
Figure 2008056649
(但し、R3は水素原子またはメチル基である。)
その他、ビニルホスホン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸等も、B)酸性基含有ラジカル重合性単量体に含まれる。
上記のB)酸性基含有ラジカル重合性単量体は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明においては、B)酸性基含有ラジカル重合性単量体として分子内に少なくとも1つのエステル結合を有すものを使用した場合には、この酸性基含有ラジカル重合性単量体のエステル結合の保存中の分解や変性も抑制されるものになり、本発明の効果がより顕著に発揮されるため好ましい。このようなB)酸性基含有ラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基を有する単量体やリン酸エステル基を有する単量体が挙げられる。更には、B)酸性基含有ラジカル重合性単量体が分子内に少なくとも2つ以上のエステル基を有す場合は、本発明の効果が特に顕著となり好適である。このような化合物としては、リン酸エステル基を有す(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。
本発明の金属用プライマーにおいて、かかるB)酸性基含有ラジカル重合性単量体の含有量は特に限定されないが、接着強度の観点から、プライマー全体の質量を基準として0.1〜20質量%の範囲内であることが好適である。上記B)酸性基含有ラジカル重合性単量体の含有量のさらに好ましい範囲は、0.5〜10質量%である。
なお、本発明の金属用プライマーにおいて、上記したA)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体は、通常は別々の単量体として配合するのが一般的ではあるが、分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する酸性基含有ラジカル重合性単量体である場合、上記A)成分とB)成分を兼用して配合させても良い。この場合、該分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する酸性基含有ラジカル重合性単量体の配合量は、A)成分とB)成分の両方の含有量の算出に加える。こうしたA)成分とB)成分を兼用する化合物の具体例は次の通りである。
Figure 2008056649
本発明の金属用プライマーの最大の特徴は、上記A)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を溶解させる有機溶媒として、第二アルコールまたは第三アルコールを用いた点にある。前記したように、上記A)およびB)成分からなる金属用プライマーの有機溶媒としては、通常は、エタノール等の第一アルコールが使用されているが、この場合、前記したように保存中において、A)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体においてメタアクリロイル基の加水分解反応やエステル交換反応が生じてしまい、その重合性が失われてしまう。これに対して、有機溶媒として、第二アルコールまたは第三アルコールを用いると、このようなメタアクリロイル基の分解や変性の反応速度が大きく低減され、したがって、該A)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の使用量が前記含有量の範囲に抑えられた本発明においては、このA)成分の分解や変性が貴金属への接着性に与える影響を顕著に抑制させたものになり、優れた保存安定性の効果が発揮されるため好ましい。
本発明において、こうした第二アルコールまたは第三アルコールとしては、炭素数3〜20のものが好適に使用され、このような化合物の具体例は以下の通りである。
Figure 2008056649
[式中、Rは、独立に非置換または置換の炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(鎖中にエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい)または式:RO−(Rは非置換または置換の炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(鎖中にエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい)である)で表される基であり、aは0または1である]
上記Rとしては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、(2−メトキシ)エトキシメチル等のアルコキシアルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全てが塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子で置換された基、例えば、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、式:C−、C13−、C17−、C−CHCH−、C13−CHCH−、C17−CHCH−等で表されるフッ素化アルキル基;CFO−CO−CF−、CO−CO−CF(CF)−等のフッ素化アルコキシアルキル基;等を挙げることができる。
また、Rが上記式:RO−で表される基である場合、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ビニロキシ基、アリロキシ基等のアルケノキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、(2−メトキシ)エトキシメトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;およびこれらの基の水素原子の一部または全てが塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子で置換された基、例えば、式:CFO−、CFO−CO−、CO−CO−等で表されるフッ素化アルコキシアルコキシ基;等を挙げることができる。
この内、上記Rがアルキル基であって、炭素数が12の第二アルコールまたは第三アルコールが、生体への為害性が低い、または取り扱いが容易なことから好ましい。このような第二アルコールを例示すると、イソプロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−デカノール等が挙げられる。また、このような第三アルコールを例示すると、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール等が例示できる。
このうち、イソプロパノールは、歯科用プライマーとして汎用されるアセトンやメチルメタクリレートを使用した場合と比較し、適度な(低)揮発性を有しかつ低刺激性であるため、操作性に優れるとともに口腔内での使用にも適しており最適である。
イソプロパノールとしては、ガスクロマトグラフィーで測定した純度が99%以上といった高純度なものが市販されているので、これらの市販品をそのまま使用すればよい。加水分解反応を抑制する目的から、含水量は低いものが好ましい。含水量としては1000ppm以下が好ましく、更に好ましくは100ppm以下である。
以上の金属用プライマーには、接着性を高める目的から重合触媒や助触媒を添加できる。添加可能な重合触媒及び助触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジターシャルブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド等の有機過酸化物系重合触媒;5−ブチル(チオ)バルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニル(チオ)バルビツール酸等の(チオ)バルビツール酸系重合触媒;カンファーキノン、アセチルベンゾイル等のα−ジケトン;ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル;2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体;ベンゾフェノン、P、P’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体等の光重合触媒;及びN,N−ジメチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミン助触媒等が挙げられる。これら重合触媒および助触媒は、1種又は必要に応じて2種以上を組合せて添加することができる。
また、各種金属に対する接着性を阻害しない量であれば、後述するシランカップリング剤を添加することもできる。
更に必要に応じて、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、4−ターシャルブチルフェノール等の重合禁止剤を添加することもできる。
また、重合性の向上や粘度調節の目的から、多官能性重合性単量体等の重合性単量体や、溶媒に可溶な各種ポリマー類も添加できる。
次に、上記説明した金属用プライマーを、第一のプライマー構成液として使用し、これに(II)シランカップリング剤の有機溶液からなる第ニプライマー構成液を組合わせた、金属またはセラミックス用プライマーキットについて説明する。上記シランカップリング剤は、特に二酸化ケイ素を成分として含む各種歯科用セラミックス材料に対して優れた接着性を有しているため、このプライマーキットは前記金属だけでなくセラミックスに対しても接着性を高める効果を付与するプライマーを提供するものになる。セラミックス材料としては、公知の歯科用セラミックス材料が制限なく対象になるが、通常は、結晶化ガラスや、二酸化ケイ素を成分に有する酸化物製のセラミックス材料が挙げられる。
なお、シランカップリング剤は、酸性条件下では不安定であるため、上記金属用プライマー(第一プライマー構成液)に配合した場合はセラミックスに対する高い接着性を長期間保持することが困難な場合があるので、保存時には第一プライマー構成液と第ニプライマー構成液とに分液してキット化し、使用時に一液に混合してプライマーとして使用することが必要になる。
この(II)第ニプライマー構成液に使用するシランカップリング剤としては公知のものが制限なく使用できる。この様なシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン、κ−メタクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
上記のシランカップリング剤のなかでも、接着性及び取扱い性の観点から、重合基を有するシランカップリング剤が好適に使用される。好適に使用される重合基を有するシランカップリング剤を具体的に例示すると、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン、ω−メタクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン等が挙げられる。
上記のシランカップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
こうしたシランカップリング剤の溶媒としては、従来公知の有機溶媒が制限無く使用できる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、蟻酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のハイドロカーボン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒;トリフルオロエタノール等のフッ素系溶媒;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の重合性単量体;等が挙げられる。これらの中で、溶解性、刺激性または揮発性の理由から、イソプロパノール、エタノール、アセトン、メチルメタクリレート等が特に好ましく使用される。
上記の有機溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、シランカップリング剤の加水分解を促進する目的で、水を添加してもよい。水の使用量は、(II)第ニプライマー構成液の質量を基準として50質量%以下、より好適には0.01〜10質量%であるのが好ましい。
こうした(II)第ニプライマー構成液において、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合して形成されるプライマー全体の質量を基準として0.01〜20質量%の範囲内であることが好適である。上記カップリング剤の含有量のさらに好ましい範囲は、0.05〜10質量%である。
本発明の金属またはセラミックス用プライマーキットにおいて、上記(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合比は、特に制限されるものではないが、操作性等の理由から質量比で(I):(II)=1:10〜10:1が好ましく、より好ましくは点眼瓶等の容器から各々一滴ずつ採取する等の等量混合する方法が挙げられる。この(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液との好適な混合比を勘案すると、上記(II)第ニプライマー構成液中においてシランカップリング剤の含有量は、該構成液全体の質量を基準として0.01〜100質量%、より好ましくは0.1〜20質量%であるのが好ましい。
なお、こうしたプライマーキットとしての使用態様において、(I)第一プライマー構成液に含有させるA)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、その使用量を極力抑えた状態において、該単量体の保存安定性を改善して、金属用プライマーとして充分な接着性の付与効果を得る本発明の目的・効果を発揮させるためには、使用時における該(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合してプライマーとした際の該プライマー全体の質量を基準として0.01〜3質量%になる量であることが必要である。このプライマー全体の質量を基準としたA)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、0.04〜3質量%が好ましく、0.08〜2質量%が特に好ましい。また、前記した(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液との好適な混合比を勘案すると、上記(I)第一プライマー構成液中においてA)含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、該構成液全体の質量を基準として0.011〜33質量%、より好ましくは0.088〜33質量%であるのが一般的である。
なお、このようなプライマーキットの形態の場合、前記した金属用プライマーで、任意成分として説明した、重合触媒や助触媒やその他の配合剤は、シランカップリング剤の保存安定性等に悪影響を与えないものである限りにおいて、該(II)第ニプライマー構成液の方に含有させても良い。
本発明の金属用プライマーの使用方法は、特に限定されないが、金属と硬化性レジンを良好に接着するためには、本発明のプライマーを金属表面に塗布した後、該塗布面に硬化性レジンを盛って、次いで該重合性組成物を硬化させる方法が好適に採用できる。金属またはセラミックス用プライマーキットの場合には、使用直前に(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合してプライマーとした後、金属表面あるいはセラミクッス表面に塗布して上記と同様に操作すればよい。
上記方法において、金属またはセラミックスとの接着に用いられる硬化性レジンは、公知の重合性組成物が何等制限なく使用できるが、重合性、取り扱い易さ等を考慮すると、重合開始触媒を含んだ(メタ)アクリレート系重合性単量体を主体とするものが好適である。歯科用途において、一般的に用いられている重合性組成物、例えば義歯床用レジン、即時重合レジン、硬質レジン、コンポジットレジン、レジンセメント等は、(メタ)アクリレート系重合性単量体と重合開始剤を成分として通常含んでいるので好適に使用することができる。
(メタ)アクリレート系重合性単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリロキシエチルプロピオネート等の単官能重合性単量体;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能重合性単量体;4−メタクリロキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、10−メタクリロキシデシルジハイドロジエンホスフェート、10−メタクリロキシデカメチレンマロン酸等の接着性重合性単量体等が挙げられる。これらは、所望される物性や操作性に応じて1種又は2種以上の組合せで使用される。
重合開始剤の具体例としてはベンゾイルパーオキサイド/N,N−ジエタノール−P−トルイジンの様なレドックス系開始剤;トリブチルボランの部分酸化物等のアルキル金属化合物;n−ブチルバルビツール酸/塩化銅のようなバルビツール酸系開始剤;カンファーキノン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の光重合開始触媒;アリールボレート塩/酸性化合物のようなボレート系開始剤等を挙げることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を(1)に、硬化時間の測定法を(2)に、金属またはセラミックス接着強度の測定法を(3)に、プライマーの揮発性の評価法を(4)に、プライマーの刺激性の評価法を(5)に示した。
(1)使用した化合物とその略称
[分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体(含硫黄(メタ)アクリレート系単量体)]
Figure 2008056649
[酸性基含有ラジカル重合性単量体]
Figure 2008056649
[シランカップリング材]
A−174;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
[ラジカル重合性単量体]
MMA;メチルメタクリレート
EMA;エチルメタクリレート
HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
UDMA;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサンと1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,4,4−トリメチルヘキサンの混合物
DMEM;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
[樹脂粉末]
PMMA1;平均粒径30μm、重量平均分子量25万の非架橋球状ポリメチルメタクリレート
PMMA2;PMMA1を粉砕して得た、平均粒径20μm、重量平均分子量25万、比表面積3m/gの非架橋不定形ポリメチルメタクリレート
[重合禁止剤]
BHT;ジブチルヒドロキシトルエン
[重合開始剤]
BPO;過酸化ベンゾイル
DMPT;N,N−ジメチル−p−トルイジン
(2)金属またはセラミックス接着強度の測定
貴金属合金の被着体として歯科用金−銀−パラジウム合金「金パラ12」(トーワ技研社製10×10×3mm)、卑金属合金の被着体として歯科用コバルト−クロム合金「ワークローム」(トーワ技研社製10×10×3mm)、およびセラミックスの被着体として歯科用陶材「ジーセラコスモテックII」(ジーシー社製10×10×3mm)をそれぞれ#1500の耐水研磨紙で磨いた後にサンドブラスト処理し、その処理面に接着面積を固定するために3mmφの穴を開けた接着テープを貼り付けた。この面に実施例または比較例のプライマーをそれぞれ筆で塗布し、溶媒を風乾させた。1分後、プライマー処理面に後述する重合性組成物の練和ペーストを盛り上げた。次いで、あらかじめサンドブラスト処理を行った8mmφ×18mmのSUS304製丸棒を接着面に押しつけて接着を行った。余剰のセメントを除去し、37℃、湿度100%下で1時間反応後、接着試験片を37℃水中に浸漬した。24時間後、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード1mm/分)を用いて引張接着強さを測定した。各々6個の試験片の測定値を平均し、測定結果とした。
(3)プライマーの揮発性の評価
10cmのコバルトクロム製金属床表面を有す金属義歯床モデルを作製し、金属床表面に実施例または比較例のプライマーをそれぞれ小筆で塗布し、溶媒を風乾させた。この際のプライマーの揮発の状態を、○:揮発が遅く塗布部位と未塗布部位が判別しやすい、△;揮発が比較的早く塗布部位と未塗布部位が判別しづらい、×;揮発が早く塗布部位と未塗布部位が判別できない、のように3段階で評価した。
(4)プライマーの刺激性の評価
被験者の口腔粘膜に実施例または比較例のプライマーをそれぞれ小筆で塗布し、刺激性を評価した。刺激性は、○;刺激は許容範囲内、△;刺激は許容範囲内であるが不快な特異臭がある、×;刺激が強く許容できない、の3段階で評価した。
実施例1〜3、比較例1〜4
本発明の実施例および比較例においては、金属またはセラミックスとの接着に用いる重合性組成物としては、該組成物中に酸性基含有ラジカル重合性単量体および分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体を含まない組成として以下を使用した。即ち、液材としては74質量部のMMAと10質量部のHEMAと10質量部のUDMAと3質量部のDMPTと3質量部のDMEMおよび0.1質量部のBHTの混合物を、また粉材としては70質量部のPMMA1と30質量部のPMMA2および2.5質量部のBPOの混合物をそれぞれ調製し、液材と粉材の比率が質量比で1:1.3となるよう混合して使用した。
第一の本発明に対する比較例に使用した溶媒としては、従来公知の溶媒のなかから、生体への為害性が低くまた市販の歯科用プライマー組成物に多用されているものとしてエタノール、MMA、EMA、およびアセトンを使用した。
含硫黄(メタ)アクリレート系単量体として1質量%のMTU−6と酸性基含有ラジカル重合性単量体として6質量%のPM2を、93質量部の各種溶媒に溶解した各種プライマーを調製した。これらのプライマーを50℃、5週間保存した場合のMTU−6およびPM2の残存率を高速液体クロマトグラフィー法により求めた。また、調製直後および保存後のプライマーを使用し、上記(2)金属またはセラミックス接着強度の測定方法に従い接着試験を行った。結果を表1に示した。尚、接着試験においては被着体として金パラ12およびワークロームを使用し、貴金属合金および卑金属合金への接着強度を調べた。
更に、上記(3)プライマーの揮発性の評価方法に従いプライマーの揮発性を、また、上記(4)プライマーの刺激性の評価方法に従いプライマーの刺激性をそれぞれ評価し、結果を表1に示した。
表1の実施例1〜3のように、溶媒としてイソプロパノールを使用した本発明のプライマーにおいては、50℃、5週間保存後の各種含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の分解量は、他の溶媒を使用した場合の3.4分の1〜8.4分の1であり、保存安定性が極めて良好であることがわかった。また、比較例2〜4と比較してプライマーの塗布後の揮発が遅く、塗布部分と非塗布部分を判別しやすかった。更に、プライマー組成物を口腔に添加した場合の刺激性も比較例2〜4と比較して低かった。特に、実施例1のように溶媒としてイソプロパノールを使用した場合は、保存安定性、揮発性、刺激性共に優れていた。尚、比較例4においては保存中に液の黄変が観察された。比較例1のエタノール使用時は、揮発性や刺激性は良好であったが、PM2も含め保存安定性が悪かった。
実施例4〜7、比較例5〜7
含硫黄(メタ)アクリレート系単量体として各質量%のMTU−6と酸性基含有ラジカル重合性単量体として6質量%のPM2を含むイソプロパノール溶液からなる各種プライマーを調製した。これらのプライマーを50℃、5週間保存したものも調製した。調製直後、および保存後のプライマー組成物を使用し、上記(2)金属またはセラミックス接着強度の測定方法に従い接着試験を行った。結果を表2に示した。尚、接着試験においては被着体として金パラ12を使用し、貴金属合金への接着強度を調べた。
表2の実施例4〜7のように、MTU−6濃度が0.02〜2.8質量%の範囲においては、調製直後および保存後のいずれのプライマーを使用した場合も、20MPa以上の十分に高い接着強度が得られた。
しかしながら、MTU−6の添加量が比較例5のように0.005%の場合、または比較例6および比較例7のように5質量%以上の場合は、十分に高い(20MPa以上の)接着強度は得られなかった。
実施例8〜10、比較例8〜10
各種の含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の1質量%と、酸性基含有ラジカル重合性単量体として6質量%のPM2を、93質量部の溶媒に溶解した各種プライマーを調製した。尚、実施例では第2アルコールであるイソプロパノールを、比較例では第1アルコールであるエタノールを使用した。これらのプライマーを50℃、5週間保存した場合の各種含硫黄(メタ)アクリレート系単量体およびPM2の残存率を高速液体クロマトグラフィー法により求めた。結果を表3に示した。
表3の実施例8〜10のように、溶媒としてイソプロパノールを使用した本発明のプライマーにおいては、50℃における各種含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の分解量は、比較例8〜10のエタノールを使用した場合と比較して6分の1〜10.4分の1程度であり、保存安定性が極めて良好であることがわかった。
また、比較例8〜10において、含硫黄(メタ)アクリレート系単量体分子内のエステル結合が多いほど該含硫黄(メタ)アクリレート系単量体の残存率が低くなっているのに対し、実施例8〜10のように、溶媒としてイソプロパノールを使用した本発明のプライマー組成物においては、分解量にはほとんど差が見られなかったことから、本発明の保存安定性が高いという効果は、分子内にエステル交換部位をより多く含む含硫黄(メタ)アクリレート系単量体においてより顕著となることがわかった。
実施例11〜14、比較例11〜14
1質量%のMTU−6と、各種酸性基含有ラジカル重合性単量体の6質量%を、93質量部の溶媒に溶解した各種プライマーを調製した。尚、実施例では第2アルコールであるイソプロパノールを、比較例では第1アルコールであるエタノールを使用した。これらのプライマーを50℃、5週間保存した場合のMTU−6および各種酸性基含有ラジカル重合性単量体の残存率を高速液体クロマトグラフィー法により求めた。結果を表4に示した。
表4の実施例11〜14のように、溶媒としてイソプロパノールを使用した本発明のプライマーにおいては、50℃における各種酸性基含有ラジカル重合性単量体の分解量は、比較例11〜14のエタノールを使用した場合と比較して6分の1〜10.8分の1程度であり、保存安定性が極めて良好であることがわかった。
また、比較例11と比較例13の比較から、酸性基含有ラジカル重合性単量体において、該単量体分子内のエステル結合が多いほど該単量体の残存率が低くなっているのに対し、実施例11と実施例13のように、溶媒としてイソプロパノールを使用した本発明のプライマー組成物においては、分解量にはほとんど差が見られなかったことから、本発明の保存安定性が高いという効果は、分子内にエステル交換部位をより多く含む酸性基含有ラジカル重合性単量体においてより顕著となることがわかった。
実施例15、比較例15
金属用プライマーとして、1質量%のMTU−6と6質量%のPM2を93質量部のイソプロパノールに溶解した第一プライマー構成液、および、3質量%のA−174を97質量部のエタノールに溶解した第ニプライマー構成液を調製した。これらのプライマー組成物の調製直後、および50℃、5週間保存後のプライマー組成物を使用し、上記(2)金属またはセラミックス接着強度の測定に従い接着試験を行った。また、比較例の金属用プライマー組成物として、1質量%のMTU−6と6質量%のPM2を93質量部のエタノールに溶解したものを調製し、上記と同様に評価した。結果を表5に示した。
表5の実施例15のように、本発明の金属またはセラミックス用のプライマーにおいては、50℃、5週という過酷な保存条件下においても、良好な接着強度を保持していた。一方で、比較例15のように、金属用プライマーの溶媒にエタノールを使用した場合は、50℃、5週後の接着強度は低かった。コスモテックIIにおいても接着阻害を生じた機構は不明であるが、MTU−6またはPM2の加水分解生成物が何らかの接着阻害を与えたと考えられた。
Figure 2008056649
Figure 2008056649
Figure 2008056649
Figure 2008056649
Figure 2008056649

Claims (6)

  1. A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液からなる金属用プライマーであって、該プライマー全体の質量を基準としてA)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量が0.01〜3質量%であり、C)有機溶媒が、第二アルコールまたは第三アルコールであることを特徴とする金属用プライマー。
  2. C)有機溶媒の第二アルコールまたは第三アルコールが、イソプロパノールである、請求項1記載の金属用プライマー。
  3. 歯科金属製修復材用である、請求項1または請求項2記載の金属用プライマー。
  4. (I)A)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体、およびB)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含む有機溶液であって、C)有機溶媒が、第二アルコールまたは第三アルコールである第一プライマー構成液、並びに(II)シランカップリング剤の有機溶液からなる第ニプライマー構成液により構成されてなり、上記(I)第一プライマー構成液中のA)分子内に少なくとも1つのイオウ原子を有する(メタ)アクリレート系単量体の含有量が、使用時における該(I)第一プライマー構成液と(II)第ニプライマー構成液とを混合してプライマーとした際の該プライマー全体の質量を基準として0.01〜3質量%になる量であることを特徴とする金属またはセラミックス用プライマーキット。
  5. (I)C)有機溶媒の第二アルコールまたは第三アルコールが、イソプロパノールである請求項4記載の金属またはセラミックス用プライマーキット。
  6. 歯科金属製修復材用または歯科セラミックス製修復材用である、請求項4または請求項5記載の金属またはセラミックス用プライマーキット。
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