JP2016145327A - ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物 - Google Patents

ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対してより高い接着性を有し、簡便且つ生体安全性に対する不安の少ない材料を提供する。【解決手段】 (A)重合性官能基を有するカップリング剤、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上である、接着材、プライマーとして有用なポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して優れた接着性を有し、接着材、プライマーとして有用なポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物に関するものである。
スーパーエンジニアリング樹脂は、電気・電子分野、航空宇宙分野、自動車産業、医療分野、一般工業分野等、幅広い用途に使用されている。このスーパーエンジニアリング樹脂の中でも、特にポリアリールエーテルケトン樹脂は、優れた化学的性質、物理的性質を有することから様々な分野での利用が有望視されている。
たとえば、歯科治療の分野においては、このポリアリールエーテルケトン樹脂を歯科材料として用いる技術が提案されている。ポリアリールエーテルケトン樹脂材料を歯科材料として使用する場合、その強度や弾性率の観点からシリカ系無機粒子や二酸化チタン系粒子などの無機フィラーを含有させることが有効である(例えば、特許文献1)。
このような、優れた化学的性質、物理的性質を持つポリアリールエーテルケトン樹脂材料に、さらに無機フィラーを含有させて物性を向上させたポリアリールエーテルケトン樹脂材料複合体は、様々な分野で利用されうる材料である。
上記のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を利用する場合、このポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と他種の材料とをより強固に接着できる技術が求められている。
ここで、歯科用途にて樹脂とシリカ系無機粒子からなる組成物の一例として、メタクリレート系モノマーとシリカ系粒子と重合開始剤が主成分であり、重合硬化させて使用するコンポジットレジンや硬質レジンがある。このようなコンポジットレジンや硬質レジンを重合硬化させた後に、これを他の歯科材料と接着させる場合には、通常シランカップリング剤を利用する手法が多用されており、様々な製品が各社から発売されている。このようなシランカップリング剤を利用する手法では、シランカップリング剤と揮発性溶媒を主成分とするプライマーを利用する事が多い。
そのため、ポリアリールエーテルケトン樹脂材料の場合も、シリカ系無機粒子などの金属酸化物粒子やグラスファイバーなどの通常シランカップリング剤が反応しうる成分と複合化したポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する接着は、上記のようなシランカップリング剤を含有するプライマーにて高い接着強さが得られる事が予想される。しかしながら、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して、シランカップリング剤と揮発性溶媒からなるプライマーでは高い接着強さが得られていない。
例えば特許文献2では、グラスファイバー充填剤を含むポリエーテルエーテルケトン熱可塑性プラスチックに対して、シランカップリング剤であるメタクリルシランを揮発性溶媒であるエタノールに溶解させたコンディショニング剤を利用して接着を試みているが、高い接着性が得られていない。該特許では、メタクリルシランを高沸点溶媒であるDMSOに溶解させたコンディショニング剤を利用することで高い接着強さが得られているが、高沸点溶媒を完全に除くことは困難であり、高い生体安全性が求められる歯科用途として使用するには手間がかかる。なお、該特許ではコンディショニング剤にはメタクリレートをベースとする単官能及び/又は多官能(メタ)アクリレート(重合性単量体)などの他の成分を含んでも良い旨が記載されているが、具体的に組成は示されていない。
また、例えば非特許文献1のようにポリアリールエーテルケトン樹脂材料に対する接着として、歯科用ボンディング材が有効な報告もあるが、より信頼性の高い治療を行うためには、更なる接着性の向上が望ましい。なお、非特許文献1では歯科用ボンディング剤としてHeliobond(Ivocular Vivadent社製)を使用して高い接着強さを得ている。Heliobondには重合性単量体としてBisGMA((1−methylethylidene)bis[4,1−phenyleneoxy(2−hydroxy−3,1−propanediyl)]bismethacrylate)、TEGDMA、UDMA(urethanedimethacrylate:1,6−dimethacryl―ethyl−oxy−carbonylamino−2,4,4−trimethylhexane)が配合されていることが記載されているが、カップリング剤が配合されていることは記されていない。
特開2013−144778号公報 特表2010−521257号公報
DENTAL MATERIALS 26(2010) 553−559
上記のように、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対するより高い接着性を有する材料が望まれている。シリカ系無機粒子などの金属酸化物が配合されているポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対しては、カップリング剤による接着が有効であると考えられるが、特許文献2にてメタクリルシランと揮発性溶媒からなるプライマーでは高い接着強さが得られていないように、たとえば通常の歯科用材料に使用されている重合性官能基としてメタアクリロイル基を有するカップリング剤と揮発性溶媒を主成分とするプライマーでは高い接着性が得られていなかった。また、カップリング剤と高沸点溶媒を配合したコンディショニング剤を使用することでポリエーテルケトン樹脂複合体材料に対して高い接着強さを得る技術も提案されているが、系から除去する事が容易ではない高沸点溶媒を使用しなければならないなど、簡便且つ生体安全性に対する不安のより少ない手法で高い接着強さを得る手法が必要である。そこで本発明では、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対してより高い接着性を有し、簡便且つ生体安全性に対する不安の少ない材料を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、発明者らは鋭意検討を行った結果、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して、重合性官能基を有するカップリング剤、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上である接着性組成物を使用することによって高い接着性が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、重合性官能基を有するカップリング剤、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上であることを特徴とするポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物である。重合性官能基を有するカップリング剤の配合量は全重合性単量体100質量部に対して1〜30質量部の範囲であることが好ましく、更に揮発性溶媒を含有することが好ましい。重合性官能基を有するカップリング剤および分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体の重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
本発明によれば、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する接着において、高い接着性を得る事が出来る。そのため、例えば歯科分野においては、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料によって作製された歯科補綴物をレジンセメントなどを使用して歯牙に装着する際により高い接着性を得る事が可能となったり、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とコンポジットレジンや硬質レジンなどの歯科用材料を使用して歯科補綴物を作製する際にも、より壊れにくい歯科補綴物を作製したりする事が可能となり、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を使用することで、より信頼性の高い治療を行う事が可能となる。
また、系から除去する事が容易ではない高沸点溶媒を使用する必要がなく、残留溶媒による悪影響、たとえば生体安全性に対する不安が少ないなどの利点がある。
このような本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーとして、極めて有用である。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は、(A)重合性官能基を有するカップリング剤、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上であることを特徴とする。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とは、ポリアリールエーテルケトン樹脂と金属酸化物を含有するコンポジット材料を意味する。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物とは、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と、その他の材料を接着させるために用いる接着性組成物を意味する。
また、重合性単量体とは重合性官能基を有する化合物であり、重合性官能基を有するカップリング剤も重合性単量体である。
以下に、本実施形態を構成する材料等の詳細について説明する。
(A)重合性官能基を有するカップリング剤
カップリング剤は無機化合物(本発明においては金属酸化物)と反応する1つ以上の第一反応性基と、有機化合物と反応する1つ以上の第二反応性基を有する材料であり、本発明の重合性官能基を有するカップリング剤では有機化合物と反応する1つ以上の第二反応性基が重合性官能基である。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物にカップリング剤を配合することにより、重合性官能基を有するカップリング剤を配合しない場合と比較して、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する高い接着性を得る事が出来る。
本発明に使用する(A)重合性官能基を有するカップリング剤としては公知のものが制限なく使用でき、一般的なものとして、下記一般式(I)に示される構造をしているものが挙げられる。
Figure 2016145327
一般式(I)中、Mは金属元素であり、Xは第一反応性官能基であり、該第一反応性官能基Xは、水酸基(OH)もしくは加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基であり、Yは第二反応性官能基であり、該第二反応性官能基Yは、重合性官能基を有する官能基であり、ZはX,Yに該当しないその他の官能基である。m、nはそれぞれ独立に1以上の整数であり、lは0もしくは1以上の整数である。m+n+lは金属元素Mの原子価と一致する。
カップリング剤としては、例えば一般式(I)中のMが珪素であるシランカップリング剤、チタンであるチタネート系カップリング剤、アルミニウムであるアルミネート系カップリング剤、ジルコニウムであるジルコネート系カップリング剤などがあるが、接着性及び取扱い性の観点から特にシランカップリング剤が好適である。
一般式(I)中の第一反応性官能基Xは、水酸基(OH)もしくは加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基であり、水酸基のほかにアルコキシ基、アクリロキシ基、ハロゲノ基、アミノ基などを例示する事が出来る。このM−OHの構造が歯科用ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料中の金属酸化物と反応することによって、接着性が得られると推測される。一般式(I)中の第一反応性官能基Xは、その保存安定性の観点から、保管中にはM−OH構造が少なく、使用直前に例えば酸性化合物と混合することによって加水分解が進行し金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を多数生成する官能基である事が好ましく、このような官能基としては、例えば、アルコキシ基、アクリロキシ基などが挙げられる。保存中に水酸基が多量に生成した場合、この水酸基同士の縮合反応が起こり、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物がゲル化してしまうなど、長期間保管できない虞がある。そのため、Xはアルコキシ基、アクリロキシ基などの官能基であることが好ましく、取扱いが容易などの点から炭素数1〜5のアルコキシ基であること、すなわちXがOR(Rは炭素数1〜5のアルキル基)であることがより好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基であることが更に好ましい。
一般式(I)中の第二反応性官能基Yは重合性官能基を有する官能基であり、この官能基によってカップリング剤と接着性組成物の他の重合性単量体との間に結合を形成し、均一で強固な接着性組成物の層を形成し、接着性が向上する。Yが有する重合性官能基は生体毒性の低さや重合活性の高さなどの点からラジカル重合性官能基が好ましい。該ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等のなどの官能基が挙げられるが、重合速度や生体安全性の点から特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
一般式(I)中のZは、X、Yに該当しない官能基であれば、本発明の効果に悪影響を与えない限りいかなる官能基であっても良く、例えば、水素原子、アルキル基、アリール基などが挙げられる。
一般式(I)中のm、n、lはそれぞれ、官能基X、Y、Zの数を表す。そのため、m+n+lは金属元素Mの原子価と一致する。官能基X及びYは本発明の効果を得るために必須の官能基であるため、m、nはそれぞれ独立に1以上の整数である。一方、官能基Zは本発明の効果を得るために必ずしも必須である官能基ではないため、lは0もしくは1以上の整数である。第一反応性官能基Xはポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物との間の結合の強さに、第二反応性官能基Yはポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の層の強度に強く関ってくるため、これらの数が多いほうがポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物との相互作用がより強固なものとなり、より高い接着性が得られる。そのため、lは0または1であることが好ましく、0である事がより好ましい。また、第一反応性官能基Xに由来するM−OH構造によるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物との間の結合の強さが特に接着性に強く影響することから、mは2以上である事が特に好ましい。すなわち、例えば金属元素Mが原子価が4の珪素であるシランカップリング剤の場合、m=3、n=1、l=0である場合、またはm=2、n=2、l=0である場合、m=2、n=1、l=1である場合が好ましく、m=3、n=1、l=0である場合、またはm=2、n=2、l=0である場合がさらに好ましく、m=3、n=1、l=0である場合が特に好ましい。
なお、上記一般式(I)、の構造が、シロキサン結合で繋がっている場合や、アルキレン基などのその他の官能基を介して繋がっている場合も、使用可能である。
好適なカップリング剤として、一般式(II)に示すものが挙げられる。
Figure 2016145327
ここで、一般式(II)中、Mは金属元素を、Rは炭素数1〜5のアルキル基を、Rはアルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基のいずれか(ただし、これらの官能基には、本発明の効果を著しく阻害しない限り、側鎖としていかなる官能基を有していても良い)を、Rは水素原子またはメチル基を、Zは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。また、m、n、lはそれぞれ官能基の数を表しており、m、nはそれぞれ独立に1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数である。m+n+lは金属元素Mの原子価と一致する。なお、Rはメチル基またはエチル基であることがより好ましい。Rは主鎖の炭素数が1〜15のアルキレン基または主鎖の炭素数が6〜20のアリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基であることがより好ましい。Zは水素原子またはメチル基であることがより好ましい。lは0であることがより好ましい。
一般式(II)中の金属元素Mは、上述のように珪素であることが好ましく、このようなカップリング剤は下記の一般式(III)のように表すことができる。
Figure 2016145327
ここで、一般式(III)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を、Rはアルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基のいずれか(ただし、これらの官能基には、本発明の効果を著しく阻害しない限り、側鎖としていかなる官能基を有していても良い)を、Rは水素原子またはメチル基を、Zは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。また、また、m、n、lはそれぞれ官能基の数を表しており、m、nはそれぞれ独立に1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数である。m+n+l=4である。なお、Rはメチル基、エチル基またはプロピル基であることがより好ましい。Rは主鎖の炭素数が1〜15のアルキレン基または主鎖の炭素数が6〜20のアリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基であることがより好ましい。Zは水素原子またはメチル基であることがより好ましい。m、n、lは、m=3、n=1、l=0の場合、もしくはm=2、n=2、l=0の場合、m=2、n=1、l=1の場合が好ましく、m=3、n=1、l=0の場合が特に好ましい。
好適に使用される重合性官能基を有するカップリング剤としては、例えばシランカップリング剤を例示すると、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリイソプロピルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ω−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、O−(メタクリロイルオキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、N−(3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(n−メタクリロイルオキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(3−メトキシ−4−メタクリロイルオキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記の重合性官能基を有するカップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
重合性官能基を有するカップリング剤の配合量は特に制限されないが、重合性官能基を有するカップリング剤も含めた全重合性単量体100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましく、3〜10質量部の範囲が更に好ましい。カップリング剤の量が多すぎる場合には、被着体の金属酸化物近傍に過剰なカップリング剤がM−OH構造同士で脱水縮合した脆弱な層が形成され、後述する分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体とカップリング剤双方を使用することによって得られる効果が限定的なものとなってしまう虞がある。一方、カップリング剤が少ない場合には、高い接着性を得るために十分なカップリング剤とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体中の金属酸化物との結合が得られなくなる虞がある。
(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物には、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、該(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上含まれる。全重合体の40質量%以上含まれる(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体と(A)重合性官能基を有するカップリング剤を混合して使用することで高い接着性を得る事が可能となる。
分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を全重合性単量体の40質量%以上配合することにより、硬化した接着性組成物の層の強度が高くなり、高い接着性が得られる。
分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を全重合性単量体の40質量%以上配合していない接着性組成物を使用した場合、高い接着性を得るために十分な、均一で強固な接着性組成物の層を形成する事が困難である。ここで、接着性組成物に分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を全重合性単量体の40質量%以上配合することによって、均一で強固な接着性組成物の層を形成しやすくなり、高い接着性が得られると推察される。分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を全重合性単量体の40質量%以上使用することによって、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%未満である場合と比較して、接着性組成物が硬化した後に網目状のポリマーネットワークを形成する事が容易となり、均一で強固な接着性組成物の層が形成されやすくなると推察される。
分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体は公知のものが何ら制限無く使用できる。上記した(A)重合性官能基を有するカップリング剤も重合性官能基を分子内に2以上有しているものは、(A)重合性官能基を有するカップリング剤であり、且つ(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体である。重合性官能基は生体毒性の低さや重合活性の高さなどの点からラジカル重合性官能基が好ましく、ビニル基、スチリル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のなどの官能基が挙げられるが、重合速度や生体安全性の点から特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体としては、たとえば、下記(I)〜(III)に示される分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性単量体が挙げられる。
(I)二官能ラジカル重合性単量体
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、ビス(6−メタクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンホスフェート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、1,6−ビス(メタクリロイルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン等。
(II)三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(III)四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これら分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。
これら分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体は、全重合性単量体のうち40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上用いる事が好ましい。分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が40質量%未満である場合、接着性組成物の層の強度が十分ではないため、高い接着性が得られにくい。
分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体の一部又は全てが、分子内に2以上の重合性官能基を有し、かつ水素結合性官能基を有する事が好ましい。水素結合性官能基を有する重合性単量体を用いることによって、その水素結合性官能基同士の水素結合によって接着性組成物の層の強度がより高くなる。加えて、重合性単量体の水素結合性官能基とポリアリールエーテルケトン樹脂のケトン基とが相互作用することによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と接着性組成物の層の相互作用がより高いものとなると推察される。また、これら水素結合性官能基はカップリング剤が水酸基(OH)または加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基を有する場合、カップリング剤のM−OH部分または加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基が加水分解して生成したM−OH部分と相互作用をすることで接着性組成物層の強度を向上させると推察される。更に、重合性官能基を有するカップリング剤とその他の重合性単量体が均一に混合されることを促進することによってポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料上に接着性組成物を塗布した際に均一な接着性組成物の層が形成されやすくなると推察される。これらの作用によってより高い接着性が得られるため、水素結合性官能基を有する重合性単量体を用いる事が好ましい。分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基を有する重合性単量体は、全重合性単量体の20質量%以上用いる事が好ましく、30質量%以上用いる事が更に好ましい。
ここで言う水素結合とは、電気陰性度の大きな原子(O、N、S等)に結合し電気的に陽性に分極した水素原子(ドナー)と、孤立電子対を有する電気的に陰性な原子(アクセプター)との間に形成される結合性の相互作用のことを示している。本発明における水素結合性官能基とは上記水素結合においてドナー且つアクセプターとして機能することのできる置換基であり、具体的には、水酸基、チオール基、アミノ基、ウレタン基、アミド基などを言う。
このような分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基を有する重合性単量体は上記で例示したものを含め、公知のものが特に制限無く使用でき、例としては、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、グリセリンジメタクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、ビス(6−メタクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンホスフェート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、1,6−ビス(メタクリロイルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン等が挙げられる。
分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基を有する重合性単量体の一部又は全てが分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基を有し、かつ芳香環を有する事がより好ましい。分子内に芳香環を有することによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の重合性単量体の芳香環とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の芳香環がスタックを形成し、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と接着性組成物の層の相互作用がより高いものとなると推察される。
このような分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環を有する重合性単量体は上記で例示したものを含め、公知のものが特に制限無く使用でき、例としては、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン及びこのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環を有する重合性単量体は、全重合性単量体の15質量%以上用いる事が好ましく、25質量%以上用いる事が更に好ましい。一方、分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環を有する重合性単量体は、全重合性単量体の70質量%以下である事が好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環を有する重合性単量体を15質量%以上とすることによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と接着性組成物の層との相互作用を強固なものとする事が可能となる。一方、分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環を有する重合性単量体を70質量%を超えて配合した場合、水素結合性官能基同士や芳香環同士の相互作用により重合性単量体の取扱いが困難となり、作業性などの観点から接着性組成物に配合する事が困難となる場合がある。
さらに分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体のほかに、必要に応じて、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、6−メタクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、10−メタクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート等のメタクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等の重合性官能基を分子内に一つのみ有する重合性単量体を用いても良い。
これら重合性官能基を分子内に一つのみ有する重合性単量体の配合量は、上記重合性官能基を有するカップリング剤と分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体の配合量に応じて適宜決定すればよいが、全重合性単量体のうち50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。重合性官能基を分子内に一つのみ有する重合性単量体を多量に配合すると、高い接着性を得るために十分な接着性組成物の層の強度が得られない場合がある。
(C)揮発性溶媒
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物に揮発性溶媒を配合する事もまた好ましい。揮発性溶媒を配合することで、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の粘度が低下し、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面の微細な凹凸に侵入しやすくなったり、均一な接着性組成物の層を形成したりしやすくなる。また、カップリング剤分子の運動性が向上して、金属酸化物とカップリング剤分子との反応性が向上し、より高い接着性が得られうると推察される。また、カップリング剤として一般式(I)中のXが加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基であるものを使用する場合、加水分解反応がより進行しやすくなる場合もある。
また、揮発性であることにより、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物をポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面に塗布した後はエアブローなどの操作によってポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面から取り除かれ、溶媒の残留による接着性への悪影響を抑制する事が出来る。
ここで、揮発性溶媒とは760mmHgでの沸点が100℃以下で、20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。ただし、揮発性溶媒は十分に揮発し、残留して悪影響を与えない事が好ましいため、20℃における蒸気圧は2.0KPa以上である事がより好ましく、5.0KPa以上である事が更に好ましい。一方、揮発性溶媒の揮発が速すぎる場合には、揮発性溶媒を配合した効果が十分に効果が得られにくくなる。そのため、揮発性溶媒の20℃における蒸気圧は60KPa以下である事が好ましく、50KPa以下である事が更に好ましい。また、沸点が低い方がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面から取り除きやすいことから、揮発性溶媒の760mmHgでの沸点は85℃以下である事がさらに好ましい。
このような好ましい揮発性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、水などが挙げられる。これらの揮発性溶媒は単独で使用しても良いし、均一に混合できる場合には複数を混合しても良い。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の用途がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の場合、揮発性溶媒の配合量は、全重合性単量体100質量部に対して10質量部から1000質量部の範囲好ましく、10質量部から500質量部の範囲がより好ましく、20質量部から400質量部の範囲が更に好ましく、50質量部から300質量部の範囲が最も好ましい。揮発性溶媒が10質量部より少ない場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の粘度の低下度合いが少なく、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面の微細な凹凸にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材が侵入しやすくなったり、均一な接着材層を形成したりする効果が得られにくい。また、カップリング剤の運動性が向上することによるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の金属酸化物と反応性向上効果も得られにくい。揮発性溶媒が1000質量部より多い場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の重合性単量体成分が少なくなり、その結果、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を塗布した際にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面に存在する重合性単量体の量が不足して、均一で強固な接着材層の形成が不十分となり、接着性が低下する場合もある。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の用途がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーの場合、揮発性溶媒の配合量は、全重合性単量体100質量部に対して10質量部から3000質量部の範囲であることが好ましく、100質量部から2000質量部の範囲である事がより好ましく、300質量部から1500質量部の範囲である事が更に好ましく、500質量部から1000質量部の範囲である事が最も好ましい。プライマーの場合は、後述するように均一で強固な接着性組成物の層を形成する上では接着材と比較して不利であるが、溶媒量を多量に使用する場合の接着性の低下が限定的なものとなるため、適切な溶媒量が接着材の場合とプライマーの場合とでは異なっている。揮発性溶媒が10質量部より少ない場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーの粘度の低下度合いが少なく、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面の微細な凹凸にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーが侵入しやすくなったり、均一なプライマー層を形成したりする効果が得られにくい。また、カップリング剤の運動性が向上することによるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の金属酸化物と反応性向上効果も得られにくい。揮発性溶媒が3000質量部より多い場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーの重合性単量体成分が少なくなり、その結果ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを塗布した際にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面に存在する重合性単量体の量が不足して、均一で強固なプライマー層の形成が不十分となり、揮発性溶媒を配合した利点が得られにくくなる。
揮発性溶媒を、沸点が100℃を超える、もしくは、20℃における蒸気圧が1.0KPa未満の、揮発性が低い溶媒と併用しても良い。ただし、揮発性が低い溶媒が多量に含まれているとポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の重合性単量体の相互作用を阻害したり、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の重合性単量体の重合硬化を阻害したりして接着性を低下させる虞がある。そのため、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物に含有される揮発性が低い溶媒は、揮発性溶媒の添加量に対して40質量%以下である事が好ましく、20質量%以下である事がよりこのましく、10質量%以下である事が更に好ましく、1質量%以下である事が最も好ましい。
(D)酸性基含有重合性単量体
カップリング剤として一般式(I)中のXが加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基であるものを使用する場合、重合性単量体として(D)酸性基含有重合性単量体を使用することもまた好ましい。酸性基含有重合性単量体を使用することによって、カップリング剤の加水分解反応を促進し効率的にM−OH構造を生成する事が可能となる。その結果、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の金属酸化物との間の反応がより進行し、接着性が向上する。
ただし、酸性基含有重合性単量体をポリアリールエーテルケトン複合体用接着性組成物に配合する場合、酸性基含有重合性単量体とカップリング剤を同一の包装にて保管をしても良いが、保存安定性の観点から、保管形態が少なくとも2包装に分割されており、(A)重合性官能基を有するカップリング剤とは異なる包装に、酸性基含有重合性単量体を配合することが好ましい。これは、(A)重合性官能基を有するカップリング剤と同一の包装に、酸性基含有重合性単量体を配合した場合、保管中に加水分解反応が進行してしまうため、保存安定性が高いという加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基である利点が得られにくくなるためである。
このような酸性基含有重合性単量体としては、分子内に少なくとも一つの重合性官能基と少なくとも1つの酸性基とを有するものであれば、公知のものが特に制限無く利用できる。
なお、本発明における酸性基とは、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、スルホ基(−SOH)などの−OHを有する遊離の酸基のみならず、上記に例示した−OHを有する酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造(例えば、−C(=O)−O−C(=O)−)、あるいは、上記に例示した−OHを有する酸性基の−OHがハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基(例えば、−C(=O)Cl)などのように当該基を有する重合性単量体の水溶液または水懸濁液が酸性を示す基を意味する。酸性基は、pKaが5より小さいものが好ましい。
また、酸性基含有重合性単量体が分子内に2以上の重合性官能基を有する場合、該化合物は分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体であると共に酸性基含有重合性単量体でもある。
このような酸性基含有重合性単量体を具体的に例示すると、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェートなどの、分子内にホスフィニコオキシ基またはホスホノオキシ基を有する重合性単量体、ならびに、これらの酸無水物および酸ハロゲン化物が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−O−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸などの、分子内に1つのカルボキシル基を有する重合性単量体、ならびに、これらの酸無水物および酸ハロゲン化物が挙げられる。
また、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、N,o−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物などの、分子内に複数のカルボキシル基あるいはその酸無水物基を有する重合性単量体、ならびに、これらの酸無水物および酸ハロゲン化物が挙げられる。
また、ビニルホスホン酸、p−ビニルベンゼンホスホン酸などの、分子内にホスホノ基を有する重合性単量体が挙げられる。
また、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベン
ゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの分子内にスルホ基を有する重合性単量体が挙げられる。
また、上記例示されたもの以外にも、特開昭54−11149号公報、特開昭58−140046号公報、特開昭59−15468号公報、特開昭58−173175号公報、特開昭61−293951号公報、特開平7−179401号公報、特開平8−208760号公報、特開平8−319209号公報、特開平10−236912号公報、特開平10−245525号公報などに記載されている酸性基含有重合性単量体も好適に使用できる。
これら酸性基含有重合性単量体は単独で用いても、複数の種類のものを併用しても良い。
酸性基含有重合性単量体の配合量は、全重合性単量体100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。酸性基含有重合性単量体が少ない場合、カップリング剤の加水分解が不十分となり、高い接着性が得られない虞がある。酸性基含有重合性単量体が多すぎる場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の吸水性が高くなる。その結果、例えば口腔内での使用時に過度の吸水によって接着性組成物の層の劣化が生じやすくなり、特に長期的な接着性が低下する虞がある。
また、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物にはこの他必要に応じて、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、充填材、重合禁止剤、重合抑制剤、染料、顔料、香料などの成分が含まれていても良い。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物に、必要に応じて充填材を配合する場合、充填材は特に制限無く公知の無機充填材、有機充填材、有機無機複合充填材などが利用できる。充填材を含有することにより、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に存在する微細な凹凸に侵入した接着性組成物の強度が高まり、より高い接着性が得られやすくなる。
無機充填材の例としては、石英、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、フルオロアルミノシリケートガラスなどが挙げられる。なお、これら無機充填材を使用する場合は、シランカップリング処理されたものが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
有機充填材の例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート−ポリエチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などの有機高分子からなる粒子が挙げられる。
有機無機複合充填材の例としては、前述の無機粒子と重合性単量体を混合した後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機無機複合充填材が挙げられる。
一方で、接着性組成物が充填材を多量に含有していると、接着性組成物の粘度が高くなり接着性が低下する傾向にあることに加えて、接着性組成物の層が厚くなる傾向にある。そのため、充填材の接着性組成物への添加量は、接着性組成物100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
上記充填材の粒径や形状は特に制限されないが、均一な接着性組成物の層を形成する観点から、粒径が小さいことが好ましい。充填材の粒径としては、平均体積粒子径が100μm以下である事が好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01μm〜1μmが更に好ましい。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は、重合開始剤を配合してポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材としても良いし、重合開始剤を配合せずにポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーとしても良い。後述するように、接着材にする場合とプライマーにする場合のそれぞれの場合において利点があるため、その用途に応じて適宜選択すればよい。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材にして使用する場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーにして使用する場合と比較して、強固で均一な接着材層が得られやすくなり、より高い接着性が得られるようになる。この接着性の観点から考えると、重合開始剤を配合してポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材にする事が好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤、化学重合開始剤あるいは熱重合開始剤を用いることができ、2種類以上の重合開始剤を組み合わせて利用することもできる。なお、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料への塗布後、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を硬化させる際に簡便に行う事が出来ることから、光重合開始剤および/または化学重合開始剤を用いることが好ましい。ポリアリールエーテルケトン樹脂は通常不透明な材料であることから、光を接着材に照射する事が困難な場合もありうるため、化学重合開始剤が最も好ましい。以下にこれら3種類の重合開始剤についてより詳細に説明する。
光重合開始剤としては、公知のものが何ら制限なく使用できる。代表的な光重合開始剤としては、α−ジケトン類及び第三級アミン類の組み合わせ、アシルホスフィンオキサイド及び第三級アミン類の組み合わせ、チオキサントン類及び第三級アミン類の組み合わせ,α−アミノアセトフェノン類及び第三級アミン類の組み合わせ,アリールボレート類及び光酸発生剤類の組み合わせ等の光重合開始剤が挙げられる。
上記各種光重合開始剤に好適に使用される各種化合物を例示すると、α−ジケトン類としては、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、p,p'−ジメトキシベンジル、p,p'−ジクロロベンジルアセチル、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等が挙げられる。
三級アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を配合して使用することができる。
アシルホスフィンオキサイド類としては、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
チオキサントン類としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
α−アミノアセトフェノン類としては、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1等が挙げられる。
上記光重合開始剤は単独で用いても、2種類以上のものを混合して用いても良い。
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。
該アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアリールパーオキサイドなどが挙げられる。
有機過酸化物を具体的に例示すると、ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t―ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
また、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等も好適な有機過酸化物として使用できる。
使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
該有機過酸化物と該アミン化合物からなる開始剤系にさらに、ベンゼンスルフィン酸やp−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸を加えた系、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸系開始剤を加えた系にしても何ら問題なく使用できる。
また、遷移金属化合物/有機過酸化物系の化学重合開始剤も挙げられる。該遷移金属化合物を具体的に例示すると、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセテート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、互酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等のバナジウム化合物、ヨウ化スカンジウム(III)等のスカンジウム化合物、塩化チタン(IV)、チタニウム(IV)テトライソプロポキシド等のチタン化合物、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、クロム酸、クロム酸塩等のクロム化合物、酢酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)等のマンガン化合物、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)等の鉄化合物、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト(II)等のコバルト化合物、塩化ニッケル(II)等のニッケル化合物、塩化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(II)、酢酸銅(II)等の銅化合、塩化亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)等の亜鉛化合物が例示される。これらの遷移金属化合物の中でも、高い接着強さが得られやすいことなどから、+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、例えば上記に例示したものが挙げられる。
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の化学重合開始剤を用いることもできる。
アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。
1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物として、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す)の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物として、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素〔ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す〕の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
上記で例示した各種のアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
上述したアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に、更に有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物、遷移金属化合物としては前記した通りである。
また、熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
これら重合開始剤の配合量は、全重合性単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲である事が好ましく、0.1〜8質量部である事がより好ましい。重合開始剤量が0.01質量部未満では、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の硬化が不十分となり、接着材層の強度が低下する傾向にある。一方、重合開始剤が10質量部を超える場合、未反応で残存した重合開始剤や反応した重合開始剤の残渣が多くなり、接着材のカップリング剤とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の金属酸化物との相互作用に悪影響を与え、特に長期的な接着性を低下させる要因となりうる虞がある。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーにして使用する場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材にして使用する場合と比較して、接着性組成物の層の厚みを薄いものとする事が容易となる。接着性組成物の層を薄くすることによって、例えば歯科用途において、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料によって作製された歯科補綴物を支台歯に装着する際に高い適合性が得られたり、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と硬質レジンなどの歯科用硬化性組成物を使用して歯科補綴物を作製する際には審美性の高い歯科補綴物を作製したりする事が可能となるなど、審美性や寸法安定性の優れた材料を提供することが容易となる。この接着性組成物の層の厚みの観点から考えると、重合開始剤を配合せずに審美性や寸法安定性の観点からポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーにする事が好ましい。
重合開始剤を配合しない場合に、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーに、化学重合開始剤系を形成する成分の一部の成分(以下、化学重合開始剤成分の一部成分ともいう)を配合し、この化学重合開始剤成分の一部成分と化学重合開始剤系を形成する成分を含有する硬化性組成物(例えば、歯科用途においては、歯科用レジンセメント、歯科用コンポジットレジン、歯科用硬質レジンなど)と組み合わせて使用する事が好ましい。すなわち、化学重合開始剤成分の一部成分を配合したポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーをポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面に塗布し、その後、プライマーに配合した化学重合開始剤成分の一部成分と化学重合開始剤系を形成する化学重合開始剤成分を含有する硬化性組成物をプライマーの上から使用する。これによって、化学重合開始剤系を形成していない、化学重合開始剤成分の一部成分を配合したポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーにおいて、硬化性組成物の化学重合開始剤成分により化学重合開始剤系が形成されるため、プライマー層の硬化性が向上し、接着性が向上する。一方、プライマーには化学重合開始剤の全成分などの重合開始剤が配合されていないため、プライマー層は硬化性組成物を接触させるまでは重合硬化せずに流動性を保っており、接着操作に際して通常行われる硬化性組成物を圧着する操作により、プライマー層を薄いものとすることができる。
化学重合開始剤成分の一部成分としては、上述の重合開始剤の化学重合開始剤として例示したものの構成成分を利用する事が可能である。
化学重合開始剤成分の一部成分としては特に、還元剤として働きうるものをポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーに配合する事が、接着性向上の観点から好ましい。これによって接着性が向上する原因は詳しく分かっていないが、還元剤をプライマーに配合することによって、このプライマーをポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に塗布した際に、プライマー中の還元剤がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面の樹脂に作用し、そのケトン基の一部を還元することで、2つのアリーレン基と水酸基と水素原子を置換基として有する炭素原子がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に生成する。このような2つのアリーレン基と水酸基と水素原子を置換基として有する炭素原子上には、水素引き抜きによって容易にラジカルが発生するため、プライマーが重合硬化する際に、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面に生成した水酸基に隣接する炭素原子と積層したラジカル重合性単量体との間に、結合を形成する。その結果、接着性が向上すると推察している。
また、化学重合開始剤成分の一部成分としては、化学重合開始剤としての活性の高さやプライマー層が硬化性化合物と接触する直前まで可能な限り高い流動性を保っていることや保存安定性などのバランスから、プライマーに第4周期の遷移金属化合物を配合する事が好ましい。プライマーに配合される第4周期の遷移金属化合物としては、バナジウム化合物である事がさらに好ましい。
これらの点を考えると、プライマーに配合される化学重合開始剤成分の一部成分は、還元剤として働きうる第4周期の遷移金属化合物が好ましく、特に安定なバナジウム化合物の中でも酸化数が低く還元能が高い+IV価のバナジウム化合物が最も好ましい。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の粘度は低粘度であることが好ましい。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物が低粘度であることによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面の微細な凹凸に接着性組成物が侵入してやすくなり、また、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料表面に均一にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を塗布する事が容易となり、より高い接着性が得られやすくなる。一方、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の粘度が低すぎる場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物が垂れるなどの原因により、複雑な構造を有する場合もあるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面に対して均一にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を塗布する事が困難となる場合がある。そのため、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の粘度としては、23℃において、0.3cP〜3000cPの範囲である事が好ましく、0.4cP〜500cPの範囲である事がより好ましく、0.5cP〜30cPの範囲である事が更に好ましく、0.5cP〜10cPの範囲が最も好ましい。粘度の測定は、23℃に保った恒温室内で、コーンプレート型粘度計を用いて行えば良い。なお、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の包装が2以上に分かれており、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に塗布する直前にこれらを混合して使用する場合は、23℃に保った恒温室内で、これらを混合した後直ぐに、コーンプレート型粘度計を用いて粘度の測定を行えば良い。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とは、ポリアリールエーテルケトン樹脂と金属酸化物を混合した複合材料を意味する。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物が使用できるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料は、高強度であるなどのポリアリールエーテルケトン樹脂の利点が得られる配合量のポリアリールエーテルケトン樹脂を含有しているものであり、好ましくはポリアリールエーテルケトン樹脂を20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、最も好ましくは50質量%以上含むものであり、且つ金属酸化物を含有するものである。
このようなポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料には、ポリアリールエーテルケトン樹脂と金属酸化物のみを混合した複合材料からなる材料のほかに、ポリアリールエーテルケトン樹脂とその他の樹脂をブレンドしたものを樹脂マトリックスとして使用して金属酸化物と混合をした複合材料、ポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリールエーテルケトン樹脂とその他の樹脂をブレンドしたものを樹脂マトリックスとして使用して金属酸化物とその他の充填材を混合した複合材料などが含まれる。また、これらの材料に対して、顔料、安定化剤などの微量成分を添加しても良い。
ポリアリールエーテルケトン樹脂は、その構造単位として、芳香族基、エーテル基(エーテル結合)およびケトン基(ケトン結合)を少なくとも含む熱可塑性樹脂であり、多くは、フェニレン基がエーテル基およびケトン基を介して結合した直鎖状のポリマー構造を持つ。ポリアリールエーテルケトン樹脂の代表例としては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。なお、ポリアリールエーテルケトン樹脂の構造単位を構成する芳香族基は、ビフェニル構造などのようにベンゼン環を2つまたはそれ以上有する構造を持ったものでもよい。また、ポリアリールエーテルケトン樹脂の構造単位中には、スルホニル基または共重合可能な他の単量体単位が含まれていてもよい。
ポリアリールエーテルケトン樹脂とブレンドすることが可能なその他の樹脂としては、剛性や強靭性などのポリアリールエーテルケトン樹脂の物性を大幅に劣化させるもので無い限り特に制限されないが、例えば、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフタルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
金属酸化物としては、公知のものが特に制限無く利用でき、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの酸化物、またはシリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナなどの複合無機酸化物が挙げられる。この中でも特に、カップリング剤として好ましいシランカップリング剤との反応性が高く、高い接着性が得られやすいことから、シリカまたはシリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナなどのシリカ系金属酸化物が好ましく、シリカが最も好ましい。なお、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料にはこれらの金属酸化物は1種類のみを配合しても良いし2種類以上を配合しても良い。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料への金属酸化物の配合量は、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物によって高い接着性を得られやすいことから、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の10質量%以上含有するものであり、15質量%以上含有するものが好ましく、25質量%以上含有する事がより好ましい。一方、金属酸化物を多量に配合した場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂と金属酸化物が均一に混合したポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を調製する事が困難となり、金属酸化物がポリアリールエーテルケトン樹脂と分離しやすくなり、カップリング剤と金属酸化物との間の結合の形成による接着性向上の効果が得られにくくなるため、金属酸化物の配合量は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂材料用接着性組成物は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する接着に少なくとも用いられるのであれば、接着方法は特に限定されない。また、接着性組成物に揮発性溶媒が含まれる場合には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に形成された接着性組成物の塗膜層を硬化させる前に、自然乾燥やエアブローなどにより塗膜層中の揮発性溶媒を除去することができる。なお、本発明の接着材の被着体となるポリアリールエーテルケトン樹脂材料を、以下「第一部材」と称する場合がある。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は、被着面が粗ぞう化されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して使用する事がより好ましい。粗ぞう化されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料は、表面の凹凸が増加し、これに対して本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を適用することによって、より高い接着性を得る事が出来る。粗ぞう化は、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物をポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に塗布する前に、簡便且つ安全に実施できる手法で、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面に対して粗ぞう化処理を実施すれば良い。粗ぞう化処理方法としては、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面をサンドブラスト処理する事が好ましい。サンドブラストは歯科技工所などで一般的に行われており、簡便且つ安全にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面を粗ぞう化し、接着性の向上に寄与する事が出来る。サンドブラスト処理は、通常行われている手法で実施すればよく、たとえば歯科分野では一般的に、粒径が数μm〜数百μmのアルミナ粒子を、サンドブラスト装置を用いて数十KPa〜数MPaの圧力でポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料被着面に噴射することで実施される。すなわち、このように粗ぞう化されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を適用した場合に、本発明の効果をより高く発揮させることが可能である。このような観点から、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物と、被着面が粗ぞう化されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とのキットとして使用することも可能である。
また、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を用いた接着方法は、本発明の接着性組成物を第一部材の表面に付与することで行われる。なお、接着性組成物を第一部材の表面に付与する際に、接着性組成物は他の組成物と混合した混合物の状態で第一部材の表面に付与してもよい。また、接着性組成物を第一部材の表面に付与する形態は、特に制限されず、たとえば、接着性組成物を第一部材の表面に直接塗布したり、第一部材以外の他の部材の表面に接着性組成物を塗布した後、他の部材を第一部材に接触させることで接着性組成物を第一部材の表面に接触させたりできる。
また、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物に配合される重合性単量体がラジカル重合性単量体である場合、被着面を還元剤と反応させたポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対して使用する事もまた好適である。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面を還元剤で還元させることによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂のケトン基が還元され、被着体表面に2つのアリーレン基と水酸基と水素原子を置換基として有する炭素原子が存在するようになる。この炭素原子はラジカルを発生しやすい構造であるため、接着性組成物がラジカル重合によって硬化する際に、その重合性単量体とポリアリールエーテルケトン樹脂の間に結合を形成する。これによって更なる接着性の向上が見られる。この場合、還元剤はその反応効率の点からヒドリド還元剤が好ましく、特に取り扱いの容易さなどの点から水素化ホウ素ナトリウムが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と還元剤を反応させる手法としては、例えば還元剤を溶解させた溶液にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の塊を投入して加熱したり、還元剤を溶解させた溶液をポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面に塗布した後オーブンなどで加熱したりする手法がある。その場合の反応温度(加熱温度)は、反応効率や作業性などの点から60℃〜180℃が好ましく、90℃〜150℃が更に好ましい。また、還元剤を溶解させる溶媒は反応に必要な量の還元剤を溶解させる事が出来、且つ還元剤を失活させないことや還元剤の働きを阻害しないものを使用すれば良く、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが好ましく、特にジメチルスルホキシドが好ましい。還元剤溶液の還元剤の濃度は、低すぎる場合反応効率が低下し接着性向上の効果が得られにくく、高すぎたり還元剤が完全に溶解していなかったりする場合はポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に還元剤や還元剤の反応残渣が析出したりして反応性を低下させる虞があるため、還元剤が完全に溶解しつつ、0.1mol/l〜30mol/lの範囲が好ましく、0.5mol/l〜5mol/lの範囲が更に好ましい。
また、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を用いた接着方法は、本発明の接着性組成物を第一部材の表面に付与する接着材付与工程と、必要に応じて接着性組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。なお、接着材付与工程において、接着性組成物は他の組成物と混合した混合物の状態で第一部材の表面に付与してもよく、硬化工程において、接着性組成物は他の組成物と混合した混合物の状態で硬化させてもよい。また、接着性組成物を第一部材の表面に付与する形態は、特に制限されず、たとえば、接着性組成物を第一部材の表面に直接塗布したり、第一部材以外の他の部材の表面に接着性組成物を塗布した後、他の部材を第一部材に接触させることで接着性組成物を第一部材の表面に接触させたりできる。
なお、第一部材は、接着に際して本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物と接触する被着体近傍部分がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料からなるものであれば、如何様な部材であってもよい。また、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の接着対象物は、第一部材のみであってもよく、第一部材および第二部材であってもよい。
接着対象物が第一部材のみからなる場合は、たとえば、合口を設けたリング状の第一部材の一端と他端とを本実施形態の接着性組成物を用いて接着することができる。また、穴や溝等の凹部が設けられた第一部材の凹部に本実施形態の接着性組成物を充填する形態で接着してもよい。この場合、凹部を埋め込むと共に、凹部内に充填された接着性組成物の層と第一部材の凹部の内壁面とが接着される。また、第一部材の表面に本発明の接着性組成物を付与することで、本発明の接着性組成物で覆われた構造体を作製することも可能である。
また、接着対象物が第一部材および第二部材の2つの部材からなる場合は、第一部材と第二部材とを本実施形態の接着性組成物を用いて接着する。ここで、第二部材は、本実施形態の接着性組成物と接着可能な部材であれば特に制限されないが、たとえば、接着作業の開始前から固体状を成す部材(以下、「固体状第二部材」と称す場合がある)であってもよく、接着作業の開始前においてはペースト状あるいは液状を成し、接着作業中に硬化することにより、接着作業の完了後においては固体状を成す硬化性の部材(以下、「硬化性第二部材」と称す場合がある)であってもよい。
固体状第二部材は、第一部材と同様にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料であってもよく、被着面近傍部分にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を全く含まない部材(第一部材とは異なる部材)であってもよい。
硬化性第二部材は、接着材として機能するものであってもよい。この場合、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の硬化物と、硬化性第二部材の硬化物とを強固に接着できる。これに加えて、硬化性第二部材をその他の固体部材(以下、「第三部材」と称す場合がある)との接着にも利用できる。たとえば、硬化性第二部材が、第三部材の表面に対して強固に接着する性質を有する部材であれば、第一部材側に本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を付与し、第三部材側に硬化前の硬化性第二部材を付与して接着を行うことにより、第一部材と第三部材とを強固に接着することができる。第三部材は公知の固体部材であれば特に制限無く利用できるが、通常は、被着面近傍部分がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料ではない部材(第一部材とは異なる部材)を利用することが好ましい。なお、第一部材、第二部材および第三部材の詳細については後述する。
具体的な接着の手順は、接着対象物やポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物の組成に応じて適宜決定できる。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物が、重合開始剤の全成分を含有しているポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材である場合、次のような手順で接着を行うことができる。
接着対象物として第一部材のみを用いる場合は、たとえば、接着材を第一部材の表面に塗布した後、接着材を硬化させればよい。重合開始剤として熱重合開始剤あるいは光重合開始剤を用いている場合は、塗布後に加熱あるいは光照射により接着材を硬化させることができる。また、重合開始剤として化学重合開始剤を用いている場合は、塗布直前に化学重合開始剤の全成分が配合されるように混合した接着材を第一部材の表面に塗布すればよい。この場合、塗布後時間が経過することによって接着材を硬化させることができる。
接着対象物として第一部材および固体状第二部材を用いる場合は、たとえば、接着材を第一部材あるいは固体状第二部材の少なくとも一方の部材の表面に塗布した後、第一部材と固体状第二部材とを接着材の塗膜層を介して接触させ、その後、接着材を硬化させればよい。
接着対象物として第一部材および硬化性第二部材を用いる場合は、たとえば、接着材を第一部材の表面に塗布した後、さらに硬化性第二部材を塗布し、接着材と硬化性第二部材とを同時に硬化させる1ステップの硬化処理を実施してもよいし、接着材の塗布と硬化とを順次行った後に、硬化性第二部材の塗布と硬化とを順次を行う2ステップの硬化処理を実施してもよい。硬化処理のタイミング、回数、硬化方法(熱硬化、光硬化、化学硬化)は、接着材および硬化性第二部材に配合される重合開始剤の種類に応じて適宜選択できる。
また、第三部材をさらに用いる場合は、たとえば、接着材を第一部材の表面に塗布し、硬化性第二部材を第三部材の表面に塗布した後、第一部材の接着材が塗布された面と第三部材の硬化性第二部材が塗布された面とを接触させ、その後、接着材および硬化性第二部材を硬化させればよい。この場合、第一部材と第三部材とを接触させる前に、接着材および硬化性第二部材のいずれか一方の部材を先に硬化させ、第一部材と第三部材とを接触させた後に他方の部材を硬化させることもできる。
また、第一部材の表面に接着材と硬化性第二部材とをこの順に塗布した後、第一部材の接着材および硬化性第二部材が塗布された面と第三部材とを接触させ、その後、接着材および硬化性第二部材を硬化させてもよい。この場合、第一部材の表面に接着材を塗布して硬化させた後、さらに硬化性第二部材を塗布し、さらに第一部材の硬化性第二部材が塗布された面と第三部材とを接触させた後に硬化性第二部材を硬化させてもよい。あるいは、第三部材の表面に硬化性第二部材と接着材とをこの順に塗布した後、第三部材の硬化性第二部材および接着材が塗布された面と第一部材とを接触させ、その後、硬化性第二部材および接着材を硬化させてもよい。この場合、第三部材の表面に硬化性第二部材を塗布して硬化させた後、さらに接着材を塗布し、さらに第三部材の接着材が塗布された面と第一部材とを接触させた後に接着材を硬化させてもよい。なお、接着材や硬化性第二部材を塗布する部材、タイミングや、これらの部材を硬化させるタイミングは適宜選択することができる。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物が、重合開始剤の全成分を含有していないポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーである場合、次のような手順で接着を行うことができる。
接着対象物として第一部材および硬化性第二部材を用いる場合は、たとえば、プライマーを第一部材の表面に塗布した後、さらに硬化性第二部材を塗布し、その後硬化性第二部材を硬化させればよい。硬化処理のタイミング、硬化方法(熱硬化、光硬化、化学硬化)は、硬化性第二部材に配合される重合開始剤の種類に応じて適宜選択できる。
第三部材をさらに用いる場合は、たとえば、プライマーを第一部材の表面に塗布し、硬化性第二部材を第三部材の表面に塗布した後、第一部材のプライマーが塗布された面と第三部材の硬化性第二部材が塗布された面とを接触させ、その後、硬化性第二部材を硬化させればよい。
また、第一部材の表面にプライマーと硬化性第二部材とをこの順に塗布した後、第一部材のプライマーおよび硬化性第二部材が塗布された面と第三部材とを接触させ、その後、硬化性第二部材を硬化させてもよい。あるいは、第三部材の表面に硬化性第二部材とプライマーとをこの順に塗布した後、第三部材の硬化性第二部材およびプライマーが塗布された面と第一部材とを接触させ、その後、硬化性第二部材を硬化させてもよい。なお、プライマーや硬化性第二部材を塗布する部材、タイミングや、硬化性第二部材を硬化させるタイミングは適宜選択することができる。
本発明の接着性組成物が適用できる、固体状第二部材は公知の固体材料からなる部材であれば特に制限されず、材料組成や部材の構造について、第一部材と固体状第二部材とは、同一であっても異なっていてもよい。固体状第二部材が、第一部材と同様にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を含む部材からなる場合、本実施形態の接着性組成物は、第一部材に対して接着した場合と同様に、固体状第二部材に対しても高い接着性で接着することが可能である。固体状第二部材を構成する材料としては、たとえば、a)ポリアリールエーテルケトン樹脂等の各種の樹脂、樹脂以外の有機物を主成分とする材料(パルプ材など)、金属、第一部材で用いることができるものと同様の無機化合物などの人工的に製造もしくは精製された材料、b)a)に示す材料を2種類以上用いた複合材料、あるいは、c)歯牙や骨などの非人工的な生体材料などであってもよい。
また、硬化性第二部材は、重合開始剤および重合性単量体を少なくとも含むものである。硬化性第二部材を構成する各成分としては、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物で使用可能な材料を適宜組み合わせて利用できる。但し、硬化性第二部材の組成は、通常、接着に実際に使用される本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物とは異なる組成が選択される。なお、硬化性第二部材は重合性単量体を含むため、硬化性第二部材と本発明の接着性組成物とは強固に接着される。また、第三部材もさらに用いる場合、硬化性第二部材に含まれる重合性単量体は、第三部材の表面とも相互作用し、硬化性第二部材と第三部材とを接着することができる。なお、硬化性第二部材の組成は、第三部材の被着部構成材料と親和性の高い組成を選択することが好ましい。
第三部材については公知の固体材料からなる部材であれば特に制限されず、固体状第二部材と同様の部材を用いることができる。しかしながら、第三部材としては、通常、被着部構成材料がポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を含まない部材を用いることが好ましい。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は、如何様な用途にも用いることができる。また、接着対象物としてはその用途に応じた第一部材が少なくとも用いられ、さらに、必要に応じてa)固体状第二部材、b)硬化性第二部材、あるいは、c)硬化性第二部材および第三部材、が用いられる。しかしながら、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物は歯科分野において用いられることが好ましい。
歯科用途においては、口腔内という特に過酷な環境での接着が必要である点から、とりわけ高い接着性が求められ、本発明の接着性組成物を使用することにより、該要求にこたえることが容易となる。また、歯科用途で使用される接着性組成物は、歯質との親和性を特に考慮して設計されている事が多い。歯質とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料は、その表面性状を始めとする性質が大きく異なることから、適切な接着性組成物に求められる性質は同一ではない。そのため、特にポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を歯科用途に用いる際に、高い接着性が得られる接着性組成物が求められている。
また、歯科用途においては、通常歯科治療毎に極少量ずつ接着性組成物を使用するために、長期に渡って変質を起こさずに接着性組成物を保存できること(優れた保存安定性)が求められる。この点から、接着性組成物に(A)重合性官能基を有するカップリング剤と、(D)酸性基含有重合性単量体を配合する際に、保管形態が少なくとも2包装に分割されており、(A)重合性官能基を有するカップリング剤とは異なる包装に、(D)酸性基含有重合性単量体を配合することは、歯科用途に用いる接着性組成物として特に好ましい形態である。
歯科用部材として用いることができる歯科用ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料(歯科用第一部材)としては、少なくとも被着面近傍部分あるいは歯科用第一部材全体が、ポリアリールエーテルケトン樹脂と金属酸化物とを含むポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料によって作製された義歯、人工歯、義歯床、歯科用インプラント、歯冠修復材料、支台築造材料などが挙げられる。また、歯科用部材として用いることができる硬化性第二部材(歯科用硬化性第二部材)としては、歯科用コンポジットレジン、歯科用硬質レジン、歯科用セメント、歯科用ボンディング材、歯科用即時重合レジンなどが挙げられる。さらに、第三部材としては、天然の歯牙、金属材料・セラミック材料・レジン材料などによって作製された義歯、人工歯、義歯床、歯科用インプラント、歯冠修復材料、支台築造材料などの歯科部材などが挙げられる。
本発明の使用方法の例としては、第二部材として歯科用硬質レジンを使用し、歯科用ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料と歯科用硬質レジンを本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を使用してこれらの材料を積層し、歯科補綴物を作製する工程が挙げられる。具体的には、例えば、所望の形状に成形した歯科用ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の表面に本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を適用し、その後その上から硬質レジンを積層・硬化させ、所望の歯科補綴物を作製することができる。
他の例としては、第二部材として歯科用セメントを使用し、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を使用して、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料で作製された補綴物を、歯牙欠損部に装着する工程が挙げられる。具体的には、例えば、予め作製したポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料製補綴物の被着面に、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物を適用し、その上から歯科用セメントを塗布して歯牙に装着することができる。
歯科用部材には、口腔内での使用に耐え得る特性として、噛合せ時に繰り返し加わる圧力に耐え得る機械的強度や、唾液に対する耐水性が求められるが、優れた機械的強度と化学的耐久性を有するポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料からなる歯科用第一部材ではこれらのニーズに十分に応えることが極めて容易である。
なお、歯科用材料、特に歯科用修復材料として用いられるポリアリールエーテルケトン樹脂としては、色調および物性の観点から、主鎖を構成するエーテル基とケトン基とが、エーテル・エーテル・ケトンの順に並んだ繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン、もしく、エーテル・ケトン・ケトンの順に並んだ繰り返し単位を有するポリエーテルケトンケトンである事が用いることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中に示した略号、称号については以下のとおりである。
[カップリング剤]
<シランカップリング剤>
・MPS:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・MDS:ω−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン
・MBS:3−(3−メトキシ−4−メタクリロイルオキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン
[ラジカル重合性単量体]
<分子内に2以上の重合性官能基を有し、酸性基を含有しない重合性単量体>
・bisGMA:2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・UDMA:1,6−ビス(メタクリロイルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン
<分子内に2以上の重合性官能基を有する、酸性基含有重合性単量体>
・PM2:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート
<分子内に1つのみの重合性官能基を有し、酸性基を含有しない重合性単量体>
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
<分子内に1つのみの重合性官能基を有する、酸性基含有重合性単量体>
・PM1:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
・MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
[重合開始剤]
<有機過酸化物>
・TMBPO:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
<+IV価のバナジウム化合物>
・BMOV:ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)
表1及び2に各接着材組成物の組成を、表3に各プライマー組成物の組成を示す。
Figure 2016145327
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ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料としては、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(ダイセルエボニック社製:VESTAKEEP M2G)と、金属酸化物としてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理をした球状シリカ(平均粒径1.0μm)を、ポリエーテルエーテルケトン樹脂70質量部に対して金属酸化物が30質量部となるように混合したものを用いた。混合方法は、以下のとおりである。まず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂と金属酸化物を所定の量計量し、これを混練ラボプラストミル(東洋精機社製)へ投入して、試験温度370℃、回転数100rpmの条件で5分間溶融混練を行った後に、溶融混練物を回収した。
各試験方法については以下のとおりである。
(引っ張り接着強さ測定)
上記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を射出成形により厚さ約2mmの板状に成形して被着体とした。この被着体の被着面を#800の耐水研磨紙で磨いた後にサンドブラスト処理(サンドブラスト装置を使用して粒径約50μmのアルミナ粒子を約0.2MPaの圧力で10秒間吹き付けた)にて粗ぞう化を行った。その後、水に浸して超音波に5分間晒し、続いてアセトンに浸して超音波に5分間晒すことで洗浄を行った。次いで、被着面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付けた。
その後、接着性組成物(保管形態が2包装以上に分割されているものは全成分を混合後)をこの穴に塗布し、10秒間静置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。その上に歯科用セメント材(ビスタイトII、トクヤマデンタル社製)を塗布し、さらにその上にステンレス製アタッチメントを圧接することで、接着試験片を作製した。上述の接着試験片を37℃で24時聞保持した後、引張り試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所製)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minにて引っ張り、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物との引っ張り接着強さを測定した。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物との引っ張り接着強さの測定は、各実施例あるいは各比較例につき、各種試験片4本についてそれぞれ測定し、平均値と標準偏差(S.D.)を求めた。
(接着剤層厚み)
上記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料を射出成形により厚さ約2mmの板状に成形して被着体とした。この被着体の被着面を#800の耐水研磨紙で磨いた後にサンドブラスト処理(サンドブラスト装置を使用して粒径約50μmのアルミナ粒子を約0.2MPaの圧力で10秒間吹き付けた)にて粗ぞう化を行った。その後、水に浸して超音波に5分間晒し、続いてアセトンに浸して超音波に5分間晒すことで洗浄を行った。その後、被着体表面に接着性組成物を塗布し、10秒間静置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。その後、接着性組成物の上に歯科用セメント材(ビスタイトII、トクヤマデンタル社製)を塗布し、さらにその上に歯科用硬質レジン(トクヤマデンタル社製:パールエステ)を硬化させて作製したアタッチメントを圧接することで、試験片を作製した。上述の試験片を37℃で24時聞保持した後、ダイヤモンドカッターを用いて被着面に垂直に切断して接着部位の断面を露出させた。この接着部位を#3000の耐水研磨紙で磨いた後、レーザー顕微鏡(キーエンス社製)で接着性組成物の層の厚さを接着剤層厚みとして測定した。
<実施例1>
(A)重合性官能基を有するカップリング剤成分としてMPSを0.1g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分としてbisGMAを2.94g、3Gを1.96g、重合開始剤成分としてTMBPOを0.05g、(C)揮発性溶媒成分としてアセトンを10g、を攪拌混合し、A液とした。
(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分として、bisGMAを2.04g、3Gを1.36g、(D)酸性基を含有する重合性単量体成分としてPM1を0.8g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分且つ(D)酸性基含有重合性単量体成分としてPM2を0.8g、重合開始剤成分としてBMOVを0.05g、(C)揮発性溶媒成分としてアセトンを10g、を攪拌混合し、B液とした。
使用直前にA液とB液を同量採取混合しポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を得て、素早く試験に使用した。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の組成及び混合前のA液、B液の組成を表1に示す。
該ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を使用して、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さと接着剤層厚みを測定した。結果を表4に示す。
<実施例2、3>
表1に示す組成に変更した以外は、実施例1に準じて、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を調製し、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さと接着剤層厚みを測定した。結果を表4、表6に示す。
<実施例4〜13、比較例1〜3>
表1及び2に示す組成に変更した以外は、実施例1に準じて、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を調製し、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さを測定した。結果を表4に示す。
<実施例14>
(A)重合性官能基を有するカップリング剤成分としてMPSを0.4g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分としてbisGMAを2.76g、3G1.84g、(C)揮発性溶媒としてアセトンを25g、を攪拌混合し、A液とした。
(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分として、bisGMAを2.04g、3Gを1.36g、(D)酸性基含有重合性単量体成分としてPM1を0.8g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分且つ(D)酸性基含有重合性単量体成分としてPM2を0.8g、(C)揮発性溶媒成分としてアセトンを25g、を攪拌混合し、B液とした。
使用直前にA液とB液を同量採取混合しポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを得て、試験に使用した。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーの組成及び混合前のA液、B液の組成を表3に示す。
該ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを使用して、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さと接着剤層厚みを測定した。結果を表5、表6に示す。
<実施例15>
表3に示す組成に変更した以外は、実施例1に準じて、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを調製し、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さと接着剤層厚みを測定した。結果を表5、表6に示す。
<実施例16>
(A)重合性官能基を有するカップリング剤成分としてMPSを0.4g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分としてbisGMAを27.6g、3G1.84g、(C)揮発性溶媒としてアセトンを25g、を攪拌混合し、A液とした。
(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分として、bisGMAを2.04g、3Gを1.36g、重合開始剤成分としてBMOVを0.001g、(D)酸性基を含有する重合性単量体成分としてPM1を0.8g、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体成分且つ(D)酸性基含有重合性単量体成分としてPM2を0.8g、(C)揮発性溶媒成分としてアセトンを25g、を攪拌混合し、B液とした。
使用直前にA液とB液を同量採取混合しポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを得て、試験に使用した。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーの組成及び混合前のA液、B液の組成を表3に示す。なお、本系には重合開始剤成分の一部成分としてBMOVが添加されているが、これ単独では重合開始剤として働かず重合反応が起こらないため、本組成物はポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーとして用いられる。
該ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを使用して、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さを測定した。結果を表5に示す。
<比較例4〜6>
表3に示す組成に変更した以外は、実施例1に準じて、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを調製し、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さを測定した。結果を表5に示す。
(評価結果)
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を使用した実施例1〜13及び比較例1〜3のポリエーテルエーテルケトン樹脂材料に対する引っ張り接着強さの測定結果を表4に示す。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを使用した実施例14〜16及び比較例4〜6のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料に対する引っ張り接着強さの測定結果を表5に示す。実施例2、3のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材及び実施例14,15のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを使用した時の接着剤層厚みの測定結果を表6に示す。
Figure 2016145327
Figure 2016145327
Figure 2016145327
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材を使用した実施例1〜13は、カップリング剤を含有していない比較例1、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%未満である比較例2、3の本発明のものではない接着材を使用した場合と比較して、全て高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量の揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、同一種類のカップリング剤と重合性単量体を使用しているが配合量が異なる実施例1〜5を比較すると、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の60質量%以上であり、カップリング剤の配合量が全重合性単量体10質量部に対しての2〜20質量部の範囲である実施例2〜4は、カップリング剤の配合量が全重合性単量体100質量部に対して2質量部未満である実施例1及び20質量部を超える実施例5と比較して高い接着強さを示した。また、カップリング剤の配合量が全重合性単量体10質量部に対しての3〜10質量部の範囲である実施例2、3は、カップリング剤の配合量が全重合性単量体100質量部に対して10質量部を超える実施例4と比較して高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、重合性単量体組成が異なる実施例5、6を比較すると、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の60質量%以上である実施例5は、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の60質量%未満である実施例6と比較して高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と重合性単量体と重合開始剤を配合し、揮発性溶媒の有無が異なる実施例5、7を比較すると、揮発性溶媒を配合した実施例5は揮発性溶媒を配合していない実施例7と比較して高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、重合性単量体組成が異なる5、8を比較すると、酸性基含有重合性単量体を配合した実施例5は、酸性基含有重合性単量体を配合していない実施例8と比較して高い接着強さを示した。酸性基含有重合性単量体を含有していない実施例8では、カップリング剤の加水分解が十分に進行せず、カップリング剤を配合した効果が十分に得られなかったためと推定される。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、重合性単量体組成が異なる2、10、11を比較すると、分子内に2以上の重合性官能基を有し、かつ水素結合性官能基を有する重合性単量体(bisGMA、UDMA、PM2)を全重合性単量体の20質量%以上配合した実施例2、10は、分子内に2以上の重合性官能基を有し、かつ水素結合性官能基を有する重合性単量体(bisGMA、UDMA、PM2)を全重合性単量体の20質量%以上配合していない実施例11と比較して高い接着強さを示した。更に、分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環とを有する重合性単量体の配合量が全重合性単量体の15質量%〜70質量%である実施例2は、分子内に2以上の重合性官能基と水素結合性官能基と芳香環とを有する重合性単量体を配合していない実施例10、11と比較して高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と重合性単量体と揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、重合性単量体の組成のうち酸性基含有重合性単量体の種類のみがことなる実施例4、9を比較すると、酸性基含有重合性単量体の種類のかかわらず、同等の接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材について、同一同量のカップリング剤と重合性単量体と揮発性溶媒と重合開始剤を配合し、カップリング剤の種類のみが異なる実施例2、12、13を比較すると、カップリング剤の種類にかかわらず、同等の接着強さを示した。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーを使用した実施例14〜16は、カップリング剤を含有していない比較例4、分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%未満である比較例5、6の本発明のものではないプライマーを使用した場合と比較して、全て高い接着強さを示した。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーについて、同一同量のカップリング剤と揮発性溶媒と重合開始剤と重合性単量体を配合し、化学重合開始剤成分の一部成分としての重合開始剤成分であるBMOVの配合の有無が異なる実施例14、16を比較すると、BMOVを配合した実施例16は配合していない実施例14と比較して高い接着強さを示した。本試験で使用した歯科用セメント材であるビスタイトIIは、化学重合開始剤成分の一部成分としての重合開始剤成分として過酸化物であるBPOを含有しており、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料の被着面にプライマーを塗布し、その上にビスタイトIIを塗付した際に、歯科用セメント材中のBPOがプライマー中へと浸透し、プライマー中のBMOVとBPOの反応により化学重合開始剤として働き、プライマーの重合性単量体の重合性が向上したため、接着強さが向上したものと推定される。
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材である実施例1〜13と、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーである実施例14〜16を比較すると、重合開始剤と揮発性溶媒の配合量以外の組成が同一である場合は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材の方が高い接着強さを示しており、接着強さの観点からは接着材が好ましい結果であった。一方、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材である実施例2,3とポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマーである実施例14,15にて、接着剤層(接着性組成物の層)厚みを比較すると、実施例14,15の方が接着剤層が薄く、接着剤層厚みの観点からはプライマーが好ましい結果であった。なお、本検討において接着剤層厚みが1μm未満となっているものは、接着剤層が非常に薄く計測が困難であったことを意味する。

Claims (11)

  1. (A)重合性官能基を有するカップリング剤、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含有し、(B)分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体が全重合性単量体の40質量%以上であるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  2. (A)重合性官能基を有するカップリング剤が下記一般式(I)
    Figure 2016145327
    (一般式(I)において、Mは金属元素、Xは水酸基(OH)もしくは加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基、Yは重合性官能基を有する官能基、ZはX,Yに該当しないその他の官能基である。また、m、nはそれぞれ独立に1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数であり、m+n+lは金属元素Mの原子価と一致する。)
    に示される構造をしているものである請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  3. 全重合性単量体100質量部に対して、(A)重合性官能基を有するカップリング剤の配合量が、1〜30質量部の範囲である請求項1または2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  4. (C)揮発性溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  5. 重合性官能基を有するカップリング剤および分子内に2以上の重合性官能基を有する重合性単量体の重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  6. (A)重合性官能基を有するカップリング剤が一般式(I)中のXが加水分解によって金属元素Mに直接水酸基(OH)が結合するM−OH構造を生成する官能基であり、且つ(D)酸性基含有重合性単量体を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  7. 歯科用である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアリールエーテルケトン樹脂材料用接着性組成物。
  8. 請求項1〜7に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物からなるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用プライマー。
  9. 重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
  10. 請求項9に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物からなるポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着材。
  11. 保管形態が、少なくとも2包装に分割されており、(A)重合性官能基を有するカップリング剤と(D)酸性基含有ラジカル重合性単量体とが別々の包装に配合された、請求項6に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合体材料用接着性組成物。
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