本発明の第1実施形態および第2実施形態を図面を参照して以下に説明する。
図1は、車両1の車室2内の前部を示す斜視図であって、車室2内には前部にインストルメントパネル3が設けられている。このインストルメントパネル3には、ステアリングホイール4に連結された図示略のステアリングシャフトを支持するステアリングサポートメンバ5が車幅方向に沿って設けられており、このステアリングサポートメンバ5の両端が車体骨格部材である図示略のフロントピラーに固定される。このステアリングサポートメンバ5は、剛性の高い円筒状の鋼材からなっており、左右のフロントピラーを結ぶことで車体剛性を高める機能も有している。
そして、ステアリングサポートメンバ5には、運転席10側となる左側に図2にも示すように運転席10用の第1実施形態の可動ニーボルスタ11が設けられており、助手席12側となる右側に助手席12用の第2実施形態の可動ニーボルスタ13が設けられている。
図1に示すように、インストルメントパネル3の運転席10側に位置する第1実施形態の可動ニーボルスタ11は、インストルメントパネル3の下部に設けられて運転席10に着席した運転者の下肢を保護する。この運転席10用の可動ニーボルスタ11は、車室2内の意匠面を構成し、運転席10に着席した運転者の下肢に対向する対向面部14をインストルメントパネル3から出没させて運転者の下肢に対し可逆的に進退させるものである。ここで、図1では、対向面部14が運転者に対し前進した状態を二点鎖線で示している。なお、インストルメントパネル3における可動ニーボルスタ11の上側には車両後方に突出するコラムカバー15が設けられ、このコラムカバー15の車両後方側にステアリングホイール4が設けられている。よって、対向面部14は、コラムカバー15の車両前方に位置する。
図3は、可動ニーボルスタ11の意匠面を構成する対向面部14を有する図1に示すカバー17を除く機構構成を示す斜視図である。可動ニーボルスタ11は、ステアリングサポートメンバ5に車幅方向に所定の間隔をあけて固定される複数具体的には一対の衝撃吸収部材25を有している。これらの衝撃吸収部材25は、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、全体として面状をなしステアリングサポートメンバ5の運転者から見て裏側に固定されて下方に延出する面部26と、この面部26の下縁部から湾曲しつつ車室内側に折り返す湾曲部27と、全体として面状をなして湾曲部27の面部26とは反対側の縁部から上方に延出する面部28とを有しており、側面視が略U字状をなしている。
面部26は、ステアリングサポートメンバ5に上端部において固定されるとともにステアリングサポートメンバ5から下方に延出する上板部30と、上板部30の下縁部から屈曲して車室内側に若干延出する段板部31と、段板部31の車室内側の端縁部から屈曲して下方に延出する下板部32とを有しており、下板部32の下縁部に湾曲部27が繋がっている。そして、面部26には、上板部30、段板部31および下板部32にかけて、車幅方向中央に、上方に開口する切欠状の逃げ部33が形成されている。面部28の車幅方向中央には、上部側に偏って穴部35が形成されている。
ここで、衝撃吸収部材25には、強度を向上するための一対の段差状のビード部36が、それぞれ車幅方向の位置は一定で、面部26の段板部31における逃げ部33側から、下板部32、湾曲部27および面部28まで延在形成されている。また、湾曲部27および面部28には、一対のビード部36の間位置にも強度を向上するための凸状のビード部37が穴部35の手前位置まで形成されている。
また、可動ニーボルスタ11は、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材25の取付位置における車室内側に固定されるとともに、下方に延出して対応する衝撃吸収部材25に固定される一対の連結部材40を有している。これら一対の連結部材40も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、対応する衝撃吸収部材25の上板部30の段板部31側に固定される。これら連結部材40も、対応する衝撃吸収部材25の逃げ部33と車幅方向の位置を合わせて下方に開口する切欠部41が車幅方向中央に形成されており、正面視が略コ字状をなしている。
さらに、可動ニーボルスタ11は、板状の鋼材がプレス成形されて形成され、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材25の取付位置における下面に固定されるとともに、車室内側に延出して対応する衝撃吸収部材25の面部28の穴部35よりも上側に固定される一対の連結部材43を有している。
一対の衝撃吸収部材25には、それぞれの車室内側の面部28の他方の面部26側に、板状の鋼材がプレス成形されて形成される支持台部45が固定されている。これらの支持台部45は、面部28の穴部35よりも湾曲部27側に固定される図示略の底板部と、底板部の車幅方向両側から立ち上がる一対の壁板部47とを有しており、一対の壁板部47の湾曲部27側には、車幅方向に沿って回動軸48が架設されている。また、一対の壁板部47は、面部28の穴部35の両側に位置するように底板部よりも湾曲部27とは反対側に延出しており、これらの延出部分にも車幅方向に沿って回動軸49が架設されている。この回動軸49は湾曲部27から離間した位置に設けられている。
一対の支持台部45の両回動軸48には、意匠面を構成する対向面部14を有する図1に示すカバー17を保持する保持部材52が車室内側に延出した状態で回動可能に支持されている。この保持部材52も、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、両側の回動軸48の相反側に支持され、各回動軸48から車室内側に延出する一対の延出板部53と、これら延出板部53の延出先端側同士を結ぶ連結板部54と、連結板部54から各延出板部53と対向するように車室外側に延出する一対の対向板部55とを有している。車幅方向一側の延出板部53および対向板部55には、車幅方向に沿う回動軸56が架設されており、車幅方向他側の延出板部53および対向板部55にも、車幅方向に沿う回動軸56が架設されている。ここで、連結板部54にカバー17が取り付けられると、その対向面部14が連結板部54に沿う姿勢となる。
そして、保持部材52の車幅方向一側の回動軸56とこれと同側の支持台部45の回動軸49とを結ぶように駆動部58が配置されており、保持部材52の車幅方向他側の回動軸56とこれと同側の支持台部45の回動軸49とを結ぶように駆動部58が配置されている。その際に、これら一対の駆動部58は、それぞれ、配設される側の衝撃吸収部材25に対し外側にある回動軸56から面部28の穴部35を通ってこの衝撃吸収部材25の内側に挿入されて衝撃吸収部材25の内側にある回動軸49に連結されている。つまり、駆動部58は一部が衝撃吸収部材25内に位置するように設けられている。
これら一対の駆動部58は、それぞれ、シリンダ60と、シリンダ60内に設けられ、図示略のリードスクリュを介して導入される電動モータM1(図6参照)の回転力でシリンダ60に対し進退するシャフト61とを有する剛体であり、全体として伸縮可能になっている。駆動部58は、シリンダ60が衝撃吸収部材25側の回動軸49に回動可能に連結され、シャフト61が保持部材52の回動軸56に回動可能に連結されていて、シリンダ60に対しシャフト61の進退で保持部材52つまり対向面部14を回動させて運転者に対して進退させる。つまり、一対の駆動部58は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト61を最も後退させた縮長状態では保持部材52を車室外側に位置させることになり、このとき、保持部材52およびこれに固定されたカバー17の対向面部14は、図3に二点鎖線、図4に実線で示すように運転者に対して最も後退した待機位置に位置し、対向面部14は図4に示すように車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト61を最も前進させた伸長状態では保持部材52を車室内側に位置させることになり、このとき、保持部材52およびこれに固定されたカバー17の対向面部14は図1,図4に二点鎖線、図3に実線で示すように運転者側に最も前進した突出端位置に位置し、対向面部14は図4に示すように車室内側に向けて待機位置よりも水平に近い角度で前上がりの姿勢となる。なお、カバー17と保持部材52とが運転者に対し対向面部14を進退させる回動部62を構成しており、上記構成から、この回動部62がその車両前方側に回動中心である回動軸48を配置している。
このような運転席10側の可動ニーボルスタ11は、インストルメントパネル3に格納され対向面部14が運転者に対して最も後退した待機位置と、回動部62が車両前側の回動軸48を中心に下向きに回転し対向面部14を運転者に向け前進させた突出端位置との間で移動可能となっている。そして、突出端位置にある状態で、車両衝突時等にこの対向面部14で運転者の下肢を支承する。つまり、運転席10の運転者は図4に示すペダル63に足を載せていることから車両前方への移動時に足を逆V字状に角度を小さくする方向に曲げることになるが、このように曲がることで足は上方向に移動することになるため、水平に近い角度でインストルメントパネル3の下方に突出した対向面部14が足の上方向への移動に対し衝撃を良好に吸収する。
具体的に、車両衝突時に運転者の膝の上昇で対向面部14が荷重を受けると、対向面部14がその回動軸56に一端側で連結された駆動部58を押圧することになり、その結果、駆動部58の他端側に連結された回動軸49を支持する支持台部45およびこれが固定された衝撃吸収部材25の車室内側の面部28が車室外側に荷重を受けることになる。この荷重が所定値を超えると、駆動部58に連結された衝撃吸収部材25の車室内側の面部28が、下肢からの入力方向において相対する車室外側の面部26に向けて移動し、これら面部26を繋ぐ湾曲部27を塑性変形で曲げるとともに連結部材43を塑性変形で曲げて衝撃を吸収することになる。このとき、車室内側の面部28とともに車室外側の面部26に近づく駆動部58が車室外側の面部26に形成された逃げ部33に挿通することでこの面部26に当接することなくストロークする。
図1に示すように、インストルメントパネル3の助手席12側に位置する第2実施形態の可動ニーボルスタ13も、インストルメントパネル3の下部に設けられて助手席12に着席した乗員の下肢を保護する。この可動ニーボルスタ13は、車室2内の意匠面を構成し、助手席12に着席した乗員の下肢に対向する対向面部70をインストルメントパネル3から出没させてこの乗員の下肢に対し可逆的に進退させるものである。ここで、図1では、対向面部70が乗員に対し後退した状態を実線で、前進した状態を二点鎖線で示している。この第2実施形態の可動ニーボルスタ13は図2にも示すように助手席12側となる右側に設けられている。
図5は、第2実施形態の可動ニーボルスタ13の意匠面を構成する対向面部70を有する図1に示すカバー71を除く機構構成を示す斜視図である。可動ニーボルスタ13は、ステアリングサポートメンバ5に車幅方向に所定の間隔をあけて固定される複数具体的には一対の衝撃吸収部材75を有している。これらの衝撃吸収部材75は、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、全体として面状をなしステアリングサポートメンバ5の乗員から見て表側に固定されて車室内側(乗員側)に延出する面部76と、この面部76の車室内側の縁部から湾曲しつつ車室外側に折り返す湾曲部77と、全体として面状をなして湾曲部77の面部76とは反対側の縁部から車室外側に延出する面部78とを有しており、側面視が略U字状をなしている。
面部76の湾曲部77側には、車幅方向中央に、穴状の逃げ部80が形成されている。
また、面部78の湾曲部77とは反対側には、車室外側に開口する切欠部81が車幅方向中央に形成されている。
ここで、衝撃吸収部材75には、強度を向上するための凸状のビード部82が、車幅方向の中央部に、面部76の逃げ部80よりも車室外側から、湾曲部77および面部78まで延在形成されている。
また、可動ニーボルスタ13は、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材75の取付位置における下側に固定されるとともに、車室内側に延出して対応する衝撃吸収部材75に固定される一対の連結部材85を有している。これらの連結部材85も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが対応する衝撃吸収部材75の面部76の逃げ部80よりも車室外側に固定される。これら連結部材85には、車幅方向の中央に、車室内側に開口する切欠部86が形成されており、平面視略コ字状をなしている。
さらに、可動ニーボルスタ13は、各衝撃吸収部材75の上側の面部76に固定されるとともに、連結部材85の切欠部86を通って下方に延出して下側の面部78に固定される一対の連結部材88を有している。これらの連結部材88も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、下部が下端側ほど幅広となる形状をなしており、この部分の車幅方向の中央に、下側に開口する切欠部89が形成され、正面視略逆Y字状をなしている。
一対の衝撃吸収部材75の下側の面部78の上面には、板状の鋼材がプレス成形されて形成される支持台部91がそれぞれ固定されている。支持台部91は、面部78の湾曲部77側に車幅方向に沿って立設される中間板部92と、この中間板部92の車幅方向両側から屈曲して車室外側に延出する一対の壁板部93と、各壁板部93の下縁部から相互離間方向に延出して面部78の切欠部81よりも湾曲部77側に固定される一対(一方のみ図示)の底板部94と、底板部94の車幅方向両側縁部から下方に屈曲し車室内側に延出する一対の支持板部95とを有している。一対の壁板部93には、車幅方向に沿う回動軸96が架設されており、一対の支持板部95にも、車幅方向に沿う回動軸97が架設されている。
一対の支持台部91の両回動軸97には、対向面部70の意匠面を構成するカバー71を保持する保持部材100が回動可能に連結されている。この保持部材100も、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、両側の回動軸97のそれぞれの両端側に連結されて車室内側に延出する二対の延出板部101と、これら延出板部101の延出先端側同士を結ぶとともに車室外側に延出する主板部102と、主板部102の車室外側から上方に延出する二対の支持板部103とを有している。車幅方向一側の一対の支持板部103には、車幅方向に沿って回動軸104が架設されており、図示は略すが車幅方向他側の一対の支持板部103にも、車幅方向に沿って回動軸104が架設されている。ここで、主板部102にカバー71が取り付けられると、その対向面部70が主板部102に沿う姿勢となる。
そして、保持部材100の車幅方向一側の回動軸104とこれと同側の支持台部91の回動軸96とを結ぶように駆動部108が配置されており、保持部材100の車幅方向他側の回動軸104とこれと同側の支持台部91の回動軸96とを結ぶように駆動部108が配置されている。その際に、これら一対の駆動部108は、それぞれ対応する衝撃吸収部材75に対し外側にある回動軸104から面部78の切欠部81を通って衝撃吸収部材75の内側に挿入されて衝撃吸収部材75の内側の回動軸96に連結されている。つまり、駆動部108は一部が衝撃吸収部材75内に位置するように設けられている。
これら一対の駆動部108は、それぞれ、シリンダ110と、シリンダ110内に設けられ図示略のリードスクリュを介して導入される電動モータM2(図6参照)の回転力でシリンダ110に対し進退するシャフト111とを有する剛体であり、全体として伸縮可能になっている。駆動部108は、シリンダ110が衝撃吸収部材75側の回動軸96に回動可能に連結され、シャフト111が保持部材100の回動軸104に回動可能に連結されていて、シリンダ110に対しシャフト111の進退で保持部材100を回動させて乗員に対して進退させる。つまり、一対の駆動部108は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト111を最も後退させた縮長状態では保持部材100を図5に二点鎖線で示すように車室外側に位置させることになり、このとき、保持部材100に保持されたカバー71の対向面部70は乗員に対して最も後退した待機位置に位置し、車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト111を最も前進させた伸長状態では図5に実線で示すように保持部材100を車室内側に位置させることになり、このとき、保持部材100に保持されたカバー71の対向面部70は乗員に対して最も前進した位置に位置し、車室内側に向けて待機位置よりも鉛直に近い角度で前上がりの姿勢となる。なお、カバー71と保持部材100とが運転者に対し対向面部70を進退させる回動部112を構成しており、上記構成から、この回動部112がその車両後方側に回動中心である回動軸97を配置している。
このような助手席12用の可動ニーボルスタ13は、インストルメントパネル3に格納され対向面部70が助手席12の乗員に対して最も後退した待機位置と、回動部112が車両後側の回動軸97を中心に回転し、対向面部70を乗員に向け前進させた突出端位置との間で移動する。そして、突出端位置にある状態で、車両衝突時等にこの対向面部70で乗員の下肢を支承する。つまり、助手席12の乗員はペダルに足を載せていないことから車両前方への移動時に足をそのまま前方に移動させることになるため、鉛直に近い角度でインストルメントパネル3の下方に突出した対向面部70が足の車両前方への移動に対し衝撃を良好に吸収する。
具体的に、車両衝突時に乗員から荷重を受けると、保持部材100がその回動軸104に一端側が連結された駆動部108を押圧することになり、その結果、駆動部108の他端側を回動軸96で支持する支持台部91およびこれが固定された衝撃吸収部材75の下側の面部78が前上がりに荷重を受けることになる。この荷重が所定値を超えると、駆動部108に連結された衝撃吸収部材75の面部78が、下肢からの入力方向つまり前上がり方向において相対する上側の面部76に向けて移動し、これら面部76,78を繋ぐ湾曲部77を塑性変形で曲げるとともに連結部材88を塑性変形で曲げて衝撃を吸収することになる。このとき、下側の面部78とともに上側の面部76に近づく駆動部108が上側の面部76に形成された逃げ部80に挿通することでこの面部76に当接することなくストロークする。
上記した運転席10用の第1実施形態の可動ニーボルスタ11および助手席12用の第2実施形態の可動ニーボルスタ13は、これらに共通の図6に示すECU115(制御手段)でそれぞれの電動モータM1,M2が個別に制御される。
第1実施形態の可動ニーボルスタ11は、電動モータM1の回転速度および回転位置を検出可能な回転センサSA1と、電動モータM1の電流値を検出可能な電流検出センサ(電流検出手段)SB1と、運転者の運転席10への着座を検出する着座センサSC1と、運転席10に着座した運転者の図示略のシートベルト装置の着脱を検出するシートベルト装着センサSD1とを有している。そして、これら回転センサSA1、電流検出センサSB1、着座センサSC1およびシートベルト装着センサSD1の検出信号がECU115に送られる。
第2実施形態の可動ニーボルスタ13は、電動モータM2の回転速度および回転位置を回転パルスで検出する回転センサSA2と、電動モータM2の電流を検出する電流検出センサ(電流検出手段)SB2と、乗員の助手席12への着座を検出する着座センサSC2と、助手席12に着座した乗員の図示略のシートベルト装置の着脱を検出するシートベルト装着センサSD2とを有している。そして、これら回転センサSA2、電流検出センサSB2、着座センサSC2およびシートベルト装着センサSD2の検出信号がECU115に送られる。
ここで、回転センサSA1は電動モータM1の所定回転角度毎の回転パルスを検出するものであり、回転センサSA2も電動モータM2の所定回転角度毎の回転パルスを検出するものであって、ECU115は、それぞれの回転パルスに基づいて回転速度および回転位置を検出する。電流検出センサSB1,SB2は、抵抗からなり、ECU115は、電流が流れた際の電圧をモニタして電流値を検出する。そして、第1実施形態の可動ニーボルスタ11および第2実施形態の可動ニーボルスタ13に共通で車室内で警報を発生させるブザー等の警報装置116がECU115に接続されている。
ECU115は、運転席10用の第1実施形態の可動ニーボルスタ11について、回転センサSA1、電流検出センサSB1、着座センサSC1およびシートベルト装着センサSD1の検出信号に基づいて電動モータM1を制御することになり、助手席12用の第2実施形態の可動ニーボルスタ12についても、回転センサSA2、電流検出センサSB2、着座センサSC2およびシートベルト装着センサSD2の検出信号に基づいて電動モータM2を制御することになる。ここで、第1実施形態の可動ニーボルスタ11と第2実施形態の可動ニーボルスタ13とは同様に制御されるため、運転席10用の第1実施形態の可動ニーボルスタ11を例にとり、その制御内容を運転者の乗車時の流れに沿って説明する。
可動ニーボルスタ11は、運転席10に運転者が着座していない状態、つまり着座センサSC1で乗員の着座が検出されず、且つシートベルト装着センサSD1でシートベルト装置の装着が検出されていない状態では、対向面部14を運転者に対して最も後退させた待機位置で待機している。
この状態から、運転者が運転席10へ着座すると、着座センサSC1が乗員の着座を検出することになり、この検出信号を受けてECU115は、シートベルト装着センサSD1からシートベルト装置の装着の検出信号が出力されないことを条件に、電動モータM1を駆動し、回動部62が車両前側の回動軸48を中心に下向きに回転し対向面部14を運転者側に前進させる。このとき、ECU115は、図7に示すように、電動モータM1の回転開始の時刻t0から所定の初期時間経過した時刻t1までは、回転センサSA1で検出される電動モータM1の回転速度が低速の第1所定値となるようにフィードバック制御しつつ、この間は警報装置116で警報(連続的警報)を発生させる。そして、ECU115は、時刻t1の後、突出端位置に位置する時刻t2までの間は、回転センサSA1で検出される電動モータM1の回転速度が第1所定値よりも高い高速の第2所定値となるように制御する。
このように、ECU115は、前進初期(t0〜t1)は対向面部14を低速で前進させながら前進していることを警報装置116で警告し、その後最も突出端位置で停止するまで(t1〜t2)、対向面部14を比較的高速で前進させる。つまり、対向面部14の速度を漸増させる。
なお、ECU115は、対向面部14の前進中および突出端位置での停止中に、シートベルト装着センサSD1でシートベルト装置の装着が検出されるか、あるいは着座センサSC1で乗員の着座が検出されなくなると、電動モータM1を逆転させて対向面部14を待機位置まで戻すことになる。可動ニーボルスタ11は、運転席10用のシートベルト装置が未装着の状態では突出端位置に前進することになり、その結果、運転者は下肢用のスペースが狭くならないようにシートベルト装置を装着することになる。つまり、可動ニーボルスタ11は、シートベルト装置の装着を促すリマインダ装置としての役割も果たすことになる。
また、ECU115は、電動モータM1の正転による対向面部14の前進中に、回転センサSA1で検出される電動モータM1の実回転速度が制御上許容される許容値を下回った場合、つまり、図8に示すように、時刻t1の後、突出端位置に位置するまでの間に、電動モータM1の回転速度が第2所定値に対し許容範囲を超えて下回った場合には、その時点tc1で対向面部14が何かに接触したと判断し、電動モータM1を所定の逆転時間、所定の回転速度で逆転させて、対向面部14をその時点tc1での位置から所定距離後退させるとともに、この後退中、警報により前進初期とは異なる警報(断続的警報)を発生させる。
そして、所定の逆転時間経過後の時刻tc2に、ECU115は、電動モータM1を停止させて、所定の待ち時間の経過を待ち、待ち時間経過後のtc3時点で、再び電動モータM1を正転させる。このとき、突出初期と同様に、所定時間経過する時刻tc4までは、回転センサSA1で検出される電動モータM1の回転速度が低速の第1所定値となるように制御しつつ、この間は警報装置116で警報(連続的警報)を発生させる。そして、ECU115は、時刻tc4の後、突出端位置に位置する時刻tc5までの間に、回転センサSA1で検出される電動モータM1の回転速度が第1所定値よりも高い高速の第2所定値となるように制御する。
このように、ECU115は、対向面部14の前進中に、前進を阻害する状況が生じた場合には、対向面部14を所定距離後退させて、所定時間待ち、再び対向面部14を前進させる動作のリトライを行う。図8においては、2回目のリトライ時に対向面部14が突出端位置に位置する場合を例示しているが、所定回数リトライしても対向面部14が突出端位置に位置しない場合、例えば、対向面部14を待機位置に戻す。
ここで、対向面部14の前進を阻害する状況が生じた場合には、電動モータM1の回転速度が落ちると同時に、フィードバック制御により回転速度を維持しようと電動モータM1への電流値が上がることになる。よって、電動モータM1への電流値が、阻害がない状況下で第2所定値の回転速度を得るための制御上の許容範囲を超えて上回った場合には、その時点tc1で対向面部14が何かに接触したと判断して、上記と同様に、後退、待機およびリトライの制御を行っても良い。さらには、回転速度の低下および電流値の上昇の両方をモニタし、いずれか一方で対向面部14の前進が阻害されたと判断した場合に、上記と同様に、後退、待機およびリトライの制御を行っても良い。
なお、対向面部14が突出端位置に位置する時刻t2よりも所定時間遡った所定時刻から時刻t2までの間、電動モータM1の回転速度を第2所定値よりも低い第3所定値としても良い。これにより、対向面部14の前進終期にも速度を漸減させることになり、その結果、動作に高級感が出て商品性を向上できる。
以上に述べた第1実施形態の可動ニーボルスタ11によれば、回転センサSA1で電動モータM1の回転速度を検出すること、および電流検出センサSB1で電動モータM1の電流値を検出することのいずれか一方で、対向面部70の進退の速度変化を検出することができるため、例えば、対向面部70の待機位置から突出端位置までの間に荷物があって、この荷物で前進が妨げられて速度が低下したときに、これを電動モータM1の回転の変化で検出することができ、状況に応じた制御を行うことができる。
なお、上記において、運転席10における運転者の状況を検出するために、運転者の運転席10への着座を検出する着座センサSC1および運転席10に着座した運転者の図示略のシートベルト装置の着脱を検出するシートベルト装着センサSD1に加えて運転席10用のドアの開閉を検出する開閉センサを併用しても良く、助手席12における乗員の状況を検出するために、乗員の助手席12への着座を検出する着座センサSC2および助手席12に着座した乗員の図示略のシートベルト装置の着脱を検出するシートベルト装着センサSD2に加えて助手席12用のドアの開閉を検出する開閉センサを併用しても良い。