JP2008051749A - 光波干渉測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】干渉縞の濃淡に基づき対象物の形状を測定する光学干渉測定装置において、干渉縞の観測対象領域を自動的に設定する。
【解決手段】ベースプレートと、これの上に置いたブロックゲージの干渉縞画像を複数得る。複数の画像中、2個の画像において、同一位置の画素間の輝度値の差を得、他の2個の画像の組み合わせについても、同様に輝度値の差を得る。これらの差について画素ごとに総和を取り、その総和の値を輝度に対応させた画像を作る。ベースプレートとブロックゲージの境界部分80は、干渉縞が生じないので総和が小さくなり、干渉縞が生じている部分82は、画像間の輝度の差が大きいので総和は大きくなる。この画像に対し、適切な二値化処理を行い、ベースプレートとブロックゲージの境界部分80を抽出する。
【選択図】図6

Description

本発明は、光波干渉を用いた測定装置および測定方法に関し、特に光学楔を移動させて干渉縞を観測する装置および方法に関する。
様々な測定機器の校正において基準として用いられるブロックゲージは、それ自体に、高い寸法精度が要求される。現実的には、ブロックゲージの寸法を、その呼び寸法どおりに作成するのは困難なため、実際に測定を行って得た測定値を表示し、校正時にはこれを利用するようにしている。ブロックゲージの寸法測定は、ブロックゲージの等級に応じて、光波干渉測定を、または比較測定法によって行われる。光波干渉測定法を用いた測定では、ブロックゲージの測定面の中央を測定し、中央寸法、寸法の呼び寸法からの寸法差によりブロックゲージの寸法を示している。
ブロックゲージの寸法を測定する装置として、トワイマン−グリーン型干渉測定装置が知られている。この装置は、被測定物からの反射光と、参照鏡からの反射光を干渉させて、干渉縞(じま)を観測することにより寸法測定を行うものである。具体的には、ベースプレート表面に被測定物となるブロックゲージの一つの測定面を密着させ、ベースプレートの表面と、ブロックゲージの、ベースプレートに密着させた測定面に対向する測定面とからの反射光による干渉縞のずれを観測している。すなわち、ベースプレート表面で反射した光と、ブロックゲージの、ベースプレートの反対側に位置する測定面で反射した光とでは、ブロックゲージの高さ(寸法)に起因して光路長に差が生じ、これが干渉縞のずれと関連してくる。ブロックゲージの寸法Lは、光の波長をλ、干渉縞の整数部をN、干渉縞の濃淡の周期をa、ベースプレートとブロックゲージの干渉縞のずれをbとすれば次式で表される。
L=(λ/2)(N+b/a) ・・・(1)
b/aは端数部と呼ばれ、ベースプレートの干渉縞とブロックゲージの干渉縞との位相のずれとして観測されるが、この位相ずれを目視により読み取るのでは、測定者の癖などのために、高精度化が難しく、また測定者の疲労も大きい。
干渉縞の位相ずれを機械により測定する方法が提案されている。例えば、下記特許文献によれば、光学楔(くさび)を利用する方法が示されている。光学楔は、ガラスなどの透光性の板状部材であって、その厚さが一定の割合で変化しているものである。したがって、光が通過する位置によって、光路長を変化させる、すなわち位相を変化させることができる。光学楔を光路中で、光路に直交する方向に移動させると、厚さの変化に応じて光の位相が変化し、干渉縞が移動する。このときのある点における干渉縞の濃淡変化を検出することにより、干渉縞の濃淡の波形を得ることができ、位相を算出することができる。ベースプレートとブロックゲージの干渉縞の濃淡の変化を検出することで、これらの干渉縞の間の位相ずれを算出している。
また、参照鏡を移動させて光路長を変化させ、これにより干渉縞を移動させて位相ずれを検出する技術が知られている。具体的には、例えば、参照鏡を光路に沿う方向に圧電素子により駆動する。
特許第3351857号明細書
上記特許文献1の干渉測定装置はもちろん、トワイマン−グリーン型干渉測定装置において、ブロックゲージとベースプレートの境界付近は、干渉縞がはっきりとは表れないため、この領域を排除して観測を行う必要がある。このために、ベースプレート上およびブロックゲージ上の、それぞれの干渉縞の観測対象とする領域を、測定者が手動により指定していた。
本発明は、観測の対象領域の指定作業を簡易なものとすることを特徴とする。
本発明の干渉測定装置は、ベースプレートおよび測定物上の干渉縞の画像を、位相を変化させて複数取得する。この複数の干渉縞の画像に基づき、これらの画像におけるベースプレートと測定物の境界を抽出する。この境界に基づき、干渉縞の位相ずれの算出対象となる領域を決定する。
境界の抽出は、取得した複数の画像において同一位置の画素間での、それらの画素輝度の差に基づき行う。境界部分は、干渉縞が明瞭に表れないので、同一位置の画素間の輝度の差が小さい一方、それ以外の部分は、干渉縞があらわれるので輝度の差が大きくなる。これを利用して測定物とベースプレートの境界部分を抽出できる。
また、境界の抽出は、取得した複数の画像それぞれに対しエッジ抽出を行い、抽出された画像と、あらかじめ記憶している境界の代表形状とのパターンマッチングを行い、このマッチング結果に基づき、境界を抽出することにより行う。最もマッチングの評価値が高い画像における、そのときの代表形状の位置に基づき、境界を抽出することができる。
また、境界の抽出は、取得した複数の画像それぞれに対しエッジ抽出を行い、抽出されたエッジ画像を加算し、さらに所定のしきい値により二値化することにより行う。エッジは、干渉縞が明瞭に表れる部分では、位相シフトによる干渉縞の移動に伴い移動するため、複数の画像について分散して表れる。一方で、境界部分では、ベースプレート上の干渉縞と、測定物上の干渉縞がずれを生じているために、その境界部分にエッジが形成される。このため、境界部分には集中的にエッジが形成され、取得した各画像のエッジ部分を加算すると、ベースプレートと測定物の境界を抽出することができる。
ベースプレートと測定物の境界を求めることにより、干渉縞の観測対象領域を自動的に指定することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1には、本実施形態の光学干渉測定装置10の概略構成が示されている。光学干渉測定装置10は、トワイマン−グリーン型の光学系を有し、光源は赤色レーザ光源12(波長633nm)と緑色レーザ光源14(波長543nm)を備え、シャッタ16,18の開閉により、いずれかの光源のレーザを選択することができる。2種の波長の光源12,14を備えているのは、測定可能範囲を広くするためである。すなわち、1種類の波長であれば、(1)式の整数部Nが不明であるため、干渉縞の間隔つまりレーザ光の半波長以内の測定しか行うことができないが、2種の波長にてそれぞれ測定を行い、これらを比較することにより測定範囲を広げることが可能となる。2波長による寸法測定については、例えば特開2000−35309号公報に詳細に記載されている。
シャッタ16が開いているとき、赤色レーザ光源12からの光が偏向ビームスプリッタ20を介して対物レンズ22に送られる。緑色レーザ光源14からの光は、シャッタ18が開いているとき反射鏡24、偏向ビームスプリッタ20を介して対物レンズ22に送られる。赤色レーザによる干渉縞の観測も、緑色レーザによる観測も、同様に行われるものであり、以下の説明においては、これらを区別せずに説明する。
対物レンズ22に達したレーザ光は、ピンホール25、コリメータレンズ26を通過して平行光線となり、反射鏡28によりビームスプリッタ30に送られる。レーザ光は、このビームスプリッタ30により1:1に分割され、一方が、主光路32に沿って測定対象物であるブロックゲージ34とベースプレート36に向かい、他方が、参照光路38に沿って参照鏡40に向かう。ブロックゲージ34とベースプレート36によって反射されたレーザ光と、参照鏡40で反射したレーザ光は、ビームスプリッタ30に戻り、合成されて干渉縞を形成する。干渉縞は、観察レンズ42、ピンホール44を介してCCDカメラ46により撮影される。
ビームスプリッタ30は楔形状となっており、これによって裏面により反射された光は表面により反射された光とは異なる方向に向かう。よって、裏面の反射光による影響を排除することができる。また、参照光路38には位相補償板48が配置される。レーザ光がビームスプリッタ30を通過する際、波長が異なると屈折率が異なるため、ビームスプリッタ裏面における光の通過位置が異なる。これにより、ビームスプリッタ裏面から測定対象物の表面までの主光路32の光路長が、波長が異なると変化する。赤色、緑色のレーザ光を用いる場合、緑色レーザ光の方が屈折率が大きいため、その主光路32は図において右側にずれ、その結果、光路長が長くなる。これに対し、参照光路38上に位相補償板48がなかった場合、参照光路38を進むレーザ光は、屈折することがなく、波長に関わらず同じ光路を通り、光路長は変わらない。この結果、波長が異なると、干渉縞がずれて形成されてしまう。そこで、前述のように参照光路38上に位相補償板48を配置する。より具体的には、ビームスプリッタ30と同じ楔形状のガラスを、平行に配置する。
さらに、主光路32上には光学楔50が配置される。光学楔50は、透光性の材料で板状に形成され、その表裏の面が平行ではなく所定の角度(楔角)をなすものとなっている。この楔角は、本実施形態の場合、2分10秒(0.00063rad)である。光学楔50は、光学楔駆動機構52により主光路32に直交する方向に移動される。このときの移動量は、リニアゲージ54にて検出される。なお、光学楔は、主光路ではなく参照光路に配置することも可能である。
図2は、本実施形態の電装系の概略構成を示すブロック図である。なお、すでに説明した構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。温度センサ56と温度計62は、装置周辺の気温を検出し、これに応じた信号を出力する。気圧センサ58と気圧計64は、装置周辺の気圧を検出し、これに応じた信号を出力する。湿度センサ60と湿度計66は、装置周辺の湿度を検出し、これに応じた信号を出力する。これらの信号は、データ演算処理装置68に送られる。リニアゲージ54の出力、すなわち光学楔50の移動量もデータ演算処理装置68に送られる。モータ駆動回路70は、データ演算処理装置68からの指令に基づき、光学楔駆動機構52の光学楔移動モータ72を駆動して、光学楔50を移動させる。シャッタ駆動回路74は、データ演算処理装置68の指令に基づき、シャッタ16,18の一方を開放し、二つのレーザ光源12,14の選択を行う。CCDカメラ46で撮影された干渉縞の画像は、フレームグラバ76を介してデータ演算処理装置68に送られる。
ブロックゲージの長さを求める式は、熱膨張も考慮した次式が用いられることが多い。
L+ΔL+LαΔt=(λv /2n)(N+b/a) ・・・(2)
ここで、Lはブロックゲージ呼び寸法、ΔLはブロックゲージ製作誤差、αはブロックゲージの熱膨張係数、Δtは標準温度(20℃)からの温度差、λv は、干渉光の真空中の波長、nは干渉光路の空気の屈折率、Nは干渉縞の整数部、b/aは干渉縞の端数部である(図3も参照のこと)。
図3には、CCDカメラ46でとらえた干渉縞の画像が示されている。図中、符号78で示す長方形の内側部分がブロックゲージ34の測定面によって形成された干渉縞であり、その周囲の部分がベースプレート36の表面によって形成された干渉縞である。
式(2)および図3に示す状態は、Lの呼び寸法で、ΔLの製作誤差があるブロックゲージが標準温度のときと比較してLαΔtだけ熱膨張している状態を示す。そして、このときのブロックゲージの寸法がλv /2nを1目盛りとした整数部がNで、端数部がb/aであることを示している。ここで、呼び寸法L、熱膨張係数αおよび真空中の波長λv は、既知である。標準温度からの温度差Δtは、温度センサ56により装置周辺の気温を検出することにより求められる。ブロックゲージ34を十分長い時間、ここに置いておけば、装置周辺の気温と同じ温度となり、検出された温度と標準温度とから温度差Δtを算出することができる。または、ブロックゲージの側面にセンサを貼り付け、装置周辺の気温とは別個にブロックゲージの温度を検出してもよい。空気の屈折率nは、直接求める方法もあるが、一般的には、対象波長について、空気の温度、水蒸気圧、気圧、炭酸ガス濃度から計算によって求める方法が用いられる。炭酸ガス濃度は、本実施形態の装置においては、実際に測定するのではなく、固定された値(400ppm)を用いている。したがって、干渉縞の整数部Nと端数部b/aが求まれば、ブロックゲージ製作誤差ΔLが求まる。端数部b/aを求める方法については、後述する。整数部Nは、干渉縞から求めることはできず、ブロックゲージをやや低い精度の測定方法で予備測定して求める。単一波長の干渉測定を行う場合には、予備測定の精度は、その波長の2分の1以内の範囲で求める必要があるが、複数の波長を用いると、予備測定の精度をより下げることができる。
干渉縞の端数部b/aを求めるには、CCDカメラ46で撮影した画像上において、ベースプレート36上に形成された干渉縞の領域と、ブロックゲージ34上に形成された干渉縞の領域を指定する必要がある。そのために、本実施形態においては、干渉縞画像上で、ベースプレート36による干渉縞とブロックゲージによる干渉縞の境界を抽出している。以下、この境界の抽出処理について説明する。
図4は、データ演算処理装置68の、境界を抽出し、干渉縞の観測対象の領域を設定する機能を表すブロック図である。CCDカメラ46で撮影された画像は、データ演算処理装置68に送られ、画像記憶部100に記憶される。画像は、位相シフトを実行して、すなわち光学楔の位置を変えて異なる位相で複数枚取得する。図5は、取得された複数(5枚)の画像の例である。次に、輝度差演算部102で、取得された画像間で、同一位置(i,j)の画素間の輝度値の差の絶対値(|ImN+1(i,j)−ImN(i,j)|、以下単に輝度値の差と記す。)の総和D(i,j)を、下記式(3)により求める。iは、画像上のx座標、jは画像上のy座標である。
位相がシフトし、干渉縞がずれた画像どうしの各画素の輝度値の差は、干渉縞がずれて輝度が変化したところが大きな値となる。干渉縞が表れる部分であっても、二つの画像間で干渉縞のずれ(位相)が少なく、どちらの画像においても、干渉縞の明、または暗の部分の画素においては、輝度値の差は小さくなる。しかし、多くの枚数(例えば5枚以上)の画像について、各画像間の輝度値の差を得ることによって、差の値が大きくなる画像の組み合わせも含まれると考えられる。また、取得された画像の位相シフト量を適切に選択すれば、より少ない画像枚数であっても、境界以外の部分の輝度値の差を大きくすることができる。一方、ベースプレート36とブロックゲージ34の境界の部分では干渉が起こらないので、その位相シフトしても明暗が生じず、ほぼ一定の輝度になる。したがって、境界部分の画素の差は、極小さな値となる。
こうして得られた、画像間で対応する画素同士の輝度値の差の総和を取ったのが、上記の式(3)である。上記のように、ベースプレート36とブロックゲージ34の境界の部分では、輝度の差が大きくならず、ある画素についての輝度値の差の総和D(i,j)を取っても小さな値のままである。他の部分は、差が大きくなる画像を含むので、総和が大きな値になる。
このようにして得た各画素ごとの差の総和D(i,j)により形成される画像に基づき、境界抽出部104でベースプレート36とブロックゲージ34の境界の抽出を行う。差の総和D(i,j)で形成される画像が図6に示されている。境界に相当する部分80が暗く(黒く)表されており、それ以外の干渉縞が生じる部分82が明るく(白く)表されている。図においては、明暗の二値化された状態で示されているが、実際の輝度値の差の総和D(i,j)は、中間の値も含んでいる。各画素ごとの差の総和D(i,j)の値の小さい部分を抽出する。この抽出処理の例としてはD(i,j)に適切なしきい値を用いた二値化処理や、式(4)で示す周辺画素との差の二値化処理などが挙げられる。このようにして抽出された部分が、ベースプレート36とブロックゲージ34の境界部分となる。
抽出された境界部分80に基づき、ベースプレート36の領域とブロックゲージ34の領域を分ける。領域の分割は、二値化処理により「明」となった画素について、境界部分80で分割し、画像の中央部にある領域をブロックゲージ34の領域、周辺をベースプレート36の領域として分割を行う。また、ゲージの形状が既知の場合には、この既知の形状と境界部分80をパターンマッチング処理して、境界を特定し、このパターンの内側をブロックゲージ34の領域、外側をベースプレート36の領域と決定する。
対象領域設定部106では、分割されたそれぞれの領域に対して、干渉縞の観測対象とする領域を決定する。ブロックゲージ34については、境界部分80の内側全体を観測対象の領域84とし、ベースプレート36については、図7に示すように境界部分80の左右の近傍に、領域86を設定する。ブロックゲージ34の観測対象領域については、境界部分80より内側により狭い範囲に限定された領域を設定することもできる。
以上は、ベースプレート36上に1個のブロックゲージ34を置いて測定を行う場合であるが、ブロックゲージを2個置いて、それぞれの長さと、2個のゲージの長さの差を測定する場合にも同様の手法で、観測対象の領域を設定することができる。また、画素間の輝度の差として、輝度値の差の絶対値を用いたが、輝度値の差を二乗して平方根をとるなどの処理を行っても良い。
図8は、ブロックゲージ34を2個並べた状態の干渉縞を撮影した画像を示す図である。ここでは、5枚の画像を取得している。これらの画像に対し、式(3)を用いて、二つの画像間の対応する画素の、輝度値の差の総和を求める。この各画素ごとの差の総和を図6と同様に、図9に示す。2個のブロックゲージ34に対応して、2個の長方形の境界部分80a,80bが得られる。前述の二値化処理を行って、境界部分80a,80bを抽出し、これに基づき領域の分割を行う。図10に示すように、2個のブロックゲージ34に対応した2個の観測対象領域84a,84bを設定することができ、さらにその左右外側にベースプレート36上の観測対象領域86を設定することができる。ブロックゲージの観測対象領域84a,84bどうしの干渉縞のずれを観測すれば2個のブロックゲージの寸法差を測定することができ、ブロックゲージとベースプレートの間で干渉縞の観測をすればブロックゲージの寸法測定をすることができる。
次に、別の境界抽出処理について説明する。図11は、データ演算処理装置68の、境界を抽出し、干渉縞の観測対象の領域を設定する機能を表すブロック図である。CCDカメラ46で撮影された画像は、データ演算処理装置68に送られ、画像記憶部110に記憶される。記憶される画像の例として、前述の図5の画像を用いて説明する。取得された複数の画像のそれぞれに対して、エッジ抽出部112にて、エッジ抽出処理を行う。エッジ抽出処理は、例えば図12に示す縦、横のソーベルオペレータを適用し二乗和の平方根を得る。図12(a)に示すのが3*3の縦方向ソーベルオペレータ、(b)に示すのが3*3の横方向ソーベルオペレータである。図13には、図5の画像に対し、エッジ抽出処理がなされた画像が示されている。
境界抽出部114では、図13に示すエッジ画像に対し、あらかじめ記憶されている境界部分の代表形状を適用し、パターンマッチングを行う。代表形状は、対象となるブロックゲージの形状ごとにあらかじめ記憶させておくことができ、図14にその例を示す。各画像に対し、代表形状をマッチングさせ、その画像ごとに、マッチング評価値を最大とする代表形状の位置と、評価値を記憶する。図15は、図14(a)に示された代表形状90を、図13(e)に適用した状態を示している。図15(a)の状態は、実際の境界部分のエッジ88と、代表形状90がずれている状態を示し、このような場合の評価値は低くなる(例えば0.1)。図15(b)の場合、実際の境界部分のエッジ88と代表形状90が一致し、マッチングの評価値は高くなる(例えば0.7)。また、図14(b)に示される代表形状92を適用すると、評価値は低くなる(例えば、−0.4)。図16には、各エッジ画像について、各代表形状を適用したときの最大の評価値が示されている。これと共に、この最大評価値を与えた代表形状の位置も記憶される。最大評価値を示す代表形状とその位置に基づき、その時の代表形状が境界として抽出される。パターンマッチングの評価値は、既存のどのような方法を採ることもできるが、例えば画像解析ハンドブック1991年の第709ページに示されている相互相関係数による方法が挙げられる。上記の説明の評価値は、これに示される値を示している。境界部分が決定されれば、これに基づき対象領域設定部116にて、干渉縞観測の対象領域が設定される。この設定は、対象領域設定部106の場合と同様に設定できる。
さらに、エッジ画像を利用した別の境界抽出処理について説明する。エッジ画像を得るまでの処理は、すでに述べた処理と同様である。境界抽出部114の機能が異なる。得られた複数のエッジ画像について、対応する画素、つまり同一位置の画素の輝度を加算し、加算されたエッジ画像を得る。このエッジ画像が図17に示されている。干渉縞の明暗の境界部分に形成されるエッジは、位相シフトにより干渉縞が移動することに伴って移動する。一方、ベースプレート36とブロックゲージ34の境界部分のエッジは、表れたり消えたりするものの、表れる位置はほぼ一定である。これにより、複数のエッジ画像の重ね合わせをすると、境界部分のエッジが強調され、干渉縞の部分のエッジは薄められる。この画像に対し、適切なしきい値を用いて二値化することにより、図17のように境界部分80を抽出することができる。境界部分が抽出できた後の観測対象領域の設定は、前述と同様の処理により実行される。
以上のように、干渉縞の観測の対象となる領域が設定される。次に、ブロックゲージの高さの算出、特に干渉縞の端数ε(=b/a)の算出について説明する。
干渉縞は、光軸に直交するxy平面上の位置(x,y)における光の強度の関数として表現される。干渉縞の任意の点(x,y) における光強度I(x,y)は、次式で表現される。
I(x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) +δi] ・・・(5)
ここで、I'(x,y)は干渉縞の移動に依存しない光強度の成分であり、I"(x,y)は干渉縞の光強度の振幅であり、δi は位相のシフト量を表す。I'(x,y)、I"(x,y)、φ(x,y) が未知数であるから、位相がシフトされた最低3つの干渉縞の強度データが得られれば、測定対象物の表面の位相情報φ(x,y)、すなわち測定対象物の表面の、光路方向における位置(x,y) (ただし、波長の2分の1の範囲における位置)が求められる。基本的な上記の式を解く手法(位相シフトδi 、計算式など)の違いによって、各種のφ(x,y) の解法についてのアルゴリズムが存在している。例えば、ハリハラン(Hariharan) アルゴリズムでは、5枚の画像より干渉縞の位相を求めている。具体的には、光学楔50を移動させ、等間隔αで位相シフトδi を変化させる。したがって、位相シフトδi は、
δi =−2α,−α,0,α,2α i =1,2,3,4,5
となる。i が1,2,3,4,5のとき、それぞれ、式(5)は以下のようになる。
1 (x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) −2α] ・・・(6a)
2 (x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) −α] ・・・(6b)
3 (x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) ] ・・・(6c)
4 (x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) +α] ・・・(6d)
5 (x,y)=I'(x,y)+I"(x,y)cos[φ(x,y) +2α] ・・・(6e)
これら式より次式が得られる。
tan[φ(x,y)]/2 sinα=(I2 −I4 )/(2I3 −I5 −I1 ) ・・・(7)
αをπ/2とすると、干渉縞の位相の算出式は、次式となる。
φ(x,y) = tan-1[2(I2 −I4 )/(2I3 −I5 −I1 )] ・・・(8)
干渉縞が一定の距離動くごとに画像を取得すれば、式(6a)〜(6e)におけるI1 (x,y)〜I5 (x,y)を得ることができる。このために、本実施形態においては、光学楔50を一定速度で移動させ、一定の時間間隔で干渉縞の画像を取り込む。前述のように、光学楔50の楔角は2分10秒であるから、波長633nmの光を用いて測定する場合、光学楔50を1mm動かすことにより、干渉縞が1周期分移動する。干渉縞の濃淡を示す波形を取得するには、少なくともその波形の4分の1周期ごとの振幅の情報が必要となるから光学楔50の移動量に換算して0.25mm(=1mm/4)ごとに画像を取り込む必要がある。また、CCDカメラ46のフレームレートは、一般的な値である60であり、60分の1秒で、光学楔50が0.25mm移動する光学楔の移動速度は、15mm/秒(=0.25/(1/60) )となる。これは、干渉縞の移動速度に換算すると、1周期は2πであるから30π/秒となる。これより低い速度で光学楔50を移動させれば、干渉縞画像の取得間隔は、干渉縞濃淡波形の4分の1周期より短くなるので、取得波形の取り込みエラーは起こらない。換言すれば、取り込んだデータに基づく波形に歪みが生じない。この程度の速度で光学楔50を移動させることは、汎用のステッピングモータを用いることで十分達成できる。その他、直動式のリニアアクチュエータを用いることもでき、本実施形態ではこれを用い、速度0.5mm/秒以下で移動させている。
光学楔の楔角をr、レーザ光の波長をλ、CCDカメラのフレームレートをf、干渉縞の位相シフト量すなわち撮影間隔をpπ、光源の波長λとすると、移動速度Sは、次式で表される。
S=λfp/(2 tan-1r) ・・・(9)
撮影間隔は、前述のように4分の1周期以下とする必要があるから、p≦0.5となり、移動速度Sは、次式とする必要がある。
S≦λf/(4 tan-1r) ・・・(10)
式(6)で求められる干渉縞の位相に基づき、干渉縞の端数ε(=b/a)を求めることができる。ブロックゲージ34表面における干渉縞の位相をφb(x,y)、ベースプレート36表面における干渉縞の位相をφp(x,y)とすれば、端数εは次式で表される。
ε=(φp(x,y)−φb(x,y))/2π ・・・(11)
位相φ(x,y) と、測定対象物の表面の光路方向の位置h(x,y) (以下高さという)の関係は、次式で表される。
φ(x,y) =4πh(x,y) /λ ・・・(12)
したがって、位置(x,y) における測定対象物表面の高さは、位相φ(x,y) から求めることができる。計測領域の内の所定の測定点において、この高さを求めることにより、測定対象物表面の形状を求めることができる。また、測定点はCCDの画素ごとに対応させることができる。ブロックゲージ34の測定面の位相情報φb(x,y)と、ベースプレート36の表面の位相情報φp(x,y)の一例が図18、図19に表されている。式(12)より、位相情報と高さの情報は、比例関係にあるので、図18、図19に表れている形状は、ブロックゲージ、ベースプレートそれぞれの表面の形状を示すものでもある。
測定波長の数だけ、干渉縞端数εが得られれば、干渉縞の整数部Nを決定でき、ベースプレートに対するブロックゲージ面の任意の点の高さが決定できる。図20は、ベースプレート36の表面の位相情報を得られた範囲で平均化し、この平均された面を基準にしたブロックゲージ34の測定面の任意の点の高さを表した図である。
本実施形態においては、干渉縞の観測の対象とする領域を自動的に設定することができるので、測定者の負担を軽減することができる。また、測定者のくせに影響されずに安定した測定を行うことができる。
本実施形態の光学干渉測定装置の概略構成を示す図である。 光学干渉測定装置の電装系の構成を示すブロック図である。 被測定対象物と観測された干渉縞の様子を示す図である。 データ演算処理装置の構成を示すブロック図である。 複数の干渉縞画像の例を示す図である。 図5の干渉縞画像から得られた境界部分80が表れた画像を示す図である。 設定された干渉縞の観測対象領域を示す図である。 複数の干渉縞画像の例を示す図である。 図8の干渉縞画像から得られた境界部分80が表れた画像を示す図である。 設定された干渉縞の観測対象領域を示す図である。 データ演算処理装置の他の構成を示すブロック図である。 エッジ抽出用のフィルタの一例を示す図である。 エッジ画像の例を示す図である。 パターンマッチング用の代表形状の例を示す図である。 エッジ画像と代表形状のパターンマッチングについて説明する図である。 パターンマッチングの評価値を示した図である。 エッジ画像を重ねて得られた境界部分80を示す図である。 ブロックゲージ表面の位相情報を示す図である。 ベースプレート表面の位相情報を示す図である。 ブロックゲージ、ベースプレート表面の高さを示す図である。
符号の説明
10 光学干渉測定装置、30 ビームスプリッタ、32 主光路、34 ブロックゲージ、36 ベースプレート、38 参照光路、40 参照鏡、46 CCDカメラ、50 光学楔、68 データ演算処理装置、80 境界部分、84,86 観測対象領域、88 境界部分に対応するエッジ。

Claims (5)

  1. 光源からの所定波長の光を分割し、その一方を、高さに差のある複数の表面にて反射させ、分割された他方の光と干渉させて、複数の表面に表れる干渉縞同士の位相ずれに基づき前記複数の表面の高さの差を測定する光波干渉測定装置であって、
    前記分割された光の一方に対し、光の位相を変化させる位相シフト手段と、
    前記複数の表面の干渉縞の画像を、位相シフト手段により位相を変化させて複数取得する手段と、
    取得された複数の干渉縞の画像に基づき、画像における複数の表面間の境界を抽出する境界抽出手段と、
    抽出された境界に基づき、干渉縞の位相ずれの算出対象となる領域を決定する対象領域設定手段と、
    を有する光波干渉測定装置。
  2. 請求項1に記載の光波干渉測定装置において、
    境界抽出手段は、取得した複数の画像において同一位置の画素間での、それらの画素の輝度の差に基づき境界を抽出する、
    光波干渉測定装置。
  3. 請求項1に記載の光波干渉測定装置において、
    境界抽出手段は、取得した複数の画像のそれぞれに対しエッジ抽出を行い、抽出されたエッジ画像と、あらかじめ記憶している境界の代表形状とのパターンマッチングを行い、このマッチング結果に基づき、境界を抽出する、
    光波干渉測定装置。
  4. 請求項1に記載の光波干渉測定装置において、
    境界抽出手段は、取得した複数の画像のそれぞれに対しエッジ抽出を行い、抽出されたエッジ画像を加算し、さらに所定のしきい値により二値化して、境界を抽出する、
    光波干渉測定装置。
  5. 光源からの所定波長の光を分割し、その一方を、高さに差のある複数の表面にて反射させ、分割された他方の光と干渉させて、複数の表面に表れる干渉縞同士の位相ずれに基づき前記複数の表面の高さの差の測定を行う光波干渉測定方法であって、
    前記複数の表面の干渉縞の画像を、前記分割された光の一方に対し、光の位相を変化させて複数取得し、
    取得された複数の干渉縞の画像に基づき、画像における複数の表面間の境界を抽出し、
    抽出された境界に基づき、干渉縞の位相ずれの算出対象となる領域を決定する、
    光波干渉測定方法。
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